説明

コンバインドサイクル発電所の送ガス圧力制御方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、LNG貯蔵基地からのLNGを一本の送ガスをコンバインドサイクル発電所に供給する方法に係り、特にその各発電所でのLNG入口圧力を安定して制御できるコンバインドサイクル発電所の送ガス圧力制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】コンバインドサイクル発電所の送ガス方式は、それぞれ距離的に離れた発電所を一本の送ガス導管を介して結び、LNG貯蔵基地から送ガス導管を介し全発電量に見合った量のLNGを供給して各発電所の発電タービンを駆動するものである。この各発電所のタービンを駆動する場合、そのタービンの入口圧力の変動幅は、3〜5kg/cm2 に抑える必要がある。
【0003】通常、送ガス導管の送ガス圧力は、タービンの入口圧力より高く設定され、各発電所には減圧弁が接続され、各発電所での発電量に応じて減圧弁の開度を調整して発電量に見合ったLNGを導入すると共にタービンの入口圧力が所定の範囲に収まるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、各発電所は、一本の送ガス導管を介して結ばれており、各発電所では、それぞれ独立して運転するため、各発電所での圧力制御点の選定が難しい問題がある。
【0005】今、例えばLNGの消費量を決め、これに基づいて圧力損失を考慮して減圧弁の入口の設定圧力を設定し、LNGをその消費量に応じて供給すれば、各発電所での入口圧力は設定圧力にあり、タービンの入口圧力を所定の変動幅内に収めることができる。しかしながらこの各発電所の設定圧は、各発電所の距離を考慮して設定してあるものの、LNGの消費量が変わればその設定圧も変化するため、実際に時々変化するLNGの消費量に対して各発電所の圧力制御点を適正に選定することは困難である。
【0006】通常、設定圧力に対して圧力が変動しても減圧弁で調整すれば、一応変動幅内に収めることは可能であるが、この減圧弁による調整には限度があり、例えば距離的に離れた発電所間で一方はLNGの消費量が少なく、他方は多い場合等では、これら発電所のLNGの全消費量を基にLNGを供給しようとすると、遠方の発電所では圧力損失が、タービンの変動幅より上回ってしまい減圧弁でタービンの入口圧力を所定の変動幅に抑えることができなくなる問題がある。
【0007】そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、一本の送ガス導管を介して各発電所にLNGを供給するにおいて、各発電所のタービン入口圧を所定の変動幅に抑えることができるコンバインドサイクル発電所の送ガス圧力制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、LNG貯蔵基地からのLNGを、調整弁を介し一本の送ガス導管を通して複数箇所の発電所に供給すると共に各発電所で、送ガス導管からのLNGをそれぞれ減圧弁で圧力調整してタービンに供給するコンバインドサイクル発電所の送ガス圧力制御方法において、各発電所の減圧弁の入口圧力を、予め送ガス管の圧力損失に応じて設定し、各発電所で減圧弁入口側の実際の供給圧力と設定圧力との差から制御出力を求めると共にその各制御出力の内で最も大きいものを選択し、この制御出力値を流量制御の設定として、その設定値にてLNG貯蔵基地の総流量を制御するものである。
【0009】
【作用】上記構成によれば、各発電所に導入されるLNGの実際圧力と設定圧との差から制御出力を求め、その制御出力の内大きい方を選択し、その制御出力値を設定値として総流量を補正することで、実際の変動に応じた適切な圧力制御が行え、発電所のタービンの入口圧力の変動幅を所定内に抑えることが可能となる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
【0011】図1において、LNG貯蔵基地6には流量調整弁1を介して送ガス導管7が接続される。この流量調整弁1の出口側には送ガス入口流量計5bと送ガス入口圧力計5aが接続される。この送ガス導管7は、LNG貯蔵基地6から距離a離れた発電所8aまで敷設され、その発電所8aから距離b離れた発電所8bまで敷設される。送ガス導管7から各発電所8a,8bへのLNGの供給は、減圧弁2a,2bを介して、各発電所8a,8bのタービン9に供給されるようになっている。この減圧弁2a,2bの入口側には、送ガス入口圧力計3a,3bと送ガス入口流量計4a,4bが接続される。
【0012】各発電所8a,8bでは要求発電量に見合った数のタービン9を駆動すると共にそのタービン9にLNGを供給すべく、必要な消費量を流量計4a,4bの流量値を基に減圧弁2a,2bの開度を調整する。
【0013】各発電所8a,8bのLNG消費量(送ガス流量計4a,4bの総流量値),送ガス入口圧力計3a,3bの検出値は、基地6側の圧力制御装置A(図2R>2)に送信される。LNG貯蔵基地6では、通常、LNG消費量が入力されると、送ガス入口圧力計5aが設定供給圧力で送ガス入口流量計5bがLNG消費量に見合うように流量調整弁1の開度を調整するが、各発電所からの上述した検出値に応じてその流量調整弁1の開度を補正して供給し、LNGを実際の圧力損失に応じた送ガス量となるよう制御するようになっている。
【0014】図2はこの圧力制御装置Aを示すものである。
【0015】先ず各発電所8a,8bでは、例えば標準のLNG消費量に見合って供給圧力と流量を設定して送ガス導管7にLNGを流した時、距離に応じた圧力損失を考慮し、各発電所8a,8bの減圧弁2a,2bの入口設定圧力SVa,SVbを設定する。この設定圧力SVa,SVbは、それぞれPID制御器10a,10bに入力され、他方送ガス入口圧力計3a,3bの実際の検出値PVa,PVbが入力される。PID制御器10a,10bは、この設定圧力SVと実際の圧力PVと比例・積分・微分を行って例えば0〜100の制御出力値を出力する。この各PID制御器10a,10bの制御出力値はハイセレクタ11に入力される。ハイセレクタ11は、この制御出力値の内、大きいほうを選択し、これを制御値として流量制御器12に入力する。流量制御器12には、各発電所8a,8bでのLNG総流量が入力されており、この総流量をハイセレクタ11からの制御出力値で補正してハイセレクタ13を介して流量調整弁1に出力してLNG供給量を調整する。
【0016】このように各PID制御器10a,10bの制御出力値の大きいほうを選択すること、すなわち、圧力損失が大きく最も圧力が低くなる発電所に合せて供給量を制御することで、タービンの入口側の圧力変動幅を所定範囲内に収めることが可能となる。
【0017】なお、このハイセレクタ13には、LNG貯蔵基地6側のLNG供給量が入力され、各発電所からの圧力と流量の送信が断線事故などで受信できないない場合、基地6側で流量調整弁1を制御することができるようになっている。すなわち、各発電所8a,8bでLNG消費量が決定されると、その消費量に見合った供給量となるよう調整弁1の開度が設定される。この場合、先ず入口圧力計5aで検出した圧力が圧力制御器14に入力され、その圧力が設定供給圧力となるように制御出力が流量制御器15に入力され、これを基に流量制御器15は送ガス入口流量計5bによる流量値が適正になるように制御流量値をハイセレクタ13に出力する。この場合ハイセレクタ11は、通常は圧力損失を考慮した流量制御器12の出力値の方が高いため、流量制御器12の出力値で流量調整弁1を制御するが、各発電所からの圧力と流量の送信が断線事故などで受信できないない場合、基地6側で設定した制御流量値で流量調整弁1を制御することが可能となる。
【0018】なお、上述の実施例では発電所を2箇所で説明したが3箇所以上あってもよいことは勿論である。
【0019】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、各発電所に導入されるLNGの実際圧力と設定圧との差から制御出力を求め、その制御出力の内大きい方を選択し、その制御出力値に基づいて総流量を補正することで、実際の変動に応じた適切な圧力制御が行え、発電所のタービンの入口圧力の変動幅を所定内に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】本発明における圧力制御装置の詳細を示す回路のブロック図である。
【符号の説明】
1 流量調整弁
2a,2b 減圧弁
3a,3b 送ガス入口圧力計
4a,4b 送ガス入口流量計
5a 送ガス出口圧力計
5b 送ガス出口流量計
6 LNG貯蔵基地
7 送ガス導管
8a,8b 発電所
9 タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 LNG貯蔵基地からのLNGを、調整弁を介し一本の送ガス導管を通して複数箇所の発電所に供給すると共に各発電所で、送ガス導管からのLNGをそれぞれ減圧弁で圧力調整してタービンに供給するコンバインドサイクル発電所の送ガス圧力制御方法において、各発電所の減圧弁の入口圧力を、予め送ガス管の圧力損失に応じて設定し、各発電所で減圧弁入口側の実際の供給圧力と設定圧力との差から制御出力を求めると共にその各制御出力の内で最も大きいものを選択し、この制御出力値を流量制御の設定値として、その設定値にてLNG貯蔵基地の総流量を調整制御することを特徴とするコンバインドサイクル発電所の送ガス圧力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】特許第3312396号(P3312396)
【登録日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【発行日】平成14年8月5日(2002.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−258073
【出願日】平成4年9月28日(1992.9.28)
【公開番号】特開平6−108876
【公開日】平成6年4月19日(1994.4.19)
【審査請求日】平成11年3月1日(1999.3.1)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−207831(JP,A)
【文献】特開 平4−179835(JP,A)
【文献】特開 昭61−141018(JP,A)
【文献】実開 昭55−103711(JP,U)