説明

コンバイン

【課題】二番還元ラセンの回転速度を変えることなく扱胴の回転速度を変速することができると共に、扱胴と二番還元ラセンの回転が同一方向となる脱穀装置を備えたコンバインを提供する。
【解決手段】分配軸70の一端部側に扱胴出力軸76を並設し、分配軸70に摺動自在で複数の変速駆動ギヤ75を設けると共に、扱胴出力軸76に変速駆動ギヤ75と噛合する複数の変速従動ギヤ79,80を一体に設け、更に、分配軸70の他端部側に二番還元ラセン出力軸77を並設し、分配軸70に駆動ギヤ78を一体に設けると共に、二番還元ラセン出力軸77に駆動ギヤ78と噛合する従動ギヤ79を一体に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取った穀類を脱穀する脱穀装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインには、前処理部(刈取り部)で刈取った穀類を脱穀する脱穀装置を備えていることが知られている。該脱穀装置は、穀類を脱穀する扱胴及び穀粒を選別する選別部を備えていると共に、二番物を還元して再度選別させる二番還元ラセンを備えている。
【0003】
ところで、前記脱穀装置での脱穀作業は、前記扱室内の扱胴を回転させながら行うが、例えば、汎用型コンバインにあっては、稲、麦、大豆などの様々な穀類の収穫を行う。そのため、豆類などの傷つきやすい穀粒を脱穀する際に、脱穀しづらい麦や稲などと同じ回転速度で扱胴を回転させると、せっかく収穫した豆類を痛めてしまう虞がある。
【0004】
そこで従来、エンジンから動力を伝達して上記扱胴及び二番還元ラセンを回転させると共に、これら扱胴及び二番還元ラセンのそれぞれへ動力を分岐する分岐点よりも伝動上流側に変速機構を配設したものがある(特許文献1参照)。これにより、扱胴の回転速度を収穫する穀粒の種類に応じて変更可能となると共に、このコンバインは二番還元ラセンによって二番物を、上記変速可能な扱胴が支承される扱室内へと還元するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−245610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載のコンバインは、変速機構を扱胴及び2番還元ラセンへ動力を分岐する分岐点よりも動力伝達上流側に設けているため、扱胴を変速すると二番還元ラセンも同期して変速されてしまい、扱胴の回転を低回転にすると、二番還元ラセンの回転速度も遅くなり、二番物を扱室に還元する二番還元ラセンの処理能力が低下してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、穀粒の損傷が少なくかつ、二番還元ラセンの処理能力の高いコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、扱室(11)内に回転自在に支持される扱胴(12)と、
前記扱室(11)の下方に配設され、前記扱胴(12)によって脱穀された穀粒を選別する選別部(27)と、
前記選別部(27)によって選別が不十分な混合物を機体上方側へと搬送する搬送装置(47)、前記扱胴に並設されると共に前記搬送装置(47)から混合物を受け取って前記扱室(11)に還元する二番還元ラセン(13)を有する二番還元装置(37)と、
前記扱胴(11)に動力伝達する扱胴伝動系(T1)と前記二番還元ラセン(13)に動力伝達する二番還元伝動系(T2)とに動力源からの動力を分岐する動力分岐機構(73)と、
前記扱胴伝動系に介在すると共に複数のギヤ列(75,79,80)を有し、これら複数のギヤ列(75,79,80)の切換えにより前記扱胴(12)の変速を行う扱胴変速機構(83)と、
前記扱胴(12)の回転方向と前記二番還元ラセン(13)の回転方向とを同じにする回転方向調節機構(85)と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また(例えば、図7を参照)、前記動力分岐機構(73)は、前記動力源から入力された動力を前記扱胴伝動系(T1)と前記二番還元伝動系(T2)とに分配する分配軸(70)を有し、
前記扱胴変速機構(83)は、前記分配軸(70)の一端部側に設けられギヤ径が互いに異なる複数の変速駆動ギヤ(75)、前記分配軸に並設された第1出力軸(76)に取付けられ前記複数の変速駆動ギヤ(75)と噛合する複数の変速従動ギヤ(79,80)を有し、
前記回転方向調整機構(85)は、前記分配軸(70)の他端部側に取付けられた駆動ギヤ(78)、該分配軸(70)に並設され前記二番還元ラセン(13)を回転駆動させる第2出力軸(77)、該第2出力軸(77)に取付けられ前記駆動ギヤ(78)に噛合する従動ギヤ(79)を有すると好適である。
【0010】
更に、前記扱胴(12)は、その外周にラセン状に形成された扱歯(16)によって、回転しながら前記扱室(11)に搬送された穀類を後方側へと搬送する、と好適である。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、扱胴に動力伝達する伝動経路に扱胴変速機構を介在させたので、収穫する穀物の種類に応じて扱胴の回転速度を変えることができ、穀粒をできるだけ傷つけずに脱穀することができる。また、扱胴の回転を低回転としても、二番還元ラセンの回転速度は一定であるため、穀粒と夾雑物との混合物を、二番還元ラセンにより安定して扱室に還元することができる。更に、扱胴及び二番還元ラセンの回転方向を同一方向にする回転方向調整機構を備えたので、扱胴の回転方向に向かって混合物を扱室内に還元することができ、還元された混合物が搬送路に詰まるのを防止できる。
【0013】
請求項2に係る発明によると、扱胴変速機構を、動力を分配する分配軸の一端部側に設けられた複数の変速駆動ギヤと、分配軸に並設された第1出力軸に取付けられて、変速駆動ギヤと噛合する複数の変速従動ギヤとで構成したので、扱胴変速機構をコンパクトにすることができる。また、回転方向調整機構を、分配軸の他端部側に取付けられた駆動ギヤと、分配軸に並設されて二番還元ラセンを回転駆動させる第2出力軸に取付けられて駆動ギヤと噛合する従動ギヤとから構成したので、回転方向変更機構をコンパクトにすることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によると、汎用型コンバインにおいて、二番還元ラセンの回転速度をそのままに、扱胴の回転速度を変速可能としたことによって、高い処理能力を維持しつつ、豆類などの傷つきやすい穀類を収穫する場合であっても穀粒を極力傷つけずに脱穀することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る汎用型コンバインの左側面図。
【図2】コンバインが備える脱穀装置の内部構造を示した左側面図。
【図3】脱穀装置の内部構造を示した平面図。
【図4】脱穀装置の右側面図。
【図5】脱穀装置の背面図。
【図6】脱穀装置の断面図。
【図7】脱穀装置に設けられた変速機構を示す図であって、(a)は平面視における断面図であり、(b)は左側面視における断面図であり、(c)は変速機構を収納するギヤケースの背面図である。
【図8】コンバインの伝動図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るコンバイン1について図面に沿って説明をする。コンバイン1は、図1及び図2に示すように汎用型コンバインであり、左右一対のクローラ走行装置2に支持された機体3を有している。該機体3の前方には、穀類を刈取るための前処理部5が昇降自在に設けられており、該前処理部5の後方には、作業者(運転者)がコンバイン1を操作するための運転操作部6が設けられている。該運転操作部6の後方には、前処理部5で刈取った穀類を脱穀する脱穀部である脱穀装置7と、該脱穀装置7で脱穀した穀粒を貯蔵するグレンタンク9(図3参照)が並んで配設されている。また、機体3にはグレンタンク9内の穀粒を機外に排出するための排出オーガ10が設けられている。
【0017】
上記脱穀装置7は、図2に示すように、扱室11を備えており、該扱室11内には、扱室11の前後方向を向いて扱胴12が回転自在に軸87によって支持されており、扱室11の前方側には、穀類を扱室の中へ搬入する供給口15が形成されている。扱胴12は、前方側が略円錐形状の胴部12aを有していると共に、この扱胴12の外周にはラセン状に形成された扱歯16が巻回されている。なお、本実施形態において扱歯16とは、主に穀類の搬送をするこのラセン状の板部16aと、この板部16aに等間隔に配設された複数の歯部16bと、のことを言う。また、扱室11の側方には、扱胴12と平行に二番還元ラセン13が回転自在で配設されている。
【0018】
扱胴12の下方には、扱胴12を覆うように断面円弧形状に形成された受網20が設けられており(図6参照)、該受網20の下方には、脱穀部(脱穀装置7)にて脱穀された穀粒を選別する選別部24が設けられている。選別部24は、揺動移動板21、チャフシーブ22、ラック23、ストローラック25、及びグレンシーブ26などから構成された揺動選別体27、唐箕ファン29などを備えて構成されており、揺動選別体27によって揺動選別しつつ、唐箕ファン29からの選別風によって風選別されるように構成されている。
【0019】
また、唐箕ファン29後方には、後述する一番揚穀装置36に一番物を搬送する一番ラセン31が進行方向に直交するように配設されており、一番ラセン31の後方には、ターボファン32が設けられている。該ターボファン32の後方には、選別不十分でワラ屑や穂切れ粒などの夾雑物と穀粒とが混合した混合物(二番物)を後述する二番還元装置37に搬送する二番ラセン35が機体前後方向に直交するように配設されている。
【0020】
扱室11の側方には、図2、図3、及び図4に示すように、一番物をグレンタンク9内に搬送する一番揚穀装置36が配設されており、該一番揚穀装置36の隣には、二番物を扱室11内に搬送する二番還元装置37が並設されている。
【0021】
一番揚穀装置36は、スプロケット39に巻き掛けられたチェーン40と、該チェーン40に取付けられた複数のバケット41とからなる搬送装置42を備えており、二番還元装置37は、スプロケット43に巻き掛けられたチェーン45と、該チェーン45に取付けられた複数の板(ペラ)46とからなる搬送装置47及び二番還元ラセン13を備えている。
【0022】
一番揚穀装置36及び二番還元装置37と扱室11の側板との間には、図4に示すように、動力源であるエンジン4(図8参照)の動力(回転)を伝達する伝動機構49が配設されている。該伝動機構49は、カウンタ軸50,51に支持されたプーリ52,53及び後述するギヤケース63に回転を入力する入力軸55に支持されたプーリ56と、これらプーリ52,53,56に巻き掛けられたベルト57,59,60とを備えると共に、テンションクラッチ61,62を備えている。
【0023】
上記ギヤケース63は、図3及び図4に示すように、扱室11の後部側方に配設されており、外形が小さく形成された筐体部は、扱室11の側板と接し、外形が大きく形成された筐体部が、扱室11の後板と接した状態で扱室11の後方に突出するように配置されている。即ち、ギヤケース63は大径部と小径部との角部が扱室11の後端部の角部に合うように配設されている。
【0024】
また、上記ギヤケース63の後面からは、後述する扱胴出力軸76が突出しており、該扱胴出力軸76の端部には、図4及び図5に示すように、プーリ65が取付けられている。該プーリ65と、軸87の端部に取付けられたプーリ67とには、ベルト64が巻き掛けられていると共に、扱室11の後板には、これらプーリ65,67間の動力伝達を断接するテンションクラッチ69が設けられている。
【0025】
ギヤケース63内には、図7に示すように、分配軸70が配置されており、該分配軸70に取付けられたベベルギヤ71と、入力軸55のギヤケース63内の端部に取付けられたベベルギヤ72とが噛合している。そして、この分配軸70によって、扱胴12に動力伝達する扱胴伝動系T1と二番還元ラセン13に動力伝達する二番還元伝動系T2とに動力源(例えばエンジン4)からの動力を分岐する動力分岐機構73が構成されている。
【0026】
上記分配軸70の一端部側には、第1出力軸である扱胴出力軸76が分配軸70と並設されており、他端部側には、第2出力軸である二番還元ラセン出力軸77が分配軸70と並設されている。分配軸70の扱胴出力軸76側のスプライン部70aには、摺動自在に変速駆動ギヤ75が設けられており、該変速駆動ギヤ75は、それぞれギヤ径が異なるギヤ75a,75bを有している。また、ギヤケース63には、変速駆動ギヤ75に近接して変速レバー81が設けられており、変速レバー81の端部に取付けられた連結部材82が変速駆動ギヤ75と係合している。扱胴出力軸76には、ギヤ径が異なる二つの変速従動ギヤ79,80が一体に取付けられており、該変速従動ギヤ79,80が変速駆動ギヤ75と噛合することでギヤ列が構成されている。そして、これら変速駆動ギヤ75、変速従動ギヤ79,80によって形成される複数のギヤ列及び変速レバー81などにより、上記複数のギヤ列を切換えて扱胴12の変速を行う扱胴変速機構83が構成されている。
【0027】
また、扱胴出力軸76の変速従動ギヤ79,80とは反対側の端部は、ギヤケース63から突出していると共に、上述したプーリ65が設けられている。そして、このプーリ65と扱胴12の回転軸87に設けられたプーリ67との間に、ベルト64が巻回されることによって、分配軸70から扱胴12まで動力を伝達する上記扱胴伝動系T1が構成されている。
【0028】
一方、分配軸70の二番還元ラセン出力軸77側には、駆動ギヤ78が分配軸70に一体に取付けられており、二番還元ラセン出力軸77には、従動ギヤ79が二番還元ラセン出力軸77に一体に取付けられている。該従動ギヤ79は駆動ギヤ78と噛合してギヤ列を構成している。これら従動ギヤ79及び駆動ギヤ78によって、上記扱胴変速機構83によって扱胴12と回転方向が逆転した二番還元ラセン13の回転方向を、扱胴12と同回転にする回転方向調整機構85が構成されている。また、二番還元ラセン出力軸77は、ターンバックル継手などの接続装置86を介して(図3参照)、二番還元ラセン13の回転軸13aと連結しており、これにより、分配軸70から二番還元ラセン13まで動力を伝達する上記二番還元伝動系T2が構成されている。
【0029】
次に、収穫作業における脱穀装置の動作について説明する。収穫に際し、作業者はコンバイン1に乗り込みエンジン4を掛けると共に、圃場まで走行すると、刈取りクラッチをオンして前処理部5に動力を伝達させると共に、脱穀クラッチをオンして脱穀装置7に動力を伝達させる。
【0030】
上記脱穀クラッチが入り状態(接続状態)になると、エンジン4の回転は伝動機構49に伝達され、図8に示すように、ベルト57,59を介してプーリ52,53に伝達されて、プーリ53からベルト60を介してプーリ56に伝達される。該プーリ56に回転が伝達されると、プーリ56を支持する入力軸55に回転が伝達される。
【0031】
入力軸55の回転は、ベベルギヤ71,72を介して分配軸70に伝達され、分配軸70に伝達された回転は、分配軸70によって扱胴伝動系(扱胴の伝動経路)T1及び二番還元伝動系(二番還元ラセンの伝動経路)T2のそれぞれの伝達経路に分岐されて伝達される。そして、二番還元ラセン13の伝達経路の回転は、駆動ギヤ78を介して従動ギヤ79に伝達されて、二番還元ラセン出力軸77が回転する。該二番還元ラセン出力軸77の回転と連動して接続装置86が回転し、二番還元ラセン出力軸77の回転が二番還元ラセン13の回転軸13aに伝達されて、二番還元ラセン13は回転する。
【0032】
扱胴12の伝達経路の回転は、変速駆動ギヤ75及び変速従動ギヤ79,80を介して扱胴出力軸76に伝達されて、扱胴出力軸76が回転する。この時、作業者が変速レバー81を後方に引っ張ると、変速レバー81は後方方向に摺動し、それに連動して変速駆動ギヤ75が後方に摺動する。この変速駆動ギヤ75の摺動により、変速駆動ギヤのギヤ75aと変速従動ギヤ79とが噛合して、扱胴12の伝動経路上には、回転を低速回転に変速する低速伝動経路が構築されて、回転が低速に変速されて扱胴出力軸76に伝達される。反対に、作業者が変速レバー81を前方に押すと、変速レバー81は前方方向に摺動し、それに連動して変速駆動ギヤ75が前方方向に摺動する。この変速駆動ギヤ75の摺動により、変速駆動ギヤのギヤ75bと変速従動ギヤ80とが噛合して、回転を高速回転に変速する高速伝動経路が扱胴12の伝動経路上に構築されて、回転が高速に変速されて扱胴出力軸76に伝達される。
【0033】
扱胴出力軸76に伝達された変速回転は、プーリ65に伝達されて、該プーリ65に伝達された回転は、ベルト64を介してプーリ67に伝達される。該プーリ67は、伝達された回転によって回転し、この回転に連動して軸87が回転すると共に、扱胴12が回転する。
【0034】
この時、扱胴12は、扱胴変速機構83のギヤの噛合により分配軸70とは反対方向に回転しているが、二番還元ラセン13も同様に二番還元伝動系T2において、回転方向調整機構85のギヤ78,79が噛合しているため、扱胴12と同一方向に向けて回転している。
【0035】
前処理部5によって刈取られた穀類は、脱穀フィーダ14によって供給口まで搬送され(図1参照)、扱室11の供給口15から扱室11内へと供給される。扱室11内に供給された穀類は、回転する扱胴12の扱歯16によって穀粒が扱ぎ落とされつつ扱室11の後方側へと搬送される。扱歯16によって扱ぎ落された穀粒は、受網20を通過して揺動選別体27に落下する。
【0036】
揺動選別体27に落下した穀粒は、揺動選別体27及び唐箕ファン29によって選別され、機体前方側に落下した穀粒は一番ラセン31によってグレンタンク9に回収される。また、機体後方の二番還元装置37によって回収された2番物は、搬送装置47の複数のペラ46で二番物を機体上方側まで搬送された後、二番還元ラセン13に搬送される。この二番還元ラセン13は、扱胴12に並設されており、搬送装置47から受け取った二番物を機体後方側から前方側に搬送して、機体前方側から扱室11に還元する。この時、図6に示すように、二番還元ラセン13の回転方向ω2は、扱胴12の回転方向ω1と同一方向となっているので、二番物も扱胴12の回転方向ω1に沿って、矢印ω3方向から扱室11内に投入されて再度選別される。
【0037】
上述のように、扱胴12に動力伝達する伝動経路に扱胴変速機構83を介在させたので、二番還元ラセン13の回転速度を変えることなく、例えば、麦などを脱穀する時は扱胴12の回転速度を速くして、大豆などを脱穀する時は扱胴12の回転速度を遅くするように、脱穀する穀類によって扱胴12の回転速度を変えることができる。これにより、穀粒を痛めることなく脱穀作業を行うことができると共に、二番還元ラセン13は一定の回転速度で回転するので、安定した二番還元ラセン13による二番物の扱室11への搬送を行うことができる。
【0038】
また、扱胴12及び二番還元ラセン13の回転方向を同一方向にする回転方向調整機構85を備えたので、扱胴12の回転方向に向かって二番物を扱室内に還元することができ、二番物を二番還元ラセン13で扱室内に還元する際に、搬送路内で二番物が詰まらないため、脱穀装置全体としての高い処理能力を維持することができる。
【0039】
また、扱胴変速機構83を、動力を分配する分配軸70の一端部側に設けられた複数のギヤを有する変速駆動ギヤ75と、分配軸70に並設され扱胴出力軸76に取付けられて、変速駆動ギヤと噛合する複数の変速従動ギヤ79,80とで構成したので、扱胴変速機構をコンパクトにすることができると共に、扱胴変速機構の構成を簡単にすることができるので、製造コストの抑制及び軽量化を図ることができる。
【0040】
更に、回転方向調整機構85を、分配軸70の他端部側に取付けられた駆動ギヤ78と、分配軸70に並設されて二番還元ラセン13を回転駆動させる二番還元ラセン出力軸77に取付けられて駆動ギヤ78と噛合する従動ギヤ79とから構成したので、回転方向調整機構85をコンパクトにすることができると共に、扱胴変速機構の構成を簡単にすることができるので、製造コストの抑制及び軽量化を図ることができる。
【0041】
また、扱胴12を支持する軸87をプーリ67及びベルト64を介して駆動するので、脱穀負荷が大きくなった場合には、ベルトスリップによりその負荷を逃がすことができ、脱穀負荷が大きくなった際の各装置に及ぼす影響を抑えることができる。
【0042】
また、扱胴12の外周に形成されたラセン状の扱歯16で穀類を扱ぎ落としつつ穀類を扱室11後方に搬送するので、二番還元ラセン13の回転速度をそのままに、扱胴12の回転速度を変速可能とし、高い処理能力を維持しつつ、豆類などの傷つきやすい穀類を収穫する場合であっても穀粒を極力傷つけずに脱穀することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、扱胴変速機構83を2つのギヤ列から構成したが、これに限らず、2つ以上のギヤ列から構成されるものであってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、回転方向調整機構85を2つのギヤが噛合うギヤ列から構成したが、これに限らず、例えば、分配軸70に二番還元ラセン13の回転軸を直接連結すると共に、扱胴変速機構83を3つのギヤからなるギヤ列として構成しても良い。即ち、回転方向調整機構85は、扱胴伝動系T1及び二番還元伝動系T2において、扱胴12と二番還元ラセン13との回転方向を同一方向にするギヤ構成であれば、どのような構成でも良い。
【符号の説明】
【0045】
1 コンバイン(汎用型コンバイン)
11 扱室
12 扱胴
13 二番還元ラセン
47 搬送装置
73 動力分岐機構
75 変速駆動ギヤ
76 第1出力軸(扱胴出力軸)
77 第2出力軸(二番還元ラセン出力軸)
79 変速従動ギヤ
80 変速従動ギヤ
83 扱胴変速機構
85 回転方向調整機構
T1 扱胴伝動系
T2 二番還元伝動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室内に回転自在に支持される扱胴と、
前記扱室の下方に配設され、前記扱胴によって脱穀された穀粒を選別する選別部と、
前記選別部によって選別が不十分な混合物を機体上方側へと搬送する搬送装置、前記扱胴に並設されると共に前記搬送装置から混合物を受け取って前記扱室に還元する二番還元ラセンを有する二番還元装置と、
前記扱胴に動力伝達する扱胴伝動系と前記二番還元ラセンに動力伝達する二番還元伝動系とに動力源からの動力を分岐する動力分岐機構と、
前記扱胴伝動系に介在すると共に複数のギヤ列を有し、これら複数のギヤ列の切換えにより前記扱胴の変速を行う扱胴変速機構と、
前記扱胴の回転方向と前記二番還元ラセンの回転方向とを同じにする回転方向調整機構と、を備えた、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記動力分岐機構は、前記動力源から入力された動力を前記扱胴伝動系と前記二番還元伝動系とに分配する分配軸を有し、
前記扱胴変速機構は、前記分配軸の一端部側に設けられギヤ径が互いに異なる複数の変速駆動ギヤ、前記分配軸に並設された第1出力軸に取付けられ前記複数の変速駆動ギヤと噛合する複数の変速従動ギヤを有し、
前記回転方向調整機構は、前記分配軸の他端部側に取付けられた駆動ギヤ、該分配軸に並設され前記二番還元ラセンを回転駆動させる第2出力軸、該第2出力軸に取付けられ前記駆動ギヤに噛合する従動ギヤを有する、
請求項1記載のコンバイン
【請求項3】
前記扱胴は、その外周にラセン状に形成された扱歯によって、回転しながら前記扱室に搬送された穀類を後方側へと搬送する、
請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−81377(P2013−81377A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221398(P2011−221398)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】