説明

コンバインの刈取装置

【課題】本願発明の課題は、設定された刈取条数以上の穀稈をも安定した姿勢で整然と掻き寄せ案内し、確実に引起すことができるコンバインを提供することである。
【解決手段】引起し装置(15L,15R)の下部には、下向き突出姿勢の引起しラグ(29)が前記引起し経路(Y2)の下端側に向けて左右方向に移動して穀稈の株元を掻き寄せる所定幅の掻寄せ経路(Y1)を形成すると共に、該掻寄せ経路(Y1)は、所定間隔をおいて配置した左右のガイドローラ(28a,28b)に複数の引起しラグ(29)を取付けた無端チェン(30)を巻回して形成し、前記左右のガイドローラ(28a,28b)の軸間距離であるローラピッチ(P1)に対して、無端チェン(30)に対する引起しラグ(29)の取付間隔であるラグピッチ(P2)を略同間隔に設定するか、又は狭く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分草後の穀稈を引き起す一対の引起し装置を左右に対向配置し、これらの引起し装置に備えた引起しラグにより、3つの分草具のうちの対応するものの間に導入された穀稈を刈取搬送部の中央側に向けて掻き込み案内する掻込案内領域と掻き込み案内された穀稈を引き起す引起し領域とを形成して、引起し範囲の拡大を図るように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、特許文献1に記載された技術は、左側又は右側の引起し装置の掻込案内領域により、1条から最大2条の穀稈を引き起すことができるように構成したものであるが、かかる構成の掻込案内領域では、2つのガイドローラピッチに対してラグの取付ピッチが大きいため、1つのラグしか作用せず、掻込作用が不安定で穀稈の姿勢に乱れを生じる虞がある。
本願発明の課題は、上記問題を解消し、設定された刈取条数以上の穀稈をも安定した姿勢で整然と掻き寄せ案内し、確実に引起すことができるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1記載の発明は、刈取装置(4)の左右両側端部に配置した左右の引起装置(15L,15R)の内側に、左右の分草具(14L,14R)によって分草された穀稈を下方から上方へ横向き突出姿勢で移動する引起しラグ(29)によって引起す引起し経路(Y2)を形成し、引起装置(15L,15R)の下部側には、多数の引起しラグ(29)を取り付けた無端チェン(30)を巻き掛ける左右のガイドローラ(28a,28b)を軸支することで、下向き突出姿勢の引起しラグ(29)が引起し経路(Y2)の下端側に向けて左右方向に移動して穀稈の株元を掻き寄せる所定幅の掻寄せ経路(Y1)を形成し、前記左右のガイドローラ(28a,28b)の軸間距離(P1)に対して無端チェン(30)に対する引起しラグ(29)の取付間隔(P2)を略同間隔に設定するか、又は左右のガイドローラ(28a,28b)の軸間距離(P1)に対して無端チェン(30)に対する引起しラグ(29)の取付間隔(P2)を狭く設定したことを特徴とするコンバインの刈取装置とする。
左右のガイドローラ(28a,28b)の軸間距離(P1)に対して、無端チェン(30)に対する引起しラグ(29)の取付間隔(P2)を略同間隔に設定するか、又は、狭く設定したことで、掻寄せ経路(Y1)においては、穀稈に複数の引起ラグ(29)を作用させる。
従って、左右の分草具(14L,14R)と、これに隣接する中分草具(14C)との間に夫々2条分の穀稈が導入されて掻寄せ経路(Y1)を移動中の引起ラグ(29)で掻寄せている穀稈が引起ラグ(29)から離脱することがあっても、この引起ラグ(29)に後続して移動している他の引起ラグ(29)によって穀稈を受け止めることができるので、穀稈を安定した姿勢で整然と掻き寄せ、引起すことができる。
請求項2記載の発明は、前記左右の引起装置(15L,15R)で引起された穀稈を後方の刈刃装置(16)側に向けて掻込搬送する掻込搬送装置(17)を設け、該掻込装置(17)の前部に刈取装置(4)の左右両側端側から中央側に向けて穀稈の株元を掻寄せる横送り経路(Ya,Yb)を形成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置とする。
上記構成によると、引起しラグ(29)による掻き寄せ作用と、掻込装置(17)による横送り作用が共同して行え、刈取条数が増えても中央側の引起し経路(Y2)まで確実に係止搬送することができる。
請求項3記載の発明は、前記横送り経路(Ya,Yb)を、引起装置(15)の掻寄せ経路(Y1)を移動する引起しラグ(29)よりも高い位置に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取装置とする。
上記構成によると、掻き寄せ経路(Y1)中の引起しラグ(29)は穀稈の株元側を係止し、横送り経路(Ya),(Yb)中の掻込ラグ(37)はそれよりも上部の穀稈穂先側を係止保持して掻き寄せ搬送するので、穀稈の安定した姿勢が確保され、中央側の引起し経路内に整然と掻き寄せ搬送することができる。
請求項4記載の発明は、前記横送り経路(Ya,Yb)は、所定間隔をおいて配置した左右2つのプーリ(41a,41b)間に複数のラグ(37)を備える掻込ベルト(36)を巻回して形成し、該左右のプーリ(41a,41b)間のプーリ間ピッチ(L1)を掻込ラグ(37,37)間のラグピッチ(L2)よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバインの刈取装置とする。
上記構成によると、掻き寄せ経路(Y1)中における引起しラグ(29)の作用と同様に、横送り経路(Ya,Yb)中にあっても、複数の掻込ラグ(37,37)によって掻き寄せるので、穀稈は安定よく支持された状態にあり、中央側に寄せながら整然と掻き込み搬送することができる。
請求項5記載の発明は、前記掻込ベルト(36)の上側に、横送り経路(Ya,Yb)と平行に移動する横搬送チェン(43)を設け、該横搬送チェン(43)には複数の係止爪(42)を設けたことを特徴とする請求項4記載のコンバインの刈取装置とする。
上記構成によると、引起し装置(15)の引起しラグ(29)と掻込ベルト(36)の掻込ラグ(37)と横搬送チェン(43)の係止爪(42)との三者によって掻き寄せ搬送することができるので、更に安定した姿勢を保持でき、所定位置まで整然と確実に掻き寄せ搬送することができる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、掻寄せ経路(Y1)中で複数の引起ラグ(29)が穀稈に作用することになるので、左右の分草具(14L,14R)の間に穀稈が導入されて掻寄せ経路(Y1)を移動中の引起ラグ(29)で掻寄せている穀稈が引起ラグ(29)から離脱することがあっても、この引起ラグ(29)に後続して移動している他の引起ラグ(29)によって穀稈を受け止めることができ、穀稈を安定した姿勢で整然と掻き寄せ、引起すことができる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、引起しラグ(29)による掻き寄せ作用と、掻込搬送装置(17)による横送り作用が共同して行え、刈取条数が増えても中央側の引起し経路(Y2)まで確実に搬送することができる。
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、穀稈の株元側と穂先側の2点支持によって係止搬送するので、穀稈を安定した姿勢に確保でき、中央側の引起し経路(Y2)内に整然と掻き寄せ搬送することができる。
請求項4記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明による効果に加えて、横送り経路(Ya,Yb)中にあっては、複数の掻込ラグによって穀稈は一層安定よく支持された状態となり、中央側に寄せながら整然と掻き込み搬送することができる。
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の発明による効果に加えて、引起装置(15L,15R)の引起しラグ(29)と掻込ベルト(36)の掻込ラグ(37)と横搬送チェン(43)の係止爪(42)との三者によって掻き寄せ搬送することができるので、更に安定した姿勢を保持でき、所定位置まで整然と確実に掻き寄せ搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの平面図
【図2】コンバインの側面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】刈取部の要部の正面図
【図5】刈取部の要部の側面図
【図6】刈取部の要部の平面図
【図7】刈取部の要部の平面図
【図8】刈取部の要部の正面図
【図9】同上要部の正面図
【図10】同上要部の正面図
【図11】同上要部の正面図
【図12】引起し装置の一部の正面図
【図13】引起し装置の一部の正面図
【図14】刈取部の要部の側面図
【図15】刈取部の要部の平面図
【図16】刈取部の要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1乃至図3は、コンバインの全体図を示すものであり、この走行車体1には、走行ミッションMを介して駆動される左右一対の走行クローラ2L,2Rを備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)3の前方部に刈取装置(刈取部)4を設置し,刈取装置4の横側部には、運転席5と、運転席前側のフロント操作ボックス6と、運転席左横側のサイド操作ボックス7とからなる運転操作部33を備え、更に、その運転操作部33の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
フロント操作ボックス6の右側には、左右方向の操作で機体の進行方向を操向制御し、前後方向の操作で刈取装置4を昇降制御するパワステレバー8が設置されている。運転席5左側のサイド操作ボックス7上には、刈取装置4及び脱穀部3への回転動力を断続操作する刈脱クラッチレバー9、図示せぬ無段変速装置を変速して走行速度を変更する変速レバー(HSTレバー)10、副変速レバー11等が配置されている。
刈取装置4は、後支持フレーム31で支持され、この後支持フレーム31基端部(後端部)を、走行車体1に設けた不図示の支持部に回動自在に軸支している。そして、後支持フレーム31の中間部と走行車体1の間に設けた刈取昇降シリンダSの油圧駆動による伸縮により、刈取装置4が上下昇降される。
後支持フレーム31の先端部(前端部)には、左右方向の横支持フレーム32の左右中間部を連結しており、横支持フレーム32からコンバインの機体前方に向けて、分草支持フレーム21を、左右所定間隔をおいて複数配置している。
刈取装置4には、立毛する穀稈を左右に分草する左右の分草具14L,14R及び中央の中分草具14Cと、分草後の穀稈を引き起す左右一対の穀稈引起装置15L,15R(15)と、引起し後の穀稈を刈り取るバリカン式刈刃装置16と、引起し圏内に導入された穀稈を刈刃前方から後方に向けて掻込搬送する掻込ベルやスターホイル等の掻込搬送装置17、掻込搬送後の穀稈を脱穀部に揚上搬送して供給する揚上搬送装置18等を装備している。
なお、前記各分草具14は分草支持フレーム21の先端に取り付けられている。
左右の分草具14L,14Rは、先端側が左内側方又は右外側方に向けて回動するよう分草支持フレーム21の途中部に設けた上下方向の縦軸22回りに回動自在に枢着している。
図8に示すように、通常の2条刈作業を行う場合は、左右の分草具14L,14Rは閉状態にあって、左右の分草具14L,14Rと中分草具14Cとの間に1条ずつの穀稈が導入され、左右合わせて2条分の穀稈が刈刃側に分草案内されるようになっている。
左右分草具14L,14Rのうち、左分草具14Lを外側方に開いた状態(開状態)では、中分草具14Cと左分草具14Lとの間に2条の穀稈が導入され、中分草具14Cと右分草具14Rとの間に導入される1条の穀稈と合わせて3条の穀稈が導入され(図9参照)、3条刈作業が可能となる。
また、左右分草具14L,14Rのうち、右分草具14Rを外側方に開いた状態(開状態)は、中分草具14Cと右分草具14Rとの間に2条の穀稈が導入され、中分草具14Cと閉状態の左分草具14Lとの間に導入される1条の穀稈と合わせて3条の穀稈が導入され(図10参照)、上記と同様に3条刈作業ができるようになっている。
そして、図11に示すように、左右の分草具14L,14Rを外側方に開いた時には、左分草具14Lと中分草具14C及び右分草具14Rと中分草具14Cとの間にはそれぞれ2条ずつの穀稈が導入され、左右合わせて4条分の穀稈が導入されるようになっており、4条刈作業が可能となる。
しかして、変速レバー10を前方に傾動させて、走行クローラ2L,2Rによって機体を前進させて刈取収穫作業を行うのであるが、コンバインの刈取収穫作業では、圃場を上方から視て半時計回りに回りながら周辺部から中心部に向かって穀稈を刈り取る。
2条刈りの作業(図8)では、右分草具14Rを既に刈り取った穀稈(既刈穀稈)の切り株Cの位置に合せると、左右分草具14L,14Rの間に2条分の穀稈が導入される間隔に設定しているので、操縦者は、運転席5の前方にある右分草具14Rの位置を切り株Cの上を通過するように前記パワステレバー8で機体を操向しながら前進すればよく、刈取作業における機体の操作を容易となる。
3条刈りの作業のうち、図9に示す作業では、左分草具14Lを圃場に植立する穀稈Kがこの左分草具14Lよりも内側に入るようにする。この作業形態は、主に畦際の穀稈を刈取る際に用いられ、左分草具14Lの先端が機体の左最外側に近づくことで、畦際の穀稈を刈取る際に周囲の障害物に機体を接触させることなく作業を行うことができ、周囲をコンクリート壁で囲まれた都市部の圃場などでは極めて有効である。
図10に示す3条刈り作業は、コンバインの機体の左右両側に未刈り穀稈を位置させて行う所謂中割り作業に好適であり、走行クローラ2Rの外側端との距離が大きい右分草具14Rの先端を穀稈Kのすぐ右側に位置させて刈取ることで、この穀稈Kよりも機体進行方向右側に位置する穀稈と走行クローラ2Rとのクリアランスを確保して刈取作業を行なうため、未刈穀稈を走行クローラ2R,2Lによって踏みつけることなく中割り作業を行なうことができる。
4条刈りの作業(図11)では、二条枠の穀稈引起装置15L,15Rで4条分の穀稈を刈取ることができ、刈取作業の効率を飛躍的に高めることができる。特に、前述の中割り作業を行なうにあたり効果的であり、刈取作業中に機体の方向転換などを行なう際にも、走行クローラ2R,2Lによって穀稈を踏みつけることなく作業を行なうことができる。
また、上述のように2条刈りから最大4条刈りまでに左右分草具14L,14Rの間隔を変更できることで、作業条件が良好な場合(穀稈が立毛状態であり、雨水や泥土等が付着していない場合や、穀稈の穂先の穀粒が比較的少ない場合)には、4条分の穀稈を刈取装置4に導入することで、圃場内を移動する距離や、機体の旋回を行なう回数を減少させ、能率的な作業を行なうことができる。
また、穀稈が倒伏していたり、濡れていたり、穀粒が多く、刈取搬送や脱穀の負荷が高いことが予想される作業条件においては、刈取装置4に導入する穀稈の量を2条分に制限することで、刈取装置4や脱穀装置3の負荷を軽減し安定した作業を行うことができる。
左右の分草具14L,14Rとこれらを遠隔操作する操作レバー13L,13Rとは、操作ワイヤ23等を介して連動連結され、各操作レバー13L,13Rの手前側(前方から後方)への引き操作により、左分草具14Lを左外側方へ、右分草具14Rを右外側方へ回動操作するように連動構成している。
左右の穀稈引起装置15L,15Rは、左右対称形状に構成された引起しケース25と、ケース内上部に架設された駆動スプロケット26、テンションスプロケット27及びケース内下部に左右所定間隔をあけて架設された左右ガイドローラ28a,28bと、それらにわたって掛け回した引起ラグ29付無端チェン30とから成り立っている。左右引起装置15L,15Rの始端側には、引起ラグ29によって導入された穀稈を外側から内側方の引起し経路Y2側に向けて掻き寄せる横方向所定幅の掻寄せ経路Y1が設けられている。この掻寄せ経路Y1は、所定間隔をあけて配置した左右のガイドローラ28a,28b間において構成され、そして、この左右ガイドローラ28a,28b間のローラ間ピッチP1を引起ラグ29,29間のラグピッチP2と略同等に設定することで、この掻寄せ経路Y1中において、複数の引起ラグ29,29が下向き作用姿勢で横移動するようになっている。なお、引起し経路Y2では引起ラグ29が横向き姿勢で上昇移行する。
すなわち、引起ラグ29が、掻寄せ経路Y1の終端位置近傍を移動中、或いは、掻寄せ経路Y1から引起し経路Y2に移行する過程で円弧軌跡を描いて移動中に、穀稈が引起ラグ29に係合した状態から離脱しても、掻寄せ経路Y1中に他の引起ラグ29が存在することで穀稈の受け止めができ、引起装置15L,15Rでの穀稈の取りこぼしを防止することができる。
従って、上記構成の掻寄せ経路Y1によれば、片側に2条の穀稈が導入されても引起し経路Y2内へ確実に掻き寄せることができる。
なお、前記ラグピッチP2は、ローラ間ピッチP1にガイドローラ28aの外周長の4分の1を加えた長さよりも小さくし、望ましくは、ローラ間ピッチP1にガイドローラ28aの外周長の8分の1を加えた長さよりも小さくする。このようにローラ間ピッチP1とラグピッチP2とを設定することで、引起装置15L,15Rにおける穀稈の取りこぼしを防いで良好に引起すことができるのである。
また、図4に示したように、前記左右分草具14L,14Rを、外側に開いた状態と内側に閉じた状態とのいずれの状態においても、左右分草具14L,14Rの正面視における内側端部が、引起ラグ29の移動軌跡と重合する構成としている。
引起ラグ29は、非引起作用側において無端チェン30に沿う倒伏姿勢で移動し、ガイドローラ28aの側方に至ると、このガイドローラ28aに当該引起ラグ29の基部が当接して起立姿勢となるが、左右分草具14L,14Rの正面視における内側端部と、起立姿勢の引起ラグ29の軌跡を重合させたことで、左右分草具14L,14Rにより分草された穀稈を起立姿勢となった引起ラグ29に円滑に引継ぐことができる。
そして、左右分草具14L,14Rを内側に閉じた状態では、ガイドローラ28aの軸心位置と左右方向で近接した状態となるので、左右分草具14L,14Rと引起ラグ29との間に、この引起ラグ29が作用しない領域が殆ど無く、分草案内された刈取対象の穀稈を確実に引起し経路Y2に向けて掻き寄せることができ、穀稈の取りこぼしを可及的に減少させることができる。
なお、左右分草具14L,14Rを内側に閉じた際の当該左右分草具14L,14Rの先端位置は、ガイドローラ28aの軸心位置と左右方向で同一の位置から、ガイドローラ28aの外周側端部から引起ラグ29の突出長さの半分程度までの距離の範囲にあることが望ましく、この範囲内に配置することで、引起ラグ29の移動により穀稈に作用する力のうち、穀稈を下方へ押付ける方向への分力よりも、引起し経路Y2方向へ掻き込む方向への分力が大きくなり、穀稈への掻き込み作用を向上させることができる。
また、前記引起しラグ29は、起立姿勢においてチェンの移動方向に略直交する引起し作用部29aと、起立姿勢においてチェンレールに摺接する摺動部29bとからなるが、従来は摺動部29aの摺動面と引起し作用側面とが角形状(図12参照)に形成されていた。ラグピッチ間とラグの長さが略同一の場合であると、ラグ先端と、ラグ基端側における摺動部の角形部がキンクを起してしまう問題があった。本例では、図13に示すように、摺動部29aの角形部を斜めにカットして傾斜部29tを設けることで、キンク位置にラグが収納されてもキンクすることがなく、ラグ長さを変えることなく使用が可能となる。なお、傾斜部29tは、引起しケース25のラグ突出側端部25eからラグ枢支軸34までの傾斜部とする。
掻込搬送装置17は、掻込スターホイル35や掻込ベルト36等からなるが、掻込ベルト36は、引起し圏内に導入された穀稈を所定間隔置きに突設した掻込ラグ37により係止保持して後方の刈刃16側に向け、且つこれより後方側まで掻込搬送するものであり、掻込スターホイル軸38に架設された駆動プーリ40と、掻込ケース39の前端部に左右所定間隔をあけて架設された左右プーリ41a,41bとにわたって掛け回され、左右引起し装置15L,15Rの背部に配置されている。
左右の掻込ベルト36,36の始端側には、左右側から中央側に向けて係止搬送する横送り経路Ya,Ybが形成され、横送り経路Ya,Ybは、所定間隔をあけて配置した左右のプーリ41a,41b間において構成され、そして、この左右プーリ41a,41b間のプーリ間ピッチL1を掻込ラグ37,37間のラグピッチL2より大きくすることで、この横送り経路Ya,Yb中において、必ず複数の掻込ラグ37,37が横移動する構成になっている。また、この横送り経路Ya,Ybは、引起し装置15の掻寄せ経路Y1と並行に対応位置し、且つ、引起しラグによる作用位置よりも穀稈の上部側(穂先側)を係止搬送するようになっている。
また、掻込ベルトの横送り経路Ya,Ybに対応する上側(又は下側)には、係止爪42付き横搬送チェン43(図6参照)が設けられてあり、この横搬送チェン43の係止爪42と引起し装置の引起しラグ29と掻込ベルトの掻込ラグ37との三者によって掻き寄せ搬送することができるようになっている。
揚上搬送装置18は、始端側が終端側の横軸芯を回動支点として上下方向に位置変更可能に構成されてあり、穀稈の長短に応じて扱室内への供給深さが任意に調節できるようになっている。
図14乃至図16に示すのは、刈取装置4を機体に対して左右に移動可能な構成としたコンバインである。
刈取装置4は、横方向の支持軸Xを支点として前側部位を上下に回動自在に機体に支持される後支持フレーム31いる。この後支持フレーム31の先端部には横支持フレーム32の左右中間部が支持され、横支持フレーム32から前方へ向けて分草支持フレーム21を複数突出させている。後支持フレーム31と横支持フレーム32との間には、後支持フレーム31側のスプロケット(図示省略)と横支持フレーム32側のスプロケット(図示省略)と、この2つのスプロケットに巻き掛けたチェン(図示省略)とを内装する連結ギアケース51を設けており、連結ギアケース51は、後支持フレーム31と横支持フレーム32に対して、2つのスプロケットの回転軸で回転自在な構成である。そして、後支持フレーム31の中間部には横連結フレーム52の基端部を固着し、この横連結フレーム52の先端部に第一リンク軸52aで揺動リンクアーム53の一端を取付ける。揺動リンクアーム53の他端は前記横支持フレーム32に第二リンク軸53aで取付ける。
しかして、刈取装置4は、連結ギアケース51、揺動リンクアーム53、横連結フレーム52及び横支持フレーム32からなる4点リンク機構により、後支持フレーム31に対して左右に位置変更可能に構成される。そして前述の揚上搬送装置18は、刈取装置4の左右移動に追従して先端部が左右に変位する構成としている。
具体的には、右側引起し装置15Rの引起しケース25の上端背部位置から下方の掻込搬送装置17の支持部材49間にわたってガイドレール45が立設され、前記揚上搬送装置18の支持フレーム50の前端部位から前方に突設した支持ステー46には、ガイドレール45に沿わせて案内するための長穴状の案内溝47を形成したガイド部材48が一体的に設けられている。そして、このガイド部材48を前記ガイドレール45に挿通することにより、揚上搬送装置18の始端部がガイドレール45に沿って規制案内されるようになっている。なお、ガイドレール45の下端部は支持部材49に回動自在に取り付けられ、ガイドレール45の上端部は引起し装置15の背面に設けた案内パイプ54に摺動自在に挿入されている。
刈取装置4を左右に位置変更すると、引起し装置15や掻込搬送装置17と、揚上搬送装置18との位置関係が変化するが、ガイドレール45が案内パイプ54に摺動し、融通することで、揚上搬送装置18の上下回動が円滑となり、揺動搬送装置18やガイドレール45の破損を防止することができ、適正に脱穀装置へ供給する穀稈の供給深さを調節できることで、脱穀処理効率の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0009】
4 刈取装置(刈取部)
14L 左分草具
14R 右分草具
14C 中分草具
15 穀稈引起し装置
16 刈刃装置
28 ガイドローラ
29 引起しラグ
30 無端チェン
36 掻込ベルト
37 掻込ラグ
41 プーリ
42 係止爪
43 横搬送チェン
Y1 穀稈掻き寄せ経路
Y2 穀稈引起し経路
Ya 掻込横送り経路
Yb 掻込横送り経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置(4)の左右両側端部に配置した左右の引起装置(15L,15R)の内側に、左右の分草具(14L,14R)によって分草された穀稈を下方から上方へ横向き突出姿勢で移動する引起しラグ(29)によって引起す引起し経路(Y2)を形成し、引起装置(15L,15R)の下部側には、多数の引起しラグ(29)を取り付けた無端チェン(30)を巻き掛ける左右のガイドローラ(28a,28b)を軸支することで、下向き突出姿勢の引起しラグ(29)が引起し経路(Y2)の下端側に向けて左右方向に移動して穀稈の株元を掻き寄せる所定幅の掻寄せ経路(Y1)を形成し、前記左右のガイドローラ(28a,28b)の軸間距離(P1)に対して無端チェン(30)に対する引起しラグ(29)の取付間隔(P2)を略同間隔に設定するか、又は左右のガイドローラ(28a,28b)の軸間距離(P1)に対して無端チェン(30)に対する引起しラグ(29)の取付間隔(P2)を狭く設定したことを特徴とするコンバインの刈取装置。
【請求項2】
前記左右の引起装置(15L,15R)で引起された穀稈を後方の刈刃装置(16)側に向けて掻込搬送する掻込搬送装置(17)を設け、該掻込装置(17)の前部に刈取装置(4)の左右両側端側から中央側に向けて穀稈の株元を掻寄せる横送り経路(Ya,Yb)を形成したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置。
【請求項3】
前記横送り経路(Ya,Yb)を、引起装置(15)の掻寄せ経路(Y1)を移動する引起しラグ(29)よりも高い位置に配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取装置。
【請求項4】
前記横送り経路(Ya,Yb)は、所定間隔をおいて配置した左右2つのプーリ(41a,41b)間に複数のラグ(37)を備える掻込ベルト(36)を巻回して形成し、該左右のプーリ(41a,41b)間のプーリ間ピッチ(L1)を掻込ラグ(37,37)間のラグピッチ(L2)よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバインの刈取装置。
【請求項5】
前記掻込ベルト(36)の上側に、横送り経路(Ya,Yb)と平行に移動する横搬送チェン(43)を設け、該横搬送チェン(43)には複数の係止爪(42)を設けたことを特徴とする請求項4記載のコンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−249549(P2012−249549A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122804(P2011−122804)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】