説明

コンバインの刈取装置

【課題】穀稈引起し時の穀稈に対する掻送り作用範囲を拡大して、穀稈の掻込搬送を円滑化する。
【解決手段】左右の引起し装置(15L,15R)の引起し作用域内に導入された穀稈を後方の刈刃装置(16)側に向けて掻込搬送する掻込ラグ(37)付の掻込ベルト(36)の始端部に、駆動回転する掻送りスターホイル(43)を設ける。また、掻送りスターホイル(43)を、掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻込プーリ(41)の下側に、該掻込プーリ(41)と同軸で軸架する。また、掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻込プーリ(41)と掻送りスターホイル(43)とを一体成型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右引起し装置の背部から引き起し時の穀稈の株元を係止して後方の刈刃中央側に向けて掻込搬送する掻込ベルトからなる掻込搬送機構を平面視で左右ハの字型に配置構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のものでは、引起し装置の掻寄せ案内領域に対応した掻込ベルトによる充分な掻寄せ案内領域が得られない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1記載の発明は、左右の引起し装置(15L,15R)の引起し作用域内に導入された穀稈を後方の刈刃装置(16)側に向けて掻込搬送する掻込ラグ(37)付の掻込ベルト(36)の始端部に、駆動回転する掻送りスターホイル(43)を設けたコンバインの刈取装置とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記掻送りスターホイル(43)を、掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻込プーリ(41)の下側に、該掻込プーリ(41)と同軸で軸架した請求項1記載のコンバインの刈取装置とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻込プーリ(41)と掻送りスターホイル(43)とを一体成型した請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取装置とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記左右の引起装置(15L,15R)には、左右の分草具(14L,14R)によって分草された穀稈を横向き突出姿勢で下方から上方へ移動する引起しラグ(29)によって引起す引起し経路(Y2)と、該引起し装置(15L,15R)の下部において下向き突出姿勢の引起しラグ(29)が前記引起し経路(Y2)の下端側に向けて左右方向に移動して穀稈の株元を掻き寄せる掻寄せ経路(Y1)を形成し、前記掻送りスターホイル(43)は、前記掻寄せ経路(Y1)を形成するべく引起装置(15L,15R)の下部に配設した複数のガイドローラ(28a,28b)のうちの外側のガイドローラ(28b)の後方に配置した請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバインの刈取装置とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、前記掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻送りスターホイル(43)の後部を、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込スターホイル(34)の前部に対して上下にオーバーラップさせた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの刈取装置とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、掻込ベルト(36)の始端に掻送りスターホイル(43)を設けることで、引起し時の穀稈に対する掻送り作用範囲が大きくとれて掻込搬送が適切に行える。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、穀稈の株元側は掻送りスターホイル(43)によって強制送りし、それより上部の穂先側は掻込ベルト(36)によって掻込搬送するので、掻込ベルト(36)より上側に掻送りスターホイル(43)を設ける場合のように穀稈の持ち回りがなく、安定した姿勢で整然と掻き寄せ搬送することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、掻込プーリ(41)と掻送りスターホイル(43)を一体成型することで、部品点数が低減し、安価に実現することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明による効果に加えて、掻送りスターホイル(43)は、引起し装置(15L,15R)の掻き寄せ経路(Y1)の外側から内側に向けて作用し、引起しラグ(29)によって掻き寄せられる穀稈の株元を早期に捕らえて掻き寄せ経路(Y1)に沿うように強制送りしてから後方に掻込搬送することができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明による効果に加えて、掻送りスターホイル(43)の後部と掻込スターホイル(34)の前部が上下にオーバーラップしているので、掻送りスターホイル(43)から掻込スターホイル(34)への引継ぎ搬送が円滑、良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】刈取部の要部の正面図
【図5】刈取部の要部の側断面図
【図6】掻込搬送装置の要部の平面図
【図7】掻込ベルト搬送機構の分解斜視図
【図8】刈取部の要部の正面図
【図9】同上要部の平面図
【図10】刈取部の要部の正面図
【図11】同上要部の平面図
【図12】同上要部の平面図
【図13】刈取部の要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1乃至図3は、コンバインの全体図を示すものであり、この走行車体1には、走行ミッションを介して駆動される左右一対の走行クローラ2L,2Rを備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)3の前方部に刈取装置(刈取部)4を設置し,刈取部4の横側部には、運転席5と、運転席前側のフロント操作ボックス6と、運転席左横側のサイド操作ボックス7とからなる運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0017】
フロント操作ボックス6の右側には、左右方向の操作で機体の進行方向を操向制御し、前後方向の操作で刈取装置4を昇降制御するパワステレバー8が設置されている。運転席5左側のサイド操作ボックス7上には、刈取部4及び脱穀部3への回転動力を断続操作する刈脱クラッチレバー9、図示せぬ無段変速装置を変速して走行速度を変更する変速レバー(HSTレバー)10、副変速レバー11等が配置されている。
【0018】
刈取部4は、後支持フレーム31で支持され、この後支持フレーム31基端部(後端部)を、走行車体1に設けた不図示の支持部に回動自在に軸支している。そして、後支持フレーム31の中間部と走行車体1の間に設けた刈取昇降シリンダSの油圧駆動による伸縮により、刈取部4が上下昇降される。
【0019】
後支持フレーム31の先端部(前端部)には、左右方向の横支持フレーム32の左右中間部を連結しており、横支持フレーム32からコンバインの機体前方に向けて、分草支持フレーム21を、左右所定間隔をおいて複数配置している。
【0020】
刈取部4には、立毛する穀稈を左右に分草する左右の分草具14L,14R及び中央の中分草具14Cと、分草後の穀稈を引き起す左右一対の穀稈引起装置15L,15R(15)と、引起し後の穀稈を刈り取るバリカン式刈刃装置16と、引起し域内に導入された穀稈を刈刃前方から後方に向けて掻込搬送する掻込ベルやスターホイル等の掻込搬送装置17、掻込搬送後の穀稈を脱穀部に揚上搬送して供給する揚上搬送装置18等を装備している。
【0021】
なお、前記各分草具14は分草支持フレーム21の先端に取り付けられている。
左右の分草具14L,14Rは、先端側が左内側方又は右外側方に向けて回動するよう分草支持フレーム21の途中部に設けた上下方向の縦軸22回りに回動自在に枢着している。
【0022】
通常の2条刈作業を行う場合は、左右の分草具14L,14Rは閉状態にあって、左右の分草具14L,14Rと中分草具14Cとの間に1条ずつの穀稈が導入され、左右合わせて2条分の穀稈が刈刃側に分草案内されるようになっている。
【0023】
左右分草具14L,14Rのうち、左分草具14Lを外側方に開いた状態(開状態)では、中分草具14Cと左分草具14Lとの間に2条の穀稈が導入され、中分草具14Cと右分草具14Rとの間に導入される1条の穀稈と合わせて3条の穀稈が導入され、3条刈作業が可能となる。
【0024】
また、左右分草具14L,14Rのうち、右分草具14Rを外側方に開いた状態(開状態)は、中分草具14Cと右分草具14Rとの間に2条の穀稈が導入され、中分草具14Cと閉状態の左分草具14Lとの間に導入される1条の穀稈と合わせて3条の穀稈が導入され、上記と同様に3条刈作業ができるようになっている。
【0025】
そして、左右の分草具14L,14Rを外側方に開いた時には、左分草具14Lと中分草具14C及び右分草具14Rと中分草具14Cとの間にはそれぞれ2条ずつの穀稈が導入され、左右合わせて4条分の穀稈が導入され、4条刈作業が行えるようになっている。
【0026】
左右の分草具14L,14Rとこれらを遠隔操作する操作レバー13L,13Rとは、操作ワイヤ等を介して連動連結され、各操作レバー13L,13Rの手前側(前方から後方)への引き操作により、左分草具14Lを左外側方へ、右分草具14Rを右外側方へ回動操作するように連動構成している。
【0027】
図4に示すように、左右の穀稈引起装置15L,15Rは、左右対称形状に構成された引起しケース25と、ケース内上部に架設された駆動スプロケット26、テンションスプロケット27及びケース内下部に左右所定間隔をあけて架設された左右ガイドローラ28a,28bと、それらにわたって掛け回した引起ラグ29付無端チェン30とから成り立っている。左右引起装置15L,15Rの始端側には、引起ラグ29によって導入された穀稈を外側から内側方の引起し経路Y2側に向けて掻き寄せる横方向所定幅の掻寄せ経路Y1が設けられている。この掻寄せ経路Y1は、所定間隔をあけて配置した左右のガイドローラ28a,28b間において構成され、そして、この左右ガイドローラ28a,28b間のローラ間ピッチを引起ラグ29,29間のラグピッチと略同等に設定することで、この掻寄せ経路Y1中において、複数の引起ラグ29,29が下向き作用姿勢で横移動するようになっている。なお、引起し経路Y2では引起ラグ29が横向き姿勢で上昇移行する。
【0028】
すなわち、引起ラグ29が、掻寄せ経路Y1の終端位置近傍を移動中、或いは、掻寄せ経路Y1から引起し経路Y2に移行する過程で円弧軌跡を描いて移動中に、穀稈が引起ラグ29に係合した状態から離脱しても、掻寄せ経路Y1中に他の引起ラグ29が存在することで穀稈の受け止めができ、引起装置15L,15Rでの穀稈の取りこぼしを防止することができる。
【0029】
従って、上記構成の掻寄せ経路Y1によれば、片側に2条の穀稈が導入されても引起し経路Y2内へ確実に掻き寄せることができる。
掻込搬送装置17は、刈刃上に対向配置された左右一対の掻込スターホイル34,34や掻込ベルト36等からなるが、掻込ベルト36は、引起し域内に導入された穀稈を所定間隔置きに突設した弾性変位可能な掻込ラグ37により係止保持して後方の刈刃16側に向け、且つこれより後方側まで掻込搬送するものであり、掻込スターホイル軸35に架設された掻込駆動プーリ40と、掻込ケース39の前端部にプーリ軸42によって架設された掻込プーリ41とにわたって掛け回され、左右引起し装置15L,15Rの背部に配置されている。
【0030】
左右の掻込ベルト36,36の始端側には、左右の引起し装置15L,15Rの掻き寄せ作用域内に導入された穀稈の株元を係止して外側から内側に向けて掻き送る掻送りスターホイル43が強制回転可能に軸支されている。
【0031】
掻送りスターホイル43は、掻込プーリ41の下側でプーリ軸42と同軸上に架設され、また、この掻送りスターホイル43と掻込プーリ41とは一体成形した構成としている。
【0032】
また、前記掻送りスターホイル43は、引起し装置の掻寄せ経路Y1の外側ガイドローラ28bの後方に配置し、掻寄せ経路Y1を移行する引起しラグ29にできるだけ接近位置させて掻寄せ送り作用が良好に行えるようにしている。掻送りスターホイル43の前端と掻込ベルト36の前端が側面視で略同一位置となるよう配置構成しておくと、直立姿勢又は前傾姿勢にある穀稈を両者で確実に係止保持して掻寄せ搬送することができる。
【0033】
掻込ベルト36始端の掻送りスターホイル43と刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込スターホイル39とは、その後部と前部とが上下にオーバーラップするように配置してあり、掻送りスターホイルから掻込スターホイルへの引継ぎ搬送が良好に行えるように構成している。
【0034】
図8及び図9に示すように、掻送りスターホイル43の非作用側外周部をサイドカバー44にて覆うことにより、穀稈の巻き付きを防止することができる。
また、図9に示すように、左右のガイド部材45L,45Rは、掻送りスターホイル43と掻込スターホイル34の歯底円の軌跡に沿った形状とすることで、稈の巻き込みを防止でき、搬送力の向上を図ることができる。
【0035】
なお、前記掻送りスターホイル43の回転数を掻込スターホイル34のそれよりも速くすることによって、掻寄せ時の穀稈の取り込みを敏速にすることができる。掻送りスターホイル43の回転速度は、掻込スターホイル速度と引起しラグ速度の略中間程度が良い。
【0036】
図10〜図12に示す実施例は、掻込ベルト36の始端に掻送りスターホイル43を設けたものにおいて、刈刃16を中央より分割したツイン刈刃16L,16Rとし、中央側が左右端側より後位となるようV型に配列した構成としている。これによると、刈刃の左右端側にて、中央側より先に切断するので、切断後の株元長さを揃えることができる。
【0037】
V型ツイン刈刃の中央凹部46を左右一対の掻込スターホイル34,34の噛合いラインと一致させた状態に配置構成している。そして、刈刃の駆動は、横支持フレーム32の刈刃ギヤ伝動ケースより動力を取り出し、ベベルギヤ機構47、クランク機構48を介して刈刃を往復動させるように連動構成している。
【0038】
V型ツイン刈刃の設定角度αと、掻込ベルトの作用ライン設定角度(又は掻送りスターホイルと掻込スターホイルの接線設定角度)βを略同じ角度に設定することで、株元の切断長さを均一化することができる。
【0039】
図13例のV型ツイン刈刃16L,16Rは、この刃先が進行方向に向うように配置することで、切断性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
14L 左分草具
14R 右分草具
14C 中分草具
15 穀稈引起し装置
16 刈刃装置
28 ガイドローラ
29 引起しラグ
34 掻込スターホイル
36 掻込ベルト
37 掻込ラグ
41 掻込プーリ
43 掻送りスターホイル
Y1 穀稈掻寄せ経路
Y2 穀稈引起し経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の引起し装置(15L,15R)の引起し作用域内に導入された穀稈を後方の刈刃装置(16)側に向けて掻込搬送する掻込ラグ(37)付の掻込ベルト(36)の始端部に、駆動回転する掻送りスターホイル(43)を設けたコンバインの刈取装置。
【請求項2】
前記掻送りスターホイル(43)を、掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻込プーリ(41)の下側に、該掻込プーリ(41)と同軸で軸架した請求項1記載のコンバインの刈取装置。
【請求項3】
前記掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻込プーリ(41)と掻送りスターホイル(43)とを一体成型した請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取装置。
【請求項4】
前記左右の引起装置(15L,15R)には、左右の分草具(14L,14R)によって分草された穀稈を横向き突出姿勢で下方から上方へ移動する引起しラグ(29)によって引起す引起し経路(Y2)と、該引起し装置(15L,15R)の下部において下向き突出姿勢の引起しラグ(29)が前記引起し経路(Y2)の下端側に向けて左右方向に移動して穀稈の株元を掻き寄せる掻寄せ経路(Y1)を形成し、前記掻送りスターホイル(43)は、前記掻寄せ経路(Y1)を形成するべく引起装置(15L,15R)の下部に配設した複数のガイドローラ(28a,28b)のうちの外側のガイドローラ(28b)の後方に配置した請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバインの刈取装置。
【請求項5】
前記掻込ベルト(36)の始端側を巻回する掻送りスターホイル(43)の後部を、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込スターホイル(34)の前部に対して上下にオーバーラップさせた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−27350(P2013−27350A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165529(P2011−165529)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】