説明

コンバイン

【課題】放出ピッチに応じて車速を制御することで、効率良く作業を行うこと。
【課題を解決するための手段】車速を制御する車速制御手段を備えた本機の前方に、圃場に植立した穀稈を刈り取る刈取部を取り付け、刈取部により刈り取った穀稈を本機に設けた脱穀部により脱穀するとともに、脱穀後の排藁を本機に設けた排藁結束部で結束して、結束した排藁の束を機外に放出するようにしたコンバインにおいて、排藁結束部による結束した排藁の束の放出ピッチを放出ピッチ検出手段により検出して、その検出結果に基づいて車速制御手段により車速を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
結束した排藁の束の放出ピッチに応じて車速を制御するようにしたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの一形態として特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、車速を制御する車速制御手段を備えた本機の前方に、圃場に植立した穀稈を刈り取る刈取部を取り付け、刈取部により刈り取った穀稈を本機に設けた脱穀部により脱穀するとともに、脱穀後の排藁を本機に設けた排藁結束部で結束して、結束した排藁の束を機外に放出するようにしたコンバインが開示されている。
【0003】
そして、上記コンバインでは、排藁結束部が結束処理状態にあるか、非結束処理状態にあるかを判別して、結束処理状態にある場合には車速を非結束処理状態にあるよりも低速となすことで、排藁が滞留して搬送詰まりが生じるのを回避し、また、結束ミスが発生するのを回避するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−57409
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、例えば、作付け状況が豊作の場合には、結束処理を行う場合であってもできるだけ車速を高速状態にして穀稈の刈り取りから排藁の結束までの作業を効率良く行うことを希望する作業者がいる。つまり、結束処理状態にある場合であっても非結束処理状態と同様の車速で作業を行うことを希望する作業者がいる。
【0006】
また、排藁結束部による結束した排藁の束の放出ピッチは、車速を増速させて増大させた方が返って作業効率の良い場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、結束した排藁の束の放出ピッチを良好に保持したまま、その放出ピッチに応じて車速を制御することで、効率良く作業を行うことができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明に係るコンバインは、車速を制御する車速制御手段を備えた本機の前方に、圃場に植立した穀稈を刈り取る刈取部を取り付け、刈取部により刈り取った穀稈を本機に設けた脱穀部により脱穀するとともに、脱穀後の排藁を本機に設けた排藁結束部で結束して、結束した排藁の束を機外に放出するようにしたコンバインにおいて、排藁結束部による結束した排藁の束の放出ピッチを放出ピッチ検出手段により検出して、その検出結果に基づいて車速制御手段により車速を制御するようにしたことを特徴とする。
【0009】
かかるコンバインでは、結束した排藁の束の放出ピッチに応じて車速を制御することで、放出ピッチを所望の良好なピッチに保持することができて、効率良く穀稈の刈り取りから排藁の結束・放出までの作業を行うことができる。
【0010】
請求項2記載の本発明に係るコンバインは、請求項1記載の本発明に係るコンバインであって、前記放出ピッチ検出手段により検出した前記放出ピッチが放出設定時間よりも短い場合には、車速制御手段により車速を減速させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
かかるコンバインでは、放出ピッチが放出設定時間よりも短い場合に、車速を減速させることで、結束する束の量が過剰に多くなって結束ミスを起こすのを回避することができる。
【0012】
請求項3記載の本発明に係るコンバインは、請求項1記載の本発明に係るコンバインであって、前記放出ピッチ検出手段により検出した前記放出ピッチが放出設定時間よりも長い場合には、車速制御手段により車速を増速させるようにしたことを特徴とする。
【0013】
かかるコンバインは、放出ピッチが放出設定時間よりも長い場合に、車速を増速させることで、放出ピッチを放出設定時間に整合させることができて、作業効率を良好に保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明では、結束した排藁の束の放出ピッチに応じて車速を制御するようにしているため、放出ピッチを所望の良好なピッチに保持することができて、効率良く作業を行うことができる。そして、結束する排藁の束の量を一定にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例にかかるコンバインの側面図。
【図2】排藁結束部の側面説明図。
【図3】排藁結束部の背面説明図。
【図4】排藁結束部の平面説明図。
【図5】放出ピッチ検出センサの取付状態説明図。
【図6】結束車速制御のイメージ図。
【図7】放出ピッチ検出センサの放出タイミング説明図。
【図8】制御ブロック図。
【図9】ミッション部の説明図。
【図10】ミッション部の油圧回路図。
【図11】結束車速制御のフローチャート(1)。
【図12】結束車速制御のフローチャート(2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
本発明に係るコンバインは、直進用の静油圧式無段変速機(以下に、「直進用HST」という。)により駆動制御される直進変速機構と、旋回用の静油圧式無段変速機(以下に、「旋回用HST」という。)により駆動制御される旋回変速機構を備えている。そして、直進変速機構から出力される動力と旋回変速機構から出力される動力とを合成して合成動力となしている。この合成動力は左右一対のクローラ式の走行部にそれぞれ出力することで、直進変速機構と旋回変速機構の動力が常時接続された状態(常時動力接続状態)にて、走行部による直進走行や旋回走行が滑らかな速度推移で行えるようにしている。
【0018】
そして、直進用HSTにはステアバイワイヤ方式の制御機構を介して変速手段を接続している。また、旋回用HSTにはステアバイワイヤ方式の制御機構を介して操向手段を接続している。したがって、変速手段と操向手段を操作することで、直進及び旋回用HSTを電気的に制御して直進及び旋回調整を繊細かつ円滑に行うことができる。
【0019】
しかも、本発明に係るコンバインは、脱穀後の排藁を結束して機外に放出する排藁結束部と、脱穀後の排藁を細断処理して機外に放出する細断処理部を具備する排藁処理装置を備えており、細断処理部による細断処理形態と排藁結束部による結束処理形態のいずれか一方を適宜選択することができる。
【0020】
そして、排藁結束部による結束処理形態を選択した場合には、結束車速制御が自動的になされるようにしている。すなわち、結束車速制御は、結束した排藁の束の放出ピッチを放出ピッチ検出手段により検出して、その検出結果に基づいて車速制御手段により車速を制御するものであり、放出ピッチ検出手段により検出した放出ピッチが放出設定時間よりも短い場合には、車速制御手段により車速を減速させるとともに、放出ピッチ検出手段により検出した放出ピッチが放出設定時間よりも長い場合には、車速制御手段により車速を増速させるようにしている。
【0021】
したがって、本実施形態に係るコンバインでは、排藁結束部による処理形態を選択した場合に、結束した排藁の束の放出ピッチに応じて車速を制御する結束車速制御が自動的になされる。具体的には、放出ピッチが放出設定時間よりも短い場合には、車速を一定の割合で段階的に減速させることで、結束する束の量が過剰に多くなって結束ミスを起こすのを回避するとともに、放出ピッチが放出設定時間よりも長い場合には、車速を一定の割合でかつ一定の時間をかけて段階的に増速させることで、放出ピッチを放出設定時間に整合させることができて、作業効率を良好に保つことができる。その結果、結束車速制御がなされる本実施形態のコンバインでは、放出ピッチを所望の良好なピッチに保持することができて、効率良く穀稈の刈り取りから排藁の結束・放出までの作業を行うことができる。
【実施例】
【0022】
[全体構成]
本発明の一実施例に係るコンバインAの全体構成について、図1を参照しながら説明する。すなわち、コンバインAは、左右一対のクローラ式の走行部1を備え、この走行部1上に機体本体aを設けている。
【0023】
機体本体aの左側前端部には、刈取フレーム3を介して刈取部4を昇降自在に取り付けている。刈取部4には搬送部5を設けている。機体本体a上の左側部には、脱穀部7と選別部8を上下段に配設すると共に、機体本体aの後部には、排藁処理装置9を配設している。排藁処理装置9には、脱穀後の排藁を細断処理して機外に放出する細断処理部16と、脱穀後の排藁を結束して機外に放出する排藁結束部17を設けており、排藁結束部17は細断処理部16に着脱自在に連動連結している。18は脱穀部7の側方に配設した穀稈移送部、19は排藁搬送部である。
【0024】
機体本体a上の右側前部には、運転部10を配設すると共に、機体本体aの右側中途部には、穀粒貯留部11を配設している。穀粒貯留部11は、穀粒般出用のオーガ12を有する。また、コンバインAは、機体本体aの前部に、駆動源としてのエンジン14を含む原動機部13を備える。原動機部13は、エンジン14の動力を各部の装置に供給する。
【0025】
また、原動機部13の前方には、ミッション部15を設けている。ミッション部15は、原動機部13が有するエンジン14の動力を走行部1や刈取部4等に伝達する前に調整(変速)する。
【0026】
上記のような構成を備えるコンバインAは、刈取部4により穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を搬送部5により後上方の穀稈移送部18まで搬送して、穀稈移送部18に穀稈を受け渡す。穀稈移送部18に受け渡された穀稈は、穀稈移送部18により株元を挟扼されると共に穂先を脱穀部7内に挿入させた状態で後方へ移送される。穀稈移送部18の終端部から排藁搬送部19に受け渡された排藁は、排藁搬送部19により株元を挟扼されて排藁処理装置9へ搬送される。
【0027】
この際、穀稈移送部18により移送される穀稈の穂先は、脱穀部7によって脱穀される。脱穀により得られた穀粒は、選別部8により選別されて、精粒のみが穀粒貯留部11に搬送されて貯留され、必要に応じてオーガ12を介して搬出される。
【0028】
また、脱穀された穀稈は、排藁として排藁搬送部19により排藁処理装置9に搬送される。ここで、細断処理部16による細断処理形態が選択されている場合には、排藁は細断処理部16により細断処理されて機外に放出される。排藁結束部17による結束処理形態が選択されている場合には、排藁は排藁結束部17により結束されて機外に放出される。
【0029】
運転部10には、操向手段としてのステアリングホイール22を配設しており、ステアリングホイール22を上下方向の軸線廻りに左(右)廻りに回動操作することで機体を操向操作することができるようにしている。ステアリングホイール22の後方位置には、運転席23を配置し、運転席23の側方には、変速手段としての主変速レバー26及び副変速レバー(図示せず)を含む各種操作具を配設している。主変速レバー26は、直立した中立姿勢から前(後)傾姿勢に姿勢変更操作することで、前(後)進側に機体を変速操作することができる。
【0030】
排藁処理装置9は、図1〜図4に示すように、機体本体aの後部に細断処理部16を配設し、細断処理部16の後方に排藁結束部17を着脱自在に連設している。
【0031】
細断処理部16は、図4に示すように、細断処理ケース160内に左右方向に伸延する前後一対のカッター支軸161,162を横架し、両カッター支軸161,162に多数の円板状の細断カッター163,164を軸線方向に間隔を開けて取り付けるとともに、両細断カッター163,164同士を一部重合させて配置している。一方のカッター支軸162の左側端部には入力プーリ165と出力プーリ166を同軸的に取り付けている。167は入力プーリ165と選別部8の作動部との間に巻回した第1伝動ベルト、168は出力プーリ166と排藁結束部17に設けた結束入力プーリ170との間に巻回した第2伝動ベルトである。つまり、エンジン14からの動力は第1伝動ベルト167及び第2伝動ベルト168を介して後述する細断処理部16の駆動力伝動機構186に伝達される。
【0032】
そして、細断処理ケース160の天井部は、後端縁部を枢支して開閉自在となした開閉蓋体169により形成している。開閉蓋体169には平板状の案内流路形成体171を取り付けている。
【0033】
開閉蓋体169は開蓋状態となすことで、細断処理ケース160の天井部を開口させて、排藁搬送部19を介して搬送される排藁を開口天井部より細断処理ケース160内に導入するとともに、導入された排藁を細断カッター163,164により細断する。
【0034】
また、開閉蓋体169を閉蓋状態となすことで、開閉蓋体169に取り付けた案内流路形成体171上に排藁結束部17への案内流路172が形成される。そして、排藁搬送部19を介して搬送される排藁が案内流路172を通して排藁結束部17の近傍まで搬送されるとともに、排藁結束部17に掻き込まれて集束され、紐で結束された後に機外に放出される。
【0035】
開閉蓋体169の閉蓋位置近傍には閉蓋検出スイッチ143を配設して、開閉蓋体169を閉蓋すると閉蓋検出スイッチ143がON作動するとともに、開閉蓋体169を開蓋すると閉蓋検出スイッチ143がOFF作動して、それらの検出情報が後述する第三I/Oドライバ30を介して第二コントローラ35に送信される。そして、第二コントローラ35から図示しない報知手段に制御情報が送信されて、報知手段が開閉蓋体169の開蓋もしくは閉蓋の状態を報知するようにしている。また、閉蓋検出スイッチ143がOFF作動している場合に、結束スイッチ140をONさせても排藁結束部17は作動しない。
【0036】
排藁結束部17は、図2〜図4に示すように、排藁搬送部19を介して搬送された排藁を掻き込む掻込作用機構180と、掻込作用機構180により掻き込まれた排藁を集束空間181内に集束する集束機構182と、集束機構182で集束された排藁の束に結束紐(図示せず)を供給する結束紐供給機構183と、結束紐供給機構183から供給された結束紐で排藁の束を結束する結束機構184と、結束機構184で結束された結束排藁束を機外へ放出する放出機構185と、これらの機構180〜185に駆動力を伝動する駆動力伝動機構186等を具備している。
【0037】
掻込作用機構180には、排藁を集束空間181側へ掻き込む掻き込み体190等を設け、掻き込み体190の直前方位置には排藁Lセンサ142を配置して、排藁Lセンサ142が掻込作用機構180により掻き込まれている排藁を検出して、その検出情報を後述する第三コントローラ36に送信する。
【0038】
集束機構182には、掻き込み体190により掻き込まれた排藁を集束空間181内に掻き込んで集束するパッカ191と、パッカ191により集束された排藁を受けるクラッチドア192等を設けている。クラッチドア192は集束空間181の出口(後部)を閉塞する状態に配置され、クラッチドア192の回動支軸がクラッチ(これらは図示せず)と連動連結されている。そして、掻き込まれた排藁が集束空間181内に集束されると、クラッチドア192は集束排藁の集束圧を受けて後方へと回動し、集束空間181の出口を開放する。
【0039】
結束機構184には、集束排藁を結束するための部材であるニードル193等を設けている。ニードル193は、クラッチドア192の後方への回動に伴って、図示しないクラッチが起動することで上方へ回動されて、結束紐供給機構183から供給された結束紐を集束排藁に巻き掛ける。そして、結束紐は結節された後に残余部が切断されて、切断端の保持等がなされる。
【0040】
放出機構185には、結束紐で結束された排藁を集束空間181の出口から放出する(掻き出す)放出アーム194等を設けている。放出アーム194は、駆動力伝動機構186に連動連結した放出アーム作動軸195を設け、放出アーム作動軸195に放出アーム194を連動連結している。そして、放出アーム作動軸195がその軸線廻りに回動作動すると、それに連動して放出アーム194が結束排藁の束を放出作動する。この際、クラッチドア192は結束排藁の束が放出され易いように、下方に後退して集束空間181の出口を開放する。その結果、結束排藁の束は集束空間181の出口から後方へ堅実に放出される。その後、ニードル193が後退して集束空間181の下方の位置へ復元された時点でクラッチが切断されて、結束機構184と放出機構185の駆動が停止される。そして、クラッチドア192が集束空間181の出口を塞ぐ位置に復元される。以上が1回の結束作動であり、引き続き後続の排藁が同様に結束される。
【0041】
駆動力伝動機構186には、左右方向に伸延して左側端部に結束入力プーリ170を取り付けた入力軸200と、入力軸200の右側端部に連動連結した結束ミッション部201と、結束ミッション部201から右側方へ伸延させた伝動軸202と、伝動軸202の右側端部に連動連結したチェンケース203と、チェンケース203の上端部から左側方へ伸延させた放出アーム作動軸195等を設けている。
【0042】
チェンケース203の右側壁には、左右方向に扁平な箱形のセンサ収容ケース204を連設して、センサ収容ケース204内に伝動軸202の右側端部を突出させている。そして、図5に示すように、伝動軸202の右側端部の端面に回転アーム205を連設して、伝動軸202の軸芯廻りに回転アーム205が一体的に回転するようにしている。センサ収容ケース204内には、センサステー206を介して放出ピッチ検出手段としての放出ピッチ検出センサ144を配設している。そして、放出ピッチ検出センサ144は、回転アーム205の先端部に設けた被検出体207を検出可能なセンサとなしている。なお、210はセンサ収容ケース204に取り付けた結束紐収容ケース、211は上記した各機構180〜186を支持する結束部支持フレームである。
【0043】
より具体的に説明すると、放出ピッチ検出センサ144は、被検出体207を介して伝動軸202の1回転毎の間欠的な回転動作を検出する。つまり、放出ピッチ検出センサ144は、放出アーム作動軸195の回転数(間欠的な回転動作)と同一となるように連動連結している伝動軸202の回転数(間欠的な回転動作)を検出する。放出ピッチ検出センサ144による検出情報は後述する第三コントローラ36に送信する。第三コントローラ36は、伝動軸202の1回転当たりの時間を算出(検出時間を検出回転数で除した値を算出)することで、放出アーム作動軸195が間欠的に回転する時間、つまり、放出アーム作動軸195が1回転してから回転停止し、次に回転し始めるまでの時間を算出する。その時間が、放出アーム194が放出作動して放出作動前の姿勢に復帰までの放出作動時間(放出ピッチ)となる。そして、予め設定した放出アーム194による結束排藁束の放出設定時間(設定放出ピッチ)を基準に、それよりも長い場合と短い場合の連続検出回数をそれぞれカウントして、そのカウント結果に基づいて制御情報を第一コントローラ34とエンジンコントローラ37に送信して結束車速制御を行う。
【0044】
集束機構182において所定の排藁量が集束されると、前記したように集束機構182に設けたクラッチドア192が排藁の集束圧力を受けて後方へ回動してクラッチ(図示せず)を起動(接続作動)させることで、結束機構184が作動して集束排藁の束を結束するが、本実施例では、例えば、0.2秒間に1回の割合で排藁が集束されて、0.6秒間に3回集束された排藁量を放出所定量(所定の結束排藁束)としている。つまり、放出所定量(所定の結束排藁束)の集束圧にてクラッチドア192が後方へ回動されてクラッチを起動させることで、放出アーム194が放出作動する。
【0045】
そして、放出アーム194が放出作動する放出設定時間(設定放出ピッチ)として、0.7秒間を第三コントローラ36の記憶手段に記憶させておき、記憶させている放出設定時間と放出ピッチ検出センサ144の検出情報から算出される放出アーム194の放出作動時間(放出ピッチ)とを比較して、結束車速制御を行う。
【0046】
すなわち、結束車速制御がONされると、図6に示すように、実際の放出作動時間(放出ピッチ)が放出設定時間(例えば、0.7秒間)よりも短い場合が連続して一定回数(例えば、10回)以上検出された際には、現状の車速を所定割合(例えば、7%)減速させる。この際、第三コントローラ36が現状の車速の検出情報に基づいて7%減速値を演算し、その演算値を制御情報として第一コントローラ34とエンジンコントローラ37に送信して車速を減速制御する。かかる車速の制御は所定の最低車速(例えば、0.7m/s)以下までは、条件が成立すれば減速制御を続ける。
【0047】
ここで、放出ピッチ回数のカウントは、図7に示すように、OFFからONに変化するエッジを検出してカウントする。この際、放出ピッチが放出設定時間(例えば、0.7秒間)よりも長い場合が検出された際には、カウント回数をクリアーする。電源投入時の減速比率は1000(デフォルト値)とする。減速比率は後述するCAN131,133を介して第一コントローラ34に送信する。
【0048】
図6に示すように、減速後、放出設定時間以上を連続して一定回数(例えば、10回)以上検出した場合は、現状の車速を一定時間(例えば、1秒間)かけて所定割合(例えば、7%)だけ増速させる。この際、第三コントローラ36が現状の車速の検出情報に基づいて7%増速値を演算し、その演算値を制御情報として第一コントローラ34とエンジンコントローラ37に送信して車速を1秒間かけて増速制御する。増速時の減速比率の上限は1000(デフォルト値)とし、条件が成立すれば増速制御を続ける。放出ピッチが放出設定時間(例えば、0.7秒間)よりも短い場合が検出された場合には、カウント回数をクリアーする。
【0049】
結束車速制御がOFFされると、放出ピッチ回数をクリアーし、車速を一定時間(例えば、1秒間)かけて一定割合(例えば、7%)ずつ増速させる。増速時の減速比率の上限は1000(デフォルト値)とする。減速比率が1000未満の時に結束車速制御がONになった場合は、その減速比率から車速制御を開始する。
【0050】
ここで、結束車速制御がONされる条件は、駆動力伝動機構186の結束・集束駆動部が第三コントローラ36から駆動出力(自動開始)される条件でもあり、結束スイッチ140がON、かつ、排藁スイッチ141がON、かつ、排藁Lセンサ142がON、かつ、閉蓋検出スイッチ143がON、かつ、エンジン回転数センサ175により検出されるエンジン回転数が一定(例えば、250min−1)以上の場合である。また、結束車速制御がOFFされる条件は、駆動力伝動機構186の結束・集束駆動部が第三コントローラ36から駆動出力停止(自動停止)される条件でもあり、結束スイッチ140がOFF、かつ、排藁スイッチ141がOFF、かつ、排藁Lセンサ142がOFF、かつ、閉蓋検出スイッチ143がOFF、かつ、エンジン回転数センサ175により検出されるエンジン回転数が一定(例えば、250min−1)未満の場合である。
【0051】
[ステアバイワイヤ方式の操作構造]
本実施例に係るコンバインAにおけるステアリングホイール22と主変速レバー26は、いわゆるステアバイワイヤ方式の操作構造により構成している。すなわち、本実施例のコンバインAにおけるステアリングホイール22と主変速レバー26は、機械的な連動機構を採用せずにステアバイワイヤ方式を採用して電気的に制御して操向調整や走行調整を行うように構成している。以下にステアリングホイール22を操向装置に、また、主変速レバー26を走行装置にそれぞれ電気的に接続したステアバイワイヤ方式の制御構成について説明する。
【0052】
コンバインAでは、通信手段である通信用バスラインを介して相互に通信可能な複数のコントローラを機体本体a上に分散させて配備している。各コントローラは、タイマー内蔵のマイクロコンピュータを備えており、自己に備えられた各種の情報入力手段により入力される入力情報、他のコントローラから通信される制御情報、及び、あらかじめROM、RAM、不揮発性メモリ等の記憶手段に記憶されている前記した放出設定時間等の制御管理用情報に基づいて、自己が担当する制御対象の作動を制御するように構成している。
【0053】
具体的に説明すると、図8に示すように、ステアバイワイヤ方式においては、主変速レバー26の操作量は、第一変速ポテンショメータ100a及び第二変速ポテンショメータ100bにより検出されて、その検出結果が電気信号に変換される。また、ステアリングホイール22の操作量は、第一操向ポテンショメータ110a及び第二操向ポテンショメータ110bにより検出されて、その検出結果が電気信号に変換される。各ポテンショメータ100a,100b,110a,110bにより得られた電気信号は、専用の第一・第二I/Oドライバ28,29を介して専用のコントローラである第一コントローラ34及び第二コントローラ35に送信される。各コントローラ34,35に送信された電気信号は、各コントローラ34,35からの制御情報として出力され、直進用HST40及び旋回用HST50を駆動制御し、最終的に左右の走行部1による直進走行や旋回操向(急旋回操向であるスピンターンも含む)を可能とする。
【0054】
ミッション部15の構成について説明する。図9に示すように、ミッション部15は、直進用HST40と、旋回用HST50と、トランスミッション20とを備える。これら直進用HST40、旋回用HST50、及びトランスミッション20は、ミッションケース内に収容され、コンバインAの走行系の伝動機構を構成する。
【0055】
(直進用HST)
直進用HST40は、図10のミッション部15の油圧回路図に示すように、可変容積型の直進ポンプ40Pと、可変容積型の直進モータ40Mとを備える。直進ポンプ40Pと直進モータ40Mは、閉塞油圧回路40Kを介して互いに流体接続している。図10中、63は刈取操作切換バルブ仕組、64はタンク、65はストレーナ、66はオイルフィルタである。
【0056】
直進ポンプ40Pは、図10に示すように、容積量を変更するための機構として、可動斜板43を有している。可動斜板43にはアクチュエータとしての直進ポンプ用サーボ機構44を連動連結している。そして、直進ポンプ用サーボ機構44により可動斜板43を傾転させることにより、容積量を変更するように構成している。直進ポンプ40Pは、図5に示すように、エンジン14の出力軸に連動連結される直進ポンプ軸41を有する。つまり、直進用HST40は、直進ポンプ40Pの直進ポンプ軸41がエンジン14の出力軸に連動連結されることで、エンジン14からの動力の伝達を受ける。なお、エンジン14の出力軸には、脱穀部7、選別部8、細断処理部16、排藁結束部17、穀粒貯留部11等に対してエンジン14の動力を伝達するための回転軸を、クラッチ等を介して連動連結している。
【0057】
直進モータ40Mは、図10に示すように、容積量を変更するための機構として、可動斜板45を有している。可動斜板45にはアクチュエータとしての直進モータ用サーボ機構46を連動連結している。そして、直進モータ用サーボ機構46により可動斜板45を傾転させることにより、容積量を変更するように構成している。直進モータ40Mは、図5に示すように、副変速機構80の出力軸と連動連結される直進モータ軸42を有する。つまり、直進用HST40は、直進モータ40Mの直進モータ軸42が副変速機構80の入力軸に連動連結されることで、副変速機構80に対して動力を伝達する。
【0058】
直進用HST40は、変速操作装置によって操作可能としている。この変速操作装置には、主変速レバー26等の人為的な操作が可能な変速操作具と、直進ポンプ用サーボ機構44と、直進モータ用サーボ機構46とが含まれる。直進ポンプ用サーボ機構44は、比例弁ドライバ150及び直進ポンプ用電磁弁47を介して第一コントローラ34により作動制御される。直進モータ用サーボ機構46は、副変速ソレノイド115を介して第一コントローラ34により作動制御される。
【0059】
図9及び図10に示すように、直進ポンプ用サーボ機構44は、直進ポンプ40Pの可動斜板43に連動機構51を介して油圧シリンダ52のピストン52aを連動連結している。油圧シリンダ52には直進ポンプ用電磁弁47を介して後述するチャージポンプ53を流体接続している。直進ポンプ用電磁弁47は、変速操作を検出する第一変速ポテンショメータ100aからの検出情報に基づいて、第一コントローラ34により作動制御される。油圧シリンダ52は、第一コントローラ34による直進ポンプ用電磁弁47の作動制御に応じて作動油の給排が切り替えられることで作動する。直進ポンプ40Pの可動斜板43は、油圧シリンダ52の作動に連動して傾斜姿勢が制御され、制御された傾斜姿勢で傾転されることで、直進ポンプ40Pの容積量を変化させる。
【0060】
また、直進モータ用サーボ機構46は、直進モータ40Mの可動斜板45に連動機構54を介して油圧シリンダ55のピストン55aを連動連結している。油圧シリンダ55には直進モータ用電磁弁48を介して後述するチャージポンプ53を流体接続している。直進モータ用電磁弁48は、副変速スイッチ112からの操作情報に基づいて、第一コントローラ34により副変速ソレノイド115を介して制御される。油圧シリンダ55は、第一コントローラ34による副変速ソレノイド115を介した直進モータ用電磁弁48の制御に応じて作動油の給排が2段副変速に切り替えられることで作動する。直進モータ40Mの可動斜板45は、油圧シリンダ55の作動に連動して傾斜姿勢が制御され、制御された傾斜姿勢で傾転されることで、直進モータ40Mの容積量を変化させる。
【0061】
このように、直進用HST40においては、直進ポンプ40Pの駆動時に、可動斜板43の傾斜姿勢に応じて直進ポンプ40Pの容積量が変更される。それによって、直進ポンプ40Pから直進モータ40Mへ吐出される作動油の吐出量及び吐出方向が変更される。その結果、直進モータ軸42の回転方向が正転方向又は逆転方向に変更されると共に、直進モータ軸42の回転数が無段階に変更される。さらに、直進モータ40Mにおいて、可動斜板45の傾斜姿勢に応じて直進モータ40Mの容積量が変更されることで、直進モータ軸42の回転数が変更(2段副変速)される。直進変速機構はこのように構成している。
【0062】
(旋回用HST)
旋回用HST50は、図10のミッション部15の油圧回路図に示すように、可変容積型の旋回ポンプ50Pと、固定容積型の旋回モータ50Mとを備える。旋回ポンプ50Pと旋回モータ50Mは、閉塞油圧回路50Kを介して互いに流体接続している。旋回ポンプ50Pにはチャージポンプ53を連動連結している。チャージポンプ53は、チャージ油路67を介して前記した直進ポンプ用サーボ機構44と直進モータ用サーボ機構46と後記する旋回ポンプ用サーボ機構57に流体接続して、各サーボ機構44,46,57を油圧作動させるようにしている。
【0063】
旋回ポンプ50Pは、図10に示すように、容積量を変更するための機構として、可動斜板56を有している。可動斜板56にはアクチュエータとしての旋回ポンプ用サーボ機構57を連動連結している。そして、旋回ポンプ用サーボ機構57により可動斜板56を傾転させることにより、容積量を変更するように構成している。旋回ポンプ50Pは、図5に示すように、エンジン14の出力軸に連動連結される旋回ポンプ軸61を有する。つまり、旋回用HST50は、旋回ポンプ50Pの旋回ポンプ軸61がエンジン14の出力軸に連動連結されることで、エンジン14からの動力の伝達を受ける。
【0064】
旋回モータ50Mは、容積量を固定するための機構として、固定斜板を有し、この固定斜板により、容積量が一定となるように構成している。
【0065】
旋回用HST50は、操向操作装置によって操作可能としている。この操向操作装置には、ステアリングホイール22等の人為的な操作が可能な操向操作具と、旋回ポンプ用サーボ機構57とが含まれる。旋回ポンプ用サーボ機構57は、第一コントローラ34により作動制御される。
【0066】
図9及び図10に示すように、旋回ポンプ用サーボ機構57は、旋回ポンプ50Pの可動斜板56に連動機構58を介して油圧シリンダ59のピストン59aを連動連結している。油圧シリンダ59には旋回ポンプ用電磁弁60を介してチャージポンプ53を流体接続している。旋回ポンプ用電磁弁60は、操向操作を検出する第一操向ポテンショメータ110aからの検出情報ないしは後述する調節量変更スイッチ124により設定された設定情報に基づいて、第一コントローラ34により制御される。油圧シリンダ59は、第一コントローラ34による旋回ポンプ用電磁弁60の作動制御に応じて作動油の給排が切り替えられることで作動する。旋回ポンプ50Pの可動斜板56は、油圧シリンダ59の作動に連動して傾斜姿勢が制御され、制御された傾斜姿勢で傾転されることで、旋回ポンプ50Pの容積量を変化させる。
【0067】
このように、旋回用HST50においては、旋回ポンプ50Pの駆動時に、可動斜板56の傾斜姿勢に応じて旋回ポンプ50Pの容積量が変更される。それによって、旋回ポンプ50Pから旋回モータ50Mへ吐出される作動油の吐出量及び吐出方向が変更される。その結果、旋回モータ軸62の回転方向が正転方向又は逆転方向に変更されると共に、旋回モータ軸62の回転数が無段階に変更される。操向変速機構はこのように構成している。
【0068】
(トランスミッション)
図9に示すように、トランスミッション20は、遊星歯車機構部70と、副変速機構80と、クラッチ装置90とを備える。
遊星歯車機構部70は、一対の遊星歯車機構を含む遊星歯車群として構成し、一対の遊星歯車機構として、第一遊星歯車機構71aと第二遊星歯車機構71bとを有する。遊星歯車機構部70においては、一対の遊星歯車機構71a,71bから、左右に出力軸を延出している。すなわち、第一遊星歯車機構71aから、第一出力軸72aを延出し、第二遊星歯車機構71bから、第二出力軸72bを延出している。各出力軸72a,72bは、それぞれ左右方向で対応する走行部1のクローラの駆動輪に回転動力を伝達する。これにより、左右の走行部1の走行駆動が行われる。
【0069】
副変速機構80は、直進モータ軸42に連結される回転軸を有し、この回転軸を介して直進モータ40Mの直進モータ軸42に連動連結している。副変速機構80は、直進モータ軸42の回転動力を多段変速させることができるように構成している。なお、直進モータ軸42には、刈取プーリ用電磁クラッチ91(図6)を介して刈取プーリを固定し、この刈取プーリから直進モータ40Mの回転動力を刈取部4の伝動機構に伝達する。
【0070】
クラッチ装置90は、旋回用HST50における旋回モータ50Mの旋回モータ軸62に対して連動連結している。クラッチ装置90は、旋回用HST50の旋回モータ50Mからの回転動力を、遊星歯車機構部70に対して伝達又は遮断することができるように構成している。
【0071】
以上のような構成を備えるトランスミッション20において、旋回用HST50の旋回モータ50Mが停止し、直進用HST40の直進モータ40Mが駆動する場合、直進モータ40Mの回転動力が、直進モータ軸42から、副変速機構80を介して遊星歯車機構部70に伝達され、第一出力軸72a及び第二出力軸72bから出力される。
【0072】
この直進モータ40Mから第一出力軸72a及び第二出力軸72bに対する回転動力の伝達によって、第一出力軸72a及び第二出力軸72bが正回転方向または逆回転方向の同一方向に回転させられる。これにより、左右のクローラ式の走行部1が有する駆動輪が、同一回転方向に同一回転数で回転する。その結果、左右の走行部1が駆動され、コンバインAの機体前後方向についての直進走行が行われる。
【0073】
また、直進用HST40の直進モータ40Mが停止し、旋回用HST50の旋回モータ50Mが駆動する場合、旋回モータ50Mの回転動力が、旋回モータ軸62から、クラッチ装置90を介して遊星歯車機構部70に伝達され、第一出力軸72a及び第二出力軸72bから出力される。
【0074】
この旋回モータ50Mから第一出力軸72a及び第二出力軸72bに対する回転動力の伝達によって、第一出力軸72a及び第二出力軸72bが互いに反対方向に回転させられる。これにより、左右のクローラ式の走行部1が有する駆動輪が、互いに反対方向に回転する。その結果、左右の走行部1が駆動され、コンバインAの機体の急旋回であるスピンターンが行われる。スピンターンによれば、例えば圃場や枕地での急速・小半径での方向転換が可能となる。また、いずれか一方の走行部1が有する駆動輪が停止状態となった場合には、停止状態の走行部1側を中心に旋回されるターンが行われる。
【0075】
また、直進用HST40の直進モータ40Mが駆動すると共に、旋回用HST50の旋回モータ50Mが駆動する場合、直進モータ40Mから副変速機構80を介して遊星歯車機構部70に伝達される回転動力と、旋回モータ50Mからクラッチ装置90を介して遊星歯車機構部70に伝達される回転動力とが、遊星歯車機構部70において合成されて合成動力が生成される。そして、その合成動力が第一出力軸72a及び第二出力軸72bから出力される。
【0076】
この直進モータ40M及び旋回モータ50Mから第一出力軸72a及び第二出力軸72bに対する回転動力(合成動力)の伝達によって、第一出力軸72a及び第二出力軸72bが互いに異なる回転数で回転される。その結果、左右の走行部1が相互に速度差をもって駆動され、コンバインAの走行機体の直進走行と左方向又は右方向への旋回操向とが同時に行われて、緩旋回がなされる。なお、コンバインAの旋回方向及び旋回半径は、左右の走行部1の速度差に応じて決定される。そして、ステアリングホイール22が所定の操作量まで操作された時点(例えば、ハンドル切れ角度の4分の3あたり)では、旋回側の走行部1が停止される。さらに、ステアリングホイール22が旋回操作されると左右の走行部1が相互に反対方向に駆動されて、走行機体は急旋回であるスピンターンに入り込む。
【0077】
続いて、図8を用いて、本実施例に係るコンバインAの制御システム、特に、車速制御システムの構成について説明する。図6に示すように、コンバインAの制御システムは、第一変速ポテンショメータ100aと、第二変速ポテンショメータ100bと、第一操向ポテンショメータ110aと、第二操向ポテンショメータ110bと、第一コントローラ34と、第二コントローラ35と、エンジンコントローラ37とを備える。
【0078】
第一変速ポテンショメータ100a及び第二変速ポテンショメータ100bは、オペレータによる主変速レバー26の変速操作状態、つまり主変速レバー26の変速操作位置を検出する。第一操向ポテンショメータ110a及び第二操向ポテンショメータ110bは、オペレータによるステアリングホイール22の操向操作状態、つまりステアリングホイール22の操向操作位置を検出する。
【0079】
第一コントローラ34は、第一変速ポテンショメータ100a、第一操向ポテンショメータ110a及び調節量変更スイッチ124からの入力情報(検出情報)に基づいて制御情報を生成し、直進ポンプ用電磁弁47、直進モータ用電磁弁48、及び旋回ポンプ用電磁弁60を制御する。第二コントローラ35は、第二変速ポテンショメータ100b及び第二操向ポテンショメータ110bからの入力情報(検出情報)に基づいて制御情報を生成する。エンジンコントローラ37は、エンジン回転数センサ175等からの入力情報(検出情報)に基づいて、エンジン14の運転状態を制御する。
【0080】
第一コントローラ34には、比例弁ドライバ163を介して、直進ポンプ用電磁弁47、直進モータ用電磁弁48、及び旋回ポンプ用電磁弁60を電気的に接続している。また、第一コントローラ34には、コンバインAの走行状態を検出するための手段として、直進回転センサ113及び旋回回転センサ114を接続している。直進回転センサ113は、トランスミッション20におけるコンバインAの前後進(直進)に係る回転部分の回転を検出し、その検出情報を第一コントローラ34に送信して、車速センサとしても機能する。旋回回転センサ114は、トランスミッション20におけるコンバインAの旋回に係る回転部分の回転を検出し、その検出情報を第一コントローラ34に送信する。
【0081】
また、第一コントローラ34には、副変速ソレノイド115を接続している。副変速ソレノイド115は、トランスミッション20が有する切換部を作動させて、低速出力と高速出力とを切り換える。また、第一コントローラ34には、第一I/Oドライバ28を介して、第一変速ポテンショメータ100a、第一操向ポテンショメータ110aを電気的に接続している。
【0082】
第二コントローラ35には、第二I/Oドライバ29を介して、第二変速ポテンショメータ100b、第二操向ポテンショメータ110bを電気的に接続している。また、第二コントローラ35には、刈取プーリ用電磁クラッチ91及びPTOプーリ用電磁クラッチ93を電気的に接続している。刈取プーリ用電磁クラッチ91は、刈取スイッチ(図示せず)がON・OFF操作されることで、刈取部4への回転動力を伝達又は遮断する。PTOプーリ用電磁クラッチ93は、脱穀スイッチ(図示せず)がON・OFF操作されることで、脱穀部7への回転動力を伝達又は遮断する。
【0083】
また、第二コントローラ35には、第三I/Oドライバ30を介して、副変速位置センサ111、副変速スイッチ112、結束スイッチ140、及び、排藁スイッチ141を電気的に接続している。副変速位置センサ111は、副変速レバーの前後回動操作位置(操作量)を検出する。副変速スイッチ112は、副変速ソレノイド115を介して前記のとおりトランスミッション20が有する切換部を作動させて、トランスミッション20における低速出力と高速出力とを切り換えるための操作部である。結束スイッチ140は、排藁結束部17をON・OFF作動させるための操作部である。排藁スイッチ141は、排藁結束部17への選択操作部である。
【0084】
第一I/Oドライバ28と第一コントローラ34とエンジンコントローラ37と比例弁ドライバ163とは、CAN(Controller Area Network)130により電気的に接続している。同様に、第一コントローラ34と第二コントローラ35とは、CAN131により接続し、第二I/Oドライバ29と第三I/Oドライバ30と第二コントローラ35とは、CAN132により接続している。第二コントローラ35と第三コントローラ36とは、CAN133により接続している。
【0085】
第三コントローラ36には、前記した排藁Lセンサ142、閉蓋検出スイッチ143及び放出ピッチ検出センサ144を電気的に接続して、これら排藁Lセンサ142と閉蓋検出スイッチ143と放出ピッチ検出センサ144の検出情報を第三コントローラ36に送信する。また、第三コントローラ36には、前記した駆動力伝動機構186の結束・集束駆動部を電気的に接続して、第三コントローラ36から駆動力伝動機構186の結束・集束駆動部に制御情報を送信してその駆動出力を制御する。
【0086】
そして、第一コントローラ34、第二コントローラ35、第三コントローラ36及びエンジンコントローラ37は、第一変速ポテンショメータ100aや第一操向ポテンショメータ110a等を含む各種検出機器からの検出情報を共有するように構成している。
【0087】
本実施形態では、第一変速ポテンショメータ100aと第二変速ポテンショメータ100bとは、互いに異なる検出方法によって主変速レバー26の変速操作位置を検出するように構成している。同様に、第一操向ポテンショメータ110aと第二操向ポテンショメータ110bとは、互いに異なる検出方法によってステアリングホイール22の操向操作位置を検出するように構成している。
【0088】
具体的には、第一変速ポテンショメータ100aは、主変速レバー26の変速操作位置の検出において、主変速レバー26の傾倒操作による傾倒角が大きくなるに従って検出情報としての電気信号を増幅させる。これに対し、第二変速ポテンショメータ100bは、主変速レバー26の変速操作位置の検出において、主変速レバー26の傾倒操作による傾倒角が大きくなるにしたがって検出情報としての電気信号を減少させる。
【0089】
また、第一操向ポテンショメータ110aは、ステアリングホイール22の操向操作位置の検出において、ステアリングホイール22の右旋回時の切れ角が大きくなるに従って検出情報としての電気信号を増幅させる(左旋回時の切れ角が大きくなるに従って電気信号を減少させる)。これに対し、第二操向ポテンショメータ110bは、ステアリングホイール22の操向操作位置の検出において、ステアリングホイール22の右旋回時の切れ角が大きくなるに従って検出情報としての電気信号を減少させる(左旋回時の切れ角が大きくなるにしたがって電気信号を増幅させる)。
【0090】
このような検出構成により、第一コントローラ34及び第二コントローラ35は、主変速レバー26やステアリングホイール22の操作にともない、異なる検出方法によって得られた複数の検出情報をそれぞれ入力情報として得る。そして、第一コントローラ34への入力情報と第二コントローラ35への入力情報を、第一コントローラ34及び第二コントローラ35のそれぞれにおいて比較することにより、入力情報が適切であるか否かを判別する。これにより、第一変速ポテンショメータ100aや第一操向ポテンショメータ110a等の検出機器の異常の発生が精度良く検知され、入力情報の信頼性が向上する。
【0091】
第一コントローラ34は、オペレータの変速操作や操向操作に応じてコンバインAの走行状態を制御するメインコントローラである。第一コントローラ34は、第一変速ポテンショメータ100a、第一操向ポテンショメータ110a及び調節量変更スイッチ(図示せず)124からの入力情報に基づいて直進用HST40及び旋回用HST50を制御するための制御情報を生成し、かかる制御情報により、直進用HST40及び旋回用HST50を制御する。
【0092】
第二コントローラ35と第三コントローラ36は、メインコントローラである第一コントローラ34に対するサブコントローラである。第二コントローラ35と第三コントローラ36は、第一コントローラ34との間で随時通信を行なって、第一コントローラ34の作動状態(作動しているか否か)を監視する。これと同時に、第一コントローラ34は、第二コントローラ35と第三コントローラ36の作動状態を監視する。つまり、第一コントローラ34と第二コントローラ35と第三コントローラ36は、相互に作動状態を監視するように構成している。なお、第一コントローラ34と第二コントローラ35と第三コントローラ36の電源ラインは別々にしている。
【0093】
また、第一コントローラ34及び第二コントローラ35では、主変速レバー26の操作に応じて第一変速ポテンショメータ100aから入力される入力情報またはステアリングホイール22の操作に応じて第一操向ポテンショメータ110aから入力される入力情報と、同様にして第二変速ポテンショメータ100bまたは第二操向ポテンショメータ110bから入力される入力情報を互いに比較する。
【0094】
さらに、第一コントローラ34及び第二コントローラ35では、第一コントローラ34において前記各ポテンショメータ100a,100b,110a,110bからの入力情報に基づいて生成される制御情報と、第二コントローラ35において前記各ポテンショメータ100a,100b,110a,110bからの入力情報に基づいて生成される制御情報を比較する。この比較の結果、前記各ポテンショメータ100a,100b,110a,110bの作動状態について、正常に作動しているか否かを判定する。
【0095】
第一コントローラ34に接続される直進回転センサ113は、コンバインAの走行状態について、コンバインAが走行中か否かを検出するものである。同じく第一コントローラ34に接続される旋回回転センサ114は、コンバインAが旋回中か否かを検出するものである。ここで、直進回転センサ113は、トランスミッション20における副変速機構80を含む直進用出力伝動機構に設けて、この伝動機構を構成する適宜の軸やギア等の回転を検出する。また、旋回回転センサ114は、トランスミッション20におけるクラッチ装置90を含む旋回用出力伝動機構に設けて、この伝動機構を構成する適宜の軸やギア等の回転を検出する。
【0096】
第一コントローラ34は、直進回転センサ113や旋回回転センサ114からの検出情報に基づいて、コンバインAが目標の走行状態となるようにフィードバック制御を行う。これとともに、第一コントローラ34は、第二コントローラ35からエンジン14の運転状態に係る情報を取得して常にオペレータの要求に応じた走向状態を実現するように制御情報を生成し、直進用HST40及び旋回用HST50の制御を行う。
【0097】
以上のような構成において、主変速レバー26が操作されることで、主変速レバー26の変速操作位置が第一変速ポテンショメータ100a及び第二変速ポテンショメータ100bにより検出され、かかる検出情報が用いられ、第一コントローラ34及び第二コントローラ35によって、直進用HST40が制御される。つまり、主変速レバー26の操作により、エンジン14からの回転動力を変速してトランスミッション20に伝達する直進用HST40が制御される。そして、第一出力軸72a及び第二出力軸72bが同一方向に正逆回転駆動して、左右の走行部1によるコンバインAの前後の直進走行が行われる。
【0098】
また、ステアリングホイール22が操作されることで、ステアリングホイール22の操向操作位置が第一操向ポテンショメータ110a及び第二操向ポテンショメータ110bにより検出され、かかる検出情報に基づいて、第一コントローラ34及び第二コントローラ35によって、旋回用HST50が制御される。つまり、ステアリングホイール22の操作により、エンジン14からの回転動力を変速してトランスミッション20に伝達する旋回用HST50が制御される。そして、第一出力軸72a及び第二出力軸72bが反対方向に回転駆動して、左右の走行部1によるコンバインAの緩・急旋回操向が行われる。
【0099】
[結束車速制御動作]
次に、図11及び図12に示すフローチャートに基づいて、結束車速制御動作について説明する。
結束車速制御がONされると(S1:Yes)、放出ピッチが放出設定時間である0.7秒間未満を検出した場合で(S2:Yes)、さらに、同様の状況を連続して10回以上検出した場合には(S3:Yes)、現状の車速を7%減速させる(S4)。車速が所定の最低車速である0.7m/s以下になった場合には(S5:Yes)、減速を停止させる(S6)。車速が所定の最低車速である0.7m/s以下までは(S5:No)、条件が成立すれば減速を続ける。
【0100】
放出設定時間である0.7秒間以上を検出した場合で(S7:Yes)さらに、同様の状況を連続して10回以上検出した場合には(S8:Yes)、現状の車速を1秒間かけて7%増速させる(S9)。増速時の減速比率の上限1000に達した場合には(S10:Yes)、増速を停止させる(S11)。
【0101】
結束車速制御がOFFされると(S12)、放出ピッチ回数をクリアーし、車速を1秒間かけて7%ずつ増速させる(S13)。増速時の減速比率の上限1000に達した場合で(S14:Yes)、減速比率が1000未満の時に結束車速制御がONになった場合には(S15:Yes)、ONになった時の減速比率から結束車速制御を開始する。
【0102】
このように、上記した結束車速制御がなされることで、結束処理を行う結束作業形態においても、結束処理を行わない非結束作業形態と同様に車速を高速に維持することができて、刈取から結束排藁束の放出まで一連の作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0103】
A コンバイン
9 排藁処理装置
17 排藁結束部
144 放出ピッチ検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車速を制御する車速制御手段を備えた本機の前方に、圃場に植立した穀稈を刈り取る刈取部を取り付け、刈取部により刈り取った穀稈を本機に設けた脱穀部により脱穀するとともに、脱穀後の排藁を本機に設けた排藁結束部で結束して、結束した排藁の束を機外に放出するようにしたコンバインにおいて、
排藁結束部による結束した排藁の束の放出ピッチを放出ピッチ検出手段により検出して、その検出結果に基づいて車速制御手段により車速を制御するようにしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記放出ピッチ検出手段により検出した前記放出ピッチが放出設定時間よりも短い場合には、車速制御手段により車速を減速させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記放出ピッチ検出手段により検出した前記放出ピッチが放出設定時間よりも長い場合には、車速制御手段により車速を増速させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−187039(P2012−187039A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52976(P2011−52976)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【Fターム(参考)】