説明

コンバイン

【課題】 一対の引起し装置による三条の植立穀稈の引起し処理を行えるものでありながら、引起し穀稈の稈身折れを回避しやすいコンバインを提供する。
【解決手段】 走行機体横方向に並ぶ三つのデバイダ12L,12C,12Rのうちの中間に位置する中デバイダ12Cと一方の外側に位置する第一外デバイダ12Rとの間隔W1を、中デバイダ12Cと他方の外側に位置する第二外デバイダ12Lとの間隔W2よりも大に設定してある。中デバイダ12Cと第一外デバイダ12Rとからの植立穀稈に作用する第一引起し装置30Rにおける引起しケース31の下端31bの地上高さH1を、中デバイダ12Cと第二外デバイダ12Lとからの植立穀稈に作用する第二引起し装置30Lにおける引起しケース33の下端33bの地上高さH2よりも大に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体横方向に並ぶ三つのデバイダのうちの中間に位置する中デバイダと一方の外側に位置する第一外デバイダとからの植立穀稈に作用する第一引起し装置と、前記三つのデバイダのうちの前記中デバイダと他方の外側に位置する第二外デバイダとからの植立穀稈に作用する第二引起し装置とを刈取り部に備え、前記第一引起し装置及び前記第二引起し装置に、引起しケースと、この引起しケースから引起し経路に突出してこの引起し経路を上昇移動し、かつ戻り経路を下降移動して前記引起し経路に戻る引起し爪とを備えてあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインにおいて、第一引起し装置と第二引起し装置とによる二つの植え付け条の植立穀稈の引起し処理と、第一引起し装置と第二引起し装置とによる三つの植付け条の植立穀稈の引起し処理とのいずれもが可能になったものとして、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
【0003】
特許文献1に記載されたコンバインでは、刈取り部の前部に走行機体横方向に並んで位置する三つの分草具(デバイダに相当)と二つの引起し装置とを備えている。
三つの分草具のうちの中間に位置する分草具(以下、中分草具と呼称する。)と、この中分草具に対して乗用座席側に位置する分草具(以下、座席側分草具と呼称する。)との間隔が、中分草具と、この中分草具に対して乗用座席側とは反対側に位置する分草具(以下、反座席側分草具と呼称する。)との間隔よりも大になっており、中分草具と反座席側分草具とによって一つの植え付け条の植立茎稈を導入し、中分草具と座席側分草具とによって二つの植え付け条の植立茎稈を導入することが可能になっている。
中分草具と反座席側分草具とからの一つの植え付け条の植立茎稈は、二つの引起し装置のうちの乗用座席側とは反対側に位置した引起し装置によって引起し処理される。
中分草具と座席側分草具とからの二つの植付け条の植立茎稈は、二つの引起し装置のうちの乗用座席側に位置した引起し装置(以下、座席側引起し装置と称する。)によって引起し処理される。
すなわち、座席側引起し装置は、この座席側引起し装置の下部に機体横方向に沿って位置した茎稈引起し作用経路を備えている。この茎稈引起し作用経路を移動する茎稈引起し爪は、中分草具と座席側分草具とからの植立茎稈を座席側引起し装置の座席側分草具の位置する側とは反対側に引き寄せ搬送して座席側引起し装置の引起し作用経路に供給する。
【0004】
【特許文献1】特公昭57−12562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第一引起し装置と第二引起し装置との一対の引起し装置による三条の植立穀稈の引起し処理を可能にするよう上記した従来の技術を採用すると、穀稈の稈身折れが発生しやすい場合があった。
つまり、三つのデバイダのうちの中間に位置する中デバイダと、一方の外側に位置する第一外デバイダとの間隔を、中デバイダと他方の外側に位置する第二外デバイダとの間隔よりも大にし、中デバイダと第一外デバイダとからの二条の植立穀稈が第一引起し装置によって引起し処理されるよう構成すると、第一外デバイダと中デバイダとからの植立穀稈は、殊に第一外デバイダの付近に位置する植立穀稈は、稈身が第一引起し装置の引起し爪による引き寄せによって湾曲した状態で第一引起し装置の引起し経路に供給される。
上記した従来の技術を採用すると、第一外デバイダから第一引起し装置の引起し経路に引き寄せられた植立穀稈が刈取り部の進行に伴って第一引起し装置の前方から後方に移動するのに、稈身が第一引起し装置の地上高さが低い引起しケースの下をくぐり抜けることになり、稈身折れが発生しやすい場合があった。
【0006】
本発明の目的は、一対の引起し装置による三条の植立穀稈の引起し処理を行うことができるものでありながら、上記した稈身折れを回避しやすいコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、走行機体横方向に並ぶ三つのデバイダのうちの中間に位置する中デバイダと一方の外側に位置する第一外デバイダとからの植立穀稈に作用する第一引起し装置と、前記三つのデバイダのうちの前記中デバイダと他方の外側に位置する第二外デバイダとからの植立穀稈に作用する第二引起し装置とを刈取り部に備え、
前記第一引起し装置及び前記第二引起し装置に、引起しケースと、この引起しケースから引起し経路に突出してこの引起し経路を上昇移動し、かつ戻り経路を下降移動して前記引起し経路に戻る引起し爪とを備えてあるコンバインにおいて、
前記中デバイダと前記第一外デバイダとの間隔を、前記中デバイダと前記第二外デバイダとの間隔よりも大に設定し、
前記第一引起し装置における前記引起しケースの下端の地上高さを、前記第二引起し装置における前記引起しケースの下端の地上高さよりも大に設定してある。
【0008】
本第1発明の構成によると、中デバイダと第一外デバイダとの間に一つの植え付け条の植立穀稈を導入してこの一条の植立穀稈を中デバイダと第一外デバイダによって第一引起し装置に供給し、中デバイダと第二外デバイダとの間に一つの植え付け条の植立穀稈を導入してこの一条の植立穀稈を中デバイダと第二外デバイダによって第二引起し装置に供給することができる。これのみならず、中デバイダと第一外デバイダとの間に二つの植え付け条の植立穀稈を導入してこの二条の植立穀稈を中デバイダと第一外デバイダによって第一引起し装置に供給し、中デバイダと第二外デバイダとの間に一つの植え付け条の植立穀稈を導入してこの一条の植立穀稈を中デバイダと第二外デバイダによって第二引起し装置に供給することができる。
【0009】
また、本第1発明の構成によると、第一引起し装置における引起しケースの下端の地上高さを、第二引起し装置における引起しケースの下端の地上高さよりも大に設定してあるものだから、第一外デバイダの付近から第一引起し装置に引き寄せられた状態で第一引起し装置の前方から後方に移動する植立穀稈は、第一引起し装置の地上高さが高い引起しケース下端の下をくぐりぬけることになり、稈身の屈曲角度が大になって稈身折れが発生しにくい。
【0010】
従って、第一引起し装置と第二引起し装置との一対の引起し装置によって二条の植立穀稈を引起し処理しての作業も、三条の植立穀稈を引起し処理しての作業も行うことができるものでありながら、第一引起し装置に引き寄せられた植立穀稈の稈身折れに起因する搬送穀稈の詰まりや姿勢乱れが発生しにくいスムーズな作業を行うことができる。
【0011】
本第2発明では、前記第一引起し装置が、走行機体の運転部の前方に運転部と走行機体前後方向に重なり合って位置し、
前記第一外デバイダの先端の位置と、前記第一外デバイダの後方に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致し、
前記第二外デバイダの先端の位置と、前記第二外デバイダの後方に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致している。
【0012】
本第2発明の構成によると、第一外デバイダと第二外デバイダとの先端どうしの間隔が、左右の走行装置のクローラ横外側端どうしの間隔(以下、走行機体の踏み代と称する。)と同一またはほぼ同一になる状態で、刈取り部が走行機体の踏み代の直前方で作業を行うようにできる。
【0013】
従って、第一引起し装置と第二引起し装置との一対の引起し装置よって三条の植立穀稈を引起し処理して作業することができるのみならず、左右のクローラ走行装置による植立穀稈の踏み付けが発生しない良好な中割刈りや周囲刈り作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の左側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の平面図である。図3は、本発明の実施例に係るコンバインの正面図である。図4は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の右側面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1,1(以下、走行装置1と略称する。)を備えた走行機体と、この走行機体の機体フレーム2の前部に連結された刈取り部3と、前記機体フレーム2の後側に走行機体横方向に並べて設けた脱穀装置4と穀粒タンク5とを備えて構成してある。このコンバインは、稲、麦などを収穫する。
【0015】
すなわち、走行機体は、前記左右一対の走行装置1,1を備える他、前記機体フレーム2の前部の機体横方向一端側に設けた運転部6と、前記運転部6が備える運転座席7の下方に設けたエンジン8が装備された原動部とを備えている。
【0016】
図2,3,4に示すように、前記運転部6は、前記運転座席7を備える他、この運転座席7の前方下方に設けた運転部床60と、運転座席7の前方に配置して前記運転部床60に立設した操縦塔61とを備えて構成してある。
【0017】
前記操縦塔61は、操縦塔61から上方向きに突出した固定ハンドル62と操作レバー63とを備え、操縦塔61の前面に設けた前照灯64を備えている。前記操作レバー63は、走行機体横方向に揺動操作されることにより、操向クラッチ(図示せず)を操作して左右一対の走行装置1,1を各別に駆動、停止操作して走行機体の操向操作を行う。
【0018】
前記刈取り部3は、前記機体フレーム2の前部の運転部側と反対の横端側に上下揺動自在に連結された刈取り部フレーム10を備えている。この刈取り部フレーム10は、機体フレーム2に上下揺動自在に連結された主フレーム10aと、この主フレーム10aの先端部に機体横方向に並べて連結された三本の分草フレーム10bとを備えている。
【0019】
刈取り部3は、前記刈取り部フレーム10が油圧シリンダ11によって機体フレーム2に対して上下に揺動操作されることにより、前記各分草フレーム10aの前端部に設けてあるデバイダ12L,12C,12Rが地面近くに下降した下降作業状態と、前記デバイダ12L,12C,12Rが地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。
【0020】
刈取り部3を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取り部3は、前記各デバイダ12L,12C,12Rからの刈り取り対象の植立穀稈を引起し処理するとともに刈取り処理し、刈取り穀稈を脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4aに供給する。脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン4aによって刈取り穀稈の株元側を機体後方向きに挟持搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク5は、脱穀装置4からの脱穀粒を供給されて貯留する。
【0021】
前記刈取り部3について詳述する。図1,2,3に示すように、前記刈取り部3は、前記刈取り部フレーム10と前記デバイダ12L,12C,12Rとを備える他、前記三つのデバイダ12L,12C,12Rよりもやや走行機体後方側に走行機体横方向に並べて設けた左右一対の引起し装置30L,30Rと、前記引起し装置30L,30Rの後方に前記各分草フレーム10bにわたって連結して設けたバリカン形の刈取り装置13と、この刈取り装置13の上方に搬送始端部が位置した供給装置14とを備えて構成してある。
【0022】
刈取り部3は、前記三つのデバイダ12L,12C,12Rを、図2,3に示す配置状態で備えている。
すなわち、前記三つのデバイダ12L,12C,12Rのうちの走行機体横方向での運転部側の外側に位置するデバイダ12Rを第一外デバイダ12Rとし、前記三つのデバイダ12L,12C,12Rのうちの走行機体横方向での運転部側とは反対側の外側に位置するデバイダ12Lを第二外デバイダ12Lとし、前記三つのデバイダ12L,12C,12Rのうちの中間に位置するデバイダ12Cを中デバイダ12Cとする。第一外デバイダ12Rと第二外デバイダ12Lとの先端どうしの間隔が、刈取り部3の最大の刈取り処理幅Wとなり、前記第一外デバイダ12Rと中デバイダ12Cとの先端どうしの間隔W1が、前記第二外デバイダ12Lと前記中デバイダ12Cとの先端どうしの間隔W2よりも大になった配置状態で備えている。
【0023】
さらに、第一外デバイダ12Rの先端Aの位置と、第一外デバイダ12Rの後方に位置する前記走行装置1におけるクローラベルト1aの走行機体横外側端Bの位置とが走行機体横方向でほぼ一致し、第二外デバイダ12Lの先端Cの位置と、第二外デバイダ12Lの後方に位置する前記走行装置1におけるクローラベルト1aの走行機体横外側端Dの位置とが走行機体横方向で一致した配置状態で備えている。
【0024】
刈取り部3は、前記左右一対の引起し装置30L,30Rを、図2,3,5に示す配置状態で備えている。
すなわち、左右一対の引起し装置30L,30Rのうちの運転側に位置する引起し装置30Rを第一引起し装置30Rとし、運転側とは反端側に位置する引起し装置30Lを第二引起し装置30Lとする。第一引起し装置30Rの引起しケース31の横一端側に位置する引起し経路32と、第二引起し装置30Lの引起しケース33の横一端側に位置する引起し経路34とが対向し合った配置状態で備えている。
【0025】
さらに、第一引起し装置30Rにおける前記引起しケース31の引起し経路側端31aと前記中デバイダ12Cの先端との走行機体横方向での間隔S1と、第二引起し装置30Lにおける前記引起しケース33の引起し経路側端33aと前記中デバイダ12Cの先端との走行機体横方向での間隔S2とが等しくなる配置状態で備えている。
【0026】
さらに、刈取り部3が下降作業状態に下降した状態で第一引起し装置30Rにおける前記引起しケース31の下端31bの地面Gからの高さ、すなわち地上高さH1が、第二引起し装置30Lにおける前記引起しケース33の下端33bの地面Gからの高さ、すなわち地上高さH2よりも大になる配置状態で備えている。
【0027】
さらに、刈取り部3が下降作業状態に下降した状態で前記第一引起し装置30Rの引起しケース31の横一端側が前記運転部6の前方にこの運転部6と走行機体前後方向に重なり合って位置する配置状態で備えている。
【0028】
図5は、前記第一引起し装置30Rの正面図である。この図と図2とに示すように、前記第一引起し装置30Rは、前記引起しケース31を備える他、この引起しケース31の内側の下部に設けた左右一対の案内輪体35,36と、前記引起しケース31の内側の上部に設けたスプロケット37とテンション輪体38と、前記各案内輪体35,36と前記スプロケット37と前記テンション輪体38とにわたって巻回された無端チェーン型の引起しチェーン39とを備えて構成してある。
【0029】
前記引起しケース31は、この引起しケース31の下端部が前記第一外デバイダ12Rの機体後方側に位置し、上端側ほど機体後方側に位置した傾斜姿勢になっている。前記引起しチェーン39は、この引起しチェーン39の周長方向での複数箇所に設けた引起し爪39aを備えている。各引起し爪39aは、引起しチェーン39に起伏揺動自在に支持されている。
【0030】
前記引起しチェーン39は、前記スプロケット37によって駆動され、このスプロケット37と前記テンション輪体38と前記一対の案内輪体35,36とに沿って回動して各引起し爪39aを移動操作する。これにより、各引起し爪39aは、引起しケース31の下方に引起しケース下端31bに沿って位置する走行機体横向きの引き寄せ経路40を、これの第一デバイダ12Rが位置する側の一端側から他端側に向けて移動する。このとき、前記一対の案内輪体35,36の周面と、前記一対の案内輪体35,36の間に引起しケース31に支持させて設けてある起立ガイド41とが引起し爪39aの基部に接触して起立操作し、引起し爪39aは、引起しチェーン39に対して起立した姿勢となり、引起し爪39aの先端側が第一デバイダ12Rからの植立穀稈の株元側に係止してこの植立穀稈を引起し経路32に向けて引き寄せるよう引起しケース31から引き寄せ経路40に突出した状態となる。
【0031】
引き寄せ経路40の終端に至った引起し爪39aは、前記案内輪体36の周面によって案内されて引起し経路32に入り、この引起し経路32を上昇移動する。このとき、前記案内輪体36と前記スプロケット37との間に引起しケース31に支持させて設けてある起立ガイド42が引起し爪39aの基部に接触して起立操作し、引起し爪39aは、引起しチェーン39に対して起立した姿勢を維持し、引起し爪39aの先端側が第一デバイダ12Rと中デバイダ12Cとからの植立茎稈に引起し作用(梳き上げ作用)するよう引起しケース31から引起し経路32に突出した状態を維持する。
【0032】
引起し経路32の上端に至った引起し爪39aは、スプロケット37に案内されて引起しケース31の内部に位置する戻り経路43に入り、この戻り経路43を下降移動する。引起し爪39aが引起しケース内に入ったとき、引起し爪39aの先端側が倒伏ガイド44に当接して倒伏操作を受ける。これにより、引起し爪39aは、倒伏姿勢で戻り経路43を下降移動する。
【0033】
戻り経路43の終端に至った引起し爪39aは、前記案内輪体35の周面によって案内されて前記引き寄せ経路40に戻り、この引き寄せ経路40を再度、移動する。戻り経路43の終端に至った引起し爪39aは、起立ガイド45に当接して起立操作を受ける。これにより、戻り経路43の終端に至った引起し爪39aは、倒伏姿勢から起立姿勢に姿勢変化した状態で引き寄せ経路40に戻り、この引き寄せ経路40から前記引起し経路32に戻る。
【0034】
図5は、前記第二引起し装置30Lの正面図である。この図と図2とに示すように、前記第二引起し装置30Lは、前記引起しケース33を備える他、この引起しケース33の内側の下部に設けた案内輪体46と、前記引起しケース33の内側の上部に設けたスプロケット47とテンション輪体48と、前記案内輪体46と前記スプロケット47と前記テンション輪体48とにわたって巻回された無端チェーン型の引起しチェーン49とを備えて構成してある。
【0035】
前記引起しケース33は、この引起しケース33の下端部が前記第二外デバイダ12Lの機体後方側に位置し、上端側ほど機体後方側に位置した傾斜姿勢になっている。前記引起しチェーン49は、この引起しチェーン49の周長方向での複数箇所に設けた引起し爪49aを備えている。各引起し爪49aは、引起しチェーン49に起伏揺動自在に支持されている。
【0036】
前記引起しチェーン49は、前記スプロケット47によって駆動され、このスプロケット47と前記テンション輪体48と前記案内輪体46とに沿って回動して各引起し爪49aを移動操作する。これにより、各引起し爪49aは、引起しケース33の下方を前記案内輪体46の周面に沿って第二デバイダ12Lが位置する側から前記引起し経路34に向けて移動する。このとき、前記案内輪体46の周面が引起し爪49aの基部に接触して起立操作し、引起し爪49aは、引起しチェーン49に対して起立した姿勢となり、引起し爪49aの先端側が第二デバイダ12Lからの植立穀稈の株元側に係止してこの植立穀稈を引起し経路34に供給するよう引起しケース33から下方に突出した状態となる。
【0037】
引起しケース33の下方を案内輪体46に沿って移動した引起し爪49aは、前記案内輪体46の周面によって案内されて引起し経路34に入り、この引起し経路34を上昇移動する。このとき、前記案内輪体46と前記スプロケット47との間に引起しケース33に支持させて設けてある起立ガイド50が引起し爪49aの基部に接触して起立操作し、引起し爪49aは、引起しチェーン49に対して起立した姿勢を維持し、引起し爪49aの先端側が第二デバイダ12Lと中デバイダ12Cとからの植立茎稈に引起し作用(梳き上げ作用)するよう引起しケース33から引起し経路34に突出した状態を維持する。
【0038】
引起し経路34の上端に至った引起し爪49aは、スプロケット47に案内されて引起しケース33の内部に位置する戻り経路51に入り、この戻り経路51を下降移動する。引起し爪49aが引起しケース内に入ったとき、引起し爪49aの先端側が倒伏ガイド52に当接して倒伏操作を受ける。これにより、引起し爪49aは、戻り経路51を倒伏姿勢で下降移動する。戻り経路51の終端に至った引起し爪49aは、前記案内輪体46の周面によって案内されて前記引起し経路34に戻る。戻り経路51の終端に至った引起し爪49aは、起立ガイド53に当接して起立操作を受け、倒伏姿勢から起立姿勢に姿勢変化して引起し経路34に戻る。
【0039】
第一引起し装置30Rの引起しチェーン39と、第二引起し装置30Lの引起しチェーン49とは、引起し爪39a,49aの取り付け間隔(引起し爪ピッチ)が等しい状態で引起し爪39a,49aを備えている。第一引起し装置30Rの引起し爪39aの引起しケース31から引起し経路32に突出する長さと、第二引起し装置30Lの引起し爪49aの引起しケース33から引起し経路34に突出する長さとが等しくなるよう、第一引起し装置30Rの引起し爪39aと第二引起し装置30Lの引起し爪49aとは、等しい爪長さを備えている。
すなわち、第一引起し装置30Rの引起し経路32に位置する引起し爪39aと、第二引起し装置30Lの引起し経路34に位置する引起し爪49aとの間からの穀稈の抜け外れが発生しにくいよう、第一引起し装置30Rの引起し経路32を上昇移動する引起し爪39aと、第二引起し装置30Lの引起し経路34を上昇移動する引起し爪49aとが突合せ状態になる。
【0040】
図6は、刈取り部3と走行装置1との回刈り作業状態での平面図である。回刈り作業は、走行機体の運転部側の横側に既刈り地が位置し、走行機体の運転部側とは反対側の横側に未刈り地が位置する状態で作業する。この図に示すaは、刈り取り対象の植立穀稈を示し、bは、未刈り地の植立穀稈を示し、cは、既刈り地の切り株を示す。この図に示すように、刈取り部3は、回刈り作業では、第二外デバイダ12Lによって植立穀稈を刈り取り対象と非刈り取り対象とに分草して刈取り対象の植立穀稈を後方に案内し、中デバイダ12Cによって二つの植え付け条の植立穀稈を分草して後方に案内する。すなわち、第一外デバイダ12Rと中デバイダ12Cとの間に一つの植え付け条の植立穀稈aを導入し、第二外デバイダ12Lと中デバイダ12Cとの間に一つの植え付け条の植立穀稈aを導入する。刈取り部3は、第一外デバイダ12Rと中デバイダ12Cとからの植立穀稈を、第一引起し装置30Rの引起し爪39aによって引起し経路32に供給して引起し処理し、第二デバイダ12Lと中デバイダ12Cとからの植立穀稈を、第二引起し装置30Lの引起し爪49aによって引起し経路34に供給して引起し処理する。第一引起し装置30Rが作用する植立穀稈の株元側を、第一引起し装置30Rの背後に位置する補助搬送装置55Rの無端回動ベルト56の係止アーム57によって刈取り装置13に向けて補助搬送し、第二引起し装置30Lが作用する植立穀稈の株元側を、第二引起し装置30Lの背後に位置する補助搬送装置55Lの無端回動ベルト56の係止アーム57によって刈取り装置13に向けて補助搬送し、両引起し装置30L,30Rが引起し処理する植立穀稈aを刈取り装置13によって刈取り処理する。刈取り装置13からの刈取り穀稈を左右一対の補助搬送装置55L,55Rの前記無端回動ベルト56の係止アーム57と、搬送回転体58の掻き込み突起とによって機体後方側に送りながら供給装置14に供給し、この供給装置14によって機体後方向きに搬送して脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4aの始端部に供給する。(二条の植立穀稈の刈取り処理を行う。)
【0041】
図7は、刈取り部3と走行装置1との中割刈り作業と周囲刈り作業とでの平面図である。中割刈り作業は、走行機体の両横側に未刈り地が位置する状態で作業する。周囲刈り作業は、走行機体の一方の横側に畦が位置する状態で畦に沿って走行しながら作業する。この図に示すaは、刈り取り対象の植立穀稈を示し、bは、非刈取り対象の植立穀稈を示す。この図に示すように、刈取り部3は、中割刈り作業と周囲刈り作業とでは、第一外デバイダ12Rと第二外デバイダ12Lとによって植立穀稈を刈り取り対象と非刈取り対象とに分草し、第一外デバイダ12Rと中デバイダ12Cとの間に二つの植え付け条の植立穀稈aを導入し、第二外デバイダ12Lと中デバイダ12Cとの間に一つの植え付け条の植立穀稈aを導入する。刈取り部3は、第一外デバイダ12Rと中デバイダ12Cとからの植立穀稈を、第一引起し装置30Rによって引起し処理する。すなわち、第一外デバイダ12Rからの植立穀稈を引き寄せ経路40を移動する引起し爪39aによって引起し経路32に向けて引き寄せ、中デバイダ12Cからの植立穀稈に合流させて引起し経路32に供給して引起し処理する。第二外デバイダ12Lと中デバイダ12Cとからの植立穀稈aを第二引起し装置30Rの引起し経路34に供給して引起し処理する。第一引起し装置30Rが作用する植立穀稈の株元側を、前記補助搬送装置55Rの無端回動ベルト56の係止アーム57によって刈取り装置13に向けて補助搬送し、第二引起し装置30Lが作用する植立穀稈の株元側を、前記補助搬送装置55Lの無端回動ベルト56の係止アーム57によって刈取り装置13に向けて補助搬送し、両引起し装置30L,30Rが引起し処理する植立穀稈aを刈取り装置13によって刈取り処理する。刈取り装置13からの刈取り穀稈を左右一対の補助搬送装置55L,55Rの前記無端回動ベルト56の係止アーム57と、前記搬送回転体58の掻き込み突起とによって機体後方側に送りながら供給装置14に供給し、この供給装置14によって機体後方向きに搬送して脱穀装置4の脱穀フィードチェーン4aの始端部に供給する。(三条の植立穀稈の刈取り処理を行う。)
【0042】
図8は、第二実施構造を備えた刈取り部3の平面図である。第二実施構造を備えた刈取り部3と、先に説明した第一実施構造を備えた刈取り部3とを比較すると、中デバイダ12Cと第一外デバイダ12Rとの間隔W1が中デバイダ12Cと第二外デバイダ12Lとの間隔W2よりも大になっている点と、第一引起し装置30Rの引起しケース31の下端31bの地上高H1が第二引起し装置30Lの引起しケース33の下端33bの地上高さH2よりも大になっている点とにおいては同一の構成を備えている。第一引起し装置30Rと第二引起し装置30Lとの走行機体前後方向での配置の点において、第二実施構造を備えた刈取り部3と第一実施構造を備えた刈取り部3とは異なる構成を備えている。次に、その異なる構成について説明する。
【0043】
第二実施構造を備えた刈取り部3は、第一引起し装置30Rが第二引起し装置30Lに対して走行機体後方側に少し偏倚した配置状態で第一引起し装置30Rと第二引起し装置30Lとを備えている。
すなわち、第二実施構造を備えた刈取り部3は、第一外デバイダ12Rと中デバイダ12Cとからの植立穀稈を第一引起し装置30Rによって、第二引起し装置30Lよりも少し走行機体後方側で引起し処理する。
【0044】
図9は、第三実施構造を備えた刈取り部3の平面図である。第三実施構造を備えた刈取り部3と、先に説明した第一実施構造を備えた刈取り部3とを比較すると、中デバイダ12Cと第一外デバイダ12Rとの間隔W1が中デバイダ12Cと第二外デバイダ12Lとの間隔W2よりも大になっている点と、第一引起し装置30Rの引起しケース31の下端31bの地上高H1が第二引起し装置30Lの引起しケース33の下端33bの地上高さH2よりも大になっている点とにおいては同一の構成を備えている。第一引起し装置30Rと第二引起し装置30Lとの走行機体前後方向での配置の点において、第二実施構造を備えた刈取り部3と第一実施構造を備えた刈取り部3とは異なる構成を備えている。次に、その異なる構成について説明する。
【0045】
第三実施構造を備えた刈取り部3は、第一引起し装置30Rが第二引起し装置30Lに対して走行機体前方側に少し偏倚した配置状態で第一引起し装置30Rと第二引起し装置30Lとを備えている。
すなわち、第三実施構造を備えた刈取り部3は、第一外デバイダ12Rと中デバイダ12Cとからの植立穀稈を第一引起し装置30Rによって、第二引起し装置30Lよりも少し走行機体前方側で引起し処理する。
【0046】
〔別実施例〕
上記した実施例の刈取り部3に替え、第一外デバイダ12Rの先端Aの位置と、第一外デバイダ12Rの後方に位置する走行装置1におけるクローラベルト1aの走行機体横外側端Bの位置とが走行機体横方向で一致し、第二外デバイダ12Lの先端Cの位置と、第二外デバイダ12Lの後方に位置する走行装置1におけるクローラベルト1aの走行機体横外側端Dの位置とが走行機体横方向で一致した構成、又は、第一外デバイダ12Rの先端Aの位置と、第一外デバイダ12Rの後方に位置する走行装置1におけるクローラベルト1aの走行機体横外側端Bの位置とが走行機体横方向で一致し、第二外デバイダ12Lの先端Cの位置と、第二外デバイダ12Lの後方に位置する走行装置1におけるクローラベルト1aの走行機体横外側端Dの位置とが走行機体横方向でほぼ一致した構成を採用して実施してもよい。これらの場合も本発明の目的を達成することができる。
【0047】
上記した実施例の刈取り部3に替え、前記三つのデバイダ12L,12C,12Rのうちの走行機体横方向での運転部側と反対側に位置するデバイダ12Lと、中間に位置するデバイダ12Cとの先端どうしの間隔を、運転部側に位置するデバイダ12Rと中間に位置するデバイダ12Cとの先端どうしの間隔よりも大に設定し、左右一対の引起し装置30L,30Rのうちの運転部側とは反端側に位置する引起し装置30Lの引起しケースの引起し経路側端と、中間に位置するデバイダ12Cとの走行機体横方向での間隔を、運転部側に位置する引起し装置30Rの引起しケースの引起し経路側端との間隔よりも大に設定した構成を採用して実施してもよい。この場合も本発明の目的を達成することができる。この場合、三つのデバイダのうちの運転部側とは反対側の横外側に位置するデバイダを第一外デバイダと称し、運転部側の横外側に位置するデバイダを第二デバイダと称し、運転部側とは反対側に位置する引起し装置30Lを第一引起し装置と称し、運転部側に位置する引起し装置30Rを第二引起し装置と称する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】コンバインの全体の左側面図
【図2】コンバインの全体の平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】コンバインの全体の右側面図
【図5】引起し装置の正面図
【図6】刈取り部と走行装置との回刈り作業状態での平面図
【図7】刈取り部と走行装置との中割刈り作業状態と周囲刈り作業状態での平面図
【図8】第二実施構造を備えた刈取り部の平面図
【図9】第三実施構造を備えた刈取り部の平面図
【符号の説明】
【0049】
1 走行装置
1a クローラベルト
3 刈取り部
12R 第一外デバイダ
12C 中デバイダ
12L 第二外デバイダ
30R 第一引起し装置
30L 第二引起し装置
31 第一引起し装置の引起しケース
31b 第一引起し装置の引起しケースの下端
32 第一引起し装置の引起し経路
33 第二引起し装置の引起しケース
33b 第二引起し装置の引起しケースの下端
34 第二引起し装置の引起し経路
39a 第一引起し装置の引起し爪
49a 第二引起し装置の引起し爪
43 第一引起し装置の戻り経路
51 第二引起し装置の戻り経路
A 第一外デバイダの先端
C 第二外デバイダの先端
W1 第一外デバイダと中デバイダとの間隔
W2 第二外デバイダと中デバイダとの間隔
H1 第一引起し装置の引起しケース下端の地上高さ
H2 第二引起し装置の引起しケース下端の地上高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体横方向に並ぶ三つのデバイダのうちの中間に位置する中デバイダと一方の外側に位置する第一外デバイダとからの植立穀稈に作用する第一引起し装置と、前記三つのデバイダのうちの前記中デバイダと他方の外側に位置する第二外デバイダとからの植立穀稈に作用する第二引起し装置とを刈取り部に備え、
前記第一引起し装置及び前記第二引起し装置に、引起しケースと、この引起しケースから引起し経路に突出してこの引起し経路を上昇移動し、かつ戻り経路を下降移動して前記引起し経路に戻る引起し爪とを備えてあるコンバインであって、
前記中デバイダと前記第一外デバイダとの間隔を、前記中デバイダと前記第二外デバイダとの間隔よりも大に設定し、
前記第一引起し装置における前記引起しケースの下端の地上高さを、前記第二引起し装置における前記引起しケースの下端の地上高さよりも大に設定してあるコンバイン。
【請求項2】
前記第一引起し装置が、走行機体の運転部の前方に運転部と走行機体前後方向に重なり合って位置し、
前記第一外デバイダの先端の位置と、前記第一外デバイダの後方に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致し、
前記第二外デバイダの先端の位置と、前記第二外デバイダの後方に位置するクローラ走行装置におけるクローラベルトの走行機体横方向外側端の位置とが、走行機体横方向で一致又はほぼ一致している請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−27966(P2009−27966A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194736(P2007−194736)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】