説明

コンバイン

【課題】脱穀後の排藁を別途装着した作業機にて確実に処理することができ、また、作業機に大きな負荷がかかって損傷を与えるようなことをなくしたコンバインを提供することを課題とする
【解決手段】コンバイン1に、脱穀後の排藁を処理するための作業機90(例えば、結束機90A又は集束機90B)を装着可能として、作業機90の装着状態を検知する装着状態検知手段73と、装着状態検知手段73により作業機90が装着状態であることが検知された場合に、走行速度を制限する制御手段200とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関し、特に走行速度を制限する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀後の排藁を処理するための作業機を装着したコンバインは公知となっている。例えば、特許文献1に示す如くである。このようなコンバインは、作業機を装着した場合、走行しながら圃場の穀稈を刈取ってこれを脱穀し、脱穀後の処理物を選別する一方、脱穀後の琲藁を前記作業機により処理する。
ここで、「作業機にて脱穀した後の琲藁を処理する」とは、例えば、前記作業機が結束装置の場合には、脱穀後の琲藁を結束装置により所定量づつ結束紐で結束して外部に放出することや、前記作業機が集束装置の場合には、脱穀後の琲藁を集束装置により集束させて所定量づつ外部に放出することをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−246019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなコンバインが、作業機(例えば、結束機又は集束機)を装着している場合に、作業機を装着していない場合と同等の高速で走行しながら圃場の穀稈を刈取って前記排藁の処理までの一連の作業を行うと、刈取後の穀稈の量が増大して、前記作業機が処理能力を超えた量の排藁を受け、脱穀後の排藁を正常に処理(結束又は集束)することができない可能性があり、また、作業機が耐え得る以上の負荷がかかる可能性があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、脱穀後の排藁を別途装着した作業機にて確実に処理することができ、また、作業機に大きな負荷がかかって損傷を与えるようなことをなくしたコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、脱穀後の排藁を処理するための作業機を装着可能なコンバインであって、前記作業機の装着状態を検知する装着状態検知手段と、前記装着状態検知手段により前記作業機が装着状態であることが検知された場合に、走行速度を制限する制御手段とを備えるコンバインものである。
【0008】
請求項2においては、前記作業機の種別を検知する種別検知手段を備え、前記制御手段は、前記種別検知手段により検知された前記作業機の種別に基づいて、走行速度の制限を可能とするものである。
【0009】
請求項3においては、刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検知する作業状態検知手段を備え、前記制御手段は、前記装着状態検知手段の検知結果に基づいて走行速度を制限している場合に、前記作業状態検知手段により非刈取作業状態であることが検知されたとき、走行速度の制限を解除するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
即ち、請求項1においては、作業機をコンバインに装着した場合に、走行速度を制限して、機体が走行可能な最高速度を作業機が未装着の場合よりも低く設定し直すことが可能となる。したがって、作業機をコンバインに装着した状態で刈取作業を行うときに、機体が最高速度で走行して刈取後の穀稈の量が増大しても、作業機の処理能力を超える量の排藁が当該作業機に搬送されることがなくなり、脱穀後の排藁を作業機にて確実に処理することができ、また、作業機に大きな負荷がかかって損傷を与えるようなこともなくなる。
【0012】
請求項2においては、コンバインに装着された作業機の種別に基づいて、走行速度の制限を変更して、機体が走行可能な最高速度を作業機の種別にあわせて適切に設定することが可能となる。したがって、作業機をコンバインに装着した状態で刈取作業を行うときに、脱穀後の排藁を作業機にて適切かつ確実に処理することができる。また、作業機に応じた最高速度で作業を行うことで効率よく作業を行うことが可能となる。
【0013】
請求項3においては、作業機をコンバインに装着した場合であっても、作業機を使用しない非刈取作業状態のときには、走行速度が制限されなくなる。したがって、非刈取作業状態のときには、作業機をコンバインに装着していない場合と同一の広い速度域で、機体を円滑に走行させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】本発明の第一施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した平面図。
【図3】本発明の第一施形態に係るコンバインに対する作業機の着脱状態を示した図。
【図4】本発明の第一施形態に係るコンバインのトランスミッションの構成を示した図。
【図5】本発明の第一施形態に係るコンバインの制御構成を示したブロック図。
【図6】本発明の第一施形態に係るコンバインの制御態様を示したフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0017】
図1、図2に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6、排藁処理部7、操縦部8、エンジン部9、ミッション部10、を具備し、作業機90を別途装着可能に構成される。
【0018】
走行部2は、機体フレーム20の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21・21などを有して、機体をクローラ式走行装置21・21により前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0019】
刈取部3は、機体フレーム20の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31や、引起装置32や、切断装置33や、搬送装置34などを有して、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈の株元を切断装置33により切断し、切断後の穀稈を搬送装置34により脱穀部4側へ搬送することができるように構成される。
【0020】
脱穀部4は、機体フレーム20の左側前部に設けられ、刈取部3の後方に配置される。脱穀部4は、フィードチェン35や、扱胴、処理胴などを有して、刈取部3から搬送されてくる穀稈をフィードチェン35により受け継いで排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を扱胴により脱穀し、扱胴側からの未処理物を処理胴により処理することができるように構成される。
【0021】
選別部5は、機体フレーム20の左側部に設けられ、脱穀部4の下方に配置される。選別部5は、揺動選別装置や、風選別装置や、穀粒搬送装置などを有して、脱穀部4から落下する処理物を揺動選別装置により揺動選別し、唐箕等の風選別装置により風選別して藁屑や塵埃などを後方の外部へ排出する一方、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部6へ搬送することができるように構成される。
【0022】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム20の右側後部に設けられ、脱穀部4および選別部5の右側方に配置される。穀粒貯溜部6は、グレンタンク61や、穀粒排出装置62などを有して、選別部5から搬送されてくる穀粒をグレンタンク61により一時的に貯溜し、貯溜中の穀粒を穀粒排出装置62によりグレンタンク61から排出し、更に任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0023】
排藁処理部7は、機体フレーム20の後部に設けられ、脱穀部4の後方に配置される。排藁処理部7は、排藁搬送装置71や、排藁切断装置72などを有する。琲藁処理部7は、脱穀部4からの脱穀済みの排稈を排藁として排藁搬送装置71により受け継いで、作業機90が未装着状態である場合には外部へ排出する、または排藁切断装置72へ搬送して搬送後の排藁を排藁切断装置72により切断してから外部へ排出することができるように構成され、作業機90が装着状態である場合には切断せずに作業機90へ搬送することができるように構成される。
【0024】
作業機90は、機体に着脱可能に装着され、排藁処理部7の後方に配置される。作業機90は、排藁処理部7からの排藁を作業機90の種別に応じて適宜に処理し、その後に外部へ排出することができるように構成される。作業機90としては、例えば、図3に示すように、脱穀後の琲藁を所定量づつ結束紐で結束して外部に放出する装置である結束装置90Aや、脱穀後の琲藁を集束させて所定量づつ外部に放出する装置である集束装置90Bがあり、これらのいずれか一つが機体に別途装着可能とされる。ただし、作業機90の種別(機種)は特に限定するものではない。
【0025】
操縦部8は、機体フレーム20の右側前部に設けられ、刈取部3の搬送装置34の右側方であって穀粒貯溜部6の前方に配置される。操縦部8は、操縦席85、主変速操作具としての主変速レバー87や副変速操作具としての副変速レバー88やステアリングハンドル89を含む操作具類や、これらを覆うキャビン25などを有し、操縦者が操縦席85に着座して操作具類を操作することができるように構成される。
【0026】
エンジン部9は機体フレーム20の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部6の前方に配置される。エンジン部9はエンジン27などを有して、動力をエンジン27からこれを駆動源とする各部の装置に適宜の動力伝達機構を介して伝達し、各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0027】
ミッション部10は機体フレーム20の右側前部に設けられ、エンジン部9の前方に配置される。ミッション部10は油圧式無段変速装置40・50を含むトランスミッション23などを有して(図4参照)、エンジン部9のエンジン27の動力が走行部2のクローラ式走行装置21と刈取部3に伝達される前に、トランスミッション23により当該動力を変速することができるように構成される。
【0028】
このようにして、コンバイン1は、操縦部8での操作具類の操作によって、エンジン27の動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの処理物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、作業機90が未装着状態である場合には、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができ、作業機90が装着状態である場合には、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を作業機90に搬送して当該作業機90により処理した後に外部へ排出することができるように構成される。
【0029】
次に、ミッション部10の構成について説明する。
【0030】
図1、図4に示すように、ミッション部10においては、トランスミッション23に、走行用の油圧式無段変速装置(以下、走行用HSTという。)40、操向用の油圧式無段変速装置(以下、操向用HSTという。)50、伝動機構70、ミッションケースが備えられる。そして、伝動機構70がミッションケースに収容されて、該ミッションケースに走行用HST40と操向用HST50が付設され、これらによりコンバイン1の走行系の伝動機構70が構成される。
【0031】
図4に示すように、走行用HST40には、可変容量型の走行ポンプ40P、固定容量型の走行モータ40Mが備えられる。走行ポンプ40Pと走行モータ40Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、走行ポンプ40Pと走行モータ40Mとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
【0032】
走行ポンプ40Pには、走行ポンプ軸41、プランジャ、シリンダ、走行ポンプ容量調整手段43が備えられる。走行ポンプ軸41はエンジン27の出力軸と連動連結され、シリンダは走行ポンプ軸41に相対回転不能に支持される。シリンダに複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。走行ポンプ容量調整手段43は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによりプランジャの往復摺動するストロークが変更され、走行ポンプ40Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
【0033】
走行モータ40Mには、プランジャ、シリンダ、走行モータ軸45、固定斜板が備えられる。シリンダは走行モータ軸45に相対回転不能に支持される。固定斜板は走行モータ本体44に固定され、走行ポンプ40Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダ及び走行モータ軸45を回転させる。
【0034】
走行用HST40は変速操作装置によって走行ポンプ容量調整手段43が操作可能とされる。図4または図5に示すように、変速操作装置には、人為操作可能な主変速操作具としての主変速レバー87、第一操作位置検出センサ87a、走行ポンプ40P用の作動装置である変速アクチュエータ141Pが備えられる。第一操作位置検出センサ87a、変速アクチュエータ141Pは、コンバイン1に備えられる後述の制御手段200と接続される。
【0035】
主変速レバー87は、操縦部8で操縦席85近傍に配置され、中立位置からその前方に位置する前進増速側へ回動操作可能とされるとともに、この前進増速側から中立位置に向かって前進減速側へ回動操作可能とされる。さらに、主変速レバー87は、中立位置からその後方に位置する後進増速側へ回動操作可能とされるとともに、この後進増速側から中立位置に向かって後進減速側へ回動操作可能とされる(図1、図2参照)。
【0036】
第一操作位置検出センサ87aは、主変速レバー87の回動基部に設けられ、主変速レバー87の回動角を主変速レバー87の操作位置として検出可能とされる。また、変速アクチュエータ141Pは、本実施の形態においては、油圧シリンダ、電磁弁、この電磁弁を作動させるソレノイド等から構成される。但し、変速アクチュエータ141Pは、特に限定するものではなく、電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能である。
【0037】
主変速レバー87が中立位置から前進増速側へ回動操作されると、その操作位置が第一操作位置検出センサ87aにより検出され、変速アクチュエータ141Pの前進側のソレノイドが制御手段200により作動させられて、電磁弁が増速側に切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが第一操作位置検出センサ87aの検出値に応じた長さに伸長され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)43が中立位置から前進増速側へ傾転されて、走行ポンプ40Pの容量が変更される。
【0038】
主変速レバー87が、前進増速側へ回動操作された状態で、中立位置に向かって前進減速側へ回動操作されると、その操作位置が第一操作位置検出センサ87aにより検出され、変速アクチュエータ141Pの前進側のソレノイドが制御手段200により作動させられて、電磁弁が減速側に切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが第一操作位置検出センサ87aの検出値に応じた長さに収縮され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)43が中立位置に向かって前進減速側へ傾転されて、走行ポンプ40Pの容量が変更される。
【0039】
主変速レバー87が中立位置から後進増速側へ回動操作されると、その操作位置が第一操作位置検出センサ87aにより検出され、変速アクチュエータ141Pの後進側のソレノイドが制御手段200により作動させられて、電磁弁が増速側に切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが第一操作位置検出センサ87aの検出値に応じた長さに伸長され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)43が中立位置から後進増速側へ傾転されて、走行ポンプ40Pの容量が変更される。
【0040】
主変速レバー87が、後進増速側へ回動操作された状態で、中立位置に向かって後進減速側へ回動操作されると、その操作位置が第一操作位置検出センサ87aにより検出され、変速アクチュエータ141Pの後進側のソレノイドが制御手段200により作動させられて、電磁弁が減速側に切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが第一操作位置検出センサ87aの検出値に応じた長さに収縮され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)43が中立位置に向かって後進減速側へ傾転されて、走行ポンプ40Pの容量が変更される。
【0041】
こうして、走行用HST40では、走行ポンプ40Pの駆動時に、走行容量調整手段(可動斜板)43の傾転に応じて走行ポンプ40Pの容量が変更されることによって、走行ポンプ40Pから走行モータ40Mへ吐出される作動油の吐出量及び吐出方向が変更され、走行モータ軸45の回転方向が正又は逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
【0042】
図4に示すように、操向用HST50には、可変容量型の操向ポンプ50P、固定容量型の操向モータ50Mが備えられる。操向ポンプ50Pと操向モータ50Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、操向ポンプと操向モータとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
【0043】
操向ポンプ50Pには、操向ポンプ軸51、プランジャ、シリンダ、操向ポンプ容量調整手段53が備えられる。操向ポンプ軸51はエンジン27と連動連結され、シリンダは操向ポンプ軸51に相対回転不能に支持される。シリンダに複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。操向ポンプ容量調整手段53は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによりプランジャの往復摺動するストロークが変更され、操向ポンプ50Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
【0044】
操向モータ50Mには、プランジャ、シリンダ、操向モータ軸55、固定斜板が備えられる。シリンダは、操向モータ軸55に相対回転不能に支持される。固定斜板は操向モータ本体54に固定され、走行ポンプ50Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダ及び走行モータ軸55を回転させる。
【0045】
操向用HST50は操向操作装置によって走行ポンプ容量調整手段53が操作可能とされる。図4または図5に示すように、操向操作装置には、人為操作可能な操向操作手段としてのステアリングハンドル89と、操向位置検出センサ89a、操向ポンプ50P用の作動装置である操向アクチュエータ142が備えられる。操向位置検出センサ89a、操向アクチュエータ142は、制御手段200と接続される。
【0046】
ステアリングハンドル89は、操縦部8で操縦席85の前方に配置され、左右回りに回動操作可能とされる(図1、図2参照)。操向位置検出センサ89aは、ステアリングハンドル89の回動基部に設けられ、ステアリングハンドル89の回動角をステアリングハンドル89の操作位置として検出可能とされる。また、操向アクチュエータ142は、本実施の形態においては、油圧シリンダ、電磁弁、この電磁弁を作動させるソレノイド等から構成される。但し、操向アクチュエータ142は、特に限定するものではなく、電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能である。
【0047】
ステアリングハンドル89を回動操作されると、その操作位置が操向位置検出センサ89aにより検出され、操向アクチュエータ142のソレノイドが制御手段200により操向位置検出センサ89aの検出値に基づいて作動させられて、電磁弁が切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが操向位置検出センサ89aの検出値に応じた長さに伸縮され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)53が傾転されて、操向ポンプ50Pの容量が変更される。
【0048】
こうして、操向用HST50では、操向ポンプ50Pの駆動時に、走行容量調整手段(可動斜板)53の傾転に応じて操向ポンプ50Pの容量が変更されることによって、操向ポンプ50Pから操向モータ50Mへ吐出される作動油の吐出量及び吐出方向が変更され、操向ポンプ軸51の回転方向が正又は逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
【0049】
図4に示すように、伝動機構70には、一対の遊星ギヤ機構、即ち第一遊星ギヤ機構80a及び第二遊星ギヤ機構80b、走行用出力伝動機構100、操向用出力伝動機構110が備えられる。
【0050】
第一遊星ギヤ機構80aには、サンギヤ81、インターナルギヤ84、複数の遊星ギヤ82・82・・・、キャリア83が備えられる。サンギヤ81は回転軸86に固定され、インターナルギヤ84はサンギヤ81を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ82はインターナルギヤ84の内歯とサンギヤ81の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア83に回転自在に軸支される。そして、キャリア83が第一出力軸60aと固定される。
【0051】
同様に、第二遊星ギヤ機構80bには、サンギヤ81、インターナルギヤ84、複数の遊星ギヤ82・82・・・、キャリア83が備えられる。サンギヤ81は回転軸86に固定され、インターナルギヤ84はサンギヤ81を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ82はインターナルギヤ84の内歯とサンギヤ81の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア83に回転自在に軸支される。そして、キャリア83が第二出力軸60bと固定される。
【0052】
走行用出力伝動機構100には、出力軸101、分岐軸105、第一走行用出力ギヤ列106a、第二走行用出力ギヤ列106b、歯車噛合式の副変速機構107、駐車用ブレーキ装置102が備えられる。出力軸101は走行用HST40における走行モータ40Mの走行モータ軸45と連動連結され、分岐軸105は出力軸101に副変速機構107を介して連動連結される。
【0053】
副変速機構107は走行用の走行モータ軸45の回転動力を出力軸101と分岐軸105との間で多段変速させることができるように構成される。なお、本実施形態においては、副変速機構を、作業用の低速段と走行用の高速段とに変速可能となるように構成しているが、三段以上に変速可能となるように構成してもよい。
【0054】
副変速機構には、高速駆動ギヤおよび低速駆動ギヤと、高速従動ギヤおよび低速従動ギヤと、走行系シフタとが備られる。高速駆動ギヤおよび低速駆動ギヤは、それぞれ伝動軸に相対回転自在に支持される。高速駆動ギヤと高速従動ギヤとが噛合され、低速駆動ギヤと低速従動ギヤとが噛合される。高速従動ギヤと低速従動ギヤとが走行系シフタを介して伝動軸に選択的に係合可能とされている。
【0055】
副変速機構は、副変速操作装置によって操作可能とされる。副変速操作装置には、図4または図5に示すように、人為操作可能な副変速操作具としての副変速レバー88と、第二操作位置検出センサ88aとが備えられる。第二操作位置検出センサ88aは制御手段200と接続される。
【0056】
副変速レバー88は、操縦部8で操縦席85近傍に配置され、作業用の低速位置または当該低速位置の後方に位置する走行用の高速位置へ前後に回動操作可能とされる(図1、図2参照)。第二操作位置検出センサ88aは、副変速レバー88の回動基部に設けられ、副変速レバー88の操作位置を検出可能とされる。
【0057】
副変速レバー88が作業用の低速位置に回動操作されると、その回動角が副変速レバー88の操作位置として第二操作位置検出センサ88aにより検出される。この変速操作によって、走行系シフタが低速従動ギヤ側へ移動され、低速従動ギヤが伝動軸に当該走行系シフタを介して係合される。その結果、低速側に変速された回転動力が、出力軸から伝動軸を介して分岐軸へ伝達される。
【0058】
一方、副変速レバー88が走行用の高速位置に回動操作されているときには、その操作位置が第二操作位置検出センサ88aにより検出され、この変速操作により、走行系シフタが高速従動ギヤ側へ移動され、高速従動ギヤが伝動軸に当該走行系シフタを介して係合される。その結果、高速側に変速された回転動力が、出力軸から伝動軸を介して分岐軸へ伝達される。
【0059】
なお、走行モータ40Mの走行モータ軸45にはPTOプーリ48が固定され、このPTOプーリ48から走行モータ40Mの回転動力が刈取部3の伝動機構に伝達可能とされる。
【0060】
第一走行用出力ギヤ列106aは分岐軸105の回転動力を第一遊星ギヤ機構80aのインターナルギヤ84に伝達し、第二走行用出力ギヤ列106bは分岐軸105の回転動力を第二遊星ギヤ機構80bのインターナルギヤ84に伝達することができるように構成される。第一走行用出力ギヤ列106aと第二走行用出力ギヤ列106bの各伝動方向及び伝動比は、互いに同一に設定される。
【0061】
駐車用ブレーキ装置102は、ブレーキ軸103、ブレーキユニット104を有し、ブレーキ軸103により出力軸101から回転動力を受けて分岐軸105へ出力し、ブレーキユニット104によりブレーキ軸103に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。
【0062】
操向用出力伝動機構110には、出力軸111、共通軸112、第一操向用出力ギヤ列113a、第二操向用出力ギヤ列113b、クラッチ装置115、操向用ブレーキ装置114が設けられる。
【0063】
出力軸111は操向用HST50における操向モータ50Mの操向モータ軸55と連動連結され、共通軸112は出力軸111にクラッチ装置115を介して連動連結される。クラッチ装置115は出力軸111から共通軸112への回転動力を伝動または遮断することができるように構成される。
【0064】
第一操向用出力ギヤ列113aは共通軸112の回転動力を回転軸等を介して第一遊星ギヤ機構80aのサンギヤ81に伝達し、第二操向用出力ギヤ列113bは共通軸112の回転動力を回転軸86等を介して第二遊星ギヤ機構80bのサンギヤ81に伝達するものとされる。第一操向用出力ギヤ列113aと第二操向用出力ギヤ列113bの伝動比は同一に設定され、伝動方向は互いに反対方向に設定される。
【0065】
操向用ブレーキ装置114は出力軸111に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。
【0066】
このような構成において、ステアリングハンドル89が回動操作されずに操向用HST50の操向モータ50Mが停止し、主変速レバー87が中立位置から回動操作されて走行用HST40の走行モータ40Mが駆動する場合、走行モータ40Mの回転動力が、走行モータ軸45から、走行用出力伝動機構100の出力軸101、分岐軸105、第一および第二走行用出力ギヤ列106a・106b、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bのインターナルギヤ84、遊星ギヤ82、キャリア83の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0067】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸60aと第二出力軸60bとが同一回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置21に備えられた駆動輪が同一回転方向に同一回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動し、機体が直進走行することとなる。
【0068】
主変速レバー87が中立位置に回動操作されて走行用HST40の走行モータ40Mが停止し、ステアリングハンドル89が回動操作されて操向用HST50の操向モータ50Mが駆動する場合、操向モータ50Mの回転動力が、操向モータ軸55から、操向用出力伝動機構110の出力軸111、共通軸112、第一および第二操向用出力ギヤ列113a・113b、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bのサンギヤ81、遊星ギヤ82、キャリア83の順に各部材に伝達され、ついで第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0069】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸60aと第二出力軸60bとが互いに反対方向に回転され、ひいては左右一方のクローラ式走行装置21の駆動輪が正または逆方向へ回転され、左右他方のクローラ式走行装置21の駆動輪が逆または正方向へ回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動され、その場で機体のスピンターン旋回が行われる。これにより、例えば圃場や枕地での方向転換が可能とされる。
【0070】
主変速レバー87が中立位置から回動操作されて走行用HST40における走行モータ40Mが駆動するとともに、ステアリングハンドル89が回動操作されて操向用HST50の操向モータ50Mが駆動する場合、走行モータ40Mから走行用出力伝動機構100を介して伝達される回転動力と、操向モータ50Mから走行用出力伝動機構100を介して伝達される回転動力とが、第一および第二遊星ギヤ機構80a・80bでそれぞれ合成された後、第一および第二出力軸60a・60bに伝達される。
【0071】
この回転動力の伝達によって、第一および第二出力軸60a・60bが互いに異なる回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置21の駆動輪が互いに異なる回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が速度差をもって駆動され、機体の走行と左または右方向への旋回とが同時に行われる。旋回方向および旋回半径は左右のクローラ式走行装置21の速度差に応じて決定される。
【0072】
そして、これらの場合、走行方向は、主変速レバー87が前進増速または減速側へ回動操作されている場合には前進となり、主変速レバー87が後進増速または減速側へ回動操作されている場合には後進となる。また、機体の走行速度は、主変速レバー87及び副変速レバー88の操作位置に応じて変更されることとなる。
【0073】
次に、本実施の形態における制御構成について説明する。
【0074】
図5に示すように、制御手段200は、CPU等の演算装置210と、RAM、ROM、及びHDD等の記憶装置220とを備える。記憶装置220には、各種のプログラムやデータに加えて、制限速度情報221が記憶される。この制限速度情報221は、コンバイン1に作業機90が装着された場合に、その作業機90の種別に応じて、機体の走行速度に適切な制限を加えるための情報である。
【0075】
制御手段200は、前述のように、第一操作位置検出センサ87a、第二操作位置検出センサ88a、操向位置検出センサ89aと接続されるとともに、変速アクチュエータ141P、操向アクチュエータ142と接続される。さらに、制御手段200は、装着状態検知手段73、種別検知手段74、作業状態検知手段、走行速度検知手段70aと接続される。
【0076】
装着状態検知手段73は、作業機90のコンバイン1への装着状態を検知するものである。本実施形態において、装着状態検知手段73は、作業機90がコンバイン1に装着されて、排藁処理部7に配置されたコネクタと作業機90に設けられたコネクタとが接続され、琲藁処理部7側と作業機90側との通電が行われることによって、作業機90が装着状態であることを検知するように構成される。装着状態検知手段73は、また、琲藁処理部7側と作業機90側との通電が行われていないときには、作業機90が未装着状態であることを検知するように構成される。
【0077】
種別検知手段74は、作業機90の種別(機種)を検知するものである。本実施形態において、種別検知手段74は、排藁処理部7に配置されたコネクタと作業機90に設けられたコネクタとが接続されて、琲藁処理部7側と作業機90側との通電が行われるときの電圧値を検知することによって、作業機90の種別、例えば結束機90Aか集束機90Bかを検知することができるように構成される。ここで、種々の作業機90には、前記電圧値が作業機90の種別によって異なるように予め設定された抵抗値を有する抵抗が設けられている。
【0078】
なお、装着状態検知手段73および種別検知手段74は、このようなものに限定するものではなく、例えば、琲藁処理部7側に接触または非接触式のセンサを配置し、作業機90側に装着時に前記センサと対向する位置に作業機に応じた検知部材を配置することによって、コンバイン1に装着されている作業機90の種別を検知するような構成でもよい。
【0079】
作業状態検知手段は、コンバイン1が刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検知するものである。本実施形態において、作業状態検知手段は、第二操作位置検出センサ88aが兼ねるものである。すなわち、作業状態検知手段は、副変速レバー88が作業用の低速位置に回動操作された場合に、コンバイン1が刈取作業状態であることを検知し、副変速レバー88が走行用の高速位置に回動操作された場合に、コンバイン1が非刈取作業状態であることを検知するように構成される。ただし、作業状態検知手段は前記構成に限定するものではなく、作業レバー(脱穀レバーや刈取レバー)の回動を検知する構成であってもよい。
【0080】
走行速度検知手段70aは、機体の走行速度を検知するものである。走行速度検知手段70aは、本実施形態において、トランスミッション23における適宜の軸やギヤの回転速度を走行速度として検知することができるように構成される。
【0081】
次に、図6を用いて制御手段200による制御の流れについて説明する。
【0082】
まず、制御手段200は、刈取作業状態であるかどうかを判定し(S110)、刈取作業状態でないと判定した場合、速度制限を解除し(S180)、走行速度を制限せず(S190)、前記ステップS110に移行する。
刈取作業状態であるかどうかは、作業状態検知手段(第二操作位置検出センサ88a)の検知情報に基づいて、コンバイン1が刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを判定する(S110)。本実施形態においては、制御手段200は、副変速レバー88が作業用の低速位置に回動操作されているか走行用の高速位置に回動操作されているかを判定する。
【0083】
制御手段200は、非刈取作業状態である、即ち副変速レバー88が走行用の高速位置に回動操作されていると判定した場合、速度制限を解除し(S180)、走行速度を制限せず(S190)、前記ステップS110に移行する。この場合、制御手段200は、主変速レバー87の操作位置に応じて、機体が通常の最高速度までの範囲で走行可能なように、走行用HST40の変速アクチュエータ141Pを制御する。
【0084】
ステップ110において、刈取作業状態であると判定した場合、制御手段200は、装着状態検知手段73の検知情報に基づいて、作業機90がコンバイン1に装着されているか否かを判定する(S120)。
【0085】
制御手段200は、作業機90がコンバイン1に装着されていないと判定した場合、速度制限を解除し(S180)、走行速度を制限せず(S190)、前記ステップS110に移行する。この場合、制御手段200は、主変速レバー87の操作位置に応じて、機体が通常の最高速度までの範囲で走行可能なように、走行用HST40の変速アクチュエータ141Pを制御する。
【0086】
制御手段200は、作業機90がコンバイン1に装着されていると判定した場合、種別検知手段74により作業機90の種別に関する情報を取得し、結束機90Aかどうかを判断する(S130)。
結束機90Aが装着されている場合には、制限速度をVaとする(S140)。この場合、制御手段200は、結束機90Aが装着されている場合に機体が走行可能な最高速度となる制限速度Vaを制限速度情報221から取得し、走行速度検知手段70aにより検知した走行速度V0と制限速度Vaとを比較し、走行速度V0が制限速度Va以下となるように走行用HST40の変速アクチュエータ141Pを制御する。
【0087】
制御手段200は、作業機90の種別が結束機90Aでない場合には、集束機90Bが装着されているどうかを判断する(S150)。集束機90Bが装着されている場合には、制限速度をVbとする(S160)。この場合、制御手段200は、集束機90Bが装着されている場合に機体が走行可能な最高速度となる制限速度Vbを制限速度情報221から取得し、走行速度検知手段70aにより検知した走行速度V0と制限速度Vbとを比較し、走行速度V0が制限速度Vb以下となるように走行用HST40の変速アクチュエータ141Pを制御する。
制御手段200は、作業機90の種別が集束機90Bでない場合には、その他の作業機が装着されていると判断し、その作業機に合った所定の制限速度Vcに設定する(S170)。この場合、制御手段200は、走行速度検知手段70aにより検知した走行速度V0と制限速度Vcとを比較し、走行速度V0が制限速度Vc以下となるように走行用HST40の変速アクチュエータ141Pを制御する。
【0088】
上記のように、刈取作業が行われる場合に、即ち、副変速レバー88が作業用の低速位置に回動操作され、作業機90がコンバイン1に装着されているとき、主変速レバー87が前進増速側へ向かって最大操作位置まで回動操作されても、この回動操作により設定される所定の最高速度は、作業機90がコンバイン1に装着されていないときに前記同様に主変速レバー87が回動操作されたときに設定される最高速度よりも低くなる。
【0089】
ここでの最高速度は、コンバイン1が仮に最高速度で走行しながら刈取作業を行い、脱穀部4で脱穀する刈取後の穀稈の量が増大し、ひいては脱穀後の排藁の量が増大した場合でも、作業機90が排藁を確実に処理することができるように、作業機90の種別ごとに異なるように予め適宜に設定されて、制限速度情報221に含まれる。この所定の走行速度に関しては、例えば、結束機90Aに対応する最高速度(制限速度Va)は、収束機90Bに対応する最高速度(制限速度Vb)よりも低く設定される。
【0090】
また、制御手段200は、上記のように制限速度を設定した場合(S140、S160、S170)には、前記ステップS110に移行し、非刈取作業状態であると判定した場合、走行速度の制限を解除し(S180)、走行速度を制限せず(S190)、さらに前記ステップS110に移行する。この場合、制御手段200は、主変速レバー87の操作位置に応じて、機体が通常の最高速度までの範囲で走行可能なように、走行用HST40の変速アクチュエータ141Pを制御する。
【0091】
なお、制御手段200は、走行速度を制限した場合、主変速レバー87の操作量に対応する、前記走行用HST40における走行ポンプ40Pの可動斜板に連動連結した制御軸の回動量が、走行速度を制限する前に比べて小さくなるように、走行用HST40の変速アクチュエータ141Pを制御する。これにより、作業者は、走行速度が制御手段200により制限された場合であっても、走行速度が制限される前と同様に、主変速レバー87の全操作範囲を利用して、主変速レバー87により走行速度を無段階に変更することが可能となる。
【0092】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、脱穀後の排藁を処理するための作業機90、例えば結束機90Aと収束機Bを装着可能なものであって、作業機90の装着状態を検知する装着状態検知手段73と、装着状態検知手段73により作業機90が装着状態であることが検知された場合に、走行速度を制限する制御手段200とを備えるものである。
【0093】
これにより、作業機90をコンバイン1に装着した場合に、走行速度を制限して、機体が走行可能な最高速度を作業機90が未装着の場合よりも低く設定し直すことが可能となる。したがって、作業機90をコンバイン1に装着した状態で刈取作業を行うときに、機体が最高速度で走行して刈取後の穀稈の量が増大しても、作業機90の処理能力を超える量の排藁が当該作業機90に搬送されることがなくなり、脱穀後の排藁を作業機90にて確実に処理することができ、また、作業機に大きな負荷がかかって損傷を与えるようなこともなくなる。具体的には、例えば、作業機90が結束機90Aである場合には、穀後の琲藁を所定量づつ結束紐で確実に結束して外部に放出することができる。また、作業機90が収束機90Bである場合には、脱穀後の琲藁を確実に集束させて所定量づつ外部に放出することができる。
【0094】
また、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、作業機90の種別を検知する種別検知手段74を備えて、制御手段200は、種別検知手段74により検知された前記作業機90の種別に基づいて、走行速度の制限を変更可能とするものである。
【0095】
これにより、コンバイン1に装着された作業機90の種別に基づいて、走行速度の制限を変更して、機体が走行可能な最高速度を作業機90の種別にあわせて適切に設定することが可能となる。具体的には、例えば、走行速度の制限時に、機体が走行可能な最高速度を作業機90が結束機90Aである場合には、収束機90Bである場合よりも低く設定することが可能となる。したがって、作業機90をコンバイン1に装着した状態で刈取作業を行うときに、脱穀後の排藁を作業機90にて適切かつ確実に処理することができる。また、作業機に応じた最高速度で作業を行うことで効率よく作業を行うことが可能となる。
【0096】
また、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検知する作業状態検知手段を備えて、制御手段200は、前記装着状態検知手段73の検知結果に基づいて走行速度を制限している場合に、作業状態検知手段により非刈取作業状態であることが検知されたとき、走行速度の制限を解除するものである。
【0097】
これにより、作業機90をコンバイン1に装着した場合であっても、作業機90を使用しない非刈取作業状態のときには、走行速度が制限されなくなる。したがって、非刈取作業状態のときには、作業機90をコンバイン1に装着していない場合と同一の広い速度域で、機体を円滑に走行させることできる。
【符号の説明】
【0098】
1 コンバイン
73 装着状態検知手段
74 種別検知手段
87a 第一操作位置検出センサ
88a 第二操作位置検出センサ
90 作業機
200 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀後の排藁を処理するための作業機を装着可能なコンバインであって、
前記作業機の装着状態を検知する装着状態検知手段と、
前記装着状態検知手段により前記作業機が装着状態であることが検知された場合に、走行速度を制限する制御手段とを備えるコンバイン。
【請求項2】
前記作業機の種別を検知する種別検知手段を備え、
前記制御手段は、前記種別検知手段により検知された前記作業機の種別に基づいて、走行速度の制限を変更可能とする、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
刈取作業状態であるか非刈取作業状態であるかを検知する作業状態検知手段を備え、
前記制御手段は、前記装着状態検知手段の検知結果に基づいて走行速度を制限している場合に、前記作業状態検知手段により非刈取作業状態であることが検知されたとき、走行速度の制限を解除する、請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−160721(P2011−160721A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27017(P2010−27017)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】