説明

コンバイン

【課題】揺動選別棚上の処理物の後方移送能力を高めて脱穀選別作業の能率を高めると共に、処理物中の穀粒の漏下を促進して穀粒回収率を高める。
【解決手段】走行装置(2)を備えた機体(1A)の前部に刈取装置(4)を設け、該刈取装置(4)の後側には脱穀装置(3)を設け、刈取装置(4)および脱穀装置(3)を駆動するエンジン(E)を設けたコンバインにおいて、脱穀装置(3)に備えた扱室(11)の下方に揺動選別棚(20)を設け、揺動選別棚(20)の前部下方には選別風送風用の唐箕(16)を設け、揺動選別棚(20)上の処理物の量を検出する処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいてエンジン(E)の回転速度を自動的に変速する制御装置(PU)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインに搭載される脱穀装置は、扱胴を備えた扱室の下方に、複数のシーブを備えた揺動選別棚を揺動自在に設けている。
【0003】
そして、この脱穀装置は、コンバインの機体に搭載したエンジンによって直接駆動される構成である。
従って、エンジンの回転速度を一定の回転速度に維持すれば、脱穀装置に備えた唐箕と揺動選別棚も一定の速度で駆動される。
このために、刈取脱穀作業による負荷の変動に拘わらず、エンジンの回転速度を一定に維持することで、唐箕の送風量と揺動選別棚の揺動速度を一定に維持し、選別精度を一定に維持しようとする技術が試みられている。
また、特許文献1に示すように、脱穀装置の駆動時に、エンジンの回転速度を自動的に定格回転まで上昇させ、これを維持する技術が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3769981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、脱穀作業時においてエンジンの回転速度を一定に維持する構成とした場合、脱穀する穀稈の量や濡れ具合などの条件が変化しても、唐箕の送風量や揺動選別棚の揺動速度は一定である。
このため、扱室から揺動選別棚上に漏下する処理物の量が増加した場合、唐箕からの選別風と揺動選別棚の揺動による処理物の後方移送能力が不足して揺動選別棚上に処理物が停滞してしまう。
これによって、シーブに詰まりを来して穀粒が漏下できなくなり、この穀粒が藁屑と共に揺動選別棚の後端から脱穀装置の外部へ排出され、穀粒の回収率が低下する問題がある。
一方、扱室から揺動選別棚上に漏下する処理物の量が減少した場合、唐箕からの選別風と揺動選別棚の揺動による処理物の後方移送能力が過剰となり、揺動選別棚上の穀粒が揺動選別棚の後端から脱穀装置の外部へ排出され、穀粒の回収率が低下する問題がある。
この発明は、揺動選別棚上の処理物の量に応じて揺動選別棚の揺動速度を変速し、穀粒回収率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次の技術的手段を講じる。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明は、走行装置(2)を備えた機体(1A)の前部に刈取装置(4)を設け、該刈取装置(4)の後側には脱穀装置(3)を設け、該刈取装置(4)および脱穀装置(3)を駆動するエンジン(E)を設けたコンバインにおいて、前記脱穀装置(3)に備えた扱室(11)の下方に揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)の前部下方には選別風送風用の唐箕(16)を設け、前記揺動選別棚(20)上の処理物の量を検出する処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいてエンジン(E)の回転速度を自動的に変速する制御装置(PU)を設けたことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記揺動選別棚(20)に備えた複数のシーブ(23,24)を開度変更自在に構成し、前記処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて該シーブ(23,24)の開度を自動的に変更する構成とした請求項1記載のコンバインとした。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記唐箕(16)の送風口(65)に風割(66)を傾斜姿勢変更自在に設け、前記処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて風割(66)の傾斜姿勢を変更して選別風の送風方向を上下に変更する構成とした請求項1または請求項2記載のコンバインとした。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて風割(66)の傾斜姿勢を変更して選別風の送風方向と送風量を変更する構成とした請求項3記載のコンバインとした。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記処理物量検出センサ(95)を、揺動選別棚(20)の前部の移送棚(22)上に上下動自在に配置した接触子(97)と、該接触子(97)の上下動位置を検出するセンサ(96)から構成した請求項1から請求項4のいずれか一項記載のコンバインとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、揺動選別棚(20)上の処理物の量が増加した場合に、エンジン(E)の回転速度を自動的に増速することで、唐箕(16)からの選別風量が増加すると共に揺動選別棚(20)の揺動速度が増速し、揺動選別棚(20)上の処理物の後方移送能力が高まり、藁屑の排出が促進されて脱穀選別作業の能率が高まると共に、処理物中の穀粒の漏下が促進されて藁屑と共に排出されにくくなり、穀粒回収率を高めることができる。一方、揺動選別棚(20)上の処理物の量が減少した場合には、エンジン(E)の回転速度を自動的に減速することで、唐箕(16)からの選別風量が減少すると共に揺動選別棚(20)の揺動速度が減速し、揺動選別棚(20)上の処理物の後方移送能力が低下し、処理物中の穀粒の漏下が促進されて藁屑と共に排出されにくくなり、穀粒回収率を高めることができる。
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいてシーブ(23,24)の開度を自動的に変更することで、揺動選別棚(20)上の処理物の量が増加した場合にシーブ(23,24)を開くことで、処理物中の穀粒の漏下が促進され、藁屑と共に排出されにくくなり、穀粒回収率を更に高めることができる。一方、揺動選別棚(20)上の処理物の量が減少した場合にシーブ(23,24)を閉じることで、藁屑の回収を抑え、選別精度を高めることができる。
請求項3に記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果に加えて、処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて風割(66)の傾斜姿勢を変更して選別風の送風方向を上下に変更することで、揺動選別棚(20)上の処理物の量が増加した場合に選別風の送風方向を揺動選別棚の揺動方向に沿う方向に倒すことで、この選別風によって処理物の後方移送能力を高め、脱穀作業の能率を高めることができる。また、揺動選別棚(20)上の処理物の量が減少した場合に選別風の送風方向を立ち上げることで、選別風による処理物の後方移送能力を低下させ、穀粒回収率を高めることができる。
請求項4に記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の効果に加えて、処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて選別風の送風量をも変更することで、脱穀作業の能率と穀粒回収率を更に高めることができる。
請求項5に記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4のいずれか一項記載の発明の効果を奏するうえで、処理物量検出センサ(95)を、揺動選別棚(20)の前部の移送棚(22)上に上下動自在に配置した接触子(97)と、該接触子(97)の上下動位置を検出するセンサ(96)から構成したので、移送棚(22)上の処理物の量を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】脱穀装置の縦断面図である。
【図6】脱穀装置の他の位置における要部縦断面図である。
【図7】脱穀装置の水平断面図である。
【図8】コンバインの要部水平断面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図8のB−B断面図である。
【図11】図8のC−C断面図である。
【図12】コンバインの要部縦断面図である。
【図13】コンバインの要部縦断面図である。
【図14】揺動選別棚部分の要部縦断面図である。
【図15】揺動選別棚部分の要部縦断面図である。
【図16】清掃部材及びその駆動部分の要部平面図である。
【図17】清掃部材駆動部分の要部左側面図である。
【図18】清掃部材駆動部分の要部底面図である。
【図19】第一シーブの平面図である。
【図20】第一シーブの要部斜視図である。
【図21】清掃部材の平面図である。
【図22】清掃部材の左側面図である。
【図23】清掃部材の正面図である。
【図24】第一シーブの分解組立図である。
【図25】シーブ支持部の左側面図である。
【図26】脱穀装置の縦断面図である。
【図27】受網の分解状態の正面図である。
【図28】受網の分解状態の内周面の平面展開図である。
【図29】受網要部の分解状態の内周面の平面展開図である。
【図30】制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0015】
図1〜図4において、符号1はコンバインの機体フレーム、符号1Aはコンバインの機体、符号2は左右一対のクローラを有する走行装置、符号3は機体フレーム1の上方に設けられた脱穀装置、符号4は脱穀装置3の前側に設けられ、植立穀稈を刈り取る刈取装置、符号5は脱穀装置3の側部に設けられたグレンタンク、符号6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部、符号7はグレンタンク5の貯留穀粒を排出するための排出筒、符号7は刈取装置4で刈り取った穀稈を脱穀装置3に向けて搬送する供給搬送装置8、符号Eは刈取装置4、脱穀装置3、排出筒7等を駆動するエンジンをそれぞれ示している。尚、前記操縦部6には、3次元画像を表示可能なモニター206を設けている。
【0016】
走行装置2により機体を走行し、圃場に植立する穀稈を刈取装置4により刈り取ると、その穀稈は供給搬送装置8によって後方へ搬送され、その過程で株元側が側方に持ち上がるように姿勢変更され、且つ、脱穀装置3における扱ぎ深さが調整された後に、脱穀部搬送装置12に受け渡される。脱穀部搬送装置12では、穀稈の株元側をフィードチェーン13Bと挟持杆13Aとの間で挟持し、その穀稈の穂先側を脱穀装置3の扱室11内に挿入した状態で脱穀を行いながら、後方に搬送する。脱穀済みの排藁は、排藁搬送装置14に引き継がれて、脱穀装置3の外部へ排出される。
【0017】
(扱室)
脱穀装置3は、穀稈の脱穀を行う扱室11を上部に備えている。この扱室11内には、扱歯10bを有する扱胴10が前後方向に沿う軸心を中心として回転するように軸支されており、この扱胴10の主として下方側を包囲するように、受網15が、扱胴10外周に沿って張設されている。扱室11に供給された穀稈は、回転する扱胴10により脱穀され、脱穀された穀粒は受網15から落下して選別室18に供給され、揺動選別装置21により選別される。
【0018】
扱室11の下流側(後側)には、扱室11に対して後隔壁11Lにより隔離された刺さり粒回収室11Eが形成されている。この後隔壁11Lは、脱穀装置3の機枠側に固定されている。また、扱胴10の下流側端部(後側端部)が、中間隔壁11Kを貫通し、更に後隔壁11Lを貫通して刺さり粒回収室11E内まで延出しており、この刺さり粒回収室11E内に、扱胴10の軸心方向に対して所定角度に傾斜する傾斜扱歯10cが、扱胴10の外周方向に所定の間隔を空けて設けられている。扱室11で脱粒した処理物の内、受網15から漏下しない処理物は、扱室11後部の中間隔壁11Kと後隔壁11Lとの間の排塵室11Mに至り、この排塵室11Mの奥側の連通口35から排塵処理室30に供給される。刺さり回収室11E内では、傾斜扱歯10cにより搬送穀稈がさばかれ、穀稈中に刺さり込んでいた穀粒が分離して、揺動選別装置21に落下する。
【0019】
扱室11の上方を覆う上部カバー11Uは、扱室11に対して脱穀部搬送装置12を設けた側とは反対の側に配置した前後方向に沿う支軸を支点として、揺動開閉するように構成されている。この上部カバー11Uに挟持杆13Aが取り付けられ、この挟持杆13Aが上部カバー11Uと共に揺動開閉するように構成されている。
【0020】
(挟持杆、フィードチェーン部)
図5、図9等に示すように、扱室11の一方側(機体走行方向の左側)に設けられる脱穀部搬送装置12は、下側に位置するフィードチェーン13Bと、上側に位置し、且つスプリング等の付勢手段13cにより上部カバー11Uに対してフィードチェーン13B側に付勢される挟持杆13Aから構成されている。図8及び図12等に示すように、フィードチェーン13Bは、前後に設けられた張設輪13d,13d及びこれらの間に設けられた伝動スプロケット13eに巻き掛けられて駆動される無端のチェーンである。このフィードチェーン13Bの上側の巻き掛け部分が後方に向かって移動する過程で、挟持杆13Aとの間に穀稈の株元側が挟持されて搬送されるようになっている。
【0021】
本実施形態では、これらのフィードチェーン13B、張設輪13d、伝動スプロケット13e、これらを支持するフレーム9f、外側のカバー9cによって、フィードチェーン部9を構成している。フィードチェーン部9は、本実施形態では前端部に位置する上下方向に沿う支軸9xを中心として揺動開閉するように構成している。但し、フィードチェーン13Bと挟持杆13Aとの間で穀稈を挟持して搬送する閉じ位置と、扱室11の側壁が露出する開き位置に開閉変更自在な構成であれば、支軸9xの位置が後端部であっても良く、また移動形態が開動ではなくスライド移動等であっても良い。
【0022】
(点検口)
図8〜図13に示すように、扱室11のフィードチェーン部9側の側壁には、フィードチェーン部9の裏側を含む範囲に、取り外した第一シーブ23(請求項におけるシーブ23)が通過可能である点検口11Sが形成されるとともに、この点検口11Sを開閉する蓋体11Zが設けられており、この蓋体11Zはフィードチェーン部9に連結一体化されている。フィードチェーン部9をオープン(揺動開放)すると、図8に示すように蓋体11Zもフィードチェーン部9に伴い移動して点検口11Sが開口し、図13に示すように点検口11Sから扱胴10の下端部及び扱胴10の下側空間が露出する。よって、点検口11S及び扱胴10の下側空間を介して後述の揺動選別棚20の上流側、部材体的には移送棚22及び第一シーブ23の掃除やメンテナンスを行うことができる。
【0023】
(選別室)
扱室11の受網15の下方には、受網15から漏下する脱穀処理物から穀粒を選別するための選別室18が形成されている。この選別室18の上部には、前後方向に往復揺動する揺動選別棚20により構成された揺動選別装置21が設けられ、選別室18の下部には、唐箕16と、樋状の一番棚板19A(一番物回収部)、樋状の二番棚板19B(二番物回収部)が、揺動選別棚20の移送方向に(前から後ろに向かって)この順で設けられている。
【0024】
揺動選別棚20の始端部(前端部)は、唐箕風洞17の上方に位置する移送棚22として形成されている。移送棚22の構成は任意であり、移送方向下流側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりして、揺動選別装置21の移送方向下流側の第一シーブ23に向けて受網15からの漏下物を移送できればよい。
【0025】
第一シーブ23は、受網15から漏下した穀粒と異物を選別する篩であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなるシーブ部材23bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。第一シーブ23の移送方向下流側(後側)には、穀粒とチャフ(わら屑)を選別する第二シーブ24が設けられている。図示例の第二シーブ24は、傾斜角調節自在の薄い板状体からなるシーブ部材24bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。さらに、第二シーブ24の下流側には、第一シーブ23及び第二シーブ24から漏下しなかった比較的大きな藁屑中から枝梗付着粒等を篩い選別し、これらを後述する二番棚板19B上に漏下させるために、ストローラック25が設けられている。前記第一シーブ23と第二シーブ24は、電動モータ204の作動によって連動して開閉調節される構成としている。
【0026】
唐箕16は、揺動選別棚20と一番物棚板19Aとの間に臨む送風口を備えている。一番棚板19Aの樋部内には、グレンタンク5へ連通する螺旋コンベア式の一番コンベア26を配置し、二番棚板19Bの樋部内には、二番処理室40へ連通する螺旋コンベア式の二番コンベア27を配置している。また、揺動選別棚20と一番棚板19Aとの間には、第一シーブ23と第二シーブ24との境界近傍から一番棚板19Aの棚先19C近傍までの範囲にわたるように選別網28が設けられている。
【0027】
揺動選別棚20は図示しない駆動機構により上下前後方向に往復揺動するので、被処理物は後方側へ移動しながら、唐箕16からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒は第一シーブ23及び第二シーブ24を漏下して選別網28上に供給される。選別網28上の被処理物は、更に唐箕16からの選別風を下側から受けて細かな藁屑が吹き飛ばされながら後方に移送され、この移送中に選別網28から漏下したものが一番棚板19Aにより回収され、一番コンベア26で搬送されてグレンタンク5へ投入される。グレンタンク5に貯留された穀粒は、排出筒7を介してコンバインの外部へ搬出される。このように、選別網28から漏下して一番棚板19Aで回収される処理物は、枝梗付着の少ない穀粒(清粒)が主である。
【0028】
一方、選別網28から漏下しないものは、この選別網28上を後方へ移送されて選別網28の後端部から二番棚板19Bに至り、回収される。選別網28から漏下せずに二番棚板19Bに供給される被処理物は、枝梗付着粒や小さな藁屑等が主である。
【0029】
揺動選別棚20上の被処理物のうち軽量のものは、第一シーブ23及び第二シーブ24を漏下せず、揺動選別棚20の揺動作用と唐箕16による送風で吹き飛ばされて第一シーブ23及び第二シーブ24の上を後方へ移動し、ストローラック25の上で大きさの小さい二番物は漏下して二番棚板19Bにより回収され、第一シーブ23及び第二シーブ24の後部やストローラック25から漏下して二番コンベア27により二番処理室40へ供給される。二番コンベア27に取り込まれるものは、枝梗付着粒、藁屑および藁屑の中に混在した穀粒などの混合物である。これら枝梗付着粒や藁屑を二番還元物として再処理する。また、第一シーブ23及び第二シーブ24及びストローラック25から漏下しない被処理物(主に藁屑)は、更に後方へ移送されて三番排塵口56から排出される。この中には僅かな穀粒が含まれていることがあり、この量(比率)によって、脱穀装置の選別精度が評価される。
【0030】
(排塵処理室)
扱室11の後方には刺さり粒回収室11Eが設けられ、この刺さり粒回収室11Eの前側の排塵室11Mが、連通口35を介して排塵処理室30と連通している。排塵処理室30内には、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31が軸装されている。排塵処理胴31の揺動選別棚20と反対側(正面に向かって右側)は側板32により包囲され、排塵処理胴31の揺動選別棚20側(正面に向かって左側)は処理物排出口33が設けられている。排塵処理胴31の外周面のうち、処理物の移送方向の終端部(後端部)には羽根体34が設けられ、これよりも始端側には排塵処理歯36が設けられている。
【0031】
排塵処理室30に供給された被処理物は、回転する排塵処理胴31により解砕、処理されつつ終端側に移動する過程で、処理物排出口33から揺動選別棚20上に排出され、また、排塵処理室30の終端は閉塞されており、ここに至った処理物は羽根体34により揺動選別棚20のストローラック25上に排出され、これら排出処理物は、揺動選別棚20により選別されて穀粒は回収され、藁屑等は機外に排出される。排塵処理室30に供給される被処理物中には、少量ながら枝梗の付着した穀粒が含まれており、この枝梗付着粒および小さな藁屑は、処理物排出口33から揺動選別棚20に落下する。
【0032】
(二番処理室)
排塵処理室30の前側には、二番コンベア27により回収された二番物を処理する二番処理室40が設けられている。二番処理室40内には、外周面に間欠螺旋羽根を有する二番処理胴41が排塵処理胴31と同心的かつ直列的に軸装されている。二番処理室40における二番処理胴41の下方は、その終端部を除いて樋状の受板42により包囲されており、その側部上方は開口しており、その開口部は受網15の側部下方に位置し、受網15の側部から漏れ出る脱穀処理物は二番処理室40に供給されるようになっている。また、二番処理室40における二番処理胴41の終端部(前端部)の下方は、二番処理物還元口43として、揺動選別棚20の上流側における二番処理室40側の側部の上方に開口されている。また、二番処理胴41の始端側(後端側)上方には二番コンベア27から供給される二番物の供給口44が開口している。
【0033】
二番処理室40では、二番物が二番処理胴60によって搬送される間に穀粒の分離と枝梗付着粒からの枝梗の除去が行われた後、二番処理物還元口43から揺動選別棚20に落下し、扱室11からの被処理物と合流して再選別される。
【0034】
(吸引排塵ファン)
揺動選別棚20の終端部(後端部)の上方には吸引排塵ファン47の吸塵口44が開口している。吸引排塵ファン47は、排風口46を有するケーシング45により覆われている。図示例では、揺動選別棚20の上方空間の両側壁のうち排塵処理室30と反対側の側壁に、排塵処理室30と対峙するように吸引排塵ファン47が取り付けられ、その取り付け部位に吸塵口44が開口しているが、これらの取り付け位置は図示例に限定されるものではない。
【0035】
(排藁処理装置)
脱穀装置3の後側では、扱室を通り脱穀を終えた穀稈、つまり排藁は排藁搬送装置14に引き継がれ、排藁搬送装置14の終端部から排藁処理装置としてのカッター装置48に排出される。カッター装置48は、上方から落下供給される排藁を一対のロータリーカッター刃49間に通して切断する構造のものである。ロータリーカッター刃49の外部側はフードにより覆われており、またロータリーカッター刃49の前側には、切断した排藁の切断藁屑を後方に落下するように案内するための切藁案内板50が設けられている。切藁案内板50は、上部が上側カッター刃49の下部とほぼ同じ高さに位置しており、下方に至るに従い後側に位置するように後下がりに傾斜し、切藁案内板50の下部は下側カッター刃49の下部より下方に位置している。カッター装置48に代えて他の排藁処理装置を用いることも可能である。
【0036】
(三番排塵口)
脱穀装置3の後側壁55には三番排塵口56が開口されており、揺動選別棚20の後部がこの三番排塵口56に臨むように構成されている。また、三番排塵口56を開閉する三番排塵口シャッタ57が設けられており、例えば圃場の一辺を刈り終えて次辺へ向けて旋回する際に、この三番排塵口シャッタ57を閉じれば、排塵処理室30の処理物排出口33から排出される排塵処理物に含まれる穀粒を、三番排塵口56から排出させずに、揺動選別棚20の第二シーブ24又はストローラック25に供給し、篩い選別により回収することができる。よって、三番ロスの発生を防止して脱穀効率を向上できるようになる。また、排塵処理室30と吸引排塵ファン47の吸塵口44とは、揺動選別棚20を挟んで対峙するように配置されており、三番排塵口シャッタ57を閉めると、排塵処理室30から排出される排塵処理物が、吸引排塵ファン47の吸塵口44側に向かって広範に拡散するため、穀粒の回収効率が一層向上する。
【0037】
(唐箕送風調節)
唐箕風洞17の送風口65は、上方に位置する天面部67と下方に位置する底面部68との間に開口しており、これら天面部67と底面部68との上下中間に風割66が設けられている。これにより、送風口65は、風割66と天面部67との間の上側風路74と、風割66と底面部68との間の下側風路75に区画されている。
【0038】
風割66は、送風方向と直交する水平の回動軸66x(図12参照)を回動中心とし、且つ上面69及び下面71,72が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で回動自在に構成されており、また、風割66の回動軸66xは風割の送風方向中間に位置しており、回動軸66xの上流側及び下流側が上下するように回動するようになっている。風割66の回動軸66xは、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。さらに、風割66の回動により風割66の水平面に対する傾斜角(以下単に傾斜角ともいう)を最大まで増加させたとき、風割66における唐箕16側の端部が送風口65の底面部68と近接又は接触するように構成されている(図5及び図6参照)。風割66は、脱穀装置の外部に設けた電動モータ205の作動によって回動調節される構成としている。
【0039】
また、天面部67も、送風方向と直交する水平の回動軸67xを回動中心とし、且つ下面が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で、風割66と同方向に回動するように構成されている。天面部67の回動軸67xは、図示例では天面部67の唐箕16側端部に位置しているが、送風方向中間や、送風方向下流側端部に位置させることもでき、いずれにせよ天面部67の下流側が上下するように回動すれば良い。天面部67の回動軸67xも、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。
【0040】
このような構造においては、唐箕16から供給される一定量の風の上側風路74及び下側風路75に対する配分比率は、上側風路74及び下側風路75の開口度の比率によって定まる。よって、下側風路75の開口度が減少する方向に、天面部67及び風割66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は減少し、反対に上側風路74の風量は増加するとともに、下側風路75の風向は風割66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は天面部67の角度変化および風割66の下面の角度変化に応じて変化する。一方、下側風路75の開口度が増加する方向に、天面部67及び風割66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は増加し、反対に上側風路74の風量は減少する。下側風路75の風向は風割66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は天面部67の角度変化および風割66の下面の角度変化に応じて変化する。つまり、上側風路74及び下側風路75の風向及び風量を同時に調整できるようになる。
【0041】
(処理物量検出センサ)
風割66及び天面部67の傾斜角は処理物量に関係なく固定としても良いが、揺動選別棚20の上の処理物の量を検出する処理物量検出センサ95を設け、この処理物量検出センサ95の検出結果に基づき、棚上処理物の量が増加したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を減少させ、棚上処理物の量が減少したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を増加させる制御装置(図示略)を設けるのも好ましい。これにより、処理物量に増減があっても、揺動選別棚20上の処理物量検出結果に応じて、風割66及び天面部67の傾斜角が適切に自動調整され、最適な穀粒損失と選別状態を得ることができる。
【0042】
処理物量検出センサ95は、公知の接触又は非接触センサを用いることにより構成することができる。図示例では、二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、刺さり粒回収室11Eの中間隔壁11Kの下端部がセンサステー95Sにより連結され、このセンサステー95Sにポテンションメータ等の回転量検出装置(請求項における「センサ」)96が取り付けられるとともに、この回転量検出センサ96の検出軸96xにフロート(接触子)97が吊り下げ状態で取り付けられており、このフロート97が、揺動選別棚20の移送棚22上を移動する被処理物に接触して、被処理物の移動方向に回転しつつ持ち上がり、その回転量が、移送棚22上を移動する被処理物の層厚として回転量検出装置96により検出されるように構成されている。
【0043】
また、図示例のようにフロート97が回動するタイプの場合、フロート97の回動中心(つまり図示例では検出軸96x)が、二番還元物の流れ又は棚上処理物全体の流れに対して略直角となり、平面視で揺動選別棚20の揺動方向に対して傾斜するように構成するのが好ましい。これにより、棚上処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向が一致するか又は近くなるため、フロート97が円滑に動作し、処理物量の変化に対して正確かつ敏感に反応するようになる。
【0044】
この場合、フロート97の作動をより円滑にするために、フロート97における回動中心方向一方側、特に図示例のように移送棚22の移送方向下流側に、フロート97の回動中心に対して略直交する方向(センサフロート97の回動方向と略平行)に延在する寄せ板98を立設するのも好ましい形態である。これにより、移送棚22による揺動作用により棚上処理物の移動方向がずれていくとしても、そのフロート97近傍では寄せ板98により移動方向が規制されるため、棚上処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向が略一致し、フロート97がより一層円滑に動作するようになる。
【0045】
また、フロート97の形状は、図示例のように、少なくとも棚上処理物と接触する部分(図示例では棚上処理物が無い非接触状態で、棚上処理物の移動方向上流側の面)が、棚上処理物の摺動方向の中間部ほど張り出す弧状曲面であるのが好ましい。
【0046】
他方、一般に移送棚22上においては処理物量が偏在し、特に二番処理物還元口43の下方近傍における処理物量が最も多くなる。よって、処理物量検出センサ95は、二番処理物還元口43の近傍における揺動選別棚20の棚上処理物の量を検出するように構成するのが望ましい。このため、図示例ではフロート97を二番処理物還元口43の近傍に配置している。
【0047】
(シーブ清掃装置)
図5〜図7、図10、図14及び図15に示すように、本実施形態では、第一シーブ23上を往復移動することにより清掃を行う清掃部材80が設けられている。より詳細には、第一シーブ23は左右方向に所定の間隔を空けて配置された複数の清掃部材80,80,80…を備えており、この清掃部材80は図19〜図22に詳細に示すように、前後方向に沿うプレート部81(請求項におけるプレート81)と、第一シーブ23の各シーブ部材23bの上面に接触して付着物を除去するスクレーパ部82(請求項におけるスクレーパ82)を有するものである。
【0048】
これら清掃部材80,80,80…は、図15及び図16に詳細に示す-ように、前後の連結部材83,83と左右の補強板84,84によって一体的に連結してユニットTを形成し、このユニットTを第一シーブ23に対して左右横方向(シーブ部材23bの長手方向)に往復移動可能に支持している。また図22に示すように、プレート部81は上下方向に沿う垂直姿勢で立設されており、そして、各プレート81にはシーブ部材23bの断面形状に合わせたガイド穴81hを穿設し、各ガイド穴81hに各シーブ部材23bを挿通してスライド案内する構成としている。
【0049】
スクレーパ部82は、上下方向に傾斜するシーブ部材23bの傾斜上面に接触して摺接移動により付着物を除去するものである。本実施形態のスクレレーパ部82は、移動方向に対して所定角度に傾斜する刃縁82aをプレート部81を挟んで左右対称に有し、平面視で略ハの宇型の刃縁82a,82aを有する形状となっており、このような形状によって左右の往復動に対する付着物の除去が無理なく確実に行えるようになっている。また、このスクレーパ部82は、正面硯で山型の傾斜角を保持すべく昇り傾斜面82s,82s(図19〜図21参照)が設けられ、横方向への移動に伴いその昇り傾斜面82s,82sによって各シーブ部材23b面上の付着物が上方に掬い上げられるようになっている。スクレーパ部82の最突出端部82eは、シーブ部材23bの折り曲げ稜線と合致させた構成としてあり、シーブ部材23bの折り曲げ部に溜まった藁屑や塵埃の除去が容易に行えるようにしている。尚、各シーブ部材23bのガイド穴81hの内面とシーブ部材23の外面の間には、穀粒の枝梗が入り込む程度の隙間を設けるとよい。
【0050】
プレート部81とスクレーパ部82とは別体とすることもできるが、本実施形態のように一体とし、特に合成樹脂材で一体成形した構成とすると、製造容易性、コスト、メンテナンス性の点で優れる。また、シーブ23との間の摺動抵抗が軽減され、このプレート部81およびスクレーパ部82の往復移動を円滑化することができる。
【0051】
各清掃部材80を駆動するための清掃部材駆動装置V(請求項における駆動装置V)は、本実施形態では、ズ16、図17、図18に示すように、駆動モータ85と、互い違いに引き操作する一対の操作ケーブル86b,86bと、往復回動する天秤アーム87と、天秤アーム軸87aと、往復回動する揺動アーム88等の連動機構から構成する。即ち、駆動モータ85の回転駆動により、操作ケーブル86b,86b、天秤アーム87、天秤アーム軸87a、揺動アーム88等の連動機構を介して、各清掃部材80が左右横方向に往復動するように構成している。すなわち、駆動モータ85を駆動すると、クランクアーム86の回転により、クランクピン86pに対して連結された一対の操作ケーブル86b,86bが互い違いに引き操作され、天秤アーム87の往復回動によって天秤アーム軸87aを回動中心として揺動アーム88が左右に往復揺動し、この揺動アーム88の長孔88hに対して移動自在に挿入された89を有する清掃部材80が左右横方向へ強制的に往復動されるようになっている。この左右横方向の往復移動範囲(移動ストローク)が、各清掃部材80,80,80…間の配置ピッチPよりも大きくされていると、スクレーパ部82がシーブ部材23bの全域にわたって作用するため好ましい。
【0052】
この形態では、清掃部材80,80,80…の揺動が連続的になされるが間欠的でも良い。また、清掃部材80,80,80…の駆動モータ85を脱穀操作、例えば脱穀クラッチの入り操作に連動して自動で駆動を開始するようにするのが好ましいが、非連動として任意のスイッチにより駆動を開始する構成としても良い。さらに、本実施形態のように、クランクピン86pと操作ケーブル86bとはスプリング86s及びプレート86tを介して連結保持させると、操作ケーブル86bに無理な加重が掛からないため好ましい。
【0053】
揺動アーム88の配置は適宜設計することができるが、本実施形態では図7に示すように揺動選別棚20の上方からの処理物が多量に落下する側とは反対側の側部に配置している。本実施形態では、揺動選別棚20上への処理物落下量はフィードチェーン13B側で少なく、二番処理胴41側が多くなるため、揺動選別棚20のフィードチェーン13B側に揺動アーム88を配置することによって揺動選別棚20の左右バランスを均等化することができる。また、揺動アーム88部は、移送棚22の下方で唐箕風洞17の上方後方部の空間部に設けることで、揺動選別棚20部の死角部を有効に利用でき、コンパクトに配置構成することができる。本実施形態では、天秤アーム87や操作ケーブル86bについても移送棚22と唐箕風洞17との間に配置した構成としている。
【0054】
図14に示すように、揺動選別棚20を構成する揺動選別ケースの前壁20a部には、揺動アーム88を揺動案内するガイド孔20dが設けられ、このガイド孔20d部には、当該ガイド孔20dを弾性的に閉塞するスリットを有する弾性シール部材(ブラシ体)20gが設けられている。揺動アーム88は、ガイド孔20dに沿ってシール部材20gのスリットを押し分けながら揺動運動することになるため、シール部材20gによってガイド孔20dが常に閉塞され、ガイド孔20dからの籾や藁屑や塵埃の流出が防止される。
【0055】
本実施形態のようなクランクアーム86の回転運動によって清掃部材80,80,80…を揺動駆動するものでは、清掃部材80,80,80…の作動(移動)速度が作動範囲の中央部で速く、作動範囲の両端側で遅くなるように構成することができる。これによれば、中央部での拡散効果も大きくスクレーパ部82により寄せられた藁屑や塵埃が速やかに除去されることになる。また、スクレーパ部82の作動トルクを作動範囲の中央部より両端側を大きくすることで、スクレーパ部82により寄せられ残った藁屑や塵埃を逆方向に駆動する際、必要なトルクが大きいため、スクレーパ部82の作動が円滑に行える。
【0056】
清掃部材80の摩耗による交換や、清掃部材80とシーブ部材23bとの間に詰まった藁屑の除去等、清掃部材80を第一シーブ23から取り外すメンテナンスが必要になることがある。このため、本実施例の第一シーブ23では、シーブ部材23bからなるシーブ本体部の両端部を支持する板状のシーブ支持部23sのうち、いずれか一方のシーブ支持部23sに、図24及び図25に示すように各シーブ部材23bの端部を抜き差し可能に挿入するシーブ部材挿入孔23hを設けるとともに、他方のシーブ支持部23sに各シーブ部材23bを溶接等により固定し、一方のシーブ支持部23sのシーブ部材挿入孔23hに他方のシーブ支持部23sから櫛状に突出する各シーブ部材23bの端部を挿入した状態で、シーブ部材23bの下方において両方のシーブ支持部23s間にわたる棒状等の連結部材23fを介在させ、連結部材23fと両方のシーブ支持部23sを図示しないボルトにより着脱自在に連結している。このボルトを外すことにより、一方のシーブ支持部23sを、他方のシーブ支持部23sに固定されたシーブ部材23bに対して取り外してシーブ部材23bの一端を開放した状態で、この開放端からシーブ部材23bに対する清掃部材80の抜き取り及び挿入することができる。よって、第一シーブ23に対して清掃部材80を容易に着脱でき、清掃部材80とシーブ23との間に詰まる藁屑を確実に除去できる等、シーブ23の清掃を十分に行うことができ、また清掃部材80の交換も容易となる。またこの構造では、連結部材23fによりシーブユニットの剛性も十分に確保される。
【0057】
シーブ部材挿入孔23hの寸法・形状はシーブ部材23bの寸法・形状に合わせても良いが、本実施形態のように、寸法についてはある程度の遊び(シーブ部材挿入孔23hとシーブ部材23bとの隙間、ガタ)を持たせると、シーブ支持部23sに対するシーブ部材23bの固定精度や装置駆動時のシーブ部材23bの歪をこの遊びで吸収することができ、清掃部材80の作動を円滑化できる。
【0058】
また、上述の構成に代えて、スクレーパ部82をリードカムで左右方向に往復摺動させる構成とし、このリードカムを回転駆動する電動モータを、揺動選別棚20に一体的に取り付けて構成してもよい。このように構成すれば、上述のような脱穀装置本体側から揺動選別棚20へのワイヤーの配索が不要となり、構成が簡素化されると共に、耐久性が向上する。また、上述のワイヤーによる連繋機構に代えて、ロッドからなるリンク機構を用いてもよい。
【0059】
(シーブ着脱機構)
特徴的には、図14及び図15に示すように、第一シーブ23は揺動選別棚20の上方への取り外し及び揺動選別棚20の上方からの取り付けが可能なように取り付けられる。これにより、図8及び図13に示すようにフィードチェーン部9および蓋体11Zを開くことにより、点検口11Sを介して扱室11内に手を入れ、第一シーブ23を上方に取り外して点検口11Sから機外に取り出し、また反対に機内に入れて組み立てることができるため、第一シーブ23に詰まった藁屑を除去する等のメンテナンスを、揺動選別棚20の分解を要せずに極めて容易に行うことができるようになる。また、本実施形態の場合、選別網の上流側部分が第一シーブ23の直ぐ下に位置しており、第一シーブ23を機外に取り外すことにより、その下方に位置する選別網28が点検口11S側に露出するため、揺動選別棚20を取り外すことなく、点検口11Sを介して揺動選別棚20上方より機内に備え付けられている選別網28の清掃等のメンテナンスを行うことも可能となる。
【0060】
第一シーブ23の上方着脱を可能とする構造は適宜定めることができるが、第一シーブ23に上述のような清掃部材80を取り付ける場合には、清掃部材80に対する伝動を第一シーブ23の上方移動に伴い分離し、また第一シーブ23の下方移動に伴い連結できる構造が必要となる。このため本実施形態では、図14〜図16に示すように、清掃部材80の適所、例えば図示のようにフィードチェーン13B側の端に位置する清掃部材80のプレート部81の側面から第一シーブ23の下方に連結ピン89pを突出させ、この連結ピン89pにカラー89cを取り付けて前述の突出部89を構成している。第一シーブ23を取り付ける際には、清掃部材80を装着した第一シーブ23を揺動選別棚20上に載せて、突出部89を前述の揺動アーム88の長孔(本発明の係合部に相当する)88hに挿入することにより伝動を連結する。第一シーブ23は、両側部のシーブ支持部23sにおいて揺動選別棚20にボルト23v等の着脱固定手段により固定される。第一シーブ23を取り外す際には、揺動選別棚20に対する第一シーブ23の固定を解除した後、図14及び図15に示すように、清掃部材80を装着したままの第一シーブ23を揺動選別棚20の上方に持ち上げ、突出部89を揺動アーム88から引き抜くことにより伝動の分離とともに第一シーブ23を取り外すことができる。なお、揺動アーム88の長孔88hは図示例のように孔部分が先端に達しておりフォーク状をなす形態も含む。
【0061】
なお、本実施形態のように移送棚22上から第一シーブ23上にわたる寄せ板98を取り付ける場合は、図14に示すように寄せ板98を着脱可能に取り付けるようにし、取り外した寄せ板98を点検口11Sから取り出し可能とすることにより、寄せ板98を先に取り外すことができ、寄せ板98の邪魔無くして第一シーブ23を上方に取り外すことができるようになる。
【0062】
また、扱室11の下側に張設される受網15のうちのフィードチェーン部9側の端部が、受網15の下側において前後方向に沿って架設された棒状等の受網固定部材15Uに係合および離脱自在な構成とされており、フィードチェーン13Bを開いた状態で、受網固定部材15Uが点検口11Sを横切る場合、この受網固定部材15Uが第一シーブ23の着脱等の作業の邪魔になる。よってこのような場合、図5及び図13に示すように、受網固定部材15Uの形状を、点検口11Sより前側及び後側の部位であって且つ点検口11Sと重なる上下方向範囲に、受網15のフィードチェーン部9側の端部に係合する係合部15fを有するとともに、点検口11Sと重なる前後方向中間部に、受網15のフィードチェーン部9側の端部が係合することなく側面視で点検口11Sを迂回するU字状をなすように下方に湾曲した湾曲部15wを有する形状とするのが好ましい。この湾曲部15wと受網15のフィードチェーン部9側の端部との間に形成された空間を経て、点検口11Sから第一シーブ23を外部へ取り出すことができるので、点検口11Sからの第一シーブ23の着脱等の作業空間が拡大し、作業性が向上する。
【0063】
(その他)
(A) 扱胴10後方側の処理効率を向上させるために、図26に示すように扱胴10を前扱胴101と後扱胴102に分割し、前扱胴101よりも後扱胴102の速度を速く又は回転数を高くすることが知られているが、その場合には第一シーブ23における後扱胴102下方部位に藁屑や塵埃が付着し易いだけでなく、強い扱胴起風により第一シーブ23上の処理物が左右方向一方側に寄り、選別能の低下をもたらすおそれがある。よって、第一シーブ23の前後方向範囲のうち少なくとも後扱胴102下方部位には清掃部材を設け、第一シーブ23上に付着する藁屑等の除去効率を高め、また清掃部材80の往復移動により第一シーブ23上の処理物を平らに均すのは好ましい。
【0064】
(B) 図29に示すように、受網15の孔の目合いを受網15の後側に位置する孔151b〜151d,152b〜152dについて前側に位置する孔151a,152aよりも大きくすると、脱穀処理物の受網15通過効率が上昇して穀粒の回収効率は高まるが、藁屑等の受網15通過も促進されるため、第一シーブ23上に藁屑等が付着し易くなる。よって、前述の清掃部材80を設けるとともに、受網15における清掃部材80の上方部位のみ他の部位よりも孔の目合いを大きくする、つまり図示形態の場合は受網15の孔の目合いを受網15の前側に位置する孔151a,152aよりも後側に位置する孔151b〜151d,152b〜152dを大きくするのが好ましい。これにより、受網15の孔の目合いの大きな部分から穀粒だけでなく藁屑等も通過し易くなるが、その通過位置下方には清掃部材80が設けられているため、第一シーブ23に対する藁屑等の付着を効果的に防止できる。
【0065】
なお、受網15の孔の目合いを大きくするとしても、本実施形態の受網15のように内周面に周方向に沿う仕切り金15dが立設している場合は、仕切り金15d直前部の孔151c,152cの目合いは大きくせず、相対的に小さくする方が好ましい。仕切り金15d直前部は扱歯10bの圧力が掛かり易く、脱穀率が高いため、この部分における受網15の孔151c,152cの目合いを大きくすると脱穀率が低下するだけでなく、藁屑等の受網15通過量が局所集中するおそれがある。
【0066】
また、本実施形態のように、二番処理室40の扱胴10側の側部上方が開口しており、その開口部が受網15の側部下方に位置し、受網15の側部から通過する脱穀処理物が二番処理室40に供給される構造となっている場合は、図27〜図29に詳細に示すように、受網15を、二番処理室40の扱胴側の側部上方に位置するアッパー部152と、これよりも下側に位置するロワー部151を連結して構成する分割構造とし、ロワー部151のみ仕切り金15d直前部の孔151cの目合いを大きくせず、相対的に小さくし、アッパー部152においては仕切り金15d直前部の孔152cか否かに関係なく、清掃部材80の上方部位の孔152b〜152dのみ他の部位の孔152aよりも目合いを大きくするとよい。つまり図示形態の場合は受網15の後側に位置する孔152b〜152dの目合いを前側に位置する孔152aの目合いより大きくするのが好ましい。ロワー部151からのろ過物は直接に第一シーブ23に供給されるため、このロワー部151の仕切り金15d直前部における孔151cの目合いを大きくしないことで1番物の枝梗割合が減少し、選別精度を良好に保つことができる。また、アッパー部152からのろ過物は二番処理室40に導かれ、揺動選別棚20前側に戻されるため、仕切り金15d直前部下方への藁屑等の集中供給は起こり難い。しかもこの場合、アッパー部152の孔の目合いは二番処理室40の搬送方向上流側に位置する孔152aの方が下流側に位置する孔152b〜152dよりも大きくなり、アッパー部152からの二番処理室40への脱穀処理物の供給量は搬送方向上流側の方が下流側よりも多くなるため、二番処理室40の処理経路を広範囲に利用して処理できるようになり、二番処理室40の処理能率を向上することができる。
【0067】
(C)上記例は第一シーブのみ、清掃部材を設け、或いは上方に着脱自在としたが、シーブである限り、他のシーブについても同様の構成を適用することができる。
(制御装置)
前記機体フレーム1上には、機体1Aの左右傾斜角度を検出する左右傾斜センサ(請求項の「傾斜センサ」)1Bと、機体1Aの前後傾斜角度を検出する前後傾斜センサ(請求項の「傾斜センサ」)1Cを取り付ける。
【0068】
図30に示すように、制御装置PUは、コントローラPUBに対して、その入力側に、この制御装置PUによるエンジン回転速度の制御を有効/無効に切り換える自動制御入り切りスイッチ200と、前記回転量検出装置96と、エンジンEの出力回転速度を検出するエンジン回転速度センサ201と、エンジンEの各気筒内へ噴射される燃料の量を検出する燃料噴射量センサ202と、前記左右傾斜センサ1Bと、前記前後傾斜センサ1Cを接続し、その出力側には、エンジンEの各気筒内へ噴射する燃料噴射量を調節する燃料噴射量調節用ソレノイド203と、前記第一シーブ23および第二シーブ24を開閉操作する電動モータ204と、前記風割66を回動調節する電動モータ205と、前記スクレーパ82を左右往復摺動させる駆動モータ85と、モニター206を接続して構成する。
(制御作動)
この構成により、揺動選別棚20上の処理物の量が増加した場合に、エンジンEの回転速度を自動的に増速することで、唐箕16からの選別風量が増加すると共に揺動選別棚20の揺動速度が増速し、揺動選別棚20上の処理物の後方移送能力が高まり、藁屑の排出が促進されて脱穀選別作業の能率が高まると共に、処理物中の穀粒の漏下が促進されて藁屑と共に排出されにくくなり、穀粒回収率を高めることができる。一方、揺動選別棚20上の処理物の量が減少した場合には、エンジンEの回転速度を自動的に減速することで、唐箕16からの選別風量が減少すると共に揺動選別棚20の揺動速度が減速し、揺動選別棚20上の処理物の後方移送能力が低下し、処理物中の穀粒の漏下が促進されて藁屑と共に排出されにくくなり、穀粒回収率を高めることができる。尚、エンジンEの増速上限の速度は、毎分2800回転程度の定格回転に設定するが、処理物の量が設定量を超えた場合には、エンジンEの回転速度をフルスロットル相当の回転速度まで増速する構成としてもよい。
また、処理物量検出センサ95の検出結果に基づいて第一シーブ23および第二シーブ24の開度を自動的に変更することで、揺動選別棚20上の処理物の量が増加した場合に第一シーブ23および第二シーブ24を開くことで、処理物中の穀粒の漏下が促進され、藁屑と共に排出されにくくなり、穀粒回収率を更に高めることができる。一方、揺動選別棚20上の処理物の量が減少した場合に第一シーブ23および第二シーブ24を閉じることで、藁屑の回収を抑え、選別精度を高めることができる。
また、処理物量検出センサ95の検出結果に基づいて風割66の傾斜姿勢を変更して選別風の送風方向を上下に変更することで、揺動選別棚20上の処理物の量が増加した場合に選別風の送風方向を揺動選別棚の揺動方向に沿う方向に倒すことで、この選別風によって処理物の後方移送能力を高め、脱穀作業の能率を高めることができる。また、揺動選別棚20上の処理物の量が減少した場合に選別風の送風方向を立ち上げることで、選別風による処理物の後方移送能力を低下させ、穀粒回収率を高めることができる。
また、処理物量検出センサ95の検出結果に基づいて選別風の送風量をも変更することで、脱穀作業の能率と穀粒回収率を更に高めることができる。
また、処理物量検出センサ95を、揺動選別棚20の前部の移送棚22上に上下動自在に配置したフロート97と、このフロート97の上下動位置を検出する回転量検出装置96から構成したので、移送棚22上の処理物の量を精度よく検出することができる。
【0069】
また、左右傾斜センサ1Bまたは前後傾斜センサ1Cの少なくとも一方の傾斜センサによって機体1Aの傾斜が検出された場合に、駆動モータ85への作動出力を変更する。
即ち、機体1Aが右下がりに傾斜した場合には、スクレーパ82の左方向への摺動速度を増速させ、一方、機体1Aが左下がりに傾斜した場合には、スクレーパ82の右方向への摺動速度を増速させる。
これによって、揺動選別棚20上の処理物が左右一側に偏ることを防止でき、選別精度が高まる。
また、機体1Aが前下がりに傾斜した場合には、スクレーパ82の往復摺動速度を増速する。これによって、揺動選別棚20上の処理物の後方移送を促進し、選別作業の能率が高まる。一方、機体1Aが後下がりに傾斜した場合には、スクレーパ82の往復摺動速度を減速する。これによって、揺動選別棚20上の処理物の後方移送を抑制し、穀粒の排出を抑えて回収率を高めることができる。
【0070】
前記モニター206は3次元画像を表示可能であり、例えば、グレンタンク5内に貯留された穀粒の堆積高さを3次元表示することで、操縦者にわかりやすいものとすることができる。また、エンジンEのオーバーヒート状態などの異常状態をモニター206に三次元表示して警告するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1A 機体
2 走行装置
3 脱穀装置
4 刈取装置
11 扱室
16 唐箕
20 揺動選別棚
23 第一シーブ(シーブ)
24 第二シーブ(シーブ)
65 送風口
66 風割
95 処理物量検出センサ
96 回転量検出装置(センサ)
97 フロート(接触子)
E エンジン
PU 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)を備えた機体(1A)の前部に刈取装置(4)を設け、該刈取装置(4)の後側には脱穀装置(3)を設け、該刈取装置(4)および脱穀装置(3)を駆動するエンジン(E)を設けたコンバインにおいて、前記脱穀装置(3)に備えた扱室(11)の下方に揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)の前部下方には選別風送風用の唐箕(16)を設け、前記揺動選別棚(20)上の処理物の量を検出する処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいてエンジン(E)の回転速度を自動的に変速する制御装置(PU)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記揺動選別棚(20)に備えた複数のシーブ(23,24)を開度変更自在に構成し、前記処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて該シーブ(23,24)の開度を自動的に変更する構成とした請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記唐箕(16)の送風口(65)に風割(66)を傾斜姿勢変更自在に設け、前記処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて風割(66)の傾斜姿勢を変更して選別風の送風方向を上下に変更する構成とした請求項1または請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記処理物量検出センサ(95)の検出結果に基づいて風割(66)の傾斜姿勢を変更して選別風の送風方向と送風量を変更する構成とした請求項3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記処理物量検出センサ(95)を、揺動選別棚(20)の前部の移送棚(22)上に上下動自在に配置した接触子(97)と、該接触子(97)の上下動位置を検出するセンサ(96)から構成した請求項1から請求項4のいずれか一項記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−74858(P2013−74858A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217935(P2011−217935)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】