説明

コンバイン

【課題】車速に同調して駆動する刈取部を備えながらも、機体を停止又は後退させた場合には、作業者の任意のタイミングで車速とは無関係に刈取部を駆動させることのできるコンバインを提供する。
【解決手段】
走行部を有して自走可能となした機体本体の前方に刈取部を連結し、機体本体の走行部に刈取部を連動連結して、刈取部の刈取速度と走行部の走行速度を同調させたコンバインにおいて、走行部を走行停止又は後退させた場合にも、刈取部を強制的に駆動させる刈取部強制駆動手段を設けているので、走行部を走行停止又は後退させた場合に車速とは関係無く掻き込みリールを回転させることができ、走行車体を後退させるときでも掻き込みリールにより穀稈を取り込むことができる。これにより、特に畦際での作業性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンバインに関し、より詳しくは汎用コンバインの刈取部の駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、かかるコンバインは、機体の前方に刈取部を有して、刈取部で刈り取った穀稈の全てを機体に設けた脱穀部に投入して脱穀する全稈投入型である。
【0003】
刈取部は、圃場に植立した穀稈を掻き込む掻込リールと、掻込リールにより掻き込まれた穀稈の株元を切断する刈刃装置と、刈刃装置により刈り取られた穀稈を掻き込みながら横送りする掻込オーガを横架したプラットフォームと、掻込オーガにより横送りされた穀稈を後方へ搬送する搬送コンベアを内蔵したフィーダハウスとを具備している。
【0004】
これら刈取部の各作動部は、たとえば本機に搭載したエンジンから動力を受けて作動されるが、中でも、機体の走行速度と同調させて、刈取作業をより円滑に行うことができるよう構成したものが知られている。
【0005】
すなわち、機体の進行速度が速ければ刈取部の各作動部を高速動作させ、進行速度が遅ければ低速動作させるようにしており、また、機体が停止した時や後退時には、刈取部の各作動部は停止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−225761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンバインによる刈取作業の一例として、図14(a)に示すように、まず、圃場302の畦300近傍に植立する穀稈301から刈取を開始する場合がある。
【0008】
畦300に沿って機体303を進行させ、図14(b)のように圃場302の端まで刈取を終えると、方向転換を行うために機体303を一旦停止させ、その後、図14(c)に示すように所定距離だけ後退させて未刈り領域に斜めに機体303を進行させて旋回スペースの確保を行う必要がある。
【0009】
しかしながら、速度に同調して駆動する刈取部を備えた上記従来のコンバインでは、圃場端にて機体を停止させると、刈取部も停止することとなる。
【0010】
それゆえ、プラットフォーム内に収容された刈り終いの穀稈の一部は、機体の停止やその後の後退に伴って、掻込リールや掻込オーガによる掻込作用を受けることなく、後退の反動や慣性によってプラットフォームから脱落してしまう場合があった。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、車速に同調して駆動する刈取部を備えながらも、機体を停止又は後退させた場合には、作業者の任意のタイミングで車速とは無関係に刈取部を駆動させることのできるコンバインを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る本発明では、走行部を有して自走可能となした機体本体の前方に刈取部を連結し、機体本体の走行部に刈取部を連動連結して、刈取部の刈取速度と走行部の走行速度を同調させたコンバインにおいて、走行部を走行停止又は後退させた場合にも、刈取部を強制的に駆動させる刈取部強制駆動手段を設けることとした。
【0013】
また、請求項2に係る発明では、請求項1記載のコンバインにおいて、刈取部強制駆動手段を操作する操作体は、踏み込み式のペダルとなしたことに特徴を有する。
【0014】
また、請求項3に係る発明では、請求項1又は請求項2に記載のコンバインにおいて、刈取部には回転動作により圃場の穀桿を掻き込み可能とした掻き込みリールを昇降可能に設け、刈取部強制駆動手段の作動に、掻き込みリールの下降を連動させたことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、走行部を有して自走可能となした機体本体の前方に刈取部を連結し、機体本体の走行部に刈取部を連動連結して、刈取部の刈取速度と走行部の走行速度を同調させたコンバインにおいて、走行部を走行停止又は後退させた場合にも、刈取部を強制的に駆動させる刈取部強制駆動手段を設けることとしたため、車速に同調して駆動する刈取部を備えながらも、機体を停止又は後退させた場合には、作業者の任意のタイミングで車速とは無関係に刈取部を駆動させることのできるコンバインを提供することができる。またこれにより、特に畦際での作業性を向上させることができる。
【0016】
また、請求項2に係る発明によれば、刈取部強制駆動手段を操作する操作体は、踏み込み式のペダルとなしているので、例えば旋回スペースの確保時に、ハンドル操作や各レバーの操作などによって両手がふさがっている場合でも、作業者の任意のタイミングで車速とは無関係に刈取部を駆動させることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明によれば、刈取部には回転動作により圃場の穀桿を掻き込み可能とした掻き込みリールを昇降可能に設け、刈取部強制駆動手段の作動に、掻き込みリールの下降を連動させるので、刈り終いの穀稈の掻き込み性を向上させると共に、穀稈の取りこぼしを可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るコンバインの全体構成を示した左側面図である。
【図2】本実施形態に係るコンバインの全体構成を示した右側面図である。
【図3】本実施形態に係るコンバインの刈取部を示した左側面図である。
【図4】本実施形態に係るコンバインの刈取部を示した正面図である。
【図5】本実施形態に係るコンバインの刈取部を示した平面図である。
【図6】本実施形態に係るコンバインの刈取部の右側面図である。
【図7】本実施形態に係るコンバインの刈取部を示した背面図である。
【図8】本実施形態に係るコンバインの動力伝達機構図である。
【図9】本実施形態に係るコンバインの油圧回路を示した説明図である。
【図10】本実施形態に係るコンバインの運転部を示した平面図である。
【図11】本実施形態に係るコンバインの電気的構成を示した説明図である。
【図12】作業コントローラにて実行される刈取部強制駆動処理のフローである。
【図13】変形例に係るコンバインの動力伝達の構成を示した説明図である。
【図14】圃場での刈取の様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ式の走行部2,2の直上方に機体3を配置して、機体3の前方に刈取部4を取り付けている。機体3には、左側に脱穀部5と選別部6を上下段に配置し、これらの直後方に排藁処理部7を配置する一方、右側に運転部8と穀粒貯留部9と原動機部10を前後方向に順次配置している。符号11は原動機部10に設けたエンジン、符号12は穀粒貯留部9に連通連設した袋詰め用搬出体、符号75は穀粒貯留部9に連通連設した搬出オーガである。
【0021】
走行部2,2は、機体3の下部に取り付けられた走行フレーム53の後端部にミッションケース57(図8参照)を介して駆動輪54を配設するとともに、走行フレーム53の前端部に遊動輪55を回転自在に軸支し、これら駆動輪54と遊動輪55との間に履帯56を巻回して構成しており、エンジン11の駆動力をミッションケース57を介して走行部2,2に伝達させることで自走可能としている。
【0022】
刈取部4は、フィーダハウス20とプラットフォーム21と刈刃装置22と左右一対のデバイダ23,23と掻込リール24とを具備している。
【0023】
具体的には、図3〜図5に示すように、フィーダハウス20は前後方向に伸延する四角形筒状に形成して、内部には刈り取った穀稈を前方から後方に搬送する搬送コンベア27(図8参照)を配設している。そして、フィーダハウス20は運転部8の左側下方に配置するとともに、機体3の前部に後端部を昇降自在に枢支して、昇降油圧シリンダ26(図1又は図2参照)により昇降位置調節可能としている。また、図8に示すように、搬送コンベア27は駆動軸28と従動ドラム29との間に搬送ベルト30を巻回して形成している。
【0024】
プラットフォーム21は、機体3の左右幅と略同一幅で前方が開口するケーシング状に形成して、フィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)に左側部を連通連結し、内部に左右方向に回動軸芯を向けたオーガ支軸32を介して掻込オーガ25を横架している。掻込オーガ25は後述する刈刃装置22により刈り取られた穀稈をプラットフォーム21内に掻き込むとともに、フィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)内に横送り搬入するようにしている。
【0025】
刈刃装置22は、左右方向に伸延するバリカン型に形成しており、プラットフォーム21の前端下部に、その前端全幅にわたって配設している。そして、植立穀稈の株元部を刈り取るようにしている。
【0026】
左右一対のデバイダ23,23は、それぞれプラットフォーム21の左右側壁から前方へ突設して、機体の前進走行に伴って植立穀稈を刈取側と非刈取側とに分草するようにしている。
【0027】
掻込リール24は、左右一対のデバイダ23,23間の上方に掻込回転自在に配置して、両デバイダ23,23により分草された刈取側の植立穀稈をプラットフォーム21側に回転しながら掻き込むようにしている。
【0028】
この掻込リール24及びその支持構造についてより具体的に説明すると、プラットフォーム21の後端上部には、左右方向に軸線を向けたアーム支軸40が横架されている。このアーム支軸40の左右側端部には、前後方向に伸延する左右一対の支持アーム41,41の基端部(後端部)を枢支している。そして、各支持アーム41の中途部とプラットフォーム21の側壁との間にリール昇降シリンダ42を介設して、アーム支軸40を中心に両支持アーム41,41を昇降可能としている。
【0029】
両支持アーム41,41の先端部(前端部)間には、左右方向に伸延するリール支軸43(図5参照)をその軸芯廻りに回転自在に軸架するとともに、リール支軸43を前後方向に位置調節自在としている。リール支軸43の左右側端部には、左右一対の回転支持体44,44を左右に対向させてそれらの中心部を取り付けている。両回転支持体44,44は、金属製の板状体を正五角形状に形成して、左右に対向する各角部(頂部)間にタインバー枢支体45を介して左右方向に伸延するパイプ(円管)状のタインバー46をその軸線廻りに回転自在に横架している。各タインバー46には、左右方向に一定の間隔を開けて複数のタイン47を垂下状に取り付けている。
【0030】
このようにして、リール支軸43を左側面視(例えば図3)にて反時計廻りに回転させると、リール支軸43に取り付けた左右一対の回転支持体44,44も反時計廻りに回転して、両回転支持体44,44間にタインバー46を介して取り付けたタイン47は回転支持体44の外周廻りに移動する。この際、タイン姿勢保持機構51は、回転移動するタイン47の内、少なくとも植立穀稈に作用するタイン47は所定の垂下姿勢に保持して、かかる垂下姿勢に保持されたタイン47が植立穀稈に掻き込み作用するようにしている。
【0031】
上記のように構成した刈取部4は、左右一対のデバイダ23,23により分草した植立穀稈を分草して、その分草した刈取側の植立穀稈を掻込リール24により掻き込むとともに、その掻き込まれた植立穀稈の株元部を刈刃装置22により刈り取って、プラットフォーム21内に掻き込むようにしている。そして、プラットフォーム21内に掻き込まれた穀稈を掻込オーガ25によりフィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)に横送り搬入させ、さらには、全穀稈をフィーダハウス20内の搬送コンベア27により後方の機体3に配設した脱穀部5に搬入(投入)するようにしている。
【0032】
上記のような構成において、図6〜図8に示すように、本実施形態にかかるコンバイン1の動力伝達構造は、次のように構成されている。すなわち、機体3に搭載したエンジン11にはミッションケース57を連動連結し、同ミッションケースから延出させた車速同調軸200に搬送コンベア27の駆動軸28を連動連結し、搬送コンベア27の駆動軸28に主軸伝動機構60を介して刈取主軸61を連動連結し、更に刈取主軸61には、各作動部であるリール伝動機構62を介した掻込リール24と、オーガ伝動機構63を介した掻込オーガ25と、刈刃伝動機構64を介した刈刃装置22をそれぞれ連動連結している。
【0033】
具体的には、図7に示すように、フィーダハウス20の右側方において、プラットフォーム21の背面壁(後壁)21aに、左右方向に直状に伸延する刈取主軸61を横架し、刈取主軸61の左側端部と、フィーダハウス20の右側壁から右側外方へ突出させた搬送コンベア27の駆動軸28の右側端部28aとの間に、主軸伝動機構60を介設している。主軸伝動機構60は、駆動軸28の右側端部28aに取り付けた駆動スプロケット70と、刈取主軸61の左側端部に取り付けた従動スプロケット71との間に、主軸伝動チェン72を巻回して形成している。
【0034】
また、刈取主軸61の右側端部61aは、図6及び図7に示すように、プラットフォーム21の右側壁21bよりも右側方へ突出させて、この右側端部61aにリール伝動機構62とオーガ伝動機構63と刈刃伝動機構64の各基端部を連動連結している。
【0035】
リール伝動機構62は、刈取主軸61の右側端部61aにリール駆動スプロケット80を取り付ける一方、アーム支軸40の右側端部に同一軸芯上で突出した中間軸81に従動スプロケット82を回転自在に取り付けて、両スプロケット80,82間にリール伝動チェン83を巻回している(図6参照)。符号84はリール伝動チェン83を緊張方向に付勢するとともに回動案内する付勢兼案内体である。
【0036】
従動スプロケット82には駆動スプロケット85を同一軸芯上にて一体的に取り付ける一方、リール支軸43の右側端部には従動スプロケット86を取り付けて、両スプロケット85,86間に連動チェン87を巻回して連動機構52を形成している。
【0037】
オーガ伝動機構63は、刈取主軸61の右側端部61aにオーガ駆動スプロケット93をリール駆動スプロケット80の左側方に隣接位置させて同軸的に取り付ける一方、プラットフォーム21の右側壁21bより外方へ突出させたオーガ支軸32の右側端部にオーガ従動スプロケット94を取り付けて、両スプロケット93,94間にオーガ伝動チェン95を巻回して形成している。ここで、オーガ従動スプロケット94はオーガ駆動スプロケット93よりも大径に形成して、掻込オーガ25を減速回動させるようにしている。
【0038】
刈刃伝動機構64は、刈取主軸61の右側端部61aと、刈刃装置22の刈刃35との間に介設している。すなわち、刈取主軸61の右側端部61aに、前後方向に伸延する回動アーム101の基端部を取り付け、回動アーム101の先端部には前後方向に伸延する伝動ロッド102の基端部(後端部)を枢支連結している。伝動ロッド102の先端部にはリンク機構103を介して刈刃35の右側端部を連結している。リンク機構103は、上下方向の軸芯線廻りに回動して、伝動ロッド102の前後方向の往復摺動動作と、刈刃35の左右方向の往復摺動動作を連動させている。
【0039】
次に、図8に示す動力伝達機構図によって、エンジン11から搬送コンベア27までの動力伝達、及び、脱穀部5や選別部6への動力伝達について説明する。
【0040】
まず、エンジン11の出力軸110には、第1連動ベルト機構111を介して入力軸112を連動連結している。この入力軸112には、1対の油圧走行ポンプ及び油圧走行モータを設けて走行主変速用の油圧式無段変速機構を形成する走行変速部材73と、1対の油圧旋回ポンプ及び油圧旋回モータを設けて旋回用の油圧式無段変速機構を形成する旋回部材74とを連動連結している。
【0041】
これら走行変速部材73及び旋回部材74は、更にミッションケース57に連動連結されており、同ミッションケース57内に配設されているギア群(図示せず)を介して駆動輪54を駆動可能としている。なお、図8中において符号76は機体の車速を検出する車速センサである。
【0042】
また、ミッションケース57からは、駆動輪54の回動に同調して回動、換言すれば、車速に同調して回動する車速同調軸200を延出させている。この車速同調軸200は、ミッションケース57内のギア群に、所定方向の回転力をのみを伝達するワンウェイクラッチ(図示せず)を介して接続されており、機体3が前進している時のみ、その速度に同調して動力を伝達する。
【0043】
また、車速同調軸200は、第2ベルト機構201を介して同調切替軸205に連動連結している。また、第2ベルト機構201には、刈取クラッチ202が備えられており、車速同調軸200から同調切替軸205への動力の伝達を継断可能としている。
【0044】
この刈取クラッチ202には、刈取クラッチソレノイド203が配設されており、後述の作業コントローラ230によりこの刈取クラッチソレノイド203への通電制御が行われることにより、刈取クラッチ202の継断が行われる。より具体的には、刈取クラッチソレノイド203に通電が行われることで、刈取クラッチ202が接続状態となり、刈取クラッチソレノイド203への電力の供給が遮断されることで、刈取クラッチ202が切状態となる。
【0045】
同調切替軸205は、第3ベルト機構204を介して駆動軸28に連動連結している。前述のようにこの駆動軸28は、主軸伝動機構60を介して刈取主軸61に連動連結されており、コンバイン1の走行時に刈取クラッチ202が接続状態に操作されることで、刈取部4が車速に同調して動作するよう構成している。すなわち、走行部2,2に刈取部4を連動連結して、刈取部4の刈取速度と走行部2,2の走行速度を同調させている。なお、刈取クラッチ202は、後述の作業コントローラ230と共に、走行部2,2を走行停止又は後退させた場合にも、刈取部4を強制的に駆動させる刈取部強制駆動手段の一部を構成するものでもある。
【0046】
次に、エンジン11から脱穀部5や選別部6への動力伝達について説明する。
【0047】
エンジン11の出力軸110には、第4連動ベルト機構113、第1中間軸210、第5連動ベルト機構114を介してエンジン同調軸211を連動連結している。第4連動ベルト機構113の中途に示す符号117は脱穀テンションクラッチである。
【0048】
エンジン同調軸211には、脱穀部5に配設した軸流型扱胴120の扱胴支軸121が、第6連動ベルト機構212、第2中間軸220、笠歯車機構221、第3中間軸222、及び第7ベルト連動機構213を介して連動連結されている。
【0049】
また、選別部6に配設した唐箕130と第1コンベア131と第2コンベア132と揺動選別体133には、それぞれ唐箕支軸134と第1コンベア支軸135と第2コンベア支軸136と揺動作用軸137とを平行させて配置している。
【0050】
そして、エンジン同調軸211と揺動作用軸137との間に第9ベルト機構215を介設し、揺動作用軸137と第2コンベア支軸136との間に第10ベルト機構216を介設し、第2コンベア支軸136と第1コンベア支軸135との間に第11ベルト機構217を介設している。
【0051】
また、第11ベルト機構217には中間プーリ219が配設されており、同中間プーリ219より延出させた第4中間軸223と唐箕支軸134とを第12ベルト機構218を介して連動連結させている。
【0052】
このように、エンジン11の駆動力は、走行部2、刈取部4、脱穀部5及び選別部6にそれぞれ伝達されて、各作動部が堅実に作動されるようにしている。
【0053】
またエンジン11には、図8及び図9に示すように前述の掻込リール24の昇降やプラットフォーム21の昇降、搬出オーガ75の昇降を行うための油圧を発生させる油圧ポンプ169が接続されている。
【0054】
この油圧ポンプ169は、図9に示すように、前述の掻込リール24の昇降を行うリール昇降シリンダ42や、刈取部の昇降を行う昇降油圧シリンダ26や、搬出オーガ75を昇降させる搬出オーガシリンダ176a等を駆動するための油圧回路に油圧を供給するためのものである。
【0055】
特に、リール昇降シリンダ42は、リール昇降油圧回路171内の油路170を介して、油圧ポンプ169にて発生させた圧油の供給を受けて作動するよう構成している。
【0056】
リール昇降油圧回路171内の油路170の中途にはスプリングセンタ型の油圧切換弁装置165を介設しており、同油圧切換弁装置165は、油圧切換弁165aと、下降用油圧切換ソレノイド165bと、上昇用油圧切換ソレノイド165cとを備えている。
【0057】
下降用油圧切換ソレノイド165bと、上昇用油圧切換ソレノイド165cは後述の作業コントローラ230に電気的に接続されており、作業コントローラ230によって、これらの油圧切換ソレノイド165b,165cへの通電制御を行うことによって、油圧切換弁装置165の切替を行い、掻込リール24を昇降可能としている。
【0058】
具体的には、下降用油圧切換ソレノイド165bが作業コントローラ230の制御によって励磁されると掻込リール24は下降し、上昇用油圧切換ソレノイド165cが励磁されると掻込リール24は上昇する。また、下降用油圧切換ソレノイド165bと、上昇用油圧切換ソレノイド165cとの何れのソレノイドも励磁されていない時は、油圧切換弁165aは中立位置となり、掻込リール24の上下位置は固定される。なお、図9中、符号172はパイロットチェック弁、符号173及び符号174はリリーフ弁、符号175は刈取部昇降油圧回路、符号176はオーガ昇降油圧回路、符号176aは搬出オーガシリンダである。
【0059】
ここで図8の説明に戻り、上述してきた動力伝達機構において、本実施形態に係るコンバイン1に特徴的には、前述の同調切替軸205とエンジン同調軸211とを、刈取部強制駆動クラッチ224を備えたエンジン同調動力伝達機構225を介して連結させている。
【0060】
この刈取部強制駆動クラッチ224には、刈取クラッチ202と同様、作業コントローラ230によって駆動制御される刈取部強制駆動クラッチソレノイド226を備えており、エンジン同調軸211から同調切替軸205への動力の伝達を継断可能としている。
【0061】
具体的には、後述の作業コントローラ230によって、この刈取部強制駆動クラッチソレノイド226への通電制御が行われることにより、刈取部強制駆動クラッチ224の継断が行われる。付言すれば、刈取部強制駆動クラッチソレノイド226に通電されることで、刈取部強制駆動クラッチ224が接続状態となり、刈取部強制駆動クラッチソレノイド226への電力の供給が遮断されることで、刈取部強制駆動クラッチ224が切状態となる。この刈取部強制駆動クラッチ224もまた、後述の作業コントローラ230と共に刈取部強制駆動手段の一部を構成するものである。
【0062】
そして、後に図12のフローを用いて説明するが、刈取部強制駆動クラッチ224が接続される際には、作業コントローラ230によって、前述の刈取クラッチ202は切断される。この状態にあっては、車速に同調して刈取部4が駆動されることとなる。なお、以下の説明において、このようなクラッチの状態を単に「車速同調状態」とも言う。
【0063】
またその逆に、刈取クラッチ202が接続状態の場合には、作業コントローラ230によって刈取部強制駆動クラッチ224が切断される。この状態にあっては、エンジン11に同調して刈取部4が駆動される。換言すれば、車速に関係なく、刈取部4は駆動されることとなる。以下の説明において、このようなクラッチの状態を「エンジン同調状態」とも言う。
【0064】
すなわち、本実施形態に係るコンバイン1は、車速同調状態からエンジン同調状態へ切換可能な刈取部強制駆動手段を備えることで、圃場端にて機体の停止と共に刈取部4が停止しても、作業者の任意のタイミングで車速とは無関係に刈取部4を駆動させることができる。
【0065】
従って、プラットフォーム21内に収容された刈り終いの穀稈が、後退の反動や慣性によってプラットフォーム21から脱落してしまうのを防ぐことができる。
【0066】
また、この刈取部強制駆動手段は、機体3の走行停止又は後退時に作業者が任意のタイミングで所定の操作体を操作することにより作動する。特に本実施形態では、運転部8に備えられた踏み込み式のペダルを作業者が踏圧操作することにより、刈取クラッチ202を切断し、刈取部強制駆動クラッチ224を接続させて、刈取部4が車速と無関係に駆動するよう構成している。
【0067】
これは、先に図14を用いて説明した機体の切り返し動作の際に、刈取部強制駆動手段の稼働を容易とするためである。すなわち、前後進や旋回などの操作のために、左手でアクセルレバー166を把持し、右手で刈取部昇降操作レバー17を把持することで、左右両手がふさがっている場合であっても、作業者は足によって容易に刈取部強制駆動手段を稼働させることが可能となる。
【0068】
また、刈取部強制駆動手段の駆動、すなわち、車速同調状態からエンジン同調状態へ切換に伴い、掻込リール24の下降動作を連動させており、刈り終いの穀稈の掻き込み性を向上させると共に、穀稈の取りこぼしを可及的に防止可能としている。
【0069】
以下、上述の本実施形態に係るコンバイン1の要部構成について、更に具体的に説明する。
【0070】
機体3の刈取部4後方右側に設けられた運転部8には、図10に示すように、運転席13が設けられている。
【0071】
運転席13の左側方にはサイドコラム33を、前方にはフロント操作コラム34を設けており、サイドコラム33の前半部には内側方に主変速レバー15を外側方に副変速レバー16をそれぞれ配設し、サイドコラム33の後半部には内側方に脱穀クラッチレバー36を外側方に刈取クラッチレバー37をそれぞれ配設している。
【0072】
また、刈取クラッチレバー37には、同レバーの操作状態を検出するための刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aが配設されている。この刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aは、刈取クラッチレバー37が、刈取クラッチ202が接続される状態に操作されている場合にはONとなり、刈取クラッチ202が切断される状態に操作されている場合にはOFFとなるスイッチである。
【0073】
正面のフロント操作コラム34には、中央に刈取部昇降操作レバー17を、その右側方にリール昇降レバー18を、その左側方にアクセルレバー166をそれぞれ並列に配設している。なお、刈取部昇降操作レバー17は、機体の方向転換を行うための旋回操作レバーの役割も有しており、前後方向に傾倒することで刈取部4の昇降動作が行われ、左右方向に傾倒することで機体3の旋回動作が行われる。
【0074】
また、運転席13に座した作業者の足元位置には、刈取部強制駆動手段を操作する操作体としての刈取部強制駆動ペダル19が配置されている。
【0075】
この刈取部強制駆動ペダル19には、作業者による踏圧操作を検出するためのペダル踏圧検出スイッチ19aが配設されており、作業者が刈取部強制駆動ペダル19を踏圧するとONとなり、作業者が踏圧していないとOFFとなるスイッチである。
【0076】
そして、上記ペダル踏圧検出スイッチ19a、刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aや、前述の車速センサ76は、図11に示すように、機体3の所定箇所に設けられた作業コントローラ230に電気的に接続されている。
【0077】
また、作業コントローラ230には、リール昇降油圧回路171に配設されている掻込リール24を昇降動作させるための油圧切換ソレノイド165bや、刈取クラッチ202の継断を行う刈取クラッチソレノイド203、刈取部強制駆動クラッチ224の継断を行う刈取部強制駆動クラッチソレノイド226が接続されている。なお、作業コントローラ230は、機体全体の制御統括を行う役割を担うものであり、刈取部昇降操作レバー17やリール昇降レバー18など、その他多くの装置類も接続されているが、ここでは理解を容易とするために説明を省略している。
【0078】
さらに、作業コントローラ230には、CPUやROM、RAM等が備えられている。CPUは、ROMなどに予め記憶されているプログラムに従って、前述の各レバーやスイッチから入力される信号に基づき、各ソレノイドを動作させて、車速同調状態とエンジン同調状態との切換を行う刈取部強制駆動処理を実行する。このように、刈取部強制駆動処理を実行する作業コントローラ230は、刈取部強制駆動手段の一部として機能する。
【0079】
また、RAMは一時記憶領域領域として機能するものであり、プログラムを実行する上で必要な変数や各種フラグの値などを記憶する。このRAMに記憶されるフラグとしては例えば、刈取部強制駆動ペダル19が踏圧されているか否か、また、有効なペダル操作であるか否かを示すペダル踏圧フラグがある。このペダル踏圧フラグは、作業者により刈取部強制駆動ペダル19が踏圧されると「1」の値をとり、踏圧されていないと「0」の値をとる。また、刈取部強制駆動ペダル19は踏圧されているものの、機体が停止又は後退中でなく、有効なペダル操作ではない場合にも「0」の値をとる。
【0080】
また、RAMには、刈取部強制駆動中であるか否かを示す刈取部強制駆動フラグがある。この刈取部強制駆動フラグは、刈取部強制駆動中であると「1」の値をとり、刈取部強制駆動中でなければ「0」の値をとる。
【0081】
作業コントローラ230にて実行される刈取部強制駆動処理は、コンバイン1の機体制御や作業者の操作応答などの機体全体を統括する処理(以下、メインルーチンという。)の一部として実行される。なおここでは、刈取部強制駆動処理について具体的に説明し、メインルーチンにおけるその他の各種処理についての説明は省略する。
【0082】
図12に示すように、刈取部強制駆動処理では、まずペダル踏圧検出スイッチ19aがONであるか否かについて判断を行う(ステップS10)。ここでペダル踏圧検出スイッチ19aがONであると判断した場合(ステップS10:Yes)には、CPUは処理をステップS11へ移す。
【0083】
ステップS11においてCPUはRAMの所定アドレスに割り当てられたペダル踏圧フラグの値を「1」に設定し、処理をステップS12へ移す。
【0084】
ステップS12においてCPUは、車速センサ76から送信される信号に基づいて、走行部2,2が停止中又は後退中であるか否かについて判断を行う。ここで走行部2,2が停止中又は後退中であると判断した場合(ステップS12:Yes)には、CPUは処理をステップS14へ移す。一方、走行部2,2が停止中又は後退中ではないと判断した場合(ステップS12:No)には、CPUは処理をステップS13へ移す。
【0085】
ステップS13においてCPUは、RAMの所定アドレスに割り当てられた刈取部強制駆動フラグの値が「1」であるか否かについて判断を行う。ここで刈取部強制駆動フラグの値が「1」であると判断した場合(ステップS13:Yes)には、CPUは処理をステップS14へ移す。一方、刈取部強制駆動フラグの値が「1」ではないと判断した場合(ステップS13:No)には、有効な刈取部強制駆動ペダル19の操作ではないとして、CPUは処理をステップS25へ移し、RAMの所定アドレスに割り当てられたペダル踏圧フラグの値を「0」に設定して、処理をメインルーチンへ戻す。
【0086】
ステップS14においてCPUは、刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aがONであるか否かについて判断を行う。ここで刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aがONであると判断した場合(ステップS14:Yes)には、CPUは処理をステップS15へ移し、刈取クラッチソレノイド203をOFFとして刈取クラッチ202を切り、車速同調軸200から同調切替軸205への動力の伝達を遮断して、処理をステップS16へ移す。一方、本ステップS14において刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aがONではないと判断した場合(ステップS14:No)には、CPUは処理をステップS16へ移す。
【0087】
ステップS16においてCPUは、刈取部強制駆動クラッチソレノイド226をONとして刈取部強制駆動クラッチ224を接続状態とし、エンジン同調軸211から同調切替軸205へ動力を伝達させる。
【0088】
すなわち、作業コントローラ230にて本ステップS16が実行されることにより、刈取部強制駆動手段が作動し、車速同調状態からエンジン同調状態への切換が行われる。本ステップS16を終えると、CPUは処理をステップS17へ移す。
【0089】
ステップS17においてCPUは、下降用油圧切換ソレノイド165bをON動作させ、リール昇降油圧回路171を下降状態に切り替えて、掻込リール24を下降させる。すなわち、刈取部強制駆動手段の作動に、掻き込みリールの下降が連動することとなる。本ステップS17を終えると、CPUは、刈取部強制駆動フラグの値を「1」に設定して(ステップS18)、処理をメインルーチンへ戻す。
【0090】
一方、ステップS10においてペダル踏圧検出スイッチ19aがONではないと判断した場合(ステップS10:No)には、CPUは処理をステップS19へ移す。
【0091】
ステップS19においてCPUは、ペダル踏圧フラグの値が「1」であるか否かについて判断を行う。ここでペダル踏圧フラグの値が「1」ではないと判断した場合(ステップS19:No)には、CPUは処理をメインルーチンへ戻す。一方、ペダル踏圧フラグの値が「1」であると判断した場合(ステップS19:Yes)には、CPUは処理をステップS20へ移す。
【0092】
ステップS20においてCPUは、刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aがONであるか否かについて判断を行う。ここで刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aがONであると判断した場合(ステップS20:Yes)には、CPUは処理をステップS21へ移し、刈取クラッチソレノイド203をONとして刈取クラッチ202を接続し、車速同調軸200から同調切替軸205へ動力を伝達させて、処理をステップS22へ移す。一方、本ステップS20において刈取クラッチレバー状態検出スイッチ37aがONではないと判断した場合(ステップS20:No)には、CPUは処理をステップS22へ移す。
【0093】
ステップS22においてCPUは、刈取部強制駆動クラッチソレノイド226をOFFとして刈取部強制駆動クラッチ224を切状態とし、エンジン同調軸211から同調切替軸205への動力を遮断して、処理をステップS23へ移す。
【0094】
ステップS23においてCPUは、下降用油圧切換ソレノイド165bをOFF動作させ、リール昇降油圧回路171の油圧切換弁165aを中立状態に切り替え、処理をステップS24へ移す。
【0095】
ステップS24においてCPUは、刈取部強制駆動フラグの値を「0」に設定し、処理をステップS25へ移す。
【0096】
ステップS25においてCPUは、ペダル踏圧フラグの値を「0」に設定し、処理をメインルーチンへ戻す。
【0097】
このように、本実施形態に係るコンバイン1は、これらの構成、すなわち、走行部2,2を有して自走可能となした機体3本体の前方に刈取部4を連結し、機体3本体の走行部2,2に刈取部4を連動連結して、刈取部4の刈取速度と走行部2,2の走行速度を同調させたコンバイン1において、走行部2,2を走行停止又は後退させた場合にも、刈取部4を強制的に駆動させる刈取部強制駆動手段(例えば、作業コントローラ230、第2ベルト機構201、刈取クラッチ202、エンジン同調動力伝達機構225、刈取部強制駆動クラッチ224)を設けることとしたため、車速に同調して駆動する刈取部4を備えながらも、機体3を停止又は後退させた場合には、作業者の任意のタイミングで車速とは無関係に刈取部4を駆動させることができる。
【0098】
〔変形例〕
次に、本実施形態に係るコンバイン1の変形例について図13を参照しながら説明する。前述したコンバイン1では、刈取クラッチ202及び刈取部強制駆動クラッチ224の切り換えを、ペダル踏圧検出スイッチ19aのON動作をトリガーとし、作業コントローラ230を介して電気的に行うこととしたが、本変形例では、刈取部強制駆動ペダル19の踏圧力を、ワイヤやリンク機構等の機械的構成により伝達し、刈取クラッチ202及び刈取部強制駆動クラッチ224の切り換えを行うように構成した点で構造を異にしてる。
【0099】
本変形例について具体的に説明すると、図13に示すように、第2ベルト機構201には、第1テンションクラッチ240と、第2テンションクラッチ241との2つのテンションクラッチで構成される刈取クラッチを配設し、また、エンジン同調動力伝達機構225には、刈取部強制駆動クラッチとして機能する第3テンションクラッチ242を配設すると共に、刈取クラッチレバー37の操作が第1ワイヤ機構250を介して第1テンションクラッチ240に伝達されるよう構成し、刈取部強制駆動ペダル19の踏圧操作が第2ワイヤ機構251及び第3ワイヤ機構252を介して、それぞれ第2テンションクラッチ241及び第3テンションクラッチ242に伝達されるよう構成している。
【0100】
第2ベルト機構201は、車速同調軸200に配設されたプーリ200aと、同調切替軸205に配設されたプーリ205aとの間に、車速同調系伝動ベルト201aを掛け回して構成されており、本変形例における第1テンションクラッチ240及び第2テンションクラッチ241は、この車速同調系伝動ベルト201aを緊緩させて、車速同調軸200から同調切替軸205へ伝達される動力の継断を行うこととしている。
【0101】
また、第1テンションクラッチ240は、後に説明する第1ワイヤ機構250による操作が行われていないとき、すなわち、自由状態のときには、車速同調系伝動ベルト201aに張力を与えない方向へ付勢されている。
【0102】
また、第2テンションクラッチ241は、後に説明する第2ワイヤ機構251による操作が行われていない自由状態のときには、車速同調系伝動ベルト201aに張力を与える方向へ付勢されている。
【0103】
また、第2ベルト機構201は、第1テンションクラッチ240又は第2テンションクラッチ241のいずれか一方が車速同調系伝動ベルト201aに張力を付与しただけでは動力を伝達せず、第1テンションクラッチ240と第2テンションクラッチ241との両者によって張力が付与されたときに、各プーリ200a,205aと車速同調系伝動ベルト201aとの間の摩擦が十分となって動力が伝達されるよう構成している。
【0104】
第1ワイヤ機構250は、チューブ状のアウターワイヤと、同アウターワイヤの内部を挿通するインナーワイヤとで構成される、所謂摺動ワイヤ250aを備えており、図13に示すように、刈取クラッチレバー37を破線で示す水平位置から、実線で示す傾斜位置に変位させることで、破線で示す離隔位置にある第1テンションクラッチ240を、実線で示す近接位置に、付勢力に抗して変位可能としている。
【0105】
第2ワイヤ機構251もまた、第1ワイヤ機構250と同様に摺動ワイヤ251aを備えており、その一端側は刈取部強制駆動ペダル19の下部に配設されているリンク機構253の揺動桿253aに接続されている。
【0106】
このリンク機構253は、刈取部強制駆動ペダル19の踏圧動作を、摺動ワイヤ251aの引張動作に変換する機構として設けられており、作業者によって刈取部強制駆動ペダル19が踏圧されると、ペダル桿253cが下降動作し、同ペダル桿253cの下端部に揺動自在に連結された揺動桿253aが揺動支軸253bを中心に、実線で示す状態から破線で示す状態に変位して、摺動ワイヤ251aを引張することとなる。なお、ペダル桿253cは、図示しない弾性体によって上方へ付勢されており、作業者が刈取部強制駆動ペダル19から足を離すと、実線で示す位置まで復帰するよう構成している。
【0107】
第2ワイヤ機構251の摺動ワイヤ251aの他端側は、第2テンションクラッチ241に接続されており、刈取部強制駆動ペダル19が踏圧されることにより摺動ワイヤ251aが引張されると、実線で示す近接位置にある第2テンションクラッチ241は、破線で示す離隔位置に付勢力に抗して変位する。
【0108】
エンジン同調動力伝達機構225は、エンジン同調軸211に配設されたプーリ211aと、同調切替軸205に配設されたプーリ205bとの間に、強制駆動系伝動ベルト225aを掛け回して構成しており、第3テンションクラッチ242は、この強制駆動系伝動ベルト225aを緊緩させて、エンジン同調軸211から同調切替軸205へ伝達される動力の継断を行う。
【0109】
第3テンションクラッチ242は、後に説明する第3ワイヤ機構252による操作が行われていない自由状態のときには、強制駆動系伝動ベルト225aに張力を与えない方向へ付勢されている。
【0110】
第3ワイヤ機構252もまた、第1ワイヤ機構250及び第2ワイヤ機構251と同様に、摺動ワイヤ252aを備えており、その一端側は刈取部強制駆動ペダル19の下部に配設されているリンク機構253の揺動桿253aに接続されている。
【0111】
また、摺動ワイヤ252aの他端側は、第3テンションクラッチ242に接続されており、刈取部強制駆動ペダル19が踏圧されることにより摺動ワイヤ252aが引張されると、破線で示す離隔位置にある第3テンションクラッチ242は、実線で示す近接位置に付勢力に抗して変位することとなる。
【0112】
そして、このような本変形例に係るクラッチ機構によれば、第2テンションクラッチ241や第2ワイヤ機構251、第3テンションクラッチ242、第3ワイヤ機構252、リンク機構253等が刈取部強制駆動手段として機能することにより、次のように動作することとなる。
【0113】
すなわち、図13にて実線で示すように、刈取クラッチレバー37を傾斜位置とし、刈取部強制駆動ペダル19を踏圧せずに圃場に植立する穀稈に向けて機体3を前進させると、刈取部4は車速に同調しながら駆動して、穀稈の掻込み動作を行う。
【0114】
この状態で機体を停止又は後退させると、刈取部4もまた停止することとなるが、作業者が刈取部強制駆動ペダル19を踏圧することで、第2テンションクラッチ241が実線で示す近接状態から破線で示す離隔状態に変位して、車速同調軸200から同調切替軸205への駆動力の伝達は停止する。
【0115】
またエンジン同調動力伝達機構225では、第2テンションクラッチ241が実線で示す離隔状態から、破線で示す近接状態に変位して、エンジン同調軸211から同調切替軸205への駆動力の伝達が開始される。
【0116】
このように、本変形例に係る構成によっても、走行部2,2を走行停止又は後退させた場合にも、エンジン同調軸211の動力を同調切替軸205へ伝達させて、刈取部4を強制的に駆動させることが可能となる。
【0117】
また、ペダル桿253cが実線にて示す位置から、破線にて示す位置に変位した際に当接してON動作する位置にペダル踏圧検出スイッチ19aを配置しておき、このペダル踏圧検出スイッチ19aのON動作によって、前述の降下用油圧切替ソレノイドがON動作するよう構成しておくことにより、刈取部強制駆動手段の作動に、掻込リール24の下降を連動させることができる。
【0118】
上述してきたように、本実施形態に係るコンバイン1は、これらの構成、すなわち、走行部2,2を有して自走可能となした機体3本体の前方に刈取部4を連結し、機体3本体の走行部2,2に刈取部4を連動連結して、刈取部4の刈取速度と走行部2,2の走行速度を同調させたコンバイン1において、走行部2,2を走行停止又は後退させた場合にも、刈取部4を強制的に駆動させる刈取部強制駆動手段を設けることとしたため、車速に同調して駆動する刈取部4を備えながらも、機体3を停止又は後退させた場合には、作業者の任意のタイミングで車速とは無関係に刈取部4を駆動させることができる。
【0119】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0120】
例えば、本実施形態に係るコンバイン1では、刈取部強制駆動手段を操作する操作体を、踏み込み式のペダル(刈取部強制駆動ペダル19)として実現したが、これに限定されるものではなく、例えば、レバーやスイッチ等により実現しても良い。
【符号の説明】
【0121】
1 コンバイン
2 走行部
3 機体
4 刈取部
8 運転部
19 刈取部強制駆動ペダル
24 掻込リール
25 掻込オーガ
42 リール昇降シリンダ
165b 下降用油圧切換ソレノイド
171 リール昇降油圧回路
201 第2ベルト機構
202 刈取クラッチ
224 刈取部強制駆動クラッチ
225 エンジン同調動力伝達機構
230 作業コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部を有して自走可能となした機体本体の前方に刈取部を連結し、機体本体の走行部に刈取部を連動連結して、刈取部の刈取速度と走行部の走行速度を同調させたコンバインにおいて、
走行部を走行停止又は後退させた場合にも、刈取部を強制的に駆動させる刈取部強制駆動手段を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
刈取部強制駆動手段を操作する操作体は、踏み込み式のペダルとなしたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
刈取部には回転動作により圃場の穀桿を掻き込み可能とした掻き込みリールを昇降可能に設け、
刈取部強制駆動手段の作動に、掻き込みリールの下降を連動させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−63034(P2013−63034A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203470(P2011−203470)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】