説明

コンバイン

【課題】サンバイザによる太陽光の遮蔽状態を良好に行えるものでありながら、コンバインの全高を低くして、倉庫への格納や機体へのシート掛け作業を容易に行えるものとする。
【解決手段】車体フレーム2の前側に刈取装置6を設け、車体フレーム2の上部には脱穀装置とグレンタンク7を左右に並べて設け、グレンタンク7の前側に操縦席10aを設けたコンバインにおいて、操縦席10aとグレンタンク7との間における車体フレーム2側の部位に、サンバイザ11を支持するアームの基部を前後方向へ回動自在に取り付け、アームの前後方向への回動操作に基づいてサンバイザ11を所定の横向き姿勢を維持したまま前後方向へ移動させる連繋手段16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンバイザを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインによる収穫作業は、夏季に行われる地域が多く、太陽光を遮蔽する手段として、操縦席の上方を覆うサンバイザを備えたものがある。
このようなサンバイザとして、操縦席の上方に固定設置されるものや、操縦者の着座姿勢と立ち姿勢とに対応するために、サンバイザを上下方向へスライド調節自在に構成したもの等がある。
【0003】
また、特許文献1に示すとおり、作業車輌に装備するサンバイザとして、上方に障害物がある場所を走行したり、車庫等に作業車輌を格納したりする際に、サンバイザが障害物と干渉することを防止するために、操縦席の上部に支持部材で支持されたサンバイザを操縦部の上側を覆う状態と、操縦部から後方へ移動させて低位置に移動した状態とに切換可能な構造を有するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−139471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにサンバイザを上下方向へスライド調節できるものであっても、陽射しの方向によっては、操縦者に当たる太陽光を十分に遮蔽することができない欠点が残る。
【0006】
また、上記特許文献に記載されたサンバイザをコンバインに装備しても、操縦部の後方に穀粒を貯留するための大容量のグレンタンクを有するために、サンバイザの後方への移動範囲が制限される問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、車体フレーム(2)の前側に刈取装置(6)を設け、車体フレーム(2)の上部には脱穀装置(8)とグレンタンク(7)を左右に並べて設け、該グレンタンク(7)の前側に操縦席(10a)を設けたコンバインにおいて、前記操縦席(10a)とグレンタンク(7)との間における車体フレーム(2)側の部位に、サンバイザ(11)を支持するアーム(19)の基部を前後方向へ回動自在に取り付け、該アーム(19)の前後方向への回動操作に基づいて前記サンバイザ(11)を所定の横向き姿勢を維持したまま前後方向へ移動させる連繋手段(16)を備えたことを特徴とするコンバインとする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記サンバイザ(11)の横向き姿勢を前後方向へ姿勢変更可能な構成とした請求項1に記載のコンバインとする。
請求項3に記載の発明は、前記サンバイザ(11)を、操縦席(10a)の上方を覆う第1位置(A)と該第1位置(A)よりも後側下方の第2位置(B)とに位置変更可能に構成し、 該サンバイザ(11)を前記第2位置(B)に位置変更した状態において、該サンバイザ(11)の後部がグレンタンク(7)の前部上側に位置する構成とした請求項1または請求項2に記載のコンバインとする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記グレンタンク(7)の前側上部には側面視で後上り傾斜状に切り欠いた切り欠き部(7b)を形成し、前記アーム(19)を後方へ回動させた場合に、該アーム(19)の少なくとも一部が前記切り欠き部(7b)に侵入する構成とした請求項1または請求項2または請求項3に記載のコンバインとする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記連繋手段(16)には、前記アーム(19)に対して前後方向に所定の間隔をおいて配置されるロッド(20)を備え、該ロッド(20)の両端部をサンバイザ(11)側の部位と車体フレーム(2)側の部位とに夫々取付け、該ロッド(20)の端部を取付けるサンバイザ(11)側の部位、または、前記車体フレーム(2)側の部位に、該ロッド(20)端部の取付け位置を変更可能な調節部(18a)を設けた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインとする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記アーム(19)とサンバイザ(11)の間に、サンバイザ(11)を上昇側に付勢する付勢手段(23)を備えた請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコンバインとする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、アーム(19)を前後方向へ回動操作することでサンバイザ(11)を前後方向へ移動させることができるうえに、この移動に拘らずサンバイザ(11)の姿勢が所定の横向き姿勢に維持されるので、太陽光の遮蔽状態を良好な状態に維持できる。また、サンバイザ(11)が後方へ移動することで、操縦者が操縦席(10a)から立ち上がっても、頭上に干渉しにくく、立ち姿勢での作業を能率よく行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、陽射しの方向に応じてサンバイザ(11)の横向き姿勢を前後方向へ姿勢でき、太陽光の遮蔽状態を良好な状態に調節できる。また、サンバイザ(11)を前下がり傾斜姿勢に調節すれば、コンバインを天井の低い倉庫へ格納したり、コンバインにシートを掛けたりする作業が容易に行なえる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加え、サンバイザ(11)を、操縦席(10a)の上方を覆う第1位置(A)から、後方の第2位置(B)へ移動させることによって、このサンバイザ(11)の位置が下がり、天井の低い倉庫への格納や、機体へのシート掛け作業を更に容易に行なえる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2または請求項3に記載の発明の効果に加え、サンバイザ(11)を支持するアーム(19)を、グレンタンク(7)の前側上部に形成した切り欠き部(7b)に侵入させることで後方へ大きく回動させることができるので、機体の全高を低くすることができ、コンバインを天井の低い倉庫へも容易に格納することができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、サンバイザ(11)の姿勢を維持したまま前後に移動させることができるものでありながら、ロッド(20)端部の取付け位置を変更することで、サンバイザ(11)の前後方向の傾斜姿勢を調節することができ、例えば、後方へ移動させた状態で、サンバイザ(11)を前下がりに傾斜させ、機体の全高を低くして、倉庫等への格納を更に容易化することができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、上記請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、サンバイザ(11)の重量に抗して付勢手段(23)を作用させ、このサンバイザ(11)の位置または姿勢の変更操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】サンバイザ取付部の拡大左側面図である。
【図4】サンバイザ取付部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。なお、左右とは機体の前進走行方向に向かって左右方向をいう。
コンバイン1の車体フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型したクローラ4を駆動スプロケット4aと複数の遊動転輪4cと従動輪4bに巻回し、乾田はもちろんのこと湿田においても沈下しないで走行できる構成の走行装置3を備え、車体フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、車体フレーム2の左側に脱穀装置8を搭載し、車体フレーム2の左側にグレンタンク7と原動フレーム14を搭載する。脱穀装置8で脱穀され、藁などと選別された穀粒は一番揚穀筒32で送り揚げてグレンタンク7に一時貯留され、グレンタンク7が穀粒で満杯になると、穀粒排出オーガ9により外部へ穀粒を搬出する。
【0020】
また、原動フレーム14の上部であってグレンタンク7の前側に操縦部10を設けており、この操縦部10には、オペレータが搭乗する操縦席10aと、機体を操向する操舵レバー13等の操作具を有する操作ポスト10bとクローラ4の駆動速度を変更することで機体の走行速度を変更する主変速レバー12等を有するサイド操作パネルが設けられ、該操縦部10の上方部には原動フレーム14の上部に立設した支柱15に平行リンク機構(連繋手段,支持部材)16を有する左右のメインアーム(アーム)19,19で支持したサンバイザ11を設けている。
【0021】
サンバイザ11は、操縦席10aと操舵レバー13を覆う平面視略四角形で、後述する平行リンク機構16で構成した支持部を後方へ折り曲げて、搭乗ステップ17に立ったオペレータの頭上を覆う使用位置(第1位置)Aと操縦席10aに座ったオペレータの頭上を覆う後退位置(第2位置)Bと操縦席10aに極接近した格納位置(第3位置)Cに保持出来るようにしている。サンバイザ11を後退位置Bにした状態で、オペレータが操縦席10に座ってサイドミラー(図示省略)を見ながら操舵レバー13や主変速レバー12を操作して操縦可能である。
【0022】
図3と図4に示す如く、原動フレーム14に立設した支柱15の上端に横架した下横桟28には左右間隔をあけて固着した下ブラケット18,18と、サンバイザ11を取り付けた上横桟22に左右間隔をあけて固着した上ブラケット21,21をメインアーム(アーム)19で回動可能に連結し、右側の下ブラケット18と上横桟22の右側の上ブラケット21をサブロッド(ロッド)20で回動可能に連結して平行リンク機構16を構成している。
【0023】
なお、グレンタンク7の前側上部には側面視で後上り傾斜状に切り欠いた切り欠き部7bを形成し、これによってグレンタンク7の前側上部に傾斜部7aが構成される。
前記下ブラケット18の高さ位置は、グレンタンク7の傾斜部7aの上端7a1と下端7a2の間に位置することで、サンバイザ11の後方への移動範囲を拡大することができ、平行リンク機構16とグレンタンク7を干渉し難くすることができる。
【0024】
サブロッド20の下端を下ブラケット18に枢支する部分に長孔18a(調節部)を設け、サブロッド20の下端位置を長孔18a内で変更することで、サンバイザ11の水平に対する傾きを変更出来て、後退位置Bで最も前下がりにすることで格納位置Cになる。
【0025】
すなわち、後退位置Bでは、サンバイザ11の前端部(先端部)と操縦席10aの座面との上下方向の間隔が広くなり、サンバイザ11を後方へ退避させて機体の全高が低い状態でコンバインの操作を行うことができ、操縦席10aに着座した操縦者の頭上を覆って直射日光を遮断できるうえに、天井の低い倉庫へも容易に格納することができる。
【0026】
そして、格納位置Cでは、サンバイザ11が前下がりに傾斜して、このサンバイザ11の前端部と操縦席10aとの上下間隔が狭くなり、機体の全高を更に低くして、コンバインの機体へのシート掛け作業を容易に行なうことができる。
【0027】
また、左右のメインアーム19,19を横桟29で連結し、下端に固着した扇状固定プレート30,30に設ける二か所の固定穴30aに下ブラケット18,18に設けるピン31,31を嵌合することで、メインアーム19,19の起立角度を変更して、サンバイザ11を使用位置Aと後退位置Bに保持する。ピン31,31をピンレバー27で抜き差しする。ピン31を挿入方向にバネで付勢し外れないようにし、ピンレバー27を上方に回動して抜き出すようにする。なお、ピンレバー27は、前後方向に回動してピン31を抜き差しするようにしても良い。
【0028】
左側の上ブラケット21とメインアーム19の間をガススプリング(付勢手段)23で連結し、右側のメインアーム19に取手24を設けて、オペレータが取手24を持ってサンバイザ11を軽く昇降操作できるようにしている。なお、取手24は、サンバイザ11の前端部に設けても良い。
【0029】
左右のメインアーム19,19はノブボルト25,26で取り外し可能にしている。
原動フレーム14の後側で車体フレーム2に搭載するグレンタンク7は、サンバイザ11を後退位置B又は格納位置Cにしたままで、穀粒排出オーガ9の縦送り筒9aを中心にして前部を外側方へ回動してグレンタンク7内部や穀粒排出オーガ9のメンテナンスを行えるようにしている。
【0030】
すなわち、サンバイザ11を後退位置B又は格納位置Cに切り換えた状態における平行リンク機構16とグレンタンク7の傾斜部7aの間に所定の間隙を形成している。
このグレンタンク7の機体中心側には、脱穀装置8で脱穀した穀粒を送り揚げる一番揚穀筒32が設けられ、この一番揚穀筒32の上部を後退位置Bにしたサンバイザ11で覆って、雨や塵埃が一番揚穀筒32とグレンタンク7の継目部分へ侵入しないようにする。
【0031】
また、グレンタンク7の前面部7fの上端から天面部7uの前端にかけて、後上がりの傾斜部7aを形成し、サンバイザ11を後退位置Bにした際にメインアーム19,19が当たらないようにしている。後退位置Bのサンバイザ11は、連結ロッド33で原動フレーム14に引きつけることでサンバイザ11を最も低くした格納位置Cに固定出来る。
【符号の説明】
【0032】
2 車体フレーム
6 刈取装置
7 グレンタンク
7a 傾斜部
7b 切り欠き部
8 脱穀装置
10 操縦席
11 サンバイザ
16 平行リンク(連繋手段)
18a 長孔(調節部)
19 メインアーム(アーム)
20 ロッド
23 ガススプリング(付勢手段)
A 第1位置
B 第2位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(2)の前側に刈取装置(6)を設け、車体フレーム(2)の上部には脱穀装置(8)とグレンタンク(7)を左右に並べて設け、該グレンタンク(7)の前側に操縦席(10a)を設けたコンバインにおいて、
前記操縦席(10a)とグレンタンク(7)との間における車体フレーム(2)側の部位に、サンバイザ(11)を支持するアーム(19)の基部を前後方向へ回動自在に取り付け、該アーム(19)の前後方向への回動操作に基づいて前記サンバイザ(11)を所定の横向き姿勢を維持したまま前後方向へ移動させる連繋手段(16)を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記サンバイザ(11)の横向き姿勢を前後方向へ姿勢変更可能な構成とした請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記サンバイザ(11)を、操縦席(10a)の上方を覆う第1位置(A)と該第1位置(A)よりも後側下方の第2位置(B)とに位置変更可能に構成し、
該サンバイザ(11)を前記第2位置(B)に位置変更した状態において、該サンバイザ(11)の後部がグレンタンク(7)の前部上側に位置する構成とした請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記グレンタンク(7)の前側上部には側面視で後上り傾斜状に切り欠いた切り欠き部(7b)を形成し、
前記アーム(19)を後方へ回動させた場合に、該アーム(19)の少なくとも一部が前記切り欠き部(7b)に侵入する構成とした請求項1または請求項2または請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記連繋手段(16)には、前記アーム(19)に対して前後方向に所定の間隔をおいて配置されるロッド(20)を備え、
該ロッド(20)の両端部をサンバイザ(11)側の部位と車体フレーム(2)側の部位とに夫々取付け、
該ロッド(20)の端部を取付けるサンバイザ(11)側の部位、または、前記車体フレーム(2)側の部位に、該ロッド(20)端部の取付け位置を変更可能な調節部(18a)を設けた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記アーム(19)とサンバイザ(11)の間に、サンバイザ(11)を上昇側に付勢する付勢手段(23)を備えた請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112275(P2013−112275A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262278(P2011−262278)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】