説明

コンバイン

【課題】脱穀フィードチェーンの搬送始端部における刈取穀稈の搬送姿勢の乱れを抑制することが可能なコンバインを提供する。
【解決手段】脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aに、刈取穀稈を搬送始端部11Aから浮かせて受け止め支持するように上方側に突出した支持作用位置Uと、前記脱穀フィードチェーン11の搬送始端部より下方側に引退した支持解除位置Dとに切換え自在な穀稈受け止め体24が備えられ、穀稈受け止め体24に、受け止め支持される穀稈がすべり落ちるのを防止するすべり落ち防止部Zが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、その搬送始端部より上方側に突出した支持作用位置と、前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部より下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体が備えられているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記穀稈受け止め体は、手刈りした刈取穀稈を手作業で脱穀処理する枕扱ぎ作業を行う際に、その枕扱き作業を行い易くすることができるものである。すなわち、穀稈受け止め体を支持作用位置に切り換えておくと、その穀稈受け止め体の上側に脱穀対象穀稈を乗せた状態にして脱穀フィードチェーンが作用しない状態で一時的に受け止めることができ、例えば、穀稈受け止め体にて受け止めて刈取穀稈の搬送姿勢を整えたのち脱穀フィードチェーンにて脱穀装置に向けて搬送させる等、枕扱き作業が行い易いものとなる。
【0003】
そして、従来では、脱穀対象穀稈が載置される穀稈受け止め体における上縁部は、枕扱ぎ作業を行う際に滑らかに穀稈を移送させることができるように側面視で略直線状の滑らかな面にて形成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
尚、特許文献1では、植立穀稈を刈り取り且つ刈取穀稈を脱穀フィードチェーンの搬送始端部に搬送する刈取処理部が、刈取作業位置とその刈取作業位置より上方に位置する非作業位置とにわたり昇降自在に設けられており、刈取処理部が刈取作業位置から非作業位置に上昇操作するのに伴って穀稈受け止め体が支持解除位置から支持作用位置に切り換わるように、穀稈受け止め体と刈取処理部とが連動連係される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−299335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来構成は、穀稈受け止め体における上縁部が滑らかな面にて形成されていたから、枕扱ぎ作業を行う際に穀稈を滑らかに移送させることができる利点はあるものの、次のような不利な面があった。
【0007】
すなわち、穀稈受け止め体が支持作用位置に切り換えられている状態において、刈取穀稈が穀稈受け止め体の上部側に位置して移送が停止される状態が続くと、その穀稈受け止め体の上部側に位置している刈取穀稈の株元側が機体前方下方側に向けてすべり落ちてしまうことがあった。このように刈取穀稈の株元側がすべり落ちることがあれば、その後、穀稈受け止め体が支持解除位置に切り換わって脱穀フィードチェーンの送り作用による搬送が再開されると、刈取穀稈の搬送乱れが生じて良好な脱穀処理が行えないおそれがある。
【0008】
説明を加えると、例えば、特許文献1に記載されるように、刈取処理部が刈取作業位置から非作業位置に上昇操作するに伴って、穀稈受け止め体が支持解除位置から支持作用位置に切り換わるように連動連係される構成では、圃場で1つの作業行程での刈取作業が終了して枕地で旋回走行する際に、刈取処理部を非作業位置に上昇させると、それに伴って穀稈受け止め体が支持作用位置に切り換えられることになる。そのとき、刈取処理部にて搬送されている刈取穀稈が、穀稈受け止め体の上部に位置している状態で、刈取処理部による搬送作用が無くなり搬送が停止されると、刈取穀稈が穀稈受け止め体の上部側に位置したままの状態が続くことになるので、このような場合に、上記したようなすべり落ちが発生することがある。そして、その後、次回の作業行程での刈取作業を開始するときに、上記したようなすべり落ちに起因して、脱穀フィードチェーンの搬送始端部において、刈取穀稈の穂先側が搬送方向下手側つまり機体後方側に向けて先行するのに対して、刈取穀稈の株元側が搬送方向上手側つまり機体前方側に向けて位置ズレするので、脱穀装置に対する搬送姿勢が乱れるおそれがあった。
【0009】
上述したような刈取穀稈のすべり落ちは、刈取処理部が刈取作業位置から非作業位置に上昇操作する場合に限らず、枕扱ぎ作業を行っているときに、刈取穀稈を穀稈受け止め体の上部側に載せた状態で一時的に手を離すような場合にも発生することがある。このような場合においても、刈取穀稈の穂先側が搬送方向下手側に向けて先行するのに対して、刈取穀稈の株元側が搬送方向上手側に向けてすべり落ちるので、脱穀装置に対する搬送姿勢が乱れるおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、脱穀フィードチェーンの搬送始端部における刈取穀稈の搬送姿勢の乱れを抑制することが可能なコンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るコンバインは、脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、刈取穀稈を搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように上方側に突出した支持作用位置と、前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部より下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体が備えられているものであって、その第1特徴構成は、前記穀稈受け止め体に、受け止め支持される穀稈がすべり落ちるのを防止するすべり落ち防止部が備えられている点にある。
【0012】
第1特徴構成によれば、穀稈受け止め体にすべり落ち防止部が備えられているから、穀稈受け止め体が支持作用位置に切り換えられている状態において、刈取穀稈が穀稈受け止め体の上部側に位置して移動が停止している状態が続くことがあっても、すべり落ち防止部にて刈取穀稈がすべり落ちることを防止することができるのである。
【0013】
その結果、脱穀フィードチェーンの搬送始端部において、刈取穀稈の穂先側が搬送方向下手側つまり機体後方側に向けて先行するのに対して、刈取穀稈の株元側が搬送方向上手側に向けて位置ズレする等により、脱穀フィードチェーンにて搬送される刈取穀稈の搬送姿勢が乱れることを防止することができる。つまり、穀稈受け止め体が支持解除位置に切り換わって脱穀フィードチェーンの送り作用による搬送が再開されたときに、刈取穀稈の搬送乱れが生じるおそれが少ないものとなる。
【0014】
従って、脱穀フィードチェーンの搬送始端部における刈取穀稈の搬送乱れを抑制することが可能なコンバインを提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記すべり落ち防止部が、前記穀稈受け止め体に穀稈移送方向に沿って凹部と凸部とを形成した凹凸部にて構成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、穀稈移送方向に沿って凹部と凸部とを形成した凹凸部にてすべり落ち防止部が構成されるので、穀稈受け止め体が支持作用位置に切り換えられている状態において、刈取穀稈が穀稈受け止め体の上部側に位置して移動が停止している状態が続くことがあっても、その刈取穀稈が穀稈受け止め体に形成された凹凸部に引っ掛かり、刈取穀稈のすべり落ちを防止することができるのである。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記すべり落ち防止部が、前記穀稈受け止め体に形成された粗面部にて構成されている点にある。
【0018】
第3特徴構成によれば、穀稈受け止め体に形成された粗面部にてすべり落ち防止部が構成される。粗面部というのは、例えば、表面に砂粒のような細かく硬い粒状の物質を均した状態で備えたサンドブラスト状の粗面部や、例えば木材やゴム等の摩擦係数の大きい材質からなる粗面部等、要するに、刈取穀稈がすべり難いものとなるような粗面にて形成されるものである。
【0019】
このように粗面部にてすべり落ち防止部が構成されるので、穀稈受け止め体が支持作用位置に切り換えられている状態において、刈取穀稈が穀稈受け止め体の上部側に位置して移動が停止している状態が続くことがあっても、その刈取穀稈が穀稈受け止め体に形成された粗面部によってすべり難いものとなるから、刈取穀稈のすべり落ちを防止することができるのである。
【0020】
本発明の第4特徴構成は、前記すべり落ち防止部が、前記支持作用位置に切り換えられた状態で穀稈を受止め係止自在な係止部材にて構成されている点にある。
【0021】
第4特徴構成によれば、穀稈を受止め係止自在な係止部材にてすべり落ち防止部が構成されるので、穀稈受け止め体が支持作用位置に切り換えられている状態において、刈取穀稈が穀稈受け止め体の上部側に位置して移動が停止している状態が続くことがあっても、その刈取穀稈が係止部材にて受け止め係止されることにより、刈取穀稈のすべり落ちを防止することができるのである。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、前記すべり落ち防止部が、前記穀稈受け止め体における前記搬送始端部より上方側に突出する受け止め作用領域の少なくとも機体前部側箇所に備えられている点にある。
【0023】
脱穀フィードチェーンの搬送始端部は、搬送されてくる刈取穀稈の受け渡しを良好に行えるように刈取穀稈を案内するために、例えば、搬送作用面が機体前方側ほど下方に位置するような傾斜姿勢に設けられるものがあるが、第5特徴構成によれば、穀稈受け止め体における受け止め作用領域の機体前部側箇所にすべり落ち防止部が備えられるので、刈取穀稈が穀稈受け止め体の上部側に位置して移動が停止している状態が続くことがあっても、穀稈受け止め体の受け止め作用領域の機体前部側箇所にてすべり落ちが防止されることから、受け止め作用領域の全領域に位置する刈取穀稈が機体前方下方へすべり落ちることを防止できる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、前記穀稈受け止め体が、機体前部側ほど下方側に位置する傾斜状に設けられた傾斜案内部と、その傾斜案内部の機体後方側に連なる状態で、前記脱穀フィードチェーンに沿って略直線状に設けられた直線状案内部とを備えて構成され、前記すべり落ち防止部が、前記直線状案内部に備えられている点にある。
【0025】
第6特徴構成によれば、穀稈受け止め体に傾斜案内部が設けられるので、搬送されてくる刈取穀稈が引っ掛かることによる刈取穀稈の搬送が阻害されることがない。
又、穀稈受け止め体が支持作用位置に切り換えられると、傾斜案内部の機体後方側に連なる直線状案内部が脱穀フィードチェーンの搬送始端部より上方側に突出する状態となるが、この直線状案内部は、脱穀フィードチェーンに沿って略直線状に設けられるので、支持作用位置と支持解除位置とに切換えるための移動量をできるだけ少なくしながらも、直線状案内部の全域を脱穀フィードチェーンの搬送始端部より上方側に突出させることができる。
【0026】
従って、刈取穀稈の搬送が阻害されることがなく、しかも、支持作用位置と支持解除位置とに切換えるための移動量をできるだけ少なくして、穀稈受け止め体の位置切り替えのための支持構造を上下方向にコンパクトなものにできる利点がある。
【0027】
本発明の第7特徴構成は、前記穀稈受け止め体が、植立穀稈を刈り取る作業状態では前記支持解除位置になり、刈取作業を行わない非作業状態では前記支持作用位置になるように構成されている点にある。
【0028】
第7特徴構成によれば、植立穀稈を刈り取る作業状態では穀稈受け止め体が支持解除位置になるので、刈り取られて脱穀フィードチェーンの搬送始端部に搬送されてくる刈取穀稈が、穀稈受け止め体によって搬送が阻害されることがなく、脱穀フィードチェーンにより良好に搬送されることになる。
【0029】
そして、刈取作業を行わない非作業状態では穀稈受け止め体が支持作用位置になるので、脱穀フィードチェーンが作動している状態であっても、脱穀フィードチェーンの影響を受けない状態で穀稈受け止め体に手作業で刈取穀稈を載置させることができ、枕扱ぎ作業を良好に行うことができる。
【0030】
又、例えば、1つの作業行程での刈取作業が終了して、次回の作業行程に向けて移動するために枕地で旋回走行するような場合には、一時的に非作業状態になるが、このとき刈取処理部による脱穀フィードチェーンへの刈取穀稈の搬送が停止されることになる。
このとき、刈取穀稈の穂先側は、刈取処理部による搬送装置等により係止保持されるが、刈取穀稈の株元側は支持作用位置に切り換わっている穀稈受け止め体にて受け止められる。そして、穀稈受け止め体にはすべり落ち防止部が形成されていることから、刈取穀稈の株元側はすべり落ち防止される状態で支持されるので、刈取穀稈がすべり落ちることに起因して刈取穀稈の搬送乱れが生じることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】伝動構成図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】穀稈受け止め体配設部の左側面図である。
【図5】穀稈受け止め体配設部の右側面図である。
【図6】穀稈受け止め体配設部の平面図である。
【図7】穀稈受け止め体配設部の縦断正面図である。
【図8】外側穀稈受け止め体の要部の側面図である。
【図9】非作業状態における連動操作装置を示す図である。
【図10】枕扱き状態における連動操作装置を示す図である。
【図11】作業状態における連動操作装置を示す図である。
【図12】第2実施形態の穀稈受け止め体配設部の左側面図である。
【図13】第2実施形態の穀稈受け止め体配設部の右側面図である。
【図14】第2実施形態の穀稈受け止め体配設部の平面図である。
【図15】第2実施形態の穀稈受け止め体配設部の縦断正面図である。
【図16】別実施形態の外側穀稈受け止め体の要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係るコンバインの第1実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L,1Rを走行機体2の下部に備え、走行装置1L,1Rの駆動により走行機体2が走行自在に構成されている。走行機体2の前部には、昇降操作自在でかつ圃場の植立穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を後方に搬送する刈取処理部3が設けられ、走行機体2上に、刈取処理部3で刈り取られた穀稈を受け取って脱穀および選別処理する脱穀装置4と、脱穀装置4で脱穀および選別処理することにより得られた穀粒を貯留する穀粒タンク5とが搭載されるとともに、穀粒タンク5の前方箇所の走行機体2上に搭乗運転部6が形成されている。
【0033】
前記刈取処理部3は、植立穀稈を引き起こす引起し装置7、引き起こされた植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置8、刈り取った縦姿勢の刈取穀稈を挟持搬送しながら徐々に横倒れ姿勢に姿勢変更しながら機体後方に搬送する縦搬送装置9等を備えて構成され、横軸芯P1周りで昇降揺動自在に機体に支持されており、油圧シリンダ10の駆動操作により、刈取作業を行う刈取作業位置と、その刈取作業位置より大きく上方に上昇した非作業位置とにわたり昇降自在に設けられている。
【0034】
脱穀装置4は、縦搬送装置9により機体後方に搬送されてくる刈取穀稈の株元側を脱穀フィードチェーン11と挟持レール12とにより挟持して機体後方に搬送しながら、脱穀装置4内部の図示しない扱胴により穂先側を扱き処理して脱穀処理を行うように構成されている。
【0035】
図1に示すように、脱穀装置4に備えられる脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aには、挟持レール12が設けられていないので、縦搬送装置9から受け渡される穀稈を脱穀フィードチェーン11における搬送始端部11Aの搬送面に押さえつけて搬送始端部11Aとの協働により穀稈の搬送を可能にさせる供給ガイド13が取り付けられている。
【0036】
この供給ガイド13は、脱穀装置4の前壁部に上下揺動自在に取り付けた支持アーム14に取り付けられて、支持アーム14の上下揺動により、穀稈を搬送面に押さえつける作用姿勢と上方に退避した退避姿勢とに切り換わるように構成されている。つまり、支持アーム14と脱穀装置4との間には、支持アーム14が設定姿勢(デッドポイント)よりも下側にあるとき、支持アーム14を下方に揺動付勢して作用姿勢(図1の実線で示す姿勢)に保持し、かつ、設定姿勢(デッドポイント)よりも上方に位置すると、支持アーム14を退避姿勢(図1の仮想線で示す姿勢)に揺動付勢する姿勢切り換え用のトグルバネ15が張設されている。
尚、このトグルバネ15の付勢力は、支持アーム14を作用姿勢と退避姿勢とにわたり手動操作にて切り換えることができるように、挟持レール12の付勢力に比べて小さめの付勢力に設定されている。
【0037】
次に伝動構造について説明する。
図2に示すように、エンジンEの動力が伝動ベルト16及び伝動プーリ17を介して走行変速用の静油圧式の無段変速装置18に伝達され、この無段変速装置18からの変速出力は、ミッションケース19内の図示しない変速機構を経由して、走行装置1R,1Lの夫々に伝達されている。エンジンEの動力は、脱穀クラッチ20を介して脱穀装置4に伝達される。又、刈取処理部3に対しては、無段変速装置18の入力軸を兼ねる伝動軸21からの動力が伝達されるように、伝動ベルト45及び刈取クラッチ23を介して刈取処理部3に伝達される。尚、脱穀クラッチ20と刈取クラッチ23は、後述する連動操作装置Sによりクラッチ入り切り操作を行うことができるように構成されている。
【0038】
無段変速装置18は、エンジンEからの動力によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ18A(図3参照)と、その可変容量型の油圧ポンプ18Aからの供給油で回転駆動される油圧モータ18B(図3参照)との対で構成された周知構造の静油圧式無段変速装置(HST)によって構成されている。エンジンEの動力は、伝動ベルト16及び伝動プーリ17を介して可変容量型の油圧ポンプ18Aのポンプ軸であるところの伝動軸21に伝達される。
【0039】
ミッションケース19は、その内部に、無段変速装置18からの出力軸(図示せず)が内装され、この出力軸からの変速出力が左右一対の走行装置1R,1Lに伝達される構成となっている。刈取処理部3には、無段変速装置18からの変速出力ではなく、無段変速装置18に対して入力される伝動軸21の回転動力がそのまま伝達される。
【0040】
脱穀装置4に備えられる脱穀フィードチェーン11の搬送始端側には、刈取穀稈を脱穀フィードチェーン11の搬送始端部から浮かせて受け止め支持するように上方側に突出した支持作用位置Uと、脱穀フィードチェーン11の搬送始端部より下方側に引退した支持解除位置Dとに切換え自在に構成された穀稈受け止め体24が備えられている。
【0041】
次に、前記穀稈受け止め体24の構成について説明する。
図4〜図7に示すように、穀稈受け止め体24として、脱穀フィードチェーン11における機体横幅方向での外方側箇所に備えられる外側穀稈受け止め体25と、内方側箇所に設けられる内側穀稈受け止め体26とが備えられ、それらは共に縦向き姿勢の板状体によって構成されている。
【0042】
図4、図6及び図7に示すように、外側穀稈受け止め体25は、機体側の固定箇所としてのフィードチェーン支持枠27に対して横軸芯周りで揺動自在に支持された前後一対のリンク部材28a,28b夫々の一端部側に枢支連結され、各リンク部材28a,28bの他端側同士を連結体29によって枢支連結してあり、平行四連リンク機構が構成されている。そして、各リンク部材28a,28bを一体的に揺動操作させることで、外側穀稈受け止め体25が平行上下動して支持作用位置Uと支持解除位置Dとに切り換えることが可能な構成となっている。
【0043】
図5、図6及び図7に示すように、内側穀稈受け止め体26も外側穀稈受け止め体25と同様に、フィードチェーン支持枠27に対して横軸芯周りで揺動自在に支持された前後一対のリンク部材30a,30bの一端部側に枢支され且つ各リンク部材30a,30bの他端側同士を連結体31によって枢支連結して平行四連リンク機構が構成され、支持作用位置Uと支持解除位置Dとに切り換え自在に支持される構成となっている。
【0044】
図4及び図5に示すように、外側穀稈受け止め体25及び内側穀稈受け止め体26は、夫々、各リンク部材28a,28b,30a,30bに相対回動自在に枢支連結される後部側取付け部25A,26Aと、その後部側取付け部25A,26Aよりも上方に突出して支持作用位置Uに切り換えられると脱穀フィードチェーン11における搬送始端部11Aよりも上方に突出して刈取穀稈を脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aから浮かせて受け止め支持する前部側作用部25B,26Bと、その前部側作用部25B,26Bよりも機体前部側に位置して、滑らか円弧状であって且つ機体前部側ほど下方側に位置する傾斜状に設けられた傾斜案内部25C,26Cとを備えて構成され、さらに、前部側作用部25B,26Bの上縁部32と後部側取付け部25A,26Aの上縁部33とが連なる箇所には傾斜状段差部25D,26Dが形成されている。
【0045】
外側穀稈受け止め体25における前部側作用部25Bの上縁部32は、傾斜案内部25Cの機体後方側に連なる状態で、脱穀フィードチェーン11に沿って略直線状に設けられる構成となっており、この外側穀稈受け止め体25における前部側作用部25Bの上縁部32が直線状案内部を構成している。尚、図4及び図5では、図面を理解し易くするために、供給ガイド13は図示を省略している。
【0046】
後部側取付け部25A,26Aは、支持作用位置Uに切り換えられても、脱穀フィードチェーン11における搬送始端部11Aよりも下方に引退した状態を維持するようになっており、刈取穀稈を脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aから浮かせて受け止め支持するための作用領域は、前部側作用部25B,26Bの上縁部32,33のみにより形成されることになる。このようにして穀稈を浮かせる領域が必要以上に長くならないようにしている。この領域が長いと、手作業により刈取穀稈を移動させる距離が長くなるからである。
【0047】
図6及び図7に示すように、外側穀稈受け止め体25を支持する前後一対のリンク部材28a,28bと、内側穀稈受け止め体26を支持する前後一対のリンク部材30a,30bとは、共通の揺動支軸34,35によりフィードチェーン支持枠27に支持される構成となっており、この揺動支軸34,35は、フィードチェーン支持枠27に設けられた筒状のボス部材36,37により回動自在に内嵌支持されるとともに、両側端部が内外両側のリンク部材28a,28b、30a,30bに固定されている。
【0048】
すなわち、外側穀稈受け止め体25を支持する後部側のリンク部材28aと内側穀稈受け止め体26を支持する後部側のリンク部材30aとが共通の揺動支軸34を介して一体的に揺動するように連動連結され、且つ、外側穀稈受け止め体25を支持する前部側のリンク部材28bと内側穀稈受け止め体26を支持する前部側のリンク部材30bとが共通の揺動支軸35を介して一体的に揺動するように連動連結されている。
【0049】
フィードチェーン支持枠27は、脱穀フィードチェーン11の挟持搬送作用域に沿って脱穀フィードチェーン11を受け止め案内する角筒状のチェーンガイド38の下方側に一体的に連結する状態で備えられた略L字形に屈曲した板状体にて構成され、このフィードチェーン支持枠27を貫通する状態でボス部材36,37が一体的に固定され、そのボス部材36,37にて揺動支軸34,35が回動自在に内嵌支持されている。
【0050】
そして、図5に示すように、内側穀稈受け止め体26における前部側作用部26Bの上縁部33は滑らかな面に形成されているが、図4及び図8に示すように、外側穀稈受け止め体25における前部側作用部25Bの上縁部32には、穀稈移送方向に沿って複数の凸部39と凹部40とが並ぶ状態で形成された凹凸部41が形成されている。
【0051】
又、図7に示すように、外側穀稈受け止め体25が内側穀稈受け止め体26よりも上方に突出する状態で配備されており、枕扱ぎ作業のときに刈取穀稈の穂先側が下向きになるように案内させることができ、脱穀装置4に供給させやすくなるようにしている。
【0052】
外側穀稈受け止め体25における前部側作用部25Bの上縁部32は、脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aより上方側に突出する受け止め作用領域に対応するものであり、凹凸部41は、上縁部32における機体前部側箇所に備えられ、且つ、載置される穀稈が機体後方側へ移動することを許容し且つ機体前方下方へ移動することを阻止するように鋸歯状に形成されている。
【0053】
つまり、図8に示すように、凹部40における機体後方側の斜面部分40aは、脱穀フィードチェーン11により搬送方向と平行に延びる上縁部32に対して折れ曲がり角が小さい緩やかな傾斜となるように形成され、一方、凹部40における機体前方側の斜面部分40bは、上縁部32に対して折れ曲がり角が大きい急な傾斜となるように形成されており、凹凸部41は鋸歯状に形成されている。
【0054】
このように凹凸部41を形成することにより、圃場での刈取作業中に枕地にて刈取処理部3を非作業位置に上昇させて旋回走行させる場合に、外側穀稈受け止め体25が支持作用位置Uに切り換わり、刈取穀稈の株元側が外側穀稈受け止め体25に載置されたまま縦搬送装置9の搬送が停止されたような場合であっても、刈取穀稈が凹凸部41にて受け止められて、外側穀稈受け止め体25の上縁部32に沿って機体前方下方へすべり落ちることを防止することができる。
【0055】
圃場の枕地にて旋回走行するときには、供給ガイド13は、穀稈を搬送面に押さえつける作用姿勢に設定されているので、機体が振動することがあっても、刈取穀稈が凹凸部41の作用によって機体前方下方へすべり落ちることを的確に防止することができる。
【0056】
ちなみに、外側穀稈受け止め体25の上縁部32が、上記した凹凸部41が形成されておらず側面視で直線状の滑らか面で構成されるものであれば、供給ガイド13により刈取穀稈を押さえつけていても、機体の振動等に起因して刈取穀稈が機体前方下方へすべり落ちるおそれがある。
【0057】
つまり、外側穀稈受け止め体25に形成された凹凸部41が、受け止め支持される穀稈が機体前方下方へすべり落ちるのを防止するすべり落ち防止部Zを構成している。
【0058】
尚、この実施形態では、刈取処理部3が非作業位置に上昇しているときに、穀稈受け止め体24に載置される刈取穀稈は穂先側が高い位置にあり、株元側が低い位置になるような傾斜姿勢になるので、刈取穀稈における株元側は外側穀稈受け止め体25にて載置支持されるので、すべり落ち防止部Zとしての凹凸部41は外側穀稈受け止め体25にのみ形成してあり、内側穀稈受け止め体26には形成していない。
【0059】
そして、このコンバインでは、動力源となる電動モータMを備えて、その電動モータMの動力で、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ23を入り切り操作自在で、且つ、穀稈受け止め体24の位置を支持作用位置Uと支持解除位置Dとに位置変更自在に構成された連動操作装置Sが設けられている。
【0060】
次に、連動操作装置Sの構成について説明する。
この連動操作装置Sは、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ23を入り切り操作するためのクラッチ連動操作部42と、穀稈受け止め体24の位置を支持作用位置Uと支持解除位置Dとに位置変更するための受け止め体連動操作部43とを備えて構成されている。
【0061】
前記クラッチ連動操作部42の構成について説明する。
図9〜図11に示すように、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ23は、夫々、伝動ベルト44,45に対して作用するテンション輪46,47を軸支したクラッチアーム48,49が備えられており、前記クラッチ連動操作部42は、このクラッチアーム48,49を駆動する為に、共通の回転操作軸50に取り付けられた2つの回転アーム51,52と、各回転アーム51,52に連結された揺動リンク53,54と、回転操作軸50を回動させる扇型ギヤ55と、扇型ギヤ55と咬合して電動モータMにより回転駆動されて扇型ギヤ55を駆動するピニオンギヤ56と、各揺動リンク53,54と各クラッチアーム48,49とをそれぞれ連結する連動ロッド57,58及びストローク吸収バネ59,60とを備えて構成されている。
【0062】
図9に示すように、回転操作軸50が非作業位置に回動すると、揺動リンク53,54が共にクラッチアーム48,49を緩める状態となり、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ23が夫々切り状態となり、脱穀装置4及び刈取処理部3が共に作動を停止している非作業状態に設定される。
【0063】
そして、電動モータMを操作して回転操作軸50が図10に示す枕扱ぎ位置にまで回動すると、扇型ギヤ55が回動して揺動リンク53が引き操作され、ストローク吸収バネ59を介してクラッチアーム48が揺動してテンション輪46にて伝動ベルト44に張力を与えて脱穀クラッチ20が入り状態に切り換わる。しかし、この位置では、刈取クラッチ23はクラッチ入り状態にはならずクラッチ切り状態を維持しており、脱穀装置4が作動しており且つ刈取処理部3の作動が停止している枕扱ぎ状態に設定される。
【0064】
さらに、電動モータMを操作して回転操作軸50が図11に示す作業位置にまで回動すると、脱穀クラッチ20を入り状態に維持したまま、扇型ギヤ55がさらに回動して揺動リンク54が引き操作され、ストローク吸収バネ60を介してクラッチアーム49が揺動してテンション輪47にて伝動ベルト45に張力を与えて刈取クラッチ23が入り状態に切り換わる。つまり、この位置では、脱穀装置4及び刈取処理部3が共に作動する作業状態に設定される。
尚、回転操作軸50がどの位置にあるかを検出するポテンショメータ型の操作位置検出器61が備えられ、後述するように、操作位置検出器61の検出情報及び他の指令情報に基づいて電動モータMの作動が制御されることになる。
【0065】
次に、前記受け止め体連動操作部43の構成について説明する。
図9〜図11に示すように、受け止め体連動操作部43は、電動モータMで駆動される回転操作軸50と一体に回動するカム体62と、そのカム体62の表面に接当するカムローラ64を備えたカムフォロワ65と、内側穀稈受け止め体26を支持する機体後部側のリンク部材30aの他端側箇所とカムフォロワ65とを連結させる連結ワイヤ66と、機体後部側のリンク部材30aから固定延設されたバネ受け部67aとフィードチェーン支持枠27から固定延設された固定側バネ受け部67bとにわたって架設される戻しバネ68とを備えて構成されている。
【0066】
前記戻しバネ68は、外側穀稈受け止め体25及び内側穀稈受け止め体26を共に支持解除位置Dに向けて回動させ、且つ、連結ワイヤ66に連結されているカムフォロワ65をカム体62に押し付けるように回動付勢するように構成されている。
【0067】
前記カム体62は、回転操作軸50が非作業位置及び枕扱ぎ位置にあるときに連結ワイヤ66を引き操作すべくカムローラ64を案内する大径円弧状カム面62a,62cと、回転操作軸50が作業位置にあるときに連結ワイヤ66の引き操作を解除して緩めるようにカムフォロワ65を案内する凹入カム面62bとを備えて構成されている。
【0068】
図9に示すように、回転操作軸50が非作業位置に回動すると、カムローラ64がカム体62によって大径円弧状カム面62aに案内されてカムフォロワ65がカム体62の回動軸芯P2から離れる方向に揺動して連結ワイヤ66を引き操作する状態となるので、一体的に揺動する外側穀稈受け止め体25及び内側穀稈受け止め体26、すなわち、穀稈受け止め体24が戻しバネ68の付勢力に抗して揺動操作されて、夫々、支持作用位置Uに操作される。
【0069】
そして、電動モータMを操作して回転操作軸50が非作業位置から図10に示す枕扱ぎ位置にまで回動させても、カムローラ64がカム体62によって大径円弧状カム面62cに案内される状態を維持するので、穀稈受け止め体24は支持作用位置Uに操作される状態が維持される。
【0070】
さらに、電動モータMを操作して回転操作軸50が図11に示す作業位置にまで回動すると、カムローラ64がカム体62によって凹入カム面62bに案内されてカムフォロワ65がカム体62の回動軸芯P2に近付く方向に揺動して連結ワイヤ66の引き操作を解除して緩める状態となり、穀稈受け止め体24は戻しバネ68の付勢力により支持解除位置Dに操作される。
【0071】
図3に示すように、電動モータMの作動を制御する制御装置Hと、無段変速装置18を高低変速操作する主変速レバー69の操作位置を判別するポテンショメータ型の変速状態検出器70と、搭乗運転部6に備えられて手動操作にて入り操作で作業開始を指令し且つ切り操作で作業終了を指令する作業スイッチ71と、回転操作軸50の回転角度を検出する操作位置検出器61と、刈取処理部3の揺動支点部に設けられて刈取処理部3の対機体高さを検出するポテンショメータ型の高さ検出器73とが備えられ、制御装置Hには、変速状態検出器70、作業スイッチ71、操作位置検出器61、高さ検出器73の夫々の検出信号が入力される。
【0072】
そして、制御装置Hは、変速状態検出器70、作業スイッチ71、操作位置検出器61、高さ検出器73の夫々の検出信号の情報に基づいて、電動モータMの作動を以下のように制御するように構成されている。尚、以下の説明では省略しているが、回転操作軸50が所望の位置であるか否かは操作位置検出器61にて検出するようになっている。
【0073】
作業開始前において、作業スイッチ71がオフされているときは、回転操作軸50が非作業位置になる状態で電動モータMの作動が停止している。つまり、このときは、刈取クラッチ23及び脱穀クラッチ20は共に切り状態になっている(図9参照)。
【0074】
そして、作業スイッチ71がオン操作され、且つ、変速状態検出器70により主変速レバー69が中立位置にあることが検出されると、回転操作軸50が枕扱ぎ位置になるように電動モータMを回転作動させる。このときは、刈取処理部3の高さはどの位置にあってもよい。回転操作軸50が枕扱ぎ位置になることにより、刈取クラッチ23は切り状態で且つ脱穀クラッチ20が入り状態となり、穀稈受け止め体24が支持作用位置Uになる(図10参照)。この状態では、車体の走行を停止させた状態で、枕扱ぎ作業を行うことができる。ちなみに、枕扱ぎ作業を行うときは、供給ガイド13を手動操作にて退避姿勢に切り換えることになる。
【0075】
この枕扱ぎ作業においては、凹凸部41が鋸歯状に形成されており、載置される穀稈が機体後方側へ移動することは許容される構成となっているので、機体前方下方への移動が阻止されている刈取穀稈を脱穀装置4側へ移動させる場合、凹凸部41にて機体後方側へ移動することが許容されるので、枕扱ぎ作業において穀稈の脱穀装置4への移送の際に、凹凸部41が穀稈移送の妨げになるおそれが少なく、移送作業が行い易いものとなる。
【0076】
刈取作業を開始するために、作業スイッチ71がオン操作されている状態で、刈取処理部3を作業位置に切り換えたことが高さ検出器73にて検出され、且つ、主変速レバー69が前進走行位置に操作されたことが検出されると、回転操作軸50が作業位置になるように電動モータMを回転作動させる。その結果、脱穀クラッチ20を入り状態に維持しながら刈取クラッチ23が入り状態になり、穀稈受け止め体24が支持解除位置Dに切り換わるので、車体を走行させながら植立穀稈を刈り取る刈取作業を実行することができる(図11参照)。
【0077】
1つの作業行程での刈取作業が終了して、枕地で旋回走行を行うために、刈取処理部3が非作業位置に上昇したことが高さ検出器73にて検出されると、主変速レバー69がどの操作位置に操作されていても、回転操作軸50が枕扱ぎ位置になるように電動モータMを回転作動させる。その結果、刈取クラッチ23は切り状態で且つ脱穀クラッチ20が入り状態となり、穀稈受け止め体24が支持作用位置Uになる。
【0078】
このとき、刈取処理部3における縦搬送装置9にて搬送されていた刈取穀稈が脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aにて載置されたまま縦搬送装置9の搬送が停止されたような場合であっても、穀稈受け止め体24に備えられた凹凸部41(すべり落ち防止部Z)によって受け止め係止することにより、そのような刈取穀稈が穀稈受け止め体24の上縁部に沿って機体前方下方へすべり落ちることを防止することができる。
【0079】
その後、次回の作業行程での刈取作業を開始するために刈取処理部3を作業位置に切り換えたことが高さ検出器73にて検出され、且つ、主変速レバー69が前進走行位置に操作されたことが検出されると、回転操作軸50が作業位置になるように電動モータMを回転作動させることになる(図11参照)。その結果、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ23が共に入り状態になり、穀稈受け止め体24が支持解除位置Dに切り換わる。
【0080】
そして、圃場での植立穀稈の刈取作業が終了して、作業スイッチ71がオフ操作されると、回転操作軸50が非作業位置になるように電動モータMを回転作動させ、脱穀クラッチ20及び刈取クラッチ23が共にクラッチ切り状態に切り換わり、穀稈受け止め体24が支持作用位置Uに切り換わる(図9参照)。
【0081】
従って、上記構成によれば、穀稈受け止め体24が、刈取クラッチ23がクラッチ入り状態にあると支持解除位置Dになり、刈取クラッチ23がクラッチ切り状態にあると穀稈受け止め体24が支持作用位置Uになるように、刈取クラッチ23の切り換え操作に伴って穀稈受け止め体24の位置が切り換わるようにそれらを連動連係する構成となっている。
【0082】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。
この第2実施形態では、穀稈受け止め体24の構成及びそれらの支持構造が異なるが、その構成以外の他の構成は、第1実施形態と同じであるから、ここでは異なる構成についてのみ説明し、第1実施形態と同じ構成については説明は省略する。
【0083】
図12〜図15に示すように、穀稈受け止め体24として備えられる外側穀稈受け止め体25及び内側穀稈受け止め体26が、その上縁部32が前後方向の略全域について略直線状に形成され、支持作用位置Uに切り換えられると、直線状に形成された上縁部32の全域が脱穀フィードチェーン11における搬送始端部11Aよりも上方に突出するように構成となっている。但し、外側穀稈受け止め体25の上縁部32(受け止め作用領域)の機体前部側箇所に、上記実施形態と同様にすべり落ち防止用の凹凸部41が備えられる。
【0084】
そして、外側穀稈受け止め体25及び内側穀稈受け止め体26を支持解除位置に向けて移動付勢する戻しバネ68が、外側穀稈受け止め体25と内側穀稈受け止め体26との間に挟まれた空間に配備される構成となっており、機体前部側のリンク部材28bから固定延設されたバネ受け部67aとフィードチェーン支持枠27から固定延設された固定側バネ受け部67bとにわたって架設される構成となっている。
【0085】
この第2実施形態の穀稈受け止め体24と第1実施形態の穀稈受け止め体24とを対比すると、第1実施形態の穀稈受け止め体24は、第2実施形態の第2実施形態の穀稈受け止め体24におけるリンク部材28a,28bへの取り付け位置は変更せずに、リンク部材28a,28bへの取り付け箇所よりも機体前部側の部分を機体前方に向けて延長させる形状としたものである。
【0086】
〔別実施形態〕
(1)上記各実施形態では、受け止め支持される穀稈が機体前方下方へすべり落ちるのを防止するすべり落ち防止部Zとして鋸歯状の凹凸部41を備える構成を示したが、このような構成に代えて、次の(1−1)(1−2)(1−3)のように構成してもよい。
【0087】
(1−1)前記すべり落ち防止部Zとして、側面視で左右対象となる形状の凹部75を備える凹凸部76としてもよい。例えば、図16(a)に示すように、凹部75における機体後方側の斜面部分75aと機体前方側の傾斜部分75bとが、夫々上縁部32に対して同じ傾斜角で検出するような形状の凹凸であってもよく、又、図示はしないが、略円弧状の凹部を形成するものでもよい。
【0088】
(1−2)前記すべり落ち防止部Zとして、穀稈受け止め体24における上縁部32に粗面部78を備える構成としてもよい。すなわち、穀稈受け止め体24における上縁部33の一部又は全部を、例えば、図16(b)に示すように、表面に砂粒のような細かく硬い粒状の物質を均した状態で備えたサンドブラスト状の粗面部78にて形成するものでもよい。又、摩擦係数の大きい材質、例えば木材やゴム等で粗面部78を構成するものでもよい。
【0089】
(1−3)前記すべり落ち防止部Zとして、例えば、図16(c)に示すように、穀稈が機体前方下方へすべり落ちるのを防止する係止部材79を、穀稈受け止め体24における上縁部32から上方に突出する状態で備える構成としてもよい。この係止部材79は、支持作用位置では、脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aより上方に突出するが、支持解除位置では、脱穀フィードチェーン11の搬送始端部11Aより下方側に引退する状態となっている。
【0090】
(2)上記各実施形態では、穀稈受け止め体24が、刈取クラッチ23がクラッチ入り状態にあると支持解除位置Dになり、刈取クラッチ23がクラッチ切り状態にあると穀稈受け止め体24が支持作用位置Uになるように、刈取クラッチ23の切り換え操作に伴って穀稈受け止め体24の位置が切り換わるようにそれらを連動連係する構成としたが、このような構成に代えて、次のように構成してもよい。
【0091】
刈取処理部3が作業位置にあると穀稈受け止め体24が支持解除位置Dになり、刈取処理部3が非作業位置に上昇すると穀稈受け止め体24が支持作用位置Uになるように、刈取処理部3の昇降操作に伴って、穀稈受け止め体24の位置が切り換わるように連係する構成としてもよく、又、供給ガイド13が作用姿勢に切り換わると穀稈受け止め体24が支持解除位置Dになり、供給ガイド13が上方の格納姿勢に切り換わると穀稈受け止め体24が支持作用位置Uになるように、供給ガイド13の姿勢切り換えに連動して穀稈受け止め体24の位置が切り換わるように連係する構成としてもよい。
【0092】
要するに、穀稈受け止め体24が、植立穀稈を刈り取る作業状態では前記支持解除位置Dになり、刈取作業を行わない非作業状態では前記支持作用位置Uになるように構成されるものであればよい。
【0093】
(3)上記各実施形態では、すべり落ち防止部Zが、外側穀稈受け止め体25における受け止め作用領域の機体前部側箇所にのみ備えられる構成としたが、受け止め作用領域の全領域にわたる状態で備える構成としてもよく、又、外側穀稈受け止め体25だけでなく内側穀稈受け止め体26における受け止め作用領域にもすべり落ち防止部Zを備える構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、脱穀フィードチェーンを備えた自脱型のコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0095】
11 脱穀フィードチェーン
11A 搬送始端部
24 穀稈受け止め体
25C 傾斜案内部
32 直線状案内部
39 凸部
40 凹部
41 凹凸部
78 粗面部
79 係止部材
D 支持解除位置
U 支持作用位置
Z すべり落ち防止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀フィードチェーンの搬送始端部に、その搬送始端部より上方側に突出した支持作用位置と、前記脱穀フィードチェーンの搬送始端部より下方側に引退した支持解除位置とに切換え自在な穀稈受け止め体が備えられているコンバインであって、
前記穀稈受け止め体に、受け止め支持される穀稈がすべり落ちるのを防止するすべり落ち防止部が備えられているコンバイン。
【請求項2】
前記すべり落ち防止部が、前記穀稈受け止め体に穀稈移送方向に沿って凹部と凸部とを形成した凹凸部にて構成されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記すべり落ち防止部が、前記穀稈受け止め体に形成された粗面部にて構成されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
前記すべり落ち防止部が、前記支持作用位置に切り換えられた状態で穀稈を受止め係止自在な係止部材にて構成されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項5】
前記すべり落ち防止部が、前記穀稈受け止め体における前記搬送始端部より上方側に突出する受け止め作用領域の少なくとも機体前部側箇所に備えられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記穀稈受け止め体が、機体前部側ほど下方側に位置する傾斜状に設けられた傾斜案内部と、その傾斜案内部の機体後方側に連なる状態で、前記脱穀フィードチェーンに沿って略直線状に設けられた直線状案内部とを備えて構成され、
前記すべり落ち防止部が、前記直線状案内部に備えられている請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記すべり落ち防止部が、植立穀稈を刈り取る作業状態では前記支持解除位置になり、刈取作業を行わない非作業状態では前記支持作用位置になるように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−90591(P2013−90591A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234182(P2011−234182)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)