説明

コンバイン

【課題】引起ケース25A,25B,25Cの取付数を増やさずに刈取条数を簡単に増やせるものでありながら、拾い残しロス等も低減できるようにしたコンバインを提供する。
【解決手段】刈取装置8に、複数の引起タイン26A,26B,26Cにて未刈穀稈を引起す多条刈り用の引起ケース25A,25B,25Cを備え、右引起ケース25Bの下部従動輪84の右横側にチェン張出し部材87を設け、右引起ケース25Bのタインチェン82下部のみを2輪84,87で巻回する。右引起ケース25Bの下部従動輪84とチェン張出し部材87との間に、右引起タイン26Bを下部回行途中で直線的に横移動させる横移動区間88を形成する。各下部従動輪84の下端部とチェン張出し部材87の下端部とをつなぐ接線に横移動区間88を沿わせるように、各下部従動輪84の下端部高さとチェン張出し部材87の下端部高さとを揃える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の穀稈を連続的に刈取って脱穀するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引起タインを取付けるチェンを上部駆動輪と下部従動輪を介して内部に張設し、チェンを回転させて各引起タインを下部回行部及び上向き直走部で外部に突出させて未刈穀稈に作用させる引起ケースを、刈取り条数と同じ数だけ刈取部の前部に後傾姿勢で横に並べて立設させ、分草後の未刈穀稈の引起しを行うと同時に、刈刃で未刈穀稈の切断を行うときに、その上部を支えて切断を助けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−95354号公報
【特許文献2】実開昭61−105443号公報
【特許文献3】特開2001−37314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、各引起ケース部の構成部品を共用するために、各引起ケース部は左右が逆になるものがあることを除いて全く同じものが用いられているため、例えば最も既刈側の引起ケースにおける引起タイン先端の下部回行半径不足による最も既刈側の未刈穀稈の引起し不良で刈残しを発生させる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、機台(3)の前部に昇降可能に設けた刈取装置(8)に、複数の引起タイン(26A,26B,26C)にて未刈穀稈を引起す多条刈り用の引起ケース(25A,25B,25C)を備えるコンバインにおいて、右引起ケース(25B)の下部従動輪(84)の右横側にチェン張出し部材(87)を設けることによって、前記各引起ケース(25A,25B,25C)のタインチェン(82)下部のうちで前記右引起ケース(25B)のタインチェン(82)下部のみを2輪(84)(87)で巻回すると共に、前記右引起ケース(25B)の前記下部従動輪(84)と前記チェン張出し部材(87)との間に、右引起タイン(26B)を下部回行途中で直線的に横移動させる横移動区間(88)を形成しているというものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記各下部従動輪(84)の下端部と前記チェン張出し部材(87)の下端部とをつなぐ接線に前記横移動区間(88)を沿わせるように、前記各下部従動輪(84)の下端部高さと前記チェン張出し部材(87)の下端部高さとを揃えているというものである。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によると、機台(3)の前部に昇降可能に設けた刈取装置(8)に、複数の引起タイン(26A,26B,26C)にて未刈穀稈を引起す多条刈り用の引起ケース(25A,25B,25C)を備えるコンバインにおいて、右引起ケース(25B)の下部従動輪(84)の右横側にチェン張出し部材(87)を設けることによって、前記各引起ケース(25A,25B,25C)のタインチェン(82)下部のうちで前記右引起ケース(25B)のタインチェン(82)下部のみを2輪(84)(87)で巻回すると共に、前記右引起ケース(25B)の前記下部従動輪(84)と前記チェン張出し部材(87)との間に、右引起タイン(26B)を下部回行途中で直線的に横移動させる横移動区間(88)を形成しているから、未刈側の引起し構造を従来仕様に維持しながら、引起タイン(26B)の引起し幅を右方向に(未刈側から既刈側に向けて)拡大でき、最も既刈側の未刈穀稈の引起し不良を防止して刈残し発生のおそれを少なくできる。
【0008】
また、請求項2の発明によると、前記各下部従動輪(84)の下端部と前記チェン張出し部材(87)の下端部とをつなぐ接線に前記横移動区間(88)を沿わせるように、前記各下部従動輪(84)の下端部高さと前記チェン張出し部材(87)の下端部高さとを揃えているから、引起ケース(25A,25B,25C)の取付数を増やすことなく刈取条数を簡単に増やせるものでありながら、拾い残しロス等も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】刈取部の側面図である。
【図5】刈取部の平面図である。
【図6】刈取部前部の拡大平面図である。
【図7】刈取部の駆動系統図である。
【図8】左右及び中央の引起ケースの前方視図である。
【図9】右と中央の引起ケースの前方視拡大図である。
【図10】刈刃の部分拡大平面図である。
【図11】刈刃の駆動説明図である。
【図12】刈刃のナイフヘッド部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの正面図であり、図中1は左右走行クローラ2を装設するトラックフレーム、3はトラックフレーム1上に架設する機台、4はフィードチェン5を左側に張架し扱胴6及び処理胴7を内蔵している脱穀部、8は脱穀部4の前方に装備する3条用の刈取装置である刈取部、9は排藁チェン10の終端を臨ませる排藁処理部、11は脱穀部4からの穀粒を揚穀筒12を介して搬入する穀粒タンク、13は穀粒タンク11の穀粒を搬出する排出オーガ、14は運転席15の前側にステアリングコラム16を介して丸形の走行ハンドル17を装備すると共に運転席15の左側のサイドコラム18に主変速レバー19及び副変速レバー20及び脱穀クラッチレバー21及び刈取クラッチレバー22等を配設する運転操作部、23は運転席15の下側に配設するエンジンであり、圃場の穀稈を連続的に刈取って脱穀するように構成している。
【0011】
図4は刈取部の側面図、図5は刈取部の平面図、図6は刈取部前部の拡大平面図、図7は刈取部の駆動系統図であり、3条用の刈取部8は、分草板24を介して取入れられる3条分の未刈穀稈を引起す刈取条数と同じ数の左右及び中央の3つの引起ケース25A,25B,25Cを前部に後傾姿勢で横に並べて立設させるもので、左引起ケース25Aと中央引起ケース25Cの間に左側1条分の未刈穀稈を取入れ、取入れた左側1条分の未刈穀稈の引起しを左引起ケース25Aから右向きに突出して下から上に移動する引起タイン26Aにより行い、また右引起ケース25Bと中央引起ケース25Cの間に残りの右側2条分の未刈穀稈を取入れ、取入れた右側2条分の未刈穀稈の引起しを右引起ケース25Bから左向きに突出して下から上に移動する引起タイン26Bと中央引起ケース25Cから左向きに突出して下から上に移動する引起タイン26Cにより行うように構成している。
【0012】
また、引起こされた左側1条分の未刈穀稈の稈元側を右斜め後方に掻込む左スターホイル27A及び突起付きの左掻込みベルト28Aを左引起ケース25Aの下部後方に配設し、また引起こされた右側1条分の未刈穀稈の稈元側を左斜め後方に掻込む右スターホイル27B及び突起付きの右掻込みベルト28Bを右引起ケース25Bの下部後方に配設すると共に、引起こされた中央1条分の未刈穀稈の稈元側を右斜め後方に掻込む中央スターホイル27C及び突起付きの中央掻込みベルト28Cを中央引起ケース25Cの下部後方に配設し、これら右及び中央のスターホイル27B,27C及び突起付きの掻込みベルト28B,28Cにより、引起こされた右側2条分の未刈穀稈の稈元側を、右引起ケース25Bと中央引起ケース25C間の導入通路中央後方で掻込み合流させるように構成している。
【0013】
そして、左右及び中央のスターホイル27A,28B,28C及び掻込みベルト28A,28B,28Cにより掻込み時に未刈り穀稈の稈元を3条同時に切断するバリカン型の刈刃29を備えると共に、右側2条分の刈稈の稈元側を左斜め後方に搬送する右下部搬送チェン30と、左側1条分の刈稈の稈元側及び穂先側を右斜め後方に搬送し稈元側を右下部搬送チェン30の送り終端部近傍に合流させる左下部搬送チェン31及び左上部搬送タイン32及び左穂先搬送タイン33と、右下部搬送チェン30の送り終端部近傍にて合流する3条分の刈稈の稈元側及び穂先側を脱穀部4のフィードチェン5の送り始端に受継ぎ搬送させる縦搬送チェン34及び上部搬送タイン35を備え、右下部搬送チェン30と縦搬送チェン34を平面視で略一直線状に設けて右引起ケース25Bの下部後方からフィードチェン5の送り始端部に略一直線状の下部搬送経路を形成し、また上部搬送タイン35を右引起ケース25Bの後方にまで延ばし、右引起ケース25Bの後方からフィードチェン5の送り始端部に略一直線状の上部搬送経路を形成し、これら略一直線状の上下搬送経路の途中に、左下部搬送チェン31及び左上部搬送タイン32によって形成されて左引起ケース25Aの後方から右斜め後方に延ばす左側の上下搬送経路の終端部を臨ませ、3条分の刈稈を平面視で大文字のY字ではなく小文字のy字形穀稈搬送経路によって刈取部8から脱穀部4のフィードチェン5に搬送させて脱穀処理させるように構成している。
【0014】
また、機台3の前端に固設する走行ミッション36と左走行クローラ2との間を通して脱穀部4の前側から前方斜め下方に突出させる刈取主フレームである縦伝動ケース37を備え、縦伝動ケース37の上端部にベベルギヤケース38を固設し、ベベルギヤケース38の左側にチェンケース39を固設し、チェンケース39の左側面下部とベベルギヤケース38の右側面から機体左右方向に水平に刈取部8の上下回動支点である左右刈取入力ケース40A,40Bを同一軸芯上で突出固定し、刈取入力ケース40A,40Bを機台3の前端に立設固定する左右軸受け台41A,41Bに回動自在に支持させる。
【0015】
また、縦伝動ケース37の下端に中間部を一体連結させて刈取部8の底部で機体左右方向に水平に横架させる横伝動ケース42を備え、機体左右方向に平行な前後バンパフレーム43A,43Bと機体前後方向に平行な左右バンパフレーム44A,44Bとで横伝動ケース42を包囲するような横長な四角枠形状のバンパ45を構成し、平面視でバンパ45の内側に横伝動ケース42を納めるように、横伝動ケース42の真下にバンパ45を一体に取付け、横伝動ケース42の前方に横架される前バンパフレーム43を横伝動ケース42及び後バンパフレーム43Bより長尺に形成して4条分の穀稈間隔と略同じ長さを与え、前バンパフレーム43を横伝動ケース42より右側に突出させた状態で、横伝動ケース42の前方に前バンパフレーム43を横架させる。
【0016】
また、刈取る3条の穀稈条のうち左側の穀稈条とその未刈側(左側)の未刈穀稈条の間を通過させる左外側刈取フレーム45Aと、刈取る3条の穀稈条のうち左側の穀稈条と中央の穀稈条の間を通過させる左内側刈取フレーム45Bと、刈取る3条の穀稈条のうち中央の穀稈条と右側の穀稈条の間を通過させる右内側刈取フレーム45Cと、刈取る3条の穀稈条のうち右側の穀稈条とその既刈側(右側)の既刈穀稈条との間を通過させる右外側刈取フレーム45Dの、4本の刈取フレーム45A,45B,45C,45Dを前バンパフレーム43から機体前方に向けて平行に一体延出している。
【0017】
そして、分草板24を各刈取フレーム45A,45B,45C,45Dの前端に取付け、左引起ケース25Aの後面下部を左外側刈取フレーム45Aに立設固定する左支持パイプ46Aに支持させ、右引起ケース25Bの後面下部を右外側刈取フレーム45Dに立設固定する右支持パイプ46Bに支持させ、中央引起ケース25Cの後面下部を左内側刈取フレーム45Bに立設固定する中央支持パイプ46Cに支持させると共に、横伝動ケース42の左右端部上面から前傾姿勢で上方に一体延出させる左右引起し伝動ケース47A,47Bと横伝動ケース42の略中央部前面側に固設するベベルギヤケース48の上面から前傾姿勢で上方に一体延出させる中央引起し伝動ケース47Cを設け、左右及び中央の引起ケース25A,25B,25Cの後面上部を左右及び中央の引起し伝動ケース47A,47B,47Cの上端に固設する引起し駆動ケースである左右及び中央のベベルギヤケース49A,49B,49Cにそれぞれ支持させ、左右及び中央の3つの引起ケース25A,25B,25Cを刈取部8の前部に後傾姿勢で横に並べて立設支持している。
【0018】
また、左右及び中央のスターホイル27A,28B,28C及び掻込みベルト28A,28B,28Cと、右下部搬送チェン30と、左下部搬送チェン31及び左上部搬送タイン32及び左穂先搬送タイン33を刈取フレーム45A,45B,45C,45D及び引起し伝動ケース47A,47B,47C等に支持させると共に、刈刃29を刈取フレーム45A,45B,45C,45Dの後部下側に横架固定されて前バンパフレーム43の長さと略同じ横幅を有する刈刃台50上に組付けている。
【0019】
そして、縦伝動ケース37と機台3の間に張架する刈取昇降シリンダ51の伸縮動作により、刈取部8を左右刈取入力ケース40A,40Bを支点に昇降させるように構成している。
【0020】
また、刈取部8の動力は入力部に直進用HST52Aと旋回用HST52Bを備えた走行ミッション36に設けるPTO軸53から取出すもので、エンジン23の出力軸54から直進用HST52Aの油圧ポンプ軸55にベルト伝動で動力を伝達し、直進用HST52Aの油圧ポンプ軸55から旋回用HST52Bの油圧ポンプ軸56に動力を伝達し、直進用HST52A及び旋回用HST52Bの各油圧モータを適宜駆動させて動力を走行ミッション36に伝達させ、左右走行クローラ2を同一回転方向で同一回転速度で駆動する機体の前後方向直進走行及び左右クローラ2を逆方向に駆動する左又は右旋回及び左右走行クローラ2を同一回転方向で異なる回転速度で駆動する進路修正を行わせるように構成している。
【0021】
そして、左右刈取入力ケース40A,40Bに刈取入力軸57を内挿し、右刈取入力ケース40Bの右側端部から突出させる刈取入力軸57に刈取入力プーリ58を設け、走行ミッション36のPTO軸53から刈取入力軸57にベルト伝動で、かつ、そのベルト伝動のテンションローラを刈取クラッチ59として用いて動力を継断自在に伝達している。刈取クラッチ59は刈取クラッチレバー22により入切り操作される。また縦伝動ケース37に縦伝動軸60を内挿すると共に、横伝動ケース42に横伝動軸61を内挿し、刈取入力軸57の中間部から縦伝動軸60の上端にベベルギヤ伝動で動力を伝達し、縦伝動軸60の下端から横伝動軸61の中間部にベベルギヤ伝動で動力を伝達している。また左右及び中央の引起し伝動ケース47A,47B,47Cに左右及び中央の引起し伝動軸62A,62B,62Cを内挿し、横伝動軸61の左右端部から左右引起し伝動軸62A,62Bの下端に直接ベベルギヤ伝動で動力を伝達すると共に、横伝動軸61の中間部からベベルギヤを介して前向きに動力を取出す伝動軸63を設け、伝動軸63の前端から中央引起し伝動軸62Cの下端にベベルギヤ伝動で動力を伝達し、左右及び中央のベベルギヤケース49A,49B,49Cから左右及び中央の引起ケース25A,25B,25Cの上部内側に突出させる左右及び中央の引起し駆動軸64A,64B,64Cを設け、左右及び中央の引起し伝動軸62A,62B,62Cの上端から左右及び中央の引起し駆動軸64A,64B,64Cにベベルギヤ伝動で動力を伝達している。また横伝動軸61中間の入力部と右端部の右引起し伝動軸62Bへの出力部の間の横伝動軸61からベベルギヤを介して上向きに動力を取出して右下部搬送チェン30を駆動スプロケット65を介して回転駆動させる右下部搬送駆動軸66を設け、左引起し駆動軸64Aの中間部から同じチェン伝動で、動力を下向きに取出す左下搬送駆動軸68及び動力を上向きに取出す左上搬送駆動軸69を設け、左下搬送駆動軸68の下端に設ける駆動スプロケット70を介して左下部搬送チェン31を回転駆動させ、左上搬送駆動軸69の上部に設ける駆動スプロケット71を介して左上部搬送タイン32を回転駆動させると共に、左上搬送駆動軸69の上端からベベルギヤを介してさらに上向きに動力を取出して左穂先搬送タイン33を駆動スプロケット72を介して回転駆動させる左穂先搬送駆動軸73を設けている。尚、左のスターホイル27A及び掻込みベルト28Aは左下部搬送チェン31に連動連結されてこれと一体に回転駆動され、右のスターホイル28B及び掻込みベルト28Bは右下部搬送チェン30に連動連結されてこれと一体に回転駆動され、中央のスターホイル28C及び掻込みベルト28Cは、右のスターホイル28Bに中央のスターホイル28Cが噛合い回転することで回転駆動される。また横伝動ケース42の左右端部前面からは後で説明する刈刃29を駆動するための左右刈刃駆動軸である左右クランク軸74A,74Bを内挿する左右刈刃駆動ケース75A,75Bが前向きに一体延出されると共に、横伝動軸61の左右端部から左右クランク軸74A,74Bの後端にベベルギヤ伝動で動力を伝達している。
【0022】
また、縦搬送チェン34及び上部搬送タイン35は、チェンケース39の左側面上部から左刈取入力ケース40Aと平行に突出固定させる筒軸76の端部に回動自在に嵌合する縦搬送駆動ケース77に後部が支持され、中間部が図示しない扱深調節機構を介して縦伝動ケース37に支持され、刈取部8と一体に縦搬送チェン34及び上部搬送タイン35を左右刈取入力ケース40A,40Bを支点にして昇降させると共に、刈取部8とは別に縦搬送チェン34及び上部搬送タイン35のみを筒軸76を支点に上下に揺動させる扱深調節動作を行わせるように構成している。筒軸76に横伝動軸78を内挿し、刈取入力軸57の左端部から横伝動軸78の右端部にチェンケース39内のチェン伝動で動力を伝達すると共に、縦搬送駆動ケース77に縦搬送チェン34及び上部搬送タイン35の共通の縦搬送駆動軸79を略上下方向に軸支し、横伝動軸78の左端部から縦搬送駆動軸79の中間部にベベルギヤ伝動で動力を伝達し、縦搬送駆動軸79の下端に設ける駆動スプロケット80を介して縦搬送チェン34を回転駆動させ、縦搬送駆動軸79の上端に設ける駆動スプロケット81を介して上部搬送タイン35を回転駆動させている。
【0023】
図8は左右及び中央の引起ケースの前方視図、図9は右と中央の引起ケースの前方視拡大図であり、各引起ケース25A,25B,25Cは、引起タイン26A,26B,26Cを一定ピッチで起伏自在に取付けるタインチェン82を、引起ケース25A,25B,25Cの内部上側に突出させた引起し駆動軸64A,64B,64Cに嵌合する上部駆動輪である上部駆動スプロケット83と、引起ケース25A,25B,25Cの内部下側に支軸84aを介して回転自在に軸支する下部従動輪である下部従動ローラ84を介して内部に上下方向に張設し、左と中央の引起ケース25A,25Cのタインチェン82を前方視で時計方向に所定速度で回転させ、また右の引起ケース25Bのタインチェン82を前方視で反時計方向に他のタインチェン82と同じ速度で回転させることにより、下部回行部の直前で各引起タイン26A,26B,26Cをタイン起し85に当設させてタインチェン82から略直角に起立させると共に、その起立状態を下部回行部及び上向き直走部を移動する間図示しないタインガイドを介して保持させ、各引起タイン26A,26B,26Cを下部回行部及び上向き直走部で各引起ケース25A,25B,25Cの外部に突出させ、左引起ケース25Aと中央引起ケース25Cの間に取入れる左側1条分の未刈穀稈の引起しを、引起ケース24Aから右向きに突出して下から上に移動する左引起タイン26Aにより行い、右引起ケース25Bと中央引起ケース25Cの間に取入れる右側2条分の未刈穀稈の引起しを、右引起ケース25Bから左向きに突出して下から上に移動する引起タイン26Bと中央引起ケース25Cから左向きに突出して下から上に移動する引起タイン26Cにより行うように構成している。
【0024】
また、タインチェン82のテンションローラ86を、駆動スプロケット83の下向き回転側の横側に、引起し駆動軸64A,64B,64Cを支点に所定範囲で上下揺動可能で、かつ、図示しないテンションバネ力を常時上方に付勢する図示しないテンションアームを介して支持し、テンションローラ86によってタインチェン82の弛みを取るようにしている。
【0025】
そして、右引起ケース25Bの下部従動ローラ84の下向き回転側の横側にチェン張出し部材であるチェン張出しローラ87を設け、チェン張出しローラ87と下部従動ローラ84の間に左引起タイン26Bを下部回行途中で直線的に横移動させる横移動区間88を形成し、左と中央の引起ケース25A,25Cのタインチェン82を上部一輪下部二輪の三点張りで三角形状に張設するのに対し、右引起ケース25Bのタインチェン82を上部二輪下部二輪の四点張りで四角形状に張設し、最も既刈側の右引起ケース25Bにおける引起タイン26B先端の下部回行半径を引起し作用側と反対側である既刈側に延ばし、左引起タイン26Aの下部回行部における未刈穀稈の掻込み(取込み)作用範囲を引起し作用側と反対側である既刈側に拡張し、最も既刈側の未刈穀稈の引起し不良による刈残しを防止するように構成するもので、このとき、チェン張出しローラ87を設けた右引起ケース25Bのタインチェン82を、チェン張出しローラ87を設けていない左及び中央の引起ケース25A,25Cのタインチェン82と同じものを使用し、かつ、チェン張出しローラ87を設けた引起ケース25Bの引起タイン25Bとチェン張出しローラ87を設けていない引起ケース25A,25Cの引起タイン26A,26Bとの相対位置をずらすことなく一定に保つために、右引起ケース25Bの上部駆動スプロケット83の上向き回転から下向き回転に転じる点から下部従動ローラ84の下向き回転から上向き回転に転じる点までの距離が、右引起ケース25Bにチェン張出しローラ87を設けたことによって、チェン張出しローラ87を設けていない左及び中央の引起ケース25A,25Cの上部駆動スプロケット83の上向き回転から下向き回転に転じる点から下部従動ローラ84の下向き回転から上向き回転に転じる点までの距離より長くなる寸法Tだけ、チェン張出しローラ87を設けた右引起ケース25Bの上部駆動スプロケット83及びテンションローラ86を、チェン張出しローラ87を設けていない左及び中央の引起ケース25A,25Cの上部駆動スプロケット83及びテンションローラ86より低い位置に設けている。
【0026】
図10は刈刃の部分拡大平面図、図11は刈刃の駆動説明図、図12は刈刃のナイフヘッド部の断面図であり、図5及び図6にも示すように、刈刃29は、4条分の刈幅を有する一枚の固定刃部89と、固定刃部89の上に重ね合わせる4条分の刈幅を有する可動刃部を略中央部で左右に分割して形成する略2条分の刈幅を有する左右の可動刃部90A,90Bからなり、固定刃部89は刈刃台50に多数の固定刃91を一定ピッチでリベット止めしてなり、左右の可動刃部90A,90Bは刈刃台50の略半分の横幅を有するナイフバー92と、ナイフバー92の端から端に固定刃91と同じピッチでリベット止めする多数の可動刃93と、数枚の可動刃93と共にナイフバー92にリベット止めするナイフヘッド94からなり、刈刃台50にボルト・ナットで摩擦板及び調整板と共に締付け固定する複数の刃押え95によって、左右の可動刃部90A,90Bを固定刃部89の上面に機体左右方向にのみ往復移動自在に重合支持している。
【0027】
また、横伝動ケース42の左端部前面から左可動刃部90Aを往復駆動させる左刈刃駆動軸である左クランク軸74Aの主軸(ジャーナル)96Aを内挿する左刈刃駆動ケース75Aを前向きに一体延出させると共に、横伝動ケース42の右端部前面から右可動刃部90Bを往復駆動させる右刈刃駆動軸である右クランク軸74Bの主軸(ジャーナル)96Bを内挿する右刈刃駆動ケース75Bを前向きに一体延出させ、また左刈刃駆動ケース75Aの前端から突出させる左クランク軸74Aの主軸96Aの前端に左クランク軸74Aのクランクアーム97Aの基端を嵌合固定し、クランクアーム97Aの先端から主軸96Aと平行に左クランク軸74Aのクランクピン98Aを前方に向けて突出させると共に、右刈刃駆動ケース75Bの前端から突出させる右クランク軸74Bの主軸96Bの前端に右クランク軸74Bのクランクアーム97Bの基端を嵌合固定し、クランクアーム97Bの先端から主軸96Bと平行に右クランク軸74Bのクランクピン98Bを前方に向けて突出させ、また左クランク軸74Aの主軸96Aの後端を横伝動ケース42の左端部内側に臨ませ、横伝動軸61の左端部に左クランク軸74Aの主軸96Aの後端をベベルギヤ99A,99Bを介して連動連結させると共に、右クランク軸74Bの主軸96Bの後端を横伝動ケース42の右端部内側に臨ませ、横伝動軸61の右端部に右クランク軸74Bの主軸96Bの後端を前記ベベルギヤ99A,99Bと同じ方向で噛合わせるベベルギヤ100A,100B介して連動連結させ、主軸96A及びクランクアーム97A及びクランクピン98Aからなる左クランク軸74Aと主軸96B及びクランクアーム97B及びクランクピン98Bからなる左クランク軸74Aと同じ右クランク軸74Bを同じ一方向に同速度で回転させ、かつ、左クランク軸74Aのクランクピン98Aの回転位置と右クランク軸74Bのクランクピン98Bの回転位置が180度又は略180度異なるように、左右のクランク軸74A,74Bの位相を180度又は略180度異ならせて、同じ一方向に同速度で回転させる。
【0028】
そして、左右の可動刃部90Aのナイフヘッド94後端に開放部を後方に向ける断面コの字形のガイドレール101を左右クランク軸74A,74Bの主軸96A,96Bと直角に立設固定させ、左右のクランク軸74A,74Bの位相を180度又は略180度異ならせた状態で、左クランク軸74Aのクランクピン98Aをベアリング102Aを介して嵌合させると共に、右クランク軸74Bのクランクピン98Bをベアリング102Bを介して嵌合させ、位相を180度又は略180度異ならせて同じ一方向に同速度で回転させる左右のクランク軸74A,74Bにより、左右の可動刃部90A,90Bを相反する方向に往復駆動させ、バリカン型の刈刃29による左右方向の振動と共に、クランク軸74A,74Bと直交する方向の振動も同時に低下させるように構成している。
【0029】
また、左右のクランク軸74A,74Bのクランクピン98A,98Bの軸芯の回転軌跡が固定刃部89と左右の可動刃部90A,90Bの合せ面103より上方にできるように、左右のクランク軸74A,74Bを固定刃部89と左右の可動刃部90A,90Bの合せ面103より上方で回転させ、左右の可動刃部90A,90Bにこの刃先を固定刃部89から持ち上げる力をかけて切断性能を低下させるのを防止するように構成している。
【0030】
また、横伝動ケース42の左端部前面から左可動刃部90Aを往復駆動させる左刈刃駆動軸である左クランク軸74Aの主軸(ジャーナル)96Aを内挿する左刈刃駆動ケース75Aを前向きに一体延出させると共に、横伝動ケース42の右端部前面から右可動刃部90Bを往復駆動させる左刈刃駆動軸である左クランク軸74Bの主軸(ジャーナル)96Bを内挿する左刈刃駆動ケース75Bを前向きに一体延出させ、左右のクランク軸74A,74B部全体を引起し後の穀稈を掻込む掻込み部材である左右のスターホイル27A,27Bの下方に配設し、左右のクランク軸74A,74B部に刈稈が引っかかる等して搬送性能を低下させるのを防止すると共に、左右のクランク軸74A,74B部に藁屑が付着したり巻付くのを防止するように構成している。
【符号の説明】
【0031】
25A,25B,25C 引起ケース
26A,26B,26C 引起タイン
82 タインチェン
83 上部駆動スプロケット(上部駆動輪)
84 下部従動ローラ(下部従動輪)
87 チェン張出しローラ(チェン張出し部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台(3)の前部に昇降可能に設けた刈取装置(8)に、複数の引起タイン(26A,26B,26C)にて未刈穀稈を引起す多条刈り用の引起ケース(25A,25B,25C)を備えるコンバインにおいて、
右引起ケース(25B)の下部従動輪(84)の右横側にチェン張出し部材(87)を設けることによって、前記各引起ケース(25A,25B,25C)のタインチェン(82)下部のうちで前記右引起ケース(25B)のタインチェン(82)下部のみを2輪(84)(87)で巻回すると共に、前記右引起ケース(25B)の前記下部従動輪(84)と前記チェン張出し部材(87)との間に、右引起タイン(26B)を下部回行途中で直線的に横移動させる横移動区間(88)を形成している、
コンバイン。
【請求項2】
前記各下部従動輪(84)の下端部と前記チェン張出し部材(87)の下端部とをつなぐ接線に前記横移動区間(88)を沿わせるように、前記各下部従動輪(84)の下端部高さと前記チェン張出し部材(87)の下端部高さとを揃えている、
請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−27410(P2013−27410A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246200(P2012−246200)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2012−97030(P2012−97030)の分割
【原出願日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】