説明

コンバイン

【課題】燃料消費量の節減、エンジン停止による騒音の低減、排気ガスの減少による雰囲気の清浄化によって、住環境の保全に寄与すると共に、穀粒排出作業の中断をなくして収穫作業全体の能率を高める。
【解決手段】エンジン(68)の駆動力によって発電する発電機(101)を設け、該発電機(101)によって発電された電力を蓄電する蓄電池(109)を設け、該蓄電池(109)に蓄電された電力によって駆動する電動モータ(83)を設け、エンジン(68)の駆動力と電動モータ(83)の駆動力とで穀粒排出装置(5a)を駆動可能な構成とし、電動モータ(83)をエンジン(68)の冷却風通路内に配置する。また、電動モータ(83)に冷却用のフィン(83a)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインは、走行装置を備えた車体上に脱穀装置と穀粒排出装置を備えた穀粒貯留装置を左右に並べて設け、該脱穀装置の前方に刈取装置を昇降自在に設け、穀粒貯留装置の前側又は後側に、これら各装置を駆動するエンジンを搭載して構成している。
【0003】
一方、自動車や建設機械の分野では、環境保全のために、エンジンから排出されるガス(二酸化炭素等)量を低減することを目的として、走行部および作業部の電動化が進められている。
【0004】
尚、自動車分野では、高速走行中の減速操作時に、この走行エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに蓄電しておき、発進時および低速走行時には、エンジンを停止させたまま、この電力で電動モータを駆動して走行し、高速走行時にエンジンを始動する構成が主流である。
【0005】
建設機械分野では、走行速度が農業機械同様に低速であるため、走行エネルギーを電気エネルギーに変換するには適さない。従って、例えばバックホーにおいては、エンジン駆動力で発電した電力をバッテリーに蓄電しておき、この電力によって電動モータを駆動して機台を旋回させるような構成を採っている。
【0006】
そして、農業機械分野でも、このようなハイブリッド化が考えられており、例えば特許文献1に開示されているように、エンジンによって発電機を駆動し、発電された電力をバッテリーに蓄電し、この電力で電動モータを駆動して耕うんロータリー等の作業装置を駆動する技術が試みられている。
【0007】
また、特許文献2に例示するように、穀粒貯留装置に備える穀粒排出装置の排出螺旋軸をモータで駆動する技術が知られている。
【特許文献1】特開2001−161104号公報
【特許文献2】実開昭63−53230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された技術では、主な作業装置である耕うんロータリーを電動モータで駆動する構成であるために、作業中に電動モータを常時駆動せねばならず、多大な電力を必要としてバッテリーの蓄電力が早期に消耗し、作業継続可能時間が短くなる欠点がある。また、電動モータにかかる負荷によって、この電動モータが発熱し、故障の原因となりやすい。
【0009】
そして、このような技術を特許文献2に開示された技術に採用し、穀粒排出装置を電動モータで駆動する構成とすることができるが、このように構成しただけでは、バッテリーの蓄電力が消耗した場合に、穀粒の排出が行えなくなる。特に、コンバイン作業において、穀粒貯留装置に貯留された穀粒が排出できなくなると、それ以上の刈取脱穀作業が続行できなくなり、作業不能の状態に陥ってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、走行装置(2)の上側に機台(3)を設け、該機台(3)の左右一側部に脱穀装置(4)を設け、該機台(3)の左右他側部に穀粒排出装置(5a)を備えた穀粒貯留装置(5)を設け、該穀粒貯留装置(5)の前側にエンジン(68)を備えた原動部(6)を設け、該原動部(6)の前側に操縦部(7)を設け、該操縦部(7)及び脱穀装置(4)の前側に刈取装置(8)を設けたコンバインにおいて、前記エンジン(68)の駆動力によって発電する発電機(101)を設け、該発電機(101)によって発電された電力を蓄電する蓄電池(109)を設け、該蓄電池(109)に蓄電された電力によって駆動する電動モータ(83)を設け、前記エンジン(68)の駆動力と電動モータ(83)の駆動力とで穀粒排出装置(5a)を駆動可能な構成とし、前記電動モータ(83)をエンジン(68)の冷却風通路内に配置したことを特徴とするコンバインとする。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、前記電動モータ(83)に冷却用のフィン(83a)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、例えば住宅地の狭間の圃場での収穫作業において、エンジン(68)を停止させた状態で、電動モータ(83)によって穀粒排出装置(5a)を駆動して穀粒排出作業を行えるため、エンジン(68)の燃料消費量を節減できるうえに、エンジン停止による騒音の低減、及び排気ガスの減少による雰囲気の清浄化によって、住環境の保全に寄与することができる。そして、蓄電池(109)に蓄電された電力が電動モータ(83)を駆動するだけの電力に満たない場合には、エンジン(68)の駆動力で穀粒排出装置(5a)を駆動して穀粒排出作業を行うことができるので、穀粒排出作業を中断する必要がなく、収穫作業全体の能率を高めることができる。また、電動モータ(83)を冷却することによって、この電動モータ(83)の故障を少なくし、穀粒排出作業を円滑に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、フィン(83a)によって電動モータ(83)の冷却効果を高め、この電動モータ(83)の故障を更に少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、コンバインの機体構成について説明する。
図1、図2に示すように、コンバインの機体1は、左右のクローラ式の走行装置2の上側に枠組みされた機台3を設け、該機台3の左側部に脱穀装置4を搭載し、該脱穀装置4の右側に穀粒貯留装置5を搭載し、該穀粒貯留装置5の前側に原動部6を搭載し、該原動部6の上部から前方に亘って操縦部7を設け、該操縦部7と前記脱穀装置4との前側に刈取装置8を設けて構成する。
【0015】
前記走行装置2の構成について説明する。
機台3の前後左右の4箇所から下側へ支持脚(図示省略)を延出して設け、この支持脚の下端部に左右の転輪フレーム9,9を取り付ける。該転輪フレーム9,9には、多数の転輪10,10と後端部の緊張輪11,11とを軸支する。そして、機台3の前部に取り付けたミッションケース12によって駆動される左右の駆動スプロケット13,13と、前記転輪10,10と、緊張輪11,11とに亘ってクローラ14,14を巻き掛けて、走行装置2を構成する。尚、前記ミッションケース12には、後述するエンジンの駆動力が、静油圧式無段変速装置を介して入力される構成である。
【0016】
前記脱穀装置4の構成について説明する。
脱穀装置4は、側部にフィードチェン15を備え、内部に扱胴(図示省略)を回転自在に備えた上側の扱室と、揺動選別棚、唐箕、一番移送螺旋、二番移送螺旋等を備えた下側の選別室とから構成する。該脱穀装置4は、後述するエンジンの駆動力によって駆動する構成である。
【0017】
尚、該脱穀装置4の後側には、脱穀後の排藁を切断して圃場に排出する排藁カッター16を搭載する。
前記刈取装置8の構成について説明する。
【0018】
刈取装置8は、機台3の前部に取り付けた懸架台(図示省略)の上部に縦支持フレーム17の上端部を上下回動自在に軸支し、該縦支持フレーム17の下端部に左右方向の刈取ギヤケース18の中間部を取り付ける。該刈取ギヤケース18の前部から前方に向けて分草パイプ19を延出させ、この分草パイプ19の前端部に植立穀稈を分草する分草板20を取り付ける。該分草板20の後側から後上がり傾斜姿勢に引起装置21を設け、該引起装置21の後側下部から後方に向けて、植立穀稈を掻き込む掻込装置と、刈取穀稈の株元側を挟持して後方へ搬送する株元搬送装置と、刈取穀稈の穂先側を係止して後方へ搬送する穂先搬送装置(いずれも図示省略)とを設ける。前記株元搬送装置の始端部下方には、刈刃装置22を分草パイプ19に支持させて設ける。該刈取装置8は、後述するエンジンの駆動力によって駆動する構成である。
【0019】
前記操縦部7の構成について説明する。
操縦部7は、機台3の前端部右側に搭載したステップフレーム23の前部から、フロント操作ポスト24を立上げ、該フロント操作ポスト24の機体中央寄りの側の端部から後方へ向けてサイド操作パネル25を設けて構成する。前記フロント操作ポスト24の上部には、中央部にモニターパネル26を備え、該モニターパネル26の右側にハンドレスト27を備え、モニターパネル26の左側にスイッチパネル28を設けて門形に形成した操作装置29を取り付ける。前記ハンドレスト27の前側に、前後方向への傾倒操作によって刈取装置8を昇降させ、左右方向への傾倒操作によってミッションケース12内の左右のサイドクラッチを遮断する操向レバー30を立設する。また、前記サイド操作パネル25には、ミッションケース12に駆動入力する静油圧式無段変速装置を変速操作する主変速レバー31と、ミッションケース12内の副変速装置を変速操作する副変速レバー32と、刈取装置8の駆動を入り切り操作する刈取クラッチレバー33と、脱穀装置4の駆動を入り切り操作する脱穀クラッチレバー34と、上述するエンジンのスロットルを開閉操作するスロットルレバー35を設ける。36は、エンジンを覆うエンジンカバー37の上部に取り付けた座席である。
【0020】
次に、前記穀粒貯留装置5部の構成について説明する。
図3、図4、図8に示すように、穀粒貯留装置5は筐体に形成し、左右の底壁38,39を傾斜させ、該傾斜の谷部に機体前後方向の軸芯回りに回転する底部移送螺旋40を配置する。該底部移送螺旋40の軸の前端部は、穀粒貯留装置5の前壁41に取り付けたベアリング42で回転自在に軸受けし、更に前壁41から前方へ突出させ、該突出端部に従動側係合爪43を備えた従動側回転体43aを固定する。また、該底部移送螺旋40の軸の後端部は、穀粒貯留装置5の後壁44に形成した孔を通して後方へ延出させ、後壁44の後側面に取り付けた前側筒体45の内部に配置する。尚、前記底部移送螺旋40の上側には、貯留された穀粒による圧力を受ける断面へ字状に形成した屋根板(図示省略)を配置する。この屋根板の左右両端部と左右の底壁38,39との隙間から、穀粒が底部移送螺旋40側に流れ込んで搬送される構成である。
【0021】
そして、機台3の右側後端部上に、下部引継筒体46を固定する。該下部引継筒体46は、L字形状に屈折した搬送通路を内部に備え、前記底部移送螺旋40と連結・分離自在な機体前後方向の軸芯を有する引継螺旋48を、ベベルギヤケースで回転自在に軸受けする。該下部引継筒体46の前端部と前記穀粒貯留装置5側の前側筒体45の後端部とを、下部縦軸47で機体外側方へ回動自在に軸支する。これによって、穀粒貯留装置5の下側の回動支点が形成される。
【0022】
また、前記下部引継筒体46の上部には、揚穀螺旋49を回転自在に内装した揚穀筒50を、該揚穀螺旋49の軸芯回りに縦軸回動自在に嵌合して設ける。前記揚穀螺旋49の下端部は、下部引継筒体46内のベベルギヤケースで軸受けし、該ベベルギヤケースを介して引継螺旋48及び底部移送螺旋40に連動させる。
【0023】
そして、機台3の後端から作業機支持フレーム51を立上げ、この作業機支持フレーム51の上端部に円筒状の内面を有する支持部52を設け、該支持部52によって揚穀筒50の上部を縦軸回転自在に姿勢保持する。前記作業機支持フレーム51には、排藁カッター16を機体外方へ回動自在に支持する縦軸53を設ける。該作業機支持フレーム51の下部には前記揚穀筒50の下端部外周に設けた従動ギヤ54と噛み合う出力ギヤ55を備えた旋回用電動モータ56を取り付ける。
【0024】
前記支持部52には、回動支持ステー57を一体的に設け、穀粒貯留装置5の後壁44の上部に固定した上部縦軸58を、該回動支持ステー57の孔に上側から挿し込む。これによって、前記下部縦軸47と上部縦軸58とが同一軸芯上に配置され、穀粒貯留装置5の上下の回動支点が形成される。
【0025】
更に、前記支持部52には、平面視L字形状に形成した補強フレーム59の後端部を連結し、該補強フレーム59を前方へ延設して脱穀装置4の機体奥側の側面に沿わせて配置する。該補強フレーム59の前部は脱穀装置4側に固定し、前記作業機支持フレーム51と共に揚穀筒50および穀粒貯留装置5の支持剛性を高める。更に、該補強フレーム59の前端部には、穀粒貯留装置5を機体側へ位置固定するロック装置のフック60が係合する被係合部61を一体で設ける。該フック60を被係合部61から離脱させることによって、穀粒貯留装置5を機体外側方へ引き出せる状態となる。
【0026】
そして、前記揚穀筒50の上端部には、排出螺旋62を回転自在に内装した排出筒63を上部引継筒体64を介して上下回動自在に連通して設ける。該排出筒63の自由端部には、穀粒排出口65を形成する。また、前記揚穀筒50の上部と排出筒63の基部との間に、電動シリンダ66を設け、該電動シリンダ66の伸縮作動によって排出筒63が昇降回動する構成とする。67は、該電動シリンダ66の作動用の昇降用電動モータである。
【0027】
上記底部移送螺旋40と揚穀螺旋49と排出螺旋62とから穀粒排出装置5aが構成される。
次に、原動部6の構成について説明する。
【0028】
機台3の前部右側にエンジン68を搭載する。該エンジン68は、開閉自在のエンジンカバー37によって覆われる。
図3、図4に示すように、該エンジンカバー37の内部における前記エンジン68と穀粒貯留装置5との間の空間部に、伝動ギヤケース(伝動切換装置)69を配置する。
【0029】
図5に示すように、該伝動ギヤケース69の外側面部には、入力プーリ70が固定された機体左右方向姿勢の第1入力軸(入力軸)71をベアリング72で回転自在に軸受けする。そして、該第1入力軸71と同一軸芯上に、該第1入力軸71から第1ワンウェイクラッチ73を介して駆動される第1出力軸75を設け、該第1出力軸75の端部に傘歯車状の第1出力ギヤ74を固定する。
【0030】
また、図6に示すように、伝動ギヤケース69の上側面部には、上下方向姿勢の第2入力軸77をベアリング78で回転自在に軸受けする。そして、該第2入力軸77と同一軸芯上に、該第2入力軸77から第2ワンウェイクラッチ79を介して駆動される傘歯車状の第2出力ギヤ80を固定した第2出力軸81を設ける。そして、伝動ギヤケース69の上側面に変速装置(増速伝動装置または減速伝動装置)82を備えた駆動用電動モータ(電動モータ)83を取り付け、該駆動用電動モータ83によって駆動される変速装置82の出力軸を前記第2入力軸77にスプライン嵌合させて取り付ける。尚、底部搬送移送螺旋40の駆動に要する馬力は、一般的に10馬力程度であり、前記駆動用電動モータ83の出力も10馬力程度あるいはそれ以上のものを用いる。
【0031】
そして、前記伝動ギヤケース69の後側面部には、機体前後方向姿勢の出力軸84の後部をベアリング85で回転自在に軸受けし、該出力軸84の前端部を伝動ギヤケース69の前側面部にベアリング86で回転自在に軸受けする。該出力軸84の中間部には傘歯車状の入力ギヤ87を固定し、該出力軸84の伝動ギヤケース69から後方に突出する後端部には、放射方向の2箇所に駆動側係合爪88を備えた駆動側回転体89を固定する。これにより、上記出力軸84に設けた入力ギヤ87に対して、第1出力軸75に固定した第1出力ギヤ74と第2出力軸81に固定した第2出力ギヤ80との両方が噛み合う。以上の構成により、第1ワンウェイクラッチ73および第2ワンウェイクラッチ79の作動により、エンジン68からの駆動回転速度と駆動用電動モータ83からの駆動回転速度とのうちの、他側よりも高速回転となった側の回転によって、駆動側回転体89が駆動される。
【0032】
また、図3、図4に示すように、前記第1入力軸71に固定した入力プーリ70と、エンジン68の機体外側向きの出力軸90に固定した出力プーリ91とに亘って伝動ベルト92を巻き掛け、該伝動ベルト92に張力を付与するテンションプーリ93を設けて、テンション式の排出クラッチ95を構成する。該排出クラッチ95は、排出クラッチ作動用の電動モータ96(実体図省略)により入り切りするよう連繋する。
【0033】
また、図4に示すように、エンジン68の機体内側向きの出力軸97に第1出力プーリ98と第2出力プーリ99と第3出力プーリ100を固定する。そして、前記第1出力プーリ98とエンジン68の機体奥側の後部に取り付けた発電機101の入力プーリ102とに亘って伝動ベルト103を巻き掛ける。また、前記第2出力プーリ99と脱穀装置4側の入力プーリとに亘ってテンション式の脱穀クラッチを備えた伝動ベルト(図示省略)を巻き掛け、前記第3出力プーリ100と前記ミッションケース12に駆動入力する静油圧式無段変速装置104の入力軸に設けた入力プーリ105とに亘って常時張りの伝動ベルト106を巻き掛ける。
【0034】
尚、前記伝動ギヤケース69と発電機101は、エンジンカバー37の内部、即ちエンジンルーム内において、エンジン68の冷却風通路内に配置される。また、図7に示すように、前記伝動ギヤケース69に取り付けた駆動用電動モータ83の熱を放熱するために、該駆動用電動モータ83の外周部に多数のフィン83aを設けるとよい。エンジン68には、外側の防塵網120の内側に配置したラジエータ119と、エンジン68によって駆動される冷却ファン118が備えられている。この冷却ファン118の直径はエンジン68本体よりも小さいが、この冷却ファン118によってエンジンカバー37内に吸い込まれた風が、エンジンカバー37の内部において、エンジン68と伝動ギヤケース69および駆動用電動モータ83の周囲を吹き抜ける際に、これら伝動ギヤケース69および駆動用電動モータ83を冷却することとなる。
【0035】
上記の構成により、図3、図4に示すように、前記穀粒貯留装置5を機台3上の収穫作業位置に配置し、穀粒貯留装置5側のフック60を脱穀装置4側の被係合部61に係合させた状態で、前記底部移送螺旋40の軸芯と伝動ギヤケー69の出力軸84の軸芯とが一致し、前記従動側回転体43aの従動側係合爪43が駆動側回転体89の駆動側係合爪88に噛み合う。
【0036】
また、図4、図8に示すように、前記機台3上における穀粒貯留装置5の右側の底壁39の下側の空間部107に受け台108を設け、該受け台108に、前記発電機101によって発電された電力を蓄電すると共に前記駆動用電動モータ83へ駆動用の電力を供給する蓄電池109を搭載する。該蓄電池109は3個搭載し、後部の1個を燃料タンク110の後側に搭載し、中間部および前部の2個を燃料タンク110の前側に搭載する。図示省略するが、前記発電機101と蓄電池109の間、および蓄電池109と駆動用電動モータ83の間は、対候性を備えた電力供給ケーブルで夫々結線する。
【0037】
しかして、図9に示すブロック回路について説明する。
コントローラ111に対して、その入力側に、エンジン駆動式排出スイッチ112と、モータ駆動式排出スイッチ113と、駆動源自動切換式排出スイッチ114と、蓄電池109とを接続する。該蓄電池109には、充電器115と発電調整機116とを介して発電機101を接続する。また、コントローラ111に対して、その出力側には、前記排出クラッチ95の作動用の電動モータ96と、モータ駆動回路117とを接続する。該モータ駆動回路117に駆動用電動モータ83を接続し、モータ駆動回路117を介して駆動用電動モータ83を駆動する構成とする。この構成により、エンジン68によって発電機101を駆動すると、発電機101によって発電される発電電力の電圧と電流量と周波数とがエンジン回転数の変動によって変化するが、これらを発電調整機116によって適正範囲に調整してから、充電器115によって蓄電池109に充電することができる。
【0038】
以上の構成により、エンジン68を始動すると、該エンジン68の駆動力によって発電機101が駆動され、該発電機101によって発電された電力が発電調整機116によって調整された後、充電器115から蓄電池109へ充電される。
【0039】
そして、エンジン68の駆動力によって走行装置2と刈取装置8と脱穀装置4と排藁カッター16を駆動しながら圃場での刈取脱穀作業を行うと、収穫された穀粒が穀粒貯留装置5に貯留される。これによって穀粒貯留装置5が満杯になると、機体1を圃場脇に待機中の運搬車に近付けて停車させ、この運搬車の荷台上への穀粒排出作業を行う。
【0040】
この穀粒排出作業は、蓄電池109の充電量が不十分な場合や、駆動用電動モータ83の駆動回路が故障した場合等には、操縦者の判断によってエンジン駆動式排出スイッチ112を入り操作し、電動モータ96の作動によって排出クラッチ95を入り作動させて行う。即ち、この場合には、排出クラッチ95の入り作動によって入力プーリ70が回転し、第1入力軸71から第1ワンウェイクラッチ73を介して第1出力ギヤ74が駆動され、これに噛み合う入力ギヤ87が駆動される。駆動用電動モータ83は停止したままである。この際、入力ギヤ87を介して第2出力ギヤ80が駆動されてしまうが、第2ワンウェイクラッチ79が空転するため、駆動用電動モータ83側の第2入力軸77が強制的に回転させられることはない。これによって、駆動用電動モータ83および変速装置82の破損や故障の防止、および耐久性の向上を図ることができる。そして、上記入力ギヤ87の駆動によって出力軸84が回転し、駆動側回転体89の駆動側係合爪88からこれに係合する従動側係合爪43を介して従動側回転体43aが駆動され、底部移送螺旋40が駆動されて、穀粒貯留装置5内の貯留穀粒が排出される。
【0041】
また、蓄電池109の充電量が十分な場合には、操縦者の判断によってモータ駆動式排出スイッチ113を入り操作し、駆動用電動モータ83を駆動して行う。即ち、この場合には、駆動用電動モータ83の回転によって変速装置82から第2入力軸77が駆動され、該第2入力軸77から第2ワンウェイクラッチ79を介して第2出力軸81及び第2出力ギヤ80が駆動され、これに噛み合う入力ギヤ87が駆動される。排出クラッチ95は切り操作されたままであり、エンジン駆動力は入力されない。この際、入力ギヤ87を介して第1出力ギヤ74が駆動されてしまうが、第1ワンウェイクラッチ73が空転するため、入力プーリ70側の第1入力軸71が強制的に回転させられることはない。これによって、入力プーリ70に巻き掛けた伝動ベルト92の摩耗を防止して耐久性を向上させることができる。そして、上記入力ギヤ87の駆動によって出力軸84が回転し、駆動側回転体89の駆動側係合爪88からこれに係合する従動側係合爪43を介して従動側回転体43aが駆動され、底部移送螺旋40が駆動されて、穀粒貯留装置5内の貯留穀粒が排出される。これによって、収穫作業を行う圃場が住宅地の近くにあっても、少なくとも穀粒排出作業時には、エンジン68を停止させた状態で排出作業を行うことができ、排気ガス量の低減およびエンジン騒音の低減によって、作業環境および周辺の住環境を保全することができる。
【0042】
また、駆動源自動切換式排出スイッチ114を入り操作すると、コントローラ111による蓄電池109の電圧チェックにより、蓄電池109の電圧が設定電圧よりも高いと判定された場合には、上述のモータ駆動式排出スイッチ113を入り操作した場合と同様に、排出クラッチ95が切り状態に維持されたまま、駆動用電動モータ83が駆動されて穀粒排出作業が行われる。一方、蓄電池109の電圧が設定電圧よりも低いと判定された場合には、上述のエンジン駆動式排出スイッチ112を入り操作した場合と同様に、駆動用電動モータ83が停止したまま、排出クラッチ95が入り作動して穀粒排出作業が行われる。これによって、操縦者が蓄電池109の充電状態を気にすることなく排出作業を行うことができ、作業能率が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの要部説明用の側面図である。
【図4】コンバインの要部説明用の平面図である。
【図5】伝動ギヤケースを断面して示す平面図である。
【図6】伝動ギヤケースを断面して示す側面図である。
【図7】図6の伝動ギヤケースの変形例である。
【図8】穀粒貯留装置付近の説明用正面図である。
【図9】ブロック回路図である。
【符号の説明】
【0044】
2 走行装置
3 機台
4 脱穀装置
5 穀粒貯留装置
5a 穀粒排出装置
6 原動部
7 操縦部
8 刈取装置
68 エンジン
71 第1入力軸(入力軸)
83 電動モータ
83a フィン
90 出力軸
95 排出クラッチ
101 発電機
109 蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)の上側に機台(3)を設け、該機台(3)の左右一側部に脱穀装置(4)を設け、該機台(3)の左右他側部に穀粒排出装置(5a)を備えた穀粒貯留装置(5)を設け、該穀粒貯留装置(5)の前側にエンジン(68)を備えた原動部(6)を設け、該原動部(6)の前側に操縦部(7)を設け、該操縦部(7)及び脱穀装置(4)の前側に刈取装置(8)を設けたコンバインにおいて、前記エンジン(68)の駆動力によって発電する発電機(101)を設け、該発電機(101)によって発電された電力を蓄電する蓄電池(109)を設け、該蓄電池(109)に蓄電された電力によって駆動する電動モータ(83)を設け、前記エンジン(68)の駆動力と電動モータ(83)の駆動力とで穀粒排出装置(5a)を駆動可能な構成とし、前記電動モータ(83)をエンジン(68)の冷却風通路内に配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記電動モータ(83)に冷却用のフィン(83a)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−75154(P2010−75154A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250057(P2008−250057)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】