説明

コンバータ回路、およびこのコンバータ回路を備える電子システム

【課題】 送出電力が大きく変動し得る電気エネルギー源に接続されて、電気エネルギーの収集を最適化させるコンバータ回路を提供する。
【解決手段】 このコンバータ回路(2)は、電気エネルギー源(3)に接続可能な入力端子(9)を有しているチョッパ回路(11)と、第1のスイッチ(17)を介して、チョッパ回路(11)の出力端子(19)に接続されるようになっている第1の出力回路(14)と、第2のスイッチ(25)を介して、チョッパ回路(11)の出力端子(19)に接続されるようになっている第2の出力回路(15)と、電気エネルギー源(3)の電圧の変化に応じて、チョッパ回路(11)のデューティサイクル(α)を制御するように、また第1の出力回路(14)に対する出力電圧設定範囲にしたがって、第1のスイッチ(17)および第2のスイッチ(25)のスイッチングを制御するようになっている制御回路(51)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータ回路、およびこのコンバータ回路を備える電子システムに関する。
【0002】
特に二酸化炭素排出によってもたらされる有害な温室効果を軽減させるために、再生可能エネルギー発電装置の使用を継続的に増大させるべく、近年、太陽電池パネルの開発が、著しく進められている。
【0003】
このことは、風力発電装置や熱電発電装置などの再生可能エネルギー発電装置にも当てはまる。
【0004】
これらの再生可能エネルギー発電装置は、それらから出力される電気エネルギーが、エネルギーを供給する自然現象に応じて極端に変動するという特殊な性質を有している。太陽電池発電装置は、極めて非線形な電流−電圧特性曲線I=f(U)を有する発電装置である。したがって、太陽光照射値が同じであっても、送出される電力は、負荷に応じて変化する。
【0005】
すなわち、効率即ち太陽電池から送出される電力は、1日の間に変化する、太陽の露光状態だけでなく、例えば雲または他の気象現象による太陽の遮蔽状態に応じて変わる。
【0006】
さらに、太陽電池が、電力消費部品などの負荷(例えばセンサまたは再充電されるバッテリ)に接続されている場合に、負荷に伝達される電力は、一般に、太陽電池が送出することができる最大電力に一致しないということが、明らかになっている。同様の問題が、風力発電の場合にも存在することが知られている。そのため、例えば日光が弱くなると、効率が低下するだけではなく、動作点が、太陽電池の有する潜在性能特性を発揮することができる動作点よりも劣る位置に設定されることによって、効率はさらに低下する。
【0007】
このような欠点を克服し、常に、最適動作点に可能な限り近い動作点で電気エネルギーを発生させるために、最大電力点追尾(MPPT)法として知られている方法を組み込んだ回路が、1968年以来開発されてきている。これは、非線形な再生可能エネルギー発電装置と任意の負荷との間の接続を、より確実にする。
【0008】
このような回路は、太陽電池などの発電装置を、その最大電力点において動作させ、それによって、効率を改善させるようになっている。
【0009】
したがって、MPPTコントローラは、負荷(例えばバッテリ)と太陽電池パネルとを接続している静的コンバータを、負荷に恒久的に最大電力を供給するように駆動することができる。
【背景技術】
【0010】
最大電力点(MPP)追尾のために、P&O(Perturbation and Observation:摂動と観測)法に基づく方法を適用することは公知である。
【0011】
太陽電池への適用の場合には、この手法は、一定電圧U1において、発電装置から送出される、対応する電力P1を測定し、次いで、一定期間の後に、太陽電池の電圧を、電圧U2=U1+ΔUとし、再度、対応する電力P2を測定するというアルゴリズムである。その後、電力P2がP1を超過している場合には、太陽電池の電圧は、電圧U3=U2+ΔUとされ、そうでない場合には、電圧U3=U2−ΔUとされる。
【0012】
しかし、これは、電流の測定を必ず伴い、また無視できないほど電気エネルギー量を消費する大規模な計算リソースを必要とする。そのため、大型の太陽電池機器においては、太陽電池の1つのサブグループが、MPPT回路を制御するために必要な電気エネルギーの供給に専ら用いられている。
【0013】
しかし、例えば自律センサなどの電子マイクロシステムにおいては、空間および重量に関する制約が大きく、自律性の拡張によって、システムを可能な限り小さくすることが必要であるため、このアプローチを適用することはできない。
【0014】
さらに、補助駆動セルを有する、公知の最大電力点追尾回路が存在する。しかしながら、これは、必ずしも望ましいとは限らない。
【0015】
一定周波数で、太陽電池パネルと、回路の残りの部分との間の接続を切って、開回路において電圧を測定することによって遂行される、開回路での電圧サンプリングに基づく、駆動セルを用いない公知のMPPT回路も存在する。このシステムにおいては、その後、新しく最適化されたパラメータを取り入れたエネルギー収集回路に、太陽電池パネルを再接続する。しかし、これによって、エネルギー収集プロセスが、頻繁に中断される。これは、自律的に動作するように作られている電子マイクロシステムにとっては受け入れがたいことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の欠点を、少なくとも部分的に克服することを目的としている。
【0017】
本発明の目的は、エネルギーの収集を最適化させるとともに、システムによって占められる空間量、特に、例えば太陽電池発電装置や風力発電装置などの発電装置のサイズ、および例えばバッテリやスーパーキャパシタなどの蓄電装置のサイズを大幅に縮小させることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成するために、本発明は、送出される電力が大きく変動し得る電気エネルギー源に接続される、次のものを備えているコンバータ回路を提供するものである。
− 電気エネルギー源に接続可能な入力端子を有しているチョッパ回路。
− 第1のスイッチを介して、チョッパ回路の出力端子に接続されるようになっている第1の出力回路。
− 第2のスイッチを介して、チョッパ回路の出力端子に接続されるようになっている第2の出力回路。
− 第1に、電気エネルギー源の電圧の変化に応じて、チョッパ回路のデューティサイクルを制御するように、第2に、第1の出力回路に対する出力電圧設定範囲にしたがって、第1のスイッチおよび第2のスイッチのスイッチングを制御するようになっている制御回路。
【0019】
このコンバータ回路は、次の特徴の1つ以上を、単独で、または組み合わせて備えている場合がある。
− 第1の出力回路は、上述の出力電圧設定範囲内で動作する電気的な負荷に接続され、第2の出力回路は、蓄電装置に接続されている。
− 制御回路は、第1の入力を、第1の出力回路に接続し、かつ第2の入力を、基準電位点に接続しているヒステリシスコンパレータを備え、ヒステリシスコンパレータの出力は、第1のスイッチおよび第2のスイッチをそれぞれ駆動するために、第1のスイッチおよび第2のスイッチに1つずつ接続されている2つの出力を有している命令発生器を制御する制御ユニットの入力に接続されている。
− 蓄電装置は、再充電可能なマイクロバッテリである。
− 蓄電装置は、スーパーキャパシタである。
− 第1および第2の出力回路は、ローパスフィルタを備えている。
− 制御回路は、さらに、次のものを備えている。
・ あらかじめ定められた量だけ異なる2つのデューティサイクルに対して、電気エネルギー源の出力における電圧を特定する手段と、
・ このあらかじめ定められた量だけ異なる2つのデューティサイクルに対して得られた電圧間の電圧差を計算する手段と、
・ この電圧差の値と、前回の電圧差の計算において得られた電圧差の値との比較を行う手段と、
・ この比較の結果に応じて、あらかじめ定められた量だけの、デューティサイクルの変更を命令する手段。
− 制御回路は、前回の電圧差の比較の結果、デューティサイクルが減らされており、かつ電圧差が、前回の電圧差の計算において得られた電圧差と比較して減少した場合に、あらかじめ定められた量だけの、デューティサイクルの増加を命令するように構成されている。
− 制御回路は、前回の電圧差の比較の結果、デューティサイクルが増やされており、かつ電圧差が、前回の電圧差の計算において得られた電圧差と比較して減少した場合に、あらかじめ定められた量だけの、デューティサイクルの減少を命令するように構成されている。
− チョッパ回路は、制御回路によって制御される電気エネルギー蓄積インダクタと、少なくとも1つのチョッパスイッチとを備えている。
− 電気エネルギー蓄積インダクタおよびチョッパスイッチは、昇圧構造に構成されている。
− 電気エネルギー蓄積インダクタおよび2つのチョッパスイッチは、降圧構造に構成されている。
− 電気エネルギー蓄積インダクタおよび3つのチョッパスイッチは、降圧/昇圧構造に構成されている。
− 制御回路は、第1および第2のスイッチのうちの少なくとも1つの制御を開始させるための、電気エネルギー蓄積インダクタの電流「零点」を検出するセンサを備えている。
【0020】
本発明は、さらに、送出される電力が大きく変動し得る少なくとも1つの電気エネルギー源と、この少なくとも1つの電気エネルギー源に接続されている少なくとも1つの前述のコンバータ回路とを備えている電子システムをも提供するものである。
【0021】
この電子システムは、次の特徴の1つ以上を、単独で、または組み合わせて備えている場合がある。
− 電気エネルギー源は、少なくとも1つの太陽電池。
− 電気エネルギー源は、少なくとも1つの風力発電装置。
− 電気エネルギー源は、少なくとも1つの熱電素子。
− 電気エネルギー源の各出力は、対応するコンバータ回路の入力に接続されており、コンバータ回路の第2の出力回路の各々は、スーパーキャパシタを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態のコンバータ回路を備える電子システムの回路図である。
【図2】最大電力点追尾の方法のフローチャートである。
【図3】本発明のコンバータ回路のトランジスタの制御を、時間の関数として示すグラフである。
【図4】第2の実施形態のコンバータ回路を備える電子システムの回路図である。
【図5】第3の実施形態のコンバータ回路を備える電子システムの回路図である。
【図6】別の実施形態の電子システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明に関する以下の説明を読むことによって、本発明の他の利点および特徴が明らかになると思う。
【0024】
すべての図を通して、同一の部分には、同一の符号を付してある。
【0025】
図1は、コンバータ回路2、およびコンバータ回路2に接続されている電気エネルギー源3を備えている電子システム1の一例を示している。
【0026】
送出される電力に大きな変動を示すことがある電気エネルギー源3としては、例えば太陽電池または太陽電池パネル、熱電素子、または風力発電装置(特に小型の)がある。
【0027】
用語「大きな変動」とは、図1に示されているような電気エネルギー源3から送出することができる電力が、その最低値と最高値との間で約100倍だけ変動することを意味している。
【0028】
電気エネルギー源3の出力端子5は、キャパシタによって形成されているローパスフィルタ7を介して、コンバータ回路2の入力端子9に接続されている。
【0029】
コンバータ回路2は、チョッパ回路11を有しており、チョッパ回路11の入力端子は、電気エネルギー源3に接続されている、コンバータ回路2の入力端子9を形成している。
【0030】
チョッパ回路11は、その主要部分として、電気エネルギー蓄積インダクタ12、および少なくとも1つのチョッパスイッチ13(以下、単に、スイッチ13と呼ぶ)を備えている。
【0031】
図1において、電気エネルギー蓄積インダクタ12およびスイッチ13は、昇圧構造(ブースト構造とも呼ばれる)に構成されている。すなわち、電気エネルギー蓄積インダクタ12の入力は、電気エネルギー源3に接続されており、かつスイッチ13が「オン」状態になると、電気エネルギー蓄積インダクタ12の出力が接地されて、電気エネルギー蓄積インダクタ12の周囲に磁界が形成される。チョッピング周波数は、例えば200kHzである。
【0032】
コンバータ回路は、さらに、第1の出力回路14および第2の出力回路15を備えている。
【0033】
第1の出力回路13は、その上流側で、第1のスイッチ17を介して、チョッパ回路11の出力端子19に接続されている。
【0034】
この第1の出力回路13は、その下流側で、ローパスフィルタ21を介して、電子システム1に属し、かつあらかじめ定められた電圧設定範囲で動作する電気的な負荷23に接続されている。
【0035】
第2の出力回路15は、その上流側で、第2のスイッチ25を介して、チョッパ回路11の出力端子19に接続されている。
【0036】
第2の出力回路15は、その下流側で、ローパスフィルタ27を介して、電子システム1に属する蓄電装置29に接続されている。
【0037】
この蓄電装置29は、キャパシタ、スーパーキャパシタ、バッテリ、マイクロ電池、またはミニバッテリである場合がある。
【0038】
蓄電装置29から、その下流の電気的な負荷31に制御された電力を供給することを可能にするために、図1に示すように、DC−DC電圧レギュレータ33を設けることができる。
【0039】
蓄電装置29がバッテリ、マイクロ電池、またはミニバッテリである場合には、任意の過熱および/または任意の早期劣化を回避するためのバッテリ技術に則った条件にしたがったバッテリ充電を可能にするために、ローパスフィルタ27と蓄電装置29との間に、チャージャ回路が設けられている。
【0040】
第1の変形例によれば、負荷31と負荷25とは同一物である。この場合には、蓄電装置29は、例えば電気エネルギー源3によって生成される電気エネルギーが、負荷25に直接的に電力を供給するために十分でないときに、負荷25に電力を供給するために用いられる。電気エネルギー源3として太陽電池が用いられている場合には、このことは、例えば夜間に、または例えば曇り空のために日光が弱すぎるときに、発生し得る。
【0041】
第2の変形例によれば、負荷25と31とは同一物ではなく、相異なる電力消費部品である。
【0042】
コンバータ回路2の駆動は、制御回路51によってなされる。
【0043】
この制御回路51は、一方では、チョッパ回路11のデューティサイクルαを制御し、他方では、第1のスイッチ17および第2のスイッチ25の切り替えを制御する制御ユニット53を備えている。このことについて、次に、詳細に説明する。
【0044】
これらの制御のために、制御ユニット53は、スイッチ13、17および25を制御する命令発生器(DTLCユニットすなわちデッドタイムロジック制御ユニットとも呼ばれる)55を制御するために、PWM(パルス幅変調)信号を出力する。
【0045】
スイッチ13は、NMOSタイプのトランジスタであり、そのベースは、バッファ(遅延線とも呼ばれる)13Aを介して、命令発生器55の対応する出力に接続されていることに注意されたい。
【0046】
スイッチ17および25は、PMOSタイプのトランジスタであり、それらのベースは、それぞれバッファ17Aおよび25Aを介して、命令発生器55の対応する出力に接続されている。
【0047】
制御回路51は、さらに、連続する2つの時点における、電気エネルギー源3の出力端子5の電圧を特定する手段を備えている。この特定手段として、本発明では、1つの入力を電気エネルギー源3の出力端子5に接続されており、1つの出力を制御ユニット53の対応する入力に接続されているアナログ−デジタルコンバータ57を用いている。
【0048】
特にスイッチ17および25の制御のために、制御回路51は、電気エネルギー蓄積インダクタ12を通る電流のキャンセルを特定し、制御ユニット53の対応する入力に信号を送出する電流「零点」センサ59を備えている。
【0049】
図示しない一変形例によれば、電流「零点」センサを、スイッチに並列に配置された、非常に低い電圧閾値を有するダイオードに置き換えることが可能である。
【0050】
開状態にあるか、それとも閉状態にあるかによって、チョッパ回路11の出力端子19が、負荷23に直接的に接続されるか、それとも蓄電装置29に接続されるかが定められるスイッチ17および25の制御のために、制御回路51は、一方の入力を第1の出力回路14に接続し、他方の入力を基準電位点63に接続し、出力を制御ユニット53の対応する入力に接続しているヒステリシスコンパレータ61を備えている。
【0051】
動作特性として、制御ユニット53は、命令発生器55を、次のようになるように制御する。
− スイッチ13が閉じられている(オン状態すなわち導通状態にある)とき、スイッチ17および25は開かれており(オフ状態すなわち遮断状態にあり)、
− スイッチ17および25のうちの一方が閉じられている(オン状態にある)とき、スイッチ17および25のうちの他方は常に開かれており(オフ状態にあり)、スイッチ13は開かれている(オフ状態にある)。
【0052】
したがって、任意の時点において、スイッチ13、17、25のうちの1つしか閉状態になることはできず、他の2つは開状態にある。
【0053】
次に、図1のコンバータ回路2の動作について、詳細に説明する。
【0054】
電気エネルギー源3を、常に、最大電力点(MPP)の近傍で動作させるために、本発明者は、デューティサイクルに関する、電気エネルギー源3の動作電圧の微分係数が、最大電力点(MPP)の近傍で最大値を有することを見出している。したがって、電気エネルギー源3の動作電圧のこの微分係数の最大値の追尾は、最大電力点追尾と等価である。
【0055】
したがって、以下に示すように、電気エネルギーおよび演算能力をほとんど要しない、電圧の単純な測定、減算操作、および比較操作によって、最大電力点(MPP)の近傍で、コンバータ回路2を動作させることができる。これは、利用可能な電力がほとんどない場合に非常に有利である。
【0056】
これらのことを行うために、制御ユニット53は、次のステップによって、電気エネルギー源の動作電圧変化(デューティサイクルαに関する動作電圧の微分係数)の関数として、チョッパ回路11のデューティサイクルαを制御する。
− あらかじめ定められた量だけ異なる2つのデューティサイクルに対して、電気エネルギー源の出力端子の電圧を特定するステップと、
− あらかじめ定められた量だけ異なる、この2つのデューティサイクルに対して得られた2つの電圧間の電圧差を計算するステップと、
− この電圧差の値を、前回の電圧差の計算において得られた電圧差の値と比較するステップと、
− 比較結果に応じて、あらかじめ定められた量だけデューティサイクルを変更するように命令するステップ。
【0057】
これらの各ステップは、図2に詳細に示されている。
【0058】
初期設定ステップ200において、デューティサイクルαの値が、あらかじめ定められた値、例えばα=0.5に設定され、電気エネルギー源3の出力端子の電圧VS(α)が特定される。
【0059】
次に、デューティサイクルが、あらかじめ定められた量Δαだけ変更され、再度、電気エネルギー源3の出力端子の電圧VS(α+Δα)が特定される。
【0060】
次いで、これらの2つの電圧間の差の絶対値が、次の式にしたがって計算される。
ΔViniS=|VS(α)−VS(α+Δα)|
【0061】
一変形例として、ΔViniSを、あらかじめ定められた値に固定することも可能である。
【0062】
その後、いわゆる繰り返しによる修正ループが開始される。
【0063】
ステップ202において、ループk(kは正の整数である)に対して、電気エネルギー源3の出力端子の電圧VS(αk)が特定される。
【0064】
ステップ204において、ループkおよびループ(k−1)に対して測定された2つの電圧間の差の絶対値(以下、単に電圧差と呼ぶ)が、次式によって計算される。
ΔVS(k)=|VS(αk)−VS(αk-1)|
ここで、|αk−αk-1|=Δαである。
【0065】
次に、ステップ206において、この電圧差ΔVS(k)の値が、前回の電圧差の計算において得られた電圧差ΔVS(k−1)の値と比較される。
【0066】
ステップ208において、比較結果に応じて、制御ユニット53が、あらかじめ定められた量Δαだけのデューティサイクルの変更を命令する。
【0067】
すなわち、制御回路51は、前回の電圧差の比較の結果、デューティサイクルが減らされており、かつ電圧差が、前回の電圧差の計算において得られた電圧差と比較して減少した場合に、あらかじめ定められた量Δαだけの、デューティサイクルの増加を命令するように構成されている。
【0068】
言い換えると、αk=αk-1−Δαであり、かつΔVS(k)<ΔVS(k−1)である場合に、αk+1=αk+Δαである。
【0069】
制御回路51は、そうではなくて、前回の電圧差の比較の結果、デューティサイクルが増やされており、かつ電圧差が、前回の電圧差の計算において得られた電圧差と比較して減少した場合に、あらかじめ定められた量Δαだけの、デューティサイクルの減少を命令するように構成されている。
【0070】
言い換えると、αk=αk-1+Δαであり、かつΔVS(k)<ΔVS(k−1)である場合に、αk+1=αk−Δαである。
【0071】
ステップ208の後、操作はステップ202に戻る。
【0072】
したがって、コンバータ回路は、最大電力点(MPP)の近くで揺らされ、それによって、電気エネルギー源3から利用可能な最大電力の収集が確実に行われる。
【0073】
最大電力点(MPP)追尾周波数、すなわちデューティサイクルのリフレッシュ周波数、すなわちステップ202〜208を遂行するための周波数は、約10Hz例えば16Hzである。
【0074】
さらに、Δαの値が小さいほど、コンバータ回路は、最大電力点のより近傍で動作することができることに注意されたい。この場合に、デューティサイクルが、動作状態の変化に、より迅速に順応することができるようにしたい場合には、リフレッシュ周波数は、より高く選ばれる。
【0075】
上述のように、スイッチ13が閉じられているとき、スイッチ17および25は開かれており、したがって、電気エネルギー源3から供給された電流が、電気エネルギー蓄積インダクタ12中を流れ、磁界が発生している。
【0076】
次に、スイッチ13が開かれると、電気エネルギーを、直接的な電力消費のために、スイッチ17を開くことによって負荷25に直接供給するか、またはその後の電力消費のために、蓄電装置29に蓄えることができる。
【0077】
したがって、第1の出力回路14は、チョッパ回路11と一緒に、電圧レギュレータとして動作する。
【0078】
したがって、スイッチ13が開かれているときに、出力電圧が、出力電圧設定範囲内に含まれていれば、スイッチ17は開かれている。
【0079】
この出力電圧設定範囲は、ヒステリシスコンパレータ61および基準電位点63を介して定められる。
【0080】
出力電圧が、出力電圧設定範囲外にある場合には、制御ユニット53は、ヒステリシスコンパレータ61から対応する信号を受けて、スイッチ13がまだ開いていれば、スイッチ25を開くように命令する。
【0081】
したがって、電気エネルギー源3で発生した電気エネルギーを、負荷25による直接的な電力消費のために、または蓄電装置29の充電のために最適に収集することができる。
【0082】
この動作は、図3にも示されている。
【0083】
曲線300、302、304は、それぞれスイッチ13、17、25の制御電圧Uを、時間の関数として示している。この実施形態においては、スイッチ13は、NMOSタイプのトランジスタであり、スイッチ17および25は、PMOSタイプのトランジスタであることを思い起こされたい。
【0084】
曲線306は、出力端子19における電流の時間経過を示している。
【0085】
したがって、期間308において、スイッチ13、17、25の制御電圧は、全てハイレベルにあり、したがって、NMOSタイプのトランジスタであるスイッチ13はオン状態にあり、電気エネルギー蓄積インダクタ12にはエネルギーが蓄えられ、一方、PMOSタイプのトランジスタであるスイッチ17および25はオフ状態にある。
【0086】
次に、期間310において、スイッチ13および17の制御電圧はローレベルになり、NMOSタイプのトランジスタであるスイッチ13はオフ状態になり、またPMOSタイプのトランジスタであるスイッチ25がハイレベル電圧を供給されて「オフ」状態にあるから、第1の出力回路14を介して、電気エネルギー蓄積インダクタ12からエネルギーが放出される(曲線306を参照)。この期間310の長さは、出力電圧が、出力電圧設定範囲内に含まれているか否かに依存する。したがって、期間310の長さは、電気エネルギー源3によって生成される電気エネルギー、および負荷25によって消費される電流に依存する。
【0087】
出力電圧が、出力電圧設定範囲外になり、かつNMOSタイプのトランジスタであるスイッチ13の出力電圧がローレベルのままであり、したがってスイッチ13がオフ状態にあると、期間312において、スイッチ17はオフ状態に移行し、一方、スイッチ25はオン状態に移行し、したがって、第2の出力回路15を介して、電気エネルギー蓄積インダクタ12からエネルギーが放出され、蓄電装置29は再充電される。
【0088】
蓄電装置29に蓄えられている電気エネルギーは、必要に応じて、DC−DC電圧レギュレータ33を介して、例えば負荷31によって、通常通りに使用され、したがって、このことに関しては、これ以上詳細な説明は行わない。
【0089】
図4は、第2の実施形態によるコンバータ回路の回路図である。
【0090】
この回路図は、スイッチ13が取り除かれているという点、および、チョッパ回路の制御回路によって制御される電気エネルギー蓄積インダクタ12および2つのチョッパスイッチ70および72(以下、単にスイッチ70および72と呼ぶ)が降圧構造(バック構造とも呼ばれる)に構成されているという点で、図1の回路図とは異なっている。
【0091】
より詳細には、スイッチ70は、電気エネルギー源3の出力および電気エネルギー蓄積インダクタ12の入力に接続されている。スイッチ70がオン状態にあるときに、電気エネルギー蓄積インダクタ12の周囲に磁界が形成される。チョッピング周波数は、例えば200kHzである。
【0092】
スイッチ70、17、25は、最大電力点追尾のためにも、第1の出力回路14および第2の出力回路15への電気エネルギーの伝達のためにも、図1のコンバータ回路の場合と同様に働く。
【0093】
スイッチ72は、各チョッピング周期の開始時に、電気エネルギー蓄積インダクタ12から接地点に電気エネルギーを完全に放出させるために用いられる。
【0094】
図5は、第3の実施形態によるコンバータ回路の回路図である。
【0095】
この回路図は、スイッチ13が維持されているが、図4の場合と同様に、2つのチョッパスイッチ70および72が加えられているという点で、図1の回路図と異なっている。
【0096】
チョッパ回路を制御する制御回路によって制御される電気エネルギー蓄積インダクタ12、および3つのスイッチ13、70および72は、降圧/昇圧構造(バック/ブースト構造とも呼ばれる)に構成されている。
【0097】
昇圧動作においては、スイッチ70は常にオン状態にあり、スイッチ72は常にオフ状態にあり、コンバータ回路2は、スイッチ13、17および25とともに、図1を参照して説明したとおりに動作する。
【0098】
降圧動作においては、スイッチ13は常にオフ状態にあり、コンバータ回路2は、スイッチ70、72、17および25とともに、図4を参照して説明したとおりに動作する。
【0099】
図6は、各々が、例えば図1のコンバータ回路のようなコンバータ回路2と組み合わされている複数の太陽電池を備える電気システムのブロック図である。
【0100】
この場合、コンバータ回路2の第1の出力回路14は、局所的に安定化された電力を供給するように互いに接続されており、また第2の出力回路15の各々は、スーパーキャパシタおよびDC−DC電圧レギュレータ33を含んでいる。
【0101】
したがって、太陽電池は互いに独立しており、ある太陽電池、例えば日陰中にある太陽電池が、他の太陽電池に対する負荷になること、およびエネルギー収集効率の低下を引き起こすことが防止され、エネルギー収集が最適化される。
【0102】
さらに、このような構成によって、各太陽電池は、他の太陽電池から独立して、その最大電力点で動作することができる。
【0103】
最後に、スーパーキャパシタは、十分に充電されていると、DC−DC電圧レギュレータ33を介して、そのエネルギーを送出することができる。
【0104】
したがって、本発明によるコンバータ回路2は、エネルギー収集の最適化とともに、安定化された電力供給を可能にすることが理解しうると思う。このコンバータ回路は、さらに、その動作の単純性、およびエネルギーリソースおよび計算リソースに対する低要求度という点でも優位性を有している。
【0105】
特に、自律センサに関しては、電気エネルギー源がエネルギーを全く供給できないか、または十分に供給できないときに、自律センサに電力を供給する電池/バッテリの規模を、より小さくすることができる。
【符号の説明】
【0106】
1 電子システム
2 コンバータ回路
3 電気エネルギー源
5、19 出力端子
7、21、27 ローパスフィルタ
9 入力端子
11 チョッパ回路
12 電気エネルギー蓄積インダクタ
13、70、72 チョッパスイッチ
13A、17A、25A バッファ
14 第1の出力回路
15 第2の出力回路
17、25 スイッチ
23、31 負荷
29 蓄電装置
33 DC−DC電圧レギュレータ
51 制御回路
53 制御ユニット
55 命令発生器
57 アナログ−デジタルコンバータ
59 電流零点センサ
61 ヒステリシスコンパレータ
63 基準電位点
300、302、304、306 曲線
308、310、312 期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きく変動し得る電気エネルギー源(3)に接続されているコンバータ回路(2)であって、
前記電気エネルギー源(3)に接続可能な入力端子(9)を有しているチョッパ回路(11)と、
第1のスイッチ(17)を介して、前記チョッパ回路(11)の出力端子(19)に接続されるようになっている第1の出力回路(14)と、
第2のスイッチ(25)を介して、前記チョッパ回路(11)の前記出力端子(19)に接続されるようになっている第2の出力回路(15)と、
第1に、前記電気エネルギー源(3)の電圧の変化に応じて、前記チョッパ回路(11)のデューティサイクル(α)を制御するように、第2に、前記第1の出力回路(14)に対する出力電圧設定範囲にしたがって、前記第1のスイッチ(17)および第2のスイッチ(25)のスイッチングを制御するようになっている制御回路(51)とを
備えているコンバータ回路。
【請求項2】
前記第1の出力回路(14)は、前記出力電圧設定範囲内で動作する電気的な負荷(25)に接続され、前記第2の出力回路(15)は、蓄電装置(29)に接続されている、請求項1に記載のコンバータ回路。
【請求項3】
前記制御回路(51)は、第1の入力を、前記第1の出力回路(14)に接続し、かつ第2の入力を、基準電位点(63)に接続しているヒステリシスコンパレータ(61)を備えており、該ヒステリシスコンパレータ(61)の出力は、前記第1のスイッチ(17)および第2のスイッチ(25)のそれぞれの駆動のために、前記第1のスイッチ(17)および第2のスイッチ(25)に1つずつ接続している2つの出力を有している命令発生器(55)を制御する制御ユニット(53)の入力に接続されている、請求項2に記載のコンバータ回路。
【請求項4】
前記蓄電装置は、再充電可能なマイクロバッテリである、請求項2または3に記載のコンバータ回路。
【請求項5】
前記蓄電装置は、スーパーキャパシタである、請求項2または3に記載のコンバータ回路。
【請求項6】
前記第1および第2の出力回路(14、15)は、ローパスフィルタ(21、27)を備えている、請求項2〜5のいずれか1項に記載のコンバータ回路。
【請求項7】
前記制御回路(51)は、さらに、
あらかじめ定められた量だけ異なる2つのデューティサイクルに対して、前記電気エネルギー源の出力における電圧を特定する手段と、
該あらかじめ定められた量だけ異なる2つのデューティサイクルに対して得られた前記電圧間の電圧差を計算する手段と
該電圧差の値と、前回の電圧差の計算において得られた電圧差の値との比較を行う手段と、
該比較の結果に応じて、前記あらかじめ定められた量(Δα)だけの、前記デューティサイクル(α)の変更を命令する手段とを
備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンバータ回路。
【請求項8】
前記制御回路(51)は、前回の電圧差の比較の結果、前記デューティサイクルが減らされており、かつ前記電圧差が、前回の電圧差の計算において得られた電圧差と比較して減少した場合に、前記あらかじめ定められた量(Δα)だけの、前記デューティサイクル(α)の増加を命令するように構成されている、請求項7に記載のコンバータ回路。
【請求項9】
前記制御回路(51)は、前回の電圧差の比較の結果、前記デューティサイクルが増やされており、かつ前記電圧差が、前回の電圧差の計算において得られた電圧差と比較して減少した場合に、前記あらかじめ定められた量(Δα)だけの、前記デューティサイクル(α)の減少を命令するように構成されている、請求項7に記載のコンバータ回路。
【請求項10】
前記チョッパ回路(11)は、前記制御回路(51)によって制御される電気エネルギー蓄積インダクタ(12)と、少なくとも1つのチョッパスイッチ(13、70)とを備えている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンバータ回路。
【請求項11】
前記電気エネルギー蓄積インダクタ(12)およびチョッパスイッチ(13)は、昇圧構造に構成されている、請求項10に記載のコンバータ回路。
【請求項12】
前記電気エネルギー蓄積インダクタ(12)およびチョッパスイッチ(70、72)は、降圧構造に構成されている、請求項10に記載のコンバータ回路。
【請求項13】
前記電気エネルギー蓄積インダクタ(12)および3つのチョッパスイッチ(13、70、72)は、降圧/昇圧構造に構成されている、請求項10に記載のコンバータ回路。
【請求項14】
前記制御回路は、前記第1および第2のスイッチ(17、25)のうちの少なくとも1つの制御を開始させるための、前記電気エネルギー蓄積インダクタの電流「零点」を検出するセンサ(59)を備えている、請求項10〜13のいずれか1項に記載のコンバータ回路。
【請求項15】
送出される電力が大きく変動し得る少なくとも1つの電気エネルギー源(3)と、この少なくとも1つの電気エネルギー源(3)に接続されている少なくとも1つの、請求項1〜16のいずれか1項に記載のコンバータ回路(2)とを備えている電子システム(1)。
【請求項16】
前記電気エネルギー源(3)は、少なくとも1つの太陽電池を備えている、請求項15に記載の電子システム。
【請求項17】
前記電気エネルギー源(3)は、少なくとも1つの風力発電装置を備えている、請求項15に記載の電子システム。
【請求項18】
前記電気エネルギー源(3)は、少なくとも1つの熱電素子を備えている、請求項15に記載の電子システム。
【請求項19】
前記電気エネルギー源(3)の各々の出力は、対応するコンバータ回路(2)の入力に接続されており、前記コンバータ回路(2)の第2の出力回路(15)の各々は、スーパーキャパシタ(29)を含んでいる、請求項15〜18のいずれか1項に記載の電子システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−527208(P2012−527208A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510300(P2012−510300)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056579
【国際公開番号】WO2010/130798
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】