説明

コンバインドサイクル発電プラント及びその運転方法

【課題】コンバインドサイクル発電プラントにおいて、起動時における蒸気損失を低減する。
【解決手段】補助蒸気発生装置7と、主蒸気における圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測する計測器33,34,35と、ガスタービン2の起動後に蒸気タービン3に供給される蒸気を補助蒸気から主蒸気に切り替える切替手段と、を備えたコンバインドサイクル発電プラント1を用い、切替手段は、排熱回収ボイラ4から発生する主蒸気がST通気前に確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを示すデータと、計測器によって計測された圧力、温度、及び流量の少なくとも一つとに基づいて、排熱回収ボイラの主蒸気が確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを判断し、この判断がなされた時点で即座に上記切り替えを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンと、このガスタービンから排出される排気ガスの排熱を利用して主蒸気を生成する排熱回収ボイラと、蒸気タービンとからなるコンバインドサイクル発電プラント、及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインドサイクル発電プラントは、ガスタービン、排熱回収ボイラ、蒸気タービン、発電機などから構成されており、ガスタービンで発電機を回転させると共に、ガスタービンから排出される排気を利用して排熱回収ボイラで主蒸気を生成し、蒸気タービンにおいても発電のための動力を得る発電プラントである。
コンバインドサイクル発電プラントの中でも、ガスタービンと蒸気タービンとが同一軸上に構成されるものは一軸型コンバインドサイクル発電プラントと呼ばれている。一軸型コンバインドサイクル発電プラントは、全軸長の短縮、ロータ数減による軸系の信頼性向上、運用性・保守性の向上に大きな効果がある。
【0003】
一軸型コンバインドサイクル発電プラントの場合、ガスタービンと蒸気タービンとが連なって回転する。これにより、ガスタービンの起動時において、蒸気タービンの低圧最終段翼には風損による温度上昇が生じるため、この温度上昇を抑制するため、低圧蒸気タービンを冷却するための冷却蒸気が必要となる。
低圧蒸気タービンは、定常状態においては排熱回収ボイラにて生成された主蒸気が大量に供給されるため冷却蒸気は不要であるが、ガスタービン起動時においては、排熱回収ボイラで発生する蒸気が少なく充分な蒸気量が得られないため、外部から補助蒸気を導入することによって低圧蒸気タービンを冷却する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5は、従来のコンバインドサイクル発電プラント(以下、コンバインドプラントと呼ぶ)101の運転方法を説明する図である。図5に示すように、コンバインドプラント101は、主要な構成要素として、ガスタービン102と、蒸気タービン103と、排熱回収ボイラ104と、発電機105と、復水器106と、補助蒸気発生装置107と、復水ポンプ118とを備えている。
【0005】
蒸気タービン103は、高圧蒸気タービン111、中圧蒸気タービン112、低圧蒸気タービン113の3つのタービンを具備している。排熱回収ボイラ104には、高圧蒸気タービン111に供給される高圧蒸気を過熱する高圧過熱器114、中圧蒸気タービン112に中圧蒸気を供給する中圧過熱器115、低圧蒸気タービン113に低圧蒸気を供給する低圧過熱器116が設けられている。さらに、排熱回収ボイラ104には、高圧蒸気タービン111に対して仕事をした蒸気を再加熱する、再熱器117が設けられている。
【0006】
補助蒸気を生成する補助蒸気発生装置107は、補助蒸気供給管130に接続されており、この補助蒸気供給管130は、低圧過熱器116と低圧蒸気タービン113とを接続する低圧主蒸気供給配管123の途中に接続されている。
【0007】
また、高圧過熱器114と高圧蒸気タービン111とを接続する高圧主蒸気供給配管121の途中からは、タービンバイパス配管125が分岐しており、高圧蒸気タービン111の出口管124に接続されている。再熱器117と中圧蒸気タービン112とを接続する再熱蒸気管122の途中からもタービンバイパス配管126が分岐し、低圧主蒸気供給配管123の途中からもタービンバイパス配管127が分岐し、それぞれ復水器106に接続されている。
【0008】
次に、図6を参照して、コンバインドプラント101の起動から定常状態に至る過程における主蒸気、補助蒸気の流れ、及び弁の切り替え、つまり蒸気切替について説明する。
図6(a)に示すように、ガスタービン102の起動直後は、排熱回収ボイラ104において蒸気が沸いていないため、低圧過熱器116、中圧過熱器115、及び高圧過熱器114から供給される主蒸気Dは、タービンバイパス配管125,126,127を介して、高圧蒸気タービン111の出口管124及び復水器106にバイパスされる。一方、補助蒸気発生装置107において生成した補助蒸気は減温され冷却蒸気Aとされた後、低圧主蒸気供給配管123に供給され、これにより、低圧蒸気タービン113が冷却される。
【0009】
図6(b)に示すように、排熱回収ボイラ104から蒸気が発生し、蒸気タービン103に通気可能な圧力・温度が確保された時点で、バイパスしていた主蒸気Dは、高圧蒸気タービン111及び中圧蒸気タービン112に供給される。中圧蒸気タービン112に対して仕事をした蒸気は、配管を介して冷却蒸気Aが供給されている低圧主蒸気供給配管123に供給され、次いで、低圧蒸気タービン113に供給される。つまり蒸気タービン103が通気状態となる(以下、ST通気と呼ぶ)。
【0010】
ST通気状態となると、補助蒸気発生装置107から供給される冷却蒸気Aは必要なくなるため、図6(c)に示すように、補助蒸気供給管130に設けられている冷却蒸気供給弁140(図5参照)が閉状態とされ、冷却蒸気Aの供給が止められることによって、蒸気切替が実施される。
一方、各タービンバイパス配管125,126,127に設けられているタービンバイパス弁も閉じられ、排熱回収ボイラ104で発生した蒸気は全量蒸気タービンに導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4052405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のコンバインドサイクル発電プラント101は、ST通気後において蒸気切替を実施するため、排熱回収ボイラ104において、低圧蒸気が充分発生し、冷却蒸気の切替が可能な状態となっても切替が実施されなかった。これにより、コンバインドプラント101が定常状態になるまでの排熱回収ボイラ104の運転時間が長くなるため、蒸気ロスが生じていた。
【0013】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、信頼性を確保しながら、起動時における蒸気損失を低減するコンバインドサイクル発電プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明は、ガスタービンと、該ガスタービンに同軸状に接続された蒸気タービンと、前記ガスタービンの排気により主蒸気を発生する排熱回収ボイラと、補助蒸気を発生する補助蒸気発生装置と、前記主蒸気における圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測する計測器と、前記ガスタービンの起動後に前記蒸気タービンに供給される蒸気を前記補助蒸気から前記主蒸気に切り替える切替手段と、を備えたコンバインドサイクル発電プラントにおいて、前記切替手段は、前記排熱回収ボイラから発生する主蒸気がST通気前に確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを示すデータと、前記計測器によって計測された圧力、温度、及び流量の少なくとも一つとに基づいて、前記排熱回収ボイラの主蒸気が確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを判断し、この判断がなされた時点で即座に上記切り替えを行うように構成されたことを特徴とする。
【0015】
前記計測器は、前記排熱回収ボイラの低圧過熱器によって供給される主蒸気における圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測するように構成されることが好ましい。
【0016】
上記発明によれば、コンバインドサイクル発電プラントの起動時における冷却蒸気切替が排熱回収ボイラから発生する低圧蒸気が確実に確保された段階で実施されるため、ST通気を待つ必要がなく早期に完了する。これにより、コンバインドプラント起動時における蒸気損失が低減される。
【0017】
また、本発明は、ガスタービンと、該ガスタービンに同軸状に接続された蒸気タービンと、前記ガスタービンの排気により主蒸気を発生する排熱回収ボイラと、補助蒸気を発生する補助蒸気発生装置と、前記主蒸気の圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測する計測器と、前記ガスタービンの起動後に前記蒸気タービンに供給される蒸気を前記補助蒸気から前記主蒸気に切り替える切替手段と、を備えたコンバインドサイクル発電プラントの運転方法であって、前記排熱回収ボイラから発生する主蒸気がST通気前に確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを示すデータを予め取得しておき、前記計測器によって前記圧力、前記温度、及び前記流量の少なくとも一つを計測するとともに、前記圧力、前記温度、及び前記流量の少なくとも一つと前記データとに基づいて前記排熱回収ボイラの主蒸気が確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを判断し、この判断がなされた時点で即座に上記切り替えを行うことを特徴とする。
【0018】
上記コンバインドサイクル発電プラントの運転方法は、前記計測器により前記排熱回収ボイラの低圧過熱器によって供給される主蒸気における圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測することが好ましい。
【0019】
上記発明によれば、コンバインドサイクル発電プラントの起動時における冷却蒸気切替が排熱回収ボイラから発生する低圧蒸気が確実に確保された段階で実施されるため、ST通気を待つ必要がなく早期に完了する。これにより、コンバインドプラント起動時における蒸気損失が低減される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンバインドサイクル発電プラントの起動時における冷却蒸気切替が排熱回収ボイラから発生する低圧蒸気が確実に確保された段階で実施されるため、ST通気を待つ必要がなく早期に完了する。これにより、コンバインドプラント起動時における蒸気損失が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のコンバインドサイクル発電プラントの概略系統図である。
【図2】低圧主蒸気供給配管及び補助蒸気供給管の概略系統図である。
【図3】本発明の実施形態のコンバインドサイクル発電プラントの蒸気切替を説明する図である。
【図4】冷却蒸気切替が実施されるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】従来のコンバインドサイクル発電プラントの概略系統図である。
【図6】従来のコンバインドサイクル発電プラントの蒸気切替を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の一軸型コンバインドプラント1は、ガスタービン2に蒸気タービン3を1軸により、同軸状に接続したものであり、ガスタービン2と蒸気タービン3の回転駆動力により発電機5を駆動して発電させるように構成されている。ガスタービン2の排気出口には、排熱回収ボイラ4(HRSG)が接続されている。また、蒸気タービン3には、復水器6及び復水ポンプ18が設けられており、蒸気タービン3で膨張仕事をして駆動した後の蒸気を復水器6に排出させて復水に凝縮するようになっている。また、コンバインドプラント1は、蒸気タービン3に冷却蒸気を供給するための補助蒸気発生装置7を備えている。
【0023】
ガスタービン2には、燃焼用空気を圧縮する圧縮機8(C)と、圧縮された高圧空気と燃料との混合気を燃焼させて高温高圧の燃焼ガスを供給する燃焼器9と、タービン10(T)とが設けられている。
蒸気タービン3は、高圧蒸気タービン11(HP)、中圧蒸気タービン12(IP)、低圧蒸気タービン13(LP)の3つのタービンを具備している。
排熱回収ボイラ4には、高圧蒸気タービン11に供給される高圧蒸気を過熱する高圧過熱器14、中圧蒸気タービン12に中圧蒸気を供給する中圧過熱器15、低圧蒸気タービン13に低圧蒸気を供給する低圧過熱器16が設けられている。さらに、排熱回収ボイラ4には、高圧蒸気タービン11に対して仕事をした蒸気を再加熱する、再熱器17(RH)が設けられている。
【0024】
高圧過熱器14と高圧蒸気タービン11とを接続する高圧主蒸気供給配管21、再熱器17と中圧過熱器15と中圧蒸気タービン12とを接続する再熱蒸気管22、及び低圧過熱器16と低圧蒸気タービン13とを接続する低圧主蒸気供給配管23には、それぞれタービンバイパス配管25,26,27が設けられている。高圧主蒸気供給配管21のタービンバイパス配管25は高圧蒸気タービン11の出口管124にバイパスされ、再熱蒸気管22のタービンバイパス配管26及び低圧主蒸気供給配管23のタービンバイパス配管27は復水器6にバイパス接続されている。また、タービンバイパス配管25,26,27には、それぞれタービンバイパス弁28が設けられており、排熱回収ボイラ4の蒸気出力が上昇するに伴い徐々に閉じられるように構成されている。
補助蒸気発生装置7は、補助蒸気供給管30を介して低圧主蒸気供給配管23に接続されている。
【0025】
また、高圧主蒸気供給配管21の下流には、主蒸気止め弁31と主蒸気調整弁32が設けられており、高圧蒸気タービン11への主蒸気の供給を主蒸気止め弁31の全閉により阻止、又は主蒸気の供給流量を主蒸気調整弁32によって調整するようになっている。同様の主蒸気止め弁31と主蒸気調整弁32が、再熱蒸気管22及び低圧主蒸気供給配管23にも設けられている。
【0026】
図2は、低圧主蒸気供給配管23と補助蒸気供給管30の構成を示す模式図である。
低圧主蒸気供給配管23は、図1に示すコンバインドプラント1を構成する排熱回収ボイラ4の低圧過熱器16と低圧蒸気タービン13とを接続する配管である。
低圧主蒸気供給配管23の最も上流側(低圧過熱器16側)には、流量計33(FX)、温度計34(TE)、及び圧力計35(PX)が設けられている。タービンバイパス配管27は、これら計測装置の下流に接続されており、このタービンバイパス配管27は、復水器6にバイパス接続されている。更に下流側には、主蒸気の供給を遮断するための低圧主蒸気供給弁36が設けられている。
【0027】
補助蒸気供給管30は、低圧主蒸気供給配管23の途中であって低圧主蒸気供給弁36の下流側に接続されており、低圧主蒸気供給配管23に冷却蒸気を供給している。補助蒸気供給管30の最も上流側(補助蒸気発生装置7側)には、冷却蒸気圧力調整弁45が設けられている。冷却蒸気圧力調整弁45の更に下流側には、減温器37が設けられており、この減温器37には減温水供給配管38が接続されている。減温器37と低圧主蒸気供給配管23の間には温度計39が設置され、温度計39の更に下流側には冷却蒸気供給弁40が設けられている。
【0028】
減温器37は、補助蒸気供給管30を介して補助蒸気発生装置7により供給される補助蒸気をスプレー水により減温する装置である。スプレー水は、減温水供給配管38を介して低圧給水ポンプ42より供給される。減温水供給配管38には、冷却蒸気温度調整弁43が設けられている。補助蒸気発生装置7によって供給される補助蒸気は、温度計39によって調節される。具体的には、補助蒸気発生装置7によって供給される補助蒸気は、温度計39から取り込んだ温度信号に基づいて制御器19が冷却蒸気温度調整弁43を制御することにより調整される。
【0029】
また、低圧主蒸気供給配管23において、補助蒸気供給管30の接続部と主蒸気止め弁31との間には圧力計44が設けられている。圧力計44は、低圧蒸気タービン13手前の圧力を測定しており、圧力計44から取り込んだ圧力信号に基づいて制御器19が冷却蒸気圧力調整弁45を制御する。
【0030】
低圧主蒸気供給弁36及び冷却蒸気供給弁40は、制御器19を介して流量計33、温度計34、及び圧力計35と接続されており、制御器19によって開閉制御される。具体的な制御方法は後述する。
【0031】
次に、本実施形態のコンバインドプラント1の作用について説明する。図3は、コンバインドプラント1の起動から定常状態に至る過程における主蒸気、補助蒸気の流れ、及び弁の切り替え、つまり、蒸気切替を順に示す図である。
図4は、コンバインドプラント1の起動から定常状態に至る過程におけるST通気条件、低圧蒸気切替条件が満たされるタイミング、及び冷却蒸気切替が実施されるタイミングを示すタイミングチャートであり、(a)は従来、(b)は本実施形態のコンバインドサイクル発電プラントのタイミングチャートである。また、図4において、「0」は条件が満たされず、「1」は条件が満たされたことを示す。
【0032】
図3(a)に示すように、ガスタービン2が起動すると、ガスタービン2から排出される排気ガスが排熱回収ボイラ4に送られる。次いで、排熱回収ボイラ4において、主蒸気Dが生成され、各主蒸気供給配管21,22,23に送られる。この段階において、主蒸気止め弁31、主蒸気調整弁32、及び低圧主蒸気供給弁36は閉状態とされていると共に、タービンバイパス弁28は開状態とされており、主蒸気Dは蒸気タービン3には供給されず、タービンバイパス配管25,26,27を介して高圧蒸気タービン11の出口管24及び復水器6にバイパスされる。
【0033】
一方、ガスタービン2の起動と共に、補助蒸気発生装置7が起動され、補助蒸気が生成される。このとき、冷却蒸気供給弁40が開状態とされており、低圧蒸気タービン13には、減温器37によって冷却された補助蒸気である冷却蒸気Aが供給される。
【0034】
低圧過熱器16によって供給される主蒸気Dの低圧主蒸気量F、低圧主蒸気温度T、及び低圧主蒸気圧力Pは、流量計33、温度計34、及び圧力計35によって計測されている。計測された値は制御器19に送信され、制御器19は、図4のタイムチャートに示すように、圧力、流量、及び温度が以下の条件(低圧蒸気切替条件)を満たした時点で、低圧蒸気切替を実施する。
圧力、温度、及び流量の条件は、以下である。
低圧主蒸気圧力P>P(MPa)
低圧主蒸気温度T>T(℃)
低圧主蒸気量F>F (t/h)
【0035】
つまり、低圧蒸気タービン13に供給される蒸気は、ST通気を待つことなく補助蒸気発生装置7より供給される冷却蒸気Aから、低圧過熱器16から供給される低圧蒸気に切り替えられる。図3(b)に蒸気切替実施後の主蒸気D及び冷却蒸気Aの流れを示す。
【0036】
具体的には、流量計33、温度計34、及び圧力計35によって計測された値が上記低圧蒸気切替条件を満たしたとき、低圧主蒸気供給弁36がインチング開とされる。低圧主蒸気供給弁36が開状態となることで、主蒸気Dが低圧蒸気タービン13側に流れ、主蒸気止め弁31の上流の圧力がPからPに徐々に上昇する。主蒸気止め弁31の上流の圧力は圧力計44によって計測されており、圧力がPより高くなると、冷却蒸気圧力調整弁45が閉状態とされる。一方、冷却蒸気温度調整弁43(図2参照)は、蒸気量低減によって温度制御が不安定となることを避けるため、低圧主蒸気供給弁36が規定開度となった状態で全閉状態とされる。最後に、冷却蒸気供給弁40が閉状態とされ、蒸気切り替えが完了する。
【0037】
これに対し、図4に示すように、従来のコンバインドサイクル発電プラントにおいては、ST通気状態を待って冷却蒸気切替をおこなうため、時間t冷却蒸気切替の完了が遅くなる。言い換えれば、本実施形態のコンバインドサイクル発電プラントは、従来のコンバインドサイクル発電プラントと比較して時間t冷却蒸気切替が早く完了する。
【0038】
なお、上記条件において、低圧主蒸気圧力Pは、冷却蒸気Aの運用圧力であるPに対して、余裕を考慮して定められた値である。つまり、冷却蒸気Aの運用圧力よりも圧力が低いと、冷却蒸気Aが排熱回収ボイラ4方向に逆流する可能性がある。これを排除するために定められた値である。
また、低圧主蒸気温度Tは、冷却蒸気Aの運用温度Tと同じとした。低圧主蒸気量Fについては、圧力Pと同様に、冷却蒸気量Fに対して、余裕を考慮して定められた値である。
【0039】
図3(c)に示すように、排熱回収ボイラ4で生成される主蒸気Dが十分発生した段階で、タービンバイパス弁28が閉状態とされるとともに、主蒸気止め弁31及び主蒸気調整弁32が開状態とされ、主蒸気Dが蒸気タービン3に供給され、コンバインドプラント1は定常状態となる。
【0040】
上記実施形態によれば、蒸気切替は、排熱回収ボイラ4から発生する低圧蒸気が確実に確保された段階で実施されるため、ST通気を待つ必要がなく、早期に完了する。これにより、コンバインドプラント1の信頼性を確保しながら、コンバインドプラント1起動時における蒸気損失(起動ロス、蒸気ロス)が低減される。
【0041】
なお、本実施形態では、蒸気切替は、圧力、温度、及び流量に基づいて実施する構成としたが、これに限ることはなく、これら圧力、温度、及び流量の少なくとも一つに基づいて実施する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…コンバインドサイクル発電プラント、2…ガスタービン、3…蒸気タービン、4…排熱回収ボイラ、19…制御器(切替手段)、33…流量計(計測器)、34…温度計(計測器)、35…圧力計(計測器)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、
該ガスタービンに同軸状に接続された蒸気タービンと、
前記ガスタービンの排気により主蒸気を発生する排熱回収ボイラと、
補助蒸気を発生する補助蒸気発生装置と、
前記主蒸気における圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測する計測器と、
前記ガスタービンの起動後に前記蒸気タービンに供給される蒸気を前記補助蒸気から前記主蒸気に切り替える切替手段と、を備えたコンバインドサイクル発電プラントにおいて、
前記切替手段は、前記排熱回収ボイラから発生する主蒸気がST通気前に確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを示すデータと、前記計測器によって計測された圧力、温度、及び流量の少なくとも一つとに基づいて、前記排熱回収ボイラの主蒸気が確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを判断し、この判断がなされた時点で即座に上記切り替えを行うように構成されたことを特徴とするコンバインドサイクル発電プラント。
【請求項2】
前記計測器は、前記排熱回収ボイラの低圧過熱器によって供給される主蒸気における圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測するように構成された請求項1に記載のコンバインドサイクル発電プラント。
【請求項3】
ガスタービンと、
該ガスタービンに同軸状に接続された蒸気タービンと、
前記ガスタービンの排気により主蒸気を発生する排熱回収ボイラと、
補助蒸気を発生する補助蒸気発生装置と、
前記主蒸気の圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測する計測器と、
前記ガスタービンの起動後に前記蒸気タービンに供給される蒸気を前記補助蒸気から前記主蒸気に切り替える切替手段と、を備えたコンバインドサイクル発電プラントの運転方法であって、
前記排熱回収ボイラから発生する主蒸気がST通気前に確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを示すデータを予め取得しておき、
前記計測器によって前記圧力、前記温度、及び前記流量の少なくとも一つを計測するとともに、
前記圧力、前記温度、及び前記流量の少なくとも一つと前記データとに基づいて前記排熱回収ボイラの主蒸気が確実に確保され且つ途中で蒸気量が減少することがないことを判断し、この判断がなされた時点で即座に上記切り替えを行うことを特徴とするコンバインドサイクル発電プラントの運転方法。
【請求項4】
前記計測器により、前記排熱回収ボイラの低圧過熱器によって供給される主蒸気における圧力、温度、及び流量の少なくとも一つを計測する請求項3に記載のコンバインドサイクル発電プラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−15043(P2013−15043A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147201(P2011−147201)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】