説明

コンバイン

【課題】選別部に動力を伝達する選別駆動用伝達機のメンテナンスを容易に行うことができるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】刈取部3の後方に脱穀部4を配置し、前記脱穀部4の下方に選別部5を配置して、前記脱穀部4で前記刈取部3により刈り取られた穀稈をフィードチェン41により搬送しながら扱胴43により脱穀し、前記選別部5で前記脱穀部4により脱穀処理された処理物を選別するコンバイン1において、前記選別部5の側方かつ前記フィードチェン41の下方に配置されて、前記選別部5に動力を伝達する選別駆動用伝達機構100と、前記フィードチェン41を支持する支持フレーム16に取り付けられて、前記選別駆動用伝達機構100の少なくとも一部を外側から覆うサイドカバー15と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、刈取部の後方に脱穀部を配置し、前記脱穀部の下方に選別部を配置して、前記脱穀部で前記刈取部により刈り取られた穀稈をフィードチェンにより搬送しながら扱胴により脱穀し、前記選別部で前記脱穀部により脱穀処理された処理物を選別するように構成されている。このようなコンバインにおいては、選別部に動力を伝達する選別駆動用伝達機構が、前記選別部の左側方かつ前記フィードチェンの下方に配置されて、機体本体に取り付けられた側部カバーによって左外側から覆われている(例えば、特許文献1参照)。そして、選別駆動用伝達機構の一部は、側部カバーの内側で別のカバー(サイドカバー)によって更に左外側から覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−166625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のようなコンバインにおいては、サイドカバーがボルト等の固定具によって機体側に固定されていた。そのため、選別駆動用伝達機構をメンテナンスする際、固定具を着脱して、サイドカバーを機体側に取り付けたり、機体側から取り外したりする必要があり、メンテナンス性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、選別部に動力を伝達する選別駆動用伝達機のメンテナンスを容易に行うことができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、刈取部の後方に脱穀部を配置し、前記脱穀部の下方に選別部を配置して、前記脱穀部で前記刈取部により刈り取られた穀稈をフィードチェンにより搬送しながら扱胴により脱穀し、前記選別部で前記脱穀部により脱穀処理された処理物を選別するコンバインにおいて、前記選別部の側方かつ前記フィードチェンの下方に配置されて、前記選別部に動力を伝達する選別駆動用伝達機構と、前記フィードチェンを支持する支持フレームに取り付けられて、前記選別駆動用伝達機構の少なくとも一部を外側から覆うサイドカバーと、を備えるものである。
【0008】
請求項2においては、前記選別部の唐箕ファンの風量を変更する風量調節装置と、前記選別部の揺動選別装置に備えられるチャフシーブの開度を変更する開度調節装置とを、前記選別部の側方かつ前記フィードチェンの下方に配置して、前記サイドカバーにより覆うものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、フィードチェンを開放するだけで、サイドカバーも同時に開放して、選別部の選別駆動伝達部を外側に向けて露出させることが可能となる。したがって、選別用駆動伝達機構のメンテナンスを行う際に、手間を省くことができ、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2においては、サイドカバーを開放して、メンテナンス頻度が比較的高い風量調節手段及び開度調節手段のメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】コンバインの全体的な構成を示す平面図。
【図3】脱穀部及び選別部の構成を示す側面断面図。
【図4】フィードチェンの構成を示す側面図。
【図5】動力伝達機構の構成を示す図。
【図6】選別駆動用伝達機構の構成を示す側面図。
【図7】唐箕ファン近傍の構成を示す図。
【図8】風量調節装置の構成を示す図。(a)風量が大となる場合の図。(b)風量が小となる場合の図。
【図9】揺動選別装置の構成を示す斜視図。
【図10】開度調節装置の構成を示す図。(a)開度が小となる場合の図。(b)開度が大となる場合の図。
【図11】唐箕ファンの風量と、チャフシーブの開度を変更するブロック図。
【図12】排藁量検出装置の構成を示す側面図。
【図13】処理物量検出装置の構成を示す側面図。
【図14】設定操作具の構成を示す側面図。
【図15】フィードチェンを開放していない場合の選別駆動用伝達機構を示す側面図。
【図16】フィードチェンを開放している場合の選別駆動用伝達機構を示す側面図。
【図17】サイドカバーの構成を示す図。(a)側面図。(b)正面図。(c)斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、コンバイン1には、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6、排藁処理部7、操縦部8、エンジン22とが備えられる。
【0016】
走行部2は、機体フレーム9の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21などを有して、機体をクローラ式走行装置21により前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0017】
刈取部3は、機体フレーム9の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31や、引起装置32や、切断装置33や、搬送装置34などを有して、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈の株元を切断装置33により切断し、切断後の穀稈を搬送装置34により脱穀部4側へ搬送することができるように構成される。
【0018】
脱穀部4は、機体フレーム9の左側前部に設けられ、刈取部3の後方に配置される。脱穀部4は、フィードチェン41や、扱胴43、処理胴45などを有して(図3参照)、刈取部3から搬送されてくる穀稈をフィードチェン41により受け継いで排藁処理部7側へ搬送し、搬送中の穀稈を扱胴43により脱穀し、扱胴43側からの未処理物を処理胴45により処理することができるように構成される。
【0019】
選別部5は、機体フレーム9の左側部に設けられ、脱穀部4の下方に配置される。選別部5は、揺動選別装置50や、風選別装置や、穀粒搬送装置などを有して(図3参照)、脱穀部4から落下する処理物を揺動選別装置50により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別して藁屑や塵埃などを藁屑排出装置により外部へ排出する一方、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部6へ搬送することができるように構成される。
【0020】
穀粒貯溜部6は、機体フレーム9の右側後部に設けられ、脱穀部4および選別部5の右側方に配置される。穀粒貯溜部6は、グレンタンク61や、穀粒排出装置62などを有して、選別部5から搬送されてくる穀粒をグレンタンク61により貯溜し、グレンタンク61が満タンになると穀粒を穀粒排出装置62により排出する。穀粒排出装置62は任意の方向に排出できるように構成される。
【0021】
排藁処理部7は、機体フレーム9の左側後部に設けられ、脱穀部4の後方に配置される。排藁処理部7は、排藁搬送装置71や、排藁切断装置72などを有して、脱穀部4からの脱穀済みの稈を排藁として、排藁を排藁搬送装置71により受け継いで外部へ排出し、あるいは、排藁切断装置72へ搬送した後に、排藁切断装置72で切断してから外部へ排出するように構成される。
【0022】
操縦部8は、機体フレーム9の右側前部に設けられ、刈取部3の搬送装置34の右側方であって穀粒貯溜部6の前方に配置される。操縦部8は、操縦席81や、ステアリングハンドル82、キャビン83、操作パネルなどを有して、操縦席81やステアリングハンドル82、操作パネルなどをキャビン83により覆い、操縦席81に操縦者を着座させ、ステアリングハンドル82や操作パネルに配置された操作レバーや操作スイッチ類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0023】
このようにして、コンバイン1は、操縦部8での操作具類の操作によって、エンジン22の動力を各部の装置に伝達して、走行部2にて機体を走行させながら、刈取部3で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部4で刈取部3からの穀稈を脱穀し、選別部5で脱穀部4からの処理物を選別して、穀粒貯溜部6で選別部5からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部7で脱穀部4からの排藁を外部へ排出することができるようになっている。
【0024】
次に、脱穀部4および選別部5の構成について説明する。
【0025】
図3に示すように、脱穀部4には、フィードチェン41、扱胴43、処理胴45などが備えられる。また、選別部5には、揺動選別装置50、風選別装置、穀粒搬送装置などが備えられる。
【0026】
脱穀部4において、扱胴43は、前端部を面取りした円筒状に形成され、軸心方向を前後方向として扱室42に配置される。扱胴43は、扱室42でその前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられ、この回転支軸にエンジン22からの動力が伝達されることで当該回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りで回転駆動される。扱胴43の下方には、受網44が扱胴43の下半部を覆うように配置される。
【0027】
処理胴45は、円筒状に形成され、軸心方向を前後方向として扱胴43と平行とされて、その右後方で処理室46に配置される。処理室46はその前部の左側方に設けられる送塵口を介して扱室42と連通される。そして、処理胴45は、処理室46に前後方向に回転自在に架設された支軸に支持され、この支軸にエンジン22からの動力が伝達されることで当該支軸と一体的にその前後方向の軸心回りで回転駆動される。処理胴45の下方には、処理胴網が配置される。
【0028】
図1、図3及び図4に示すように、フィードチェン41は、扱胴43の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置される。フィードチェン41は、扱胴43の左側方で支持フレーム16に設けられた駆動スプロケット16aと二つの従動スプロケット16b・16bとに巻き掛けられ、その駆動スプロケット16aにエンジン22からの動力が伝達されることで回転駆動される。
【0029】
ここで、フィードチェン41の支持フレーム16は、前後方向に水平に延長される横フレーム16cと、横フレーム16cの後部から後上方へ向かって湾曲される補強フレーム16dと、横フレーム16cの前端部と補強フレーム16dの上部とを接続する前低後高状態に傾斜した斜フレーム16eとを有し、側面視で略直角三角形状に形成される。
【0030】
回動支点フレーム16fは、側面視略コ字状に形成され、その一端部は補強フレーム16dの上端部と連結され、他端部は横フレーム16cの後端部と連結される。回動支点フレーム16fは、機体後部で、側方に回動可能に支持される。また、横フレーム16cの前後中途部には、後述のサイドカバー15と固定するための二つの支持杆16g・16gが下方へ向けて突出するように連結されている。
【0031】
そして、駆動スプロケット16aが支持フレーム16の前端部に設けられるとともに、従動スプロケット16b・16bが支持フレーム16の前部および後端部に設けられる。そのうえで、フィードチェン41が前述のように駆動スプロケット16a及び従動スプロケット16bに巻回される。
【0032】
これにより、フィードチェン41が、支持フレーム16に駆動スプロケット16a及び従動スプロケット16b・16bを介して支持されて、当該支持フレーム16とともに回動支点フレーム16fを中心に回動可能とされる。つまり、フィードチェン41が図2における矢印A1の方向へ移動可能とされる。ただし、支持フレーム16の回動支点を、前述のように後側に設けるのではなく、前側に設けることも可能である。
【0033】
支持フレーム16は、その前部に設けられた保持機構により、フィードチェン41が扱胴43と対向して扱室42を左側から閉じる閉位置に保持可能とされる。また、支持フレーム16は、前記保持機構により保持されない場合、閉位置から左側方へ向けて回動支点フレーム16f回りに回動して、フィードチェン41が扱胴43から離間して扱室42を左側から開放する開位置に移動可能とされる。
【0034】
図3に示すように、選別部5において、揺動選別装置50には、揺動選別装置本体50a、前フィードパン54、後フィードパン55、チャフシーブ56、グレンシーブ57、ストローラック58が備えられる。
【0035】
揺動選別装置本体50aは、選別部5の平面視で矩形枠状に形成される。揺動選別装置本体50aは、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴43および受網44ならびに処理胴45および処理胴網の下方に配置され、機体フレーム9上に設けられた左右の下部機枠91・91に揺動可能かつ着脱可能に支持される。この揺動選別装置本体50aは、揺動機構の揺動軸にエンジン22からの動力が伝達されることによって、左右の下部機枠91・91に対して揺動される。
【0036】
フィードパンは、前フィードパン54および後フィードパン55により構成される。前フィードパン54は、揺動選別装置本体50a内の前部で脱穀部4の扱胴43および受網44の下方に配置される。後フィードパン55は、揺動選別装置本体50a内の前部で前フィードパン54の後下方に当該前フィードパン54と所定間隔をとって配置される。
【0037】
チャフシーブ56は、揺動選別装置本体50a内の前後中途部に設けられ、脱穀部4の扱胴43および受網44の前後中途部下方ならびに処理胴45および処理胴網の下方であって、前フィードパン54の後方に配置される。
【0038】
グレンシーブ57は、揺動選別装置本体50a内の前後中途部に設けられ、チャフシーブ56の下方に配置される。ストローラック58は、揺動選別装置本体50a内の後部に設けられ、チャフシーブ56の後方であってグレンシーブ57の後上方に配置される。
【0039】
風選別装置には、唐箕ファン51、吸引ファン59、プレファン52、およびセカンドファン53が備えられる。ここで、唐箕ファン51、プレファン52、およびセカンドファン53は、揺動選別装置50の下方で左右の下部機枠91・91の左右内側に配置され、吸引ファン59は、揺動選別装置50の上方で左右の上部機枠92・92の左右内側に配置される。そして、これらのファン51・59・52・53に対して、揺動選別装置50が左右の下部機枠91・91に沿って前後方向に摺動可能とされる。
【0040】
唐箕ファン51は、左右の下部機枠91・91の前部に左右方向に横設され、前フィードパン54の下方に配置される。吸引ファン59は下部機枠91の上部に配置された左右の上部機枠92・92の後端部の上方で左右方向に横設され、ストローラック58の上方に配置される。そして、唐箕ファン51および吸引ファン59は、その回転軸51a・59aにエンジン22からの動力が伝達されることで回転し、選別風を発生させるように構成される。
【0041】
プレファン52は、左右の下部機枠91・91の前端部付近に左右方向に横設され、前フィードパン54の前部の下方であって、唐箕ファン51の前上方に配置される。セカンドファン53は、左右の下部機枠91・91の前後中途部の底部に左右方向に横設され、後述する穀粒搬送装置の一番搬送装置151と二番搬送装置152との間に配置される。そして、プレファン52およびセカンドファン53は、その回転軸52a・53aにエンジン22からの動力が伝達されることで回転し、選別風を発生させるように構成される。
【0042】
穀粒搬送装置には、一番搬送装置151、二番搬送装置152、一番揚穀装置155、二番還元装置156が備えられる。一番搬送装置151は、左右の下部機枠91・91の底部で左右方向に横設され、唐箕ファン51の後方であってチャフシーブ56およびグレンシーブ57の下方に配置される。二番搬送装置152は、左右の下部機枠91・91の底部で左右方向に横設され、一番搬送装置151およびセカンドファン53の後方であって、ストローラック58の下方に配置される。
【0043】
一番揚穀装置155は、右側の下部機枠91の外側に上下方向に立設され、一番搬送装置151の右端部と接続されるとともに、穀粒貯溜部6のグレンタンク61(図1参照)と接続される。二番還元装置156は、右側の下部機枠91の外側に前後方向に斜設され、二番搬送装置152の右端部と接続されるとともに、脱穀部4の扱室42または揺動選別装置50の上方の空間に接続される。
【0044】
このような構成において、脱穀作業および選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3からの穀稈がその株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部7側へ搬送される。この搬送中の穀稈の穂先部が扱胴43により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網44により選別される。扱胴43により脱穀されなかった未処理物は、扱室42から送塵口を介して処理室46に搬送されて、処理胴45により処理され、その処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網により選別される。
【0045】
選別部5では、揺動選別装置本体50aが揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網44から落下した処理物の層が前後フィードパン54・55により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン54による選別後のものがチャフシーブ56により粗選別される。後フィードパン55による選別後のものがグレンシーブ57により選別される。また、脱穀部4の受網44および処理胴網から落下した処理物がチャフシーブ56により粗選別される。チャフシーブ56による選別後のものがグレンシーブ57と唐箕ファン51およびプレファン52からの選別風とにより精選別される。
【0046】
チャフシーブ56およびグレンシーブ57から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン51およびプレファン52からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置151に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン51およびプレファン52からの選別風により、さらにはセカンドファン53からの選別風により二番搬送装置152の上方へ向けて飛ばされる。
【0047】
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン51、プレファン52、およびセカンドファン53からの選別風によりストローラック58へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑はストローラック58によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。他の塵埃などは、吸引ファン59により吸引されて、三番口から外部に排出される。
【0048】
一番物は、一番搬送装置151により一番揚穀装置155に搬送され、つづいて一番揚穀装置155により穀粒貯溜部6のグレンタンク61に搬送されて、このグレンタンク61に一時的に貯溜される。二番物は、二番搬送装置152により二番還元装置156に搬送され、つづいて二番還元装置156により脱穀部4の扱室42または揺動選別装置50の上方空間へ搬送され、脱穀後にまたは脱穀されずに揺動選別装置50により再選別される。
【0049】
次に、エンジン22から各部への動力伝達機構の構成について説明する。
【0050】
図5に示すように、動力伝達機構においては、エンジン22の出力軸22aが走行部2のクローラ式走行装置21の駆動軸と変速装置23を介して連結されて、エンジン22の動力がクローラ式走行装置21に伝達される。また、エンジン22の他の出力軸が穀粒貯溜部6の穀粒排出装置62の入力軸と伝動機構を介して連結されて、エンジン22の動力が穀粒排出装置62に伝達される。
【0051】
エンジン22の出力軸22aがカウンタケース24の入力軸24aとベルトテンションクラッチ式の脱穀クラッチ22bを介して連結されて、エンジン22の動力がカウンタケース24の入力軸24aに伝達される。また、変速装置23の出力軸23aがカウンタケース24の入力軸24bと伝動機構を介して連結されて、変速装置23で変速されたエンジン22の動力がカウンタケース24の入力軸24bに伝達される。
【0052】
カウンタケース24は、エンジン22の動力を刈取部3と脱穀部4及び選別部5の各装置に伝達するものである。カウンタケース24は、前述の入力軸24a・24b、出力軸24c・24d・24e・24f、刈取変速機構24g、及び遊星歯車機構24i等を備える。
【0053】
出力軸24cが入力軸24aとベベルギヤ等の伝達機構を介して連結されて、入力軸24aに伝達された動力が出力軸24cに伝達される。出力軸24cが脱穀部4の扱胴43の駆動軸と伝動機構を介して連結されて、入力軸24aに伝達された動力が扱胴43に伝達される。扱胴43の駆動軸が排藁処理部7の排藁搬送装置71の入力軸に伝動機構を介して連結されて、入力軸24aに伝達されたエンジン22の動力が排藁搬送装置71に伝達される。
【0054】
出力軸24dが入力軸24aまたは入力軸24bと刈取変速機構24gを含む伝動機構を介して連結され、入力軸24aまたは入力軸24bに伝達された動力が出力軸24dに伝達される。これら入力軸24a・24bの連結の切替は、操作レバー等により刈取変速機構24gを操作して行われる。出力軸24dが刈取部3の刈取入力軸3aと伝動機構を介して連結されて、エンジン22の動力が刈取部3における搬送装置34等の各装置に伝達される。
【0055】
出力軸24eが入力軸24a及び入力軸24bと遊星歯車機構24iを含む伝達機構を介して連結される。遊星歯車機構24iにおいては、入力軸24aから伝達された動力と入力軸24bから伝達された動力とが合成されて、その合成された動力が出力軸24eに出力される。出力軸24eにフィードチェン41のスプロケットが軸着されて、エンジン22の動力がフィードチェン41に伝達される。
【0056】
出力軸24fが入力軸24aと伝達機構を介して連結されて、入力軸24aに伝達された動力が出力軸24fに伝達される。出力軸24fが、揺動選別装置50、唐箕ファン51、プレファン52、セカンドファン53を含む風選別装置、及び一番搬送装置151、二番搬送装置152を含む穀粒搬送装置、排藁処理部7の排藁切断装置72、の各装置の入力軸に後述する選別駆動用伝達機構100を介して連結されて、動力が選別部5の各装置に伝達される。
【0057】
図3及び図6に示すように、選別駆動用伝達機構100は、カウンタケース24から伝達された動力を選別部5に、詳しくは選別部5の唐箕ファン51、プレファン52、セカンドファン53、吸引ファン59、及び一番搬送装置151と二番搬送装置152を含む穀粒搬送装置等に伝達するように構成される。選別駆動用伝達機構100は、選別部5の一側方、本実施形態においては左外側方に、具体的には揺動選別装置50等を支持する下部機枠91における左右の側板のうち、左側板91aの外側方に配置されるとともに、脱穀部4のフィードチェン41の下方に配置される。
【0058】
選別駆動用伝達機構100は、第一入力プーリ101A、第二入力プーリ101B、唐箕ファンプーリ102、プレファンプーリ103、一番搬送プーリ104、セカンドファンプーリ105、二番搬送プーリ106、吸引ファンプーリ107、揺動プーリ108、複数のベルト、風量調節装置13、及び開度調節装置14を備える。
【0059】
第一入力プーリ101A及び第二入力プーリ101Bは、選別部5の前方付近であって、カウンタケース24の左側方に配置される。第一入力プーリ101A及び第二入力プーリ101Bは、第一入力プーリ101Aが第二入力プーリ101Bの左側方に位置するように左右に並べられて、共にカウンタケース24から左側方へ向かって突出された出力軸24fに固設される。
【0060】
唐箕ファンプーリ102は、第二入力プーリ101Bの後方であって、唐箕ファン51の左側方に配置される。唐箕ファンプーリ102は、左側板91a側から左外側方に向かって突出する唐箕ファン51の回転軸51aに固設される。唐箕ファンプーリ102は、後述するように割りプーリで構成される。
【0061】
プレファンプーリ103は、前記第二入力プーリ101Bと前記唐箕ファンプーリ102との間であって、プレファン52の左側方に配置される。プレファンプーリ103は、左側板91a側から左外側方に向かって突出するプレファン52の回転軸52aに固設される。
【0062】
そして、第一ベルト111が第二入力プーリ101Bと唐箕ファンプーリ102とプレファンプーリ103とに巻き掛けられる。第一ベルト111にはテンション機構が設けられる。このテンション機構では、テンションプーリ115が、支持アーム116により回動可能に支持されて、不図示の付勢部材により第一ベルト111を押圧する方向に付勢される。これにより、第一ベルト111に所定の張力が付与される。
【0063】
一番搬送プーリ104は、第一入力プーリ101Aの後方であって、一番搬送装置151の左側方に配置される。一番搬送プーリ104は、左側板91a側から左外側方に向かって突出する一番搬送装置151の回転軸151aに固設される。また、従動一番搬送プーリ104aが一番搬送プーリ104の右側方に並べて配置され、一番搬送プーリ104と同じく、一番搬送装置151の回転軸151aに固設される。
【0064】
そして、第二ベルト112が第一入力プーリ101Aと一番搬送プーリ104とに巻き掛けられる。第二ベルト112にはテンション機構が設けられる。このテンション機構では、テンションプーリ117が、中途部で出力軸24fに相対回転可能に外嵌された支持アーム118の一端(後端)に回動可能に支持されて、支持アーム118の他端(前端)と下部機枠91との間に介設された付勢部材119により第二ベルト112を押圧する方向に付勢される。付勢部材119の付勢力は、調節機構120により調整可能とされる。これにより、第二ベルト112に所定の張力が付与される。
【0065】
セカンドファンプーリ105は、従動一番搬送プーリ104aの後方であって、セカンドファン53の左側方に配置される。セカンドファンプーリ105は、左側板91a側から左外側方に向かって突出するセカンドファン53の回転軸53aに固設される。
【0066】
二番搬送プーリ106は、セカンドファンプーリ105の後方であって、二番搬送装置152の左側方に配置される。二番搬送プーリ106は、左側板91a側から左外側方に向かって突出する二番搬送装置152の二番コンベアの回転軸152aに固設される。また、従動二番搬送プーリ106aが、二番搬送プーリ106の左側方に並べて配置され、二番搬送プーリ106と同じく、二番搬送装置152の二番コンベアの回転軸152aに固設される。
【0067】
吸引ファンプーリ107は、二番搬送プーリ106の上方であって、吸引ファン59の左側方に配置される。吸引ファンプーリ107は、左側の上部機枠92左外側方に向かって突出する吸引ファン59の回転軸59aに固設される。
【0068】
そして、第三ベルト113が従動一番搬送プーリ104aとセカンドファンプーリ105と二番搬送プーリ106と吸引ファンプーリ107とに巻き掛けられる。第三ベルト113にはテンション機構が設けられる。このテンション機構では、テンションプーリ121が、中途部で回転軸53aに相対回転可能に外嵌された支持アーム122の一端(前端)に回動可能に支持されて、支持アーム122の他端(後端)とブラケット124との間に介設された付勢部材123により第三ベルト113を押圧する方向に付勢される。同時に、二つのテンションプーリが、それぞれブラケット124に回動可能に支持されて、付勢部材123により第三ベルト113を押圧する方向に付勢される。付勢部材123の付勢力は、調節機構125により調整可能とされる。これにより、第三ベルト113に所定の張力が付与される。
【0069】
揺動プーリ108は、従動二番搬送プーリ106aの後方であって、前記揺動機構の左側方に配置される。揺動プーリ108は、左側板91a側から左外側方に向かって突出する揺動機構の揺動軸50bに固設される。
【0070】
そして、第四ベルト114が従動二番搬送プーリ106aと揺動プーリ108とに巻き掛けられる。第四ベルト114にはテンション機構が設けられる。このテンション機構では、テンションプーリ126が、支持アーム127により回動可能に支持されて、不図示の付勢部材により第四ベルト114を押圧する方向に付勢される。これにより、第四ベルト114に所定の張力が付与される。
【0071】
このような構成により、エンジン22からの動力がカウンタケース24の出力軸24fから回転軸51aと回転軸52aとに第二入力プーリ101B、唐箕ファンプーリ102、及び第一ベルト111を介して伝達される。その結果、唐箕ファン51とプレファン52が回転して、選別風が生じることとなる。
【0072】
また、エンジン22からの動力がカウンタケース24の出力軸24fから回転軸151aに第一入力プーリ101A、一番搬送プーリ104、及び第二ベルト112を介して伝達される。その結果、一番搬送装置151、ひいては一番揚穀装置155が作動して、一番搬送装置151に収容された穀粒が一番揚穀装置155を介してグレンタンク61まで搬送されることとなる。
【0073】
回転軸151aに伝達された動力が回転軸53aと回転軸152aと回転軸59aとに従動一番搬送プーリ104a、セカンドファンプーリ105、二番搬送プーリ106、吸引ファンプーリ107、及び第三ベルト113を介して伝達される。その結果、セカンドファン53が回転して、選別風が生じることとなる。二番搬送装置152、ひいては二番還元装置156が作動して、二番搬送装置152に収容された穀粒が脱穀部4の扱室42または揺動選別装置50の上方空間へ搬送されることとなる。吸引ファン59が回転して、選別部5内の塵埃等が吸引されて三番口(排塵口)から外部に排出されることとなる。
【0074】
回転軸152aに伝達された動力が揺動軸50bに従動二番搬送プーリ106a、揺動プーリ108、及び第四ベルト114を介して伝達される。その結果、前記揺動機構が作動して、揺動選別装置50(揺動選別装置本体50a)が左右の下部機枠91・91に対して揺動されることとなる。
【0075】
次に、唐箕ファン51の構成について説明する。
【0076】
図3、図7に示すように、唐箕ファン51は、回転軸51aや複数の羽根体51b・51b・・・などで構成される。回転軸51aは、軸心方向を左右方向として、その左右両端部で下部機枠91における左右の側板91a・91aの前下部に開口された吸入口91bの上下中途部に前後方向に架設したプレート93に軸支される。複数の羽根体51b・51b・・・は、それぞれ回転軸51aから支持部材51d・51d・・・を介して当該回転軸51aの半径方向に放射状に突設される。そして、唐箕ファン51先端の回転軌跡の前外側は、前被覆板51cにより覆われる。
【0077】
唐箕ファン51は、左右の側板91a・91aとその間に横設された前被覆板51cからなるケースに収容される。唐箕ファン51の左右両側方(回転軸51aの軸方向両端部付近)には、吸入口91b・91bが設けられる。吸入口91b・91bは、それぞれ左右の側板91a・91aに形成されて、左右方向を向いて開口される。唐箕ファン51の後方には、吐出口51eが略前後方向を向いて開口される。これにより、唐箕ファン51の回転時に、空気が吸入口91b・91bから前被覆板51cの内部に導入されて、唐箕ファン51による選別風が発生し、この選別風が吐出口51eから選別部5の後部へ、即ち選別方向の下手側へ向けて送られることとなる。
【0078】
図6から図8に示すように、唐箕ファン51の風量を調節するための風量調節装置13が設けられる。風量調節装置13は、唐箕ファン51の回転軸51aの回転数を変更するための割プーリと、該割プーリの幅を変更するためのカム機構と、該カム機構を作動させるアクチュエータと、カム機構とアクチュエータとの間に配設される伝動機構からなり、具体的には、第一アクチュエータ130、第一ギヤアーム131、後述の選別風量検出装置138、変速ロッド132、固定変速カム134、可動変速カム135、可動プーリ136及び固定プーリ137からなる唐箕ファンプーリ102を備える。風量調節装置13は、大まかに言えば、唐箕ファン51の左吸入口91b近傍であって、当該左吸入口91bの上方に配置される。
【0079】
第一アクチュエータ130は、電動式モータで構成される。第一アクチュエータ130の出力軸には、第一小径ギヤ130aが固設される。第一ギヤアーム131は、第一小径ギヤ130aと噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部131aとを備えて構成される。そして、第一ギヤアーム131の歯部が第一小径ギヤ130aと噛合され、第一ギヤアーム131の突出部131aが変速ロッド132の一端部と連結される。
【0080】
第一アクチュエータ130及び第一ギヤアーム131は、唐箕ファン51の近傍であって左側板91aの吸入口91bの上方に配置され、左側板91aの左外側に第一取付部材133を介して取り付けられる。第一取付部材133は側面視で矩形状に形成される。第一取付部材133の上部133a及び下部133bは、それぞれ上下中途部から左側板91a側に向かって前面視略クランク状に屈曲されて、この上下中途部と左側板91aとの間に空間が生じるように、各端部で左側板91aに当接可能とされる。
【0081】
そして、第一アクチュエータ130及び第一ギヤアーム131が第一取付部材133の上下中途部の左外側に固定されたうえで、第一取付部材133の上部133a及び下部133bの各端部が左側板91aに当接した状態にボルト等により固定される。これにより、第一取付部材133ひいては第一アクチュエータ130及び第一ギヤアーム131が左側板91aの左外側に取り付けられることとなる。なお、ここでは第一取付部材133の上下中途部と左側板との間に形成される前記空間によって、第一アクチュエータ130の放熱性が確保される。
【0082】
図8に示すように、カム機構を構成する固定変速カム134は、左右方向を軸心とする円筒形状に構成されて、回転軸51aに軸受を介して外嵌される。固定変速カム134には、鍔部134aが円筒部から前後方向へ突出するように形成される。固定変速カム134は、プレート93の前後上下中央部に形成された孔に挿嵌されて、鍔部134aでプレート93に固定される。そして、回転軸51aが固定変速カム134の円筒部にその軸心方向に沿って挿通されて回転自在に支持される。
【0083】
カム機構を構成する固定変速カム134には、また、三つのカム面134b・134b・134bが円筒部の左側面に回転軸51aと直交する面に対して傾斜するように形成されて、円筒部の周方向に順に配置される。
【0084】
可動変速カム135は、固定変速カム134と略同一形状であり、左右方向を軸心とする円筒形状に構成されて、回転軸51aに軸受を介して軸心方向に摺動可能に外嵌される。可動変速カム135には、鍔部135aが円筒部から前後方向へ突出するように形成される。鍔部135aの後部には、変速ロッド132の他端部がボルト132aにより枢支される。つまり、後側の鍔部135aが、第一ギヤアーム131の突出部131aと、上下方向に延伸する変速ロッド132を介して連係される。
【0085】
可動変速カム135には、また、三つのカム面135b・135b・135bが円筒部の右側面に回転軸51aと直交する面に対して傾斜するように形成されて、円筒部の周方向に順に配置される。可動変速カム135は、カム面135b・135b・135bがそれぞれ固定変速カム134の各カム面134b・134b・134bと当接するように、固定変速カム134に左側から嵌合される。
【0086】
こうして、固定変速カム134のカム面134b・134b・134bと、可動変速カム135のカム面135b・135b・135bとが当接した状態で、変速ロッド132が上下方向に移動することによって、可動変速カム135が回動することとなる。すなわち、変速ロッド132が最下位置に達したとき、カム面134b・134b・134bとカム面135b・135b・135bとが全面で当接して、可動変速カム135が最右位置となる。この状態で、変速ロッド132が上方へ移動するに従って、カム面134b・134b・134bとカム面135b・135b・135bとの当接度合いが小さくなり、可動変速カム135が回転軸51a上を左方へ摺動することとなる。
【0087】
可動プーリ136は、前記唐箕ファンプーリ102の割りプーリの一方であり、円錐台形状に構成されて、回転軸51aに相対回転不能かつ軸心方向に摺動可能に外嵌される。可動プーリ136は、可動変速カム135の左側方に配置されて、軸心部に形成された円筒部136aで当該可動変速カム135にその右側から当接される。可動プーリ136は、可動変速カム135が回転軸51a上を左右方向へ摺動する際、その摺動にともなって当該可動変速カム135と一体的に左右方向へ移動する。
【0088】
固定プーリ137は、前記唐箕ファンプーリ102の割りプーリの他方であり、円錐台形状に構成されて、回転軸51aに相対回転不能に支持される。固定プーリ137は、可動プーリ136と対向するように、この可動プーリ136の左側方に配置される。こうして、固定プーリ137と可動プーリ136との間に、唐箕ファンプーリ102のベルト溝が形成される。ベルト溝幅は、可動プーリ136が固定プーリ137に対して左右方向に摺動することにより、狭くまたは広く変更されることとなる。このベルト溝には、Vベルト等で構成される第一ベルト111が巻回される。
【0089】
このような構成において、第一アクチュエータ130の駆動により第一小径ギヤ130aが回動し、この第一小径ギヤ130aと噛合する第一ギヤアーム131がその支軸を中心に図7における時計回り方向へ回動する場合、第一ギヤアーム131の突出部131aが下方へ移動して、可動変速カム135の鍔部135aが変速ロッド132により下方へ押される。これにより、可動変速カム135が、そのカム面134b・134b・134bと固定変速カム134のカム面135b・135b・135bとの当接度合いが大きくなるように、回転軸51a回りに回動して、固定変速カム134に近接する方向、即ち右方向へ移動する。この可動変速カム135の移動にともなって、第一ベルト111における張力の右方への分力により、可動プーリ136が可動変速カム135に当接しつつ、固定プーリ137から離間する方向、即ち右方向へ回転軸51aに沿って摺動する。その結果、図8(a)に示すように、唐箕ファンプーリ102のベルト溝幅が広がり、第一ベルト111の回転半径が小さくなる。その結果、回転軸51aの回転数が大きくなって、唐箕ファン51の風量が増大することとなる。
【0090】
一方、第一アクチュエータ130の駆動により第一小径ギヤ130aが回動し、この第一小径ギヤ130aと噛合する第一ギヤアーム131がその支軸を中心に図7における反時計回り方向へ回動する場合、第一ギヤアーム131の突出部131aが上方へ移動して、可動変速カム135の鍔部135aが変速ロッド132により上方へ引っ張られる。これにより、可動変速カム135が、そのカム面134b・134b・134bと固定変速カム134のカム面135b・135b・135bとの当接度合いが小さくなるように、回転軸51a回りに回動して、固定変速カム134から離間する方向、即ち左方向へ移動する。この可動変速カム135の移動にともなって、可動プーリ136が可動変速カム135に押されて、固定プーリ137に近接する方向、即ち左方向へ回転軸51aに沿って摺動する。これにより、図8(b)に示すように、唐箕ファンプーリ102のベルト溝幅が狭まり、第一ベルト111の回転半径が大きくなる。その結果、回転軸51aの回転数が小さくなって、唐箕ファン51の風量が減少することとなる。
【0091】
次に、チャフシーブ56の構成について説明する。
【0092】
図9に示すように、チャフシーブ56は、多数のフィン56a・56a・・・と、左右一対の第一枢支片145・145と、左右一対の第二枢支片146・146で構成される。左右の第一枢支片145は、前後方向に延長され、それぞれ揺動選別装置本体50aの左右の側板に外側面に固定される。左右の第二枢支片146は、左右の第一枢支片145と平行に前後方向に延長され、それぞれ左右の第一枢支片145の真下に所定間隔を隔てて配置される。
【0093】
多数のフィン56a・56a・・・は、前後方向に所定間隔ごとに配置され、前低後高状に傾斜した状態で、左右の第一枢支片145・145の間に横架されるとともに、左右の第二枢支片146・146の間に横架される。各フィン56aの左右両側の上端縁部は前記側板の孔を貫通して第一枢支片145に枢支され、左右両側の下端縁部は前記側板の長孔を貫通して第二枢支片146に枢支される。こうして、第二枢支片146が第一枢支片145に沿って前後方向へ移動することによって、各フィン56aが左右両側の上端縁部を支点として揺動され、フィン56aの角度が変更される、即ちチャフシーブ56の開度が変更されることとなる。
【0094】
図6、図7及び図9に示すように、チャフシーブ56に対しては、その開度を調節するための開度調節装置14が設けられる。開度調節装置14には、第二アクチュエータ140、第二ギヤアーム141、後述のチャフ開度検出装置142(本実施形態でのみ開度調節装置14の一部とする)、ワイヤ143、調整レバー147、付勢部材148等が備えられる。開度調節装置14(主要部をなす第二アクチュエータ140)は、大まかに言えば、唐箕ファン51の左吸入口91b近傍であって、当該左吸入口91bの後方に配置される。ここで、開度調節装置14は、チャフシーブ56の開度を予め設定された基準開度に対して増大または減少するように調節する。
【0095】
第二アクチュエータ140は、電動式モータで構成される。第二アクチュエータ140の出力軸には、第二小径ギヤ140aが固設される。第二ギヤアーム141は、第二小径ギヤ140aと噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部141aとを備えて構成される。そして、第二小径ギヤ140aと第二ギヤアーム141の歯部とが噛合され、第二ギヤアーム141の突出部141aとワイヤ143の一端部とが連結される。
【0096】
第二アクチュエータ140及び第二ギヤアーム141は、唐箕ファン51の近傍であって左側板91aの吸入口91bの後方に配置され、左側板91aの左外側に第二取付部材144を介して取り付けられる。第二取付部材144は側面視で一つの角部を切り欠いた略矩形状に形成される。第二取付部材144の上部144a及び下部144bは、それぞれ上下中途部から左側板91a側に向かって前面視略クランク状に屈曲されて、この上下中途部と左側板91aとの間に空間が生じるように、各端部で左側板91aに当接可能とされる。
【0097】
そして、第二アクチュエータ140及び第二ギヤアーム141が、第二取付部材144の上下中途部と左側板91aとの間に形成される前記空間に収容されつつ、第二取付部材144の上下中途部の右内側に固定されたうえで、第二取付部材144の上部144a及び下部144bの各端部が左側板91aに当接した状態にボルト等により固定される。これにより、第二アクチュエータ140及び第二ギヤアーム141が左側板91aの左外側に取り付けられることとなる。
【0098】
図10(a)に示すように、調整レバー147は板状部材で構成される。調整レバー147は、側面視で五角形状に形成され、その長手方向を略上下方向として前低後高状に傾斜した状態で、左側第一枢支片145及び第二枢支片146の左側方に配置される。調整レバー147は、その上端部で左側第一枢支片145の前後中途部に支軸147aを介して回動自在に支持されるとともに、その上下中途部で左側第二枢支片145の前後中途部に回動自在に枢結される。調整レバー147の下端部には、ワイヤ143の他端部が前方から連結される。つまり、調整レバー147の下端部が、第二ギヤアーム141の突出部141aとワイヤ143を介して連係される。
【0099】
また、調整レバー147の下端部には、ばね等からなる付勢部材148の一端部が後方から連結される。そして、調整レバー147が、ワイヤ143の引張方向(前方向)とは逆方向(後方向)に付勢部材148により付勢される。図10(b)に示すように、調整レバー147が付勢部材148の付勢力に従って支軸147aを中心に後方向へ回動するとき、各第二枢支片146・146が各第一枢支片145・145に対して後方へ移動して、各フィン56aが左右両側の上端縁部を中心に回動し、各フィン56aの角度が増大方向へ変化することとなる。
【0100】
このような構成において、第二アクチュエータ140の駆動により第二小径ギヤ140aが回動し、この第二小径ギヤ140aと噛合する第二ギヤアーム141がその支軸を中心に図7における反時計回り方向に回動する場合、第二ギヤアーム141の突出部141aが下方へ移動して、調整レバー147の下端部がワイヤ143により付勢部材148の付勢力に抗して前方へ引っ張られ、調整レバー147が支軸147aを中心に前方へ回動する。この調整レバー147の回動にともなって、各第二枢支片146・146が各第一枢支片145・145に対して前方へ移動して、各フィン56aが左右両側の上端縁部を中心に前方へ回動する。これにより、図10(a)に示すように、各フィン56aの角度が小さくなって、隣り合うフィン56a・56aの間隔が狭まり、チャフシーブ56の開度が減少することとなる。
【0101】
一方、第二アクチュエータ140の駆動により第二小径ギヤ140aが回動し、この第二小径ギヤ140aと噛合する第二ギヤアーム141がその支軸を中心に図7における時計回り方向に回動する場合、第二ギヤアーム141の突出部141aが上方へ移動して、ワイヤ143が緩み、調整レバー147が付勢部材148の付勢力に従って支軸147aを中心に後方向へ回動する。この調整レバー147の回動にともなって、各第二枢支片146・146が各第一枢支片145・145に対して後方へ移動して、各フィン56aが左右両側の上端縁部を中心に後方へ回動する。これにより、図10(b)に示すように、各フィン56aの角度が大きくなって、隣り合うフィン56a・56aの間隔が広がり、チャフシーブ56の開度が増大することとなる。
【0102】
次に、風量調節装置13及び開度調節装置14の制御構成について説明する。
【0103】
コンバイン1においては、制御装置12が機体の任意位置に設けられる。制御装置12は、CPUや、ROM、RAM、インターフェイス、バスなどを備える。図11に示すように、制御装置12は、排藁量検出装置73と、処理物量検出装置47と、選別風量検出装置138と、チャフ開度検出装置142と、第一設定操作具84と、及び第二設定操作具85と接続される。制御装置12は、また、風量調節装置13、詳しくはその第一アクチュエータ130と、開度調節装置14、詳しくはその第二アクチュエータ140と接続される。
【0104】
排藁量検出装置73は、排藁処理部7において排藁搬送装置71により搬送される脱穀後の排藁の量を検出する装置である。
【0105】
ここで、排藁搬送装置71は、図12に示すように、排藁チェン74、挟扼杆75、支持杆76などから構成される。排藁搬送装置71では、挟扼杆75が、排藁チェン74の長手方向に沿って延長され、排藁チェン74の下方でその下部と対向配置される。そして、この挟扼杆75が、支持杆76により機体後部側に排藁チェン74の下部に対して近接離間方向、即ち上下方向へ移動可能に下方から支持されつつ、付勢部材77により当該支持杆76を介して排藁チェン74の下部に対して近接する方向へ移動するように常時付勢される。こうして、フィードチェン41から搬送されてきた脱穀後の排藁が、排藁チェン74の下部と、搬送中の排藁の量に応じて上下方向へ移動する挟扼杆75とに挟持され、排藁チェン74の回転駆動に従って後方へ搬送される。
【0106】
本実施形態においては、排藁量検出装置73は、アーム部73aと、ポテンショメータ等からなるセンサ部73bとを有し、排藁搬送装置71の下方に配置される。排藁量検出装置73では、アーム部73aの一端部がセンサ部73bの回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部73aの他端部が排藁搬送装置71の支持杆76の下端76aに下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、挟扼杆75が支持杆76とともに排藁チェン74と挟扼杆75とにより挟持されつつ搬送される排藁の量(層厚)に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部73aがその支持杆76の移動にあわせて同一方向へ回動されて、その回動量がセンサ部73bにより排藁量として検出される。
【0107】
処理物量検出装置47は、選別部5において揺動選別装置50のチャフシーブ56上の処理物量を検出する装置である。本実施形態においては、図13に示すように、処理物量検出装置47は、検出板47aと、復帰板47bと、ポテンショメータ等からなるセンサ部47cとを有し、チャフシーブ56の上方に配置される。処理物量検出装置47では、検出板47aの一端部が、センサ部47cの回転軸に前後方向へ回転自在に取り付けられ、検出板47aの他端部が、検出板47aが初期位置にあるとき、チャフシーブ56のあるフィン56aから所定距離だけ上方に位置するように配置される。復帰板47bが検出板47aの後側に一体的に取り付けられる。そして、処理物が前方から流れてきて検出板47aに接触する場合には、検出板47aが処理物量の量(流圧)に応じて初期位置から後方へ回動されて、その回動量がセンサ部47cにより処理物量として検出される。一方、処理物が検出板47aに接触しない場合には、検出板47aが復帰板47bの重みにより処理物量として検出される検出値が零となる初期位置に保持される。
【0108】
選別風量検出装置138は、唐箕ファン51により前被覆板51cから選別方向の下手側向けて送られる選別風量を検出する装置である。本実施形態においては、図7に示すように、選別風量検出装置138は、磁気や光を用いた非接触式の回転センサからなり、唐箕ファン51の回転軸51aの近傍に配置される。選別風量検出装置138では、唐箕ファン51が回転駆動される場合、回転軸51aの回転速度が唐箕ファン51による選別風量として検出される。
【0109】
チャフ開度検出装置142は、チャフシーブ56の開度を検出するものである。本実施形態においては、図7に示すように、チャフ開度検出装置142は、アーム部142aと、ポテンショメータ等からなるセンサ部142bとを有し、第二ギヤアーム141の前方に配置される。チャフ開度検出装置142では、アーム部142aの一端部がセンサ部142bの回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部142aの他端部が第二ギヤアーム141の突出部141aから左側方へ突出する突起に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、第二ギヤアーム141の突出部141aが第二アクチュエータ140の駆動量に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部142aがその突出部141aの移動にあわせて同一方向へ回動されて、その回動量がセンサ部142bによりチャフシーブ56の開度として検出される。
【0110】
第一設定操作具84は、唐箕ファン51による選別風量の基準値を人為的に補正するものである。本実施形態においては、図14(a)に示すように、第一設定操作具84は、ダイヤル84aと、センサ部84bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第一設定操作具84では、ダイヤル84aが回動操作される場合、センサ部84bによりダイヤル84aの角度が検出され、唐箕ファン51による選別風量の補正値として制御装置12に送信される。
【0111】
第二設定操作具85は、チャフシーブ56の開度の基準値を人為的に補正するものである。本実施形態においては、図14(b)に示すように、第二設定操作具85は、ダイヤル85aと、センサ部85bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第二設定操作具85では、ダイヤル85aが回動操作される場合、センサ部85bによりダイヤル85aの角度が検出され、チャフシーブ56の開度の補正値として制御装置12に送信される。
【0112】
なお、排藁量検出装置73、処理物量検出装置47、選別風量検出装置138、チャフ開度検出装置142、第一設定操作具84、及び第二設定操作具85の具体的な構成は特に限定するものではなく、前述の構成はその一例である。
【0113】
このような構成において、コンバイン1により刈取作業が行われている場合、制御装置12は、排藁量検出装置73(および処理物量検出装置47の少なくとも一方)の検出値に基づいて、チャフシーブ56の開度が処理物の選別に適切な開度になるとともに、唐箕ファン51による選別風量が処理物の選別に適切な風量となるように、風量調節装置13及び開度調節装置14を制御することとなる。
【0114】
具体的には、刈取作業中に脱穀後の排藁の量が増大して、排藁搬送装置71により搬送中の排藁の層厚が大きくなったとき、排藁量検出装置73がその時点の排藁量を検出して、この検出値を制御装置12に入力する。そして、制御装置12が、入力された検出値に基づいて、チャフシーブ56の開度の開度基準値に対する補正量と、唐箕ファン51による選別風量の風量基準値に対する補正量とを演算し、その演算結果に応じて開度調節装置14の第二アクチュエータ140を駆動させる。
【0115】
その結果、開度調節装置14がフィン56aをその角度が大きくなるように回動させて、チャフシーブ56の開度を開度基準値から適切な開度になるまで増大させることとなる。同時に、風量調節装置13が唐箕ファンプーリ102のベルト溝幅を狭めて、唐箕ファン51による選別風量を風量基準値から適切な選別風量になるまで増大させることとなる。
【0116】
一方、刈取作業中に脱穀後の排藁の量が減少して、排藁搬送装置71により搬送中の排藁の層厚が小さくなったとき、排藁量検出装置73がその時点の排藁量を検出して、この検出値を制御装置12に入力する。そして、制御装置12が、入力された検出値に基づいて、チャフシーブ56の開度の開度基準値に対する補正量と、唐箕ファン51による選別風量の風量基準値に対する補正量とを演算し、その演算結果に応じて風量調節装置13の第一アクチュエータ130と開度調節装置14の第二アクチュエータ140とを駆動させる。
【0117】
その結果、開度調節装置14がフィン56aをその角度が小さくなるように回動させて、チャフシーブ56の開度を開度基準値から適切な開度になるまで減少させることとなる。同時に、風量調節装置13が唐箕ファンプーリ102のベルト溝幅を狭めて、唐箕ファン51による選別風量を風量基準値から適切な選別風量になるまで減少させることとなる。
【0118】
次に、刈取作業中の選別部5の左側方における空気の流れについて説明する。
【0119】
選別部5の左側方においては、唐箕ファン51が前述のように風量調節装置13が制御装置12により制御されつつ回転駆動するとき、空気が選別部5の外部から下部機枠91における左右の側板91a・91aにそれぞれ形成された唐箕ファン51の吸入口91bに向かって流れて、この各吸入口91bから、左右の側板91a・91aとその間に横設された前被覆板51cからなるケースに吸入されることとなる。
【0120】
この際、風量調節装置13が唐箕ファン51の左吸入口91bの近傍であって当該左吸入口91bの上方に配置されていることから、一部の空気は、図7における黒塗り矢印のように流れて、風量調節装置13の第一アクチュエータ130、第一ギヤアーム131、変速ロッド132、固定変速カム134、可動変速カム135、可動プーリ136、及び固定プーリ137の周囲を通過したあと、唐箕ファン51の左吸入口91bから前記ケース内に吸入されることとなる。
【0121】
また、開度調節装置14が唐箕ファン51の左吸入口91bの近傍であって当該左吸入口91bの後方に配置されていることから、一部の空気は、図7における白塗り矢印のように第二取付部材144と左側板91aとの間に形成される前記空間を後方から前方に向かって集中して流れ、開度調節装置14の第二アクチュエータ140及び第二ギヤアーム141や、チャフ開度検出装置142の周囲を通過したあと、唐箕ファン51の左吸入口91bから前記ケース内に吸入されることとなる。
【0122】
次に、選別部5の左外側の被覆構成について説明する。
【0123】
図1、図15及び図16に示すように、選別部5の左外側に配置される選別駆動用伝達機構100や風量調節装置13や開度調節装置14は、下部カバー17と、サイドカバー15とにより左側から被覆される。下部カバー17は、前後に二分割されており、前下部カバー17aを前部に備え、後下部カバー17bを後部に備える。前下部カバー17a及び後下部カバー17bは、下部機枠91などに着脱可能に取り付けられる。
【0124】
前下部カバー17aは、選別駆動用伝達機構100の前下部の左側方に配置される。前下部カバー17aは、側面視で前後方向を長手方向とする矩形状板材の上辺のうち、前側を前高後低状態に傾斜させ、後側を前低後高状態に傾斜させて、更に前記矩形状板材の前下側の角部を切り欠いた形状に構成される。前下部カバー17aは、その板面を左側板91aの板面に対向させて、選別部5の前下部の左側方および左前側方に配置される。
【0125】
後下部カバー17bは、側面視で前後方向を長手方向とする矩形状板材の上辺を前低後高状態に傾斜させて、前下部カバー17aよりも大きな上下幅を有する側面視略台形状に構成される。後下部カバー17bは、その板面を左側板91aの板面に対向させて、選別部5の前下部の左側方に配置される。そして、後下部カバー17bは、前下部カバー17aのすぐ後ろに位置した状態で、上縁部が後下部カバー17bの上縁部に滑らかに連続するように、この前下部カバー17aと隙間なく当接可能とされる。
【0126】
図17に示すように、サイドカバー15は、側面視で前後方向を長手方向とする矩形状板材の下辺を前低後高状態に傾斜させて、側面視略台形状の板材で構成される。サイドカバー15は、その板面を左側板91aの板面に対向させて、選別部5の上部の左側方に配置される。サイドカバー15の下部15bは、当該サイドカバー15の上部15aに対して前記下辺と平行に設定された折曲線に沿って左外側へ折り曲げられ、この折曲線から左下方へ向かって傾斜するように形成される。
【0127】
サイドカバー15の下縁部、即ち下部15bの下端は、右内側へ若干折り曲げられつつ、前下部カバー17a及び後下部カバー17bの上縁部に沿った形状に形成される。こうして、サイドカバー15は、前下部カバー17a及び後下部カバー17bのすぐ上に配置された状態で、これらの前下部カバー17a及び後下部カバー17bと隙間なく当接可能とされる。
【0128】
サイドカバー15は、フィードチェン41の支持フレーム16に取り付けられる。詳しくは、サイドカバー15は、前述の支持フレーム16の横フレームに連結された二つの支持杆16g・16gに左側から当接して、ボルト等の固定具により固定される。
【0129】
なお、脱穀部4および選別部5の左側付近においては、フィードチェンカバー18がフィードチェン41の左外側方に位置するように支持フレーム16に取り付けられており、サイドカバー15はフィードチェンカバー18により左側から覆われる。
【0130】
このような構成により、選別部5の左外側に配置された部材のうち、下側に配置された選別駆動用伝達機構100の第一入力プーリ101Aの一部や、唐箕ファンプーリ102の一部や、プレファンプーリ103や、一番搬送プーリ104や、セカンドファンプーリ105や、二番搬送プーリ106や、揺動プーリ108や、ベルトなどと、風量調節装置13の下部と、開度調節装置14の下部とが、下部カバー17、即ち前下部カバー17a及び後下部カバー17bにより左側から覆われることとなる。また、選別部5の左外側に配置された部材のうち、上側に配置された選別駆動用伝達機構100の唐箕ファンプーリ102の一部や、ベルトなどと、風量調節装置13の上部と、開度調節装置14の上部とが、サイドカバー15により覆われることとなる。
【0131】
そして、前下部カバー17a及び後下部カバー17bと、サイドカバー15とが前述のように部材を覆う場合には、互いに隙間なく当接されていることから、例えば藁屑等がフィードチェン41から落下しても、サイドカバー15の下部により左側方へ案内され、前下部カバー17a及び後下部カバー17b内への侵入を防止されることとなる。つまり、このような藁屑等が選別駆動用伝達機構100、風量調節装置13、開度調節装置14に堆積することがなくなる。
【0132】
また、前下部カバー17a及び後下部カバー17bの開閉には、ボルト等の固定具の着脱が必要である一方、サイドカバー15の開閉には、サイドカバー15がフィードチェン41の支持フレーム16に一体的に取り付けられていることから、ボルト等の固定具の着脱が不要となる。つまり、支持フレーム16を回動させて、前記保持機構により閉位置に保持する、またはその保持を解除して開位置に移動させることによって、サイドカバー15の開閉をフィードチェン41の開閉と同時に行うことが可能となる。
【0133】
そして、サイドカバー15が開放された際には、選別駆動用伝達機構100の少なくとも一部や、風量調節装置13や、開度調節装置14が選別部5の左側方に向かって露出するとともに、前下部カバー17a及び後下部カバー17bと左側板91aとの間から上方に向かって露出することとなる。つまり、選別駆動用伝達機構100の少なくとも一部や、風量調節装置13や、開度調節装置14が機体の外側に向かって露出することとなる。
【0134】
なお、サイドカバー15の大きさ、即ち前後幅および上下幅は前述に限定するものでない。例えば、サイドカバー15の前端は本実施形態では唐箕ファンプーリ102の前方付近に位置させているが、第一入力プーリ101Aの前方付近に位置させることも可能である。この場合、カウンタケース24側方もサイドカバー15により覆うことができ、カウンタケース24の側方を覆うカバーが別途不要となる。そして、支持フレーム16の後部に設けられた回動支点フレーム16fを中心に側方へ回動して、フィードチェン41を開放するだけで、カウンタケース24のメンテナンスが可能となる。
【0135】
また、サイドカバー15を前下部カバー17aと後下部カバー17bとを兼ねるように構成することも可能である。そして、支持フレーム16の後部に設けられた回動支点フレーム16fを中心に側方へ回動して、フィードチェン41を開放するだけで、選別駆動用伝達機構100全体のメンテナンス、例えば、ベルト111・112・113・114のテンションを調節機構120・125等により再調節することが可能となる。
【0136】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、刈取部3の後方に脱穀部4を配置し、前記脱穀部4の下方に選別部5を配置して、前記脱穀部4で前記刈取部3により刈り取られた穀稈をフィードチェン41により搬送しながら扱胴43により脱穀し、前記選別部5で前記脱穀部4により脱穀処理された処理物を選別するコンバイン1において、前記選別部5の側方かつ前記フィードチェン41の下方に配置されて、前記選別部5に動力を伝達する選別駆動用伝達機構100と、前記フィードチェン41を支持する支持フレーム16に取り付けられて、前記選別駆動用伝達機構100の少なくとも一部を外側から覆うサイドカバー15と、を備えるものである。
【0137】
これにより、図2に示すように、フィードチェン41を支持フレーム16とともにその後部に設けられた回動支点フレーム16f回りに側方へ回動して開放するだけで、サイドカバー15も同時に開放して、選別部5の選別駆動用伝達機構100の少なくとも一部を外側に向けて露出させることが可能となる。したがって、選別駆動用伝達機構100のメンテナンスを行う際に、例えば従来のサイドカバー15を一旦機体側から取り外して地面等に置く作業を不要として、サイドカバー15を開ける手間を従来に比べて省き、メンテナンス性を向上させることができる。
【0138】
また、前記選別部5の唐箕ファン51の風量を変更する風量調節装置13と、前記選別部5の揺動選別装置に備えられるチャフシーブ56の開度を変更する開度調節装置14とを、前記選別部5の側方かつ前記フィードチェン41の下方に配置して、前記サイドカバー15により覆うものである。
【0139】
これにより、サイドカバー15を開放して、メンテナンス頻度が比較的高いアクチュエータである風量調節装置13(特に第一アクチュエータ130、第一ギヤアーム131、変速ロッド132)及び開度調節装置14(特にワイヤ143)のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0140】
また、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀部4と、この脱穀部4で脱穀処理された処理物を揺動選別装置50と唐箕ファン51による選別風とにより選別する選別部5とを備えたコンバイン1において、前記唐箕ファン51による選別風の風量を変更する風量調節装置13と、前記揺動選別装置50のチャフシーブ56の開度を変更する開度調節装置14と、前記唐箕ファン51を収容し、当該唐箕ファン51に吸入される空気が流通する吸入口91bを有するケースとを備え、前記風量調節装置13および前記開度調節装置14を、前記唐箕ファン51の吸入口91b近傍に配設したものである。
【0141】
これにより、唐箕ファン51を駆動させると、吸入口91b近傍に配置した風量調節装置13(第一アクチュエータ130、第一ギヤアーム131、変速ロッド132、固定変速カム134、可動変速カム135、可動プーリ136、固定プーリ137、選別風量検出装置138等)の周辺の空気を吸い込んだ際に、風量調節装置13に堆積した塵埃等も同時に吸い込み、風量調節装置13に塵埃等が溜まり難くなる。したがって、風量調節装置13のメンテナンスの手間を低減することができる。また、第一アクチュエータ130周辺の空気の流れにより、第一アクチュエータ130に対するの冷却能力を上げることが可能となり、第一アクチュエータ130の小型化や低コスト化に貢献できる。
【0142】
また、唐箕ファン51を駆動させると、吸入口91b近傍に配置した開度調節装置14(第二アクチュエータ140、第二ギヤアーム141及びチャフ開度検出装置142等)の周辺の空気を吸い込んだ際に、第二アクチュエータ140、第二ギヤアーム141及びチャフ開度検出装置142に堆積した塵埃等も同時に吸い込み、第二アクチュエータ140、第二ギヤアーム141及びチャフ開度検出装置142に塵埃等が溜まり難くなる。そのうえ、開度調節装置14のうち、第二アクチュエータ140、第二ギヤアーム141及びチャフ開度検出装置142は、第二取付部材144により更に被覆されるため、これらには埃や塵が特に溜まり難くなる。したがって、開度調節装置14のメンテナンスの手間を低減することができる。また、第二アクチュエータ140周辺の空気の流れにより、第二アクチュエータ140に対する冷却能力を上げることが可能となり、第二アクチュエータ140の小型化や低コスト化に貢献できる。
【0143】
また、刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀部4と、この脱穀部4で脱穀処理された処理物を揺動選別装置50と唐箕ファン51による選別風とにより選別する選別部5とを備えたコンバイン1において、前記唐箕ファン51による選別風の風量を変更する風量調節装置13と、前記揺動選別装置50のチャフシーブ56の開度を変更する開度調節装置14と、前記唐箕ファン51を収容し、当該唐箕ファン51に吸入される空気が流通する吸入口91bを有するケースとを備え、前記吸入口91bを、前記ケースの側板91aに形成し、前記風量調節装置13および前記開度調節装置14のうち、一方の調節装置を前記ケースの側板91a外側で、前記吸入口91bの上方に配設し、前記風量調節装置13および前記開度調節装置14のうち、他方の調節装置を前記ケースの側板91a外側で、前記吸入口91bの後方に配設したものである
【0144】
これにより、塵埃等が唐箕ファン51の駆動により生じる風の流れの影響を受け易くなって、風量調節装置13及び開度調節装置14に溜まり難くなる。したがって、風量調節装置13及び開度調節装置14のメンテナンスの手間を低減することができる。また、風量調節装置13と開度調節装置14とが同一側に配置されるため、これらのメンテナンス作業を選別部5の同一側から行うことが可能となる。したがって、調節装置13・14のメンテナンス作業の簡便化を図ることができる。また、風量調節装置13と、開度調節装置14とが近づけて配置されるため、メンテナンス作業の簡便化を図ることができる。また、風量調節装置13及び開度調節装置14とが、吸入口91bに近づけて配置されるため、塵埃等がより溜まり難くなる。
【符号の説明】
【0145】
1 コンバイン
4 脱穀部
5 選別部
12 制御装置
13 風量調節装置
14 開度調節装置
15 サイドカバー
16 支持フレーム
17 下部カバー
17a 前下部カバー
17b 後下部カバー
18 フィードチェンカバー
41 フィードチェン
50 揺動選別装置
51 唐箕ファン
56 チャフシーブ
91 下部機枠
91a 左側板(側板)
91b 左吸入口(吸入口)
100 選別駆動用伝達機構
130 第一アクチュエータ
140 第二アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部の後方に脱穀部を配置し、前記脱穀部の下方に選別部を配置して、前記脱穀部で前記刈取部により刈り取られた穀稈をフィードチェンにより搬送しながら扱胴により脱穀し、前記選別部で前記脱穀部により脱穀処理された処理物を選別するコンバインにおいて、
前記選別部の側方かつ前記フィードチェンの下方に配置されて、前記選別部に動力を伝達する選別駆動用伝達機構と、
前記フィードチェンを支持する支持フレームに取り付けられて、前記選別駆動用伝達機構の少なくとも一部を外側から覆うサイドカバーと、を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記選別部の唐箕ファンの風量を変更する風量調節装置と、前記選別部の揺動選別装置に備えられるチャフシーブの開度を変更する開度調節装置とを、前記選別部の側方かつ前記フィードチェンの下方に配置して、前記サイドカバーにより覆うことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−83226(P2011−83226A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238422(P2009−238422)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】