説明

コントロールケーブル用グリース組成物

【課題】耐久数が増加してもコントロールケーブルの荷重効率の低下を防止可能なグリース組成物を提供すること。
【解決手段】コントロールケーブル用グリース組成物は、5〜44質量%の増ちょう剤と、50〜89質量%のシリコーン基油と、1〜20質量%の層状構造の化合物粉末と、5〜30質量%のポリテトラフルオロエチレン粉末とを含む。シリコーン基油は、25℃における動粘度が50〜900mm2/sであり、25℃における動粘度が1〜300mm2/sの低粘度シリコーン油と、25℃における動粘度が700〜2000mm2/sの高粘度シリコーン油とを含み、高粘度シリコーン油の含有量が低粘度シリコーン油と高粘度シリコーン油との合計質量に対して40〜90質量%である。層状構造の化合物粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末との質量比は10:90〜60:40である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールケーブル用グリース組成物(以下では単に「グリース組成物」と記すことがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
コントロールケーブルは、ユーザの手元での操作による力または動きをユーザの手元から遠く離れた場所へ伝達させるものであり、インナーケーブルがアウターケーシングに摺動可能に挿通されて構成されている(特許文献1〜3など)。たとえばコントロールケーブルを介して自動車の変速レバーの動きを変速機へ伝達させる場合、ユーザが変速レバーを操作すると、インナーケーブルが押し引きされ、これにより、ユーザによる操作力が変速機へ伝達される。
【0003】
このようなコントロールケーブルでは、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面にグリースが塗布されていることが多い。これにより、インナーケーブルがアウターケーシングの内周面を摺動する際に生じる抵抗(摺動抵抗)の低減が図られ、よって、荷重効率の低下が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07− 71434号公報
【特許文献2】特開2000−314416号公報
【特許文献3】特開2007−321989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグリースでは、インナーケーブルがアウターケーシングの内周面を摺動する回数(以下では「耐久数」と記すことがある)の増加につれてその潤滑性能の低下を招くことがあり、よって、コントロールケーブルの荷重効率の低下を引き起こすおそれがある。
【0006】
より詳しくは、アウターケーシングの内周面がポリテトラフルオロエチレンで形成されている場合に顕著であるが、アウターケーシングの内周面がインナーケーブルの外周面との摺動によって剥離し、その摩耗粉の増加によりグリースの潤滑性能を低下させ、コントロールケーブルの荷重効率を低下させてしまうおそれがある。これを改善するためには、例えば、耐久数が増加してもインナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面が十分な耐摩耗性を有し、かつ低摩擦性とその維持に優れるグリースとすることが考えられる。
【0007】
本発明は、耐久数が増加してもコントロールケーブルの荷重効率の低下を防止可能なコントロールケーブル用グリース組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコントロールケーブル用グリース組成物は、外周面が樹脂または金属で形成されたインナーケーブルとインナーケーブルを内部に挿通可能で且つ内周面が樹脂で形成されたアウターケーシングとを備えたコントロールケーブルにおいて、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面に塗布される。このようなグリース組成物は、5〜44質量%の増ちょう剤と、50〜89質量%のシリコーン基油と、1〜20質量%の層状構造の化合物粉末と、5〜30質量%のポリテトラフルオロエチレン粉末とを含む。シリコーン基油は、25℃における動粘度が50〜900mm2/sであり、25℃における動粘度が1〜300mm2/sの低粘度シリコーン油と25℃における動粘度が700〜2000mm2/sの高粘度シリコーン油とを含み、高粘度シリコーン油の含有量が低粘度シリコーン油と高粘度シリコーン油との合計質量に対して40〜90質量%である。層状構造の化合物粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末との質量比は、10:90〜60:40である。
【0009】
インナーケーブルの外周面の単位面積当たりのグリース組成物の塗布量は45g/m2以上220g/m2以下であることが好ましい。
【0010】
本発明に係るグリース組成物は、アウターケーシングの内周面がポリテトラフルオロエチレンで形成されてなるコントロールケーブルに用いられることが好ましい。
【0011】
層状構造の化合物粉末は、たとえば、黒鉛粉末および窒化ホウ素粉末のうち少なくとも一種である。
【0012】
増ちょう剤は、たとえば、鱗片状粒子のリチウム石けん系増ちょう剤である。
本発明に係るコントロールケーブルは、上記グリース組成物がインナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面に塗布されてなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコントロールケーブル用グリース組成物では、耐久数が増加してもコントロールケーブルの荷重効率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るコントロールケーブルの横断面図である。
【図2】本発明の別の一実施例に係るコントロールケーブルの横断面図である。
【図3】耐久試験に使用する装置の概略平面図である。
【図4】実施例での耐久試験の結果を示すグラフである。
【図5】別の実施例での耐久試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<グリース組成物>
本発明に係るグリース組成物を説明する。なお、本発明に係るグリース組成物は、以下に示す事項に限定されない。
【0016】
本発明に係るグリース組成物は、コントロールケーブルに用いられる。コントロールケーブルは、インナーケーブルがアウターケーシングに挿通されてなり、本発明に係るグリース組成物は、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面に塗布される。このようなグリース組成物は、5〜44質量%の増ちょう剤と、50〜89質量%のシリコーン基油と、1〜20質量%の層状構造の化合物粉末と、5〜30質量%のポリテトラフルオロエチレン粉末(以下では「PTFE粉末」と記すことがある。PTFEはpolytetrafluoroethyleneの略称である。)とを含む。
【0017】
<増ちょう剤>
増ちょう剤の材料は、特に限定されない。本発明における増ちょう剤は、グリースの増ちょう剤として通常使用される材料であれば良く、具体的には金属石けん系増ちょう剤、複合体金属石けん系増ちょう剤またはポリウレア等であれば良く、好ましくはリチウム石けん系増ちょう剤である。
【0018】
リチウム石けん系増ちょう剤としては、リチウム−12−ヒドロキシステアレート等の水酸基を有する脂肪族カルボン酸リチウム塩、リチウム−ステアレート等の脂肪族カルボン酸リチウム塩またはそれらの混合物などが挙げられる。この中でも、グリース組成物の耐久性の観点から、リチウム石けん系増ちょう剤はリチウム−ステアレートであることが好ましい。
【0019】
リチウム石けん系増ちょう剤は、通常、鱗片状粒子のリチウム石けんを基油からなる溶媒中に配合し、200℃付近まで加熱させて基油中にリチウム石けんを溶解させた後、冷却して結晶化させる(いわゆる再結晶化させる)ことにより、リチウム石けん系増ちょう剤自体が繊維状になるように製造される。しかし、本発明では、インナーケーブルがアウターケーシングの内周面を摺動したとき(以下では「インナーケーブルの摺動時」と記すことがある。)に生じる摩擦力を低下させ、その結果荷重効率の低下を抑制するという観点から、繊維状のリチウム石けん系増ちょう剤ではなく、90〜150℃付近で基油中に分散させた鱗片状粒子のリチウム石けん系増ちょう剤を用いることが好ましい。鱗片状粒子のリチウム石けんを基油中へ撹拌かつ分散させるための温度は、好ましくは90〜150℃であり、より好ましくは90〜140℃であり、更に好ましくは95〜130℃である。この温度が90℃未満であれば、鱗片状粒子のリチウム石けんの基油中への分散性が低下する傾向にある。また、この温度が150℃を超えると、鱗片状粒子のリチウム石けんの一部が繊維状となる可能性があり、鱗片状粒子のリチウム石けん系増ちょう剤が得られない可能性がある。
【0020】
グリース組成物における増ちょう剤の含有量は、5〜44質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。増ちょう剤の含有量が5質量%未満であれば、インナーケーブルの摺動時に生じる摩擦力が高くなり、その結果荷重効率が低下する傾向にある。一方、増ちょう剤の含有量が44質量%を超えると、グリース組成物の寿命が短くなる傾向にある。
【0021】
<シリコーン基油>
シリコーン基油は、25℃における動粘度が50〜900mm2/sである。25℃におけるシリコーン基油の動粘度は、好ましくは100〜850mm2/sであり、より好ましくは200〜600mm2/sである。25℃におけるシリコーン基油の動粘度が50mm2/sを下回ると、インナーケーブルの外周面上またはアウターケーシングの内周面上における油膜形成が十分でなく、そのため、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下し、その結果荷重効率が低下する傾向になる。一方、25℃におけるシリコーン基油の動粘度が900mm2/sを超えると、インナーケーブルの外周面とアウターケーシングの内周面との間へのグリース組成物の入り込み量が少なくなる傾向にあるため、結果としてインナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下し、その結果荷重効率が低下する傾向にある。なお、動粘度は、たとえば、ガラス製毛管式粘度計を用いてJIS K 2283(原油及び石油製品―動粘度試験方法)に準拠して測定される。
【0022】
本発明におけるシリコーン基油は、25℃における動粘度が50〜900mm2/sとなるように下記低粘度シリコーン油と下記高粘度シリコーン油とが混合されたものであり、たとえばジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、または各種変性シリコーンなどであれば良く、好ましくはジメチルシリコーンであるが、これらのシリコーンが混合されたものであっても良い。
【0023】
低粘度シリコーン油は、25℃における動粘度が1〜300mm2/sのシリコーン油であり、好ましくは25℃における動粘度が5〜250mm2/sのシリコーン油であり、より好ましくは20〜180mm2/sのシリコーン油である。25℃における低粘度シリコーン油の動粘度が1mm2/s未満であれば、インナーケーブルの外周面上またはアウターケーシングの内周面上における油膜形成が十分でなく、そのため、インナーケーブルの摺動時にインナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面が摩耗する(以下では単に「インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する」と記すことがある)傾向にある。一方、25℃における低粘度シリコーン油の動粘度が300mm2/sを超えると、インナーケーブルの外周面とアウターケーシングの内周面との間へのグリース組成物の入り込み量が少なくなる傾向にあるため、結果としてインナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。
【0024】
低粘度シリコーン油は、低粘度シリコーン油と高粘度シリコーン油との合計量に対して10〜60質量%含まれており、好ましくは20〜50質量%含まれている。低粘度シリコーン油の含有量がこの範囲から外れると、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が十分得られない傾向にある。
【0025】
高粘度シリコーン油は、25℃における動粘度が700〜2,000mm2/sのシリコーン油であり、好ましくは700〜1500mm2/sのシリコーン油である。25℃における高粘度シリコーン油の動粘度の範囲がこの範囲から外れると、上記低粘度シリコーン油との混合により25℃におけるシリコーン基油の動粘度を50〜900mm2/sに調整することが難しくなる。
【0026】
高粘度シリコーン油は、低粘度シリコーン油と高粘度シリコーン油との合計質量に対して40〜90質量%含まれており、好ましくは50〜80質量%含まれている。高粘度シリコーン油の含有量がこの範囲から外れると、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が十分得られない傾向にある。
【0027】
グリース組成物におけるシリコーン基油の含有量は、50〜89質量%であり、好ましくは、60〜85質量%である。シリコーン基油の含有量が50質量%を下回ると、固体潤滑剤の固形分が多くなり、グリース組成物が固化しやすい傾向にある。一方、シリコーン基油の含有量が89質量%を上回ると、固体潤滑剤の固形分が減り、グリース組成物の耐久性および潤滑性が低下しやすい傾向にある。
【0028】
なお、本発明に係るグリース組成物はシリコーン基油以外の基油を含有していても良いが、シリコーン基油以外の基油の添加量をシリコーン基油に対して5質量%以下に抑えることが好ましい。
【0029】
<層状構造の化合物粉末>
層状構造の化合物粉末は、層状の結晶構造を有する化合物の粉末であり、たとえば二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、フッ化黒鉛、雲母、MCA(Melamine Cyanurate Acidの略称)、窒化ホウ素、または遷移金属ジカルコゲナイドなどのインカレーション化合物の粉末である。層状構造の化合物粉末は、好ましくは雲母、黒鉛、窒化ホウ素、MCA、または二硫化モリブデンの各粉末であり、より好ましくは黒鉛または窒化ホウ素の各粉末である。なお、本発明に係るグリース組成物は、上記材料のうちの一種類の材料の粉末を層状構造の化合物粉末として含んでも良いし、上記材料のうちの二種以上の材料の粉末を層状構造の化合物粉末として含んでも良い。
【0030】
黒鉛は、人造黒鉛と天然黒鉛とに大別される。人造黒鉛は、ピッチ・コークスをタールまたはピッチ等により固めて1200℃位で焼成後、黒鉛炉で高温で処理することにより炭素の結晶が成長して造られたものである。また、天然黒鉛は、植物などの炭素成分が天然の地熱と地下の高圧とにより長い年月を経て黒鉛化したものである。本発明において用いる黒鉛粉末としては、天然黒鉛粉末が好ましい。また、天然黒鉛粉末としては、その材質の違いにより、鱗片状黒鉛粉末、鱗状黒鉛粉末、および土状黒鉛粉末などが挙げられるが、好ましくは鱗片状黒鉛粉末または鱗状黒鉛粉末である。
【0031】
層状構造の化合物粉末の平均粒径については、レーザー回折散乱法により測定された層状構造の化合物粉末の体積平均粒径が好ましくは0.1〜25μmであり、より好ましくは2.1〜20μmであり、さらに好ましくは2.2〜15μmである。層状構造の化合物粉末の体積平均粒径が0.1μm未満であっても、また層状構造の化合物粉末の体積平均粒径が25μmを超えても、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。なお、層状構造の化合物粉末の平均粒径は、レーザー回折散乱法の他に動的光散乱法またはコールター法等の方法にしたがって測定することもできる。
【0032】
層状構造の化合物粉末が黒鉛粉末である場合、その平均粒径は、好ましくは1〜15μmであり、より好ましくは2.1〜10μmである。黒鉛粉末の平均粒径が1μm未満であっても、また黒鉛粉末の平均粒径が15μmを超えても、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。特に、層状構造の化合物粉末が麟片状黒鉛粉末または鱗状黒鉛粉末である場合、その平均粒径は、好ましくは2.1〜10μmであり、より好ましくは2.1〜8μmである。
【0033】
層状構造の化合物粉末が窒化ホウ素粉末である場合、その平均粒径は、好ましくは0.5〜20μmであり、より好ましくは0.5〜10μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。窒化ホウ素粉末の平均粒径が0.5μm未満であっても、また窒化ホウ素粉末の平均粒径が20μmを超えても、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。
【0034】
グリース組成物における層状構造の化合物粉末の含有量の下限値は、1質量%であり、好ましくは3質量%であり、より好ましくは5質量%である。グリース組成物における層状構造の化合物粉末の含有量の上限値は、20質量%であり、好ましくは15質量%であり、より好ましくは10質量%である。グリース組成物における層状構造の化合物粉末の含有量が1質量%未満であれば、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。グリース組成物における層状構造の化合物粉末の含有量が20質量%を超えても、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性の更なる向上が図れない傾向にある。
【0035】
<PTFE粉末>
PTFEは、全体として帯状構造を持っており、その帯は、板状結晶部分と非晶質部分とがサンドイッチ状に交互に配置されてなるバンド構造を有している。
【0036】
PTFE粉末の平均粒径については、レーザー回折散乱法により測定されたPTFE粉末の体積平均粒径が好ましくは0.1〜25μmであり、より好ましくは0.5〜15μmであり、さらに好ましくは1.0〜10μmである。PTFE粉末の体積平均粒径が0.1μm未満であっても、またPTFE粉末の体積平均粒径が25μmを超えても、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。なお、PTFE粉末の平均粒径は、レーザー回折散乱法の他に動的光散乱法またはコールター法等の方法にしたがって測定することもできる。
【0037】
グリース組成物におけるPTFE粉末の含有量の下限値は、5質量%であり、好ましくは7質量%であり、より好ましくは14質量%である。グリース組成物におけるPTFE粉末の含有量の上限値は、30質量%であり、好ましくは25質量%であり、より好ましくは20質量%である。グリース組成物におけるPTFE粉末の含有量が5質量%未満であれば、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。グリース組成物におけるPTFE粉末の含有量が30質量%を超えても、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性の更なる向上が図れない傾向にある。
【0038】
<層状構造の化合物粉末とPTFE粉末との質量比>
層状構造の化合物粉末とPTFE粉末との質量比は、10:90〜60:40であり、好ましくは20:80〜50:50であり、より好ましくは20:80〜40:60である。
【0039】
層状構造の化合物粉末の配合比率(=(層状構造の化合物粉末の質量)÷(層状構造の化合物粉末とPTFE粉末との合計質量)×100)が10%を下回ると、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面の少なくとも一方の面がPTFE樹脂または高密度なPE(polyethylene)樹脂からなるときにその面の耐摩耗性が低下する傾向にある。PTFE粉末の配合比率が90%を上回ったときにも同様のことが言える。
【0040】
一方、層状構造の化合物粉末の配合比率が60%を上回ると、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面の少なくとも一方の面がPBT(polybutylene terephtalate)樹脂からなるときに摺動時にその面で生じる摩擦力が増大する傾向にある。PTFE粉末の配合比率が40%を下回ったときにも同様のことが言える。
【0041】
しかし、層状構造の化合物粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末との質量比が10:90〜60:40であれば、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面の各材料に依らず、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面において耐摩耗性の低下を防止でき、また、インナーケーブルの摺動時にインナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面で生じる摩擦力の増大を防止できる。
【0042】
<その他の添加剤>
本発明に係るグリース組成物は、さらに下記に列挙する添加剤のうちの1種以上を含んでいても良い。添加剤は、たとえば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、またはアルカリ土類金属サリシレートなどの金属系清浄剤であっても良いし、アルケニルこはく酸イミド、アルケニルこはく酸イミド硼素化変性物、ベンジルアミン、またはアルキルポリアミンなどの分散剤であっても良いし、亜鉛系、硫黄系、リン系、アミン系、またはエステル系などの各種摩耗防止剤であっても良いし、ポリメタクリレート系、エチレンプロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体の水素化物、またはポリイソブチレン等の各種粘度指数向上剤であっても良いし、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物、またはナフチルアミン類もしくはジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物などの各種酸化防止剤であっても良いし、硫化オレフィン、硫化油脂、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、またはナフテン酸鉛などの極圧剤であっても良いし、ステアリン酸などのカルボン酸、ジカルボン酸、金属石鹸、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、または多価アルコールのカルボン酸部分エステルなどの各種錆止め剤であっても良いし、ベンゾトリアゾールまたはベンゾイミダゾールなどの各種腐食防止剤であっても良い。
【0043】
<グリース組成物の塗布量>
インナーケーブルの外周面の単位面積当たりのグリース組成物の塗布量は、好ましくは45g/m2以上220g/m2以下であり、より好ましくは45g/m2以上210g/m2以下である。グリース組成物の塗布量が45g/m2未満であれば、インナーケーブルの外周面上またはアウターケーシングの内周面上における油膜形成が十分でなく、そのため、インナーケーブルの外周面またはアウターケーシングの内周面の耐摩耗性が低下する傾向にある。また、グリース切れを起こし潤滑性能を得られないという傾向にある。一方、グリース組成物の塗布量が220g/m2を超えると、インナーケーブルとアウターケーシングとの摺動の妨げとなり、正常な潤滑性能が得られないという傾向にある。
【0044】
ここで、グリース組成物の塗布量の基準となる上記「インナーケーブルの外周面」について記す。インナーケーブルがシャフトとストランドとの2層で構成される場合(後述の図1に示す場合)、インナーケーブルの外周面は、インナーケーブルの径方向において最も外側に位置するストランドの部位に接する仮想的な周面となる。インナーケーブルがシャフトとストランドとコート層との3層で構成される場合(後述の図2に示す場合)、インナーケーブルの外周面はコート層の外周面となる。
【0045】
<グリース組成物の製造方法>
本発明に係るグリース組成物は、上記増ちょう剤と上記シリコーン基油と上記層状構造の化合物粉末と上記PTFE粉末とをそれぞれ所定量混合し、必要に応じて上記添加剤の少なくとも一種を添加することにより、製造される。
【0046】
<コントロールケーブル>
本発明に係るコントロールケーブルは、インナーケーブルがアウターケーシングに挿通され、且つ、本発明に係るグリース組成物がインナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面に塗布されて構成されたものである。インナーケーブルの外周面は樹脂または金属で形成されており、アウターケーシングの内周面は樹脂で形成されている。
【0047】
本発明では、インナーケーブルおよびアウターケーシングの各構成に限定されない。以下では、インナーケーブルおよびアウターケーシングの各構成の概略を示す。
【0048】
インナーケーブルは、シャフトとストランドとの2層からなっても良いし、シャフトとストランドとコート層との3層からなっても良い。シャフトは、適度な剛性を有しつつ靭性を有する材料からなることが好ましく、たとえば炭素鋼線材または炭素繊維である。ストランドは、シャフトの外周面上に配置されて所定の方向に撚られており、シャフトと同じく適度な剛性を有しつつ靭性を有する材料からなっても良い。コート層は、ストランドを覆っており、シャフトと同じく適度な剛性を有する材料からなっても良いし、PA(polyamide)66などの樹脂からなっても良い。
【0049】
アウターケーシングは、インナーケーブルが挿通されるライナーと、シールドと、コート層との3層からなることが好ましい。ライナーは、樹脂からなれば良く、好ましくはPTFE樹脂からなることである。これにより、インナーケーブルとの摺動性能が向上するという効果が得られる。シールドは、ライナーの外周面上に配置されて所定の方向に撚られており、インナーケーブルのシャフトと同じく適度な剛性を有しつつ靭性を有する材料からなれば良い。コート層は、シールドを覆っており、PP(polypropylene)樹脂またはポリエステルエラストマー(以下では「TPC」と記す)などの樹脂からなれば良い。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を示す。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
<実施例1>
<グリース組成物の作製>
リチウム−ステアレートAと、シリコーン油Aおよびシリコーン油Cからなるシリコーン基油と、窒化ホウ素と、PTFE粉末と、酸化防止剤とを耐熱容器に投入した。このときの配合量は表1に示すとおりである。その後、約100℃付近で十分に攪拌させてリチウム−ステアレートAを分散させ、ミル処理を行なった。これにより、鱗片状のリチウム−ステアレート粒子がシリコーン基油中に分散されたグリース組成物(実施例1のグリース組成物)が得られた。
【0051】
<コントロールケーブルの作製>
得られたグリース組成物を用いて、図1に示すコントロールケーブル10を作製した。図1は、実施例1に係るコントロールケーブル10の横断面を模式的に示す図である。
【0052】
具体的には、コントロールケーブル10を構成するインナーケーブル20およびアウターケーシング30を用意した。インナーケーブル20は、シャフト21と9本のストランド23とからなり、ストランド23がシャフト21の外周面上に配置されてS方向に撚られて構成されていた。各ストランド23は、ストランド芯線25と6本のストランド側線27とからなり、ストランド側線27がストランド芯線25の外周面上に配置されてZ方向に撚られて構成されていた。
【0053】
シャフト21は、JIS G 3506のSWRH72Aで規定される炭素鋼線材にオイルテンパー処理が施された線材からなっていた。ストランド芯線25およびストランド側線27は、それぞれ、JIS G 3506のSWRH62Aで規定される炭素鋼線材に亜鉛メッキを施した後に伸線加工が施された線材からなっていた。
【0054】
インナーケーブル20の外径は2.92mmであり、シャフト21の外径は1.6mmであり、ストランド芯線25の外径は0.265mmであり、ストランド側線27の外径は0.24mmであった。
【0055】
また、アウターケーシング30は、インナーケーブル20が挿通されるライナー31と、20本のシールド33と、コート層35とで構成されていた。シールド33は、ライナー31の外周面上に配置されてZ方向に撚られており、コート層35で覆われていた。
【0056】
ライナー31は、PTFE樹脂(日星電気株式会社の製品名「ハイフロン」)からなり、シールド33は、JIS G 3506のSWRH62Aで規定される炭素鋼線材に亜鉛メッキが施された線材からなり、コート層35は、PP樹脂(三菱化学株式会社製の製品名「ゼラス」)からなっていた。
【0057】
アウターケーシング30の外径は8.2mmであり、ライナー31の内径は3.2mmであり、ライナー31の外径は4.5mmであり、シールド33の外径は0.8mmであった。
【0058】
そして、グリース組成物の塗布量が表1に記載の値となるようにインナーケーブル20の外周面に塗布し、インナーケーブル20をアウターケーシング30のライナー31に挿通した。このようにして、実施例1のコントロールケーブル10が得られた。
【0059】
<耐久試験>
得られたコントロールケーブル10に対して耐久試験を行なった。図3は、耐久試験に使用する装置の概略平面図である。
【0060】
具体的には、コントロールケーブル10を表4中の「配索」に記載の形状に配索させて恒温槽91内に入れた。そののち、インナーケーブル20の一端にバネ95を接続して試験荷重Wを与え、インナーケーブル20の他端を押引力測定器93によって速度30cpm(cycle/min)、ストローク長30mmで往復させ、操作荷重F(引張力)を測定した。そして、(荷重効率(%))=(試験荷重W)÷(操作荷重F)×100により、往復回数(耐久数)毎の荷重効率を算出した。この試験を、恒温槽91の温度を−40℃、20℃および120℃に変更して行なった。
【0061】
<実施例2〜4、比較例1〜3>
実施例2〜4および比較例1〜3では、グリース組成物を構成する材料の配合量を表1に示す値に変更したことを除いては上記実施例1と同様であった。
【0062】
<実施例5〜8、比較例4〜7>
実施例5〜8および比較例4〜7では、グリース組成物を構成する材料の配合量を表2に示す値に変更したことおよび以下に示す方法にしたがって図2に示すコントロールケーブル50を作製したことを除いては上記実施例1と同様であった。
【0063】
なお、実施例5〜8および比較例4〜7においても、図3に示す装置を用いてコントロールケーブル50に対する耐久試験を行なった。
【0064】
<コントロールケーブルの作製>
得られたグリース組成物を用いて、図2に示すコントロールケーブル50を作製した。図2は、実施例5に係るコントロールケーブル50の横断面を模式的に示す図である。
【0065】
具体的には、コントロールケーブル50を構成するインナーケーブル60およびアウターケーシング70を用意した。インナーケーブル60は、シャフト61とストランド63とコート層69とからなっていた。ストランド63では、6本のストランド芯線65がシャフト61の外周面上に配置されてZ方向に撚られおり、6本の第1のストランド側線67Aと6本の第2のストランド側線67Bとが周方向において交互となるようにストランド芯線65の外側に配置されてS方向に撚られていた。このようにして構成されたストランド63がコート層69で覆われていた。
【0066】
シャフト61、ストランド芯線65、第1のストランド側線67A、および第2のストランド側線67Bは、JIS G 3506のSWRH72Aで規定される炭素鋼線材にオイルテンパー処理が施された線材からなっていた。コート層69は、PA66樹脂(旭化成ケミカルズ株式会社製の製品名「レオナ」)からなっていた。
【0067】
インナーケーブル60の外径は4.3mmであり、シャフト61の外径は0.65mmであり、ストランド芯線65の外径は0.6mmであり、第1のストランド側線67Aの外径は0.7mmであり、第2のストランド側線67Bの外径は0.5mmであった。
【0068】
アウターケーシング70は、インナーケーブル60が挿通されるライナー71と、24本のシールド73と、コート層75とで構成されており、図1におけるアウターケーシング30とほぼ同一の構成を有していた。
【0069】
ライナー71は、PTFE樹脂(日星電気株式会社製の製品名「ハイフロン」)からなり、シールド73は、JIS G 3506のSWRH62Aで規定される炭素鋼線材に亜鉛メッキが施された線材からなり、コート層75は、TPC(東洋紡績株式会社製の製品名「ペルプレン」)からなっていた。
【0070】
アウターケーシング70の外径は9.0mmであり、ライナー71の内径は4.65mmであり、その外径は6.0mmであり、シールド73の外径は0.884mmであった。その後は上記実施例1と同様の方法にしたがって、コントロールケーブル50を得た。
【0071】
<実施例9〜11、比較例8〜9>
実施例9、実施例11および比較例8〜9では、グリース組成物を構成する材料の配合量を表3に示す値に変更したことを除いては上記実施例1と同様であった。
【0072】
実施例10では、グリース組成物の作成方法を除いては上記実施例1と同様であった。具体的には、リチウム−ステアレートBとシリコーン基油とを耐熱容器に投入して攪拌させながら加熱させ、約200℃付近でリチウム−ステアレートBを溶解させた。その後、冷却した。次に、窒化ホウ素とPTFE粉末と酸化防止剤とを耐熱容器にさらに添加して約100℃付近で十分に攪拌させ、ミル処理を行なった。これにより、繊維状のリチウム−ステアレート結晶がシリコーン基油中に分散されたグリース組成物(実施例10のグリース組成物)が得られた。
【0073】
結果を表1〜表3および図4〜図5に示す。図4(a)〜(c)は、それぞれ、恒温槽91の温度が−40℃、20℃および120℃であるときの実施例3と比較例1との結果を示すグラフである。図5(a)〜(c)は、それぞれ、恒温槽91の温度が−40℃、20℃および120℃であるときの実施例7と比較例4との結果を示すグラフである。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表1〜3における注釈は以下の通りである。
(注1) リチウム−ステアレートA:堺化学工業株式会社製のS7000H
(注2) リチウム−ステアレートB:堺化学工業株式会社製のS7000
(注3) シリコーン油A:25℃での動粘度が50mm2/sであるジメチルシリコーン油
(注4) シリコーン油B:25℃での動粘度が200mm2/sであるジメチルシリコーン油
(注5) シリコーン油C:25℃での動粘度が1000mm2/sであるジメチルシリコーン油
(注6) シリコーン油D:25℃での動粘度が500mm2/sであるジメチルシリコーン油
(注7) 黒鉛:鱗状粉末、平均粒径5μm
(注8) 窒化ホウ素:粉末、平均粒径1.5μm
(注9) PTFE:粉末、平均粒径4.0μm
(注10) 酸化防止剤:アミン系酸化防止剤
(注11) 前方には、耐久試験を行なう前の荷重効率の値を記し、後方には、耐久数が200万回後の荷重効率の値を記している
(注12) 前方には、耐久試験を行なう前の荷重効率の値を記し、後方には、耐久数が100万回後の荷重効率の値を記している。
【0078】
なお、25℃での動粘度は、ガラス製毛管式粘度計を用いて、JIS K 2283(原油及び石油製品―動粘度試験方法)に準拠して測定された。
【0079】
【表4】

【0080】
表4における注釈は以下の通りである。
(注13) R150×180°:曲げ半径Rが150mmで総曲がり角度180度となるようにコントロールケーブル10を配索する。ここで、曲げ半径Rは図3に示す「R」である
(注14) R100×180°:曲げ半径Rが100mmで総曲がり角度180度となるようにコントロールケーブル50を配索する。
【0081】
また、表4において、「インナーケーブル長I」、「アウターケーシング長L」、および「試験荷重W」は、それぞれ、図3に示す「I」、「L」、および「W」である。
【0082】
<評価結果>
実施例1〜4では、比較例1に比べて、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止された。この効果は、−40℃および20℃での耐久試験において顕著であった。その理由としては、実施例1〜4では、低粘度シリコーン油がシリコーン基油に含まれているので、グリース組成物がインナーケーブルの外周面とアウターケーシングの内周面との間に入り込み易くなり、よって、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面の摩耗が抑制されるからである、と考えられる。それだけでなく、実施例1〜4では、層状構造の化合物(窒化ホウ素)がグリース組成物に含まれているため、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面の摩耗が抑制され、またインナーケーブルの摺動時にこれらの面で生じる摩擦が低減されるからである、と考えられる。
【0083】
また、実施例1〜4では、比較例2〜3に比べて、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止された。また、比較例2と比較例3とでは、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率は比較例3の方が比較例2よりも低下した。この理由としては、実施例1〜4では、シリコーン基油における高粘度シリコーン油の含有量が40質量%以上90質量%以下であるので、所定量の低粘度シリコーン油がシリコーン基油に含まれることとなり、よって、インナーケーブルの外周面およびアウターケーシングの内周面の摩耗が抑制されるからである、と考えられる。
【0084】
実施例5〜8では、比較例4〜7に比べて、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止された。その理由としては、実施例1〜4の場合と同様の理由が考えられる。
【0085】
また、実施例5〜8では、−40℃および20℃での耐久試験だけでなく120℃での耐久試験においても、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止された。その理由としては、インナーケーブルの外周面が樹脂で形成されているため、アウターケーシングとの摺動性能が良く摩耗が軽減された為である、と考えられる。
【0086】
実施例9〜10では、比較例8に比べて、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止された。その理由としては、実施例9〜10では、グリース組成物の塗布量が最適化されているからである、と考えられる。
【0087】
また、実施例10では、実施例9と同じく、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止された。よって、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止されるという効果は増ちょう剤の材料に限定されることなく得られると考えられる。
【0088】
実施例11では、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率は、実施例9および10よりも若干低下したが、比較例9よりも高く、コントロールケーブルの機能は維持されていた。よって、グリース組成物の塗布量は220g/m2以下であることが好ましいと考えられる。
【0089】
また、層状構造の化合物粉末に黒鉛を使用しても、実施例9〜10と同様に、耐久数の増加に伴うコントロールケーブルの荷重効率の低下が防止されていると考えられる。
【0090】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
10 コントロールケーブル、20 インナーケーブル、21 シャフト、23 ストランド、25 ストランド芯線、27 ストランド側線、30 アウターケーシング、31 ライナー、33 シールド、35 コート層、50 コントロールケーブル、60 インナーケーブル、61 シャフト、63 ストランド、65 ストランド芯線、67A 第1のストランド側線、67B 第2のストランド側線、69 コート層、70 アウターケーシング、71 ライナー、73 シールド、75 コート層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面が樹脂または金属で形成されたインナーケーブルと前記インナーケーブルを内部に挿通可能で且つ内周面が樹脂で形成されたアウターケーシングとを備えたコントロールケーブルにおいて、前記インナーケーブルの前記外周面および前記アウターケーシングの前記内周面に塗布されるコントロールケーブル用グリース組成物であって、
5〜44質量%の増ちょう剤と、
50〜89質量%のシリコーン基油と、
1〜20質量%の層状構造の化合物粉末と、
5〜30質量%のポリテトラフルオロエチレン粉末とを含み、
前記シリコーン基油は、
25℃における動粘度が50〜900mm2/sであり、
25℃における動粘度が1〜300mm2/sの低粘度シリコーン油と、25℃における動粘度が700〜2000mm2/sの高粘度シリコーン油とを含み、
前記高粘度シリコーン油の含有量が前記低粘度シリコーン油と前記高粘度シリコーン油との合計質量に対して40〜90質量%であり、
前記層状構造の化合物粉末と前記ポリテトラフルオロエチレン粉末との質量比は、10:90〜60:40であるコントロールケーブル用グリース組成物。
【請求項2】
前記インナーケーブルの前記外周面の単位面積当たりの前記コントロールケーブル用グリース組成物の塗布量が45g/m2以上220g/m2以下である請求項1に記載のコントロールケーブル用グリース組成物。
【請求項3】
前記アウターケーシングの前記内周面がポリテトラフルオロエチレンで形成されてなるコントロールケーブルに用いられる請求項1または2に記載のコントロールケーブル用グリース組成物。
【請求項4】
前記層状構造の化合物粉末は、黒鉛粉末および窒化ホウ素粉末のうち少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載のコントロールケーブル用グリース組成物。
【請求項5】
前記増ちょう剤は、鱗片状粒子のリチウム石けん系増ちょう剤である請求項1〜4のいずれかに記載のコントロールケーブル用グリース組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のコントロールケーブル用グリース組成物が前記インナーケーブルの前記外周面および前記アウターケーシングの前記内周面に塗布されてなるコントロールケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−255094(P2012−255094A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129047(P2011−129047)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(398053147)コスモ石油ルブリカンツ株式会社 (123)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】