説明

コンパクトな座席装置

車両用のコンパクトな、座席装置であって、当該座席装置は、3つのシート:2つの横方向に配置された後方乗客用シートならびにそれらの少なくともある程度前方に、かつ中央に配置された前方運転手用シートを備えており、運転手用シートは、後方乗客用シートのそれぞれの一部の前方に位置するように、横方向に延在しており、運転手用シートと乗客用シートとの横方向位置におけるオーバーラップは、運転手用シートの各側部が
乗客シートのそれぞれにおける前方対向位置に座った乗客の足の少なくとも一部を収容できるような形状になされることが要求されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に中央運転用シートと、実質的に横方向に並べられた工法乗客用シートとを備える車両のためのコンパクトな座席装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、中央運転手用シートと二つの乗客用シートとを備えるさまざまな座席装置が提案されてきたが、それらは、さまざまな実際的な制限あるいは不便さに悩まされる傾向があり、ゆえに、幅広くは適用されていない。さらに近年においては、スポーツカー用のそうした座席装置が、本発明の発明者によって特許文献1に開示されており、かつマクラーレンF1(登録商標)に使用される座席装置はこれに基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第9218347号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、このコンセプトを発展させ、さらにはコンパクトな車両への使用に適した、よりコンパクトな座席装置を提供しようとしている。
【0005】
コンパクトな車両は、フロントホイールアーチが乗客用キャビンに入り込んでいるため、運転手の人間工学が妥協されるという難点を有する傾向がある。これは、左利きおよび右利き用の運転車両のいずれの場合にも関連する。さらに、本発明は、運転手に関するより良好な人間工学を与える車両のためのコンパクトな座席装置を提供しようと試みるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも3つのシート;2つの実質的に横方向に並べられた後方乗客用シート、ならびに、実質的に中央に、かつ乗客用シートの少なくともある程度前方に配置された前方運転手用シート;を備えており、運転手用シートが、後方乗客用シートのそれぞれの前部に配置されるように、横方向に延在しており、運転手用シートと乗客用シートとの横方向ポジションにおけるオーバーラップ部の広がりが、運転手用シートの各側部が乗客用シートのそれぞれにおける前方対向ポジションに位置する乗客の脚の少なくとも一部を収容可能となる形状を有するよう要求されている車両のためのコンパクトな座席装置が提供される。
【0007】
主に、運転手用シートは、運転手が座るシートベースと、運転手の背中を支持するためのシートバックとを備えている;乗客のそれぞれの最も内側にある脚の少なくとも一部を運転手用シートの位置と(横方向および縦方向のいずれにも)オーバーラップするように収容可能となるよう、運転手用シートのシートベースおよび/またはシートバックの各側部にはスペースおよび切欠きが設けられている。
【0008】
二つの後方乗客用シートを形成するよう、共有の後方ベンチを設けることも可能である。あるいは、二つの個別の後方乗客用シートを設けることができる。
【0009】
他の場合において、シートの構成は、一般的に人間の乗客が、足よりも幅広の胴または体を有し、特に、脚よりも幅が大きな肩を有しているという事実から導かれる利点を有している。これは、乗客の足にオーバーラップする前方運転手用シートとともに、各後方シートを具合よく配置することを可能とする。このオーバーラップする構成は、車両のキャビンを相対的に幅を小さくする一方で、運転手ならびに隣り合った少なくとも二人の乗客を収容できるようにする。
【0010】
本発明のさらなる第一の態様によれば、少なくとも3つのシートを有しかつ実質的に横方向に並んだ二つの後方乗客用シートを備え、かつ運転手用シートが2つの後方乗客用シートの前方において実質的に中央に配置されており、前方運転手用シートが後方の乗客の脚のそれぞれのオーバーラップする部分まで横方向に延在している、車両のための座席装置が提供される。オーバーラップする量は、乗客の相対的な大きさに応じるようになる。
【0011】
さらに、本発明は、上述したような座席装置を組み込んだ車両にも関連する。
【0012】
好ましい実施形態において、車両は、実質的に乗客用構成要素の後方に配置されるエンジンを有している。
【0013】
他の好ましくかつ付加的な本発明の特徴については、従属請求項および以下に示す。
【0014】
以下、単なる一例として図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗員(運転手および二人の乗客)が示された状態の、本発明のコンパクトな座席装置の第一実施形態の概略平面図である。
【図2】(乗員がいない状態の)図1の座席装置を組み込んだ車両の概略平面図である。
【図3】さまざまな寸法が示された図1と同様の概略平面図である。
【図4】乗員が示された状態の図2の車両の概略側面図である。
【図5】上記図面に示された座席装置に関して可能な構成を示す概略平面図である。
【図6】上記図面に示された座席装置に関して可能な構成を示す概略平面図である。
【図7】上記図面に示された座席装置に関して可能な構成を示す概略平面図である。
【図8】本発明の座席装置の第二実施形態を組み込んだ車両の概略平面図である。
【図9】図8に示す座席装置において乗員が示されている状態の概略平面図である。
【図10】乗員が示された状態の図8の車両の概略側面図である。
【図11】運転手用シートと乗客の脚との間の側方オーバーラップを示す第二実施形態の概略正面図である。
【図12】3人の乗員が示された状態の図11と対応する概略平面図である。
【図13】図8に示す座席装置の可能な構成の概略平面図である。
【図14】図8に示す座席装置の可能な構成の概略平面図である。
【図15】図8に示す座席装置の可能な構成の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図3には、車両のキャビン1の概略平面図を示し、その中に、コンパクトな座席装置の第一の態様が示されている。図示するように、1つの中央に配置された運転手用シート2と、実質的に横方向に配置された2つの後方乗客用シート3および4とが設けられている。一般的に運転手用シート2が2つの後方乗客用シートの前方に配置されているが、運転手用シート2は、それぞれの後方の乗客の脚L1,L2にオーバーラップするよう横方向に延在している。運転手用シートは、(図1および図3に示すように)それぞれの乗客の中央寄りの脚の少なくとも一部のための収容部を提供するよう2Aにおけるような形状となっている。
【0017】
図1および図3に示す3つの座席装置は、快適であり、かつ乗員すべてのためのシート2,3および4への容易なアクセスを提供する。座席装置は、シート2,3および4に採用されるすべての幅および長さができる限り小さくされるようになっている。このコンパクトな装置は、乗客のために必要な空間および快適さを提供すると同時に、人間の肩および臀部、あるいは一般的には胴が脚よりも幅広であることを利用することによって実現される。したがって、運転手の後ろに快適に人を座らせ、かつ運転手の両側にその脚を伸ばすように、後方の乗客のための余地を提供することができる。ゆえに、全車幅Wを約1250mm〜1400mmまで制限することができる(図3参照)。
【0018】
図2には、図1の座席装置を組み込んだ車両の平面図を示す。上述したように、二つの後方シート3および4が、運転手用シート2に対して後方に配置される。さらに、図2には、車のボディ5とともにそのホイール6を示す。運転手用シート2の中央ポジションが、このシート2を、コントロールペダル7とステアリングホイール8と直線的に配置されることを可能にすることが理解されるだろう。したがって、図2に示すように、車が、乗客用構成要素のすぐ後方にそのエンジン(図示せず)を有するミッドエンジンのものとなり、かつ運転手を相対的に前方に位置させるよう形成される場合でさえも、運転手用シート2は、操作装置7,8と一列に配置され、かつ(従来のコンパクトな車に見られるように)片寄ることがなくなる。さらに、前方中央ポジションにおいて、運転手のためのシートの人間工学が公知の2人乗りおよび4人乗りの車と比べて向上されており、かつ運転手の視界もより大きく増大されることを理解されたい。この態様において、運転手の視界に入るものが最小限となることを確実なものとすることができる。
【0019】
図2に示すように、運転手のための中央位置は、ホイールアーチ9の位置およびサイズにおける制限あるいは他の妥協が要求されなくなることを意味している。さらに、これは、ホイールロックならびに結果的な旋回半径を必要であれば選択可能にすることを意味している。
【0020】
したがって、中央運転手用ポジションは、2人または4人乗りの車と一般的に関連する、例えば乗客用キャビンへ突出する前方ホイールアーチ9によって引き起こされる問題を防止する。中央運転ポジションは、さらに、左利きおよび右利き用ドライブバージョンを提供することを必要としないようにする。くわえて、図1から3に示す座席装置は、乗客用キャビンの幅を実質的に増大させることなく、中央運転ポジションのこうした利点を実現可能にする。
【0021】
上述したように、乗客用キャビン1は、好ましくは、約1250mm〜1400mmの最大幅を有している。これは、有利なことに、現在の使用可能な2シート/4シートのコンパクトな車の幅とほぼ同程度であり、例えばSmart fortwo(登録商標)(2人乗り)は、1559mmの幅を有し、一方で、Citroen C1(登録商標)(4人乗り)は1630mmの幅を有している。中央運転手用シート2は、好ましくは、距離F、例えば約350mm〜450mmまで2つの後方乗客用シート3および4の前方に片寄っている(図3参照)。これによって、乗客が運転手の側方に彼らの脚を伸ばすことを可能にすると同時に、それぞれの乗客の胴は、快適性のために、かつ乗客によって運転手の可視性が影響されることを防ぐように、運転手の後方に位置するようになる。
【0022】
中央に配置された前方運転手用シートおよび乗客用シートの上記レイアウトは、制限されたキャビンの全幅を保つようになる。シートの側方オーバーラップの量は、シートの相対的なサイズ、およびその形状などによって決定される。中央運転手用シート2のセンターラインCL1と格乗客用シート3および4のセンターラインCL2,CL3との間の距離D1は、250mm〜400mmであるが、最も好ましくは280mm〜380mmである(図3参照)。
【0023】
運転手用シート2は2つの乗客用シート3,4の前方にあるが、乗員の頭を支持する3つのシートの先端部は、そうしたポジションにおいて十分な上部空間を提供するように、それが単純な要素となるように、乗客用キャビン1の同様の部分に存在する。
【0024】
図5、図6および図7に示すように、この座席装置は、フレキシブルな耐荷力をもたらす乗客用シートへ容易にアクセスすることも可能にする。乗客用シート3,4は、増加された収容能力を提供するよう、一緒にあるいは個々に折り曲げ可能となっている。図5には、乗客用シート3,4の後ろにブーツスペースを備える3つのシート構造を示す。図6は、ブーツにおける、かつキャビンにおける収容スペースとともに、折り曲げられる1つの乗客用シートを備える二つのシート構造を示す。図7には、ブーツにおける、かつキャビンにおける収容スペース10A,10B,10Cとともに、二つの乗客用シートが折り曲げられた状態となっている、運転手用シート構造のみを示す。収容のために使用可能なスペースは、図5〜図7においては斜線で示されている。
【0025】
図8〜図15には、本発明の座席装置の第二実施形態を示す。これは、図1〜図7に示す装置と類似しているが、レイアウトのさまざまな寸法においていくつかの変更がなされている。また、図8〜図15には、シートの特徴およびその中の乗員のポジションについてより詳細に示す。
【0026】
図8には、この座席装置を組み込んだ車両の平面図を示し、かつキャビン11、運転手用シート12、2つの後方乗客用シート13,14、車両のボディ15、そのホイール16、コントロールペダル17、ステアリングホイール18、ならびに前方ホイールアーチ19を示す。
【0027】
図8に示すように、運転手用シートは、シートベース12Aと、シートバック12Bと、ヘッドレスト12Cとを備えている。シートベース12Aの後方ポジションは、その各側部において、例えば切欠き12Dの存在によって、後方乗客用シートに座る乗客の脚の少なくとも一部を収容するための空間を提供するような形状になされている。これによって、シートベース12Aは、後方シート13,14(およびそこに座った乗客の内側の脚)が、例えば乗客の内側のひざが少なくとも部分的に運転手の肩の一方の下側に位置するように、側方方向にオーバーラップ可能となるようにする。したがって、それぞれの乗客の内側の肩は、図9に示すように、運転手の肩の一方の中央側に位置するようになる。
【0028】
図9に示す装置において、運転手用シート12のセンターラインCL1と乗客用シート13,14のセンターラインCL2,CL3との間の間隔D1は、約280〜380mmである(これは、第一実施形態で示したものよりもわずかに大きい)。ただし、車両の全体的な外側の幅は、依然として、約1250mm〜1400mmであるか、それ未満に保たれる。
【0029】
キャビンの内側の幅は、1400mm未満となり、好ましくは1200mm未満となる。ただし、内側の幅は、隣り合った一般的な成人の乗客の肩を収容するために(極端な場合では、彼らの肩はちょうど接触する)、少なくとも1040mmであることが好ましい。
【0030】
成人乗員の型の幅Sは、一般的に、450mmから520mmの範囲内にあり、これは、シートのセンターラインの側方間隔D1よりも大きいことが好ましく、それによって、乗客の内側の肩は、運転手の肩の一方の後ろ側にあるいはその内側に位置するようになる、すなわち、乗客の中央寄りの肩同士は、S未満の距離によって互いから離れるようになる。また、側方間隔D1は、好ましくは、幅Sより以上であるべきであり、それによって、乗客の内側の肩同士は、互いから離れるようになる(最悪の状態でも、互いに近接する)。したがって、D1とSとの好ましい関係式は、次のように記載できる:S/2≦D1≦S。
【0031】
図10は、図9に示す車両の側面図である。図10に(かつ上記図4において)示すように、運転手用シートと乗客用シートとは、乗員が相対的にアップライト状態(まっすぐな状態)となるように配置される。シートバックは、乗員(ならびに乗員のバックシート)が角度A1、例えば約20度で車両に対して傾斜するように角度をなしている。この角度は、ある程度の範囲で変更可能であるが、30度未満、最も好ましくは25度未満であることが好ましい。
【0032】
さらに、シートのそれぞれのシートベースは、乗員が相対的に高いポジションに座るように、キャビンのフロア11Aから離間されている。乗員を支持するシートベース12Aの上面とフロア11Aとの間の距離D3は、好ましくは、400〜500mmである。したがって、乗員の下肢は、通常、垂直方向に対して、30度以下の、好ましくは25度以下の角度をなすようになっている。
【0033】
図11には、(乗員のいない)運転手用シート12と、後方シートの一方に座った乗客との正面図を示す。図示するように、シートバック12Bは、二つの主要部:乗員の背中上部および肩を支持するための上側の、相対的に幅広の部分12C、ならびに乗員の背中下部を支持するための下側の、相対的に幅狭の部分12Dを有している。図に示すように、乗客の中央寄りのひざK1が、運転手用シートに横方向にオーバーラップし、かつ下側シートバック部12Dの側方に至る空間内に収容される。したがって、運転手用シートは、乗客の中央寄りのひざK1を(図8〜10に示すように)長手方向にかつ(図11に示すように)横方向において運転手用シートとオーバーラップ可能とする形状となっている。
【0034】
シートバックの幅広部分12Cは、一般的に、400〜500mmの幅(乗員の肩の幅と同じか、あるいはそれよりわずかに小さいことが好ましい)を有しており、幅狭部12Dは、一般的に、150〜300mmの幅を有している。乗客のひざK1を収容するためのスペースは、少なくとも50mmまで、好ましくは少なくとも100mmまでシートバック12Bのそれぞれの側部へと横方向に延在している。図示するように、(切欠き12D同士の間を除く)シートベース12Aは、シートバックの幅広部12Cの幅と同様の幅を有している。
【0035】
図12には、図8〜図11に示す座席装置に座った運転手および二人の乗客の正面図を示す。これは、どのように、横方向において、乗客の胴の上部(上半身)が運転手の胴とオーバーラップするかを示す。
【0036】
図13〜図15は、上記座席装置の3つの可能な構成を示す。図13には、乗客のシートの後ろの収容スペース20Aを示す。乗客用シート13,14のバックレストは、実質的に水平なポジションまで折り曲げることができる。図14において、そのうちのひとつが、付加的な収容スペース20Bを形成するために折り曲げられており、かつ図15においては、その両方が、さらなる収容スペース20Bおよび20Cを形成するために折り曲げられている。この領域は、収容のために使用可能であり、また図13〜図15においては斜線が付されている。さらなる装置(図示せず)において、子供用シートを乗客シートの一方に、あるいは両方に固定することもできる。
【0037】
図4および図10に示すように、乗客のひざは、距離D2(図4参照)によって示すようなある程度の範囲まで、運転手の体および運転手用シートとオーバーラップする。この距離の大きさは、運転手用シートの長手方向のポジションならびに乗客のサイズに左右されるが、一般的には、50mm〜300mmの範囲内のものとなる。運転手用シート12の長手方向のポジションは、必要であれば、運転手が、コントロールペダル7およびステアリングホイール8に対する運転手自身の位置を調節可能なように可変となっている。図2および図8において、運転手用シート2および12は、乗客用シート3,4,13,14のすぐ前方に配置されている。好ましい装置において、運転手用シートベース12Aおよび/または運転手用シートバック12Bの後部は、(図2および図8において上から見た場合に)乗客用シート13,14の前部に近接するよう配置されている。運転手用シート12を前方へ調節する場合、運転手用シート12と乗客用シート13,14との間のスペースが例えば200mmまで増大され、運転手用シート12を後方へ調節した場合には、乗客用シート13,14のシートベースの前部と長手方向にオーバーラップするポジションへと、例えば20mmまで移動してもよい。これは、単純に、運転手用シートバック12Bと乗客用シートベースとがオーバーラップすることを伴う(それらの部分は、異なる高さとなることもできる)。いくつかの場合において、それは、さらに、運転手用シートベース12Aと乗客用シートベースとの間のオーバーラップも伴う(それは、運転手用シートベース12Bの後部の幅が、二つの乗客用シートベースの前部同士の間のギャップよりも狭い場合に、可能としてもよい。)。
【0038】
図4および図10において、乗員は、相対的にアップライト状態で座っており、かつ乗客の脚は、通常、運転手用シートベース12Aのポジションにすぐ近くにおいて、キャビンのフロア1A,11A上にある。ただし、乗客は、乗客の脚がホイールアーチ9,19の後方側部に置かれるようになる広がりから、さらに外へ脚を伸ばしてもよい。好ましい装置において、成人乗客の脚は、このポジションの中で実質的に完全に広げられてもよい。
【0039】
本明細書に記載される車両および座席装置のさらなる重要な態様では、運転手用シート2,12ならびに乗用車用シート3,4,13,14へのアクセスが容易となる。中央に運転手用シートが配置された3つのシート装置が、幅広く利用されない理由の一つとして、シートが車両の側部からある程度のスペースを置いて離間される場合に、このシートに到達しかつそれから出ることが困難であることが挙げられる。この問題を軽減する方法の一つは、ドアが開いているときに、運転手用シートに近接するフロアの少なくとも一部も移動するように、キャビンのフロアへと入り口用ドアを広げることである。ドアが開いているときに、続いて、運転手は、運転手用シートにもう少し近い地面上に脚を位置させることができる。これは、マクラーレンF1(登録商標)スポーツカーに使用される解決法である。
【0040】
上記車両および座席装置においては、さまざまな解決法が用いられる。車両がコンパクトなタウンカーとして特定の用途のものである場合、すべてのシートへのアクセスが非常に簡単であることが重要となる。このため、従来の入り口用ドアに変えて、車両キャビンは、ルーフの少なくとも一部およびキャビンの少なくとも一方の側部が、あるポジションまで移動するよう開放可能となるよう設計されており、それによって、人間が、車両に隣接する地面から水平フロアスペース15Aまたは15Bへと足を踏み入れること(steping)によって車両の側部を通って入ってもよく、かつこのフロアポジションに直立的にあるいは実質的に直立的に立つことができるようになっている。これは、キャビンのルーフの少なくとも一部が、少なくとも1.75mの、好ましくは1.8m以上の高さまで広がる空きスペースを提供するように、あるポジションまで移動されることを意味している。これを実現するためにはさまざまな方法がある。一例として挙げると、キャビンルーフの少なくとも一部ならびにキャビンの一方の側部の少なくとも一部を上方へ開放させることである。それを実現するために、ガルウィングドアの形態のものを使用することもできる。キャビンルーフの少なくとも一部ならびにキャビンの一方の側部の少なくとも一部を長手方向にスライドさせるために、他の付加物を設けてもよい。
【0041】
したがって、運転手は、このフロアスペース15Aまたは15B上に立ち、続いて運転手用シート12上に座るよう自身の身を落とし、そして前方を向くように体を回転させることができるようになるか、あるいは運転手は、このフロアスペース15Aまたは15B上に立ち、続いて、ステアリングホイールの下およびコントロールペダルの後方のスペース15Cに脚を移動させ、その一方で(あるいは同時に)運転手用シート12における座位置へ自身の身を落としてもよい。
【0042】
加えて、乗客は、車両が近接する地面からフロアスペース15Aまたは1Bへ足を踏み入れ、前方を向くよう回転し、続いて、各乗客用シート13,14に座ってもよい。したがって、小さく、コンパクトな車両であっても、当該装置は、3つのすべてのシートへの、あるいはそれからのアクセスが容易なものとし、これは、運転手用シートおよび乗客用シートのすぐそばのフロアスペース15A,15Bにおいて直立した(または実質的に直立した)状態で立つことができることが重要となる。それぞれのフロアスペース15A,15Bは、好ましくは少なくとも400mm×300mm、最も好ましくは500mm×400mmである。
【0043】
上述した3シート装置のさらなる重要な要件は、それぞれのシートのために取り付けられたシートベルトの存在である。乗客用シートのために取り付けられたシートベルトは、従来の様式で車体に固定できる。ただし、これは、運転手用シートがキャビンの側部から離間されている場合には、運転手用シートベルトに関しては不可能である。マクラーレンF1(登録商標)スポーツカーにおいては、この問題は、(運転手用シートと乗客用シートとの間の側方オーバーラップが存在しない場合に)運転手用シートの側部において機構的部材を有するモノコックボディ構造を提供することによって解決される。上記座席装置において、運転手用シートは、代わりに、シートバックに対して、フレームを介してシートベースに対して、したがって車両のフロアに対して固定される上部シートベルト取り付け具に対して加えられる伝達荷重に対する十分な強度を有するフレームが設けられている。
【0044】
上記シート装置は、以下のような、いくつかの利点を有している:
・運転手用シートが、運転手のための向上された視野ならびに直線状の制御部を与えるよう中央に配置されている。
・乗客用シートとともに運転手用シートの上記レイアウトは、コンパクトであるが、快適であり、かつアクセス可能な乗客用キャビンを提供することができる。
・上記座席装置はコンパクトであり、そのため、車の寸法およびその重量を最低限にすることができる。
【0045】
また、本発明は、車両のための座席装置にまで及んでおり、この座席装置は、少なくとも3つのシートを有しており、かつ実質的に横方向に整列された2つの後方乗客用シートと、実質的に中央にかつ2つの後方乗客用シートの前方に配置された運転手用シートとを備えており、前方運転手用シートは、後方の乗客の脚のそれぞれの前部を越えて後方に延在している。上述したように、オーバーラップD2(図4参照)の量は、乗客の相対的な大きさに左右される。
【0046】
上記実施形態は、特に3人乗りの、ミッドエンジン車両に関連して説明した。一般的に、車両エンジンは、(通常、乗客用シート13,14のシートベースと同様のレベルにおける)ブーツスペース20Aのフロアの下方の、かつ/または乗客用シート13,14の下方のスペース20D(図10参照)内に取り付けられている。車両が内燃機関を有している場合、燃料タンクは、好ましくは、運転手用シートの下側に取り付けられており、ラジエーターは、燃料タンク下側に配置されてもよい。車両が電気モーターを有している場合、バッテリーまたは他のエネルギー源も同様に、運転手用シートの下方に取り付けられる。したがって、燃料タンクまたは他のエネルギー源は、車両のセンターライン上に、実質的に前方ホイールと後方ホイールとの中央に、かつ低い位置に、したがって車両動特性に関して実質的に理想的な位置に配置される。ただし、その中央運転ポジションを伴う座席装置は、ミッドエンジンのものであるか否かにかかわらず、いかなるタイプの車両においても利点となりうる。
【0047】
車両の長さは問題がなければ、付加的な後方シートを図示した後方乗客用シートの後ろに設けてもよい。さらに、例えば内張(upholstery)によって連結された、適切な形状になされたベンチシートにおいて、2つの後方シートを提供することも可能である。
【0048】
上述したように、上記座席装置は、コンパクトな、タウン用車両に適している。特に、車両を、全長(外側の長さ)が2.3mm以下となりかつ全幅(外側の幅)が1.25m〜4mとなるように構成することができる。これは、こうした寸法の車両を、標準UKパーキングスペース(これは4.5m〜6.6m掛ける1.8m〜2.7mの範囲のものである)の中へ斜めに停めることが可能となる場合に重要となり、かつ(車両に乗りかつそれから降りるよう、乗員のための十分なスペースがそれらの間に与えられると同時に)4.5mのパーキングスペースの中へそうした3つの車両を隣り合って入れることを可能とし、かつ6.6mのパーキングスペースの中へそうした4つの車両を隣り合って入れることを可能とする。さらに、入り口用ドアが、上方に、あるいは長手方向に開放される上記タイプのものであり、したがって、開放されたときに、車両の寸法を超えて側方に広がらない(あるいは、非常に小さな量しか広がらない)場合に、こうした利点がより高められることを理解されたい。
【0049】
閉じた構造体において、車両の高さ(フロアからルーフの上部まで)は1.15〜1.50mであり、最も一般的には約1.4mである。
【0050】
上記本発明に関する変更ならびに変形は本発明の特許請求の範囲に記載された範囲内でなされることを理解されたい。
【符号の説明】
【0051】
1 フロア
1A フロア
2 運転手用シート
3,4 乗客用シート
5 ボディ
6 ホイール
7 コントロールペダル
8 ステアリングホイール
9 ホイールアーチ
10A,10B,10C 収容スペース
11,11A フロア
12 運転手用シート
12A 運転手用シートベース
12B 運転手用シートバック
12C 運転手用ヘッドレスト
12D 切欠き
13,14 乗客用シート
15 ボディ
15A,15B 水平フロアスペース
15C 後方スペース
16 ホイール
17 コントロールペダル
18 ステアリングホイール
19 ホイールアーチ
20A,20B,20C,20D 収容スペース
K1 ひざ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのコンパクトな座席装置であって、
前記座席装置は、少なくとも3つのシート:2つの実質的に横方向に整列された後方乗客用シートの少なくともある程度前方に、かつ実質的に中央に配置された1つの前方運転手用シート:を具備してなり、
前記運転手用シートは、前記後方乗客用シートの各部分の前方に配置されるように、横方向に延在しており、
前記運転手用シートと前記後方乗客用シートとの横方向ポジションにおけるオーバーラップの広がりは、運転手用シートの各側部が、前記乗客用シートのそれぞれにおける前方対向ポジションに座った乗客の脚の少なくとも一部を収容可能とするように形成されることを要求されるようになっているものであることを特徴とするコンパクトな座席装置。
【請求項2】
各シートは、その上に使用者が座るシートベースと、使用者の背中を支持するためのシートバックとを具備してなり、かつスペースまたは切欠きが、乗客の脚の一部を収容するよう、前記運転手用シートの前記シートベースの各側部および/または前記シートバックの各側部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな座席装置。
【請求項3】
前記シートのそれぞれが、相対的にアップライトポジションで乗員を座らせるよう構成されており、前記シートバックは、30度以下の、好ましくは25度以下の角度で垂直方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項2に記載のコンパクトな座席装置。
【請求項4】
実質的に水平なフロアが、前記運転手用シートの両側において、かつ前記乗客用シートのすぐ前方に設けられており、(使用時に乗員を支持する)各シートベースの上面は、前記フロアの平面の上方に400mmから500mm(D3)で離間されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコンパクトな座席装置。
【請求項5】
前記シートのそれぞれが一般的な成人によって使用されるとき、乗客の中央寄りにある肩が、一般的な成人の肩の幅S未満の距離によって互いから離間されるように、各乗客用シートのセンターラインが、一般的な成人の肩の幅Sよりも小さい距離D1によって、前記運転手用シートのセンターラインから横方向に離間されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のコンパクトな座席装置。
【請求項6】
前記距離D1が、250mm〜400mmの範囲内に、好ましくは275mm〜380mmの範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載のコンパクトな座席装置。
【請求項7】
前記スペースまたは切欠きは、前記シートベースおよび/または前記シートバックの各側部内に、少なくとも50mm、好ましくは100mm、横方向に延在していることを特徴とする請求項2ないし請求項2を引用する請求項のいずれか一項に記載のコンパクトな座席装置。
【請求項8】
前記運転手用シートの各側部においてかつ前記乗客用シートのそれぞれの前方においてフロアスペースを具備してなり、前記装置は、成人乗客が、乗り降りする際に、前記フロアスペースの上に、直立的にあるいは実質的に直立的に立つことができるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のコンパクトな座席装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のコンパクトな座席装置を含むことを特徴とする車両。
【請求項10】
1.25m〜1.4mの全キャビン幅と、2.3m以下の全長とを有することを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項11】
成人が、前記側部から前記キャビンの中へ入ること、ならびに前記フロアスペース上で直立的にまたは実質的に直立的に立つことができるように、前記座席装置は、キャビン内に含まれており、前記キャビンの一方の側部の少なくとも一部と前記キャビンのルーフの少なくとも一部とが、開放ポジションンへと移動可能となっていることを特徴とする、請求項8を引用する請求項9または請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記キャビンの一方の側部の少なくとも一部と、前記キャビンのルーフの少なくとも一部とは、著しく大きな角度まで車両の横方向寸法を越えて広がることなく、上方または長手方向に開放されるよう構成されていることを特徴とする請求項11に記載の車両。
【請求項13】
実質的に、一つ以上の図面を参照して上述され、かつ/またはそれに示されたことを特徴とするコンパクトな座席装置あるいは車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−521354(P2010−521354A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553211(P2009−553211)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000892
【国際公開番号】WO2008/110814
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509257444)ゴードン・マレー・デザイン・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】