説明

コンピュータ用外部記憶装置

【目的】 コンピュータゲーム機などに用いる外部記憶装置から圧縮および非圧縮データをコンピュータ本体に高速で転送する。
【構成】 不揮発性半導体メモリを備えた外部記憶装置において、前記不揮発性メモリ上の圧縮データを伸張する手段、および前記圧縮データの伸張と独立に前記不揮発性メモリ上の任意の非圧縮データの読み出し手段を備えた。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ROMカートリッジのような不揮発性半導体メモリを用いたコンピュータゲーム機などに用いられる外部記憶装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータゲーム機の基本的な構成は一般的なコンピュータと同様に、データを入力する装置、データを出力する装置、それにコンピュータ本体である。コンピュータゲーム機の外部記憶装置は、CD−ROM、ROMカートリッジなどが使用されている。これらはゲームソフトごとに販売されている。
【0003】
例えば、不揮発性半導体メモリを備えたゲーム機用外部記憶装置では装置内に搭載されているROMには書き込みはできないが、図2に示すようにバッテリバックアップ機構を備えた書き込み可能なメモリ(RAM)が内蔵されていて、ゲームの途中の状態や各プレーヤーごとのパスワードなどが記憶できるように工夫されている。
【0004】
図3はコンピュータゲーム機本体の基本ハードウェア構成の一例である。CPUは中央演算処理装置で、コンピュータゲーム機の核となる部分である。外部記憶装置に格納されているプログラムやデータはCPUの解析によってプログラムの実行やデータの加工、転送などの処理が行われる。外部記憶装置から読み取った画像データあるいはプログラムで作成された画像データはVDC(ビデオディスプレイコントローラ)に送られて、ディスプレイに表示できるような画像データに加工(定義)される。
【0005】
VDCで加工されたデータはVRAMにいったん蓄えられる。VDCで定義され、VRAMに蓄えられるデータはバックグラウンド(背景画)、スプライト(ゲームの主人公等)別に分けられ、その表示パターン、ディスプレイ上の表示位置、表示色などの情報が付加される。
【0006】
VCE(ビデオカラーエンコーダ)は、ビデオ出力ポートを通じてVDCから送られてくるデジタルカラー画像信号を、VCE内にもっているカラーパレット情報をもとにCRTアナログRGB信号および映像色信号に変換し、外部の映像装置に出力する。
【0007】
一方、CPUで解析された音楽、擬音などの音情報は、PSG(プログラムサウンドジェネレータ)により、ステレオ回路構成、ノイズ発生回路、低周波数発生回路などの機能によって画像と一体になった効果音としてスピーカに出力される。
【0008】
コンピュータゲーム機では、アニメーションや写真などを取り込んだ画像データが扱われる例が多い。とくに最近は映画の画像やビデオの自然画像などを取り込んだゲームが脚光を浴びるようになってきている。画像データはテキストデータとは違い、大容量のメモリを必要とする。自然画に近いければ近いほど、より大量のメモリが必要となる。また、アニメーションもより多色で緻密な画像を扱うようになってきている。
【0009】
扱う画像が緻密になればなるほど、また多色になればなるほど画像データ量は大きくなる。このため、ゲームを提供する外部記憶装置は大容量の記憶媒体であることが要求される。しかし記憶媒体の容量を増やすことはコストが高くなるために、低コストが条件のコンピュータゲーム機にそのまま単純に適用することは難しい。そこで一般に行われている方法が、データの圧縮である。データの圧縮については様々な方法がある。
【0010】
データを圧縮することによって、データを記録しておく外部記憶媒体のメモリ容量を節約することができるが、圧縮データはそのままでは使えない。コンピュータゲーム機が圧縮データを読み取った場合、元の形式のデータに戻さなければならない。この「元のデータに戻すこと」をデータ伸長と呼び、従来のROMカートリッジのような不揮発性半導体メモリを備えたコンピュータゲーム機用外部記憶装置を用いたコンピュータゲーム機では、このデータ伸長をゲーム機本体のCPUで行っている。
【0011】
図4は不揮発性半導体メモリを用いたコンピュータゲーム機用外部記憶装置を用いたコンピュータゲーム機の説明図である。画像制御手段9は図3のVDC、VCE、VRAMに相当する。音声制御手段10は図3のPSGに相当する。ROM2にはプログラムとデータが格納されている。電源を投入するとCPU7はROM2上のある定まったアドレスよりプログラムの読み出しを開始してプログラムのロジックに従いプログラムの解析と実行を行う。
【0012】
プログラム上にデータの読み取り命令があると、CPU7はROM2上のデータを読み取り、RAM8に展開したり、データの種類によっては直接、画像制御手段や音声制御手段にデータを転送する。これらの画像制御手段や音声制御手段もCPU7の制御の下に動作する。
【0013】
【考案が解決しようとする課題】
従来のコンピュータゲーム機では、外部記憶装置のデータ中に圧縮データがある場合には、直接それを画像制御手段9や音声制御手段10に送っても利用できないために、圧縮データはいったんRAM8に読み込んでからCPU7によりデータ伸長して、元の生データに戻している。このように圧縮データがあると、CPU7はデータ伸長のために処理時間を割かなければならなかった。
【0014】
このように従来のコンピュータゲーム機で圧縮データを扱うには、処理速度の点で問題があった。例えば、不揮発性半導体メモリを用いたゲーム機用外部記憶装置を使用したコンピュータゲーム機の場合、ROMから読み込んだ非圧縮データはすぐに使うことができるが、圧縮データではCPUがいったんRAMに読み込んでから伸長するために、CPUが本来なすべき処理が一歩遅れることになる。とくにゲームソフトでは、ある一定の処理速度以上を保たないとゲームとして機能を果たせない場合があるので問題となる。
【0015】
ゲームソフトによっては、画像の質を保ちながら、なおかつ処理速度を落とさないようにするために、生データをそのままROMに登録しているものもある。
しかしこのような対処方法ではROMの容量は大きくなり、家庭用コンピュータゲーム機の外部記憶装置としては経済的な問題がある。
【0016】
処理速度に対する解決策として、外部記憶装置に記録するデータをすべて圧縮した形でもつ必要はない点を考慮した方式がある。頻繁に使用するデータすなわち頻繁に読み出すデータは非圧縮データ(生データ)でもち、あまり使用しないデータでなおかつ大容量のデータを圧縮した形式でもてば、効果的で効率のよいデータの保存ができるというものである。
【0017】
しかし、この方式にも難点はある。一つのROM内に圧縮データと非圧縮データをもつと、それぞれのデータに対して読み出し方法が異なることになる。そのためにそれぞれのデータによって読み出し方法を切り換える処理のプログラム記述が必要となり、プログラミングが煩雑になる。また、圧縮データの読み取りではCPUはそのデータ伸長に時間を割いているために、その間は非圧縮データを読み出すことができないなどの難点がある。
【0018】
本考案は、処理速度が速く、かつプログラミングが容易な、圧縮データと非圧縮データを記録できるコンピュータゲーム用の外部記憶装置を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために、本考案は、コンピュータゲーム機用外部記憶装置内に圧縮データを伸長する機構を備えるとともに、非圧縮データの読み出しを圧縮データの伸長・展開・転送と独立して行う機構を備えるものである。
【0020】
本考案の外部記憶装置では、ROM内の非圧縮データはそのままゲーム機本体に転送して使用できるが、圧縮データはデータ伸長が必要であるので、データ処理機構は圧縮と非圧縮の2種類のデータを独立して処理できるように、圧縮データの伸長・展開・転送機構と非圧縮データの転送機構を独立させている。
【0021】
本考案の外部記憶装置によれば、コンピュータゲーム機のCPUから外部記憶装置のROMデータの読み取り命令が発せられた場合、外部記憶装置がすべてのデータハンドリングを行えるようにデータ処理機構が外部記憶装置内に設られている。また、読み出す非圧縮データの番地をレジスタで指定することなく任意の番地のデータ読み出しが可能である。
【0022】
さらに、上記の2種の転送機構のほかにシーケンシャル出力機構を追加することで非圧縮データを連続して読み出すことが効率的に行うことができる。
【0023】
【実施例】
本考案の一つの実施例として図1の外部記憶装置について説明する。図において、外部記憶装置1内にはROM2、圧縮データ伸長機構3、圧縮データ用伸長/転送部4、ROMデータ出力機構5が設けられている。本考案の実施例の外部記憶装置が従来の外部記憶装置と異なる点は、圧縮データ伸長機構およびデータ処理機構を外部記憶装置内に備えていることである。
【0024】
任意の非圧縮データを圧縮データの伸長・転送と独立して読み出す場合には、ROM2から読み出す非圧縮データのアドレスを指定して、読み出し命令をコンピュータゲーム機6のCPU7が発すれば、圧縮データ伸長機構3のROMデータ出力機構5よりデータが出力される。これは、通常のメモリに対するデータアクセスと同じ働きである。
【0025】
圧縮データを伸長した形式で読み出す場合には、CPU7はROM2の読み出し開始番地を圧縮データ伸長機構3の圧縮データ用伸長/転送部4のレジスタに設定してから、圧縮データ用伸長/転送部4のレジスタを読み出すことで行われる。
【0026】
このときCPU7が読み出し開始するまでには、圧縮データ用伸長/転送部4がある程度のデータ伸長を行ってからでないとデータ読み取りが可能かどうかがわからないために、その確認するまでに時間を要する。圧縮データ用伸長/転送部4がデータ伸長できることがわかれば、その結果がレジスタを通じてCPU7に伝えられる。そののちに伸長済みデータがコンピュータゲーム機に転送される。
【0027】
また同様に、CPU7が読み出し開始番地を圧縮データ用伸長/転送部4のレジスタに指定せずに読み出す場合で、かつデータの飛び越し読み出しを行う場合にも、飛び越しデータを伸長してから棄却しなければ次のデータが用意できないため、読み出し可能かどうかを圧縮データ用伸長/転送部4のレジスタを読み出して確認する必要がある。レジスタの確認で目的のデータが伸長可能とわかれば、そこで初めてデータの読み出し開始となる。
【0028】
いずれにしろ、上記の圧縮データの読み出しにはデータ伸長のための待ち時間が生じる。すなわちその間、CPUはIO待ちの状態になる。しかし、本考案の実施例の外部記憶装置1では圧縮データ用伸長/転送部4と独立して、ROM2上の非圧縮データを出力するROMデータ出力機構5が用意されているから、この待ち時間を利用して非圧縮データのランダムアクセスが可能である。
【0029】
図5は本考案の外部記憶装置の他の実施例である。図1の外部記憶装置と異なる点は、データシーケンシャル出力機構11がさらに追加されていることである。この機構が図1のROMデータ出力機構と異なる点は、連続して非圧縮データを読み出すときに利用され、ROMデータ出力機構5と同様に圧縮データの伸長・転送とは独立して動作する。
【0030】
図6は、一つのROM内に圧縮データと非圧縮データを混在させた例を示す図である。本考案の外部記憶装置ではこのような場合でも圧縮・非圧縮データの別に関わらず自由にランダムアクセスが可能である。
【0031】
圧縮データと非圧縮データの混在例として、ROM上に圧縮された画像データと非圧縮の音データを混在させた場合を説明する。まずCPUは展開した画像データの先頭アドレスを圧縮データ伸長機構に伝える。圧縮データ伸長/転送部で圧縮データの伸長を用意する間に、データ出力機構を通じて音楽データをダイレクトに読み出す。このようにすれば、音と映像の再生を同時に行うことができる。
【0032】
【考案の効果】
本考案の特徴の一つは、圧縮データの読み出しと非圧縮データの読み出しが独立して並行処理できることである。このために、圧縮データの伸長・転送という処理時間のかかる入力処理の待ち時間に、非圧縮データの読み出しを行うことによって入力処理を効率よく行えるようになったことである。
【0033】
また、圧縮データの伸長・転送機能を不揮発性半導体メモリを備えたコンピュータゲーム機用外部記憶装置内に設けることによってコンピュータゲーム機本体のCPUの負荷が軽減された。CPUは圧縮データの読み出し命令を発するだけで、圧縮データの伸長・転送が外部記憶装置の方で行ってくれるために、その間、CPUは他の処理に向けられるようになるなどの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の外部記憶装置の実施例のシステム構成図である。
【図2】バッテリバックアップ機構付き外部記憶装置の説明図である。
【図3】コンピュータゲーム機の一例のブロック図である。
【図4】従来の外部記憶装置とコンピュータゲーム機の構成の説明図である。
【図5】本考案の外部記憶装置の実施例のシステム構成図である。
【図6】一つのデータROM内での圧縮データと非圧縮データの混在例の説明図である。
【符号の説明】
1 外部記憶装置
2 ROM
3 圧縮データ伸長機構
4 圧縮データ用伸長/転送部
5 ROMデータ出力機構
6 コンピュータゲーム機
7 CPU
8 RAM
9 画像制御手段
10 音声制御手段
11 データシーケンシャル出力機構

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 不揮発性半導体メモリを備えたコンピュータ用外部記憶装置において、前記不揮発性メモリ上の圧縮データを伸長する圧縮データ伸長手段、および前記圧縮データの伸長と独立に作動する前記不揮発性メモリ上の任意の非圧縮データを読み出す非圧縮データ出力手段を備えたことを特徴とするコンピュータ用外部記憶装置。
【請求項2】 不揮発性半導体メモリを備えたコンピュータ用外部記憶装置において、前記不揮発性メモリ上の圧縮データを伸長する圧縮データ伸長手段、前記圧縮データの伸長と独立に作動する前記不揮発性メモリ上の非圧縮データの読み出し手段、および前記圧縮データの伸長と独立に作動する前記不揮発性メモリ上の非圧縮データを連続して読み出す非圧縮データシーケンシャル出力手段を備えたことを特徴とするコンピュータ用外部記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【登録番号】第3019351号
【登録日】平成7年(1995)10月4日
【発行日】平成7年(1995)12月12日
【考案の名称】コンピュータ用外部記憶装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平7−6811
【出願日】平成7年(1995)6月13日
【出願人】(591095856)株式会社ハドソン (8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)