説明

コンバインド発電設備の運転方法及びコンバインド発電設備

【課題】調速段ノズルの構造を変更することなく、最小限の改造により高い熱効率を有する既設蒸気タービンを流用したコンバインド発電設備の運転方法及びコンバインド発電設備を提供する。
【解決手段】コンバインド発電設備の運転方法は、ガスタービンの燃焼排ガスを用いて蒸気を発生させる排熱回収ボイラから排気される蒸気流量に応じて、4つの主蒸気加減弁のうち、第3の主蒸気加減弁及び第4の主蒸気加減弁の弁を開けず、かつ、第1の主蒸気加減弁及び第2の主蒸気加減弁の弁開度を制御する工程と、を有する。さらに、当該主蒸気加減弁の当該第1の蒸気加減弁及び当該第2の蒸気加減弁の弁開度の制御によって調速段ノズルへ流入する主蒸気の流量を制御する工程と、を有する。また、当該調速段ノズルの主蒸気の流量に応じて当該蒸気タービンを仕事させる工程と、を有する。さらに、当該蒸気タービンが行う仕事によって当該発電機を駆動する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、コンバインド発電設備の運転方法及びコンバインド発電設備に関
する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化が世界的に叫ばれる中、大量の化石燃料を使用し、地球温暖化の原因の一つ
である二酸化炭素を多く排出する火力発電設備において、二酸化炭素の排出量を低減する
ことは急務である。この対策の一つとして、既設の蒸気タービン発電設備を、より熱効率
の高いガスタービンと組合せたコンバインド発電設備(以下、コンバインド発電設備とい
う。)に改修することが考えられる。
【0003】
しかし、これには莫大な費用を必要とし、このことが従来の蒸気タービン発電設備をコ
ンバインド発電設備にする際の大きな問題のひとつであった。この対策として、可能限り
、既設の蒸気タービン設備を流用して、その工期や建設費を低減させるという方法がある

【0004】
一方、コンバインド発電設備で必要とされる蒸気タービンの定格出力は、ガスタービン
の定格出力に依存して決まり、既存の蒸気タービン設備をコンバインド発電設備に改修す
る場合、既設蒸気タービンが最適な定格出力より大きくなる場合が多い。そのため、既設
の蒸気タービンをそのまま使用すると、蒸気タービンへの主蒸気流量が最適な流量より少
ないことから、蒸気タービン入口圧力が低下し、著しく性能が低下してしまう。
【0005】
ここで、蒸気タービン入口圧力を上昇させる方法として、一部の段落、もしくは全部の
段落のノズルの蒸気通路部の一部を物理的に閉止(以下、部分挿入という。)する方法が
ある。しかし、当該方法では、蒸気タービンに流入する蒸気流量が変化した場合は、最適
な蒸気タービン入口圧力とするためのノズル部分挿入率は変化し、これを最適に変更する
場合は、ノズルの構造的な変更が必要となるが、特に調速段ノズルの構造的変更は、他の
段落のノズルと比較してコストが高価である。
【0006】
また、蒸気タービンの最適主蒸気流量を発生させる為に複数台のガスタービン、及び排
熱回収ボイラを設置する解決策もあるが、敷地の制約がある場合が多く、設置可能な場合
でも、工期や建設費用の増加が避けられないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−115707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、調速段ノズルの構造を変更することなく、最小限の
改造により高い熱効率を有する既設蒸気タービンを流用したコンバインド発電設備の運転
方法及びコンバインド発電設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のコンバインド発電設備の運転方法は、ガスタービンの燃焼排ガスを用いて蒸
気を発生させる排熱回収ボイラから排気される蒸気流量に応じて、4つの主蒸気加減弁の
うち、第3の主蒸気加減弁及び第4の主蒸気加減弁の弁を開けず、かつ、第1の主蒸気加
減弁及び第2の主蒸気加減弁の弁開度を制御する工程と、を有する。さらに、当該主蒸気
加減弁の当該第1の蒸気加減弁及び当該第2の蒸気加減弁の弁開度の制御によって調速段
ノズルへ流入する主蒸気の流量を制御する工程と、を有する。また、当該調速段ノズルの
主蒸気の流量に応じて当該蒸気タービンを仕事させる工程と、を有する。さらに、当該蒸
気タービンが行う仕事によって当該発電機を駆動する工程と、を有する。
【0010】
また、実施形態のコンバインド設備は、ガスタービンの燃焼排ガスを用いて蒸気を発生
させる排熱回収ボイラから排気される蒸気流量に応じて、4つの蒸気加減弁のうち、第3
の蒸気加減弁及び第4の蒸気加減弁の弁を開けず、かつ、第1の蒸気加減弁及び第2の蒸
気加減弁の弁開度を制御する手段と、を有する。さらに、当該主蒸気加減弁の当該第1の
蒸気加減弁及び当該第2の蒸気加減弁の弁開度の制御によって調速段ノズルへ流入する主
蒸気の流量を制御する手段と、を有する制御部と、を有する。また、当該調速段ノズルの
主蒸気の流量に応じて蒸気タービンを仕事させる手段と、を有する。さらに、当該蒸気タ
ービンが行う仕事によって発電機を駆動する手段と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態のコンバインド発電設備の概略図。
【図2】第1の実施形態のコンバインド発電設備の高圧蒸気タービンのノズルガバニング調速方式を示す概略図。
【図3】第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の主蒸気加減弁の弁開度を示すグラフ。
【図4】第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の主蒸気加減弁の制御を示すフローチャート図。
【図5】第2の実施形態のコンバインド発電設備の概略図。
【図6】第2の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の主蒸気加減弁の弁開度を示すグラフ。
【図7】第2の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の主蒸気加減弁の制御を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態の既設蒸気タービンを流用したコンバインド発電設備の運転方法に
ついて、図面を用いて説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部
分には同一または類似の符号が付してある。
【0014】
まず、第1の実施形態の既設蒸気タービンを流用したコンバインド発電設備の概略につ
いて説明する。図1は、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の概略図であ
る。
【0015】
図1は、既設蒸気タービンへの主蒸気流量が最適な流量より少ない例として、1台のガ
スタービンとその排熱を利用して蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させる1台の
排熱回収ボイラと、既設蒸気タービンから構成されるコンバインド発電設備を示している

【0016】
図1に示すように、第1の実施形態のコンバインド発電設備は、ガスタービン10の燃
焼排ガスから蒸気タービン駆動用の蒸気を発生させる再加熱器を有する排熱回収ボイラ9
と、排熱回収ボイラ9の蒸気により駆動する高圧蒸気タービン1と、再熱器により再加熱
された高圧蒸気タービン1の排気蒸気により駆動する中圧蒸気タービン2と、中圧蒸気タ
ービン2の排気蒸気と排熱回収ボイラ9の低圧混入蒸気により駆動する低圧蒸気タービン
3と、を備える。
【0017】
ここで、ガスタービン10は、外部から供給される燃料と空気圧縮機11から供給され
る空気を取り込んで燃焼させて、ガスタービン10の軸と同一の軸である発電機12を駆
動して発電する。また、ガスタービン10は、燃焼した後に発生する排熱を排熱回収ボイ
ラ9に排気する。
【0018】
排熱回収ボイラ9は、ガスタービン10からの排熱と高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タ
ービン2、低圧蒸気タービン3への給水または蒸気とを熱交換し、高圧蒸気タービン1、
中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3を駆動するための蒸気を発生させる。
【0019】
また、高圧蒸気タービン1は、排熱回収ボイラ9より供給される主蒸気によって、最初
に仕事をして発電機5を駆動する。
【0020】
また、中圧蒸気タービン2は、蒸気の流れにおいて、高圧蒸気タービン1と低圧蒸気タ
ービン2の間に位置しており、高圧蒸気タービン1の抽気蒸気を排熱ボイラ9にて再加熱
した再熱蒸気によって仕事をして発電機5を駆動する。
【0021】
さらに、低圧蒸気タービン3は、蒸気の流れにおいて最後に仕事をし、発電機5を駆動
して発電する。また、その排気は排気を凝縮する復水器4に導入される。また、復水器4
において凝縮された低圧タービン3の排気は、復水器4と復水ポンプ6、グランド蒸気コ
ンデンサ7および給水ポンプ8を介して、排熱回収ボイラ9に供給される。
【0022】
なお、第1の実施形態では、既設蒸気タービンとは、既に蒸気タービン発電設備として
建設され、運用もしくは休止・廃止されている蒸気タービンをいう。
【0023】
ここで、制御部22は、図1の点線矢印に示すように、高圧蒸気タービン1、中圧蒸気
タービン2、低圧蒸気タービン3の主蒸気量を常に計測している。さらに、制御部22は
、図1の点線矢印に示すように、高圧蒸気タービン1の後述する主蒸気加減弁20の第1
弁乃至第4弁の弁開度を計測するとともに、当該主蒸気加減弁20の第1弁乃至第4弁の
制御する制御信号を高圧蒸気タービン1に送信している。
【0024】
ここで、第1の実施形態のように、既設蒸気タービン発電設備を用いてコンバインド発
電設備にする場合には、排熱回収ボイラ9から蒸気タービンを駆動するために、高圧蒸気
タービン1に供給される主蒸気流量が最適な流量より少なくなっている。第1の実施形態
では、例えば、最適流量の1/2であったとする。このような高圧蒸気タービン1への主
蒸気流量では、高圧蒸気タービン1の、後述する調速ノズル21の入口圧力が大きく低下
してしまい、蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タ
ービン3の仕事量が低下してしまう。
【0025】
次に、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法について、説明する。図2は
、第1の実施形態のコンバインド発電設備の高圧蒸気タービンのノズルガバニング調速方
式を示す概略図であり、図3は、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の主
蒸気加減弁の弁開度を示すグラフである。
【0026】
まず、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法は、コンバインド発電設備に
改造を行うノズルガバニング調速方式を有する既設蒸気タービン発電設備を対象とする。
【0027】
ここで、図2に示すように、ノズルガバニング調速方式とは、高圧蒸気タービン1の主
蒸気加減弁20と、蒸気タービンの主蒸気流れの最も上流であって主蒸気が最初に流入す
る調速段ノズル21を用いて、主蒸気流量を主蒸気加減弁20の開弁数と各弁の弁開度に
よって調整する方式である。
【0028】
具体的には、図2に示すように、高圧蒸気タービン1の主蒸気加減弁20は、それぞれ
2つの弁を持っている。例えば、主蒸気加減弁20は、図面右から左方向に、第1弁、第
2弁、第3弁、第4弁を備えている。主蒸気加減弁20を介して流れてくる主蒸気は、高
圧蒸気タービン1の調速段ノズル21に流れ込む。
【0029】
ここで、高圧蒸気タービン1の調速段ノズル21の入り口は、主蒸気加減弁20の弁数
に対応するように、4つの入り口に区切られている。高圧蒸気タービン1の調速段ノズル
21の入り口の番号は、高圧蒸気タービン1の主蒸気加減弁20の第1弁から第4弁まで
の番号に対応しており、反時計回りに、主蒸気加減弁20の第1弁から第4弁へ流れ込む
主蒸気の流れを受け入れる。
【0030】
さらに、主蒸気の流れの方向によって、高圧蒸気タービン1の調速段ノズル21には、
高圧蒸気タービン1の主蒸気加減弁20の第1弁に対応する入り口GV#1では、図面左
下の矢印方向に蒸気による力が発生し、高圧蒸気タービン1の主蒸気加減弁20の第2弁
に対する入り口GV#2では、図面右下の矢印方向に蒸気による力が発生することとなる
。同様に、高圧蒸気タービン1の主蒸気加減弁20の第3弁に対応する入り口GV#3で
は、図面右上の矢印方向に蒸気による力が発生し、高圧蒸気タービン1の主蒸気加減弁2
0の第4弁に対する入り口GV#4では、図面左上の矢印方向に蒸気による力が発生する
こととなる。
【0031】
ここで、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法は、高圧蒸気タービン1の
入口の圧力を上昇させる方法として、調速段ノズル21を部分挿入とすることとした。こ
こで、部分挿入とは、高圧蒸気タービン1の蒸気通路部を構成する調速段ノズル21の蒸
気が流れる部分の一部を閉止することである。
【0032】
また、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法は、調速段ノズル21を部分
挿入する方法として、全4弁から構成される主蒸気加減弁20及び第2主蒸気加減弁21
のアドミッションにより、部分挿入することとした。ここで、アドミッションとは、主蒸
気加減弁20の開弁パターンを意味する。
【0033】
ここで、図3、図4を参照して、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の
主蒸気加減弁の弁開度の制御を示す。図3は、第1の実施形態のコンバインド発電設備の
運転方法の主蒸気加減弁の弁開度を示すグラフ、図4は、第1の実施形態のコンバインド
発電設備の運転方法の主蒸気加減弁の制御を示すフローチャート図である。
【0034】
図3に示すように、図3の縦軸は、主蒸気加減弁20である主蒸気加減弁の弁開度を表
し、横軸は、コンバインド化改修後の既設蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧
蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3の負荷を表している。
【0035】
ここで、図3では、主蒸気加減弁20の弁開度は、ガスタービン10とその燃焼排ガス
を用いて蒸気タービン駆動用蒸気を発生させる排熱回収ボイラ9からの蒸気流量に併せて
、制御部22によって、最適な弁開度パターンを選定・固定して、蒸気タービンである高
圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3の効率の良い運転を行うよ
うに制御される。ここで、図3では、例えば、最適な弁開度数が2弁であることから、全
4弁中4つの弁の弁開度を制御する制御方式から、全4弁中2つの弁の弁開度を同時に制
御する制御方式に改修して運転する場合について、以下説明する。
【0036】
図3、図4に示すように、主蒸気加減弁20のうち、主蒸気加減弁20の第1弁及び第
2弁の弁開度について、制御部22は、コンバインド化改修後の既設蒸気タービンである
高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3への主蒸気流量が大きく
なるにつれて(図4のステップ1のYes)、徐々に弁開度を大きくしていき、既設蒸気タ
ービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3への主蒸気
流量が最大のときに(図4のステップ2のYes)、主蒸気加減弁20の第3弁及び第4弁
の弁は開けず、かつ、主蒸気加減弁20の第1弁及び第2弁の弁開度が100%となるよ
うに制御する(図4のステップS3)。つまり、図2に示す蒸気加減弁20の第1弁、第2
弁に対応する入り口GV#1、GV#2に主蒸気が流れ込むことになり、蒸気加減弁20
の第3弁、第4弁に対応する入り口GV#3、GV#4には主蒸気が流れ込まないことと
なる。
【0037】
ここで、主蒸気加減弁20の第1弁及び第2弁を同時に制御するのは、主蒸気の流れに
よって発生する力によって、高圧蒸気タービン1が振動を起こさないようにするためであ
る。
【0038】
なお、主蒸気加減弁20の第3弁及び第4弁の弁を開けない制御を行うことにより、こ
れまで、主蒸気流量に合わせて、全4弁の弁開度を制御する制御方式であったものが、主
蒸気加減弁20の第3弁及び第4弁の弁は開かないように制御され、主蒸気加減弁20の
第1弁及び第2弁のみの弁開度を制御する制御方式となる。
【0039】
また、蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービ
ン3の回転数が変動した場合の制御としては、制御部21は、調速段ノズル21の部分挿
入においては、主蒸気加減弁20の第1弁から第4弁の弁開度を適正に制御する。
【0040】
以上から、第1の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法では、従来、主蒸気加減
弁20の全4弁の弁開度を制御する制御方式であったものが、主蒸気加減弁20の第3弁
及び第4弁の弁は開かないように制御して、図2に示す蒸気加減弁20の第3弁、第4弁
に対応する入り口GV#3、GV#4には主蒸気が流れ込まないようにするとともに、主
蒸気加減弁20の第1弁及び第2弁のみの弁開度を制御して、図2に示す蒸気加減弁20
の第1弁、第2弁に対応する入り口GV#1、GV#2には主蒸気が流れ込む制御方式に
して運転することで、高圧蒸気タービン1の入口圧力を高圧にすることが可能となる。よ
って、既設蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気ター
ビン3の性能を向上させることができる。
【0041】
なお、第1の実施形態に挙げたガスタービン10、排熱回収ボイラ9の台数は、あくま
でも、既設蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気ター
ビン3への流入主蒸気流量が最適流量よりも少ない場合の例であり、各機器の数はこの限
りではない。
【0042】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法について、図面を用いて説明す
る。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号
が付してある。
【0043】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、ガスタービン15、空気圧縮機16、
発電機17、排熱回収ボイラ14、給水ポンプ13をさらに有している点であり、ガスタ
ービン15、空気圧縮機16、発電機17、排熱回収ボイラ14、給水ポンプ13の表記
以外は第1の実施形態と同じであるので、同一部分には、同一符号を付して詳細な説明は
省略する。
【0044】
図5は、第2の実施形態のコンバインド発電設備の概略図である。図5は、既設蒸気タ
ービンへの流入主蒸気流量が最適である例として、2台のガスタービン10、15とその
排熱を利用して蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させる2台の排熱回収ボイラ9
、14と、既設蒸気タービンから構成されるコンバインド発電設備である。
【0045】
ここで、図5に示すように、第2の実施形態のコンバインド発電設備は、ガスタービン
10、15の燃焼排ガスから蒸気タービン駆動用の蒸気を発生させる再加熱器を有する排
熱回収ボイラ9、14と、排熱回収ボイラ9、14の主蒸気により駆動する高圧蒸気ター
ビン1と、再熱器により再加熱された高圧蒸気タービン1の排気により駆動する中圧蒸気
タービン2と、中圧蒸気タービン2の排気蒸気と排熱回収ボイラ9、14の低圧混入蒸気
により駆動する低圧蒸気タービン3と、を備える。
【0046】
ここで、ガスタービン10、15は、外部から供給される燃料と空気圧縮機11、16
から供給される空気を取り込んで燃焼させて、ガスタービン10、15の軸とはそれぞれ
同一の軸である発電機12、17を駆動して発電する。また、ガスタービン10、15は
、燃焼した後に発生する排熱を排熱回収ボイラ9、14に排気する。
【0047】
排熱回収ボイラ9、14は、ガスタービン10、15からの排熱と高圧蒸気タービン1
、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3への給水または蒸気とを熱交換し、高圧蒸気
タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3を駆動するための蒸気を発生させ
る。
【0048】
また、高圧蒸気タービン1は、排熱回収ボイラ9、14より供給される主蒸気によって
最初に仕事をして発電機5を駆動する。
【0049】
また、中圧蒸気タービン2は、蒸気の流れにおいて、高圧蒸気タービン1と低圧蒸気タ
ービン2の間に位置しており、高圧蒸気タービン1の抽気蒸気を排熱ボイラ9にて再加熱
した再熱蒸気によって仕事をして発電機5を駆動する。
【0050】
さらに、低圧蒸気タービン3は、蒸気の流れにおいて最後に仕事をし、発電機5を駆動
して発電する。また、その排気は排気を凝縮する復水器4に導入される。また、復水器4
において凝縮された低圧蒸気タービン3の排気は、復水器4と復水ポンプ6、グランド蒸
気コンデンサ7および給水ポンプ8、給水ポンプ13を介して、排熱回収ボイラ9、14
に供給される。
【0051】
また、制御部22は、図5の点線矢印に示すように、高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タ
ービン2、低圧蒸気タービン3の主蒸気量を常に計測している。さらに、制御部22は、
図5の点線矢印に示すように、高圧蒸気タービン1の後述する主蒸気加減弁20の第1弁
乃至第4弁の弁開度を計測するとともに、当該主蒸気加減弁20の第1弁乃至第4弁の弁
開度を制御する制御信号を高圧蒸気タービン1に送信している。また、制御部22は、図
5の点線矢印に示すように、排熱回収ボイラ9、14からの蒸気流量を常に計測している

【0052】
ここで、第2の実施形態の既設蒸気タービン発電設備を用いたコンバインド発電設備で
は、高圧蒸気タービン1への主蒸気流量が最適な流量とする。このような主蒸気条件では
、第1の実施形態の既設蒸気タービンを流用したコンバインド発電設備の運転方法では、
特に、高圧蒸気タービン1の入口圧力が過剰に高くなり、許容圧力を超えて、機器の損傷
を招く可能性がある。
【0053】
次に、第2の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法について、説明する。図6は
、第2の実施形態の既設蒸気タービンを流用したコンバインド発電設備の運転方法の主蒸
気加減弁の弁開度を示すグラフ、図7は、第2の実施形態のコンバインド発電設備の運転
方法の主蒸気加減弁の制御を示すフローチャート図である。
【0054】
図6、図7を参照して、第2の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法の主蒸気加
減弁の弁開度の制御を示す。図6の縦軸は、主蒸気加減弁20である主蒸気加減弁の弁開
度を表し、横軸は、コンバインド化改修後の既設蒸気タービンである高圧蒸気タービン1
、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3の負荷を表している。
【0055】
ここで、図6では、主蒸気加減弁20の弁開度は、ガスタービン10、15とその燃焼
排ガスを用いて蒸気タービン駆動用蒸気を発生させる排熱回収ボイラ9、14からの蒸気
流量に併せて、制御部22によって、最適な弁開度パターンに選定・固定して、蒸気ター
ビンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3の効率の良い
運転を行うように制御される。ここで、図6では、例えば、全4弁中4つの弁の弁開度を
制御する制御方式に改修する場合について、以下説明する。
【0056】
図6、図7に示すように、制御部22は、主蒸気加減弁20のうち、主蒸気加減弁20
の第1弁及び第2弁の弁開度について、コンバインド化改修後の既設蒸気タービンである
高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3への主蒸気流量が大きく
なるにつれて(図7のステップS11のYes)、徐々に弁開度を大きくしていき、排熱回
収ボイラ9、14のうち1台からの供給蒸気量が定格流量になったときに(図7のステッ
プS12のYes)、主蒸気加減弁20の第1弁及び第2弁の弁開度が100%となるよ
うに制御する(図7のステップS13)。つまり、図2に示す蒸気加減弁20の第1弁、第
2弁に対応する入り口GV#1、GV#2に主蒸気が流れ込むことになる。ここで、主蒸
気加減弁20の第1弁及び第2弁を同時に制御するのは、主蒸気の流れによって発生する
力によって、高圧蒸気タービン1が振動を起こさないようにするためである。
【0057】
さらに、制御部22は、主蒸気加減弁20の第3弁及び第4弁の弁開度については、主
蒸気加減弁20の第1弁及び第2弁の弁開度が全開近くになった後、徐々に弁開度を大き
くしていき、排熱回収ボイラ9、14の2台からの供給蒸気量が定格流量になったときに
(図7のステップS14のYes)、主蒸気加減弁20の第3弁及び第4弁の弁開度が、各
々100%近傍となるように制御する(図7のステップS15)。つまり、図2に示す蒸気
加減弁20の第3弁、第4弁に対応する入り口GV#3、GV#4に主蒸気が流れ込むこ
とになる。
【0058】
以上から、第2の実施形態のコンバインド発電設備の運転方法では、第1の実施形態と
比較して、ガスタービン15、排熱回収ボイラ14をさらに備えることで、主蒸気加減弁
20の全4弁の弁開度を制御する制御方式にして定格出力での運用を行うことで、高圧蒸
気タービン1の入口圧力を高圧にすることが可能であるとともに、高圧蒸気タービン1の
入口圧力が過剰に高くなり、許容圧力を超えて、機器の損傷を招くことを防止することが
できる。このような弁開度の制御方式によって、高圧蒸気タービン1の調速ノズル21へ
の主蒸気量が最適な流量となり、既設蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気
タービン2、低圧蒸気タービン3の性能を向上させることができる。
【0059】
なお、第2の実施形態に挙げたガスタービン10、15、排熱回収ボイラ9、14の台
数は、あくまでも、既設蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、
低圧蒸気タービン3への流入主蒸気流量が最適流量よりも少ない場合の例であり、各機器
の数はこの限りではない。
【0060】
以上説明した少なくとも一つの実施形態のコンバインド発電設備の運転方法及びコンバ
インド発電設備によれば、主蒸気加減弁20の弁開度の改良により、調速段ノズル21の
部分挿入を行なうことにより、調速段ノズル21の構造的な改造を必要とせず、既設蒸気
タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3へ流入す
る蒸気流量が最適な流量より少ない条件、最適な条件において、高圧蒸気タービン1の調
速段ノズル22における主蒸気量を最適とすることが可能となる。
【0061】
さらに、以上説明した少なくとも一つの実施形態のコンバインド発電設備の運転方法及
びコンバインド発電設備によれば、改修コストを抑えた最小限の改造により、高い熱効率
を有する既設蒸気タービンである高圧蒸気タービン1、中圧蒸気タービン2、低圧蒸気タ
ービン3を流用したコンバインド発電設備を提供することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記した各実施の形態には限定されず、種々変形して実施できること
は言うまでもない。
【0063】
要するに、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では
その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に
開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の形態を形成できる。例えば
、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異な
る実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…高圧蒸気タービン
2…中圧蒸気タービン
3…低圧蒸気タービン
4…復水器
5…発電機
6…復水ポンプ
7…グランド蒸気コンデンサ
8…給水ポンプ
9…排熱回収ボイラ
10…ガスタービン
11…空気圧縮機
12…発電機
13…給水ポンプ
14…排熱回収ボイラ
15…ガスタービン
16…空気圧縮機
17…発電機
20…主蒸気加減弁
21…調速段ノズル
22…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの燃焼排ガスを用いて蒸気を発生させる排熱回収ボイラから排気される蒸
気流量に応じて、4つの蒸気加減弁のうち、第3の蒸気加減弁及び第4の蒸気加減弁の弁
を開けず、かつ、第1の蒸気加減弁及び第2の蒸気加減弁の弁開度を制御する工程と、
前記主蒸気加減弁の前記第1の蒸気加減弁及び前記第2の蒸気加減弁の弁開度の制御によ
って調速段ノズルへ流入する主蒸気の流量を制御する工程と、
前記調速段ノズルの主蒸気の流量に応じて蒸気タービンを仕事させる工程と、
前記蒸気タービンが行う仕事によって発電機を駆動する工程と、
を具備するコンバインド発電設備の運転方法。
【請求項2】
複数台のガスタービンの燃焼排ガスを用いて蒸気を発生させる複数台の排熱回収ボイラ
から排気される蒸気流量に応じて、4つの主蒸気加減弁のうち、第1の蒸気加減弁乃至第
4の蒸気加減弁の弁開度を制御する工程と、
前記主蒸気加減弁の前記第1の蒸気加減弁乃至前記第4の蒸気加減弁の弁開度の制御によ
って調速段ノズルへ流入する主蒸気の流量を制御する工程と、
前記調速段ノズルの主蒸気の流量に応じて蒸気タービンを仕事させる工程と、
前記蒸気タービンが行う仕事によって発電機を駆動する工程と、
を具備するコンバインド発電設備の運転方法。
【請求項3】
前記主蒸気加減弁は、前記蒸気タービンのうち、高圧蒸気タービンに設けられている請
求項1、2記載のコンバインド発電設備の運転方法。
【請求項4】
前記主蒸気加減弁の前記第1の蒸気加減弁及び前記第2の蒸気加減弁の弁開度を同時に
制御する請求項1、2記載のコンバインド発電設備の運転方法。
【請求項5】
前記ガスタービンと前記排熱回収ボイラより発生される蒸気流量が変化した場合、前記
主蒸気加減弁の弁開度を変更する請求項1乃至4のいずれか1項記載のコンバインド発電
設備の運転方法。
【請求項6】
前記調速段ノズルの前記主蒸気加減弁の弁に対応する入り口は、前記第1の蒸気加減弁
から前記第4の蒸気加減弁まで、反時計回りにて分けられている請求項1乃至5のいずれ
か1項に記載のコンバインド発電設備の運転方法。
【請求項7】
ガスタービンの燃焼排ガスを用いて蒸気を発生させる排熱回収ボイラから排気される蒸
気流量に応じて、4つの蒸気加減弁のうち、第3の蒸気加減弁及び第4の蒸気加減弁の弁
を開けず、かつ、第1の蒸気加減弁及び第2の蒸気加減弁の弁開度を制御する手段と、
前記主蒸気加減弁の前記第1の蒸気加減弁及び前記第2の蒸気加減弁の弁開度の制御によ
って調速段ノズルへ流入する主蒸気の流量を制御する手段と、を有する制御部と、
前記調速段ノズルの主蒸気の流量に応じて蒸気タービンを仕事させる手段と、
前記蒸気タービンが行う仕事によって発電機を駆動する手段と、
を具備するコンバインド発電設備。
【請求項8】
複数台のガスタービンの燃焼排ガスを用いて蒸気を発生させる複数台の排熱回収ボイラ
から排気される蒸気流量に応じて、4つの主蒸気加減弁のうち、第1の蒸気加減弁乃至第
4の蒸気加減弁の弁開度を制御する手段と、
前記主蒸気加減弁の前記第1の蒸気加減弁乃至前記第4の蒸気加減弁の弁開度の制御によ
って調速段ノズルへ流入する主蒸気の流量を制御する手段と、を有する制御部と、
前記調速段ノズルの主蒸気の流量に応じて蒸気タービンを仕事させる手段と、
前記蒸気タービンが行う仕事によって発電機を駆動する手段と、
を具備するコンバインド発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79580(P2013−79580A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218684(P2011−218684)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】