説明

コンパクト流体混合装置およびその使用方法

【課題】下降流反応器におけるコンパクト流体混合装置およびこれを発熱反応を実行するために使用する方法を提供する。
【解決手段】下降流反応器におけるコンパクト流体混合装置は、流体を受け入れるための垂直状収集ライン7を有している少なくとも1つの実質的水平状収集手段と、前記収集ラインに配置されている少なくとも1つの注入手段8と、流体循環方向において収集手段の下流に位置させられかつ前記収集ラインに直接的に連結された入口端および流体の通路のための出口端10を有しており、前記出口端10は、反応器本体の周方向の向きに位置させられている環状混合チャンバ9と、少なくとも1つの煙突13を備えておりかつ前記チャンバの下流に流体循環方向に距離d2だけ位置させられている水平状前置プレート11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下降流反応器におけるコンパクト流体混合装置およびこれを発熱反応を実行するために使用する方法に関する。本発明は、また、コンパクト混合装置を備えた反応器にも関する。本発明は、発熱反応の分野、とくに、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素添加および水素化非芳香化反応に適用される。
【背景技術】
【0002】
精製および/または石油化学を実行する際の発熱反応は、それらが行われる反応器の熱的暴走を予防するために付加的流体にる冷却が必要である。また、触媒のホットスポットの存在を予防するために反応器内を均一な温度勾配に保つことが必要である。これらのホットスポットは触媒活性を早期に低下させて、選択的でない反応をもたらせる。したがって、反応器内には少なくとも1つの混合チャンバが必要である。混合チャンバは、流体の均質な温度分布および反応流体を所望の温度に保つための冷却を可能にする。
【0003】
この均質化を達成するために、当業者は、反応器部においてできるだけ温度を均一にするために、冷却流体の配達を含む、しばしば、複雑な内部構造に導かれる。この注入は、混合チャンバの下流で実行される。それは、特許文献1および特許文献2に記載の多孔システム、または、特許文献3に記載のスパイダー・タイプ・システムを通じて行われる。これらのボックスは、通常、非常に複雑である。それらは、特許文献4に記載されているうに、二重または三重構造となり、また、特許文献5に記載されているように、ブレード、フィン、バッフル、デフレクターのような内部構造物を具備している。この種のシステムの主たる欠点は、開発および改良の複雑さ、圧力低下の誘起、全体寸法(反応器におい占めるスペース)である。
【0004】
冷却流体および処理流体間の効率的交換を可能とする冷却装置は、特許文献6から既知である。この装置は、装置本体と一体化された以下のシステムを備えている。それは、冷却流体注入ロッド、流体収集バッフル、冷却流体および下降流間で適切な混合を可能とする冷却ボックス、多孔トレイおよび分配プレートを備えた分配システムである。冷却ボックスは、デフレクターを備えている。デフレクターは、本体の軸に実質的に非半径方向および非平衡に流体の渦巻きと、デフレクターの下流で、反応流体循環方向に、ボックス内で形成された混合物のための少なくとも1つの出口通路とを提供する。この装置は、従来技術の幾つかの欠点は克服するが、非常に嵩高い。
【0005】
現存のある装置は、全体寸法を減じることを可能とする。例えば、特許文献7、特許文献8および特許文献9は、従来技術よりも嵩の低い混合ボックスを開示している。これは、しかしながら、効率を求めるために高い圧力低下を生成する多くの内部構造を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP-B-0.716.881
【特許文献2】US-5.025.831
【特許文献3】US-4.836,989
【特許文献4】US-5.232.283
【特許文献5】US-5.567.396
【特許文献6】FR-A-2.824.495
【特許文献7】US-6.881.387
【特許文献8】EP-B-1.721.660
【特許文献9】US-6.80.068
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、このように、コンパクト混合装置を提供することによって従来技術の1つ以上の欠点を克服することにある。本発明による装置は、反応器寸法に関して確実な改善を可能としかつ温度の均質化とともに、流体の良好な混合を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の目的は、下降流反応器におけるコンパクト流体混合装置提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、発熱反応を実行するために下降流反応器においてコンパクト流体混合装置を使用する方法に関する。
【0010】
本発明の他の目的は、発熱反応を実行するためにコンパクト流体混合装置を備えた反応器に関する。
【0011】
第1の態様によれば、本願は、以下を備えたコンパクト流体混合装置に関する。
【0012】
−少なくとも1つの実質的水平状収集手段が、流体を受け入れるための垂直状収集ラインを有しており、
−少なくとも1つの注入手段が、前記収集ラインに配置されており、
−環状混合チャンバが、流体循環方向において収集手段の下流に位置させられかつ前記収集ラインに直接的に連結された入口端および流体の通路のための出口端を有しており、前記出口端は、反応器本体の周方向に向けて位置させられており、
−水平状前置プレートが、少なくとも1つの煙突を備えかつ前記チャンバの下流に流体循環方向に距離d2だけ位置させられている。
【0013】
本発明の変形例によれば、前記注入手段は、環状混合チャンバの入口端レベルに位置させられている。
【0014】
本発明の他の変形例によれば、前置プレートおよび環状混合チャンバ間の距離d2は、0〜100mmの範囲ある。好ましくは、前記距離d2は、0,25〜100mmである。より好ましくは、この距離は、0.5〜5mmである。
【0015】
本発明の他の変形例によれば、前置プレートおよび環状混合チャンバ間の距離d2は、0mmであり、前記環状混合チャンバは、前記前置プレートと接触させられている。
【0016】
本発明の他の変形例によれば、前記環状混合チャンバは、反応器本体の表面に位置させられている。
【0017】
本発明の他の変形例によれば、前記チャンバは、反応器本体から距離d1離れており、前記距離d1は、反応器の直径の0,5%〜25%である。
【0018】
本発明の他の変形例によれば、前記チャンバの直径は、0.05〜0.5mである。好ましくは、前記直径は、0.1〜0.3mである。より好ましくは、その直径は、0.15〜0.25mである。
【0019】
本発明の他の変形例によれば、前記チャンバの長さがは、90〜270度の範囲である。好ましくは、その範囲は、100〜250度の範囲である。より好ましくは、その範囲は、130〜200度である。
【0020】
第2の態様によれば、本発明は、発熱反応を実行するためにコンパクト混合装置を使用する方法に関する。
【0021】
第3の態様によれば、実質的垂直軸にそう細長い形の反応器であって、その反応器内の頂部から底部まで少なくとも1つの触媒ベッドを通過して少なくとも1つの反応流体が循環させられ、前記反応流体循環方向における前記触媒ベッドの下流に少なくとも1つの前記コンパクト混合装置を備えている反応器に関する。
【0022】
本発明の他の変形例によれば、前記反応器は、前記反応流体循環方向における前記混合装置の下流に位置させられている実質的水平状分配プレートを備えている。
【0023】
本発明の他の変形例によれば、前記反応器は、前記混合装置および前記分配プレートの下流に配置された第2の触媒ベッドを備えている。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、発熱反応を実行するために反応器を使用する方法に関し、反応器は、実質的垂直軸にそう細長い形をしており、その反応器内の頂部から底部まで少なくとも1つの触媒ベッドを通過して少なくとも1つの反応流体が循環させられ、前記反応流体循環方向における前記触媒ベッドの下流に少なくとも1つの前記コンパクト混合装置を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるコンパクト混合装置を備えた多段ベッド反応器の縦断面図である。太い矢印は、反応器における流体流れ方向を示している。
【図2】図1のA-A線にそうコンパクト混合装置の断面図である。
【図3】本発明による装置の総合混合効率を示すグラフである。前置プレート上で測定された混合効率(横軸ηswirl)を関数とする環状混合チャンバの様々の効率(ηtore )を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によるコンパクト混合装置は、反応器において用いられる。反応器において、発熱反応、例えば、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化分解、水素添加および水素非芳香化反応が実行される。反応器は、実質的に垂直軸にそう細長い形状を有する。少なくとも1つの反応流体(または処理流体)は、少なくとも1つの触媒ベッドを通じて前記反応器の頂部から底部まで循環させられる。触媒ベッド出口で、反応流体は収集され、それから、分配プレートの下流に位置する触媒ベッドに分配される前に、本発明によるコンパクト混合装置内で冷却流体と混合される。下降流および上昇流は、反応流体の流れの方向に関して画定される。
【0027】
反応流体は、ガス、液体、ガスまたは液体を含んでいる混合物である。それは、反応器で実施される反応のタイプによる。上流触媒ベッドを通じて流れる反応流体は、実質的に水平な収集手段(5)によって収集される。収集手段は、実質的に垂直な収集ライン(7)を備えている(図1参照。)。「実質的に水平」および「実質的に垂直」の意味するところは、本発明において、垂直または水平方向に対して、角度α±5°をもつ方向を含む。収集手段は、固定プレートを含んでいる。固定プレートは、触媒ベッドの格子下側の本体の縦軸に直交する面内に配置されている。このプレートは、反応器の全面にわたって半径方向に拡がっている。このプレートの一端には、収集ライン(7)に接続されている開口(6)が備えられている。収集手段は、触媒ベッド格子から、収集スペース(4)をつくるだけの高さ(H1)だけ離れている。このスペースは、反応流体を前記ラインに排出するのに必要である。この高さHlは、触媒ベッド(2)から流体を収集する上での圧力低下を制限しかつ隙間高さを制限するために選択されなければならない。隙間高さは、収集ラインへの反応流体の排水またはこのライン流れを修正してはならない。本発明の実施例において、高さHlは、30〜200mm間、好ましくは、30〜150mm間、そして、より好ましくは、40〜100mm間で変動する。本発明の一実施例によれば。高さHlは、100mmである。
【0028】
垂直状収集ライン(7)は、前記チャンバの入口端レベルで、環状混合チャンバ(9)に通じている。このラインは、反応流体および冷却流体の流れを前記チャンバに送る。垂直ライン(7)の径は、圧力低下を制限するように選択される。それは、前記収集ラインにおいて、収集手段上流の触媒ベッドからの反応流体(S)の流速を制限するように選択される。望ましくは、前記流体の速度は、2〜5m.s−1の間で変動する。
【0029】
冷却流体は、垂直収集ラインに注入手段(8)で注入される。注入は、収集ライン内における反応流体の流れ方向に対して直交している。使用する注入手段は当業者にとって公知である。それは、横方向の分岐継手、ノズルまたはスパイダー、ノズル・ランプ等々である。
【0030】
注入手段は、開口(6)からの収集ラインの任意の高さにも位置させられる。好ましくは、注入手段は、環状混合チャンバの入口端で、収集ラインの接続レベルに位置させられる。
【0031】
冷却流体は、液体、ガスまたは液体またはガスを含んだ混合物である。好ましくは、流体は、水素である。
【0032】
環状混合チャンバ(9)は、反応流体および冷却流体に混合することを可能とする。前記チャンバは、不完全なトロイダル形状を有している。それは、円弧を形成している湾曲管からなる。それは、2つの異なった端を有している。その一端は入口端と称され、その他端は、入口端とは反対側の出口端(10)と称される。入口端は、収集ラインに接続され、出口端は、開口されかつ流体混合物を前置分配プレート上に流出することを可能とする。出口端(10)は、反応器本体(1)の周方向に向けて位置させられている。かくして、出口部分(10)から出る流体は、反応器部分の接線方向に流出される。このレイアウトは、前置分配プレート(11)上に流体混合物の渦巻流を保つことを可能とする。渦巻流によって、反応流体および冷却流体は、前置分配プレート上で混合を持続することができる。環状混合チャンバ(9)の径および長さは、ベッド(2)からの流れおよび冷却流体間の混合を保証し、一方、収集ラインおよび反応器において必要とされるスペースの圧力低下を制限するするために選択される。環状混合チャンバの長さは、2つの端を通過するプレートによって形成される角度によって画定される。前記チャンバの長さは、90〜270度の範囲である。それは、好ましくは、100〜200度、100〜250度の範囲、さらに、好ましくは、100〜180度、130〜200度の範囲に及ぶ。好ましい実施例によれば、本発明による前記チャンバは、開放トロイドの形状を有する。前記チャンバの断面は、円である。本発明の他の実施例において、前記チャンバの断面は、楕円形または矩形でありうる。環状混合チャンバの断面の形状がどうであっても、前記チャンバの径(または高さ)dは、圧力低下を最大に制限しかつ反応器内の必要とするスペースを制限するように選択される。この直径dは、0,05〜0.5m間で、好ましくは、0,1〜0.3m間で、より好ましくは、0.15〜0.4m間で、さらに好ましくは、0.15〜0.15m間で、最も好ましくは、0.1〜0.35m間の範囲である。本発明による混合装置の圧力低下は、環状混合チャンバの高さdに依存するだけである。この圧力低下は、既知の圧力低下則に従う。それは、以下の数式により定義される。
【数1】

【0033】
ここに、ΔPは圧力低下、pmは環状混合チャンバのガスおよび液体の混合物の平均密度、Vmはガスおよび液体の混合物の平均速度、Xは混合装置と関連する圧力低下係数である。この係数は、流れ状態の如何に関わらず、値2で測定された。本発明の好ましい実施例によれば、前置分配プレート上の環状混合チャンバによって占められるスペースを制限しかつ前記チャンバの出口で最高に可能な混合効率を良くするために、上記径はできるだけ小さくする。したがって、可能な最大の圧力低下基準を満たすための最小に可能な直径dが好ましく用いられる。産業装置として必要な大きさにするときに、好ましい圧力低下範囲は、0.05 bars<ΔPmax <0.5 barsである。
【0034】
流体は、環状混合チャンバ(9)内で渦巻運動をする。この運動は、反応流体および冷却流体の混合および温度均質性に有利に働く。
【0035】
流体環状混合チャンバは、反応器本体の表面および流体の流方向の前置分配プレートの上流に位置させられている。前記チャンバの位置は、その長さを最大にしかつ反応器のスペースを節約する。湾曲形状をもつ環状混合チャンバは、距離d1だけ離れて反応器本体にそってのびている。本発明によるコンパクト混合装置のための、反応器においてできるだけ小さいスペースとするために、距離d1の範囲は、反応器直径の0.5%〜25%、好ましくは、反応器直径の0.5%〜10%、さらに好ましくは、反応器直径の1%〜5%である。
【0036】
好ましい実施例において、前記チャンバは、前記プレートと直接接触させられている。この構成において、環状混合チャンバは、このように、前置分配プレート上に直接セットされている。他の実施例において、前記チャンバは、前置分配プレートから距離d2だけ離れている。このケースにおいて前記チャンバは、当業者にとって公知の固定手段、例えば、凹足によって、プレートに固定されている。これらの凹足は、混合物流れ方向に位置させられている。距離d2は、0〜100mmの範囲、好ましくは、0.25〜100mmの範囲、より好ましくは、0〜50mmの範囲、さらに好ましくは、0.5〜30mmの範囲、最も好ましくは、0.5〜5mmの範囲である。
【0037】
本発明の実指例によれば、反応器の表面上および前置分配プレートの上流に環状混合チャンバを位置させることは、前置分配プレート上またはその上方に流体混合物の接線流を得ることができる。前記プレート上のこの接線流は、混合効率を最適化できる。事実、従来技術に記載されている、冷却チャンバだけで起こる混合装置と異なり、反応流体および冷却流体間の混合は、前置分配プレートのレベルで持続する。本発明によるコンパクト混合装置は、こうして、2つの流体の温度および集中均質混合物が前置分配プレート(11)上で増加させられる。
【0038】
環状混合チャンバ(9)の下に位置させられた前置分配プレート(11)は、1つの多孔プレートおよび1以上の煙突(13)を含んでいる。煙突(13)は、前置分配プレートの中心に配置されて、前記プレート上のに流体混合物の渦流を妨げなくなっている。このプレートの設計は、圧力低下を減少させかつ数センチメートルの液クリアランスを生じさせるように最適化されている。非制限的な実施例によれば、前置分配プレートは、10mmの孔が三角形ピッチで形成されている。前置分配プレートは、反応器の全表面にわたって放射状に拡がりかつ本体の縦軸に直交する平面上に配置されている。それは、混合物の最初の分離を可能とし、液体は上記孔を通過し、ガスは煙突を通過して流れる。
【0039】
本発明の一実施例によれば、本発明による装置は、また、分配プレートを備えている。分配プレートは、冷却された反応流体の分配を下流触媒ベッド上で最適化する。このような分配プレートは、当業者にとって公知である。前記分配プレートの完全な記載は、特許出願WO-A-20031039.733に開示されている。
【0040】
従来技術に記載の装置と関連して、本発明によるコンパクト装置は、以下の利点を奏する。
【0041】
−環状混合チャンバ内および前置分配プレートレベルまたはその上方での渦巻流による混合効率の増加。
【0042】
−実施の容易さ。
【0043】
−環状混合チャンバを前置分配プレートに非常に近く接近させかつ前記チャンバのレベルで冷却流体を注入することによるコンパクト性の増加。
【0044】
−環状混合チャンバ内に構造物を無くすことによる圧力低下の誘起。
【0045】
つぎに、図面について詳細に説明する。
【0046】
図1は、本発明による冷却装置を示すものである。冷却装置は、実質的に垂直軸にそった細長い形状の反応器(1)内に配置されている。反応器内では、反応流体がその頂部から底部まで少なくとも1つの触媒ベッド(2)を通過して循環させられる。本発明による混合装置は、本体(1)内の反応流体の流れに関して、触媒ベッド(2)の下に配置されている。支持格子(3)は、触媒ベッドを担持して、触媒ベッド(2)の下に空のスペース(4)を提供するために用いられている。この空のスペースまたは収集スペース(4)は、収集手段のレベルで触媒ベッド(2)からの流れを収集することを可能とする。収集された反応流体は、例えば、ガス相および液相から成る。収集手段(5)は、バッフルとも称される固体プレートである。固体プレートは、流体流れを環状混合チャンバ(9)に排出するための1点(6)のみで開口されている。ベッド(2)からの反応流体は、空のスペース(4)で、このように強要されて、垂直収集ライン(7)に通過させられる。この例において、環状混合チャンバ(9)は、円環状形状である。前記チャンバ(9)は、収集ライン(7)の入口端に接続されている。上側ベッド(2)からの、冷却流体および反応流体の流れは、こうして、前記チャンバ(9)に入ることを強要され、そこで、流体は混合されかつ渦巻流となる。前記チャンバの出口で、流体混合物は、前置分配プレート(11)上を流れる。環状混合チャンバは、前置分配プレート上および反応器表面にセットされている。この位置は、反応器のスペースを節約する。混合は、分配プレートの格子上の流体の渦巻流のおかげで持続する。混合物のガスおよび液相は、多孔プレート(11)上で分けられる。多孔プレートには、ガスを通過させる1以上の中心煙突(13)が備えられている。液体は、プレートの孔を流下しかつシャワーヘッドまたは雨のような流れを形成する。多孔プレート(11)の孔の数および大きさは、そのプレート上に特定の高さの液体が常に存在するように選択される。中心煙突(13)の数および大きさは、分配プレート(12)上のガス相および液相の分離を最適化するために選択される。一方、煙突(13)の頂部および収集バッフル(5)間の距離を充分にとって、装置のこの位置で、高い圧力低下を生じないようにしている。多孔プレート(1l)の目的は、混合チャンバ(9)および分配プレート(12)を離れる流体を、比較的バランスのよい方法で作り出すことである。分配プレート(12)の目的は、この分配プレート下流の、触媒ベッド(14)の入口で、ガス相および液相を再分配することである。
【0047】
図2に示すように、本発明による混合チャンバ(9)は、環状の形状であり、より正確には、それは、トロイドの形状を有する。それは、閉鎖されていない円弧を形成している湾曲管からなる。前記チャンバは、垂直収集ラインの反対側の端で開口している。そして、環状混合チャンバ(9)の開口部(10)は、実質的に本体(1)の周方向に向けて位置させられている。こうして、開口部(10)から離れる流体の流れは、本体(1)の部分の接線方向に放出される。このレイアウトは、前置分配プレート(11)上の混合物の渦巻流を保持する。環状混合チャンバ(9)の直径および長さは、ベッド(2)からの流れおよび冷却流体間の良好な混合を保証し、一方、収集ライン内の圧力低下および反応器内に必要とするスペース制限するように選択される。
【0048】
以下の実施例において、用語「トロイド」、「混合チャンバ」、「環状混合チャンバ」は、本発明による環状混合チャンバを指定するために無差別に使用されている。
【0049】
実施例1:本発明による環状チャンバレベルでの流体の流れ解析
本発明による環状混合チャンバ内の2つの流体の流れは、流体力学ソフトウェア(Fluent 6.3、developed by ANSYS ink.、Canonsburg、USA)を使用してシミュレーションされている。混合現象の解析に関した数値シミュレーションは、
(a) 環状混合チャンバ内において、
(b) 前記チャンバの出口においてである。
【0050】
試験された様々な環状混合チャンバおよび実験的シミュレーション条件の特性が表1に示されている。
【0051】
これらのシミュレーションは、最も不利な条件を考慮して行われる。例えば、流体(液水および気体窒素)がトロイド入口で全く混合されないケースである。以下の構成がソフトウェアに与えられる。流体は、トロイド入口に、2つの明らかに異なった温度T1およびT2で届けられる。その結果、トロイド入口部の半分が温度T1で、他の半分が温度T2となる。
【0052】
試験された環状混合チャンバの特性が表1において要約されている。
【表1】

【0053】
シミュレーション・ソフトウェアによって算出されたトロイド出口での温度分布は、トロイドの混合効率を推定するために用いられる。この効率は、以下の関係により定義される。
【数2】

【0054】
ここに、ηは混合効率、σは温度の標準偏差、ΔTmaxは温度間の最高偏差、すなわち、(T2-T1)の絶対値である。多くのシミュレーションは、トロイドの理論上の混合物が世界的に以下のタイプの法則にしたがうことを強調している。
【数3】

【0055】
ここに、xがトロイド内を移動する直線距離、Uはトロイド内の液体の速度、dはトロイドの直径である。
【0056】
様々なシミュレーションから得られた結果が下記の表2に示されている。混合効率が混合チャンバの中間長さ(L/2)および混合チャンバ出口で算出されている。
【表2】

【0057】
環状混合チャンバの中間長さおよび前記チャンバの出口で生じた混合効率(数式1による)は、80%以上である。あるチャンバの構成において、この効率が、99%でもある。これが意味するところは、本発明によるチャンバにおける流体の非常に良好な混合および優れた流体温度均質化が得られるということである。
【0058】
実施例2:本発明による前置プレートレベルでの流体の流れ解析
前置分配プレートレベルで、本発明による混合装置で生じる混合効率を決めたい。したがって、前置分配プレート上の流体流動は、流体力学ソフトウェア(Fluent 6.3、developed by ANSYS ink.、Canonsburg、USA)によってシミュレーションされる。試験された様々な混合装置および実験条件が表3に要約されている。シミュレーションは、ガス相の存在しない単相流により実行される。これは、冷却流体が液体でありかつ液体相のみが存在するケースを代表するものである。
【表3】

【0059】
本発明による装置において、前置分配プレートレベルでの混合効率を研究するために、トロイドの断面は、等しい表面積の2つのゾーンに分けられる。その1つは温度Tlで、もう1つは温度T2である。実験的条件は、最も好適でないケースに対応する。それは、環状混合チャンバ内の2つの流体間で混合が起こらないときである。前置分配プレート上の渦巻流の効率だけがそのような条件下で測定される。
【0060】
得られた結果は、表4に示されている。
【表4】

【0061】
前置分配プレート上のトロイド出口で生じる混合効率(数式1による)は、常に、80%より大きいか、それに、等しい。これが意味することは、発生した渦巻流がシミュレーションにより研究された作動範囲において流体の混合に有意義に参加しているということである。
【0062】
実施例1および2の結論
トロイド内および前置分配プレート上のトロイド出口の混合効率が結合されうることを考慮すると、本発明による装置の完全混合効率は、以下の式により表される。
【数4】

【0063】
図3は、累積的混合効率を示す。トロイド内の混合効率(ηtoroid)が50%でありかつ前置分配プレート上のトロイド出口の混合効率(ηswirl)が80%であると、90%以上の全体の混合効率が得られる。こうして、本発明の装置によれば、環状混合チャンバ内おける最適化された流体混合効率が必要でない。これは、従来技術に記載の混合装置とは相違する。前置分配プレート上にセットされている環状混合チャンバおよび前置分配プレートの組み合わせのおかげで、本発明による混合装置は、高い流体混合効率を有する。このレイアウトは、前置分配プレート上の渦巻流体流れの連続性を成し遂げることを可能とする。したがつて、流体の混合は、前記プレート上で持続する。
【0064】
実施例3:コールドモデル試験
非制限的な実施例として、混合効率測定は、反応器内に配置された本発明による混合デ装置によって行われた。実験条件は、以下の通りである。
【0065】
直径480mmの反応器の上部は、2つの同一の部分に分けられている。2つの部分には、ガス(空気)および液体(水)が同一に供給される。その部分の高さは500mmである。その部分には、異なる温度Tl(283K)およびT2(330K)の流体が供給される。収集バッフルは、支持格子によって担持された粒状層の下に配置されている。支持格子および収集バッフル間の距離は、100mmである。垂直状収集ラインの高さは、150mmであり、その直径は、100mmである。試験された様々な混合トロイドの構造特徴は表5に示されている。冷却流体(水)インジェクション・チューブの直径は、20mmである。前置分配プレートには、直径4cm、高さ25cmの中央煙突が備えられている。前置分配プレートには、三角形ピッチ6.4cmで、直径1cmの孔が備えられている。孔あき煙突プレート・トレイ・タイプの分配プレートは、前置プレートの下に配置されている。触媒ベッドを意味する不活性ボールベッドは、流体流れ方向において分配プレートの下流に配置されている。6つの熱電対は、コラム部上に配置されかつ第1の不活性ボールベッドの3cm下側に位置させられている。本発明による混合装置の混合効率は、数式2によって、熱電対から提供された温度記録から算出される。したがって、記録された温度の標準偏差が、最初に算出される。
【0066】
試験は、以下の流量のために実施される。
【0067】
上側ベッドを出る液体の流量:15m3、h−1
上側ベッドを出るガスの流量:65m3、h−1
冷却流体流量:5m3、h−1
得られた結果は、表5に示されている。
【表5】

【0068】
理論効率は、前置プレート上の80%混合効率を用いて算出されている。
【0069】
試験した全ての構成の中で、総合測定熱効率は、全てのケースにおいて、99.7%以上であり、測定ノイズ(重要でない)のせいで100%ではない。これらは、以下の結果を示している。数式2によって50%で算出した、冷却トロイドの熱的混合効率でさえ、前置プレートのトロイド出口での渦巻混合物が100%に近い達成を可能としている。かくして、冷却装置の工業スケール寸法設計を達成するために、冷却トロイドに関する50%の理論的混合効率が目標とされ、それは、100%に近い総合効率を達成することを可能とする。
【0070】
実施例4
混合装置寸法設計の実施例が記載されている。反応器本体直径は、2.5mである。液相の密度は800kg.m3、ガス相の密度は10kg.m3である。第1の触媒ベッドを出る液体およびガスの流量は、それぞれ0.11および0.49m3.s-1である。注入手段によって垂直状収集ラインに注入される冷却流体の流量は、0.03m3.s-1である。収集スペースの高さ(H1)は、このゾーンのごくわずかな圧力低下を生成するために、0.1mである。垂直状収集ラインの直径は、0.4mである。冷却流体注入手段の直径は、0.12mである。環状混合チャンバの直径は、3.1mの直線長さのための0.3mである。反応器本体および環状混合チャンバ間スペースは、0.03mである。4つの中央煙突は、前置分配プレートの多孔プレートの中央で四角に配置されている。これらの煙突は、直径0.3m、高さ0.25mである。前置分配プレートには、6.4cmの三角形穿孔ピッチで、1cmの孔があけられている。煙突を備えた分配プレートは、多孔プレートの下に配置されている。多孔前置プレートおよび分配プレート間は、0.25mである。
【0071】
性能評価
冷却流体の圧力低下は、数式3によれば、16000Paである。多孔プレート上の液体高さは、コールドモデル上での測定では、15cmである。本発明による装置は、冷却流体トロイド出口で良好な混合を提供できる。冷却流体の理論効率は、数式2によれば、54%である。コールドモデルに実行した算出および測定値から、これは、装置の総効率を100%に近いものを得られる。
【0072】
装置総合的寸法
本発明による装置における触媒ベッドの支持格子(図1の要素3)および前置分配プレート(図1の要素11)によって区切られた寸法は、約0.5mである。前置分配プレートの下に位置させられる分配プレート(要素12)の寸法を加える場合、それは、ほぼ0,75mである。
【0073】
特許文献6にも記載されている混合装置は、触媒ベッド支持格子および分配プレート上に位置させられた前置プレートを使用している。この装置の、触媒ベッド支持格子および前置プレート間の寸法は、約0.88mである。
【0074】
この比較によれば、本発明による混合装置は、特許文献6に記載された装置に関して、スペースで76%の節約となつている。このように従来技術の装置に関して節約された0.38mが触媒ベッドに使用されうる。本発明によるコンパクト混合装置は、触媒ベッドの触媒の量を増やすことによって、反応器の性能を改良することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明によるコンパクト流体混合装置は、発熱反応を実行するための反応器において使用されることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0076】
(1) 反応器本体
(5) 収集手段
(7) 収集ライン
(8) 注入手段
(9) 環状混合チャンバ
(10) 出口端
(11) 前置プレート
(13) 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下降流反応器におけるコンパクト流体混合装置であって、
−少なくとも1つの実質的水平状収集手段(5)が、流体を受け入れるための垂直状収集ライン(7)を有しており、
−少なくとも1つの注入手段(8)が、前記収集ラインに配置されており、
−環状混合チャンバ(9)が、流体循環方向において前記収集手段(5)の下流に位置させられかつ前記収集ライン(7)に直接的に連結された入口端および流体の通路のための出口端(10)を有しており、前記出口端(10)は、反応器本体(1)の周方向に向けて位置させられており、
−水平状前置プレート(11)が、少なくとも1つの煙突(13)を備えかつ前記チャンバ(9)の下流に流体循環方向に距離d2だけ位置させられている、
装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、
前記注入手段は、環状混合チャンバ(9)の入口端レベルに位置させられていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2の装置であって、
前記距離d2は、0〜100mmの範囲あることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1または2の装置であって、
前記距離d2は、0mmであり、前記環状混合チャンバ(9)は、前記前置プレート(11)と接触させられていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1または2の装置であって、
前記距離d2は、0.25〜100mm、好ましくは、0.5〜5mmであることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの装置であって、
前記環状混合チャンバ(9)は、反応器本体(1)の表面に位置させられている装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの装置であって、
前記チャンバは、反応器本体(1)から距離d1離れており、前記距離d1は、反応器の直径の0,5%〜25%である装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つの装置であって、
前記チャンバの直径は、0.05〜0.5m、好ましくは、0.1〜0.3m、より好ましくは、0.15〜0.25mである装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つの装置であって、
前記チャンバの長さは、90〜270度、好ましくは、100〜250度、より好ましくは、130〜200度の範囲である装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの装置を、発熱反応を実行するために使用する方法。
【請求項11】
実質的垂直軸にそう細長い形の反応器(1)であって、
反応器内(1)の頂部から底部まで少なくとも1つの触媒ベッド(2)を通過して少なくとも1つの反応流体が循環させられ、前記反応流体循環方向における前記触媒ベッド(2)の下流に、請求項1〜10のいずれか1つの流体混合装置を備えている反応器。
【請求項12】
請求項11の反応器であって、
実質的水平状分配プレートが、前記反応流体循環方向における前記流体混合装置の下流に位置させられていることを特徴とする反応器。
【請求項13】
請求項11または12の反応器であって、
前記流体混合装置および前記分配プレートの下流に配置された第2の触媒ベッド(14)を備えている反応器。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1つの反応器を、発熱反応を実行するために使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−104588(P2011−104588A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257807(P2010−257807)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】