コンバインの刈取搬送部
【課題】中央分草杆による中央穀稈の株割りを防止し、分草杆から穀稈引起し装置に円滑に穀稈を供給できるものとして、刈取作業の能率を高める。
【解決手段】刈取搬送部(5)における左右の分草杆(6a,6b)の内側後方に左右の穀稈引起し装置(7,7)を設け、該左右の穀稈引起し装置(7,7)の後側下方中央部には左右の穀稈集送搬送装置(10,10)を設け、中央分草杆(6c)の先端位置を左右の引起しラグ(7a,7a)先端部の各移動軌跡の中心位置(C)から所定間隔だけ左右一側にずらして配置する。
【解決手段】刈取搬送部(5)における左右の分草杆(6a,6b)の内側後方に左右の穀稈引起し装置(7,7)を設け、該左右の穀稈引起し装置(7,7)の後側下方中央部には左右の穀稈集送搬送装置(10,10)を設け、中央分草杆(6c)の先端位置を左右の引起しラグ(7a,7a)先端部の各移動軌跡の中心位置(C)から所定間隔だけ左右一側にずらして配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取搬送部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2条刈りのコンバインの刈取搬送部において、左右の分草杆を設けて中央分草杆を廃止し、左右の分草杆の内側に所定間隔隔てて後上り傾斜状に左右の穀稈引起し装置を配設し、左右の穀稈引起し装置の下方部中央には左右両側から後側ほど幅の狭くなる穀稈搬送経路が形成されるように左右の根元搬送装置を配置し、左右の根元搬送装置の後部上方から幅の狭い穀稈搬送通路と略左右同じ幅の左右補助搬送装置を前方に向けて延出し、中央部前側寄りの停滞しがちな穀稈を左右両側から掻き込みながら後方へ搬送するようにしたものは、公知である。(特許文献1)。
【0003】
また、左右の穀稈引起し装置を機体の前後方向中心線に対して左右対称状に配置し、左右の穀稈引起し装置の左右の引起しラグの先端部が互いに接近し後上り傾斜状に移動する際には、左右の引起しラグの先端接近部位が機体の前後方向中心線に沿って移動し、中央分草杆の分草先端部を機体の前後方向中心線に沿うように配置したものは公知である。
【特許文献1】特開2003−210022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、2条刈りコンバインで少し無理をしながら3条穀稈の刈取作業をすると、中央分草杆が中央の穀稈株に割り込むように作用し、穀稈の刈取作用が乱れ搬送穀稈に乱れが生じるという不具合が発生する。本発明は、左右の穀稈引起し装置の引起しラグの移動軌跡に対して中央分草杆を所定間隔左右に偏位して配置することにより、このような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、刈取搬送部(5)の左右方向両端部に左右の分草杆(6a,6b)を夫々設け、刈取搬送部(5)の左右方向中央部には中央分草杆(6c)を設け、前記左右の分草杆(6a,6b)の内側後方に所定間隔を隔てて後上り傾斜状に左右の穀稈引起し装置(7,7)を設け、該左右の穀稈引起し装置(7,7)の後側下方中央部には左右両側から後側ほど幅の狭くなる穀稈掻込搬送経路が形成されるように左右の穀稈集送搬送装置(10,10)を設け、前記左右の穀稈引起し装置(7,7)の各引起しラグ(7a,7a)を下部側では左右両側から中央寄りに回動し、次いで先端部が互いに接近した状態で上方に移動する構成とし、前記中央分草杆(6c)の先端位置を前記左右の引起しラグ(7a,7a)先端部の各移動軌跡の中心位置(C)から所定間隔だけ左右一側にずらして配置したことを特徴とするコンバインの刈取搬送部とする。
【0006】
前記構成によると、左右の分草杆6a,6bと、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから左右一側にずれた中央分草杆6cにより穀稈は分草され、次いで、分草穀稈は左右の穀稈引起し装置7,7の左右の引起しラグ7a,7aにより、下部側では左右両側から中央寄りに掻き込まれ、次いで、左右の引起しラグ7a,7aの互いに接近している先端部が左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cに沿って後側上方に強制に引き起こされる。次いで、引き起こされて刈り取られた穀稈は左右の穀稈集送搬送装置10,10により左右中央部に向けて搬送される。また、中央分草杆6cの先端位置を、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから例えば左側に所定間隔ずらして配置することにより、2条刈用の刈取搬送部5でありながら3条の穀稈が導入されても、中央穀稈の株割りを回避しながら分草することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、中央分草杆6cの先端位置を左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから例えば左側に所定間隔ずらして配置することにより、2条刈用の刈取搬送部5でありながら3条の穀稈が導入された場合でも、穀稈の株割りを回避しながら分草し、円滑に引き起こして刈り取ることができ、コンバインの刈取作業の能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、図1乃至図3基づき本発明を具備するコンバインの全体構成について説明する。 図1にはコンバインの全体側面図、図2には全体平面図、図3には正面図が図示されている。
【0009】
コンバインの走行車台1の下方には左右走行クローラ2,2を配設し、走行車台1上の右側前部に操縦部3を、左側前部に脱穀部4を搭載し、走行車台1の前側部には刈取搬送部5を昇降自在に設けている。この刈取搬送部5には、複数の分草杆6,…、穀稈引起し装置7、…、刈刃装置8、穀稈掻込搬送装置(図示省略)、穀稈集送搬送装置10、穀稈搬送装置11等が設けられている。
【0010】
前記構成により、コンバイン1の回転各部を駆動し刈取作業を開始すると、走行クローラ2,2が回転してコンバイン1は走行を開始し、圃場の穀稈は刈取搬送部5の前側部の分草杆6,…により穀稈条列毎に分草されながら穀稈引起し装置7,…に案内され、引起しラグ7a,…により引き起される。引起された穀稈は刈刃装置8で刈り取られ、穀稈掻込搬送装置(図示省略)、穀稈集送搬送装置10及び穀稈搬送装置11により後方に搬送され、脱穀部4のフィードチエン4aに引き継がれ脱穀される。
【0011】
次に、図4について説明する。
刈取搬送部5の前側部には左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設け、これら分草杆6a,6b,6cの後方には後側上方へ傾斜移動しながら強制的に穀稈を引き起こす左右の引起しラグ7a,…,…を備えた左右の穀稈引起し装置7,7を設けている。この左右穀稈引起し装置7,7の前側下部では、左右の引起しラグ7a,…が左右両側から中央寄りに回動して左右の穀稈を掻き込み、次いで、左右の引起しラグ7a,7aの先端部を互いに接近しながら後側上方に移動し、穀稈を引き起こすように構成している。また、左右の穀稈引起し装置7,7の下方中央部には、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃装置8と、左右両側から中央よりに後側ほど幅の狭くなるように穀稈掻込搬送経路が形成される左右穀稈集送搬送装置10,10を設けている。
【0012】
また、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に分草杆6,…を設けるにあたり、分草幅の広い左の分草杆6a,右の分草杆6bの分草先端を、左右の穀稈引起し装置7,7の前方左右両側に位置するようにして、左右の穀稈を左右の穀稈引起し装置7,7に案内し、また、分草幅の狭い中央分草杆6cの分草作用先端位置を左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから所定間隔だけ左右一側にずらして配置している。
【0013】
また、図4(A)に示すように、中央分草杆6cを、前後方向に沿う分草支持杆6c1と幅狭の分草体6c2により構成している。右の分草杆6bの分草支持杆6b1の先端部に左右調節手段16を設け、分草体6b2の分草先端位置を左右に調節可能に構成している。
【0014】
また、図5に示すように、中央分草杆6cの分草支持杆6c1を平面視で前側左傾斜状に延出し、その先端に幅狭の分草体6c2を取り付けるようにより構成してもよい。
また、図6に示すように、中央分草杆6cを構成するにあたり、分草支持杆6c1の後側部を平面視で前後方向に沿わせ、次いで、その前側部を前側左傾斜状に延出し、その先端部に幅狭の分草体6c2を取り付ける構成としてもよい。このように構成すると、横刈取作業時において、幅狭の分草体6c2及び分草支持杆6c1の前側左傾斜状の部位で未刈取穀稈の株割りをしても、分草支持杆6c1の前後方向に沿った後側部では株割りを回避し、穀稈の押し倒しを少なくすることができる。
【0015】
従来装置は、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cの前方延長線上に配置していた。
このような構成では、手植や田植機の操作ミスで、穀稈の条間隔が通常の条間隔である例えば30cmから外れると、コンバインでの中割り刈取作業や、刈取跡の穀稈株に右の分草杆を合わせて行なう通常刈取作業において、中央分草杆6cの分草作用先端位置が未刈り穀稈の株割りをするという不具合が発生していた。
【0016】
しかし、前記構成によると、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから所定間隔だけ左右一側にずらして配置することにより、穀稈の株割りを回避することができる。また、2条刈取型コンバインにより、3条刈取作業をする場合にも、中央の穀稈条列への中央分草杆6cによる株割りを回避し、穀稈を円滑に分草し引起こすことができる。
【0017】
また、図7に示すように構成してもよい。左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設けるにあたり、左の分草杆6aと中央分草杆6cの先端分草位置の間隔に対して、右の分草杆6bと中央分草杆6cの先端分草作用位置との間隔を約1.5倍に構成し、且つ、左の分草杆6aと中央分草杆6cの先端分草作用位置の間隔を、通常の条間隔である例えば30cmを越えるように構成する。なお、Pは未刈り穀稈を示す。
【0018】
前記構成によると、条間隔が例えば通常間隔の30cmに対して不規則な圃場の3条刈取作業において、未刈り穀稈が分草杆6a,6b,6cの先端分草作用位置による株割りを少なくすることができる。
【0019】
また、図8に示すように構成してもよい。中央分草杆6cの分草先端位置を左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから所定間隔だけ左側にずらして配置し、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設けたものにおいて、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから右側部を、後右下がり傾斜状の幅広案内面に構成し、左側部を幅狭の後左下がり傾斜状の案内面に構成する。
【0020】
前記構成によると、中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草作用位置で分草された穀稈を、右側の左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cに向かって後右下がり傾斜状の幅広案内面により案内し、左右の穀稈引起し装置7,7の引起しラグ7a,7a先端部に確実に案内することができ、引起しラグ7a,7aへの穀稈の取り込みが円滑になり、穀稈の引起し性能を向上させることができる。
【0021】
また、図9に示すように構成してもよい。左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cの延長線から例えば左側に所定間隔ずらした部位に、中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草作用位置を配置し、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6bを設けたものにおいて、中央分草杆6cの分草体6c2を幅狭に構成し、分草体6c2の右側部に穀稈を右斜め後方に案内する右側ガイド杆17を設ける。そして、この右側ガイド杆17の前側部を平面視で中心位置Cの延長線に向かう後右下がり傾斜状に構成し、後側部を前後方向に沿う案内面を形成している。前記構成によると、図8の実施形態と同様の効果が期待できる。
【0022】
また、図10のように構成してもよい。中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草作用位置を、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cの延長線から例えば左側に所定間隔ずらして配置し、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設けたものにおいて、中央分草杆6cの分草体6c2及び左の分草杆6aの分草体6a2の先端分草作用位置を左右調節手段16,16で左右に調節可能に構成する。また、右の分草杆6bの先端分草作用位置を左右調節可能に構成し、操縦部3からの遠隔操作手段(図示省略)により調節操作し、分草幅を広狭に調節可能に構成する。
【0023】
前記構成によると、条間隔が通常条間でない不規則な圃場の条刈取作業、あるいは、中割り刈り作業、回り刈り作業において、左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cの先端分草作用位置を左右に調節することにより、株割りを回避することができる。また、走行クローラ2,2の幅が標準型、湿田型で変化しても、左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cの先端分草位置を左右に調節することにより、走行クローラ2,2の泥寄せ位置が変化しても円滑に対応でき、穀稈への泥の付着を回避することができる。
【0024】
また、中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草位置を左右調節手段16により左右に調節可能に支持するにあたり、図11及び図12に示すように構成してもよい。中央分草杆6cの前後方向に沿う分草支持杆6c1の後側基部を、後方の刈取フレーム部(図示省略)に取り付け、分草支持杆6c1の前側端部を平面視で左右の引起しラグ7a,7aが互いに接近して後側上方へ回動する穀稈合流部位下方まで延出している。分草支持杆6c1の前側端部に左右調節手段16の前側取付孔16a,後側取付孔16bを設ける。また、分草体6c2の後部には左右調節手段16の前側枢支連結孔16cと後側左右長孔16dを設けている。
【0025】
そして、分草支持杆6c1側の前側取付孔16a,後側取付孔16bに、分草体6c2側の前側枢支連結孔16c,後側左右長孔16dを合致させ、更に、中央掻込ガイド杆18の前後取付部を合致させ、2本のボルト・ナット(図示省略)により、分草体6c2及び中央掻込ガイド杆18を左右回動調節自在に共締めして取り付けている。
【0026】
前記構成によると、中央掻込ガイド杆18の取付構成を簡単化しながら、分草体6c2で分草された穀稈を後続の中央掻込ガイド杆18の左右ガイド部18a,18aにより左右の引起しラグ7a,7aに掻き込み案内し、分草穀稈を確実に引き起こすことができる。
【0027】
次に、図13について説明する。刈取搬送部5の前側部には刈刃フレーム20を左右に沿わせて設け、その前側に刈刃装置8を取り付け、刈刃フレーム20に内装している伝動装置(図示省略)により、刈刃装置8を駆動している。また、連結ステー19には、左の分草杆6aの分草支持杆6a1の後側端部及び中央分草杆6cの分草支持杆6c1の後側端部を取り付け、刈刃フレーム20に連結ステー19をボルト・ナットで左右に調節自在に取り付けている。
【0028】
前記構成によると、左の分草杆6a及び中央分草杆6cの所定間隔を維持しながら一挙に左右の位置調節をすることができ、調節操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】(A)刈取搬送部の正面図 (B)刈取搬送部の平面図
【図5】刈取搬送部の平面図
【図6】刈取搬送部の平面図
【図7】刈取搬送部の平面図
【図8】(A)刈取搬送部の正面図 (B)刈取搬送部の平面図
【図9】(A)刈取搬送部の正面図 (B)刈取搬送部の平面図
【図10】刈取搬送部の平面図
【図11】刈取搬送部の平面図
【図12】刈取搬送部の平面図
【図13】刈取搬送部の平面図及び正面図
【符号の説明】
【0030】
2 走行クローラ
5 刈取搬送部
6a 左の分草杆
6b 右の分草杆
6c 中央分草杆
7 穀稈引起し装置
7a 引起しラグ
10 左右の穀稈集送搬送装置
C 左右の引起しラグ先端部の各移動軌跡の中心位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取搬送部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2条刈りのコンバインの刈取搬送部において、左右の分草杆を設けて中央分草杆を廃止し、左右の分草杆の内側に所定間隔隔てて後上り傾斜状に左右の穀稈引起し装置を配設し、左右の穀稈引起し装置の下方部中央には左右両側から後側ほど幅の狭くなる穀稈搬送経路が形成されるように左右の根元搬送装置を配置し、左右の根元搬送装置の後部上方から幅の狭い穀稈搬送通路と略左右同じ幅の左右補助搬送装置を前方に向けて延出し、中央部前側寄りの停滞しがちな穀稈を左右両側から掻き込みながら後方へ搬送するようにしたものは、公知である。(特許文献1)。
【0003】
また、左右の穀稈引起し装置を機体の前後方向中心線に対して左右対称状に配置し、左右の穀稈引起し装置の左右の引起しラグの先端部が互いに接近し後上り傾斜状に移動する際には、左右の引起しラグの先端接近部位が機体の前後方向中心線に沿って移動し、中央分草杆の分草先端部を機体の前後方向中心線に沿うように配置したものは公知である。
【特許文献1】特開2003−210022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、2条刈りコンバインで少し無理をしながら3条穀稈の刈取作業をすると、中央分草杆が中央の穀稈株に割り込むように作用し、穀稈の刈取作用が乱れ搬送穀稈に乱れが生じるという不具合が発生する。本発明は、左右の穀稈引起し装置の引起しラグの移動軌跡に対して中央分草杆を所定間隔左右に偏位して配置することにより、このような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、刈取搬送部(5)の左右方向両端部に左右の分草杆(6a,6b)を夫々設け、刈取搬送部(5)の左右方向中央部には中央分草杆(6c)を設け、前記左右の分草杆(6a,6b)の内側後方に所定間隔を隔てて後上り傾斜状に左右の穀稈引起し装置(7,7)を設け、該左右の穀稈引起し装置(7,7)の後側下方中央部には左右両側から後側ほど幅の狭くなる穀稈掻込搬送経路が形成されるように左右の穀稈集送搬送装置(10,10)を設け、前記左右の穀稈引起し装置(7,7)の各引起しラグ(7a,7a)を下部側では左右両側から中央寄りに回動し、次いで先端部が互いに接近した状態で上方に移動する構成とし、前記中央分草杆(6c)の先端位置を前記左右の引起しラグ(7a,7a)先端部の各移動軌跡の中心位置(C)から所定間隔だけ左右一側にずらして配置したことを特徴とするコンバインの刈取搬送部とする。
【0006】
前記構成によると、左右の分草杆6a,6bと、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから左右一側にずれた中央分草杆6cにより穀稈は分草され、次いで、分草穀稈は左右の穀稈引起し装置7,7の左右の引起しラグ7a,7aにより、下部側では左右両側から中央寄りに掻き込まれ、次いで、左右の引起しラグ7a,7aの互いに接近している先端部が左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cに沿って後側上方に強制に引き起こされる。次いで、引き起こされて刈り取られた穀稈は左右の穀稈集送搬送装置10,10により左右中央部に向けて搬送される。また、中央分草杆6cの先端位置を、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから例えば左側に所定間隔ずらして配置することにより、2条刈用の刈取搬送部5でありながら3条の穀稈が導入されても、中央穀稈の株割りを回避しながら分草することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、中央分草杆6cの先端位置を左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから例えば左側に所定間隔ずらして配置することにより、2条刈用の刈取搬送部5でありながら3条の穀稈が導入された場合でも、穀稈の株割りを回避しながら分草し、円滑に引き起こして刈り取ることができ、コンバインの刈取作業の能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、図1乃至図3基づき本発明を具備するコンバインの全体構成について説明する。 図1にはコンバインの全体側面図、図2には全体平面図、図3には正面図が図示されている。
【0009】
コンバインの走行車台1の下方には左右走行クローラ2,2を配設し、走行車台1上の右側前部に操縦部3を、左側前部に脱穀部4を搭載し、走行車台1の前側部には刈取搬送部5を昇降自在に設けている。この刈取搬送部5には、複数の分草杆6,…、穀稈引起し装置7、…、刈刃装置8、穀稈掻込搬送装置(図示省略)、穀稈集送搬送装置10、穀稈搬送装置11等が設けられている。
【0010】
前記構成により、コンバイン1の回転各部を駆動し刈取作業を開始すると、走行クローラ2,2が回転してコンバイン1は走行を開始し、圃場の穀稈は刈取搬送部5の前側部の分草杆6,…により穀稈条列毎に分草されながら穀稈引起し装置7,…に案内され、引起しラグ7a,…により引き起される。引起された穀稈は刈刃装置8で刈り取られ、穀稈掻込搬送装置(図示省略)、穀稈集送搬送装置10及び穀稈搬送装置11により後方に搬送され、脱穀部4のフィードチエン4aに引き継がれ脱穀される。
【0011】
次に、図4について説明する。
刈取搬送部5の前側部には左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設け、これら分草杆6a,6b,6cの後方には後側上方へ傾斜移動しながら強制的に穀稈を引き起こす左右の引起しラグ7a,…,…を備えた左右の穀稈引起し装置7,7を設けている。この左右穀稈引起し装置7,7の前側下部では、左右の引起しラグ7a,…が左右両側から中央寄りに回動して左右の穀稈を掻き込み、次いで、左右の引起しラグ7a,7aの先端部を互いに接近しながら後側上方に移動し、穀稈を引き起こすように構成している。また、左右の穀稈引起し装置7,7の下方中央部には、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃装置8と、左右両側から中央よりに後側ほど幅の狭くなるように穀稈掻込搬送経路が形成される左右穀稈集送搬送装置10,10を設けている。
【0012】
また、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に分草杆6,…を設けるにあたり、分草幅の広い左の分草杆6a,右の分草杆6bの分草先端を、左右の穀稈引起し装置7,7の前方左右両側に位置するようにして、左右の穀稈を左右の穀稈引起し装置7,7に案内し、また、分草幅の狭い中央分草杆6cの分草作用先端位置を左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから所定間隔だけ左右一側にずらして配置している。
【0013】
また、図4(A)に示すように、中央分草杆6cを、前後方向に沿う分草支持杆6c1と幅狭の分草体6c2により構成している。右の分草杆6bの分草支持杆6b1の先端部に左右調節手段16を設け、分草体6b2の分草先端位置を左右に調節可能に構成している。
【0014】
また、図5に示すように、中央分草杆6cの分草支持杆6c1を平面視で前側左傾斜状に延出し、その先端に幅狭の分草体6c2を取り付けるようにより構成してもよい。
また、図6に示すように、中央分草杆6cを構成するにあたり、分草支持杆6c1の後側部を平面視で前後方向に沿わせ、次いで、その前側部を前側左傾斜状に延出し、その先端部に幅狭の分草体6c2を取り付ける構成としてもよい。このように構成すると、横刈取作業時において、幅狭の分草体6c2及び分草支持杆6c1の前側左傾斜状の部位で未刈取穀稈の株割りをしても、分草支持杆6c1の前後方向に沿った後側部では株割りを回避し、穀稈の押し倒しを少なくすることができる。
【0015】
従来装置は、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cの前方延長線上に配置していた。
このような構成では、手植や田植機の操作ミスで、穀稈の条間隔が通常の条間隔である例えば30cmから外れると、コンバインでの中割り刈取作業や、刈取跡の穀稈株に右の分草杆を合わせて行なう通常刈取作業において、中央分草杆6cの分草作用先端位置が未刈り穀稈の株割りをするという不具合が発生していた。
【0016】
しかし、前記構成によると、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから所定間隔だけ左右一側にずらして配置することにより、穀稈の株割りを回避することができる。また、2条刈取型コンバインにより、3条刈取作業をする場合にも、中央の穀稈条列への中央分草杆6cによる株割りを回避し、穀稈を円滑に分草し引起こすことができる。
【0017】
また、図7に示すように構成してもよい。左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設けるにあたり、左の分草杆6aと中央分草杆6cの先端分草位置の間隔に対して、右の分草杆6bと中央分草杆6cの先端分草作用位置との間隔を約1.5倍に構成し、且つ、左の分草杆6aと中央分草杆6cの先端分草作用位置の間隔を、通常の条間隔である例えば30cmを越えるように構成する。なお、Pは未刈り穀稈を示す。
【0018】
前記構成によると、条間隔が例えば通常間隔の30cmに対して不規則な圃場の3条刈取作業において、未刈り穀稈が分草杆6a,6b,6cの先端分草作用位置による株割りを少なくすることができる。
【0019】
また、図8に示すように構成してもよい。中央分草杆6cの分草先端位置を左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから所定間隔だけ左側にずらして配置し、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設けたものにおいて、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cから右側部を、後右下がり傾斜状の幅広案内面に構成し、左側部を幅狭の後左下がり傾斜状の案内面に構成する。
【0020】
前記構成によると、中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草作用位置で分草された穀稈を、右側の左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cに向かって後右下がり傾斜状の幅広案内面により案内し、左右の穀稈引起し装置7,7の引起しラグ7a,7a先端部に確実に案内することができ、引起しラグ7a,7aへの穀稈の取り込みが円滑になり、穀稈の引起し性能を向上させることができる。
【0021】
また、図9に示すように構成してもよい。左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cの延長線から例えば左側に所定間隔ずらした部位に、中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草作用位置を配置し、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6bを設けたものにおいて、中央分草杆6cの分草体6c2を幅狭に構成し、分草体6c2の右側部に穀稈を右斜め後方に案内する右側ガイド杆17を設ける。そして、この右側ガイド杆17の前側部を平面視で中心位置Cの延長線に向かう後右下がり傾斜状に構成し、後側部を前後方向に沿う案内面を形成している。前記構成によると、図8の実施形態と同様の効果が期待できる。
【0022】
また、図10のように構成してもよい。中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草作用位置を、左右の引起しラグ7a,7a先端部の各移動軌跡の中心位置Cの延長線から例えば左側に所定間隔ずらして配置し、左右の穀稈引起し装置7,7の前方に左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cを設けたものにおいて、中央分草杆6cの分草体6c2及び左の分草杆6aの分草体6a2の先端分草作用位置を左右調節手段16,16で左右に調節可能に構成する。また、右の分草杆6bの先端分草作用位置を左右調節可能に構成し、操縦部3からの遠隔操作手段(図示省略)により調節操作し、分草幅を広狭に調節可能に構成する。
【0023】
前記構成によると、条間隔が通常条間でない不規則な圃場の条刈取作業、あるいは、中割り刈り作業、回り刈り作業において、左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cの先端分草作用位置を左右に調節することにより、株割りを回避することができる。また、走行クローラ2,2の幅が標準型、湿田型で変化しても、左の分草杆6a,右の分草杆6b及び中央分草杆6cの先端分草位置を左右に調節することにより、走行クローラ2,2の泥寄せ位置が変化しても円滑に対応でき、穀稈への泥の付着を回避することができる。
【0024】
また、中央分草杆6cの分草体6c2の先端分草位置を左右調節手段16により左右に調節可能に支持するにあたり、図11及び図12に示すように構成してもよい。中央分草杆6cの前後方向に沿う分草支持杆6c1の後側基部を、後方の刈取フレーム部(図示省略)に取り付け、分草支持杆6c1の前側端部を平面視で左右の引起しラグ7a,7aが互いに接近して後側上方へ回動する穀稈合流部位下方まで延出している。分草支持杆6c1の前側端部に左右調節手段16の前側取付孔16a,後側取付孔16bを設ける。また、分草体6c2の後部には左右調節手段16の前側枢支連結孔16cと後側左右長孔16dを設けている。
【0025】
そして、分草支持杆6c1側の前側取付孔16a,後側取付孔16bに、分草体6c2側の前側枢支連結孔16c,後側左右長孔16dを合致させ、更に、中央掻込ガイド杆18の前後取付部を合致させ、2本のボルト・ナット(図示省略)により、分草体6c2及び中央掻込ガイド杆18を左右回動調節自在に共締めして取り付けている。
【0026】
前記構成によると、中央掻込ガイド杆18の取付構成を簡単化しながら、分草体6c2で分草された穀稈を後続の中央掻込ガイド杆18の左右ガイド部18a,18aにより左右の引起しラグ7a,7aに掻き込み案内し、分草穀稈を確実に引き起こすことができる。
【0027】
次に、図13について説明する。刈取搬送部5の前側部には刈刃フレーム20を左右に沿わせて設け、その前側に刈刃装置8を取り付け、刈刃フレーム20に内装している伝動装置(図示省略)により、刈刃装置8を駆動している。また、連結ステー19には、左の分草杆6aの分草支持杆6a1の後側端部及び中央分草杆6cの分草支持杆6c1の後側端部を取り付け、刈刃フレーム20に連結ステー19をボルト・ナットで左右に調節自在に取り付けている。
【0028】
前記構成によると、左の分草杆6a及び中央分草杆6cの所定間隔を維持しながら一挙に左右の位置調節をすることができ、調節操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】(A)刈取搬送部の正面図 (B)刈取搬送部の平面図
【図5】刈取搬送部の平面図
【図6】刈取搬送部の平面図
【図7】刈取搬送部の平面図
【図8】(A)刈取搬送部の正面図 (B)刈取搬送部の平面図
【図9】(A)刈取搬送部の正面図 (B)刈取搬送部の平面図
【図10】刈取搬送部の平面図
【図11】刈取搬送部の平面図
【図12】刈取搬送部の平面図
【図13】刈取搬送部の平面図及び正面図
【符号の説明】
【0030】
2 走行クローラ
5 刈取搬送部
6a 左の分草杆
6b 右の分草杆
6c 中央分草杆
7 穀稈引起し装置
7a 引起しラグ
10 左右の穀稈集送搬送装置
C 左右の引起しラグ先端部の各移動軌跡の中心位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取搬送部(5)の左右方向両端部に左右の分草杆(6a,6b)を夫々設け、刈取搬送部(5)の左右方向中央部には中央分草杆(6c)を設け、前記左右の分草杆(6a,6b)の内側後方に所定間隔を隔てて後上り傾斜状に左右の穀稈引起し装置(7,7)を設け、該左右の穀稈引起し装置(7,7)の後側下方中央部には左右両側から後側ほど幅の狭くなる穀稈掻込搬送経路が形成されるように左右の穀稈集送搬送装置(10,10)を設け、前記左右の穀稈引起し装置(7,7)の各引起しラグ(7a,7a)を下部側では左右両側から中央寄りに回動し、次いで先端部が互いに接近した状態で上方に移動する構成とし、前記中央分草杆(6c)の先端位置を前記左右の引起しラグ(7a,7a)先端部の各移動軌跡の中心位置(C)から所定間隔だけ左右一側にずらして配置したことを特徴とするコンバインの刈取搬送部。
【請求項1】
刈取搬送部(5)の左右方向両端部に左右の分草杆(6a,6b)を夫々設け、刈取搬送部(5)の左右方向中央部には中央分草杆(6c)を設け、前記左右の分草杆(6a,6b)の内側後方に所定間隔を隔てて後上り傾斜状に左右の穀稈引起し装置(7,7)を設け、該左右の穀稈引起し装置(7,7)の後側下方中央部には左右両側から後側ほど幅の狭くなる穀稈掻込搬送経路が形成されるように左右の穀稈集送搬送装置(10,10)を設け、前記左右の穀稈引起し装置(7,7)の各引起しラグ(7a,7a)を下部側では左右両側から中央寄りに回動し、次いで先端部が互いに接近した状態で上方に移動する構成とし、前記中央分草杆(6c)の先端位置を前記左右の引起しラグ(7a,7a)先端部の各移動軌跡の中心位置(C)から所定間隔だけ左右一側にずらして配置したことを特徴とするコンバインの刈取搬送部。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−201428(P2009−201428A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48130(P2008−48130)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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