説明

コンニャク改質剤、並びに改質コンニャク及びその製造方法

【課題】コンニャクの通常の食感を損なわずに、高温で処理しても硬くならないとともに、離水し難く、さらに調味料などが染み込み易くすることが可能なコンニャク改質剤、並びに改質コンニャク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コンニャク粉からコンニャクを作る際にコンニャク粉とともに水に添加されるコンニャク改質剤であって、高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムを主成分とすることを特徴とするコンニャク改質剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンニャクの食感を改質可能なコンニャク改質剤、並びに食感が改質された改質コンニャク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンニャクは、通常コンニャク粉を水に添加して混練し、これに石灰(水酸化カルシウム)などのアルカリ性物質を加えた後、成型し、次いで加熱してゲル化することによって製造することができる。ところで、コンニャクの冷凍耐性を向上させるなどの理由で、コンニャクを改質することが行なわれており、そのコンニャクの改質剤として、デンプンやガム質などが用いられている(特許文献1及び2)。
【0003】
【特許文献1】特公昭61−166378号公報
【特許文献2】特開平7−23722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたものは、デンプンやガム質によってコンニャクの食感を損ねるという問題がある。一方、通常製造されるコンニャクは、調理の際に煮込むなど高温の状態にすると、食感が硬くなるという問題がある。また、常温で放置したり加熱したりすると、離水して縮んでしまうという問題がある。さらに、通常のコンニャクは、調味料などの染み込みが悪く、調理に時間が要するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、コンニャクの通常の食感を損なわずに、高温で処理しても硬くならないとともに、離水し難く、さらに調味料などが染み込み易くすることが可能なコンニャク改質剤、並びに改質コンニャク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、コンニャクを作製する際に、高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムをコンニャク粉とともに水に添加させることによって、コンニャクの通常の食感を損なわずに、高温で処理しても硬くならないとともに、離水し難く、さらに調味料などが染み込み易くすることを実現できることを見出した。すなわち、本発明は、コンニャク粉からコンニャクを作る際にコンニャク粉とともに水に添加されるコンニャク改質剤であって、高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムを主成分とすることを特徴とするコンニャク改質剤である。
【0007】
また、本発明は、高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムをコンニャク粉とともに水に添加させて作製された改質コンニャクであり、さらに、本発明は、高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムをコンニャク粉とともに水に添加する工程を備えたことを特徴とする改質コンニャクの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、コンニャクの通常の食感を損なわずに、高温で処理しても硬くならないとともに、離水し難く、さらに調味料などが染み込み易くすることが可能なコンニャク改質剤、並びに改質コンニャク及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るコンニャク改質剤、並びに改質コンニャク及びその製造方法において、コンニャク粉と改質キサンタンガムは、1:0.01〜2の割合で配合されていることが好ましく、特に1:0.05〜0.5の割合で配合されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る改質コンニャクの製造方法は、コンニャク粉とともに高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムを水に添加する工程の後は、通常のコンニャクの製造工程が行なわれる。すなわち、その後、混練し、これに石灰(水酸化カルシウム)などのアルカリ性物質を加えた後、成型し、次いで加熱してゲル化することによって、改質コンニャクを製造することができる。
【0011】
本発明に係るコンニャク改質剤、並びに改質コンニャク及びその製造方法において、高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムとは、吸水量が10g/g以上に処理されたものをいい、例えば特開2003−192703号公報に記載されたように処理されたキサンタンガムをいう。この改質キサンタンガムは、水に吸水膨潤するが、水に不溶の特性を有するように調製されていることが好ましい。すなわち、改質キサンタンガムは、吸水能力以上の水、例えば500倍の水に分散されたときに、可溶して均一な水溶液状態となることは好ましくなく、可溶せず、吸水膨潤部分と水のみの部分が不均一な状態で混合するよう調製されていることが好ましい。
【0012】
さらに、前記改質キサンタンガムは、加熱処理されたキサンタンガムであることが好ましく、50℃以上200℃以下で加熱処理させたものであることが好ましく、特に90℃以上120℃以下の範囲で加熱処理させたものであることが好ましい。この場合、加熱処理時間は、0.5〜200時間、特に4〜48時間であることが好ましい。また、加熱処理された熱量がキサンタンガム粉末1gあたり80〜10000J、特に200〜4000Jであることが好ましい。
【0013】
またさらに、前記改質キサンタンガムは、溶媒中で加熱処理されていることが好ましく、前記溶媒には、少なくとも水が含まれていることが好ましい。この場合、キサンタンガムと水の割合が1:0.02〜4で加熱処理させたものであることが好ましい。また、水を含む混合溶媒の場合、他の溶媒がキサンタンガムに対して貧溶媒であれば、キサンタンガムに対する水の割合を任意に設定することができる。キサンタンガムに対する貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン、n−プロパノール、イソプロパノールなどがある。水とこれら貧溶媒との混合溶媒により、原料キサンタンガムが容易に水に溶解してしまうことを阻害することができる。例えば、水とイソプロピルアルコールの等重量の混合溶媒をキサンタンガムに対し10倍量加えて還流下で加熱処理することにより、改質キサンタンガムを得ることができる。
【0014】
さらに、水を含まない溶媒中で加熱処理することによっても改質キサンタンガムを得ることができる。これら溶媒としては、上述した貧溶媒の他に、n−ブタノール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール等の炭素数1〜6のアルカノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルカンジオール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)等のエチレングリコールのモノもしくはジ低級アルキル(C=1〜4、特に1〜2)エーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールのモノもしくはジ低級アルキル(C=1〜4、特に1〜2)エーテル等の他、植物油脂、動物油脂、脂肪酸、脂肪酸とグリセリン等のモノ、ジ、トリエステル等の各種油脂類等がある。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明に係るコンニャク改質剤の実施例について説明する。先ず、粉末状態のキサンタンガム(ケルトロール、CPケルコ社製)1kgを90℃で48時間加熱処理することによって、本発明に係るコンニャク改質剤の実施例1を作製した。
【実施例2】
【0016】
次に、粉末状態のキサンタンガム(ケルトロール、CPケルコ社製)1kgを110℃で10時間加熱処理することによって、本発明に係るコンニャク改質剤の実施例2を作製した。
【実施例3】
【0017】
次に、粉末状態のキサンタンガム(ケルトロール、CPケルコ社製)1kgを80%のエタノール2kgに分散し、還流器を使用して80℃で150時間加熱処理し、その後ろ過してエタノールを分離後、乾燥して粉末状態とすることによって、本発明に係るコンニャク改質剤の実施例3を作製した。
【0018】
実験例1
次に、実施例1乃至3に係るコンニャク改質剤1.0gを200倍吸水して膨潤しても、破裂しない袋の大きさのティーパック袋に入れて、20℃の500mLの水に1時間浸漬して吸水率を調べた。その結果を表1に示す。表1に示すように実施例1乃至3に係るコンニャク改質剤が高吸水性キサンタンガムから構成されていることが分かる。
【0019】
【表1】

【0020】
実験例2
次に、表2に示す配合でコンニャク粉及び実施例1に係るコンニャク改質剤を水1000gに混ぜて撹拌し、これに少量の水に分散された水酸化カルシウムを加えて、さらに撹拌し、450gずつ成型し、その後90℃で1時間加熱処理することによって、改質コンニャク1乃至3を作製した。また、同様に、表2に示す配合で比較コンニャク1乃至3を作製した。
【0021】
【表2】

【0022】
これら改質コンニャク1乃至3、並びに比較コンニャク1乃至3を24時間放置後、レオメーター(サン科学社製)を用いて、10℃、25℃及び80℃それぞれの強度及び破断距離を測定した。また、改質コンニャク1乃至3、並びに比較コンニャク1乃至3の450g中からの離水量を成型容器からコンニャクを取り出し、残った水の量を計ることによって測定した。これらの結果を表3に示す。
【0023】
【表3】

【0024】
表3に示すように、改質コンニャク1乃至3は、比較コンニャク1乃至3に比べて、温度ごとの物性の変化が少なく、弾力性を有する。また、離水が少なく歩留まりが向上した。さらに、比較コンニャク2のように通常のキサンタンガムを少量添加しただけでは、比較コンニャクと物性の差がほとんどなかった。
【0025】
実験例3
次に、改質コンニャク1乃至3、並びに比較コンニャク1乃至3について、味の染み込みの程度を調べた。味の染み込みの程度は、先ず、改質コンニャク1乃至3、並びに比較コンニャク1乃至3を3cm×6cm×2cmに切断し、それを醤油20%、砂糖20%及び水60%の溶液に浸漬して6時間放置し、その後、改質コンニャクなどを真中から切断し、醤油色素が上部からどれだけ染み込んだかを測定することによって行なった。その結果を表4に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
表4に示すように、改質コンニャク1乃至3は、比較コンニャク1乃至3に比して、醤油色素の染み込みが良く、味の染み込みが良好であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンニャク粉からコンニャクを作る際にコンニャク粉とともに水に添加されるコンニャク改質剤であって、高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムを主成分とすることを特徴とするコンニャク改質剤。
【請求項2】
前記改質キサンタンガムは、水に吸水膨潤するが、水に不溶の特性を有するキサンタンガムであることを特徴とする請求項1記載のコンニャク改質剤。
【請求項3】
前記改質キサンタンガムは、加熱処理されたキサンタンガムであることを特徴とする請求項1又は2記載のコンニャク改質剤。
【請求項4】
高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムをコンニャク粉とともに水に添加させて作製された改質コンニャク。
【請求項5】
前記改質キサンタンガムは、水に吸水膨潤するが、水に不溶の特性を有するキサンタンガムであることを特徴とする請求項4記載の改質コンニャク。
【請求項6】
前記改質キサンタンガムは、加熱処理されたキサンタンガムであることを特徴とする請求項4又は5記載の改質コンニャク。
【請求項7】
高吸水性ポリマーに加工された改質キサンタンガムをコンニャク粉とともに水に添加する工程を備えたことを特徴とする改質コンニャクの製造方法。
【請求項8】
前記改質キサンタンガムは、水に吸水膨潤するが、水に不溶の特性を有するキサンタンガムであることを特徴とする請求項7記載の改質コンニャクの製造方法。
【請求項9】
前記改質キサンタンガムは、加熱処理されたキサンタンガムであることを特徴とする請求項7又は8記載の改質コンニャクの製造方法。