説明

コンバイン

【課題】走行時にクローラ式走行装置の前部で跳ね上げられる泥や泥水などからエンジンの出力部や、該出力部に連動するベルト式動力伝達機構を保護する。
【解決手段】クローラ式走行装置3上に機体フレーム2を支持して、該機体フレーム2上にエンジン21を載置し、該エンジン21の出力部21aを前記クローラ式走行装置3の前部上方に配置するコンバイン1において、前記機体フレーム2のクローラ式走行装置3の前部上方に位置する部分にマッドガード50を設け、該マッドガード50の上方にエンジン21の出力部21aからの動力をロータリスクリーン26用の吸引ファン30に伝達するためのベルト式動力伝達機構40を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ式走行装置上に機体フレームを支持して、該機体フレーム上にエンジンを載置し、該エンジンの出力部を前記クローラ式走行装置の前部上方に配置するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローラ式走行装置上に機体フレームを支持して、該機体フレーム上に形成したエンジンルームにエンジンや、ラジエータや、冷却ファンを設け、該エンジンルームの外側に外気導入カバーを取り付け、冷却ファンにより外気導入カバーに備えたロータリスクリーンで塵を除いたあとの外気を、ラジエータやエンジンの冷却用空気としてエンジンルームに導入するコンバインは公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−286018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のようなコンバインにおいては、ロータリスクリーンの外側表面に付着した塵を吸引ファンにより吸引して機外へ排出するようになっており、この吸引ファンはエンジンの出力部とベルト式動力伝達機構で連動連結されて、エンジンにより回転駆動されるようになっていた。ところが、軟弱圃場などでの走行時にクローラ式走行装置の前部で跳ね上げられる泥や泥水などが、機体フレームの前部にある間隙を通じてエンジンの出力部やベルト式動力伝達機構に向かって飛び散り、該エンジンの出力部やベルト式動力伝達機構の耐久性やメンテナンス性を低下させることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、クローラ式走行装置上に機体フレームを支持して、該機体フレーム上にエンジンを載置し、該エンジンの出力部を前記クローラ式走行装置の前部上方に配置するコンバインにおいて、前記機体フレームのクローラ式走行装置の前部上方に位置する部分に、マッドガードを設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記マッドガードの上方に、ロータリスクリーン用の吸引ファンを配置し、該吸引ファンにベルト式動力伝達機構により前記エンジンの出力部からの動力を伝達する構成としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記マッドガードを機体フレームの上側に固定したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、コンバインが軟弱圃場などを走行する際に、クローラ式走行装置の前部で跳ね上げられる泥や泥水などを機体フレームの前部上方へ向かう途中でマッドガードにて遮り、エンジンの出力部を保護することができる。
【0010】
請求項2においては、コンバインが軟弱圃場などを走行する際に、クローラ式走行装置の前部で泥や泥水などが跳ね上げられた場合でも、これらを機体フレームの前部上方へ向かう途中でマッドガードにより遮ることができる。よって、泥や泥水の付着によるベルト式動力伝達機構のベルトなどの損傷や劣化を防止することが可能となり、該ベルト式動力伝達機構の耐久性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0011】
請求項3においては、吸引ファンから排出される排風をマッドガードにより拡散して、この排風に含まれる塵が機体フレーム前部上に溜まるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1はコンバインの全体構成を示した左側面図、図2はコンバインの全体構成を示した右側面図、図3はエンジンルーム部の平面図、図4はエンジンルーム部の正面図、図5はマッドガード設置部の平面図、図6はマッドガード設置部の正面図、図7はマッドガード設置部の側面図である。
【0014】
図1、図2に示すように、コンバイン1は機体フレーム2をクローラ式走行装置3で支持し、該クローラ式走行装置3を機体フレーム2上に搭載したエンジン21で駆動させることにより、前進または後進走行可能に構成されている。そして、コンバイン1では、機体フレーム2の前部に穀稈を刈り取って機体後方へ搬送する刈取部4が設けられ、機体フレーム2の左側前後中途部に刈取部4からの刈取穀稈を脱穀する脱穀部5と、該脱穀部5で脱穀された穀粒を選別する選別部6とが上下に配設されている。機体フレーム2の後部には、脱穀部5で脱穀された穀稈を排藁として機外へ排出する排藁処理部7が設けられている。
【0015】
また、機体フレーム2の右側後部に選別部6から揚穀筒で搬送される穀粒を貯溜するグレンタンク8が設けられ、該グレンタンク8の後方から上方にかけてグレンタンク8内の穀粒を機体外部に排出する排出オーガ9が配設されている。グレンタンク8の前方で機体フレーム2の右側前部にはキャビン13内に操向ハンドル11や種々の操作レバーなどの操作装置や、運転席12などを備える運転操作部15が設けられるとともに、該運転操作部15の下方に位置するようにトランスミッション19やエンジン21が設けられている。
【0016】
図3乃至図6に示すように、エンジン21はキャビン13下方に形成されたエンジンルーム20内に配置されている。エンジンルーム20内では、エンジン21の右側方にラジエータ22が配設され、該エンジン21とラジエータ22との間に冷却ファン23が配設されている。冷却ファン23は、エンジン21から右側に設けられた出力部21aの出力軸に固設されて、該エンジン21よりベルト等を介して回転駆動可能とされている。また、エンジンルーム20の右外側でラジエータ22の右側方に、外気導入カバー25が配設されている。外気導入カバー25は後部で機体フレーム2から立設された支持フレームに機体側方へ回動自在に支持され、エンジンルーム20を開閉できるように構成されている。
【0017】
外気導入カバー25では、略中央部に外気を冷却用空気としてエンジンルーム20に取り入れるための円形の外気導入口25aが設けられ、前記冷却ファン23がエンジン21により回転駆動される際に、その吸引力により冷却用空気を外気導入口25aからエンジンルーム20内に導入することができるようになっている。そして、この外気導入カバー25の外気導入口25aに、塵が冷却用空気とともにエンジンルーム20に導入されるのを防止する防塵手段としてのロータリスクリーン26が設けられている。
【0018】
ロータリスクリーン26は、冷却用空気が当該ロータリスクリーン26を介して冷却ファン23により吸引される際に塵を外側表面に付着させて除去し、清浄な空気をエンジンルーム20に導入することができるように構成されている。こうして、コンバイン1では、エンジン21の駆動時に冷却ファン23にて吸引する冷却用空気をロータリスクリーン26で清浄にしてエンジンルーム20に導入にすることによってラジエータ22、更にはエンジン21を冷却するようになっている。
【0019】
また、図1にも示すように、ロータリスクリーン26の外側表面上には筒形の吸気ダクト27が配置され、外気導入カバー25に固定され支持されている。吸気ダクト27は吸気口27aをロータリスクリーン26の外側表面に臨ませて中央部から半径方向に延出され、エンジンルーム20の右側前部に配設されたファンケース31に吸引管32を介して連通接続されている。ファンケース31はクローラ式走行装置3の前部上方に配置されて、機体フレーム2の前部上に固定されている。そして、このファンケース31内に吸引ファン30が配設され、エンジン21により回転駆動可能とされている。
【0020】
具体的には例えば、図7にも示すように、吸引ファン30のファンケース31に従動軸35が回転自在に支持され、これとエンジン21の出力部21aに設けられた駆動軸39とがベルト式動力伝達機構40を介して接続されている。ベルト式動力伝達機構40は駆動プーリ41と、従動プーリ42と、テンションプーリ43と、ベルト44とを備え、駆動プーリ41を駆動軸39に固定し、従動プーリ42を従動軸35に固定し、これらのプーリ41・42・43の間にベルト44を巻回して構成される。こうして、エンジン21からの動力が出力部21aから従動軸35にベルト式動力伝達機構40を介して伝達されて、吸引ファン30が回転駆動されるようになっている。
【0021】
前記吸引ファン30を内設するファンケース31では、右側面略中央部に吸引管32が接続されて、吸気ダクト27からの塵をケース内に吸い込むことができるようになっている。また、ファンケース31の前部に排出口31aが形成されて、前下方を向くように開口されている。そして、前述のように吸引ファン30が回転駆動されると、その吸引力によりロータリスクリーン26の外側表面に付着した塵が吸気口より吸気ダクト27に吸い込まれ、ついで図6、図7に示す破線矢印のように吸引管32を通じてファンケース31まで送られ、該ファンケース31の排出口31aから排風に含まれてクローラ式走行装置3の前下方付近へ排出されるように構成されている。
【0022】
このような構成において、前記エンジン21の出力部21aやベルト式動力伝達機構40は、吸引ファン30とともに進行方向右側のクローラ式走行装置3のクローラベルト3aの前部上方で、前後方向に延びる縦フレームや左右方向に延びる横フレームなどで枠状に形成された機体フレーム2の前部上方に位置するように配設されている。そして、この機体フレーム2の前部にマッドガード50が配設されて、エンジン21の出力部21aやベルト式動力伝達機構40と、クローラ式走行装置3との間が遮蔽されている。マッドガード50は、クローラ式走行装置3がクローラベルト3a前部で跳ね上げる泥や泥水などからエンジン21の出力部21aやベルト式動力伝達機構40を保護するものであり、本実施例では平面視略矩形の板状部材から構成されている。
【0023】
図5、図6、図7に示すように、マッドガード50は機体フレーム2前部の上側に上面高さが略同じとなるように固定され、クローラ式走行装置3の前部上方に位置するように配置されている。詳細には、前端がクローラ式走行装置3よりも前方にある機体フレーム2の前端部に位置し、後端が吸引ファン30のファンケース31の下方付近に位置し、左端がエンジン21の出力部21aやベルト式動力伝達機構40よりも左側方に位置し、右端が機体フレーム2の左端部に位置するように配置されている。こうして、クローラ式走行装置3の前部上方において、機体フレーム2前部の縦フレーム2a・2bと横フレーム2c・2dとの間の上下方向の間隙がマッドガード50で閉じられるように構成されている。
【0024】
これにより、コンバイン1の軟弱圃場などでの走行時、特に後進走行時において、図6、図7に示す黒塗り矢印のようにクローラ式走行装置3のクローラベルト3aの前部により泥や泥水が上方から後上方へかけて跳ね上げられた場合でも、これらの泥や泥水はすぐに機体フレーム2前部に固設したマッドガード50にあたり、機体フレーム2前部よりも上方へ飛び散ることがないようになっている。つまり、機体フレーム2の前部下方から上方へ向かって飛び散る泥や泥水をマッドガード50で遮り、エンジン21の出力部21aやベルト式動力伝達機構40に達することがないようになっている。
【0025】
さらに、機体フレーム2前部では、吸引ファン30にてファンケース31の排出口31aからの塵を含む排風が排出されると、マッドガード50に向かって流れてこれにあたり、前および左右方向へ拡散しながら機体フレーム2の前方へ排出されるようになっている。そしてここでは、前述のように機体フレーム2前部とマッドガード50の上面の高さが略同じとされていることから、ファンケース31から排風が排出される際には、塵が機体フレーム2上に溜まることなく放出されるようになっている。
【0026】
以上のように、クローラ式走行装置3上に機体フレーム2を支持して、該機体フレーム2上にエンジン21を載置し、該エンジン21の出力部21aを前記クローラ式走行装置3の前部上方に配置するコンバイン1において、前記機体フレーム2のクローラ式走行装置3の前部上方に位置する部分に、マッドガード50を設けたことにより、軟弱圃場などを走行する際に、クローラ式走行装置3の前部で跳ね上げられる泥や泥水などを機体フレーム2の前部上方へ向かう途中でマッドガード50にて遮り、エンジン21の出力部21aを保護することできる。
【0027】
また、前記マッドガード50の上方に、ロータリスクリーン26用の吸引ファン30を配置し、該吸引ファン30にベルト式動力伝達機構40により前記エンジン21の出力部21aからの動力を伝達する構成としたことにより、軟弱圃場などを走行する際に、クローラ式走行装置3の前部で泥や泥水などが跳ね上げられた場合でも、これらを機体フレーム2の前部上方へ向かう途中でマッドガード50により遮ることができる。よって、泥や泥水の付着によるベルト式動力伝達機構40のベルト44などの損傷や劣化を防止することが可能となり、該ベルト式動力伝達機構40の耐久性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
また、前記マッドガード50を機体フレーム2の上側に固定したことにより、吸引ファン30から排出される排風をマッドガード50により拡散して、この排風に含まれる塵が機体フレーム2前部上に溜まるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンバインの全体構成を示した左側面図。
【図2】コンバインの全体構成を示した右側面図。
【図3】エンジンルーム部の平面図。
【図4】エンジンルーム部の正面図。
【図5】マッドガード設置部の平面図。
【図6】マッドガード設置部の正面図。
【図7】マッドガード設置部の側面図。
【符号の説明】
【0030】
1 コンバイン
2 機体フレーム
3 クローラ式走行装置
21 エンジン
21a 出力部
26 ロータリスクリーン
30 吸引ファン
40 ベルト式動力伝達機構
50 マッドガード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ式走行装置上に機体フレームを支持して、該機体フレーム上にエンジンを載置し、該エンジンの出力部を前記クローラ式走行装置の前部上方に配置するコンバインにおいて、前記機体フレームのクローラ式走行装置の前部上方に位置する部分に、マッドガードを設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記マッドガードの上方に、ロータリスクリーン用の吸引ファンを配置し、該吸引ファンにベルト式動力伝達機構により前記エンジンの出力部からの動力を伝達する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記マッドガードを機体フレームの上側に固定したことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−74171(P2008−74171A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253347(P2006−253347)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】