説明

コンバインの刈取部

【課題】左右中央側3条分の穀稈を搬送する二つの上部搬送装置のうち、搬送経路が長い一方の上部搬送装置までの動力伝達経路を短く最適に構成し、駆動に必要な動力を低減して、穀稈をスムーズに搬送することができるコンバインの刈取部を提供することを目的とする。
【解決手段】動力を、機体本体より斜め前下方に延出する縦伝動軸412から、当該縦伝動軸412の前部より立設する中搬送伝動軸420を経由して、第二上部搬送装置320及び第三上部搬送装置330のうち搬送経路が長い上部搬送装置である第三上部搬送装置330に伝達する。また、第二掻込装置120の単一の掻込輪121と第三掻込装置130の左右一対の掻込輪131・132とを左右方向に噛合して並設し、動力を、前記中搬送伝動軸420を経由して、前記3つの掻込輪121・131・132のうち左右中央側の掻込輪131に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取部に関し、詳細には、刈取部の動力伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、7条刈りのコンバインの刈取部において、刈取部の動力伝達構造に関する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に示す技術においては、7条分の穀稈のうち左右中央側3条分の穀稈は、2条用の上部搬送装置(穂先搬送ラグ)と1条用の上部搬送装置とで、その穂先側が係止搬送される構造とされる。そして、前記2条用の上部搬送装置は、その動力が、縦伝動軸(刈取伝動軸)からこの縦伝動軸の中間部位に立設する伝動軸を経由して伝達される構造とされる。前記1条用の上部搬送装置は、その動力が、前記伝動軸から、この伝動軸と連結される伝動装置をさらに経由して伝達される構造とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−153437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すコンバインの刈取部においては、1条用の上部搬送装置は、極力後方位置まで延長する構成とされ、この上部搬送装置は、2条用の上部搬送装置と比較して、穀稈の搬送経路が長く構成された。したがって、1条用の上部搬送装置は、2条用の上部搬送装置と比較して、駆動に必要な動力が大きくなっていた。それにもかかわらず、1条用の上部搬送装置までの動力伝達経路は、2条用の上部搬送装置までの動力伝達経路よりも長く構成されていた。すなわち、駆動に必要な動力が大きい上部搬送装置の方が、動力伝達経路が長く構成されており、さらに動力を消費する構造となっていた。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、左右中央側3条分の穀稈を搬送する二つの上部搬送装置のうち、搬送経路が長い一方の上部搬送装置までの動力伝達構造を簡素化して、その動力伝達経路を短く最適に構成し、駆動に必要な動力を低減して、穀稈をスムーズに搬送することができるコンバインの刈取部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、引起装置と、掻込装置と、切断装置と、搬送装置と、を備えるコンバインの刈取部において、前記掻込装置は、右側2条分の穀稈を掻き込む第一掻込装置と、左右中央側3条分のうち片側1条分の穀稈を掻き込む第二掻込装置と、左右中央側3条分のうち残り2条分の穀稈を掻き込む第三掻込装置と、左側2条分の穀稈を掻き込む第四掻込装置と、を備え、前記第二掻込装置の単一の掻込輪と前記第三掻込装置の一対の掻込輪とを左右方向に噛合して並設し、前記搬送装置は、前記第一掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第一上部搬送装置と、前記第二掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第二上部搬送装置と、前記第三掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第三上部搬送装置と、前記第四掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第四上部搬送装置と、を備え、動力を、機体本体より斜め前下方に延出する縦伝動軸から、当該縦伝動軸の前部より立設する伝動軸を経由して、前記3つの掻込輪のうち左右中央側の掻込輪に伝達して、かつ、前記第二上部搬送装置及び前記第三上部搬送装置のうち搬送経路が長い上部搬送装置に伝達するものである。
【0008】
請求項2においては、前記第二上部搬送装置に、前記第一上部搬送装置で搬送中の穀稈を、穀稈の合流部まで案内する案内杆を設け、前記第三上部搬送装置に、前記第四上部搬送装置で搬送中の穀稈を、前記合流部まで案内する案内杆を設け、これら二つの案内杆を一体的に構成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、第二上部搬送装置及び第三上部搬送装置のうち搬送経路が長くて駆動に必要な動力が大きい上部搬送装置に対して、縦伝動軸から当該上部搬送装置までの動力伝達経路を短く構成することができる。これにより、駆動に必要な動力を低減することができ、当該上部搬送装置が適切に動作して、穀稈をスムーズに搬送することができる。また、縦伝動軸から第二掻込装置及び第三掻込装置までの動力伝達経路を短く構成することができる。これにより、駆動に必要な動力を低減することができて、第二掻込装置及び第三掻込装置が適切に動作し、穀稈をスムーズに掻き込むことができる。
【0011】
請求項2においては、一体的に構成された案内杆が支持杆の役目を兼ね、第二上部搬送装置及び第三上部搬送装置が、当該案内杆を介して相互に支持することとなる。これにより、第二上部搬送装置及び第三上部搬送装置のがたつきを抑制することができ、穀稈をスムーズに搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの全体側面図。
【図2】刈取部の側面図。
【図3】刈取部の下部搬送装置を示す平面図。
【図4】刈取部の上部搬送装置を示す平面図。
【図5】刈取部の動力伝達経路を示す図。
【図6】刈取部の一部断面側面図。
【図7】第二掻込装置及び第三掻込装置を示す平面図。
【図8】第二上部搬送装置及び第三上部搬送装置を示す平面図。
【図9】第二上部搬送装置及び第三上部搬送装置を示す一部断面平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係る7条刈りコンバイン1の全体構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、コンバイン1においては、走行部2が左右一対の走行クローラ3によって支持されている。圃場の穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部4が、走行部2の前部に昇降調節可能に装着されている。刈取部4により刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部5が、走行部2の左上部に配設されている。脱穀部5により脱穀された処理物を選別する選別部6が、走行部2の左下部に配設されている。選別部6により選別された穀粒を貯留する穀粒タンク7が、走行部2の右部に配設されている。穀粒タンク7に貯溜された穀粒を外部へ排出する排出オーガ8が、走行部2の右後部に配設されている。そして、前記各部を操作する運転部9が、走行部2の右前部に配設されている。
【0016】
次に、刈取部4の構成について詳細に説明する。
【0017】
図2に示すように、刈取部4は、刈取フレーム10と、分草具30と、引起装置40と、掻込装置100と、切断装置50と、搬送装置60とを備える。
【0018】
刈取フレーム10は、分草具30や前記各装置を支持するものである。刈取フレーム10は、刈取入力パイプ11と、縦伝動パイプ12と、横伝動パイプ13と、複数の分草フレーム14・14・・・と、駆動パイプ15と、引起縦伝動パイプ16と、縦連結フレームと、引起横伝動パイプ17と、複数の引起駆動パイプ18と、連結フレーム19と、中搬送伝動パイプ20とから構成される。刈取入力パイプ11は、その軸線方向を左右方向として、走行部2の左前部に回動可能に設けられる。縦伝動パイプ12は、その軸線方向を刈取入力パイプ11の軸線方向に対して直交方向として、刈取入力パイプ11の右端部から前斜下方へ延出される。横伝動パイプ13は、その軸線方向を左右方向として、縦伝動パイプ12の延出端部から左右方向へ延出される。
【0019】
各分草フレーム14は、その軸線方向を概ね前後方向として、横伝動パイプ13から前方へ延出される。複数の分草フレーム14・14・・・は、左右方向に適宜の間隔ごとに平行に並べられる。駆動パイプ15は、その軸線方向を左右方向として、左右最外側に位置する分草フレーム14・14の間に横架される。駆動パイプ15は、横伝動パイプ13の前斜下方に位置して、当該横伝動パイプ13と平行に並べられる。引起縦伝動パイプ16は、その軸線方向を横伝動パイプ13の軸線方向に対して直交方向として、横伝動パイプ13の左端部から前斜上方へ延出される。前記縦連結フレームは、その軸線方向を横伝動パイプ13の軸線方向に対して直交方向として、横伝動パイプ13の右端部から前斜上方へ延出される。
【0020】
引起横伝動パイプ17は、その軸線方向を左右方向として、引起縦伝動パイプ16の延出端部と縦連結フレームの延出端部との間に横架される。各引起駆動パイプ18は、その軸線方向を概ね上下方向として、引起横伝動パイプ17から前方へ延出される。複数の引起駆動パイプ18・18・・・は、左右方向に所定間隔ごとに平行に並べられる。連結フレーム19は、その軸線方向を概ね前後方向として、引起横伝動パイプ17の左右中途部から後方へ延出される。連結フレーム19は、その延出端部で縦伝動パイプ12の刈取入力パイプ11側に連結される。中搬送伝動パイプ20は、縦伝動パイプ12の横伝動パイプ13側から前斜上方へ延出される。
【0021】
分草具30は、圃場の穀稈を一条ごとに分離(分草)するものである。分草具30は、8つの分草板31・31・・・を具備する(図3参照)。各分草板31は、それぞれ先端が細くなるように形成される。各分草板31は、その先端が前方を向くように、各分草フレーム14の前端部に取り付けられる。
【0022】
引起装置40は、分草後の穀稈を引き起こすものである。引起装置40は、タイン付チェン42を回転駆動可能に支持する引起ケース41を7つ具備する。複数の引起ケース41は、それぞれ分草具30の後方に前低後高の傾斜状に配置されて、左右方向に適宜の間隔ごとに並べられる。各引起ケース41は、各分草フレーム14と各引起駆動パイプ18との間に位置して、これらに支持される。
【0023】
掻込装置100は、引起装置40により引き起こされた穀稈の株元を掻き込むものである。掻込装置100は、引起装置40の後方に前低後高の傾斜状に配置される。図3に示すように、掻込装置100は、第一掻込装置110と、第二掻込装置120と、第三掻込装置130と、第四掻込装置140とを備える。これらの掻込装置110〜140は、それぞれ引起装置40の後方に前低後高の傾斜状に配置されて、左右方向に適宜の間隔ごとに並べられる。
【0024】
第一掻込装置110は、7条分の穀稈のうち右側2条分の穀稈(右側から数えて1条目穀稈171と2条目の穀稈172、なお、図3、図4では1条分を1株しか表していないが、右側の列から順に各条の穀稈を171・172・173・174・175・176・177とする)の株元を掻き込むものである。第一掻込装置110は、複数の掻込装置110〜140のうち最も右側に配置される。第一掻込装置110は、左右一対の星形状の掻込輪111・112と、左右一対の突起付きの掻込ベルト113・114とを備える。
【0025】
掻込輪111は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸161に固定される。掻込輪112は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸162に固定される。掻込輪111と掻込輪112とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。掻込ベルト113と掻込ベルト114とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト113の左外側面と掻込ベルト114の右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0026】
第二掻込装置120は、7条分の穀稈のうち左右中央側3条分の片側、本実施形態においては右側1条分の穀稈(最右側から数えて3条目の穀稈173)の株元を掻き込むものである。第二掻込装置120は、複数の掻込装置110〜140のうち左右中央側で第一掻込装置110の左隣に配置される(詳細は後述)。
【0027】
第三掻込装置130は、7条分の穀稈のうち左右中央側3条分の残り2条、本実施形態においては中央1条分と左側1条分の穀稈(最右側から数えて4条目と5条目の穀稈174・175)の株元を掻き込むものである。第三掻込装置130は、複数の掻込装置110〜140のうち左右中央側で第二掻込装置120の左隣に配置される(詳細は後述)。
【0028】
第四掻込装置140は、7条分の穀稈のうち左側2条分の穀稈(右側から数えて6条目と7条目の穀稈176・177)の株元を掻き込むものである。第四掻込装置140は、複数の掻込装置110〜140のうち最も左側で第三掻込装置130の左隣に配置される。第四掻込装置140は、左右一対で星形状の掻込輪141・142と、左右一対で突起付の掻込ベルト143・144とを備える。
【0029】
掻込輪141は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸166に固定される。掻込輪142は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸167に固定される。掻込輪141と掻込輪142とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。掻込ベルト143と掻込ベルト144とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト143の左外側面と掻込ベルト144の右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0030】
図2に示すように、切断装置50は、掻込装置100の第一掻込装置110、第二掻込装置120、第三掻込装置130及び第四掻込装置140によって掻き込まれた7条分の穀稈を刈刃51によって株元側で切断するものである。切断装置50は、掻込装置100の下方に前低後高の傾斜状に配置される。
【0031】
搬送装置60は、切断装置50により切断された穀稈を脱穀部5へ向けて搬送するものである。搬送装置60は、引起装置40の後方であって、掻込装置100及び切断装置50の上方から後上方にわたって配置される。搬送装置60は、下部搬送装置200と、上部搬送装置300と、縦搬送装置70と、補助搬送装置80と、穂先搬送装置90とを備える。
【0032】
下部搬送装置200は、刈り取った穀稈の株元を合流させて縦搬送装置70まで挟持搬送するものである。図3に示すように、下部搬送装置200は、第一下部搬送装置210と、第二下部搬送装置220と、第三下部搬送装置230と、第四下部搬送装置240とを備える。
【0033】
第一下部搬送装置210は、第一掻込装置110で掻き込んだ2条分の穀稈171・172の株元に、他の下部搬送装置から挟持搬送されてくる穀稈173・174・175・176・177の株元を合流させて、7条分の穀稈171・172・173・174・175・176・177の株元を縦搬送装置70まで挟持搬送するものである。第一下部搬送装置210は、第一掻込装置110及び第二掻込装置120の後方に前低後高の傾斜状に配置され、第一掻込装置110近傍から左斜後方へ向けて延出される。
【0034】
第一下部搬送装置210は、搬送チェン211と、回転軸161に固設された従動スプロケット212と、駆動スプロケット213と、この駆動スプロケット213の左右に設けられた遊動スプロケット214・215と、駆動スプロケット213の右前方に設けられたテンションスプロケット216とを具備する。搬送チェン211は、従動スプロケット212、駆動スプロケット213、遊動スプロケット214・215及びテンションスプロケット216に巻き掛けられる。
【0035】
第二下部搬送装置220は、第二掻込装置120で掻き込んだ1条分の穀稈173の株元を第一下部搬送装置210との合流部182まで挟持搬送するものである。第二下部搬送装置220は、第二掻込装置120の後方であって第一下部搬送装置210の左側前方に前低後高の傾斜状に配置され、第二掻込装置120近傍から第一下部搬送装置210の搬送中途部近傍まで後方へ向けて延出される。ここで、合流部182は、第一下部搬送装置210の搬送中途部であって第二下部搬送装置220と近接する位置となる。
【0036】
第二下部搬送装置220は、搬送チェン221と、回転軸163に固設された駆動スプロケット223と、二つの遊動スプロケット224・225と、テンションスプロケット226とを具備する。搬送チェン221は、駆動スプロケット223、遊動スプロケット224・225及びテンションスプロケット226に巻き掛けられる。
【0037】
第三下部搬送装置230は、第三掻込装置130で掻き込んだ2条分の穀稈174・175の株元を第四下部搬送装置240との合流部181まで挟持搬送するものである。第三下部搬送装置230は、第三掻込装置130の後方であって第四下部搬送装置240の右側前方に前低後高の傾斜状に配置され、第三掻込装置130近傍から第四下部搬送装置240の搬送中途部近傍まで後方へ向けて延出される。ここで、合流部181は、第四下部搬送装置240の搬送中途部であって第三下部搬送装置230と近接する位置となる。
【0038】
第三下部搬送装置230は、搬送チェン231と、回転軸164に固設された従動スプロケット232と、駆動スプロケット233と、この駆動スプロケット233の左方に設けられた遊動スプロケット234と、駆動スプロケット233の前方に設けられたテンションスプロケット235とを具備する。搬送チェン231は、従動スプロケット232、駆動スプロケット233、遊動スプロケット234及びテンションスプロケット235に巻き掛けられる。
【0039】
第四下部搬送装置240は、第四掻込装置140で掻き込んだ2条分の穀稈176・177の株元に、第三下部搬送装置230から挟持搬送されてくる穀稈174・175の株元を合流させて、4条分の穀稈174・175・176・177の株元を第一下部搬送装置210との合流部183まで挟持搬送するものである。第四下部搬送装置240は、第四掻込装置140の後方に前低後高の傾斜状に配置され、第三掻込装置130近傍から第四下部搬送装置240の搬送終端部近傍まで右斜後方へ向けて延出される。ここで、合流部183は、第一下部搬送装置210の搬送中途部より下流であって第四下部搬送装置240と近接する位置となる。
【0040】
第四下部搬送装置240は、搬送チェン241と、回転軸167に固設された従動スプロケット242と、駆動スプロケット243と、この駆動スプロケット243の右方に設けられた遊動スプロケット244・245と、駆動スプロケット233の前方に設けられたテンションスプロケット246とを具備する。搬送チェン241は、従動スプロケット242、駆動スプロケット243、遊動スプロケット244・245及びテンションスプロケット246に巻き掛けられる。
【0041】
上部搬送装置300は、下部搬送装置200で挟持搬送している穀稈の穂先を係止搬送するものである。図2に示すように、上部搬送装置300は、下部搬送装置200の上方に前低後高の傾斜状に配置され、掻込装置100の上方付近から後方へ向けて延出される。図4に示すように、上部搬送装置300は、第一上部搬送装置310と、第二上部搬送装置320と、第三上部搬送装置330と、第四上部搬送装置340とを備える。
【0042】
第一上部搬送装置310は、第一下部搬送装置210で搬送される2条分の穀稈171・172の穂先に、第二上部搬送装置320から係止搬送される穀稈173の穂先を合流させて、3条分の穀稈171・172・173の穂先を係止搬送するものである。第一上部搬送装置310は、第一下部搬送装置210の上方に配置され、第一掻込装置110近傍から左斜後方へ向けて延出される。
【0043】
第一上部搬送装置310は、搬送チェン311と、この搬送チェン311に所定の間隔で突出・収納可能に取り付けられたタイン312と、駆動スプロケット313と、テンションスプロケット314とを備える。搬送チェン311は、駆動スプロケット313及びテンションスプロケット314に巻き掛けられる。
【0044】
第二上部搬送装置320は、第二下部搬送装置220で搬送される1条分の穀稈173の穂先を第一上部搬送装置310との合流部192まで係止搬送するものである。第二上部搬送装置320は、第二下部搬送装置220の上方に配置される(詳細は後述する)。ここで、合流部192は、第一上部搬送装置310の搬送中途部であって第二上部搬送装置320と近接する位置となる。
【0045】
第三上部搬送装置330は、第三下部搬送装置230で搬送される2条分の穀稈174・175の穂先を第四上部搬送装置340との合流部191まで係止搬送するものである。第三上部搬送装置330は、第三下部搬送装置230の上方に配置され、第三掻込装置130近傍から左斜後方へ向けて延出される(詳細は後述する)。ここで、合流部191は、第四上部搬送装置340の搬送中途部であって第三上部搬送装置330と近接する位置となる。
【0046】
第四上部搬送装置340は、第四下部搬送装置240で搬送される2条分の穀稈176・177の穂先に、第三上部搬送装置330から係止搬送されてくる穀稈174・175の穂先を合流させて、4条分の穀稈174・175・176・177の穂先を第一上部搬送装置310との合流部193まで係止搬送するものである。第四上部搬送装置340は、第四下部搬送装置240の上方に配置され、第四掻込装置140近傍から右斜後方へ向けて延出される。ここで、合流部193は、第一上部搬送装置310の搬送中途部より下流であって第四上部搬送装置340と近接する位置とされる。
【0047】
第四上部搬送装置340は、搬送チェン341と、この搬送チェン341に所定の間隔で突出・収納可能に取り付けられたタイン342と、駆動スプロケット343と、テンションスプロケット344と、遊動スプロケット345・346とを備える。搬送チェン341は、駆動スプロケット343、テンションスプロケット344及び遊動スプロケット345・346に巻き掛けられる。
【0048】
縦搬送装置70は、第一下部搬送装置210の搬送終端部から受け継いだ7条分の穀稈の株元を補助搬送装置80まで挟持搬送するものである。図2に示すように、縦搬送装置70は、下部搬送装置200の後方に前低後高の傾斜状に配置され、下部搬送装置200の搬送終端部付近から左斜後方へ向けて延出される。
【0049】
補助搬送装置80は、縦搬送装置70の搬送終端部から受け継いだ7条分の穀稈の株元を脱穀部5まで挟持搬送するものである。補助搬送装置80は、縦搬送装置70の後上方に配置され、縦搬送装置70の搬送終端部付近から後方へ向けて延出される。
【0050】
穂先搬送装置90は、第一下部搬送装置210、縦搬送装置70及び補助搬送装置80で搬送される穀稈の穂先を係止搬送するものである。穂先搬送装置90は、第一上部搬送装置310の後部下方に配置され、第一上部搬送装置310の搬送中途部付近から後方へ向けて延出される(図4参照)。
【0051】
刈取フレーム10、即ちこれを構成する各パイプ等には、各装置に動力を伝達する伝動軸が長手方向に沿って内挿される。具体的には、例えば、図6に示すように、刈取入力パイプ11には、刈取入力軸411が内挿される。縦伝動パイプ12には、縦伝動軸412が内挿される。横伝動パイプ13には、横伝動軸413が内挿される。中搬送伝動パイプ20には、中搬送伝動軸420が内挿される。
【0052】
図5に示すように、刈取入力軸411は、走行部2に搭載されたエンジンに連動連結されるとともに、縦伝動軸412に連動連結される。縦伝動軸412は、横伝動軸413、中搬送伝動軸420及びその他の伝動軸に適宜に連動連結される。こうして、エンジンから刈取入力軸411に伝達された動力が、当該刈取入力軸411から縦伝動軸412を経て、さらに引起装置40、掻込装置100、切断装置50及び搬送装置60に伝達可能とされる。
【0053】
このような構成において、刈取部4は、刈取作業時に前記各装置をエンジンからの動力により駆動して、圃場の穀稈を刈り取りながら取り込む。すなわち、刈取部4においては、圃場の穀稈が分草具30により一条ごとに分離するように分草された後、分草後の穀稈が引き起こされる。つづいて、掻込装置100で引起装置40により引き起こされた穀稈の株元側が掻き込まれる。そして、切断装置50により穀稈が株元側で切断される。切断後の各条分の穀稈171・172、穀稈173、穀稈174・175、穀稈176・177が、搬送装置60により途中で合流させられつつ脱穀部5へ向けて搬送される。
【0054】
次に、第二掻込装置120及び第三掻込装置130の構造について詳細に説明する。
【0055】
図3及び図7に示すように、第二掻込装置120は、単一で星形状の掻込輪121と、単一で突起付の掻込ベルト122とを備える。掻込輪121は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸163に固定される。掻込輪121は、第一掻込装置110の左側掻込輪112の左側方に位置し、当該左側掻込輪112とは噛合されない。
【0056】
大径プーリ123が、掻込輪121の上方に配置されて、掻込輪121とともに回転軸163に固定される。小径プーリ124が、大径プーリ123の左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト122が大径プーリ123と小径プーリ124とに巻き掛けられる。掻込ベルト122は概ね前後方向に張設される。また、不図示の案内杆が、掻込ベルト122と第一掻込装置110の掻込ベルト114との間に設けられて、掻込ベルト122の右外側面と所定間隔を隔てて対向するように配置される。
【0057】
第三掻込装置130は、左右一対で星形状の掻込輪131・132と、左右一対で突起付の掻込ベルト133・134とを備える。掻込輪131は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸164に固定される。掻込輪132は、前低後高の傾斜状に配置され、回転軸165に固定される。掻込輪131と掻込輪132とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに噛合される。掻込輪131は、第二掻込装置120の掻込輪121の左側方に位置し、当該掻込輪121と左右方向に隣り合うように並べられる。つまり、掻込輪131は、左側方の掻込輪132と右側方の掻込輪121とに挟まれるように並べられる。そして、掻込輪131が掻込輪132と噛合されるとともに、掻込輪121に噛合される。
【0058】
大径プーリ135が、掻込輪131の上方に配置されて、掻込輪131とともに回転軸164に固定される。小径プーリ136が、大径プーリ135の右前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト133が、大径プーリ135と小径プーリ136とに巻き掛けられる。大径プーリ137が、掻込輪132の上方に配置されて、掻込輪132とともに回転軸165に固定される。小径プーリ138が、大径プーリ137の左前方に配置されて、刈取フレーム10に対して回転自在に設けられる。そして、掻込ベルト134が、大径プーリ137と小径プーリ138とに巻き掛けられる。こうして、掻込ベルト133と掻込ベルト134とは、左右方向に隣り合うように並べられて、互いに対向するベルト面間、即ち掻込ベルト133の左外側面と掻込ベルト134の右外側面との間の距離が前方から後方へ向かうに従って徐々に小さくなるように、即ち正面視略ハの字状になるように、それぞれ概ね前後方向に張設される。
【0059】
このような構造により、第二掻込装置120及び第三掻込装置130において、掻込輪131及び大径プーリ135が回転軸164回りに矢印方向に回転する。この大径プーリ135の回転によって、掻込ベルト133が回転する。また、掻込輪131の回転によって、この掻込輪131と噛合する掻込輪121・132がそれぞれ回転軸163・165回りに矢印方向に回転する。この掻込輪121の回転によって、大径プーリ123が矢印方向に回転する。そして、大径プーリ123の回転により、掻込ベルト122が回転する。また、掻込輪132の回転によって、大径プーリ137が回転する。そして、大径プーリ137の回転により、掻込ベルト134が回転する。これにより、左右中央側3条のうち右側1条分の穀稈173の株元側が、掻込輪121及び掻込ベルト122により後方へ向かって掻き込まれて、左右中央側3条のうち残りの2条分の穀稈174・175の株元側が、掻込輪131・132及び掻込ベルト133・134により後方へ向かって掻き込まれる。
【0060】
次に、第二上部搬送装置320及び第三上部搬送装置330の構造について詳細に説明する。
【0061】
図8及び図9に示すように、第二上部搬送装置320は、回転板321と、複数(4つ)のタイン322・322・322・322と、上板323と、下板324と、を備える。回転板321は、略円板形状に形成される。回転軸155が、回転板321の中心部に挿嵌されて、当該回転板321と固定される。回転板321の径方向外周端には、回転軸155を中心として周方向に所定間隔(略90°)ごとに略へ字形状のタイン322の一端部(基部322a・322a)が枢支される。
【0062】
上板323及び下板324は、前記回転板321よりも大きい板面を有する板材である。上板323は、回転板321の上方であって、側面視において回転板321と略平行となるように配置される。下板324は、回転板321の下方であって、側面視において回転板321と略平行となるように配置される。上板323及び下板324の中心部には、回転軸155が挿嵌される。そして、上板323は、ボルト325・325によって下板324に締結される。
【0063】
上板323の下面には、タイン322の一方(上側)の基部322aを案内するガイド部材(第一ガイド323aと第二ガイド部材323bと第三ガイド部材323c)が形成される。第一ガイド部材323aは、上板323の一部外周端(右側)であって、その外周形状に沿うように回転板321方向へ向けて帯状に突設される。第二ガイド部材323bは、前記外周端よりもやや内周であって、略円弧形状となるように回転板321方向へ向けて帯状に突設される。第三ガイド部材323cは、第二ガイド部材323bの長手方向両端から、回転板321方向へ向けて円柱状に突設される。これら第二ガイド部材323bと第三ガイド部材323cは、タイン322が回転した時に、タイン322の一方の基部322aが摺接する位置に配置される。
【0064】
同様に、下板324の上面には、タイン322の他方(下側)の基部322aを案内するガイド部材(第一ガイド324aと第二ガイド部材324bと第三ガイド部材324c)が形成される。第一ガイド部材324aは、下板324の一部外周端(右側)であって、その外周形状に沿うように回転板321方向へ向けて帯状に突設される。第二ガイド部材324bは、前記外周端よりもやや内周であって、略円弧形状となるように回転板321方向へ向けて帯状に突設される。第三ガイド部材324cは、第二ガイド部材324bの長手方向両端から、回転板321方向へ向けて円柱状に突設される。これら第二ガイド部材324bと第三ガイド部材324cは、タイン322が回転した時に、タイン322の一方の基部322aが摺接する位置に配置される。第一ガイド部材324aは前記第一ガイド部材323aと、第二ガイド部材324bは前記第二ガイド部材323bと、第三ガイド部材323cは前記第三ガイド部材324cと、平面視において同一の位置とされる。両第一ガイド部材323a・324a間の幅は、回転軸155の軸線方向において、各タイン322が通過できるように、そのタイン322の軸線方向の幅よりも大きく設定される。
【0065】
このような構造により、第二上部搬送装置320において、回転軸155が回転すると、回転板321が回転する。そして、回転板321に取り付けられたタイン322は、その基部322a・322aが第三ガイド部材323c・324cと当接した時に、タイン322の支軸を中心として回転板321の回転方向に回転する。これにより、タイン322の先端部322bが第一ガイド部材323a・324aよりも外側方へ突出する(略半径方向に突出する)。そして、タイン322の基部322a・322aが、第一ガイド部材323a・324aと第二ガイド部材323b・324bとの間を移動して、タイン322の突出状態が保持される。その後、タイン322の基部322a・322aが第二ガイド部材323b・323bと当接されなくなると、タイン322の先端部322bが第一ガイド部材323a・324aよりも内側方に位置して外側方には突出されず、タイン322が収納される。
【0066】
こうして、第二上部搬送装置320は、穀稈173の穂先側を、搬送始端部370から搬送終端部371まで係止搬送する。言い換えれば、第二上部搬送装置320における穀稈173の搬送経路373は、搬送始端部370から搬送終端部371までの経路とされる。ここで、搬送始端部370は、掻込輪121の右後部の位置とされ、掻込輪121で掻き込み中の穀稈173の穂先側を搬送可能に構成される。搬送終端部371は、第一上部搬送装置310の長手方向中途部の前方の位置、または合流部192の前方の位置とされ、第一上部搬送装置310における穀稈171・172の搬送経路と重複させて、搬送の漏れをなくすように構成される。また、このような搬送始端部370及び搬送終端部371となるように、前記第二ガイド部材323b・324b及び第三ガイド部材323c・324cが設定される。
【0067】
第三上部搬送装置330は、搬送チェン331と、複数のタイン332・332・・・と、上板333と、下板334と、補助板335と、駆動スプロケット336と、遊動スプロケット337と、テンションスプロケット338と、テンション調節機構350と、を備える。搬送チェン331の外周端には、所定間隔ごとに略へ字形状のタイン332・332・・・の一端部(基部332a・332a)が枢支される。
【0068】
上板324は、搬送チェン331の上方であって、側面視において搬送チェン331と略平行となるように配置される。下板334は、搬送チェン331の下方であって、側面視において搬送チェン331と略平行となるように配置される。上板333は、ボルトナット339等によって下板334に締結される。補助板335が、下板334の後部から右方に延設される。
【0069】
上板333の下面には、タイン332の一方(上側)の基部332aを案内するガイド部材(第一ガイド部材333aと第二ガイド部材333bと第三ガイド部材333c)が形成される。第一ガイド部材333aは、上板333の一部外周端(左側)であって、その外周形状に沿うように搬送チェン331方向へ向けて帯状に突設される。第二ガイド部材333bは、前記外周端よりもやや内周であって、テンションスプロケット338の後部からテンションスプロケット338と遊動スプロケット337との中間部にかけて、搬送チェン331方向へ向けて帯状に突設される。第三ガイド部材333cは、第二ガイド部材333cの後部から遊動スプロケット337の中途部にかけて、搬送チェン331方向へ向けて帯状に突設される。これらの第二ガイド部材333b及び第三ガイド部材333cは、タイン332が回転した時に、タイン332の一方の基部332aが摺接する位置に配置される。
【0070】
同様に、下板334の上面には、タイン332の他方(下側)の基部332aを案内するガイド部材(第一ガイド334aと第二ガイド部材334bと第三ガイド部材334c)が形成される。第一ガイド部材334aは、下板334の一部外周端(左側)であって、その外周形状に沿うように搬送チェン331方向へ向けて帯状に突設される。第二ガイド部材334bは、前記外周端よりもやや内周であって、テンションスプロケット338の後部からテンションスプロケット338と遊動スプロケット337との中間部にかけて、搬送チェン331方向へ向けて帯状に突設される。第三ガイド部材334cは、第二ガイド部材334cの後部から遊動スプロケット337の中途部にかけて、搬送チェン331方向へ向けて帯状に突設される。これらの第二ガイド部材334b及び第三ガイド部材334cは、タイン332が回転した時に、タイン332の他方の基部332aが摺接する位置に配置される。第一ガイド部材334aは前記第一ガイド部材333aと、第二ガイド部材334bは前記第二ガイド部材333bと、第三ガイド部材333cは前記第三ガイド部材334cと、平面視において同一の位置とされる。両第一ガイド部材333a・334a間の幅は、中搬送伝動軸420の軸線方向において、各タイン332が通過できるように、そのタイン332の軸線方向の幅よりも大きく設定される。
【0071】
駆動スプロケット336は、補助板335の上方に配置され、中搬送伝動軸420の先端に取り付けられる。遊動スプロケット337は、上板333と下板334の間であって、駆動スプロケット336の左方に遊動可能に取り付けられる。テンションスプロケット338は、上板333と下板334の間であって、遊動スプロケット337の前方に遊動可能に取り付けられる。テンションスプロケット338は、テンション調節機構350によって、上板333及び下板334の長手方向に移動可能に構成される。テンションスプロケット338の鍔338a・338aは、タイン322の基部332a・332aを案内するガイド部材を構成する。駆動スプロケット336、遊動スプロケット337及びテンションスプロケット338には、搬送チェン331が巻き掛けられる。
【0072】
このような構造により、第三上部搬送装置330においては、駆動スプロケット336が回転すると、搬送チェン331が回転する。そして、搬送チェン331に取り付けられたタイン332は、その基部332a・332aが、テンションスプロケット338の鍔338a・338aと当接した時に、タイン332の支軸を中心として搬送チェン331の回転方向に回転する。これにより、タイン322の先端部332bが第一ガイド部材333a・334aよりも外側方へ突出する(略半径方向に突出する)。そして、タイン332の基部332a・332aが、第一ガイド部材333a・334aと鍔338a・338aとの間、第一ガイド部材333a・334aと第二ガイド部材333b・334bとの間、及び第一ガイド部材333a・334aと第三ガイド部材333c・334cとの間、を移動して、タイン322の突出状態が保持される。その後、タイン332の基部332a・332aが第三ガイド部材333c・334cと当接されなくなると、タイン332の先端部332bが第一ガイド部材333a・334aよりも内側方に位置して外側方には突出されず、タイン332が収納される。
【0073】
こうして、第三上部搬送装置330は、穀稈174・175の穂先側を、搬送始端部380から搬送終端部381まで係止搬送する。言い換えれば、第三上部搬送装置330における穀稈174・175の搬送経路382は、搬送始端部380から搬送終端部381までの経路とされる。ここで、搬送始端部380は、掻込輪131の左後部の位置とされ、掻込輪131・132で掻き込み中の穀稈174・175の穂先側を搬送可能に構成される。搬送終端部381は、第四上部搬送装置340の長手方向終端部の前方の位置、または合流部191の前方の位置とされ、第四上部搬送装置340における穀稈176・177の搬送経路と重複させて、搬送の漏れをなくすように構成される。また、このような搬送始端部380及び搬送終端部381となるように、鍔338a・338a、第二ガイド部材333b・334b及び第三ガイド部材333c・334cが設定される。
【0074】
図8で明らかのように、第三上部搬送装置330における穀稈174・175の搬送経路382は、第二上部搬送装置320における穀稈173の搬送経路373よりも長く構成される。したがって、第三上部搬送装置330は、搬送経路が長い分だけ搬送チェンが長く構成され、搬送チェンに枢支されるタインの数や搬送チェンに巻回されるスプロケットの数も増加することとなる。すなわち、第三上部搬送装置330を駆動するために必要な動力が、第二上部搬送装置320を駆動するために必要な動力と比較して大きくなる。
【0075】
そして、本実施形態においては、第三上部搬送装置330は、2条分の穀稈を搬送する構成とされるので、1条分の穀稈を搬送する構成の第二上部搬送装置320と比較して、搬送する穀稈の数が多いだけ、当然に駆動するために必要な動力が大きくなる。さらに、第三上部搬送装置330においては、動力を、搬送チェン331を経由してタイン332に伝達させる構成としているのに対し、第二上部搬送装置320においては、動力を、回転板321を経由してタイン322に伝達させる構成としているので、第三上部搬送装置330の方が、動力の伝達に伴う損失も増加して、駆動するために必要な動力が大きくなる。
【0076】
次に、第二掻込装置120及び第三掻込装置130と、第二上部搬送装置320及び第三上部搬送装置330と、への動力伝達経路について詳細に説明する。
【0077】
図6に示すように、刈取入力軸411の左端には、エンジンの動力が入力される入力プーリ410が固設され、右端には、ベベルギヤが固設される。縦伝動軸412の後端には、このベベルギヤと噛合するベベルギヤが固設される。刈取入力軸411の右端が縦伝動軸412の後端と連動連結される。縦伝動軸412の前端には、ベベルギヤが固設され、このベベルギヤと噛合するベベルギヤが横伝動軸413の左右中途部に固設される。縦伝動軸412の前端が横伝動軸413の左右中途部と連動連結される。
【0078】
縦伝動軸412の前部、詳しくは縦伝動軸412の前端よりもやや後方の位置に、ベベルギヤが固設され、このベベルギヤを介して中搬送伝動軸420の一端(下側)と連動連結される。中搬送伝動軸420の長手方向中途部には、第三下部搬送装置230の駆動スプロケット233が固設される。そして、前述のように、駆動スプロケット233には、従動スプロケット232とともに搬送チェン231が巻き掛けられる。また、中搬送伝動軸420の他端(上側)には、第三上部搬送装置330の駆動スプロケット336が固設される。
【0079】
このような構造によって、エンジンから入力プーリ410に伝達された動力は、刈取入力軸411、縦伝動軸412を経由して、中搬送伝動軸420に伝達される。次に、動力が、この中搬送伝動軸420から、第三下部搬送装置230の搬送チェン231を経由して、第三掻込装置130の掻込輪131に伝達される。そして、図7に示すように、掻込輪131から、この掻込輪131と左右に噛合する掻込輪121・132に伝達され、前述のように第二掻込装置120及び第三掻込装置130が駆動する。
【0080】
また、動力が、掻込輪121から、回転軸163、伝動装置150を経由して、回転軸155に伝達され、前述のように第二上部搬送装置320が駆動する。
【0081】
また、動力が、中搬送伝動軸420から、第三上部搬送装置330の駆動スプロケット336に伝達され、前述のように第三上部搬送装置330が駆動する。
【0082】
以上のように、引起装置40と、掻込装置100と、切断装置50と、搬送装置60と、を備えるコンバイン1の刈取部4において、前記掻込装置100は、右側2条分の穀稈を掻き込む第一掻込装置110と、左右中央側3条分のうち片側1条分の穀稈を掻き込む第二掻込装置120と、左右中央側3条分のうち残り2条分の穀稈を掻き込む第三掻込装置130と、左側2条分の穀稈を掻き込む第四掻込装置140と、を備え、前記第二掻込装置120の単一の掻込輪121と前記第三掻込装置130の左右一対の掻込輪131・132とを左右方向に噛合して並設し、前記搬送装置60は、前記第一掻込装置110で掻き込まれた穀稈171・172の穂先側を係止搬送する第一上部搬送装置310と、前記第二掻込装置120で掻き込まれた穀稈173の穂先側を係止搬送する第二上部搬送装置320と、前記第三掻込装置130で掻き込まれた穀稈174・175の穂先側を係止搬送する第三上部搬送装置330と、前記第四掻込装置140で掻き込まれた穀稈176・177の穂先側を係止搬送する第四上部搬送装置340と、を備え、動力を、機体本体より斜め前下方に延出する縦伝動軸412から、当該縦伝動軸412の前部より立設する中搬送伝動軸420を経由して、前記3つの掻込輪121・131・132のうち左右中央側の掻込輪131に伝達して、かつ、前記第二上部搬送装置320及び前記第三上部搬送装置330のうち搬送経路が長い上部搬送装置である第三上部搬送装置330に伝達するものである。
【0083】
これにより、第二上部搬送装置320及び第三上部搬送装置330のうち搬送経路が長くて駆動に必要な動力が大きい上部搬送装置である第三上部搬送装置330に対して、中搬送伝動軸420から直接動力を伝達する構造とされ、縦伝動軸412から当該第三上部搬送装置330までの動力伝達経路を短く構成することができる。これにより、駆動に必要な動力を低減することができ、当該第三上部搬送装置330が適切に動作して、穀稈174・175をスムーズに搬送することができる。また、第二掻込装置120及び第三掻込装置130に対して、動力を掻込輪121に伝達してからこの掻込輪121から掻込輪131を経由して掻込輪132に伝達する場合や、動力を掻込輪132に伝達してからこの掻込輪132から掻込輪131を経由して掻込輪121に伝達する場合と比較して、動力伝達経路を短く構成することができる。言い換えれば、縦伝動軸412から第二掻込装置120及び第三掻込装置130までの動力伝達経路を短く構成することができる。これにより、駆動に必要な動力を低減することができ、第二掻込装置120及び第三掻込装置130が適切に動作して、穀稈173・174・175をスムーズに掻き込むことができる。また、動力が掻込輪131から当該掻込輪131の左右両側の二つの掻込輪121・132にバランスよく割り振られることとなる。したがって、各掻込輪121・131・132への負荷が分散され、第二掻込装置120及び第三掻込装置130の故障率を低減することができる。
【0084】
また、第三上部搬送装置330は、中搬送伝動軸420から直接が駆動されるのに対して、第二上部搬送装置320は、中搬送伝動軸420、搬送チェン231、掻込輪131、掻込輪121、伝動装置150を介して駆動される(図7参照)。つまり、搬送経路が長くて2条分の穀稈を搬送する上部搬送装置(第三上部搬送装置330)の動力伝達経路は、1条分の穀稈を搬送する上部搬送装置(第二上部搬送装置320)の動力伝達経路より短く構成して、各上部搬送装置を駆動するために必要な動力をできるだけ均等となるように構成して、偏摩耗等によるメンテナンス時期ができるだけ同じ時期となるようにしている。
【0085】
なお、第三上部搬送装置330は、第四上部搬送装置340における後端部まで延長する構成とし、第二上部搬送装置320は、第一上部搬送装置310における長手方向中途部まで延長する構成としている。これにより、第三上部搬送装置330は、第一上部搬送装置310で搬送中の穀稈171・172と、第四上部搬送装置340で搬送中の穀稈176・177とが合流する合流部193に近い位置まで搬送するように構成して、搬送中の穀稈174・175を長く安定した姿勢で搬送可能としている。また、第二上部搬送装置320は、穀稈173の搬送経路を短く構成して、駆動に必要な動力を低減している。
【0086】
次に、案内杆360について説明する。
【0087】
図8に示すように、案内杆360は、第一上部搬送装置310で係止搬送中の穀稈171・172・173を合流部193まで案内するものであり、かつ、第四上部搬送装置340で係止搬送中の穀稈174・175・176・177を合流部193まで案内するものである。案内杆360は、丸棒状の部材を平面視略へ字状に湾曲して構成され、その両端部が、さらに内側に湾曲して構成される。案内杆360においては、右先端部360aと、第一案内部360bと、第二案内部360cと、左先端部360dと、が右側から順次配置される。
【0088】
右先端部360aは、第一連結部材361を介して、第二上部搬送装置320に取り付けられる。すなわち、第一連結部材361は、平面視略長方形状に形成され、その短手方向における外周端が、右先端部360aの外周端と一体的に取り付けられる。第一連結部材361には、長手方向に適宜な間隔を開けて二つの取付孔が穿設される。第一連結部材361は、前記第二上部搬送装置320の上板323に載置されて、一方(右先端部側)の取付孔にボルト325が挿嵌されて、前記上板323及び下板324とともに締結される。また、第一連結部材361は、中央搬送支持パイプ21に取り付けられる。すなわち、中央搬送支持パイプ21は、前記引起横伝動パイプ17の左右中途部から前下方に延設され、この中央搬送支持パイプ21の上下中途部から、右方向に連結部21aが形成される。連結部21aには、取付孔が穿設されて、この取付孔と、前記第一連結部材361の他方(反右先端部側)の取付孔とにボルト363が挿嵌されて、当該第一連結部材361が、中央搬送支持パイプ21に取り付けられる。
【0089】
第一案内部360bは、第一上部搬送装置310(穂先搬送装置90も含む)で搬送中の穀稈171・172・173を合流部193まで案内するものである。第一案内部360bは、平面視において第一上部搬送装置310と略平行に、第一上部搬送装置310と対向して配置される。
【0090】
第二案内部360cは、第四上部搬送装置340で搬送中の穀稈174・175・176・177を合流部193まで案内するものである。第二案内部360cは、平面視において第四上部搬送装置340と略平行に、第四上部搬送装置340と対向して配置される。
【0091】
左先端部360dは、第二連結部材362を介して、第三上部搬送装置330に取り付けられる。すなわち、第二連結部材362は、平面視略正方形状に形成され、その外周端が、左先端部360dの外周端と一体的に取り付けられる。第二連結部材362には、取付孔が穿設されて、この取付孔には、前記第三上部搬送装置330の上板333から垂直方向に突設する突部材333dが挿嵌されて、左先端部360dが前記第三上部搬送装置330の上板333に取り付けられる。このように、案内杆360は、第二上部搬送装置320と、第三上部搬送装置330との間に架設される構造とされる。
【0092】
以上のように、前記第二上部搬送装置320に、前記第一上部搬送装置310で搬送中の穀稈171・172・173を、穀稈の合流部193まで案内する案内杆を設け、前記第三上部搬送装置330に、前記第四上部搬送装置340で搬送中の穀稈174・175・176・177を、前記合流部193まで案内する案内杆を設け、これら二つの案内杆を一体的に構成したものである。
【0093】
これにより、一体的に構成された案内杆360が支持杆の役目を兼ね、第二上部搬送装置320及び第三上部搬送装置330が、当該案内杆360を介して相互に支持することとなる。これにより、第二上部搬送装置320及び第三上部搬送装置330のがたつきを抑制することができ、穀稈173・174・175をスムーズに搬送することができる。
【0094】
また、第一上部搬送装置310及び穂先搬送装置90で係止搬送されている穀稈171・172・173は、案内杆360の第一案内部360bに沿って合流部193まで案内される。そして、第四上部搬送装置340で係止搬送中の穀稈174・175・176・177は、案内杆360の第二案内部360cに沿って合流部193まで案内される。この際、案内杆360に切れ目がないため、第一上部搬送装置310及び第四上部搬送装置340で搬送中の穀稈171・172・173・174・175・176・177が、切れ目に引っ掛かることがなくなり、合流部193の穀稈の詰まりを抑制できる。
【符号の説明】
【0095】
1 コンバイン
4 刈取部
40 引起装置
50 切断装置
60 搬送装置
100 掻込装置
110 第一掻込装置
120 第二掻込装置
130 第三掻込装置
140 第四掻込装置
210 第一下部搬送装置
220 第二下部搬送装置
230 第三下部搬送装置
240 第四下部搬送装置
310 第一上部搬送装置
320 第二上部搬送装置
330 第三上部搬送装置
340 第四上部搬送装置
350 案内杆
121 掻込輪
131 掻込輪
132 掻込輪
412 縦伝動軸
420 伝動軸(中搬送伝動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引起装置と、掻込装置と、切断装置と、搬送装置と、を備えるコンバインの刈取部において、
前記掻込装置は、
右側2条分の穀稈を掻き込む第一掻込装置と、
左右中央側3条分のうち片側1条分の穀稈を掻き込む第二掻込装置と、
左右中央側3条分のうち残り2条分の穀稈を掻き込む第三掻込装置と、
左側2条分の穀稈を掻き込む第四掻込装置と、を備え、
前記第二掻込装置の単一の掻込輪と前記第三掻込装置の一対の掻込輪とを左右方向に噛合して並設し、
前記搬送装置は、
前記第一掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第一上部搬送装置と、
前記第二掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第二上部搬送装置と、
前記第三掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第三上部搬送装置と、
前記第四掻込装置で掻き込まれた穀稈の穂先側を係止搬送する第四上部搬送装置と、を備え、
動力を、機体本体より斜め前下方に延出する縦伝動軸から、当該縦伝動軸の前部より立設する伝動軸を経由して、前記3つの掻込輪のうち左右中央側の掻込輪に伝達して、かつ、前記第二上部搬送装置及び前記第三上部搬送装置のうち搬送経路が長い上部搬送装置に伝達することを特徴とするコンバインの刈取部。
【請求項2】
前記第二上部搬送装置に、前記第一上部搬送装置で搬送中の穀稈を、穀稈の合流部まで案内する案内杆を設け、
前記第三上部搬送装置に、前記第四上部搬送装置で搬送中の穀稈を、前記合流部まで案内する案内杆を設け、
これら二つの案内杆を一体的に構成することを特徴とする請求項1に記載のコンバインの刈取部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−152072(P2011−152072A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15619(P2010−15619)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】