説明

コンピュータを用いた経費の事前管理方法

【課題】個々の経費使用について部門長による事前承認というステップをとることで最も効果的な経費発生がされるようにコントロールできる仕組みを提供する。
【解決手段】経費使用に関する申請をする申請者と、経費使用に関する承認をする管理者とをそれぞれ個人認証できるコンピュータを用いて経費の事前管理を行う方法であって、申請者が経費の使用目的と使用予定金額とを少なくとも含む事前申請データを入力する事前申請の段階と、管理者が事前申請データに対する電子承認のためのデータを入力する事前承認の段階と、申請者が使用した経費に関する報告を事後精算データとして入力する事後精算の段階とを少なくとも含む。事後精算データは事前申請データと関連付けされている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコンピュータを用いた経費の事前管理方法に関するものであり、特に企業内のイントラネットに接続されたパソコン端末を用いて社員が経費使用の申請や承認を行う用途に適するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、コンピュータを用いて予算制度による経費管理を行う場合、コンピュータ上の会計情報としては、予算額と実績額しか持っていない。経費管理の基本が経費の使用前時点でのコントロール(事前許可)にあることは言うまでもないが、コンピュータ上の会計情報としての事前許可金額がないため、コンピュータシステムとしては経費使用後の管理しかできていない。したがって、部門長が自部門などにおける経費の事前管理を行いたい場合は、通常はペーパーで申請された経費使用の事前申請に対する承認累計額をハンド管理する必要がある。これを実行している部門長は、多大な管理コストをかけていることになり、逆に実行していない部門長は、実質的な経費管理ができていないことになる。
【0003】また、「予算が承認された」=「経費使用の事前許可がされた」という考え方に立ち、予算枠までは無条件に経費の使用を認めるという管理方法が一般的であった。このやり方の弊害は、承認された予算額までの経費発生はやむを得ないことになり、経営環境や投資目的の変化に即応した経費使用の管理ができないところにある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであり、短中期計画として承認された予算の枠内で無条件に経費の使用を認めるのではなく、個々の経費使用について部門長による事前承認というステップをとることで最も効果的な経費発生がされるようにコントロールできる仕組みを提供することを課題とする。また、部門長が個々の経費使用について事前承認を与えるか否かを判断するのに役立つ情報を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】図1は本発明による経費の事前管理方法の説明図である。図中、Aは経費使用に関する承認をする管理者、BとCは経費使用に関する申請をする申請者を示している。申請者B,Cと管理者Aが操作するコンピュータは、例えば企業のイントラネットのようなネットワークを介してサーバーに接続された複数の端末であり、申請者B,Cまたは管理者Aのうち、誰が操作したかを個人認証できる機能を有している。この個人認証はICカードや指紋認証のほか、単なるパスワードの照合であっても構わない。
【0006】まず、これから経費を使用しようとする申請者Bは、経費の使用目的と使用予定金額とを少なくとも含む事前申請データをコンピュータに入力する。管理者Aは事前申請データを検討し、予算の範囲内で経費に見合う十分な効果が得られると判断した場合には、電子承認の操作を行う。この事前承認の段階では、事前申請データに対する電子承認のための画面と同一画面上で予算総額と事前承認分を含めた仮実績金額、またはその差額を管理者Aが参照できるようにしておく。
【0007】次に、既に経費を使用した申請者Cは、使用した経費に関する報告を事後精算データとしてコンピュータに入力する。このとき、事後精算データは事前申請データと関連付けして入力される。例えば、事前申請の段階で個々の事前申請データに固有のIDが付与されており、この事前申請IDと関連付けして事後精算データが入力される。
【0008】管理者Aは、事後精算データで報告された経費の使用額と、この事後精算データと関連付けされた事前申請データで申請された使用予定金額とを同一画面上で参照することができる。この画面を見て、経費の使用が適切に行われたと判断すれば、管理者Aは事後精算データに対する電子承認の操作を行う。管理者Aにより事後承認された使用済み経費に関するデータは経理部門に転送されて経理担当者の電子承認を待つ。また、管理者A(および経理担当者)により事後承認された使用済み経費は経費使用の実績額として累算されて、管理者Aにより参照可能とされる。さらに、管理者により事前承認され且つ事後承認されていない経費の使用予定金額の累計と、経費使用の実績額との合計は仮実績金額として算出されて、これも管理者Aにより参照可能とされる。
【0009】
【発明の実施の形態】図2は本発明による経費の事前管理方法を実現するためのシステム構成の一例を示している。企業内のイントラネットには複数のクライアントとサーバーが接続されている。図中、1〜3はLANカードを備えるパソコン端末よりなるクライアントである。各端末1〜3は、ICカードリーダーを備えており、社員証を兼ねるICカードとパスワードにより操作者の個人認証を行う機能を有している。経費を使用する本人が端末1を操作して経費使用前の事前申請を行うと、上司が端末2を操作して電子承認を与える。その都度、サーバー4からは事前申請金額込みの予算実績管理情報が提供される。また、経費を使用した本人が端末1を操作して経費使用の事後精算を行うと、上司が端末2を操作して電子承認を与える。その都度、サーバー4からは事前申請金額をヒモ付けて精算伝票情報が提供される。上司により電子承認された事後精算の申請は経理部門に転送され、経理担当者が端末3を操作して電子承認を与えると、サーバー4で蓄積されていた経費管理情報は経理部門のホストコンピュータ5に転送される。
【0010】図3は経費使用の管理状況を示す説明図である。図中、■は予算金額、■は仮実績金額、■は実績金額、■は事前申請金額、■は事後精算時に再表示された事前申請金額、■は事後精算金額である。使用予定の経費について、経費事前申請があったときには、予算実績管理情報として予算金額■、事前申請込仮実績■+■+■、使用実績(仮実績)■が表示される。また、使用された経費について、事後精算の申請がされたときには、予算実績管理情報として予算金額■、事前申請込仮実績■+■−■+■、使用実績(仮実績)■が表示される。ここでは、予算金額が100,000円の場合について、事前申請金額が10,000円で事後精算金額が9,000円のとき、事前申請金額が20,000円で事後精算金額が50,000円のとき、事前申請がなく事後精算金額が40,000円のとき、という3つの事例を示している。
【0011】図4は経費事前申請の画面レイアウト、図5は事後精算処理の画面レイアウト、図6は承認処理の画面レイアウトを示している。図4に示す経費事前申請の画面では、少なくとも経費の使用目的と使用予定金額とを入力できれば良く、図示された画面レイアウトに限定されるものではない。また、図5に示す事後精算処理の画面では、要するに、事前申請データと関連付けて、実際に使用された金額を入力できれば良く、図示された画面レイアウトに限定されるものではない。図6に示す承認処理の画面では、事後精算データに対して、承認するか否かを入力できれば良く、図示された画面レイアウトに限定されるものではない。
【0012】なお、図6の例では選択(反転表示)された事後精算データについて、その要点が「承認」ボタンの下欄にダイジェスト表示されるようになっており、また、「表示」ボタンを押すと、さらに詳細な情報が別画面で確認できるようになっている。上司は個々の申請案件について、1つずつ内容を検討して「承認」「保留」「否認」のいずれかのボタンを押して行くものである。
【0013】図7は各種の問い合わせを行うための画面の一例を示している。この図7に示すように、表示対象部門と表示対象年月を少なくとも指定して、勘定科目ごとに予算金額と仮実績金額と使用実績金額の一覧を表示する機能を設けて、経理担当者または経営責任者が閲覧できるようにしておけば、経営判断に活用することができる。
【0014】以上のシステムを構成するプログラムまたはデータはフロッピー(登録商標)ディスクや光磁気ディスクあるいはCD−ROMのような記録媒体に格納して配布しても良いし、サーバーのハードディスクに格納して通信回線を介してダウンロード可能としても良い。
【0015】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、予算の枠内であっても個々の経費使用について、その使用目的と使用予定金額とを管理者により事前承認させる段階を有するものであるから、経費の使用前時点での経費の管理が可能となり、また、事前承認された経費の枠内であっても事前申請と関連付けて実際に使用した金額を事後精算させることにより、浮いた経費を使い切るような行動を抑制することができ、これらが相俟って最小の経費で最大の効果を引き出すことが可能となる。
【0016】請求項2の発明によれば、事後精算データで報告された実際の経費の使用額と、事前申請データで申請された使用予定金額との乖離を管理者が容易にチェックできる仕組みとなっているので、これが経費の使用者に対する心理的な牽制となり、事前申請時の使用予定金額の範囲内に出費を収めようという努力を引き出すことができる。
【0017】請求項3の発明によれば、たとえ事前承認された経費の使用であっても、事後精算の段階で管理者の承認を得ることが出来なければ、経費とは認められないので、経費の使用に事前承認を与えたことが申請者の安心感を招いて安易な経費の使用を誘発するような事態を防止できる。
【0018】請求項4の発明によれば、例えば企業のイントラネットと社員認証用のICカード等の既存のインフラを有効に利用して本発明の方法を容易に実施することができる。
【0019】請求項5の発明によれば、管理者により事後承認された使用済み経費に関するデータは経理部門に転送されるようにしたので、管理者から経理部門への報告の手間を省力化できる。
【0020】請求項6の発明によれば、期初から現時点までの経費使用の実績額を早期に把握できるので、決算見込みなどを早期に予測できる利点がある。
【0021】請求項7の発明によれば、事前承認された使用予定の経費と事後承認された使用済み経費の合計を仮実績金額として把握できるので、現時点までに使用された経費のみならず、近い将来に生じるであろう経費を含めた管理が可能となり、現時点よりも少し先を見通した判断が可能となる。
【0022】請求項8の発明によれば、事前承認の段階で、予算総額と仮実績金額、またはその差額を管理者が参照できるようにしたので、経費使用に事前承認を与えるか否かの判断を適確に行えるように管理者を支援することができる。
【0023】請求項9の発明によれば、各部門の経費の使用状況を月毎にチェックできるので、経営判断に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による経費事前管理方法の説明図である。
【図2】本発明の方法を実施するためのシステム構成の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の方法による予算管理の状況を例示する説明図である。
【図4】経費事前申請の画面の一例を示す説明図である。
【図5】事後精算処理の画面の一例を示す説明図である。
【図6】承認処理の画面の一例を示す説明図である。
【図7】請求項8の問い合わせ画面の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
A 管理者
B 申請者(事前申請)
C 申請者(事後精算)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 経費使用に関する申請をする申請者と、経費使用に関する承認をする管理者とをそれぞれ個人認証できるコンピュータを用いて経費の事前管理を行う方法であって、申請者が経費の使用目的と使用予定金額とを少なくとも含む事前申請データを入力する事前申請の段階と、管理者が事前申請データに対する電子承認のためのデータを入力する事前承認の段階と、申請者が使用した経費に関する報告を事後精算データとして入力する事後精算の段階とを少なくとも含み、事後精算データは事前申請データと関連付けされていることを特徴とするコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項2】 事後精算データで報告された経費の使用額と、この事後精算データと関連付けされた事前申請データで申請された使用予定金額とを同一画面上で管理者が参照できるように表示する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項3】 管理者が事後精算データに対する電子承認のためのデータを入力する事後承認の段階をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項4】 前記コンピュータは、申請者が操作する端末と、管理者が操作する端末と、データを蓄積するサーバーと、これらを接続するネットワークとを含んで構成されることを特徴とする請求項1記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項5】 管理者により事後承認された使用済み経費に関するデータは経理部門に転送されることを特徴とする請求項3または4記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項6】 管理者により事後承認された使用済み経費を経費使用の実績額として累算する段階を含むことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項7】 管理者により事前承認され且つ事後承認されていない経費の使用予定金額の累計と、経費使用の実績額との合計を仮実績金額として算出する段階を含むことを特徴とする請求項6記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項8】 事前承認の段階では、事前申請データに対する電子承認のための画面と同一画面上で予算総額と仮実績金額、またはその差額を管理者が参照できるように表示することを特徴とする請求項7記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項9】 表示対象部門と表示対象年月を少なくとも指定して、勘定科目ごとに予算金額と仮実績金額と使用実績金額の一覧を表示する機能を有することを特徴とする請求項7または8記載のコンピュータを用いた経費の事前管理方法。
【請求項10】 コンピュータを用いて予算管理を行うためのプログラムであって、申請者が経費の使用目的と使用予定金額とを少なくとも含む事前申請データを入力する事前申請のための処理と、管理者が事前申請データに対する電子承認のためのデータを入力する事前承認のための処理と、申請者が使用した経費に関する報告を事前申請データと関連付けされた事後精算データとして入力する事後精算のための処理とを少なくとも含んで構成されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2002−73937(P2002−73937A)
【公開日】平成14年3月12日(2002.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−256117(P2000−256117)
【出願日】平成12年8月25日(2000.8.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】