コンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩
【課題】好ましい物理化学的特性を有する、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4プロドラッグ塩を提供すること。
【解決手段】本発明によって、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩が提供され、これはコンブレタスタチンA−4の溶解度を増加し、正常な生理学的条件下で、インビボでコンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そしてこれはコンブレタスタチンA−4の再生の結果として生理学的に許容されるプロドラッグを生成する。
【解決手段】本発明によって、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩が提供され、これはコンブレタスタチンA−4の溶解度を増加し、正常な生理学的条件下で、インビボでコンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そしてこれはコンブレタスタチンA−4の再生の結果として生理学的に許容されるプロドラッグを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国出願番号第60/232,568号(2000年9月14日出願)および米国出願番号第60/251,621号(2000年12月7日出願)に優先権を主張する(これら仮出願の両方は、本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4(CA4)ホスフェートプロドラッグモノおよびジアミン塩、モノおよびジアミノ酸塩、およびモノおよびジアミノ酸エステル塩に関し、これらの塩は、ネイティブなコンブレタスタチンA−4より大きな溶解度を有し、そして生理学的条件下でコンブレタスタチンA−4を迅速に再生する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
癌は、重篤かつ拡張する疾患である。National Cancer Instituteは、米国のみにおいて、3人のうちの1人が、その生涯の間に癌に罹患すると推定している。さらに、癌に罹患した人々の約50%〜60%が、最終的にこの疾患により死亡する。従って、1970年代初期のNational Cancer Instituteの設立以来、癌研究に向かう資金の量が劇的に増加した。
【0004】
癌は、単一の疾患であると一般に考えられるが、これは実質的に、疾患のファミリーを含み、ここで、正常な細胞分化が、それが異常でかつ制御されないように改変されている。その結果、これらの悪性細胞は、急速に増殖する。最終的に、細胞は、それらの起源から広がりまたは転移し、そして他の組織に定着し、最終的に宿主を殺す。現在観察される広範な種々の癌に起因して、種々のストラテジーが、身体内の癌を破壊するために、開発されている.1つのこのような方法は、細胞傷害性化学療法剤を使用する。これらの化合物は、悪性細胞を破壊する目的で癌患者に投与されるが、正常な健康な細胞には影響を及ぼさない。このような化合物の特定の例としては、5−フルオロウラシル、シスプラチン、およびメトトレキサートが挙げられる。
【0005】
コンブレタスタチンA−4は、最初に、アフリカ木combretum caffrum(Combretaceac)の茎木材から単離され、そしてミクロブロブリンアセンブリの強力なインヒビターであることが見出された。さらに、コンブレタスタチンA−4は、米国National Cancer Institute(NCI)のマウスL1210およびP338リンパ性白血病細胞株に対して有意に活性であることが見出された。さらに、コンブレタスタチンA−4は、コンブレタスタチンA−1(チューブリンに結合するコルヒチンのインヒビターとして、combretum caffrumから単離された別の化合物)と競合することが見出された。これはまた、VoLo、DLD−1およびHCT−15ヒト結腸癌(ED50<0.01(μg/ml))細胞系列を強力に抑制し、そしてCombretum caffrum成分の中から見出された強力な抗有糸分裂薬の1つであることが決定された(米国特許第4,996,237号)。
【0006】
その結果、種々のヒト癌を治療する際の化学治療剤としてのコンブレタスタチンA−4の効力を決定するために、研究が、実施された。不運にも、コンブレタスタチンA−4は、実質的に水中で不溶性である。この特性は、コンブレタスタチンA−4を含む薬学的組成物の開発を有意に妨害する。その溶解度およびその効力を増加させるために、生理学的条件でコンブレタスタチンA−4を再生するコンブレタスタチンA−4のプロドラッグ誘導体を生成するための努力がなされている。例えばKoji Ohsumiらは、コンブレタスタチンアナログのアミノ酸HClプロドラッグの合成を記述し、ここで、アミノ酸塩は、塩基性アミノ基を含むコンブレタスタチン誘導体のアミノ基に結合される[これらの誘導体は、Ohsumiら、Anti−Cancer Drug Design,14,539−548(1999)に記述される]。このようなプロドラッグは、ネイティブなコンブレタスタチンA−4と比較して増加した溶解度を有し得るが、それらは、コンブレタスタチンA−4の再生がこのプロドラッグが投与される被験体の血液中の内因性アミノペプチダーゼに依存するという固有の制限を有する。
【0007】
コンブレタスタチンA−4ホスフェートの遊離酸(「CAP遊離酸」)は以下の構造:
【0008】
【化15】
を有し、油状塊として存在する。このCA4P遊離酸は、元来、水中で25℃で非常に少ししか溶解せず(USPの規定による)、水での溶解度は、pHの増加と共に増加する。これは、2つの酸性基(1.2および6.2のpKaを有する)を有し、これらは、塩形成を可能にする。その物理的状態に起因して、CA4P遊離酸を取り扱う実際的な問題が存在するので、この化合物の結晶状態の、安定な塩形態の同定が所望される。
【0009】
コンブレタスタチンA−4を誘導体化する際の試みは、コンブレタスタチンA−4ホスフェートの塩誘導体(「CA4P」の塩誘導体)を形成することに関係する。このような塩の特定の例は、特許文献1に記載される。これらのプロドラッグ塩は、ネイティブのコンブレタスタチンA−4より大きな溶解度を有するが、これらはまた、吸湿性のような固有の欠点を有し得る。
【0010】
吸湿性は、塩の選択におけるいくつかの重要な基準の1つである。K.Morrisら、「An Integrated Approach to the Selection of Optimal Salt Form for a New Drug Candidate」Int.J Pharm.,105,209−217(1994)を参照のこと。任意の薬物物質についての吸湿性の程度は、その取り扱いおよび薬物の寿命にわたる安定性に対する有意な影響を有する。
【特許文献1】米国特許第5,561,122号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、必要とされるのは、好ましい物理化学的特性を有する、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4プロドラッグ塩であり、そしてこれは、広範な種々の腫瘍性障害を処置する際の、コンブレタスタチンA−4の溶解度、好ましくは効力を増加させる。
【0012】
また必要とされるのは、インビボでネイティブなコンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そして再生を受ける場合に、所望されないまたは潜在的に有害な副産物を生成しない、新規で有用なコンブレタスタチンA−4プロドラッグ塩である。
【0013】
本明細書中の任意の参考文献の引用は、このような参考文献が、本願発明に対する「先行技術」として利用可能であるという承認として解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明に従って、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩が提供され、これらの塩は、ネイティブなコンブレタスタチンA−4よりも大きな溶解度を有し、そしてコンブレタスタチンA−4をインビボで容易に再生する。本発明はまた、従来公知のコンブレタスタチンA−4プロドラッグ塩よりも有意に低吸湿性(例えば、温度および湿度の環境条件下で、物理的形態における有意な変化を起こさない)で、改善された取り扱いおよび安定性を有する化合物を提供し、そしてこの化合物は、注入部位での痛みを最小化または排除するpHで溶液を形成し得る。従って、本発明の化合物は、薬学的使用について相当な利点を提供する。
【0015】
本発明は、以下を提供する。
(項目1) 式I:
【化1】
の一般構造を有する化合物であって、ここで:
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、化合物。
(項目2) Qが、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンであり、該窒素原子が、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目1に記載の化合物。
(項目3) 前記式Iにおいて前記四級アンモニウムカチオンQH+を形成するQの窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンであり、ここで、該任意の置換基は、1つ以上のヒドロキシルまたはアミノ基である、項目2に記載の化合物。
(項目4) 前記有機アミンが、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、または2−(4−イミダゾリル)エチルアミンである、項目2に記載の化合物。
(項目5) 前記化合物が、式Ia:
【化2】
の構造を有する、項目2に記載の化合物。
(項目6) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目1に記載の化合物。
(項目7) 前記アミノ酸がヒスチジンである、項目6に記載の化合物。
(項目8) 前記アミノ酸がリジンである、項目6に記載の化合物。
(項目9) 前記アミノ酸がアルギニンである、項目6に記載の化合物。
(項目10) 前記アミノ酸がトリプトファンである、項目6に記載の化合物。
(項目11) 前記アミノ酸がオルニチンである、項目6に記載の化合物。
(項目12) 前記化合物が、式Ic:
【化3】
の構造を有する、項目6に記載の化合物。
(項目13) 前記化合物が、式Id:
【化4】
の構造を有する、項目6に記載の化合物。
(項目14) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目1に記載の化合物。
(項目15) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目14に記載の化合物。
(項目16) 薬学的組成物であって、以下:
(a)式I:
【化5】
の一般構造を有する化合物であって、ここで:
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である化合物、および
(b)その薬学的に受容可能なキャリア、
を含む、薬学的組成物。
(項目17) Qが、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンであり、該窒素原子が、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18) 前記式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成する前記Qの窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンであり、ここで、該必要に応じた置換基は、1つ以上のヒドロキシルまたはアミノ基である、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目19) 前記有機アミンが、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、または2−(4−イミダゾリル)エチルアミンである、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目20) 前記式Iの化合物が、以下の式Iaの構造:
【化6】
を有する、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目21) pHが、水酸化ナトリウム以外の薬剤で調整される、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目22) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目23) 前記アミノ酸がヒスチジンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目24) 前記アミノ酸がリジンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目25) 前記アミノ酸がアルギニンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目26) 前記アミノ酸がトリプトファンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目27) 前記アミノ酸がオルニチンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目28) 前記式Iの化合物が、以下のIcの構造:
【化7】
を有する、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目29) 前記式Iの化合物が、以下のIdの構造:
【化8】
を有する、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目30) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目31) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目32) 動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法であって、該方法は、以下の式I:
【化9】
の一般構造を有する化合物の該調節のための有効量を投与する工程を包含し、ここで:
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、方法。
(項目33) Qが、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンであり、該窒素原子が、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目32に記載の方法。
(項目34) 前記式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成する前記Qの窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンであり、ここで、該必要に応じた置換基は、1つ以上のヒドロキシルまたはアミノ基である、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記有機アミンが、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、または2−(4−イミダゾリル)エチルアミンである、項目33に記載の方法。
(項目36) 前記式Iの化合物が、以下の式Iaの構造:
【化10】
を有する、項目33に記載の方法。
(項目37) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目32に記載の方法。
(項目38) 前記アミノ酸がヒスチジンである、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記アミノ酸がリジンである、項目37に記載の方法。
(項目40) 前記アミノ酸がアルギニンである、項目37に記載の方法。
(項目41) 前記アミノ酸がトリプトファンである、項目37に記載の方法。
(項目42) 前記アミノ酸がオルニチンである、項目37に記載の方法。
(項目43) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目32に記載の方法。
(項目44) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目43に記載の方法。
(項目45) 組成物であって、以下:
(a)以下の構造:
【化11】
を有するCA4P遊離酸;および
(b)化合物Qであって、ここでQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、化合物Q、
を含む化合物の混合によって形成される、組成物。
(項目46) Qが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンである、項目45に記載の組成物。
(項目47) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目46に記載の組成物。
(項目48) Qがトロメタミンである、項目46に記載の組成物。
(項目49) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、項目45に記載の組成物。
(項目50) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目49に記載の組成物。
(項目51) Qがヒスチジンである、項目49に記載の組成物。
(項目52) Qがリジンである、項目49に記載の組成物。
(項目53) Qがアルギニンである、項目49に記載の組成物。
(項目54) Qがトリプトファンである、項目49に記載の組成物。
(項目55) Qがオルニチンである、項目49に記載の組成物。
(項目56) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目45に記載の組成物。
(項目57) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目56に記載の組成物。
(項目58) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目56に記載の組成物。
(項目59) 項目1に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、溶媒中で、以下の構造:
【化12】
を有するCA4P遊離酸を、有機アミンQと接触させる工程を包含し、ここで、Qは、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンである、プロセス。
(項目60) 前記項目1に記載の化合物が、前記溶媒から結晶形態で沈殿する、項目59に記載のプロセス。
(項目61) 前記CA4P遊離酸が、前記溶媒としての水性イソプロパノール中でトロメタミンと接触され、続いて、該溶媒から結晶形態でCA4Pモノトロメタミン塩を回収する、項目59に記載のプロセス。
(項目62) 項目1に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、溶媒中で、以下の構造:
【化13】
を有するCA4P遊離酸をアミノ酸Qと接触させる工程を包含し、ここで、Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、プロセス。
(項目63) 前記項目1に記載の化合物が、前記溶媒から結晶形態で沈殿する、項目62に記載のプロセス。
(項目64) 前記CA4P遊離酸が、前記溶媒としてのイソプロパノール中でヒスチジンと接触され、続いて、該溶媒から結晶形態でCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩を回収する、項目62に記載のプロセス。
(項目65) 項目1に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、溶媒中で、以下の構造:
【化14】
を有するCA4P遊離酸を化合物Qと接触させる工程を包含し、ここで、Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、プロセス。
(項目66) 前記CA4P遊離酸が、グリシンC1-6アルキルエステルと接触される、項目65に記載のプロセス。
(項目67) 化合物CA4Pモノトロメタミン。
(項目68) 化合物CA4Pモノ−L−ヒスチジン。
(項目69) 化合物CA4PグリシンC1-6アルキルエステル。
【0016】
概して、本発明は、以下の式I:
【0017】
【化16】
の一般構造を有する化合物まで拡張し、ここで、−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態であるアミノ酸、である。
【0018】
本出願を通して、−OR1および−OR2の両方が−O-QH+である場合、Qは、好ましくは、−OR1基および−OR2基の両方において、同一である。
【0019】
Qが定義(A)の場合、本明細書中の用途を有する好ましい有機アミンは、トロメタミンである(すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、本明細書中では「TRIS」と省略する)。
【0020】
式Iのトロメタミン塩は、以下の式IaおよびIb:
【0021】
【化17】
によって図示され、これらは、それぞれ式Iのモノトロメタミン塩およびジトロメタミン塩を表す。式Iaのモノトロメタミン塩が好ましい。
【0022】
Qが定義(B)の場合、少なくとも2つの窒素原子を有する任意のアミノ酸が、本明細書中の用途を有する。このアミノ酸の窒素のいずれか(例えば、このアミノ酸側鎖上の任意の窒素またはα−アミノ基の窒素)が、式Iの四級アンモニウムカチオンを形成し得る。本明細書中での用途を有するアミノ酸としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:オルニチン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、トリプトファンなど。
【0023】
Qが定義(B)の場合、本明細書中の用途を有する好ましいアミノ酸は、ヒスチジンである。例えば、ヒスチジン側鎖のイミダゾール基の窒素、またはヒスチジンのα−アミノ基の窒素のいずれかは、式Iの四級アンモニウムカチオンを形成し得る。容易に明らかなように、イミダゾール基の芳香族特性に起因して、このヒスチジン側鎖のイミダゾール基の窒素のいずれかが、式(I)の構造を形成し得る。式Iの好ましいモノヒスチジン構造は、以下の式IcまたはId:
【0024】
【化18】
に図示される。
【0025】
Qが定義(C)の場合、例えば、グリシンが挙げられるがこれらに限定されない任意のアミノ酸が、本明細書中での用途を有する。好ましいエステルは、メチルエステルまたはエチルエステルのようなアルキルエステルである。
【0026】
さらに、本発明は、以下を含む薬学的組成物まで拡張する:
(a)式I:
【0027】
【化19】
の一般構造を有する化合物であって、ここで、
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である化合物、および
(b)その薬学的に受容可能なキャリア。
【0028】
このような薬学的組成物において用途を有する本発明の化合物の特定の例は、上記に記載される。さらに、任意の適切な薬学的に受容可能なキャリアは、本発明の薬学的組成物における用途を有する。特定の例は、以下に記載される。本発明の薬学的組成物の特定の実施形態は、有機アミンがトロメタミンである本発明の化合物を含み、そしてこれは、好ましくは、以下の式IaまたはIb、最も好ましくはIa:
【0029】
【化20】
の構造を有するトロメタミン塩である。
【0030】
本発明の薬学的組成物の別の特定の実施形態は、このアミノ酸がヒスチジンである本発明の化合物を含み、そしてこれは、好ましくは以下の式IcまたはId:
【0031】
【化21】
の構造を有するモノヒスチジン塩である。
【0032】
当然、このような薬学的組成物は、その薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。
【0033】
加えて、本発明はさらに、本発明の塩を含む組成物まで拡張する。特に、本発明の組成物は、以下を含む化合物の混合によって形成され得る:
(a)以下の構造:
【0034】
【化22】
を有するCA4P遊離酸;および
(b)化合物Qであって、ここでQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、化合物Q。
【0035】
必要に応じて、本発明の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み得る。
【0036】
さらに、Qが定義(A)の場合、本明細書中で規定される任意の有機アミンが、本発明の組成物における用途を有する。特定の例として、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、および2−(4−イミダゾリル)エチルアミンが挙げられるがこれらに限定されない。Qが定義(B)の場合、少なくとも2つの窒素原子を有する任意のアミノ酸が、本発明の組成物における用途を有する。特定の例としては、オルニチン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、トリプトファンなどが挙げられる。Qが定義(C)の場合、本明細書中で規定される任意のアミノ酸エステルが、本発明の組成物における用途を有する。特定の例としては、グリシンが挙げられる。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法まで拡張し、この方法は、以下の一般構造:
【0038】
【化23】
を有する化合物の、調節に有効な量を投与する工程を包含し、ここで、
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である。
【0039】
特定の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法まで拡張し、この方法は、この有機アミンがトロメタミンである化合物の、調節に有効な量を投与する工程を包含し、そしてこの化合物は、好ましくは以下の式IaまたはIb、最も好ましくはIa:
【0040】
【化24】
の構造を有するトロメタミン塩である。
【0041】
別の特定の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法まで拡張し、この方法は、このアミノ酸がヒスチジンである化合物の、調節に有効な量を投与する工程を包含し、そしてこの化合物は、好ましくは以下の式IcまたはId:
【0042】
【化25】
の構造を有するモノヒスチジン塩である。
【0043】
従って、本発明は、新規かつ有用なコンブレタスタチンA4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩を提供し、これらの塩は、ネイティブなコンブレタスタチンA−4よりも水溶液により可溶性である。従って、この薬物の効果は、増加され得る。
【0044】
本発明はまた、コンブレタスタチンA4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩を提供し、これらの塩は、インビボでコンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そしてこれらの塩は、解離の際に、生理学的に許容される副産物として、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステルを遊離する。
【0045】
この最も好ましい実施形態において、本発明は、式Iaの構造を有する抗脈管、抗腫瘍剤コンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグの、新規な結晶性1:1トロメタミン(TRIS)塩を提供する。この化合物は、リン酸エステルプロドラッグ塩であり、ここで、このホスフェート部位は、生理学的条件下で脱リン酸を起こして、活性薬物部分コンブレタスタチンA−4を得る(以下に述べるように、コンブレタスタチンA−4の核のフェニル部分を架橋するオレフィン基は、cis立体配置である;コンブレタスタチンA−4ホスフェートの好ましいモノTRIS塩のオレフィン基は、同様にcis立体配置である)。CA4Pの1:1(モノ)TRIS塩は、良好な固体状態特性を示し、そしてこれは予想外に、実質的に非吸湿性である。これらおよび他の有利な性質によって、CA4PのTRIS塩は、薬学的投薬処方物のための好ましい化合物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
本発明は、驚くべきことにかつ予期せず、モノおよびジ有機アミン、モノおよびジアミノ酸、モノおよびジアミノ酸エステル、コンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグ塩(これは、ネイティブのコンブレタスタチンA−4の溶解度に比較してインビボで増加した溶解度を有し、生理学的条件下でコンブレタスタチンA−4コンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そして再生の間に生理学的に許容性の有機アミン、インビボで容易に代謝される生理学的に許容性アミノ酸またはアミノ酸エステルを生成する)が、形成され得るという発見に基づく。
【0047】
該して、本発明は、以下の一般構造:
【0048】
【化26】
を有する、化合物に関し、ここで:
−OR1または−OR2のうちの1つは、−O-QH+であり、そして他方はヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成するアミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、である。
【0049】
本発明の全ての異性体(例えば、種々の置換上に不斉炭素に起因して存在し得るもの)(エナンチオマー形態、およびジアステレオマー形態を含む)は、本発明の範囲内で意図される。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体(例えば、特定の活性を有する純粋なまたは実質的に純粋な光学異性体として)を含まなくてもよいか、またはラセミ化合物として、または他の全てあるいは他の選択された立体異性体と混合されてもよい。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974推奨によって規定されるようなS配置またはR配置を有し得る。ラセミ形態は、物理的な方法(分画結晶化、ジアステレオマー誘導体の分離または結晶化、あるいはキラルクロマトグラフィーによる分離)によって分離される。個々の光学異性体は、任意の適切な方法によってラセミ化合物から、得られ得る。コンブレタスタチンA−4コアのフェニル部分を架橋するオレフィン基は、シス配置であり、これは、本発明の化合物について好ましい配置である。本明細書中の化合物の名前としての、または名前に一部としての、用語「コンブレタスタチンA−4」または「CA4」の使用は、このシス配置の化合物を示す。式Iの化合物の溶媒和物(例えば、水和物)が、本明細書において意図される。
【0050】
本明細書を通して、基および置換基は、安定な部分および化合物を提供するように選択され得る。
【0051】
例示または好ましい実施形態として本明細書中で示される実施形態は、例示を意図し、そして限定を意図しない。
【0052】
別の実施形態において、本発明は、本発明の化合物を含む薬学的組成物、およびその薬学的に受容可能なキャリアに関する。一般に、本発明の化合物は、任意の形態(例えば、固体または溶液(特に水溶液)の形態、以下にさらに記載される)で使用され得る。例えば、この化合物が凍結乾燥形態で得られ得、そして凍結乾燥形態のみ、または適切な添加物ともに使用され得る。
【0053】
なお別の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍増殖または転移を調節する方法に関し、この方法は、式Iの一般構造:
【0054】
【化27】
を有する化合物の有効量の投与を含み、ここで:
−OR1または−OR2のうちの1つは、−O-QH+であり、そして他方はヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成するアミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である。一般に、本発明の化合物は、単独または薬学的組成物において、投与され得る。
【0055】
本明細書中で使用される用語または句は、以下に定義され、そして他にそうではないと示されない限り示された定義を有する。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「調節する」、「調節(modulating)」または「調節(modulation)」は、特定のプロセスが起こる速度を変化させること、特定のプロセスを阻害すること、特定のプロセスを逆転すること、および/または特定のプロセスの開始を妨害することをいう。従って、例えば、特定のプロセスが、腫瘍増殖または転移を含む場合、プロセスの「調節」は、腫瘍増殖および/または転移が起こる速度を減少すること、腫瘍増殖および/または転移を阻害すること、腫瘍増殖および/または転移を逆転すること(腫瘍収縮および/または根絶)、ならびに/または特にこのようなプロセスの傾向がある被験体において、腫瘍増殖および/または転移を妨害することを包含する。
【0057】
本明細書中において、語句動物に投与される化合物の「有効量」または「そのために有効な量」とは、動物において腫瘍の増殖または転移を調節するに十分な量をいう。当業者は、例えば、慣用的な技術を使用して、動物に投与するべき本発明の化合物の有効量を、容易に決定し得る。成人に対する例示的な投薬量は、1日あたり活性化合物の約0.05〜約1000mg/体重のkgであり、これは、単回容量で(例えば、ボーラストしてかまたは最大許容用量以下での経時的な注入として)、あるいは個々の分割された用量の形態で(例えば、最大許容用量未満の連続的な量として)(例えば、1日あたり1〜4回)、投与され得る。任意の特定の被験体に対する特定の用量レベルおよび投薬の頻度は、変動し得、そして使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、被験体の種、年齢、体重、一般的健康、性別および食事療法、投与の様式および回数、排出の速度、薬物の組み合わせ、ならびに特定の状態の重篤度を含む種々の因子に依存することが、理解される。
【0058】
本明細書中において使用される場合に、用語「動物」とは、好ましくは、家畜動物のような被験体を含み、そして最も好ましくは、ヒトを含む。
【0059】
本明細書中において使用される場合に、用語「プロドラッグ」とは、インビボで代謝活性化を起こして活性薬物を生成する、前駆体化合物をいう。従って、例えば、被験体に投与された本発明の化合物は、代謝活性化を起こして、コンブレタスタチンA−4を再生成する。これは、本発明の化合物の、例えば血漿中の内因性非特異的ホスファターゼの作用による、解離に起因する。
【0060】
本明細書中において使用される場合に、用語「有機アミン」とは、本発明の式Iの化合物においてリン酸塩を形成し得る、少なくとも1つの一級(すなわち、−NH2)、二級(すなわち、−NH−)または三級(すなわち、
【0061】
【化28】
)アミン基を含む、有機(すなわち、炭素含有)化合物をいう。1つより多い一級、二級および/または三級アミン基が、この有機アミンにおいて存在する場合には、そのようにし得るような基のいずれかは、式Iの四級アンモニウム基QH+を形成し得る。「有機アミン」のこの定義は、アミノ酸化合物(2000年9月14日に米国出願番号60/232,568としてVenitによって出願された、発明の名称「Combretastatin A−4 Phosphate Mono− and Di− Amino Acid Salt Prodrugs」の仮出願を参照のこと、その全体が本明細書中に参考として援用される)もWO99/35150に記載されるような特定の化合物(グルコサミン、ピペラジン、ピペリジン、6’−メトキシ−シンコナン−9−オール、シンコナン−9−オール(cinchonan−9−ol)、ピラゾール、ピリジン、テトラサイクリン、イミダゾール、アデノシン、ベラパミル、モルホリン)(その全体が本明細書中に参考として援用される)も含まない。使用される有機アミンは、好ましくは、以下の群より選択される、生理学的に許容可能な化合物である:
(a)7以上のpKa、より好ましくは8以上のpKaを有する有機アミン;
(b)式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成している窒素が、必要に応じて置換されている脂肪族基または必要に応じて置換されている複素環式非芳香族基(あるいは、二級アミンまたは三級アミンの場合には、それぞれ2つまたは3つの、このような必要に応じて置換されている脂肪族基および/または複素環式非芳香族基)に結合している、有機アミン。「脂肪族基」とは、1〜20個、好ましくは1〜12個、より好ましくは1〜6個の炭素原子を鎖内に有する、直鎖または分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素(例えば、アルカン、アルケンまたはアルキン)である。「複素環式非芳香族基」とは、式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成している窒素、ならびに必要に応じて、他のヘテロ原子(例えば、O、S、またはさらなるN原子)を環内に含む、飽和かまたは部分的に不飽和の環である。「任意の置換基」とは、好ましくは、本発明の式Iにおいて使用される場合に、式Iのリン酸塩(これは結晶であり、そして実質的に非吸湿性であるか、または非吸湿性である)を生じる有機アミンを提供する、1つ以上の置換基である。好ましい「任意の置換基」としては、ヒドロキシル基、アミノ基(すなわち、−NH2)、またはアルコキシ(すなわち、−O−アルキル)基が挙げられ、最も好ましくは、1つ以上のヒドロキシル基である;ならびに/あるいは
(c)式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成している窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンである、有機アミンであって、ここで、好ましい任意の置換基は、1つ以上のヒドロキシル基またはアミノ基であり、最も好ましくは、ヒドロキシル基である。
【0062】
もちろん、本発明において使用するために好ましいアミンとして選択された任意の所定の有機アミンは、上記(a)〜(c)の2つ以上の群の特性を有し得る(例えば、7以上のpKaを有し、かつ(c)に記載されるような必要に応じて置換された脂肪族アミンである)。
【0063】
そのように規定される任意の有機アミンは、本発明の式Iの化合物、ならびに本発明の薬学的組成物および方法における使用に適切である。用語「有機アミン」は、他の酸部分および/または塩基部分(ここで、例えば、1つのアミノ基は式Iのリン酸塩を形成し、そして別のアミン基は酸性部分有する塩を形成する)を有する塩の形態の化合物を含む。従って、本発明の化合物内に含まれる有機アミンの残部はまた、塩部分を含み得る。
【0064】
例示的有機アミンとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:トロメタミン、ジエタノールアミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、および2−(4−イミダゾリル)エチルアミン。
【0065】
式IのコンブレタスタチンA−4ホスフェート「モノ有機アミン」塩は、上記に定義したようなR1またはR2の一部として1つの有機アミン基Qを含み;式IのコンブレタスタチンA−4ホスフェート「ジ有機アミン」塩は、2つの有機アミン基Q(上記で定義されるようなR1の一部およびR2の一部を含む)を含む。式Iの「モノ有機アミン」塩が好ましい。対応する定義は、「モノアミノ酸」、「ジアミノ酸」、「モノアミノ酸エステル」、および「ジアミノ酸エステル」にあてはまる。
【0066】
任意の適切なアミノ酸は、本明細書中での適用(これは、本発明の化合物における適用を有する、多数の天然のアミノ酸および非天然のアミノ酸)を有する。特定の例としては、2、3の例を挙げると、オルニチン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、およびトリプトファンが挙げられるが、必ずしも限定されない。
【0067】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミノ酸」は、塩基性アミノ基(NH2)、および酸性カルボン酸基(COOH)を含む化合物をいい、これは双性イオンの形態(ここで、アミノおよびカルボキシル基は、双生イオンまたは内部塩を共に形成する)、または他の酸部分および/または塩基部分(ここで、例えば、アミノ酸は、α−COOH基に加えてカルボン酸基を含み、そして前者は、アルカリ金属を有する塩形態である)を有する塩の形態のような化合物を含む。従って、本発明の化合物内に含まれるアミノ酸の残部はまた、塩部分に含まれ得る。用語は、非天然アミノ酸、および天然のアミノ酸(例えば、α−アミノ酸(特にL−アミノ酸)(これらの多くは、タンパク質の構築ブロックである))を含む。用語「天然のアミノ酸」は、全てのタンパク質に共通する20個のアミノ酸(すなわち、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸)をいう。句「非天然のアミノ酸」は、一般に、全てのタンパク質に共通しないアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、N−メチルリジン、γ−カルボキシグルタメート、セレノシステイン、オルニチン、およびシトルリン)をいう。2つ以上の窒素原子を有するアミノ酸は、Qが定義(B)、ならびに本発明の薬学的組成物および方法を有する場合、本発明の式Iの化合物中で使用するのに適切である。
【0068】
本発明中で用いられる場合、アミノ酸に関する、句「側鎖」は、各アミノ酸について異なるアミノ酸の部分(特に、アミノ酸の−NH2基および−COOH基に連結する炭素に結合した基)である。
【0069】
本明細書中で用いられる場合、用語「実質的に非吸湿性」は、化合物に関して、好ましくは、、以下の条件下で測定される、化合物の重量あたり1%未満(より好ましくは、化合物の重量あたり0.5%未満)の水重量増加を示す:25℃および0%湿潤条件下での測定に対して、約25℃の温度、20%〜95%までの相対湿度、および平衡状態(すなわち、水分の吸収と放出の比が平衡化された時間で測定される)。本明細書中で用いられる場合、用語「非吸湿性」は、化合物に関して、好ましくは、上記で測定されるような、化合物の重量あたり測定可能な重量増加を示さない。
【0070】
アミノ酸に関して本明細書中で用いられる場合、用語「エステル」は、−COO(G)形態(ここで、Gは有機部分(例えば、非置換または置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、または複素環式基))であるアミノ酸のカルボン酸基(すなわち、−COOH基)のことをいう。G基として好ましいものは、C1-6アルキル基(例えば、メチルまたはエチル)である。アミノ酸エステルとして最も好ましいものは、グリシンのC1-6アルキルエステル(例えば、グリシンメチルエステルまたはグリシンエチルエステル)である。
【0071】
本明細書中で用いられる場合、用語「塩」は、本発明の化合物のことをいい、この化合物は、イオン性化合物(例えば、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステル部分の四級窒素QH+とコンブレタスタチンA4ホスフェートとの間にイオン結合を有する)である。
【0072】
本明細書中で用いられる場合、「イオン結合」は、陽イオンと陰イオンとの間、または化学構造間の静電的誘引力により形成される化学結合である。このような結合は、水溶液中で容易に解離(またはイオン化)され得る。溶媒(特に、水性溶媒)中、およびこのような溶液の凍結乾燥物中の本発明の化合物は、本発明により包含される実施形態である。
【0073】
本明細書中で用いられる場合、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステルのような、インビボで存在する化学種を記載さする際の、句「生理学的に許容される」は、化学種の動物を処置する条件下で受容可能ではない副作用を誘導しない能力をいう。好ましくは、「生理学的に許容される」化学種は、有害な副作用を生じない。
【0074】
上記で説明したように、本発明は、本発明の化合物を用いて、腫瘍(好ましくは、固形腫瘍)の増殖または転移を調節するための方法に関する。本明細書中で用いられる場合、用語「腫瘍」または「腫瘍増殖」は、交換可能に用いられ得、そして細胞の制御されない進行性の増殖を生じかつ生理学的機能に役立たない組織の異常な増殖をいう。固形腫瘍は、悪性(例えば、転移するおよび命にかかわる傾向にある)であり得るか、または良性であり得る。本発明の方法に従って処置され得る固形腫瘍の例は、例えば、以下の肉腫および癌腫が挙げられるが、これらに限定されない:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、骨原性肉腫、脊索腫、食道癌、血管肉腫、骨肉腫、内皮腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、骨膜腫、滑膜肉腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、膵癌、乳癌(例えば、転移性乳癌)、卵巣癌、精巣癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、結腸および直腸の腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様(medullary)癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、肝転移、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、甲状腺癌(例えば、退形成型(anaplastic)甲状腺癌、髄様(medullary)甲状腺癌腫、ウィルムス腫瘍、頸部の癌、精巣腫瘍、肺腫瘍(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、膀胱癌、上皮癌、経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫。
【0075】
さらに、増殖不全変化を含む腫瘍(例えば、化生および形成異常症)は、上皮組織(例えば、頸部、食道、および肺)中の本発明の化合物または方法を用いて処置または予防され得る。従って、本発明は、公知の状態の処置、あるいは新形成または癌(詳細には、過形成、化生、最も詳細には、異形性からなる、非新形成細胞増殖が生じた場合(このような異常な増殖状態の総説について、RobbinsおよびAngell,1976,Basic Pathology、第二版、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,68−79頁))に対する事前の経過から予想される状態の処置を提供する。過形成は、構造または機能における有意な変化をともなわずに、組織または器官における細胞数を増加させることを伴う制御された細胞増殖の形態である。しかし1つの例の場合、内皮過形成は、しばしば、子宮内膜癌を進行させる。化生は、成体または完全に分化した細胞の1つの型が、別の型の成体細胞に置換する制御された細胞増殖の形態である。化生は、上皮組織細胞または結合組織細胞において生じ得る。異常な化生は、何らかの無秩序な化生上皮を伴う。異形性は、しばしば、癌の前駆体であり、そして上皮中で主に見出される;これは、個々の細胞の均一性および細胞の構造上の配向性の損失を伴う、ほとんどの無秩序な形態の非新形成細胞増殖である。異形性細胞は、しばしば、異常な大きな、濃く染色される核を有し、そして多型性を有する。異形性は、これらが慢性の炎症(irritationまたはinflammation)場合、特徴的に生じ,そして、しばしば、頸部、気道、口腔、および胆嚢に見出される。このような障害の総説については、Fishmanら、1985,Medicine、第二版、J.B.Lippincott Co.,Philadelphiaを参照のこと。
【0076】
良性で有り得、そして本発明の化合物および方法を用いて処置され得る腫瘍の他の例としては、動静脈(AV)(詳細には、頭蓋部)の先天奇形、および筋脂肪腫が挙げられる。
【0077】
本発明の化合物はまた、悪性の脈管増殖障害(例えば、黄斑変性、乾癬および再狭窄)の処置のための方法、ならびに、一般に、脈管増殖により特徴付けられる炎症性疾患の処置に有用である。このような疾患および障害は、WO 00/48606(本明細書中でその全体が参考として援用される)に記載される。
【0078】
(薬学的組成物)
本発明はまた、上記のような本発明の化合物を含む薬学的組成物、およびその薬学的に受容可能なキャリアに関する。句「薬学的に受容可能な」とは、生理学的に許容性であり、そして、好ましくは、ヒトに投与される場合、アレルギー反応または類似の有害反応(例えば、胃の不調(gastric upset)、目眩など)を代表的には生じない、分子実体および組成物をいう。好ましくは、本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な」は、連邦政府または州政府の管理機関または米国薬局方または他の一般に認識された動物(およびより詳細にはヒト)に使用するための薬局方による認可を意味する。用語「キャリア」は、化合物と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルをいう。このような薬学的キャリアは、滅菌液(例えば、水および油(石油、動物起源、植物起源、または合成起源(例えば、落花生油、大豆油、鉱物油、胡麻油、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセロールなど)、Cremophorなど(これらの混合物を含む))を含む))で有り得る。水または水性生理食塩溶液、および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、好ましくは、キャリア(詳細には、注射可能な溶液)として用いられる。適切な薬学的に受容可能なキャリアは、E.W.Martinによる「Remington’s
Pharmaceutical Sciences」に記載される。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、注射のための投与用、または経口、肺内、経鼻、経皮、眼内、または他の投与の形態のための投与用であり得る。一般に、本発明により理解されるものは、例えば、薬学的に受容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または他のキャリアと共に本発明の化合物の有効量を含む薬学的組成物である。このような組成物としては、以下が挙げられる:種々の緩衝液含有物(例えば、TRISまたは他のアミン、カルボネート、ホスフェート、アミノ酸、例えば、グリシンアミドハイドロクロライド(特に、生理学的pH範囲)、N−グリシルグリシン、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム(二塩基性、三塩基性)など、またはTRIS−HClもしくはアセテート)、pHおよびイオン強度;界面活性剤および可溶化剤のような添加剤(例えば、Pluronics、Tween20、Tween80(ポリソルベート80)、Cremophor、ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのような界面活性剤活性剤)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベンなど)、ならびにバルキング材料(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトールのような糖、ポリビニルピロリドンまたはデキストランのようなポリマーなど);および/またはこの物質をポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸など)の粒子状の調製物またはリポソームへの取込み物。ヒアルロン酸もまた用いられ得る。このような組成物は、本発明の化合物の物理学的状態、安定性、インビボ放出の速度、およびインビボクリアランスの速度に影響を与えるために用いられ得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435−1712頁(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。この組成物は、例えば、液体の形態で調製され得るか、または乾燥粉末(凍結乾燥形態)であり得る。このような組成物の投与の特定の形態は、以下に記載される。
【0080】
pH調整を記載されるように行い得る。例えば、本発明の化合物の溶解性を増大させること、これらの化合物を含む薬学的組成物のpHを7を超えるpH(より好ましくは、8を超えるpHに(例えば、約8.5のpHに))に調整することが好ましい。
【0081】
本発明の式IのようなCA4Pプロドラッグ塩について、活性な親(CA4)形成をより低いpHで生じる。本発明は、緩衝液/pH調節剤の添加が、凍結の間のpH低下を防ぎ、このようにして、より安定な凍結乾燥処方物を提供することを見出した。驚くべきことに、本発明の式IのようなCA4Pプロドラッグの凍結乾燥処方物について、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いるpH調整は、活性な親(cis)CA4(これは水に最小限可溶性である、そして水溶液中で望ましくない粒子を形成し得る)形成を生じ得、そして水酸化ナトリウム以外のpH調整剤の使用はCA4形成を緩和させ得るということをさらに見出した。pH調整剤および緩衝液としてのTRISの使用は、例えば、pH調整のための水酸化ナトリウムの使用に関連して活性な親(cis)CA4の形成を緩和させる。従って、本発明の組成物の使用に特に好ましい。例えば、観察は、式Iの化合物についてなされた。ここで、Qは、TRISまたはヒスチジンのいずれかであり、その結果、pH調整剤としてNaOHを用いて調製された凍結乾燥物は保存の際に親cis−CA4に対する加水分解を示したが、NaOH以外の適切な緩衝剤(例えば、TRIS)を用いるpH調整は、不溶性の親の形成を緩和させた。従って、本発明の別の局面は、薬学的凍結乾燥組成物(好ましくは、pH調整溶液から調製される)に関し、この組成物は、本発明の化合物および水酸化ナトリウム以外のpH調製剤を含む(好ましくは、pH調整剤として、有機塩基(例えば、アミノ酸もしくは有機アミン(特に、TRIS))を含む)。従って、水酸化ナトリウムの使用は、本発明の凍結乾燥組成物内に包含され、このような使用は、例えば、固体形成が望ましくない、静脈内投与される薬学的組成物についてあまり好ましくない。
【0082】
薬学的組成物(例えば、溶液(特に水溶液(例えば、15mg/mL、30mg/mLおよび60mg/mL)))はまた、本発明の化合物および水酸化ナトリウムを含むpH調整剤を含むように、好ましくは、pH調整剤として、例えば、アルギニン、グリシンのようなアミノ酸、または有機アミン(例えば、エタノールアミン、特にTRIS)のような有機塩基、を含むように調整される。処方物のpHが、pH9.0〜pH10.5に増加する場合、水溶液安定性は増加する。例えば、pH10でpH調整剤としてNaOHを用いる溶液処方物は、pH8.5で緩衝剤としてTRISを用いて調製した凍結乾燥処方物に匹敵する安定性を示し得る。
【0083】
光からの保護は、好ましくは、本発明の薬学的組成物に用いられる。
【0084】
(腫瘍増殖または腫瘍転移を調節する方法)
コンブレタスタチンA−4は、Combretum caffrumの樹幹(wood stem)に由来する強力な抗有糸分裂剤であり、そして広範な種々のヒト癌細胞株に対する強力な毒性を示す。その結果、本発明の化合物もしくは薬学的組成物の被験体への投与は、被験体における腫瘍増殖および/または転移を減少させ得るか、あるいは、被験体が、検出可能な転移もしくは腫瘍増殖を有さない場合、転移および/または腫瘍増殖を予防する。もちろん、本発明の化合物は、単独または薬学的に受容可能なキャリアと共に投与され得る。
【0085】
従って、本発明は、とりわけ、有効量の本発明のモノ−もしくはジ−有機アミンコンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグ塩(これはインビボでコンブレタスタチンA−4を急速に再生する)の投与を包含する、腫瘍の増殖もしくは転移を調節するための方法に関する。上記に説明したように、本明細書中で用いられる場合、句「有効量」は、腫瘍の増殖もしくは転移を調節するために(例えば、動物における腫瘍の増殖もしくは転移を減少させるためか、あるいは投与の前に任意の腫瘍形成を欠く動物における腫瘍の増殖の形成を予防するために)十分である、被験体に投与される本発明の化合物の量をいう。当業者は、例えば、慣用的技術を用いる投与のための本発明の化合物の有効量を容易に決定し得る。
【0086】
さらに、本発明の化合物を投与するための多数の手段が、本発明の方法における適用を有する。特に、本発明の化合物もしくは薬学的組成物は、非経口的、経粘膜(例えば、経口、経鼻、もしくは直腸)的、または経皮的に導入され得る。好ましくは、投与は、非経口(例えば、静脈注射を介して)であり、そして以下もまた含むがこれらに限定されない:細動脈投与、筋肉内投与、真皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、心室内投与、および頭蓋内投与。化合物もしくは薬学的組成物は、例えば、処置される腫瘍または腫瘍の周りの組織へと注入により導入され得る。「粘膜浸透エンハンサー」は、本発明の化合物の経粘膜浸透の速度もしくは能力を増大させる試薬のことをいい、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない:胆汁塩、脂肪酸、界面活性剤もしくはアルコール。特定の実施形態では、浸透エンハンサーは、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸、グリココール酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド、またはメタノールであり得る。適切な浸透エンハンサーとしてはまた、グリシレチン酸(Kowarskiへの米国特許第5,112,804号)およびポリソルベート80が挙げられ、後者は、非イオン性界面活性剤(例えば、ノノオキシノール−9、ラウレス(laureth)−9、ポリオキサマー−124、オクトオキシノール−9、またはラウリンアミド−DEA(Stoltzによる欧州特許第0 242 643号))との組合せに好ましい。
【0087】
別の実施形態では、本発明の方法に従って、本発明の化合物もしくは薬学的組成物は、小胞(詳細には、リポソーム)中で送達され得る[Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFilder(編),Liss:New York,353−365頁(1989);Lopez−Berestein,同書、317−327頁を参照のこと;一般に同書を参照のこと]。
【0088】
なお別の実施形態では、このような化合物もしくは薬学的組成物は、徐放性系(例えば、静脈内インフュージョン、インプラント可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または投与の他の方法)において送達され得る。特定の実施形態では、ポンプが用いられ得る[Langer,前出;Sefton,CRC
Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgely 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと]。別の実施形態では、ポリマー材料が用いられ得る[Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Press:Boca 26 Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley:New York(1984);RangerおよびPeppas,J Macromol.Sci.Rev.Macronzol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら、Science 228:190(1985);Duringら、Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら、J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと]。なお別の実施形態では、徐放性系は、被験体の標的組織の近位に配置され得、従って、全身性用量の画分のみを必要とする[例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,前出,第2巻,115−138頁(1984)]。好ましい、徐放性デバイスは、不適切な免疫活性化もしくは腫瘍の部位の近位で、動物に導入される。他の徐放性系は、Langer[Science 249:1527−1533(1990)]による総説において議論される。
【0089】
(非経口投与)
上記に説明したように、本発明の化合物または薬学的組成物は、被験体に非経口投与され得、従って、被験体の胃腸管を介する投与を回避し得る。本明細書中の適用を有する特定の非経口投与技術としては、いくつか名前を挙げれば以下が挙げられるが、もちろんこれらに限定はされない:静脈(ボーラスまたは注入)注射、腹腔内注射、皮下注射、筋肉内注射、またはカテーテル法。非経口投与のための例示的組成物としては、注射可能な溶液または懸濁液が挙げられ、これらは、例えば、適切な非毒性の、非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、緩衝化水性液系、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、または他の適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤(合成のモノグリセリドもしくはジグリセリド、ならびに脂肪酸(オレイン酸、アルコール、および/またはCremophorを含む)を含む)を含み得る。pH調整が、所望されるならば使用され得る。
【0090】
(経鼻送達)
本発明の化合物または薬学的組成物の経鼻送達もしくは経粘膜送達もまた、意図される。経鼻送達は、この化合物の有効量を鼻に投与した後に、このような化合物が直接血流へと通過することを可能にし、肺での生成物の蓄積が必要ない。経鼻送達のための処方物としては、デキストランまたはシクロデキストリンを用いる送達、ならびに他のポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロースもしくは他のセルロース)を用いる送達が、挙げられる。
【0091】
経鼻投与について、有用なデバイスは小さくて硬質なビンであり、これに計測された用量スプレーが添付される。1つの実施形態において、この計測された用量は、本発明の化合物または薬学的組成物を、規定容量のチャンバへと引き込むことによって送達され、このチャンバは、このチャンバ内の液体が加圧される場合にスプレーを形成することによってエアロゾル処方物をエアロゾル化するために寸法決めされた開口部を有する。このチャンバは、この化合物または薬学的組成物を投与するために加圧される。特定の実施形態において、このチャンバは、ピストン配置である。このようなデバイスは、市販されている。
【0092】
あるいは、エアロゾル処方物をエアロゾル化するように寸法決めされた開口または開口部を有するプラスチック圧搾ビンが使用され得る。エアロゾル化は、このビンが圧搾される場合に起こる。この開口部は、通常このビンの頂部に見出され、そしてこの頂部は、一般に、エアロゾル処方物の効率的な投与のための経鼻通路内に部分的に一致するようにテーパー状である。好ましくは、この経鼻吸入器は、本発明の化合物または薬学的組成物の計測された容量の投与のために、計測された量のエアロゾル処方物を提供する。
【0093】
経粘膜送達について、浸透エンハンサーの使用がまた意図される。
【0094】
(肺送達)
本発明の化合物または薬学的組成物の肺送達もまた、本明細書中で意図される。本発明の化合物または薬学的組成物は、吸入の間に動物の肺へと送達され得、そして肺の上皮内層を横切って血流に入る。この他の報告としては、Adjeiら,[Pharniaceutical Research,7:565−569(1990);Adjeiら,International Journal
of Pharinaceuties,63:135−144(1990)(酢酸ロイプロリド);Braquetら,Journal of Cardiovascular Pharinacology,13(補遺5):143−146(1989)(エンドセリン−1);Hubbardら,Annals of Internal Medicine,Vol.III,pp.206−212(1989)(α1−抗トリプシン);Smithら,J.Clin.Invest.84:1145−1146(1989)(α−1−プロテイナーゼ);Osweinら,「Aerosolization of Proteins」,Proceedings of Symposium on Respiratoiy Drug Delivery II,Keystone,Colorado,March,(1990)(組換えヒト成長ホルモン);Debsら,J.Immunol:140.3482−3488(1988)(インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α),Platzら,米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)]が挙げられる。全身性効果のための薬物の肺送達のための方法および組成物は、Wongらに1995年9月19日発行の米国特許第5,451,569号に記載される。
【0095】
本発明の実行において使用のため熟慮されることは、治療学的産物の肺送達について設計される広範囲の機械的デバイスである(噴霧器、計測用量吸入器および粉末吸入器(これらの全ては当業者によく知られている)を含むがこれに限定されない)。この送達デバイスの構築に関して、当該分野で公知の任意のエアロゾル適用形態(噴霧瓶、噴霧、微粒化または液体処方物のポンプエアロゾル適用、および乾燥粉末処方物のエアロゾル適用を含むがこれに限定されない)は、本発明の実行において使用され得る。
【0096】
本発明の実行に適した市販のデバイスのいくつかの特定の例は、Ultravent噴霧器(Mallinckrodt,Inc.,St.Louis,Missouriによって製造される);AcornII噴霧器(Marquest
Medical Products,Englewood,Coloradoによって製造される);Ventolin計測用量吸入器(Glaxo Inc.,Research Triangle Park,North Carolinaによって製造される);およびSpinhaler粉末吸入器(Fisons Corp.,Bedfold,Massachusettsによって製造される)である。
全ての各デバイスは、本発明の薬学的組成物の調剤に適した処方物の使用を必要とする。代表的に、各処方物は用いられるデバイスの型に対して特異的であり、そして通常の希釈剤、補助剤および/または治療に有用な他のキャリアに加えて、適切な噴霧剤物質の使用を含み得る。また、リポソーム、マイクロカプセルまたは微粒子、封入複合体または他の型のキャリアの使用が熟慮される。化学的に改変される本発明の薬学的組成物はまた、化学的改変の型または用いられるデバイスの型に依存している種々の処方物において調製され得る。
【0097】
噴出または超音波のいずれかの噴霧器での使用に適した処方物は、代表的に化合物、または溶液1mL当たり25mgの生物学的活性成分に対して約0.1の濃度で水中に溶解する本発明の薬学的組成物を含有する。この処方物はまた、緩衝液および単糖を含み得る(例えば、本発明の薬学的組成物の浸透圧の安定化および調節のために)。この噴霧器処方物はまた、化合物またはエアロゾルを形成する際の溶液の微粒化によって生じる本発明の薬学的組成物の表面誘導凝集を減少する、または予防するための界面活性剤を含み得る。
【0098】
計測用量吸入器デバイスでの使用のための処方物は、一般的に例えば、化合物または界面活性剤の補助を有して噴霧剤において懸濁される本発明の薬学的組成物を含む精巧な分包を含有する。この噴霧剤は、この目的のために用いられる任意の適した物質であり得る(例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボンまたは炭化水素(トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む)またはその組み合わせ)。適切な界面活性剤は、ソルビタントリオエートおよびソーヤレシチンを含む。オレイン酸もまた界面活性剤として有用であり得る。
【0099】
液体エアロゾル処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物および生理学的に受容可能な希釈剤における分散剤を含む。本発明の乾燥粉末エアロゾル処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物および分散剤の微細に分割された固体形態を含み得る。液体または乾燥粉末エアロゾル処方物のいずれかを有して、処方物はエアロゾル化されるべきである。つまり、エアロゾル化用量が鼻孔または肺の粘膜に実際に到達することを保証するために、処方物は液体粒子または固体粒子に分類されるべきである。用語「エアロゾル粒子」は本明細書中で使用され、鼻投与または肺投与に適した液体粒子または固体粒子(つまり、それが粘膜に到達する)を記載する。他の考慮として、送達デバイスの構築、処方物における添加成分、および粒子特性が挙げられる。薬物の鼻投与または肺投与のこれらの局面は当該分野で周知であり、そして処方物の処置、エアロゾル適用手法および送達デバイスの構築は当業者によって直ちに成し遂げられ得る。
【0100】
特定の実施形態において、マスメジアン動力学的直径は、薬物粒子が肺胞に到達するのを保証するために5マイクロ計測未満である(Wearley,L.L.,1991,1991,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Systems 8:333)。
【0101】
上に記述するように、本発明の特定の局面において、エアロゾル適用についてのデバイスは計測用量吸入器である。計測用量吸入器は投与に依存する種々の用量よりもむしろ投与の際に,特定の投薬を供給する。このような計測用量吸入器は、液体または乾燥粉末エアロゾル処方物のいずれかを有して使用され得る。計測用量吸入器は当該分野で周知である。
【0102】
しばしば、肺への吸入のための液体または乾燥粉末処方物のエアロゾル適用は噴霧剤を必要とする。この噴霧剤は、一般的に当該分野で使用される任意の噴霧剤であり得る。このような有用な噴霧剤の特定の無制限な例は、クロロフルオロカーボン(chloroflourocarbon)、ヒドロフルオロカーボン,ヒドロクロロフルオロカーボン(hydochlorofluorocarbon)または炭化水素(トリフルオロメタン(triflouromethane)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodiflouromethane)、ジクロロテトラフルオロエタノール(dichlorotetrafuoroethanol)、および1,1,1,2−テトラフルオロエタン(1,1,1,2−tetraflouroethane)を含む)またはその結合である。
【0103】
エアロゾル送達系(例えば、与圧計測用量吸入器および乾燥粉末吸入器)は、Newman,S.P.,Aerosols and the Lung,Clarke,S.W.およびDavia,D.編,197−22頁に開示され、そして本発明に関連して使用され得る。
【0104】
(液体エアロゾル処方物)
本発明は、液体エアロゾル処方物および化合物または本発明の薬学的組成物の投薬形態について提供する。一般的に、このような投薬形態は化合物または薬学的受容可能な希釈剤における本発明の薬学的組成物を含む。薬学的受容可能な希釈剤は、滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖溶液などを含むがこれに限定されない。特定の実施形態において、本発明または本発明の薬学的組成物において使用され得る希釈剤は、ホスフェート緩衝生理食塩水、または一般的にpH7.0〜8.0の範囲内の緩衝生理食塩水溶液、または水である。
【0105】
本発明の液体エアロゾル処方物は、任意の成分として、薬学的受容可能なキャリア、希釈剤、可溶性薬剤または乳化剤、界面活性剤および賦形剤を含み得る。
【0106】
本実施形態の処方物はまた、pH維持、溶液安定化について、または浸透圧の調節について有用な他の薬剤を含み得る。薬剤の例は、塩(例えば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)および炭水化物(例えば、グルコース、ガラクトースまたはマンノース)などを含むがこれに限定されない。
【0107】
(エアロゾル乾燥粉末処方物)
本エアロゾル処方物は、乾燥粉末処方物として調製され得ることもまた熟慮され、この乾燥粉末処方物は化合物または本発明の薬学的組成物、および分散剤の精巧な分包形態を包含する。
【0108】
粉末吸入器デバイスから調合するための処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物を含む精巧な乾燥分包を包含し得、そしてまたバルキング薬剤(例えば、デバイスからの粉末の分散を促進する量(処方物の重さの50%〜90%)におけるラクトース、ソルビトール、スクロースまたはマンニトール)を包含し得る。化合物または本発明の薬学的組成物は、最も有効な末端肺への送達について、10ミクロン、最も好ましくは0.5〜5ミクロン以下の平均粒子サイズを有して粒子形態において最も有利に調製されるべきである。
【0109】
他の実施形態において、乾燥粉末処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物を含み、薬剤を分散し、そしてまた薬剤をバルキングする精巧な乾燥分包を包含し得る。本処方物を連結する際に有用なバルキング薬剤は、デバイスからの粉末の分散を促進する量におけるラクトース、ソルビトール、スクロースまたはマンニトールのような薬剤を含む。
【0110】
(経皮投与)
種々の方法および多数の方法が、薬物の経皮投与に関して(例えば、経皮斑を介して)当該分野で公知である。経皮斑は、例えば、米国特許第5,407,713号,1995年4月18日発行,Rolandoら;米国特許第5,352,456号,1994年10月4日発行,Fallonら;米国特許第5,332,213号,1994年8月9日発行,D’Angeloら;米国特許第5,336,168号,1994年8月9日発行,Sibalis;米国特許第5,290,561号,1994年3月1日発行,Farhadiehら;米国特許第5,254,346号,1993年10月19日発行,Tuckerら;米国特許第5,164,189号,1992年11月17日発行,Bergerら;米国特許第5,163,899号,1992年11月17日発行,Sibalis;米国特許第5,088,977号および第5,087,240号,どちらも1992年2月18日発行,Sibalis;米国特許第5.008,110号,1991年4月16日発行,Beneckeら;および米国特許第4,921,475号,1990年5月1日発行,Sibalis。これらのそれぞれの公開は、その全体が参考文献によって本明細書中で援用される。
【0111】
投与の経皮経路は、皮膚浸透エンハンサー(例えば、米国特許第5,164,189号(前出)、米国特許第5,008,110号(前出)、および米国特許第4,879,119号(Arugaら、1989年11月7日発行(これらの各々の開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のエンハンサー)の使用によって促進され得ることが容易に理解され得る。
【0112】
さらに、本発明の化合物または薬学的組成物は、局所投与され得る。例えば、化合物は、皮膚に塗りつけられ得る組成物を形成する軟膏キャリアと混合され得る。あるいは、本発明の化合物は、皮膚に浸透することが周知である溶媒に溶解され得る。このような溶媒の特定の例は、ジメチルホルムアミド(DMSO)である。ゲル処方物もまた企図される。
【0113】
(経口送達)
Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版、1990(Mack Publishing Co.Easton
PA 18042)のチャプタ89(これは、本明細書中で参考として援用される)に一般的に記載される経口個体投薬形態は、本明細書中で使用するために企図される。個体投薬形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、ピル、トローチまたはロゼンジ、カシェ剤あるいはペレット剤が挙げられる。また、リポソームまたはプロテイノイドのカプセル化が、本発明の化合物または薬学的組成物を処方するために使用され得る(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されるプロテイノイドマイクロスフェア)。リポロームカプセル化が使用され得、そしてこのリポソームは様々なポリマーと共に誘導され得る(例えば、米国特許第5,013,556)。治療的用途についての可能な個体投薬形態の記載は、Marshall,K.、Modern Pharmaceutics(G.S.BankerおよびC.T.Rhodes編)、チャプタ10、1979(本明細書中で参考として援用される)により示される。処方物は、本発明の化合物または薬学的組成物、ならびに胃環境に対する保護および腸における生物学的活性材料の放出を可能にする不活性成分を含み得る。
【0114】
本発明の化合物の経口投薬形態もまた特に企図され、ここでこの化合物は、誘導体の経口送達が有効であるように化学修飾され得る。一般的に、企図される化学修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部分の結合であり、ここで、この部分は、(a)タンパク質分解の阻害;(b)胃から腸への血流の取込みを可能にする。本発明の化合物の全体的な安定性の増加、および体内における循環時間の増加もまた所望される。このような部分の例としては、以下が挙げられる:ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリプロリン。AbuchowskiおよびDavis,1981,「Soluble Polymer−Enzyme Adducts」、Enzymes as Drugs,HocenbergおよびRoberts編、Wiley−Interscience,New York,NY,367〜383;Newmarkら、1982、J.Appl.Biochem.4:185〜189。使用され得る他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキソランおよびポリ−1,3,6−チオキソカンである。上記のように、ポリエチレングリコール部分は薬学的用途のために好ましい。
【0115】
本発明の化合物について、放出の位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であり得る。当業者は、胃で溶解しないが、腸の十二指腸またはその他の場所で本発明の化合物を放出する処方物を調製し得る。好ましくは、この放出は、化合物の保護または胃環境を越える(例えば、腸において)生物学的活性材料の放出のいずれかによって、胃環境の悪影響を回避する。
【0116】
十分な胃耐性を保証するために、少なくともpH5.0で不浸透性のコーティングが必須である。腸溶性コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例は、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、およびShellacである。これらのコーティングは、混合フィルムとして使用され得る。
【0117】
コーティングまたはコーティングの混合物はまた、錠剤で使用され得、これは胃からの保護を意図していない。これには、糖コーティング、または錠剤のえん下を容易にするコーティングが挙げられ得る。カプセル剤は、乾燥治療薬(すなわち散剤)の送達のための硬質の殻(例えば、ゼラチン)から構成され得、液体形態について、軟質ゼラチン殻が使用され得る。カシェ剤の殻材料は、厚いデンプンまたは他の食用ペーパーであり得る。ピル、ロゼンジ、成形錠剤または錠剤粉薬について、水分凝縮技術(moist massing technique)が使用され得る。
【0118】
本発明の化合物は、例えば、約1mmの粒径の顆粒またはペレットの形態の微細な多粒子として、処方物に含有され得る。カプセル投与のための材料の処方物はまた、散剤、軽く圧縮したプラグまたはさらに錠剤として存在し得る。また、本発明の化合物または薬学的組成物は、圧縮によって調製され得る。
【0119】
着色剤および香味剤は全て含まれ得る。例えば、化合物が処方され(例えば、リポソームカプセル化またはマイクロスフェアカプセル化によって)、次いで、食用製品(例えば着色剤または香味材を含む冷蔵飲料)内にさらに含有される。
【0120】
本発明の化合物または不活性材料を含む薬学的組成物の容量を希釈または増加し得る。これらの希釈剤は、炭水化物、特に、マンニトール、α−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストランおよびデンプンを含み得る。特定の無機塩もまた、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含むフィラーとして使用され得る。いくつかの市販の希釈剤は、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx 1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0121】
崩壊剤は、本発明の薬学的組成物の固体投薬形態への処方において含まれ得る。崩壊剤として使用される材料としては、デンプン(デンプンに基づく市販の崩壊剤であるExplotabを含む)が挙げられるが、これに限定されない。ナトリウムデンプングリコレート、Amberlite、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイトは全て使用され得る。別の形態の崩壊剤は、不溶性の陽イオン交換樹脂である。粉砕したゴムは、崩壊剤および結合剤として使用され得、そしてこれらは粉末ゴム(例えば、寒天、Karayaまたはトラガカント)を含み得る。アルギン酸およびそのナトリウム塩もまた崩壊剤として有用である。
【0122】
結合剤は、硬質錠剤を一緒に形成するように、本発明の化合物または薬学的組成物を保持するために使用され得、そして天然産物由来の材料(例えば、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチン)を含み得る。他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の両方は、治療薬を顆粒化するためにアルコール溶液中で使用され得る。
【0123】
減摩剤は、処方プロセスの間の固着を防止するために、本発明の薬学的組成物の処方物中に含有され得る。潤滑剤は、治療薬と型壁との間の層として使用され得、これには、ステアリン酸(そのマグネシウム塩およびカルシウム塩を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびワックスが挙げられるが、これらに限定されない。可溶性潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000および6000)もまた使用され得る。
【0124】
処方の間に本発明の化合物の流動性を改善し、圧縮の間の再配置を助け得る滑剤が添加され得る。これらの滑剤は、デンプン、タルク、発熱性シリカおよび水和シリコアルミネート(silicoaluminate)を含み得る。
【0125】
経口投与された本発明の化合物の取込みを潜在的に増大する添加剤は、例えば、脂肪酸のオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。
【0126】
制御放出経口処方物が所望され得る。薬物は、拡散または浸出機構のいずれか(例えば、ゴム)による放出を可能にする不活性マトリクスに組み込まれ得る。ゆっくりと分解するマトリクスはまた、この処方物に組み込まれ得る。いくつかの腸溶性コーティングはまた、遅延放出効果を有する。
【0127】
本発明の化合物の制御放出の別の形態は、Oros治療システム(Alza Corp.)に基づく方法による。すなわち、薬剤は、半透性膜(これにより水は浸透圧効果に起因して単一の小さな開口部を通って入りそして薬物を押し出す)に封入される。
【0128】
他のコーティングは、処方物のために使用され得る。これには、コーティングパンに適用され得る様々な糖が挙げられる。本発明の化合物はまた、フィルムコーティング錠剤で提供され得、そしてこの場合において使用される材料は、例えば、2グループに分割され得る。第1グループは、非腸溶性材料であり、これには、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、プロビドン(providone)、およびポリエチレングリコールが挙げられる。第2グループは腸溶性材料を含み、これは一般に、フタル酸のエステルである。
【0129】
材料の混合物は、最適なフィルムコーティングを提供するために使用され得る。フィルムコーティングは、パンコーターまたは流動床、あるいは圧縮コーティングによって行われ得る。
【0130】
(調製方法)
上記の式Iの化合物は、任意の適切な方法、例えば、所望の材料Q(特に、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステル)を、本発明の式Iのモノもしくはジ有機アミン塩、モノもしくはジアミノ酸塩、またはモノもしくはジアミノ酸エステルを得るのに十分な相対量で、以下の構造を有するA−4ホスフェート(「CA4P遊離酸」)でコーティングすることによって調製され得る(例えば、1:1のモノ有機アミン塩またはモノアミノ酸塩を得るための1:1のモル比、またはジ有機アミン塩を得るための適切な溶媒(例えば、所望のpKaについて選択された溶媒)中の過剰モルの有機アミン):
【0131】
【化29】
CA4P遊離酸は、例えば、前出の実施例に記載されるように、CA4P二ナトリウム塩から得られ得る。化合物Q(例えば、有機アミンまたはアミノ酸)およびCA4P遊離酸は、例えば、適切な溶媒(好ましくは、イソプロパノールのようなC1〜C6アルコール、またはそれらの水性混合物)中で接触され、好ましくは、続いて、式Iの化合物が濾過のような手段によって結晶化化合物として回収される。用語「溶媒」は、単一の溶媒、あるいは混和性または二相の溶媒混合物を形成する2つ以上の溶媒の混合物を含む。所望の場合、化合物Qは、塩の形態、好ましくは薬学的に受容可能な塩の形態で、前出の実施例に記載されるように添加され得る。
【0132】
従って、本発明は、以下の式Iの一般構造を有する化合物を調製するためのプロセスに及ぶ:
【0133】
【化30】
ここで、−OR1または−OR2のうち一方は、−O-QH+であり、他方は、ヒドロキシルまたは−O-QH+であり、
そしてQは、
(A)少なくとも1つの窒素を含む有機アミンであって、この窒素はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の一方はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基はエステルの形態である、アミノ酸、である。本発明のこのような方法は、以下の構造を有するCA4P遊離酸を、溶媒中で、化合物Qと接触させる工程を包含する:
【0134】
【化31】
ここで、Qは、
(A)少なくとも1つの窒素を含む有機アミンであって、この窒素はプロトンと一緒になって、四級カチオンアンモニウムQH+を形成する、有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の一方はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基はエステルの形態である、アミノ酸、である。必要に応じて、本明細書中に記載されるプロセスを用いて精製される本発明の化合物は、溶媒から結晶形態で沈殿され得る。
【0135】
さらに、本発明は、以下の式Iの一般構造を有する化合物を調製するためのプロセスに及ぶ:
【0136】
【化32】
この方法は、上記のように、溶媒中で、CA4P遊離酸を好ましい化合物Q(例えば、ヒスチジン、グリシンC1-6アルキルエステル、または最も好ましくはトロメタミン)と接触させ、次いで、得られたCA4Pヒスチジン、グリシンC1-6アルキルエステル、または最も好ましくは、トロメタミン塩を結晶形態で溶媒から回収する工程を包含する。もちろん、上で説明するように、多数の溶媒が本発明のプロセスにおける用途を有する。特定の例としては、C1-6アルコール(例えば、イソプロパノール)またはそれらの水性混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、化合物CA4Pのモノ−トロメタミン(「CA4Pのモノ−TRIS塩」または「CA4PモノTRIS塩」)を生成する。本発明の別の好ましい実施形態において、本明細書中で記載されるプロセスは、化合物CA4PモノL−ヒスチジンを生成する。
【0137】
化合物Q(有機アミン、アミノ酸、またはアミノ酸エステル)およびCA4P遊離酸の混合物(好ましくは、水溶液のような溶液である)はまた、本発明の実施形態として本明細書中で企図される。従って、本発明は、化合物を混合することによって形成される組成物をさらに提供し、この組成物は、以下:
(a)以下の構造を有するCA4P遊離酸:
【0138】
【化33】
および
(b)化合物Q、を含み、
ここで、Qは、
(A)少なくとも1つの窒素を含む有機アミンであって、この窒素はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の一方はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基はエステルの形態である、アミノ酸、である。
【0139】
必要に応じて、本発明の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み得る。
【0140】
本発明は、本発明の例示として示される、以下の非限定的な実施例を参照することによってよりよく理解され得る。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより十分に例示するために示される。しかしこれらは、決して本発明の広範な範囲の限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0141】
(実施例1)
(CA4Pプロドラッグのモノトロメタミン塩)
本発明の実施形態において、CA4Pモノ−トロメタミン塩は、本発明の化合物の非限定的な例として記載される。本明細書中に記載される情報を使用して、当業者は、例えば、以下に記載される手順と同様の手順(これらの全ては、本発明および添付の特許請求の範囲に包含される)によって、所望の有機アミンをCA4P遊離酸に添加することによって、様々なCA4Pプロドラッグのモノもしくはジ有機アミン塩を容易に生成し得る。
【0142】
(試薬および方法)
全ての試薬および化学物質は、市販の供給源から得、そしてさらに精製することなく使用した:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)(Aaldrich Chemical Co.99.9+%標識、Lot #01404PU)、イソプロピルアルコール(B&J Brand,高純度溶媒等級)。多核NMRスペクトルは、Bruker DRX 400分光計で記録した。1Hおよび13CNMRの化学シフトは、テトラメチルシランに対してppmで報告される。(13C NMRの化学シフトは、メタノール(「MeOH」)を外部標準として使用して決定した)。13C NMRスペクトルは、プロトンデカップル{1H}して得た。2D NMR実験(HMQC(Heteronuclear Multiple Quantum Correlation分光法、どの分子の1Hが13C核(または他のX核)に結合しているかを決定するための逆化学シフト相関実験);ならびにHMBC(Heteronuclear Multiple Bond Corrlation分光法、広範囲の1H−13C連結性、ならびに分子の構造および1Hおよび13C帰属を決定するのに適切な改変されたHMQCの改変バージョン))を、1Hおよび13Cシグナルを構造に帰属するのを助けるように行なった。「CA4P二ナトリウム塩」は、以下の構造を有する化合物である:
【0143】
【化34】
(上記の米国特許第5,561,122号を参照のこと)。
【0144】
(CA4Pモノ−トロメタミン塩)
水性IPA TRIS溶液(0.19M):0.19MのTRIS溶液を、1.61gのTRIS(13.3mmol)を7mLの脱イオン水に添加し、そして得られた水溶液に63mLのイソプロピルアルコール(「IPA」)を添加することによって、調製した(IPA中10%水)。
【0145】
イソプロピルアルコール中のCA4P遊離酸ストック溶液(0.19M):CA4P二ナトリウム塩(12.15g、27.6mmol)を、70mLの脱イオン水に溶解した。酢酸エチル(250mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)を、迅速に撹拌しながら得られた溶液に添加した。白色のケークが形成した。0.5NのHClの溶液(325mL)を滴下して、このケークを溶解した(水層の最終pHは約1であった(pH試験紙))。有機相を分離した。水層を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。有機相を合わせ、そして無水Na2SO4で乾燥した。濾過し、そして溶媒をエバポレート(ロータリーエバポレーター、水浴温度=40℃)して、CA4P遊離酸の厚膜を得、これを100mLのIPAに溶解した。得られた溶液の濃度は、以下の滴定方法を使用して1H NMRによって0.9Mと決定された:45μLのL−ヒスチジン溶液(0.17M)および30μLのCA4P遊離酸溶液を4mLHPLCバイアルにピペットで添加した。溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用して乾固するまでエバポレートした。この固体を、0.7mLのD2Oに溶解し、そして1H NMRによって分析し、1:0.75のヒスチジン対CA4P遊離塩基の比を得た。全部で19mmolのCA4P遊離酸を得た(収率69%)
CA4Pモノ−TRIS塩:200mL丸底フラスコに、上で調製した70mLのCA4P遊離酸溶液(0.19M、13.3mmol)を充填した。上記のように調製した70mLの水性IPA TRIS溶液(0.19M、13.3mmol)を、CA4P遊離酸溶液に迅速に撹拌しながら滴下した。得られた白色スラリーを室温で18時間(一晩)撹拌し、続いて30分間0℃(氷浴)で冷却した。結晶固体をWhatman # 54濾紙を通して濾過することによって単利子、冷却したイソプロピルアルコールで洗浄し、そして空気流で5時間乾燥し、次いで減圧下(真空デシケーター)で113時間乾燥して、7.01gのCA4Pモノ−TRIS塩を白色固体として得た。1H NMR分析の結果は、最終生成物がIPA(約0.9重量%)を残留溶媒(13.4mmol、定量的収率)として含んでいたことを示した。CA4Pモノ−TRIS塩は、式Iaの構造を有し、ここで、コアのフェニル部分に架橋しているオレフィン基は、コンブレタスタチン(combretastatin)A−4ホスフェート出発物質におけるように、シス配置である。
【0146】
(CA4PモノTRIS塩の特徴付け)
(NMRおよび元素分析)
1H NMR(400MHz,D2O)δ 3.52(s,6H,C(15)H3およびC(17)H3),3.56(s,6H,C(20)H2,C(21)H2,C(22)H2),3.59(s,3H,C(16)H3),3.67(s,3H,C(18)H3),6.38(d,J=11.7Hz,1H,C(8)H),6.46(d,J=11.7Hz,1H,C(7)H,6.48(s,2H,C(10)HおよびC(14)H),6.79(d,J=8.8Hz,1H,C(3)H),6.85(broad d,J=8.8Hz,1H,C(4)H),7.06(broad s,1H,C(6)H);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 56.9(2C,C15,C17),57.0(C18),60.3(3C,C20,C21,C22),62.0(C16),62.4(C19),107.5(2C,C10,C14),113.9(C3),122.6(d,Jpc=3.1Hz,C6),125.9(C4),130.0(C8),130.8(C7),131.2(C5),134.7(C9),136.8(C12),142.2(d,Jpc=7.7Hz,C1),150.6(d,Jpc=6.1Hz,C2),153.2(2C,C11およびC13)。分析(C22H32NO11P);計算値:C,51.06;H,6.23;N,2.70;P,5.98。実測値:C,51.07;H,6.39;N,2.58,P,5.93。
【0147】
【化35】
(吸湿性)
この実施例のCA4PのモノTRIS塩は、周囲条件および高湿度条件下で、25℃で実際的に非吸湿性であることが見出された。これは、予想外の結果である。なぜなら、他の塩形態のCA4P遊離酸は、同様の条件下で吸湿性であるからである。CA4PのモノTRIS塩の水分吸着特性を図1に示す。可変相対湿度−X線回折(「RH−XRD」)実験は、この粉末パターンは、25℃の異なる湿度に暴露された場合、変化しないままであることを示した。
【0148】
(多型)
本実施例のCA4PモノTRIS塩の単結晶X線研究は、これが、アキラルなニート形態(N−1)であって、任意の溶媒部位を含まないこと、およびこれが、中心対称の単斜結晶構造であることを実証した。擬態粉末パターン(これは、室温で単斜単結晶構造の正確な原子パラメーターから誘導された)は、観測した粉末パターンと一致する。IPA/水から調製されたモノTRIS塩の数種のロットは、1H NMR、示差走査熱分析(DSC)、示差熱重量分析(TGA)および粉末X線回折(p−XRD)に基づいて再現可能であることを見出した。CA4PモノTRIS塩を、数種の異なる溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、および水)中で、最初に70〜75℃で5〜10分間かけて懸濁し、次いで室温で一晩かけて懸濁した。得られた固相をDSC、TGAおよびp−XRDによって分析した。このスラリーサンプルのいずれも、スラリーまたは乾燥状態のいずれかで任意の溶媒の存在を示さなかった。「現状のままの」材料と比較して、任意のこれらのサンプルにおいて、DSCサーモグラムおよびp−XRDパターンの差異は存在しなかった(図2を参照のこと)。このことは、このN−1形態が、比較的安定な単一多型形態であることを示す。
(他の物理化学的特性)
CA4PモノTRIS塩のDSCサーモグラムは、196℃で単一の融解吸熱を示す(図3)。熱重量分析は、揮発に起因して150℃未満で任意の重量ロスを表さなかった。25℃で、CA4PモノTRIS塩の平衡水溶液は、3.37mg/mL(pH4.8)であると決定された。この水溶液は、pHの増加に伴って増加し、そしてpH8.2で191mg/mLの値に達した。これは、特に、静脈内投与のために、8〜9のpHの範囲で、本実施例の化合物の投与形態を調製するのに適切である(これは、患者に「Ready−to−Use Solutions」を直接投与される溶液または凍結乾燥のためのバッチング溶液である)。CA4PモノTRIS塩のpH溶液プロフィールを、図4に示す。モノTRIS塩はまた、温度および湿度の周囲条件および促進条件に曝露した状態で、固体状態の良好な化学的安定性を示した。
【0149】
従って、この実施例のCA4PのモノTRIS塩は、例えば、経口投与または非経口投与のいずれかを意図するような、薬学的処方物の使用のための、良好な物理化学的特性を有する。本明細書中で意図されないCA4Pの他の塩形態のようではなく、モノTRIS塩は、塩状態、特に、実質的な非吸湿性において予想外の優れた特性を示した。これは、TRIS自体で水溶解度の程度の観点で特に意外であった。
(CA4P モノ−トロメタミン塩(スケールアップ))
(CA4Pの遊離酸溶液(IPA中))
12Lの3つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラーおよびさらなるロートを備えつけた。CA4Pジナトリウム塩の溶液(99.92g、0.227mol)(1.5の脱イオン水および2.0Lの酢酸エチル)を、フラスコに添加した。塩酸溶液(0.5N、950mL、0.475mol)を、迅速に攪拌しながら添加ロートを介してゆっくり添加した(水相の最終のpHが約1(pH紙)であった)。この有機相を分割した。水相を酢酸エチル(5×1.6L)で抽出た。合わせた有機相を、Na2SO4で乾燥した。酢酸エチルをロータリーエバポレートして、濃厚な油状物を形成し、これをIPA(800mL)に溶解した。(CA4Pモノ−TRIS塩)
TRIS(25.0g、0.206mol)の脱イオン水溶液(800mL)を、12Lの3つ口丸底フラスコに充填した。上記のCA4P遊離酸溶液(IPA中)を、迅速に攪拌しながら添加ロートを介してゆっくりと添加した。添加後に、得られた溶液を、CA4Pモノ−TRIS塩でシードし、そしてRTで1時間機械で攪拌した。次いで、さらなるIPA(2.0L)を、このスラリーに添加し、そしてさらに1時間攪拌し続けた。結晶の白色固体を吸引を伴って濾過し、IPA(800mL)で洗浄し、そして真空オーブン中で、4日間約40℃で乾燥して、101.55gのCA4Pモノ−TRIS塩をえた。最終生成物の1H NMR分析は、残渣溶媒(0.186mol、収率86%以上)としてIPA(0.4wt%)を含むことが示された。C22H32NO11Pの分析値:C,51.06;H,6.23;N,2.70;P,5.98。実測値:C,50.95;H,6,14;N,2.69;P,5.82。
【0150】
(実施例2)
(CA4Pプロドラックモノ−トロメタン塩TRIS処方物)
実施例1の化合物(CA4PモノTRIS塩)の水溶液および凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)薬学的組成物を、以下のように調製した。
【0151】
実施例1の化合物の水溶液を、注射用の水(USP)中にこの化合物を溶解することによって得、十分な量のTRIS(トロメタミンベース)の添加を伴って60mg/mLの濃度にしてpH8.5を得た。この溶解を、遮光して実施した。
【0152】
次いで、凍結乾燥物を、以下の手順により得た。上で形成した溶液を、適切な0.2ミクロンの滅菌フィルターを介して濾過し、そして滅菌ガラスバイアル中にアリコートした。この溶液を、24時間から72時間の期間にわたって減圧下で35℃でVertis Lyophilizerで凍結乾燥し、次いで、24時間から48時間かけて減圧下で5℃でさらに乾燥して、凍結乾燥物を得た。
【0153】
実施例1の化合物を含む他の薬学的組成物は、これらの手順に従って調製し得る。例えば、上記のように、バルク試薬(例えば、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸、スクロース、ラクトース、マンニトールのような糖、ポリビニルピロリドンまたはデキストランのようなポリマーなど)、あるいは他の賦形剤が、上記の溶液に添加され得る。
【0154】
例えば、実施例1の化合物の水溶液を、注射用の水(USP)中にこの化合物を溶解することによって得、適切なバルク試薬(例えば、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸、スクロース、ラクトース、マンニトールのような糖、ポリビニルピロリドンまたはデキストランのようなポリマーなど、あるいはそれらの組合せ)の添加を伴って30mg/mLにし、そして十分な量のTRIS(トロメタミンベース)の添加を伴って100mg/mLの濃度にした。この溶解を、遮光して実施した。
【0155】
次いで、凍結乾燥物を、以下の手順により得た。上で形成した溶液を、適切な0.2ミクロンの滅菌フィルターを介して濾過し、そして滅菌ガラスバイアル中にアリコートした。この溶液を、24時間から72時間の期間にわたって減圧下で−10℃でVertis Lyophilizerで凍結乾燥し、次いで、24時間から48時間かけて減圧下で5℃でさらに乾燥して、凍結乾燥物を得た。
【0156】
上記で説明されるように、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、および2−(4−イミダゾリル)エチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない、任意の適切な有機アミンは、上記の実施例のトロメタミンと容易に置換され、本発明の化合物または組成物を得る。Qが式I内の他の規定を有する組成物が、同様に形成され得る。
【0157】
(実施例3)
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩プロドラック)
本発明の実施形態において、CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩は、本発明の化合物の非限定的な例として記載される。本明細書中に記載される情報により、当業者は、種々のCA4Pモノまたはジ−アミノ酸塩プロドラックを、例えば、上記と同様の手順により、所望のアミノ酸をCA4P遊離酸に添加することによって生成する(これらの全ては、本発明および添付の特許請求の範囲によって包含される)。
【0158】
(試薬および方法)
以下の試薬および化学物質は、市販の供給源から得られ、そしてさらなる精製なしで使用した:L−ヒスチジン(Aldrich Chemical Co.98%標識,Lot # 04821JR)、メタノールおよびイソプロピルアルコール(B&B Brand,High purity solvent grade)。「CA4Pジナトリウム塩」は、以下の構造を有する化合物である(上記の米国特許第5,561,122号を参照のこと):
【0159】
【化36】
多重核NMRスペクトルを、Brucker DPX300およびDRX400スペクトルで記録した。1Hおよび13C NMR化学シフトを、テトラメチルシランと比較したppmで報告する(この13C NMR化学シフトを、外部基準としてメタノールを使用して決定した)。この31P NMRの化学シフトを、85%のH3PO4(外部標準)と比較したppmで報告する。この13Cおよび31P
NMRスペクトルを、プロトンデカップリング{1H}を用いて獲得した。この2D NMR実験(HMQCおよびHMBC)を、この構造に対する1Hおよび13C NMRシグナルのアサイメントを助けるために処理した。DSCを、CSC/2920 Differential Scanning Calorimeter,TA Instrumentsを用いて実施した。
【0160】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩)
(L−ヒスチジン水性ストック溶液(0.2M))
L−ヒスチジン(0.3167g、2.0mmol)を10mLの脱イオン化水に溶解し、0.2Mの溶液を形成した。
【0161】
(メタノール(0.6M)中のCA4Pの遊離酸ストック溶液)
CA4Pジナトリウム塩(1.9194g)を、5mLの脱イオン化水に溶解した。塩化ナトリウム飽和水溶液(40mL)を、得られた溶液に添加した。白色固体を沈殿させた。酢酸エチル(50mL)を添加し、そして得られたスラリーを機械で攪拌し、そして2層の混合物が透明となるまで、0.5Nの塩酸溶液で酸性化した(水相は、酸性であった(pH紙))。この有機相を分割した。この水相を酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。有機相を合わせて、そしてNa2SO4で乾燥した。濾過し、そして溶媒をエバポレート(ロータリーエバポレーター、水浴の温度=37℃)して、CA4P遊離酸の厚手のフィルムを得、これを、10mLのメタノールで溶解した。このメタノールを、ロータリーエバポレーターにかけて(37℃)、オフホワイトの泡状物(1.52g)を得、これをMeOH(4.79mL)に再溶解し、予想された0.8Mの濃度を有する溶液を得た。
【0162】
上記で決定した濃度を、25μLのCA4P遊離溶液を含む0.2Mのヒスチジン溶液(20μmol)(100μL)を混合することによって確認した。得られた溶液の溶媒を、ロータリーエバポレートして、乾燥した。この固体を、1:0.75のモル比のヒスチジン:CA4P遊離酸を示すために1H NMRによって分析した。従って、CA4P遊離酸の濃度は、0.6Mと示された。(この結果を、CA4P遊離酸の泡状物が溶媒を含むことを示す)。
【0163】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩)
4mLのHPLCバイアルに、L−ヒスチジン(900μL、0.2M、180μmol)、CA4P遊離酸(300μL、0.6M、180μL)、およびイソプロピルアルコール(1.0mL)を添加した。得られた溶媒を、ロータリーエバポレート(水浴の温度=39〜40℃)して、減圧下で約1.5mLまで減少させた。イソプロピルアルコールの別の1.0mLを添加して、そしてこの体積を約1.5mLまでさらに減少させた。少量の結晶体を、溶媒中で得た。エバポレーションプロセスを止め、そしてこのバイアルをキャップし、周囲温度で5時間静置させた。この結晶固体を、吸引を伴って、Whatman # 54フィルター紙を介して濾過することによって単離し、イソプロピルアルコール(約2mL)で洗浄し、そして窒素気流下で一晩かけて乾燥し、82.7mgのCA4Pモノ−L−ヒスチジンを白色固体として得た。得られたCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩プロドラックは、結晶固体であった;固体のKarl Fisher分析により、この水内容物が4.66%であったことを示した。これは、1つの塩分子当たり1.5個の水分子を有する水和物の結晶固体として計算した(143μmol,79%の収率):1H NMR(300MHz,D2O)δ 3.33(d,J=6.59Hz,2H,C(21)H2),3.67(s,6H,C(15)H3およびC(17)H3),3.74(s,3H,C(16)H3),3.82(s,3H,C(18)H3),4.01(t,J=6.50Hz,IH,C(20)H),6.53(d,J=12.25Hz,1H,C(8)H),6.62(d,J=12.25Hz,1H,C(7)H),6.62(s,2H,C(10)HおよびC(14)H),6.94(d,J=8.00Hz,1H,C(3)H),7.01(d,J=8.00Hz,1H,C(4)H),7.21(s,1H,C(6)H),7.37(s,1H,C(23)H,8.63(s,1H,C(24)H);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 26.12(C21),53.93(C20),56.26(2C,C15,C17),56.35(Cl8),61.32(C16),106.86(2C,C10,C14),113.26(C3),118.03(C23),122.04(d,JPC=2.3Hz,C6),125.52(C4),127.80(C22),129.40(C8),130.05(C7),130.57(C5),133.99(C9),134.34(C24),136.18(C12),141.37(d,JPC=6.90Hz,Cl),150.01(d,JPC=4.60Hz,C2),152.52(2C,C11およびC13),172.87(C19);31P NMR(121MHz,{1H),D2O)δ−2.61(s)。C24H30N3O10P・1.5 H2Oの計算値:C,49.83;H,5.75;N,7.26。実測値:C,50.13;H,5.78;N,7.26。
【0164】
この手順の生成物のKarl Fisherおよび元素分析により、結晶塩がセスクイハイドレートであることを示した。このDSC分析は、158.6degCに融解吸熱を有する1つのメジャーな結晶形態を示した(図5を参照のこと)。この材料に関して得られた粉末X線データを、図8(トップパターン)に示した。
【0165】
多型の差異を、結晶混合物の全体積に関してCA4P遊離酸のmmolの関数として室温において観測した。上の手順において、結晶混合物の全体積の1ml当たり、0.2mmolのCA4P遊離酸を使用した。結晶混合物の全体積の1ml当たり0.03mmolのCA4P遊離酸が使用されるような、上記手順の改良により、塩の1分子当たり1.8の水分子を有するCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態を提供した(図6を参照のこと、試料サイズ3,8500mg;このDSC分析により、184.9decCにおいて融解吸熱を有する1種の結晶形態を示し、そして1H NMR分析により、CA4P:ヒスチジン=1:1の比を示した)。この材料に関して得られた粉末X線データが、図8(ボトムパターン)に示される。結晶混合物の全体積の1ml当たり0.07mmolのCA4P遊離酸が使用されるような、上記手順の改良により、CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態の混合物を提供し、一方は、塩の1分子当たり1.5の水分子を有し、そして他方は、塩の1分子当たり1.8の水分子を有した(図7を参照のこと、試料サイズ4,4500mg)。この混合物のKarl Fisherおよび元素分析により、結晶塩がセスクイハイドレートであることが示された。このDSC分析は、2つの結晶形態を例示する。この吸熱は、それぞれ図5および6のものと類似していた。この材料から得られた粉末X線データを、図9に示す。このDSCおよび粉末X線データは、上記の1.5:1および1.8:1(水:塩)形態は、2種類の異なる結晶形態であることを示した。上記のように、これらの形態の混合物は、容易に形成される。シーティング(seeding)により、各形態は、純粋な状態で作製された。
【0166】
ヘミヘプタハイドレートCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態はまた、水の存在下で得られ得る。しかし、この形態は、セスクイハイドレートCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態に変換する。
【0167】
上記で説明されるように、オルニチン、リジン、アルギニン、およびトリプトファンが挙げられるが、これらに限定されない種々の天然または非天然のアミノ酸は、上記のヒスチジンと容易に置換され得、本発明の化合物を生成する。
【0168】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩(スケールアップ))
(L−ヒスチジン水性ストック溶液(0.2M))
L−ヒスチジン(1.90g、12.0mmol)を、脱イオン化水(60mL)中に溶解し、0.2Mの溶液を形成する。(この溶液をまた、インサイチュで調製し得る)。
【0169】
(イソプロピルアルコール(IPA)中のCA4P遊離酸ストック溶液(0.17M))
CA4P遊離酸を、以下の手順で調製し得る。酸性等価物を、2.1まで下げ、塩化ナトリウムの添加は、必要ではない。以下の手順は例示であり:CA4Pジナトリウム塩(8.94g、20.3mmol)を、イオン化水(50mL)中に溶解した。酢酸エチル(200mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)を、迅速に攪拌した状態の得られた溶液に添加した。白色のケークを形成した。0.5Nの塩酸溶液(220mL)を、滴下添加し、このケークを溶解した(水相の最終pHは、約1(pH紙)であった)。有機相を分配した。この水相を酢酸エチル(1×200mL、次いで、2×150mL)で抽出した。この有機相を合わせて、そしてNa2SO4で乾燥した。濾過し、そして溶媒をエバポレート(ロータリーエバポレーター、水浴の温度=40℃)して、CA4P遊離酸の厚手のフィルムを得、これを、100mLのIPAに溶解した。得られた溶液の濃度は、1H NMRにより0.17であると決定した。
【0170】
上記で決定した濃度を確認するために、60μLのヒスチジン溶液(0.2M)および70μLのCA4Pの遊離酸溶液を、4mLのHPLCバイアル中にピペットした。この溶媒をロータリーエバポレートして、乾固させた。この固体を、0.7mLのD2O中に溶解し、そして1H NMRによって分析し、1:1のヒスチジン:CA4Pの遊離酸を得た。CA4Pの遊離酸の全部で1.7mmolが、得られた(84%の収率)。
【0171】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩(スケールアップ))
250mLの丸底フラスコを、70.4mLのCA4P遊離酸溶液(0.17M、12.0mmol)および50mLのIPAで充填した。L−ヒスチジンの溶液(60mL、0.2M、12.0mmol)を、迅速に攪拌するCA4P遊離酸溶液に滴下添加した。得られた白色のスラリーを、40℃で30分間、周囲温度で3時間攪拌し、続いて、1時間0℃まで冷却した(氷浴)。結晶固体を、吸引を伴う、Whatman # 54濾紙を介する濾過により単離し、冷却イソプロピルアルコールで洗浄し、そして減圧下(真空デシケータ)で88時間乾燥して、白色固体として6.07gのCA4Pモノ−L−ヒスチジンを得た。固体のKarl Fisher分析により、水内容物が4.48%であることを示した。1つの塩分子当たり1.5個の水分子を有する水和物の結晶固体として計算した(10.5mmol、87%収率):1H NMR(300MHz,D2O)δ 3.32(d,J=6.6Hz,2H,C(21)H2),3.68(s,6H,C(15)H3およびC(17)H3),3.74(s,3H,C(16)H3),3.82(s,3H,C(18)H3),4.00(t,J=6.6Hz,1H,C(20)H),6.53(d,J=12.1Hz,1H,C(8)H),6.62(d,J=12.1Hz,1H,C(7)H),6.64(s,2H,C(10)HおよびC(14)H),6.95(d,J=8.3Hz,1H,C(3)H),7.02(d,J=8.3Hz,1H,C(4)H),7.20(ブロード,lH,C(6)H),7.36(ブロード,1H,C(23)H,8.62(d,J=1.3Hz,1H,C(24)H);13CNMR(100MHz,{1H},D2O)δ 26.11(C21),53.92(C20),56.22(2C,C15,C17),56.32(C18),61.28(C16),106.82(2C,C10,C14),113.20(C3),118.03(C23),122.01(dq,JPC=2.3Hz,C6),125.48(C4),127.78(C22),129.38(C8),129.97(C7),130.54(C5),133.92(C9),134.31(C24),136.16(C12),141.38(d,JPC=6.1Hz,C1),149.98(d,JPC=5.4Hz,C2),152.48(2C,C11およびC13),172.86(C19)。C24H30N3O10P・1.5H2Oの計算値:C,49.82;H,5.75;N,7.26;P,5.35。実測値:C,49.92;H,5.84;N,7.26;P,5.84。さらに、示差走査熱量計を使用して、得られた化合物が、158℃に大量に吸熱を有し、そして174℃に少量の吸熱を有することが決定された。
【0172】
任意の適切な天然または非天然のアミノ酸は、本発明の他の化合物を産生するための手順に容易に置換され得る。
【0173】
CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩を室温で結晶化させて、水和物が一般に得られる。上記の室温よりも高い温度(特に、70℃よりも高い温度)で、結晶化プロセスを実施し、無水物塩が得られる。ヒドラジン塩水和物は、例えば、溶媒(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、またはアセトン)中でハイドレート形態を、40℃のような温度で(例えば、2日間かけて)、スラリーすることによって、無水結晶形態に(特に、210℃で溶融して)変換し、続いて、濾過し、洗浄し、そして45℃のような温度で(例えば、一晩かけて)、減圧乾燥した。この無水形態(特に、非吸湿性)が好ましい。
【0174】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩)
200mLの丸底フラスコを、L−ヒスチジン(0.2620g、1.65mmol)および16.5mLのイオン化水で充填した。得られた溶液を、74〜76℃(油浴温度)でマグネチックスターラーを用いて加熱した。CA4P遊離酸の溶液(8.7mL、0.19M(IPA中)、1.65mmol)を添加して、続いて、イソプロピルアルコール(90mL)を添加した。得られた溶液を、約1分間で乳状にした。75〜76℃で2時間攪拌し続けて、次いで、周囲温度で1時間攪拌した。針結晶固体を、吸引を伴って、Whatmann #4濾紙を介して濾過することによって単離し、そして空気(吸引)の気流かで一晩(19.5時間)乾燥し、真空デシケーター中で24時間乾燥し、白色固体として0.7788gのCA4Pモノ−L−ヒスチジンを白色固体として得た(1.41mmol,86%収率):mp 211.49℃(DSC);1H NMR(40OMHz,D2O)δ 3.30(d,J=6.5Hz,2H、H−21),3.65(s,6H,H−15およびH−17),3.72(s,3H,H−16),3.80(s,3H,H−18),3.99(t,J=6.5Hz,1H,H−20),6.50(d,J=12.3Hz,1H,H−8)、6.59(d,J=12.3Hz,1H,H−7),6.60(s,2H,H−10およびH−14),6.92(d,J=8.5Hz,1H,H−3),6.97(ブロードd,J=8.5Hz,1H,H−4),7.19(ブロードs,1H,H−6),7.33(ブロードs,1H,H−23),8.58(ブロードs,1H,H−24);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 27.11(C−21),54.88(C−20),57.17(2C,C−15およびC−17),57.24(C−18),62.24(C−16),107.77(2C,C−10およびC−14),114.17(C−3),118.90(C−23),122.93(d,JPC=2.3Hz,C−6),126.40(C4),128.88(C−22),130.29(C−8),131.00(C−7),131.47(C−5),134.93(C−9),135.32(C−24),137.08(C−12),142.31(d,JPC=6.1Hz,C−1),150.91(d,JPC=4.6Hz,C−2),153.45(2C,C11およびC−13),173.84(C−19)。C24H30N3O10Pの計算値:C,52.27;H,5.48;N,7.62;P,5.61。実測値:C,52.03;H,5.43;N,7.57;P,5.57。
【0175】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物(スケールアップ))
2000mLの3つ口丸底フラスコは、マグネチックスターラー、500mLの添加ロート、およびサーモカップルを備え、このサーモカップルは、加熱マントルを制御するTherm−O−Wathch L7−1100SA/28Tに連結した。L−ヒスチジン(3.42g、21.6mmol)をフラスコに添加し、続いて、216mLの脱イオン化水に添加した。得られた溶液を、攪拌しながら74〜80℃に加熱した。CA4P遊離酸(120mL、0.18M(IPA),21.6mmol)を添加し、続いて、添加ロートを介して溶液の温度を73〜74℃を維持するような速度で添加した(14分必要とした)。IPAの添加後に、得られた透明な溶液を、CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩(トレース量)でシードした。この溶液の温度を80℃まで上昇させ、そしてシードの約3分後に結晶化が起こった。この温度を30分かけて74℃までゆっくりと下げ、そしてさらに1.5時間73〜74℃に維持した。この反応混合物を、3.5時間で31℃にゆっくりと冷却した。針結晶固体を、吸引を伴ってWhatman#4濾紙で濾過紙、IPA(100mL)を用いて洗浄し、そして空気(吸引)下で一晩(16時間)かけて乾燥し、そして真空デシケーター中で21.5時間乾燥し、10.11gのCA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩を白色固体(18.3mmol、85%収率)を得た:mp 213.65℃(DSC);1H NMR(400MHz,D2O)δ 3.30(d,J=6.5Hz,2H,H−21),3.65(s,6H,H−15およびH−17),3.72(s,3H,H−16),3.80(s,3H,H−18),3.99(t,J=6.5Hz,1H,H−20),6.49(d,J=12.0Hz,1H,H−8),6.58(d,J=12.0Hz,1H,H−7),6.59(s,211,H−10およびH−14),6.91(d,J=8.5Hz,1H,H−3),6.97(dd,J=8.3,1.7Hz,1H,H−4),7.19(ブロードt,J=1.7Hz,1H,H−6),7.34(ブロードs,1H,H−23),8.60(d,J=1.4Hz,1H,H−24);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 27.07(C−21),54.86(C−20),57.18(2C,C−15およびC−17),57.26(C−18),62.24(C−16),107.78(2C,C−10およびC−14),114.18(C−3),118.94(C−23),122.95(d,JPC=2.3Hz,C−6),126.43(C−4),128.79(C−22),130.31(C−8),130.98(C−7),131.49(C−5),134.91(C−9),135.29(C−24),137.10(C−12),142.31(d,JPC=6.9Hz,C−1),150.92(d,JPC=4.6Hz,C−2),153.45(2C,C−11およびC−13),173.82(C−19)。C24H30N3O10Pの計算値:C,52.27;H,5.48;N,7.62;P,5.61。実測値:C,52.23;H,5.35;N,7.60;P,5.55。
【0176】
CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩を、単結晶形態として再現可能に作製した。図10は、DSC(サンプルサイズ2.3600mg)を示し;図11は、この材料の粉末X線データを示す。
【0177】
【化37】
(実施例4)
(シスCA4Pモノグリシンメチルエステルの調製)
CA4PジナトリウムからCA4Pモノグリシンメチルエステルを調製するための以下の手順は、有用である。この手順は、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの存在下でグリシンメチルエステルヒドロクロリドを直接使用することで、グリシンメチルエステル遊離塩基を使用する調製と比較して増強した安定性を提供する。さらに、CA4P遊離酸の調製が有意に改良され、濃縮した硫酸(例えば、希塩酸ではない)は、中和に使用される(例えば、抽出のための酢酸エチルを使用し、次いでエバポレーションにより除去される)。このトランス−CA4Pの形成は、この改良手順において避けられる。
【0178】
(試薬および方法)
以下の試薬および化学物質は、市販の供給源から得られ、そしてさらなる精製なしで使用された:イソプロピルアルコール(IPA)(B&J Brand,高度の精製溶媒グレード)、硫酸(EM Science,95〜98%,Lot # 35310)、グリシンメチルエステルヒドロクロリド(Aldrich Chemical Co.99%標識,Lot # 03214MU)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(Aldrich Chemical Co.99.5%標識、Lot # 02819 ER)。多重核NMRスペクトルを、Brucker DRX400スペクトルで記録した。1Hおよび13C NMR化学シフトを、テトラメチルシランと比較したppmで報告する(この13C
NMR化学シフトを、外部基準としてメタノールを使用して決定した)。この2D NMR実験(HMQC(Heteronuclear Multiple
Quantum Correlation spectroscopy)、どの分子の1Hが、どの13C核(または他のX核)に結合するかを決定する逆化学シフト相関実験)];およびHMBC(Heteronuclear Multiple Bond Correlation spectroscopy)長い範囲の1H−13Hの相関、ならびに分子の構造、1Hおよび13Cのアサイメントを決定するのに適した、改良されたHMQCのバージョン)を、この構造に対する1Hおよび13C NMRシグナルのアサイメントを助けるために処理した。示差走査熱分析(DSC)を、CSC/2920 Differential Scanning Calorimeter,TA Instrumentsを用いて実施した。
【0179】
(シスCA4Pモノグリシンメチルエステル塩)
100mLの丸底フラスコを、シスCA4Pジナトリウム塩(2.866g、6.51mmol)およびIPA(30mL)で充填した。得られたスラリーを、周囲温度で機械で攪拌した。硫酸(0.365mL、6.51mmol)のIPA溶液(60mL)を、このスラリーに滴下添加した。この混合物を、連続的に約10分間攪拌し、そしてWhatman #1濾紙を使用して、吸引を伴って濾過した。この固体(IPAに溶解されるNa2SO4)を、IPA(10mL)で洗浄した。濾過しそして洗浄し、CA4P遊離酸を含むものを、別の100mLの丸底フラスコに合わせた。グリシンメチルエステルヒドロクロリド(0.826g、6.51mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.254mL、7.16mmol)を、合わせた溶液に添加した。得られた混合物を、機械で攪拌しながら油浴中で加熱した。60℃で、この混合物は、透明な液体となった。65℃で、この溶液は、スラリーとなった。78℃で、このスラリーは溶解し、透明な溶液を形成した。加熱をストップし、そしてこの溶液を油浴中でゆっくりと冷却させた。60℃で、シスCA4Pモノグリシルメチルエステル塩のシードを、溶液に添加して、スラリーを形成した。60℃〜周囲温度まで約1時間かけて攪拌し続け、次いで、周囲温度で一晩攪拌した。この白色の結晶固体を、Whatman #1濾紙を使用して吸引を伴って濾過することによって単離し、そしてIPA(3×10mL)で洗浄し、そして6時間空気の流れで乾燥し、2.609gのシスCA4Pモノグリシンメチルエステル塩(5.38mmol,82.6%収率)を得た:HPLC分析,100%のシス−CA4P;mp 136.40℃(DSC);1H NMR(400MHz,D2O)δ
3.52(s,6H,H15およびH−17),3.61(s,3H,H−16),3.71(s,3H,H−18),3.77(s,3H,H−21),3.87(s,2H,H−20),6.26(d,J=12.1Hz,1H,H−8),6.42(s,2H,H−10およびH−14),6.43(d,J=12.1Hz,1H,H−7),6.70(d,J=8.8Hz,1H,H−3),6.79(ブロードd,J=8.8Hz,1H,H−4),7.16(ブロードs,1H,H−6);13CNMR(100MHz,{1H},D2O)δ 41.27(C−20),54.58(C−21),56.99(2C,C−15およびC−17),57.21(C−18),62.09(C−16),107.60(W,C−10およびC−14),113.89(C−3),122.98(C−6),126.22(C−4),130.25(C−8),130.69(C−7),131.37(C−5),134.61(C−9),137.09(C−12),142.42(d,2JPC=6.9Hz,C−1),150.89(d,3JPC=4.6Hz,C−2),153.33(2C,C−11およびC−13),169.95(C−19)。C21H28NO10P:C,51.96;H,5.81;N,2.88;P,6.38の計算値。実測値:C,51.74;H,5.79;N,2.87;P,6.30。
【0180】
【化38】
(注記:上記の番号付けシステム(このような番号付けシステムが、本明細書中で記載される場合はいつでも)は、便宜のためだけであり、IUPACの命名法とは一致しないかもしれない)。
【0181】
シスCA4Pモノグリシルメチルエステル塩(サンプルサイズ:3.7400mg)のDSCは、図12に示され;図13は、この材料の粉末X線データを示す。
【0182】
(実施例5)
(CA4P遊離酸のグリシンエチルエステル塩の調製)
酢酸エチル(2mL)、CA4Pイソプロパノール溶液(0.42Mの溶液(150μL)、63μmol)およびグリシンエステルtert−ブチルエステル溶液(0.08Mの溶液(800μL)、64μmol)を、HPLCバイアルに添加し、約3分間激しく攪拌した。得られた透明な溶液を、別の実験からのスラリーの滴でシードし、そしてこの混合物を、周囲温度で一晩放置した。結晶ではない、形成された白色の固体は、顕微鏡実験に基づいており、この混合物は、3日間以上、周囲温度で放置した。メチルtert−ブチルエーテル(1mL)を添加し、そしてこの混合物を約10分間攪拌した。得られた混合物の顕微鏡実験は、この固体が結晶針に変えられることを示した。この針状物を減圧濾過によって単離し、そして乾燥してCA4Pのグリシンエチルエステル塩(22.4mg、66M%収率)を得た。プロトンNMR分析は、グリシンエステルエーテル:CA4Pの比が1.7:1であることを示した。CA4Pグリシンエチルエステルの1H NMRデータ:1H NMR(300MHz,D2O)δ 1.20(t,J=7.2Hz,3H,CH3),3.60(s,6H,H−15およびH17),3.66(s,3H,H−16),3.74(s,3H,H−18),3.79(s,2H,CH2N),4.21(q,J=7.2Hz,2H,CH2CH3),6.44(d,J=12.2Hz,1H,H−8),6.55(d,J=12.2Hz,1H,H−7),6.57(s,2H,H−10およびH−14),6.80(d,J=8.7Hz,1H,H−3),6.85(ブロードd,J=8.7Hz,1H,H−4),7.23(ブロードs,1H,H−6)。
【0183】
本発明は、本明細書中に記載される特定の実施形態によって範囲を限定されない。さらに、本明細書中に記載されるものに加えて、本発明の種々の改変は、上記の記載から当業者に明らかとなる。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ると意図される。
【0184】
種々の刊行物および特許文献は、本明細書中で引用される、これらの開示は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1は、CA4PのモノTRIS塩(実施例1において調製された)の、25℃での水分の吸着/脱離プロフィールを示す。このデータは、VTI Model MB−30OW Moistureバランスを使用して、10%の増分で10%〜90%の相対湿度レベルで得た。各湿度での最大平衡時間を、4時間に設定した。
【図2】図2は、CA4PのモノTRIS塩(実施例1で調製した)のサンプルの粉末X線回折パターンを示し、このサンプルは、異なる溶媒(水、イソプロパノール、エタノール、アセトニトリルおよびアセトン)中で、最初に70〜75℃で5〜10分間、次いで室温で一晩スラリーにした。このX線回折図を、Rigaku Model Miniflex X線回折計を使用して、1分当たり1°の走査速度で2°〜40°2θでCu−Kα源を用いて記録した。
【図3】図3は、1分当たり10℃の加熱速度で窒素流下で得られた、CA4PモノTRIS塩(実施例1で調製した)の示差走査熱分析(DSQ自記温度記録図(Model DSC 2910,TA機器)を示す。
【図4】図4は、CA41モノTRIS塩(実施例1で調製した)の、25℃でのpH−溶解度プロフィールを示す。このpHは、水酸化ナトリウムを用いて調整した。
【図5】図5は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)(2.0900mgのサンプルサイズ)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図6】図6は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図7】図7は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図8】図8は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【図9】図9は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【図10】図10は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン無水物塩(実施例3で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図11】図11は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン無水物塩(実施例3で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【図12】図12は、CA4Pモノグリシンメチルエステル塩(実施例4で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図13】図13は、CA4Pモノグリシンメチルエステル塩(実施例4で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【技術分野】
【0001】
本願は、米国出願番号第60/232,568号(2000年9月14日出願)および米国出願番号第60/251,621号(2000年12月7日出願)に優先権を主張する(これら仮出願の両方は、本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4(CA4)ホスフェートプロドラッグモノおよびジアミン塩、モノおよびジアミノ酸塩、およびモノおよびジアミノ酸エステル塩に関し、これらの塩は、ネイティブなコンブレタスタチンA−4より大きな溶解度を有し、そして生理学的条件下でコンブレタスタチンA−4を迅速に再生する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
癌は、重篤かつ拡張する疾患である。National Cancer Instituteは、米国のみにおいて、3人のうちの1人が、その生涯の間に癌に罹患すると推定している。さらに、癌に罹患した人々の約50%〜60%が、最終的にこの疾患により死亡する。従って、1970年代初期のNational Cancer Instituteの設立以来、癌研究に向かう資金の量が劇的に増加した。
【0004】
癌は、単一の疾患であると一般に考えられるが、これは実質的に、疾患のファミリーを含み、ここで、正常な細胞分化が、それが異常でかつ制御されないように改変されている。その結果、これらの悪性細胞は、急速に増殖する。最終的に、細胞は、それらの起源から広がりまたは転移し、そして他の組織に定着し、最終的に宿主を殺す。現在観察される広範な種々の癌に起因して、種々のストラテジーが、身体内の癌を破壊するために、開発されている.1つのこのような方法は、細胞傷害性化学療法剤を使用する。これらの化合物は、悪性細胞を破壊する目的で癌患者に投与されるが、正常な健康な細胞には影響を及ぼさない。このような化合物の特定の例としては、5−フルオロウラシル、シスプラチン、およびメトトレキサートが挙げられる。
【0005】
コンブレタスタチンA−4は、最初に、アフリカ木combretum caffrum(Combretaceac)の茎木材から単離され、そしてミクロブロブリンアセンブリの強力なインヒビターであることが見出された。さらに、コンブレタスタチンA−4は、米国National Cancer Institute(NCI)のマウスL1210およびP338リンパ性白血病細胞株に対して有意に活性であることが見出された。さらに、コンブレタスタチンA−4は、コンブレタスタチンA−1(チューブリンに結合するコルヒチンのインヒビターとして、combretum caffrumから単離された別の化合物)と競合することが見出された。これはまた、VoLo、DLD−1およびHCT−15ヒト結腸癌(ED50<0.01(μg/ml))細胞系列を強力に抑制し、そしてCombretum caffrum成分の中から見出された強力な抗有糸分裂薬の1つであることが決定された(米国特許第4,996,237号)。
【0006】
その結果、種々のヒト癌を治療する際の化学治療剤としてのコンブレタスタチンA−4の効力を決定するために、研究が、実施された。不運にも、コンブレタスタチンA−4は、実質的に水中で不溶性である。この特性は、コンブレタスタチンA−4を含む薬学的組成物の開発を有意に妨害する。その溶解度およびその効力を増加させるために、生理学的条件でコンブレタスタチンA−4を再生するコンブレタスタチンA−4のプロドラッグ誘導体を生成するための努力がなされている。例えばKoji Ohsumiらは、コンブレタスタチンアナログのアミノ酸HClプロドラッグの合成を記述し、ここで、アミノ酸塩は、塩基性アミノ基を含むコンブレタスタチン誘導体のアミノ基に結合される[これらの誘導体は、Ohsumiら、Anti−Cancer Drug Design,14,539−548(1999)に記述される]。このようなプロドラッグは、ネイティブなコンブレタスタチンA−4と比較して増加した溶解度を有し得るが、それらは、コンブレタスタチンA−4の再生がこのプロドラッグが投与される被験体の血液中の内因性アミノペプチダーゼに依存するという固有の制限を有する。
【0007】
コンブレタスタチンA−4ホスフェートの遊離酸(「CAP遊離酸」)は以下の構造:
【0008】
【化15】
を有し、油状塊として存在する。このCA4P遊離酸は、元来、水中で25℃で非常に少ししか溶解せず(USPの規定による)、水での溶解度は、pHの増加と共に増加する。これは、2つの酸性基(1.2および6.2のpKaを有する)を有し、これらは、塩形成を可能にする。その物理的状態に起因して、CA4P遊離酸を取り扱う実際的な問題が存在するので、この化合物の結晶状態の、安定な塩形態の同定が所望される。
【0009】
コンブレタスタチンA−4を誘導体化する際の試みは、コンブレタスタチンA−4ホスフェートの塩誘導体(「CA4P」の塩誘導体)を形成することに関係する。このような塩の特定の例は、特許文献1に記載される。これらのプロドラッグ塩は、ネイティブのコンブレタスタチンA−4より大きな溶解度を有するが、これらはまた、吸湿性のような固有の欠点を有し得る。
【0010】
吸湿性は、塩の選択におけるいくつかの重要な基準の1つである。K.Morrisら、「An Integrated Approach to the Selection of Optimal Salt Form for a New Drug Candidate」Int.J Pharm.,105,209−217(1994)を参照のこと。任意の薬物物質についての吸湿性の程度は、その取り扱いおよび薬物の寿命にわたる安定性に対する有意な影響を有する。
【特許文献1】米国特許第5,561,122号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、必要とされるのは、好ましい物理化学的特性を有する、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4プロドラッグ塩であり、そしてこれは、広範な種々の腫瘍性障害を処置する際の、コンブレタスタチンA−4の溶解度、好ましくは効力を増加させる。
【0012】
また必要とされるのは、インビボでネイティブなコンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そして再生を受ける場合に、所望されないまたは潜在的に有害な副産物を生成しない、新規で有用なコンブレタスタチンA−4プロドラッグ塩である。
【0013】
本明細書中の任意の参考文献の引用は、このような参考文献が、本願発明に対する「先行技術」として利用可能であるという承認として解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明に従って、新規かつ有用なコンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩が提供され、これらの塩は、ネイティブなコンブレタスタチンA−4よりも大きな溶解度を有し、そしてコンブレタスタチンA−4をインビボで容易に再生する。本発明はまた、従来公知のコンブレタスタチンA−4プロドラッグ塩よりも有意に低吸湿性(例えば、温度および湿度の環境条件下で、物理的形態における有意な変化を起こさない)で、改善された取り扱いおよび安定性を有する化合物を提供し、そしてこの化合物は、注入部位での痛みを最小化または排除するpHで溶液を形成し得る。従って、本発明の化合物は、薬学的使用について相当な利点を提供する。
【0015】
本発明は、以下を提供する。
(項目1) 式I:
【化1】
の一般構造を有する化合物であって、ここで:
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、化合物。
(項目2) Qが、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンであり、該窒素原子が、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目1に記載の化合物。
(項目3) 前記式Iにおいて前記四級アンモニウムカチオンQH+を形成するQの窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンであり、ここで、該任意の置換基は、1つ以上のヒドロキシルまたはアミノ基である、項目2に記載の化合物。
(項目4) 前記有機アミンが、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、または2−(4−イミダゾリル)エチルアミンである、項目2に記載の化合物。
(項目5) 前記化合物が、式Ia:
【化2】
の構造を有する、項目2に記載の化合物。
(項目6) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目1に記載の化合物。
(項目7) 前記アミノ酸がヒスチジンである、項目6に記載の化合物。
(項目8) 前記アミノ酸がリジンである、項目6に記載の化合物。
(項目9) 前記アミノ酸がアルギニンである、項目6に記載の化合物。
(項目10) 前記アミノ酸がトリプトファンである、項目6に記載の化合物。
(項目11) 前記アミノ酸がオルニチンである、項目6に記載の化合物。
(項目12) 前記化合物が、式Ic:
【化3】
の構造を有する、項目6に記載の化合物。
(項目13) 前記化合物が、式Id:
【化4】
の構造を有する、項目6に記載の化合物。
(項目14) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目1に記載の化合物。
(項目15) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目14に記載の化合物。
(項目16) 薬学的組成物であって、以下:
(a)式I:
【化5】
の一般構造を有する化合物であって、ここで:
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である化合物、および
(b)その薬学的に受容可能なキャリア、
を含む、薬学的組成物。
(項目17) Qが、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンであり、該窒素原子が、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18) 前記式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成する前記Qの窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンであり、ここで、該必要に応じた置換基は、1つ以上のヒドロキシルまたはアミノ基である、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目19) 前記有機アミンが、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、または2−(4−イミダゾリル)エチルアミンである、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目20) 前記式Iの化合物が、以下の式Iaの構造:
【化6】
を有する、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目21) pHが、水酸化ナトリウム以外の薬剤で調整される、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目22) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目23) 前記アミノ酸がヒスチジンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目24) 前記アミノ酸がリジンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目25) 前記アミノ酸がアルギニンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目26) 前記アミノ酸がトリプトファンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目27) 前記アミノ酸がオルニチンである、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目28) 前記式Iの化合物が、以下のIcの構造:
【化7】
を有する、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目29) 前記式Iの化合物が、以下のIdの構造:
【化8】
を有する、項目22に記載の薬学的組成物。
(項目30) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目31) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目30に記載の薬学的組成物。
(項目32) 動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法であって、該方法は、以下の式I:
【化9】
の一般構造を有する化合物の該調節のための有効量を投与する工程を包含し、ここで:
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、方法。
(項目33) Qが、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンであり、該窒素原子が、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目32に記載の方法。
(項目34) 前記式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成する前記Qの窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンであり、ここで、該必要に応じた置換基は、1つ以上のヒドロキシルまたはアミノ基である、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記有機アミンが、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、または2−(4−イミダゾリル)エチルアミンである、項目33に記載の方法。
(項目36) 前記式Iの化合物が、以下の式Iaの構造:
【化10】
を有する、項目33に記載の方法。
(項目37) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、項目32に記載の方法。
(項目38) 前記アミノ酸がヒスチジンである、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記アミノ酸がリジンである、項目37に記載の方法。
(項目40) 前記アミノ酸がアルギニンである、項目37に記載の方法。
(項目41) 前記アミノ酸がトリプトファンである、項目37に記載の方法。
(項目42) 前記アミノ酸がオルニチンである、項目37に記載の方法。
(項目43) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目32に記載の方法。
(項目44) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目43に記載の方法。
(項目45) 組成物であって、以下:
(a)以下の構造:
【化11】
を有するCA4P遊離酸;および
(b)化合物Qであって、ここでQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、化合物Q、
を含む化合物の混合によって形成される、組成物。
(項目46) Qが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンである、項目45に記載の組成物。
(項目47) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目46に記載の組成物。
(項目48) Qがトロメタミンである、項目46に記載の組成物。
(項目49) Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、項目45に記載の組成物。
(項目50) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目49に記載の組成物。
(項目51) Qがヒスチジンである、項目49に記載の組成物。
(項目52) Qがリジンである、項目49に記載の組成物。
(項目53) Qがアルギニンである、項目49に記載の組成物。
(項目54) Qがトリプトファンである、項目49に記載の組成物。
(項目55) Qがオルニチンである、項目49に記載の組成物。
(項目56) Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで、該窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、項目45に記載の組成物。
(項目57) 薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目56に記載の組成物。
(項目58) Qが、グリシンC1-6アルキルエステルである、項目56に記載の組成物。
(項目59) 項目1に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、溶媒中で、以下の構造:
【化12】
を有するCA4P遊離酸を、有機アミンQと接触させる工程を包含し、ここで、Qは、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミンである、プロセス。
(項目60) 前記項目1に記載の化合物が、前記溶媒から結晶形態で沈殿する、項目59に記載のプロセス。
(項目61) 前記CA4P遊離酸が、前記溶媒としての水性イソプロパノール中でトロメタミンと接触され、続いて、該溶媒から結晶形態でCA4Pモノトロメタミン塩を回収する、項目59に記載のプロセス。
(項目62) 項目1に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、溶媒中で、以下の構造:
【化13】
を有するCA4P遊離酸をアミノ酸Qと接触させる工程を包含し、ここで、Qが、少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であり、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、プロセス。
(項目63) 前記項目1に記載の化合物が、前記溶媒から結晶形態で沈殿する、項目62に記載のプロセス。
(項目64) 前記CA4P遊離酸が、前記溶媒としてのイソプロパノール中でヒスチジンと接触され、続いて、該溶媒から結晶形態でCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩を回収する、項目62に記載のプロセス。
(項目65) 項目1に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、溶媒中で、以下の構造:
【化14】
を有するCA4P遊離酸を化合物Qと接触させる工程を包含し、ここで、Qが、1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで該窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、該アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステル形態である、プロセス。
(項目66) 前記CA4P遊離酸が、グリシンC1-6アルキルエステルと接触される、項目65に記載のプロセス。
(項目67) 化合物CA4Pモノトロメタミン。
(項目68) 化合物CA4Pモノ−L−ヒスチジン。
(項目69) 化合物CA4PグリシンC1-6アルキルエステル。
【0016】
概して、本発明は、以下の式I:
【0017】
【化16】
の一般構造を有する化合物まで拡張し、ここで、−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態であるアミノ酸、である。
【0018】
本出願を通して、−OR1および−OR2の両方が−O-QH+である場合、Qは、好ましくは、−OR1基および−OR2基の両方において、同一である。
【0019】
Qが定義(A)の場合、本明細書中の用途を有する好ましい有機アミンは、トロメタミンである(すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、本明細書中では「TRIS」と省略する)。
【0020】
式Iのトロメタミン塩は、以下の式IaおよびIb:
【0021】
【化17】
によって図示され、これらは、それぞれ式Iのモノトロメタミン塩およびジトロメタミン塩を表す。式Iaのモノトロメタミン塩が好ましい。
【0022】
Qが定義(B)の場合、少なくとも2つの窒素原子を有する任意のアミノ酸が、本明細書中の用途を有する。このアミノ酸の窒素のいずれか(例えば、このアミノ酸側鎖上の任意の窒素またはα−アミノ基の窒素)が、式Iの四級アンモニウムカチオンを形成し得る。本明細書中での用途を有するアミノ酸としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:オルニチン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、トリプトファンなど。
【0023】
Qが定義(B)の場合、本明細書中の用途を有する好ましいアミノ酸は、ヒスチジンである。例えば、ヒスチジン側鎖のイミダゾール基の窒素、またはヒスチジンのα−アミノ基の窒素のいずれかは、式Iの四級アンモニウムカチオンを形成し得る。容易に明らかなように、イミダゾール基の芳香族特性に起因して、このヒスチジン側鎖のイミダゾール基の窒素のいずれかが、式(I)の構造を形成し得る。式Iの好ましいモノヒスチジン構造は、以下の式IcまたはId:
【0024】
【化18】
に図示される。
【0025】
Qが定義(C)の場合、例えば、グリシンが挙げられるがこれらに限定されない任意のアミノ酸が、本明細書中での用途を有する。好ましいエステルは、メチルエステルまたはエチルエステルのようなアルキルエステルである。
【0026】
さらに、本発明は、以下を含む薬学的組成物まで拡張する:
(a)式I:
【0027】
【化19】
の一般構造を有する化合物であって、ここで、
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である化合物、および
(b)その薬学的に受容可能なキャリア。
【0028】
このような薬学的組成物において用途を有する本発明の化合物の特定の例は、上記に記載される。さらに、任意の適切な薬学的に受容可能なキャリアは、本発明の薬学的組成物における用途を有する。特定の例は、以下に記載される。本発明の薬学的組成物の特定の実施形態は、有機アミンがトロメタミンである本発明の化合物を含み、そしてこれは、好ましくは、以下の式IaまたはIb、最も好ましくはIa:
【0029】
【化20】
の構造を有するトロメタミン塩である。
【0030】
本発明の薬学的組成物の別の特定の実施形態は、このアミノ酸がヒスチジンである本発明の化合物を含み、そしてこれは、好ましくは以下の式IcまたはId:
【0031】
【化21】
の構造を有するモノヒスチジン塩である。
【0032】
当然、このような薬学的組成物は、その薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。
【0033】
加えて、本発明はさらに、本発明の塩を含む組成物まで拡張する。特に、本発明の組成物は、以下を含む化合物の混合によって形成され得る:
(a)以下の構造:
【0034】
【化22】
を有するCA4P遊離酸;および
(b)化合物Qであって、ここでQは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し得る、少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である、化合物Q。
【0035】
必要に応じて、本発明の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み得る。
【0036】
さらに、Qが定義(A)の場合、本明細書中で規定される任意の有機アミンが、本発明の組成物における用途を有する。特定の例として、トロメタミン、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、および2−(4−イミダゾリル)エチルアミンが挙げられるがこれらに限定されない。Qが定義(B)の場合、少なくとも2つの窒素原子を有する任意のアミノ酸が、本発明の組成物における用途を有する。特定の例としては、オルニチン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、トリプトファンなどが挙げられる。Qが定義(C)の場合、本明細書中で規定される任意のアミノ酸エステルが、本発明の組成物における用途を有する。特定の例としては、グリシンが挙げられる。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法まで拡張し、この方法は、以下の一般構造:
【0038】
【化23】
を有する化合物の、調節に有効な量を投与する工程を包含し、ここで、
−OR1または−OR2のうち1つは−O-QH+であり、もう1つはヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そして
Qは、
(A)プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、この窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこの窒素原子のうちの1つが、プロトンと一緒になって四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である。
【0039】
特定の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法まで拡張し、この方法は、この有機アミンがトロメタミンである化合物の、調節に有効な量を投与する工程を包含し、そしてこの化合物は、好ましくは以下の式IaまたはIb、最も好ましくはIa:
【0040】
【化24】
の構造を有するトロメタミン塩である。
【0041】
別の特定の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍の増殖または転移を調節する方法まで拡張し、この方法は、このアミノ酸がヒスチジンである化合物の、調節に有効な量を投与する工程を包含し、そしてこの化合物は、好ましくは以下の式IcまたはId:
【0042】
【化25】
の構造を有するモノヒスチジン塩である。
【0043】
従って、本発明は、新規かつ有用なコンブレタスタチンA4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩を提供し、これらの塩は、ネイティブなコンブレタスタチンA−4よりも水溶液により可溶性である。従って、この薬物の効果は、増加され得る。
【0044】
本発明はまた、コンブレタスタチンA4ホスフェートプロドラッグのモノ−およびジ−有機アミン塩、モノ−およびジ−アミノ酸塩、ならびにモノ−およびジ−アミノ酸エステル塩を提供し、これらの塩は、インビボでコンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そしてこれらの塩は、解離の際に、生理学的に許容される副産物として、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステルを遊離する。
【0045】
この最も好ましい実施形態において、本発明は、式Iaの構造を有する抗脈管、抗腫瘍剤コンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグの、新規な結晶性1:1トロメタミン(TRIS)塩を提供する。この化合物は、リン酸エステルプロドラッグ塩であり、ここで、このホスフェート部位は、生理学的条件下で脱リン酸を起こして、活性薬物部分コンブレタスタチンA−4を得る(以下に述べるように、コンブレタスタチンA−4の核のフェニル部分を架橋するオレフィン基は、cis立体配置である;コンブレタスタチンA−4ホスフェートの好ましいモノTRIS塩のオレフィン基は、同様にcis立体配置である)。CA4Pの1:1(モノ)TRIS塩は、良好な固体状態特性を示し、そしてこれは予想外に、実質的に非吸湿性である。これらおよび他の有利な性質によって、CA4PのTRIS塩は、薬学的投薬処方物のための好ましい化合物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
本発明は、驚くべきことにかつ予期せず、モノおよびジ有機アミン、モノおよびジアミノ酸、モノおよびジアミノ酸エステル、コンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグ塩(これは、ネイティブのコンブレタスタチンA−4の溶解度に比較してインビボで増加した溶解度を有し、生理学的条件下でコンブレタスタチンA−4コンブレタスタチンA−4を容易に再生し、そして再生の間に生理学的に許容性の有機アミン、インビボで容易に代謝される生理学的に許容性アミノ酸またはアミノ酸エステルを生成する)が、形成され得るという発見に基づく。
【0047】
該して、本発明は、以下の一般構造:
【0048】
【化26】
を有する、化合物に関し、ここで:
−OR1または−OR2のうちの1つは、−O-QH+であり、そして他方はヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成するアミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、である。
【0049】
本発明の全ての異性体(例えば、種々の置換上に不斉炭素に起因して存在し得るもの)(エナンチオマー形態、およびジアステレオマー形態を含む)は、本発明の範囲内で意図される。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体(例えば、特定の活性を有する純粋なまたは実質的に純粋な光学異性体として)を含まなくてもよいか、またはラセミ化合物として、または他の全てあるいは他の選択された立体異性体と混合されてもよい。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974推奨によって規定されるようなS配置またはR配置を有し得る。ラセミ形態は、物理的な方法(分画結晶化、ジアステレオマー誘導体の分離または結晶化、あるいはキラルクロマトグラフィーによる分離)によって分離される。個々の光学異性体は、任意の適切な方法によってラセミ化合物から、得られ得る。コンブレタスタチンA−4コアのフェニル部分を架橋するオレフィン基は、シス配置であり、これは、本発明の化合物について好ましい配置である。本明細書中の化合物の名前としての、または名前に一部としての、用語「コンブレタスタチンA−4」または「CA4」の使用は、このシス配置の化合物を示す。式Iの化合物の溶媒和物(例えば、水和物)が、本明細書において意図される。
【0050】
本明細書を通して、基および置換基は、安定な部分および化合物を提供するように選択され得る。
【0051】
例示または好ましい実施形態として本明細書中で示される実施形態は、例示を意図し、そして限定を意図しない。
【0052】
別の実施形態において、本発明は、本発明の化合物を含む薬学的組成物、およびその薬学的に受容可能なキャリアに関する。一般に、本発明の化合物は、任意の形態(例えば、固体または溶液(特に水溶液)の形態、以下にさらに記載される)で使用され得る。例えば、この化合物が凍結乾燥形態で得られ得、そして凍結乾燥形態のみ、または適切な添加物ともに使用され得る。
【0053】
なお別の実施形態において、本発明は、動物における腫瘍増殖または転移を調節する方法に関し、この方法は、式Iの一般構造:
【0054】
【化27】
を有する化合物の有効量の投与を含み、ここで:
−OR1または−OR2のうちの1つは、−O-QH+であり、そして他方はヒドロキシルまたは−O-QH+であり;そしてQは、
(A)プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する少なくとも1つの窒素原子を含む有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成するアミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここで、窒素原子の1つが、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、アミノ酸の全てのカルボン酸基がエステルの形態である、アミノ酸、
である。一般に、本発明の化合物は、単独または薬学的組成物において、投与され得る。
【0055】
本明細書中で使用される用語または句は、以下に定義され、そして他にそうではないと示されない限り示された定義を有する。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「調節する」、「調節(modulating)」または「調節(modulation)」は、特定のプロセスが起こる速度を変化させること、特定のプロセスを阻害すること、特定のプロセスを逆転すること、および/または特定のプロセスの開始を妨害することをいう。従って、例えば、特定のプロセスが、腫瘍増殖または転移を含む場合、プロセスの「調節」は、腫瘍増殖および/または転移が起こる速度を減少すること、腫瘍増殖および/または転移を阻害すること、腫瘍増殖および/または転移を逆転すること(腫瘍収縮および/または根絶)、ならびに/または特にこのようなプロセスの傾向がある被験体において、腫瘍増殖および/または転移を妨害することを包含する。
【0057】
本明細書中において、語句動物に投与される化合物の「有効量」または「そのために有効な量」とは、動物において腫瘍の増殖または転移を調節するに十分な量をいう。当業者は、例えば、慣用的な技術を使用して、動物に投与するべき本発明の化合物の有効量を、容易に決定し得る。成人に対する例示的な投薬量は、1日あたり活性化合物の約0.05〜約1000mg/体重のkgであり、これは、単回容量で(例えば、ボーラストしてかまたは最大許容用量以下での経時的な注入として)、あるいは個々の分割された用量の形態で(例えば、最大許容用量未満の連続的な量として)(例えば、1日あたり1〜4回)、投与され得る。任意の特定の被験体に対する特定の用量レベルおよび投薬の頻度は、変動し得、そして使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、被験体の種、年齢、体重、一般的健康、性別および食事療法、投与の様式および回数、排出の速度、薬物の組み合わせ、ならびに特定の状態の重篤度を含む種々の因子に依存することが、理解される。
【0058】
本明細書中において使用される場合に、用語「動物」とは、好ましくは、家畜動物のような被験体を含み、そして最も好ましくは、ヒトを含む。
【0059】
本明細書中において使用される場合に、用語「プロドラッグ」とは、インビボで代謝活性化を起こして活性薬物を生成する、前駆体化合物をいう。従って、例えば、被験体に投与された本発明の化合物は、代謝活性化を起こして、コンブレタスタチンA−4を再生成する。これは、本発明の化合物の、例えば血漿中の内因性非特異的ホスファターゼの作用による、解離に起因する。
【0060】
本明細書中において使用される場合に、用語「有機アミン」とは、本発明の式Iの化合物においてリン酸塩を形成し得る、少なくとも1つの一級(すなわち、−NH2)、二級(すなわち、−NH−)または三級(すなわち、
【0061】
【化28】
)アミン基を含む、有機(すなわち、炭素含有)化合物をいう。1つより多い一級、二級および/または三級アミン基が、この有機アミンにおいて存在する場合には、そのようにし得るような基のいずれかは、式Iの四級アンモニウム基QH+を形成し得る。「有機アミン」のこの定義は、アミノ酸化合物(2000年9月14日に米国出願番号60/232,568としてVenitによって出願された、発明の名称「Combretastatin A−4 Phosphate Mono− and Di− Amino Acid Salt Prodrugs」の仮出願を参照のこと、その全体が本明細書中に参考として援用される)もWO99/35150に記載されるような特定の化合物(グルコサミン、ピペラジン、ピペリジン、6’−メトキシ−シンコナン−9−オール、シンコナン−9−オール(cinchonan−9−ol)、ピラゾール、ピリジン、テトラサイクリン、イミダゾール、アデノシン、ベラパミル、モルホリン)(その全体が本明細書中に参考として援用される)も含まない。使用される有機アミンは、好ましくは、以下の群より選択される、生理学的に許容可能な化合物である:
(a)7以上のpKa、より好ましくは8以上のpKaを有する有機アミン;
(b)式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成している窒素が、必要に応じて置換されている脂肪族基または必要に応じて置換されている複素環式非芳香族基(あるいは、二級アミンまたは三級アミンの場合には、それぞれ2つまたは3つの、このような必要に応じて置換されている脂肪族基および/または複素環式非芳香族基)に結合している、有機アミン。「脂肪族基」とは、1〜20個、好ましくは1〜12個、より好ましくは1〜6個の炭素原子を鎖内に有する、直鎖または分枝鎖の、飽和または不飽和の炭化水素(例えば、アルカン、アルケンまたはアルキン)である。「複素環式非芳香族基」とは、式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成している窒素、ならびに必要に応じて、他のヘテロ原子(例えば、O、S、またはさらなるN原子)を環内に含む、飽和かまたは部分的に不飽和の環である。「任意の置換基」とは、好ましくは、本発明の式Iにおいて使用される場合に、式Iのリン酸塩(これは結晶であり、そして実質的に非吸湿性であるか、または非吸湿性である)を生じる有機アミンを提供する、1つ以上の置換基である。好ましい「任意の置換基」としては、ヒドロキシル基、アミノ基(すなわち、−NH2)、またはアルコキシ(すなわち、−O−アルキル)基が挙げられ、最も好ましくは、1つ以上のヒドロキシル基である;ならびに/あるいは
(c)式Iにおいて四級アンモニウムカチオンQH+を形成している窒素が、必要に応じて置換された脂肪族基に結合した一級アミン、または必要に応じて置換された2つの脂肪族基に結合した二級アミンである、有機アミンであって、ここで、好ましい任意の置換基は、1つ以上のヒドロキシル基またはアミノ基であり、最も好ましくは、ヒドロキシル基である。
【0062】
もちろん、本発明において使用するために好ましいアミンとして選択された任意の所定の有機アミンは、上記(a)〜(c)の2つ以上の群の特性を有し得る(例えば、7以上のpKaを有し、かつ(c)に記載されるような必要に応じて置換された脂肪族アミンである)。
【0063】
そのように規定される任意の有機アミンは、本発明の式Iの化合物、ならびに本発明の薬学的組成物および方法における使用に適切である。用語「有機アミン」は、他の酸部分および/または塩基部分(ここで、例えば、1つのアミノ基は式Iのリン酸塩を形成し、そして別のアミン基は酸性部分有する塩を形成する)を有する塩の形態の化合物を含む。従って、本発明の化合物内に含まれる有機アミンの残部はまた、塩部分を含み得る。
【0064】
例示的有機アミンとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:トロメタミン、ジエタノールアミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、および2−(4−イミダゾリル)エチルアミン。
【0065】
式IのコンブレタスタチンA−4ホスフェート「モノ有機アミン」塩は、上記に定義したようなR1またはR2の一部として1つの有機アミン基Qを含み;式IのコンブレタスタチンA−4ホスフェート「ジ有機アミン」塩は、2つの有機アミン基Q(上記で定義されるようなR1の一部およびR2の一部を含む)を含む。式Iの「モノ有機アミン」塩が好ましい。対応する定義は、「モノアミノ酸」、「ジアミノ酸」、「モノアミノ酸エステル」、および「ジアミノ酸エステル」にあてはまる。
【0066】
任意の適切なアミノ酸は、本明細書中での適用(これは、本発明の化合物における適用を有する、多数の天然のアミノ酸および非天然のアミノ酸)を有する。特定の例としては、2、3の例を挙げると、オルニチン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、およびトリプトファンが挙げられるが、必ずしも限定されない。
【0067】
本明細書中で用いられる場合、用語「アミノ酸」は、塩基性アミノ基(NH2)、および酸性カルボン酸基(COOH)を含む化合物をいい、これは双性イオンの形態(ここで、アミノおよびカルボキシル基は、双生イオンまたは内部塩を共に形成する)、または他の酸部分および/または塩基部分(ここで、例えば、アミノ酸は、α−COOH基に加えてカルボン酸基を含み、そして前者は、アルカリ金属を有する塩形態である)を有する塩の形態のような化合物を含む。従って、本発明の化合物内に含まれるアミノ酸の残部はまた、塩部分に含まれ得る。用語は、非天然アミノ酸、および天然のアミノ酸(例えば、α−アミノ酸(特にL−アミノ酸)(これらの多くは、タンパク質の構築ブロックである))を含む。用語「天然のアミノ酸」は、全てのタンパク質に共通する20個のアミノ酸(すなわち、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸)をいう。句「非天然のアミノ酸」は、一般に、全てのタンパク質に共通しないアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、N−メチルリジン、γ−カルボキシグルタメート、セレノシステイン、オルニチン、およびシトルリン)をいう。2つ以上の窒素原子を有するアミノ酸は、Qが定義(B)、ならびに本発明の薬学的組成物および方法を有する場合、本発明の式Iの化合物中で使用するのに適切である。
【0068】
本発明中で用いられる場合、アミノ酸に関する、句「側鎖」は、各アミノ酸について異なるアミノ酸の部分(特に、アミノ酸の−NH2基および−COOH基に連結する炭素に結合した基)である。
【0069】
本明細書中で用いられる場合、用語「実質的に非吸湿性」は、化合物に関して、好ましくは、、以下の条件下で測定される、化合物の重量あたり1%未満(より好ましくは、化合物の重量あたり0.5%未満)の水重量増加を示す:25℃および0%湿潤条件下での測定に対して、約25℃の温度、20%〜95%までの相対湿度、および平衡状態(すなわち、水分の吸収と放出の比が平衡化された時間で測定される)。本明細書中で用いられる場合、用語「非吸湿性」は、化合物に関して、好ましくは、上記で測定されるような、化合物の重量あたり測定可能な重量増加を示さない。
【0070】
アミノ酸に関して本明細書中で用いられる場合、用語「エステル」は、−COO(G)形態(ここで、Gは有機部分(例えば、非置換または置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、または複素環式基))であるアミノ酸のカルボン酸基(すなわち、−COOH基)のことをいう。G基として好ましいものは、C1-6アルキル基(例えば、メチルまたはエチル)である。アミノ酸エステルとして最も好ましいものは、グリシンのC1-6アルキルエステル(例えば、グリシンメチルエステルまたはグリシンエチルエステル)である。
【0071】
本明細書中で用いられる場合、用語「塩」は、本発明の化合物のことをいい、この化合物は、イオン性化合物(例えば、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステル部分の四級窒素QH+とコンブレタスタチンA4ホスフェートとの間にイオン結合を有する)である。
【0072】
本明細書中で用いられる場合、「イオン結合」は、陽イオンと陰イオンとの間、または化学構造間の静電的誘引力により形成される化学結合である。このような結合は、水溶液中で容易に解離(またはイオン化)され得る。溶媒(特に、水性溶媒)中、およびこのような溶液の凍結乾燥物中の本発明の化合物は、本発明により包含される実施形態である。
【0073】
本明細書中で用いられる場合、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステルのような、インビボで存在する化学種を記載さする際の、句「生理学的に許容される」は、化学種の動物を処置する条件下で受容可能ではない副作用を誘導しない能力をいう。好ましくは、「生理学的に許容される」化学種は、有害な副作用を生じない。
【0074】
上記で説明したように、本発明は、本発明の化合物を用いて、腫瘍(好ましくは、固形腫瘍)の増殖または転移を調節するための方法に関する。本明細書中で用いられる場合、用語「腫瘍」または「腫瘍増殖」は、交換可能に用いられ得、そして細胞の制御されない進行性の増殖を生じかつ生理学的機能に役立たない組織の異常な増殖をいう。固形腫瘍は、悪性(例えば、転移するおよび命にかかわる傾向にある)であり得るか、または良性であり得る。本発明の方法に従って処置され得る固形腫瘍の例は、例えば、以下の肉腫および癌腫が挙げられるが、これらに限定されない:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、骨原性肉腫、脊索腫、食道癌、血管肉腫、骨肉腫、内皮腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、骨膜腫、滑膜肉腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸癌、胃癌、膵癌、乳癌(例えば、転移性乳癌)、卵巣癌、精巣癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、結腸および直腸の腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様(medullary)癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、肝転移、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、甲状腺癌(例えば、退形成型(anaplastic)甲状腺癌、髄様(medullary)甲状腺癌腫、ウィルムス腫瘍、頸部の癌、精巣腫瘍、肺腫瘍(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、膀胱癌、上皮癌、経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫。
【0075】
さらに、増殖不全変化を含む腫瘍(例えば、化生および形成異常症)は、上皮組織(例えば、頸部、食道、および肺)中の本発明の化合物または方法を用いて処置または予防され得る。従って、本発明は、公知の状態の処置、あるいは新形成または癌(詳細には、過形成、化生、最も詳細には、異形性からなる、非新形成細胞増殖が生じた場合(このような異常な増殖状態の総説について、RobbinsおよびAngell,1976,Basic Pathology、第二版、W.B.Saunders Co.,Philadelphia,68−79頁))に対する事前の経過から予想される状態の処置を提供する。過形成は、構造または機能における有意な変化をともなわずに、組織または器官における細胞数を増加させることを伴う制御された細胞増殖の形態である。しかし1つの例の場合、内皮過形成は、しばしば、子宮内膜癌を進行させる。化生は、成体または完全に分化した細胞の1つの型が、別の型の成体細胞に置換する制御された細胞増殖の形態である。化生は、上皮組織細胞または結合組織細胞において生じ得る。異常な化生は、何らかの無秩序な化生上皮を伴う。異形性は、しばしば、癌の前駆体であり、そして上皮中で主に見出される;これは、個々の細胞の均一性および細胞の構造上の配向性の損失を伴う、ほとんどの無秩序な形態の非新形成細胞増殖である。異形性細胞は、しばしば、異常な大きな、濃く染色される核を有し、そして多型性を有する。異形性は、これらが慢性の炎症(irritationまたはinflammation)場合、特徴的に生じ,そして、しばしば、頸部、気道、口腔、および胆嚢に見出される。このような障害の総説については、Fishmanら、1985,Medicine、第二版、J.B.Lippincott Co.,Philadelphiaを参照のこと。
【0076】
良性で有り得、そして本発明の化合物および方法を用いて処置され得る腫瘍の他の例としては、動静脈(AV)(詳細には、頭蓋部)の先天奇形、および筋脂肪腫が挙げられる。
【0077】
本発明の化合物はまた、悪性の脈管増殖障害(例えば、黄斑変性、乾癬および再狭窄)の処置のための方法、ならびに、一般に、脈管増殖により特徴付けられる炎症性疾患の処置に有用である。このような疾患および障害は、WO 00/48606(本明細書中でその全体が参考として援用される)に記載される。
【0078】
(薬学的組成物)
本発明はまた、上記のような本発明の化合物を含む薬学的組成物、およびその薬学的に受容可能なキャリアに関する。句「薬学的に受容可能な」とは、生理学的に許容性であり、そして、好ましくは、ヒトに投与される場合、アレルギー反応または類似の有害反応(例えば、胃の不調(gastric upset)、目眩など)を代表的には生じない、分子実体および組成物をいう。好ましくは、本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な」は、連邦政府または州政府の管理機関または米国薬局方または他の一般に認識された動物(およびより詳細にはヒト)に使用するための薬局方による認可を意味する。用語「キャリア」は、化合物と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルをいう。このような薬学的キャリアは、滅菌液(例えば、水および油(石油、動物起源、植物起源、または合成起源(例えば、落花生油、大豆油、鉱物油、胡麻油、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、グリセロールなど)、Cremophorなど(これらの混合物を含む))を含む))で有り得る。水または水性生理食塩溶液、および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、好ましくは、キャリア(詳細には、注射可能な溶液)として用いられる。適切な薬学的に受容可能なキャリアは、E.W.Martinによる「Remington’s
Pharmaceutical Sciences」に記載される。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、注射のための投与用、または経口、肺内、経鼻、経皮、眼内、または他の投与の形態のための投与用であり得る。一般に、本発明により理解されるものは、例えば、薬学的に受容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または他のキャリアと共に本発明の化合物の有効量を含む薬学的組成物である。このような組成物としては、以下が挙げられる:種々の緩衝液含有物(例えば、TRISまたは他のアミン、カルボネート、ホスフェート、アミノ酸、例えば、グリシンアミドハイドロクロライド(特に、生理学的pH範囲)、N−グリシルグリシン、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム(二塩基性、三塩基性)など、またはTRIS−HClもしくはアセテート)、pHおよびイオン強度;界面活性剤および可溶化剤のような添加剤(例えば、Pluronics、Tween20、Tween80(ポリソルベート80)、Cremophor、ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのような界面活性剤活性剤)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベンなど)、ならびにバルキング材料(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトールのような糖、ポリビニルピロリドンまたはデキストランのようなポリマーなど);および/またはこの物質をポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸など)の粒子状の調製物またはリポソームへの取込み物。ヒアルロン酸もまた用いられ得る。このような組成物は、本発明の化合物の物理学的状態、安定性、インビボ放出の速度、およびインビボクリアランスの速度に影響を与えるために用いられ得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435−1712頁(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。この組成物は、例えば、液体の形態で調製され得るか、または乾燥粉末(凍結乾燥形態)であり得る。このような組成物の投与の特定の形態は、以下に記載される。
【0080】
pH調整を記載されるように行い得る。例えば、本発明の化合物の溶解性を増大させること、これらの化合物を含む薬学的組成物のpHを7を超えるpH(より好ましくは、8を超えるpHに(例えば、約8.5のpHに))に調整することが好ましい。
【0081】
本発明の式IのようなCA4Pプロドラッグ塩について、活性な親(CA4)形成をより低いpHで生じる。本発明は、緩衝液/pH調節剤の添加が、凍結の間のpH低下を防ぎ、このようにして、より安定な凍結乾燥処方物を提供することを見出した。驚くべきことに、本発明の式IのようなCA4Pプロドラッグの凍結乾燥処方物について、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いるpH調整は、活性な親(cis)CA4(これは水に最小限可溶性である、そして水溶液中で望ましくない粒子を形成し得る)形成を生じ得、そして水酸化ナトリウム以外のpH調整剤の使用はCA4形成を緩和させ得るということをさらに見出した。pH調整剤および緩衝液としてのTRISの使用は、例えば、pH調整のための水酸化ナトリウムの使用に関連して活性な親(cis)CA4の形成を緩和させる。従って、本発明の組成物の使用に特に好ましい。例えば、観察は、式Iの化合物についてなされた。ここで、Qは、TRISまたはヒスチジンのいずれかであり、その結果、pH調整剤としてNaOHを用いて調製された凍結乾燥物は保存の際に親cis−CA4に対する加水分解を示したが、NaOH以外の適切な緩衝剤(例えば、TRIS)を用いるpH調整は、不溶性の親の形成を緩和させた。従って、本発明の別の局面は、薬学的凍結乾燥組成物(好ましくは、pH調整溶液から調製される)に関し、この組成物は、本発明の化合物および水酸化ナトリウム以外のpH調製剤を含む(好ましくは、pH調整剤として、有機塩基(例えば、アミノ酸もしくは有機アミン(特に、TRIS))を含む)。従って、水酸化ナトリウムの使用は、本発明の凍結乾燥組成物内に包含され、このような使用は、例えば、固体形成が望ましくない、静脈内投与される薬学的組成物についてあまり好ましくない。
【0082】
薬学的組成物(例えば、溶液(特に水溶液(例えば、15mg/mL、30mg/mLおよび60mg/mL)))はまた、本発明の化合物および水酸化ナトリウムを含むpH調整剤を含むように、好ましくは、pH調整剤として、例えば、アルギニン、グリシンのようなアミノ酸、または有機アミン(例えば、エタノールアミン、特にTRIS)のような有機塩基、を含むように調整される。処方物のpHが、pH9.0〜pH10.5に増加する場合、水溶液安定性は増加する。例えば、pH10でpH調整剤としてNaOHを用いる溶液処方物は、pH8.5で緩衝剤としてTRISを用いて調製した凍結乾燥処方物に匹敵する安定性を示し得る。
【0083】
光からの保護は、好ましくは、本発明の薬学的組成物に用いられる。
【0084】
(腫瘍増殖または腫瘍転移を調節する方法)
コンブレタスタチンA−4は、Combretum caffrumの樹幹(wood stem)に由来する強力な抗有糸分裂剤であり、そして広範な種々のヒト癌細胞株に対する強力な毒性を示す。その結果、本発明の化合物もしくは薬学的組成物の被験体への投与は、被験体における腫瘍増殖および/または転移を減少させ得るか、あるいは、被験体が、検出可能な転移もしくは腫瘍増殖を有さない場合、転移および/または腫瘍増殖を予防する。もちろん、本発明の化合物は、単独または薬学的に受容可能なキャリアと共に投与され得る。
【0085】
従って、本発明は、とりわけ、有効量の本発明のモノ−もしくはジ−有機アミンコンブレタスタチンA−4ホスフェートプロドラッグ塩(これはインビボでコンブレタスタチンA−4を急速に再生する)の投与を包含する、腫瘍の増殖もしくは転移を調節するための方法に関する。上記に説明したように、本明細書中で用いられる場合、句「有効量」は、腫瘍の増殖もしくは転移を調節するために(例えば、動物における腫瘍の増殖もしくは転移を減少させるためか、あるいは投与の前に任意の腫瘍形成を欠く動物における腫瘍の増殖の形成を予防するために)十分である、被験体に投与される本発明の化合物の量をいう。当業者は、例えば、慣用的技術を用いる投与のための本発明の化合物の有効量を容易に決定し得る。
【0086】
さらに、本発明の化合物を投与するための多数の手段が、本発明の方法における適用を有する。特に、本発明の化合物もしくは薬学的組成物は、非経口的、経粘膜(例えば、経口、経鼻、もしくは直腸)的、または経皮的に導入され得る。好ましくは、投与は、非経口(例えば、静脈注射を介して)であり、そして以下もまた含むがこれらに限定されない:細動脈投与、筋肉内投与、真皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、心室内投与、および頭蓋内投与。化合物もしくは薬学的組成物は、例えば、処置される腫瘍または腫瘍の周りの組織へと注入により導入され得る。「粘膜浸透エンハンサー」は、本発明の化合物の経粘膜浸透の速度もしくは能力を増大させる試薬のことをいい、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない:胆汁塩、脂肪酸、界面活性剤もしくはアルコール。特定の実施形態では、浸透エンハンサーは、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸、グリココール酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド、またはメタノールであり得る。適切な浸透エンハンサーとしてはまた、グリシレチン酸(Kowarskiへの米国特許第5,112,804号)およびポリソルベート80が挙げられ、後者は、非イオン性界面活性剤(例えば、ノノオキシノール−9、ラウレス(laureth)−9、ポリオキサマー−124、オクトオキシノール−9、またはラウリンアミド−DEA(Stoltzによる欧州特許第0 242 643号))との組合せに好ましい。
【0087】
別の実施形態では、本発明の方法に従って、本発明の化合物もしくは薬学的組成物は、小胞(詳細には、リポソーム)中で送達され得る[Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFilder(編),Liss:New York,353−365頁(1989);Lopez−Berestein,同書、317−327頁を参照のこと;一般に同書を参照のこと]。
【0088】
なお別の実施形態では、このような化合物もしくは薬学的組成物は、徐放性系(例えば、静脈内インフュージョン、インプラント可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または投与の他の方法)において送達され得る。特定の実施形態では、ポンプが用いられ得る[Langer,前出;Sefton,CRC
Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgely 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと]。別の実施形態では、ポリマー材料が用いられ得る[Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Press:Boca 26 Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley:New York(1984);RangerおよびPeppas,J Macromol.Sci.Rev.Macronzol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら、Science 228:190(1985);Duringら、Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら、J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと]。なお別の実施形態では、徐放性系は、被験体の標的組織の近位に配置され得、従って、全身性用量の画分のみを必要とする[例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,前出,第2巻,115−138頁(1984)]。好ましい、徐放性デバイスは、不適切な免疫活性化もしくは腫瘍の部位の近位で、動物に導入される。他の徐放性系は、Langer[Science 249:1527−1533(1990)]による総説において議論される。
【0089】
(非経口投与)
上記に説明したように、本発明の化合物または薬学的組成物は、被験体に非経口投与され得、従って、被験体の胃腸管を介する投与を回避し得る。本明細書中の適用を有する特定の非経口投与技術としては、いくつか名前を挙げれば以下が挙げられるが、もちろんこれらに限定はされない:静脈(ボーラスまたは注入)注射、腹腔内注射、皮下注射、筋肉内注射、またはカテーテル法。非経口投与のための例示的組成物としては、注射可能な溶液または懸濁液が挙げられ、これらは、例えば、適切な非毒性の、非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、マンニトール、1,3−ブタンジオール、水、緩衝化水性液系、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、または他の適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤(合成のモノグリセリドもしくはジグリセリド、ならびに脂肪酸(オレイン酸、アルコール、および/またはCremophorを含む)を含む)を含み得る。pH調整が、所望されるならば使用され得る。
【0090】
(経鼻送達)
本発明の化合物または薬学的組成物の経鼻送達もしくは経粘膜送達もまた、意図される。経鼻送達は、この化合物の有効量を鼻に投与した後に、このような化合物が直接血流へと通過することを可能にし、肺での生成物の蓄積が必要ない。経鼻送達のための処方物としては、デキストランまたはシクロデキストリンを用いる送達、ならびに他のポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロースもしくは他のセルロース)を用いる送達が、挙げられる。
【0091】
経鼻投与について、有用なデバイスは小さくて硬質なビンであり、これに計測された用量スプレーが添付される。1つの実施形態において、この計測された用量は、本発明の化合物または薬学的組成物を、規定容量のチャンバへと引き込むことによって送達され、このチャンバは、このチャンバ内の液体が加圧される場合にスプレーを形成することによってエアロゾル処方物をエアロゾル化するために寸法決めされた開口部を有する。このチャンバは、この化合物または薬学的組成物を投与するために加圧される。特定の実施形態において、このチャンバは、ピストン配置である。このようなデバイスは、市販されている。
【0092】
あるいは、エアロゾル処方物をエアロゾル化するように寸法決めされた開口または開口部を有するプラスチック圧搾ビンが使用され得る。エアロゾル化は、このビンが圧搾される場合に起こる。この開口部は、通常このビンの頂部に見出され、そしてこの頂部は、一般に、エアロゾル処方物の効率的な投与のための経鼻通路内に部分的に一致するようにテーパー状である。好ましくは、この経鼻吸入器は、本発明の化合物または薬学的組成物の計測された容量の投与のために、計測された量のエアロゾル処方物を提供する。
【0093】
経粘膜送達について、浸透エンハンサーの使用がまた意図される。
【0094】
(肺送達)
本発明の化合物または薬学的組成物の肺送達もまた、本明細書中で意図される。本発明の化合物または薬学的組成物は、吸入の間に動物の肺へと送達され得、そして肺の上皮内層を横切って血流に入る。この他の報告としては、Adjeiら,[Pharniaceutical Research,7:565−569(1990);Adjeiら,International Journal
of Pharinaceuties,63:135−144(1990)(酢酸ロイプロリド);Braquetら,Journal of Cardiovascular Pharinacology,13(補遺5):143−146(1989)(エンドセリン−1);Hubbardら,Annals of Internal Medicine,Vol.III,pp.206−212(1989)(α1−抗トリプシン);Smithら,J.Clin.Invest.84:1145−1146(1989)(α−1−プロテイナーゼ);Osweinら,「Aerosolization of Proteins」,Proceedings of Symposium on Respiratoiy Drug Delivery II,Keystone,Colorado,March,(1990)(組換えヒト成長ホルモン);Debsら,J.Immunol:140.3482−3488(1988)(インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α),Platzら,米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)]が挙げられる。全身性効果のための薬物の肺送達のための方法および組成物は、Wongらに1995年9月19日発行の米国特許第5,451,569号に記載される。
【0095】
本発明の実行において使用のため熟慮されることは、治療学的産物の肺送達について設計される広範囲の機械的デバイスである(噴霧器、計測用量吸入器および粉末吸入器(これらの全ては当業者によく知られている)を含むがこれに限定されない)。この送達デバイスの構築に関して、当該分野で公知の任意のエアロゾル適用形態(噴霧瓶、噴霧、微粒化または液体処方物のポンプエアロゾル適用、および乾燥粉末処方物のエアロゾル適用を含むがこれに限定されない)は、本発明の実行において使用され得る。
【0096】
本発明の実行に適した市販のデバイスのいくつかの特定の例は、Ultravent噴霧器(Mallinckrodt,Inc.,St.Louis,Missouriによって製造される);AcornII噴霧器(Marquest
Medical Products,Englewood,Coloradoによって製造される);Ventolin計測用量吸入器(Glaxo Inc.,Research Triangle Park,North Carolinaによって製造される);およびSpinhaler粉末吸入器(Fisons Corp.,Bedfold,Massachusettsによって製造される)である。
全ての各デバイスは、本発明の薬学的組成物の調剤に適した処方物の使用を必要とする。代表的に、各処方物は用いられるデバイスの型に対して特異的であり、そして通常の希釈剤、補助剤および/または治療に有用な他のキャリアに加えて、適切な噴霧剤物質の使用を含み得る。また、リポソーム、マイクロカプセルまたは微粒子、封入複合体または他の型のキャリアの使用が熟慮される。化学的に改変される本発明の薬学的組成物はまた、化学的改変の型または用いられるデバイスの型に依存している種々の処方物において調製され得る。
【0097】
噴出または超音波のいずれかの噴霧器での使用に適した処方物は、代表的に化合物、または溶液1mL当たり25mgの生物学的活性成分に対して約0.1の濃度で水中に溶解する本発明の薬学的組成物を含有する。この処方物はまた、緩衝液および単糖を含み得る(例えば、本発明の薬学的組成物の浸透圧の安定化および調節のために)。この噴霧器処方物はまた、化合物またはエアロゾルを形成する際の溶液の微粒化によって生じる本発明の薬学的組成物の表面誘導凝集を減少する、または予防するための界面活性剤を含み得る。
【0098】
計測用量吸入器デバイスでの使用のための処方物は、一般的に例えば、化合物または界面活性剤の補助を有して噴霧剤において懸濁される本発明の薬学的組成物を含む精巧な分包を含有する。この噴霧剤は、この目的のために用いられる任意の適した物質であり得る(例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボンまたは炭化水素(トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む)またはその組み合わせ)。適切な界面活性剤は、ソルビタントリオエートおよびソーヤレシチンを含む。オレイン酸もまた界面活性剤として有用であり得る。
【0099】
液体エアロゾル処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物および生理学的に受容可能な希釈剤における分散剤を含む。本発明の乾燥粉末エアロゾル処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物および分散剤の微細に分割された固体形態を含み得る。液体または乾燥粉末エアロゾル処方物のいずれかを有して、処方物はエアロゾル化されるべきである。つまり、エアロゾル化用量が鼻孔または肺の粘膜に実際に到達することを保証するために、処方物は液体粒子または固体粒子に分類されるべきである。用語「エアロゾル粒子」は本明細書中で使用され、鼻投与または肺投与に適した液体粒子または固体粒子(つまり、それが粘膜に到達する)を記載する。他の考慮として、送達デバイスの構築、処方物における添加成分、および粒子特性が挙げられる。薬物の鼻投与または肺投与のこれらの局面は当該分野で周知であり、そして処方物の処置、エアロゾル適用手法および送達デバイスの構築は当業者によって直ちに成し遂げられ得る。
【0100】
特定の実施形態において、マスメジアン動力学的直径は、薬物粒子が肺胞に到達するのを保証するために5マイクロ計測未満である(Wearley,L.L.,1991,1991,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Systems 8:333)。
【0101】
上に記述するように、本発明の特定の局面において、エアロゾル適用についてのデバイスは計測用量吸入器である。計測用量吸入器は投与に依存する種々の用量よりもむしろ投与の際に,特定の投薬を供給する。このような計測用量吸入器は、液体または乾燥粉末エアロゾル処方物のいずれかを有して使用され得る。計測用量吸入器は当該分野で周知である。
【0102】
しばしば、肺への吸入のための液体または乾燥粉末処方物のエアロゾル適用は噴霧剤を必要とする。この噴霧剤は、一般的に当該分野で使用される任意の噴霧剤であり得る。このような有用な噴霧剤の特定の無制限な例は、クロロフルオロカーボン(chloroflourocarbon)、ヒドロフルオロカーボン,ヒドロクロロフルオロカーボン(hydochlorofluorocarbon)または炭化水素(トリフルオロメタン(triflouromethane)、ジクロロジフルオロメタン(dichlorodiflouromethane)、ジクロロテトラフルオロエタノール(dichlorotetrafuoroethanol)、および1,1,1,2−テトラフルオロエタン(1,1,1,2−tetraflouroethane)を含む)またはその結合である。
【0103】
エアロゾル送達系(例えば、与圧計測用量吸入器および乾燥粉末吸入器)は、Newman,S.P.,Aerosols and the Lung,Clarke,S.W.およびDavia,D.編,197−22頁に開示され、そして本発明に関連して使用され得る。
【0104】
(液体エアロゾル処方物)
本発明は、液体エアロゾル処方物および化合物または本発明の薬学的組成物の投薬形態について提供する。一般的に、このような投薬形態は化合物または薬学的受容可能な希釈剤における本発明の薬学的組成物を含む。薬学的受容可能な希釈剤は、滅菌水、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖溶液などを含むがこれに限定されない。特定の実施形態において、本発明または本発明の薬学的組成物において使用され得る希釈剤は、ホスフェート緩衝生理食塩水、または一般的にpH7.0〜8.0の範囲内の緩衝生理食塩水溶液、または水である。
【0105】
本発明の液体エアロゾル処方物は、任意の成分として、薬学的受容可能なキャリア、希釈剤、可溶性薬剤または乳化剤、界面活性剤および賦形剤を含み得る。
【0106】
本実施形態の処方物はまた、pH維持、溶液安定化について、または浸透圧の調節について有用な他の薬剤を含み得る。薬剤の例は、塩(例えば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)および炭水化物(例えば、グルコース、ガラクトースまたはマンノース)などを含むがこれに限定されない。
【0107】
(エアロゾル乾燥粉末処方物)
本エアロゾル処方物は、乾燥粉末処方物として調製され得ることもまた熟慮され、この乾燥粉末処方物は化合物または本発明の薬学的組成物、および分散剤の精巧な分包形態を包含する。
【0108】
粉末吸入器デバイスから調合するための処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物を含む精巧な乾燥分包を包含し得、そしてまたバルキング薬剤(例えば、デバイスからの粉末の分散を促進する量(処方物の重さの50%〜90%)におけるラクトース、ソルビトール、スクロースまたはマンニトール)を包含し得る。化合物または本発明の薬学的組成物は、最も有効な末端肺への送達について、10ミクロン、最も好ましくは0.5〜5ミクロン以下の平均粒子サイズを有して粒子形態において最も有利に調製されるべきである。
【0109】
他の実施形態において、乾燥粉末処方物は、化合物または本発明の薬学的組成物を含み、薬剤を分散し、そしてまた薬剤をバルキングする精巧な乾燥分包を包含し得る。本処方物を連結する際に有用なバルキング薬剤は、デバイスからの粉末の分散を促進する量におけるラクトース、ソルビトール、スクロースまたはマンニトールのような薬剤を含む。
【0110】
(経皮投与)
種々の方法および多数の方法が、薬物の経皮投与に関して(例えば、経皮斑を介して)当該分野で公知である。経皮斑は、例えば、米国特許第5,407,713号,1995年4月18日発行,Rolandoら;米国特許第5,352,456号,1994年10月4日発行,Fallonら;米国特許第5,332,213号,1994年8月9日発行,D’Angeloら;米国特許第5,336,168号,1994年8月9日発行,Sibalis;米国特許第5,290,561号,1994年3月1日発行,Farhadiehら;米国特許第5,254,346号,1993年10月19日発行,Tuckerら;米国特許第5,164,189号,1992年11月17日発行,Bergerら;米国特許第5,163,899号,1992年11月17日発行,Sibalis;米国特許第5,088,977号および第5,087,240号,どちらも1992年2月18日発行,Sibalis;米国特許第5.008,110号,1991年4月16日発行,Beneckeら;および米国特許第4,921,475号,1990年5月1日発行,Sibalis。これらのそれぞれの公開は、その全体が参考文献によって本明細書中で援用される。
【0111】
投与の経皮経路は、皮膚浸透エンハンサー(例えば、米国特許第5,164,189号(前出)、米国特許第5,008,110号(前出)、および米国特許第4,879,119号(Arugaら、1989年11月7日発行(これらの各々の開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載のエンハンサー)の使用によって促進され得ることが容易に理解され得る。
【0112】
さらに、本発明の化合物または薬学的組成物は、局所投与され得る。例えば、化合物は、皮膚に塗りつけられ得る組成物を形成する軟膏キャリアと混合され得る。あるいは、本発明の化合物は、皮膚に浸透することが周知である溶媒に溶解され得る。このような溶媒の特定の例は、ジメチルホルムアミド(DMSO)である。ゲル処方物もまた企図される。
【0113】
(経口送達)
Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版、1990(Mack Publishing Co.Easton
PA 18042)のチャプタ89(これは、本明細書中で参考として援用される)に一般的に記載される経口個体投薬形態は、本明細書中で使用するために企図される。個体投薬形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、ピル、トローチまたはロゼンジ、カシェ剤あるいはペレット剤が挙げられる。また、リポソームまたはプロテイノイドのカプセル化が、本発明の化合物または薬学的組成物を処方するために使用され得る(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されるプロテイノイドマイクロスフェア)。リポロームカプセル化が使用され得、そしてこのリポソームは様々なポリマーと共に誘導され得る(例えば、米国特許第5,013,556)。治療的用途についての可能な個体投薬形態の記載は、Marshall,K.、Modern Pharmaceutics(G.S.BankerおよびC.T.Rhodes編)、チャプタ10、1979(本明細書中で参考として援用される)により示される。処方物は、本発明の化合物または薬学的組成物、ならびに胃環境に対する保護および腸における生物学的活性材料の放出を可能にする不活性成分を含み得る。
【0114】
本発明の化合物の経口投薬形態もまた特に企図され、ここでこの化合物は、誘導体の経口送達が有効であるように化学修飾され得る。一般的に、企図される化学修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部分の結合であり、ここで、この部分は、(a)タンパク質分解の阻害;(b)胃から腸への血流の取込みを可能にする。本発明の化合物の全体的な安定性の増加、および体内における循環時間の増加もまた所望される。このような部分の例としては、以下が挙げられる:ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリプロリン。AbuchowskiおよびDavis,1981,「Soluble Polymer−Enzyme Adducts」、Enzymes as Drugs,HocenbergおよびRoberts編、Wiley−Interscience,New York,NY,367〜383;Newmarkら、1982、J.Appl.Biochem.4:185〜189。使用され得る他のポリマーは、ポリ−1,3−ジオキソランおよびポリ−1,3,6−チオキソカンである。上記のように、ポリエチレングリコール部分は薬学的用途のために好ましい。
【0115】
本発明の化合物について、放出の位置は、胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であり得る。当業者は、胃で溶解しないが、腸の十二指腸またはその他の場所で本発明の化合物を放出する処方物を調製し得る。好ましくは、この放出は、化合物の保護または胃環境を越える(例えば、腸において)生物学的活性材料の放出のいずれかによって、胃環境の悪影響を回避する。
【0116】
十分な胃耐性を保証するために、少なくともpH5.0で不浸透性のコーティングが必須である。腸溶性コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例は、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、およびShellacである。これらのコーティングは、混合フィルムとして使用され得る。
【0117】
コーティングまたはコーティングの混合物はまた、錠剤で使用され得、これは胃からの保護を意図していない。これには、糖コーティング、または錠剤のえん下を容易にするコーティングが挙げられ得る。カプセル剤は、乾燥治療薬(すなわち散剤)の送達のための硬質の殻(例えば、ゼラチン)から構成され得、液体形態について、軟質ゼラチン殻が使用され得る。カシェ剤の殻材料は、厚いデンプンまたは他の食用ペーパーであり得る。ピル、ロゼンジ、成形錠剤または錠剤粉薬について、水分凝縮技術(moist massing technique)が使用され得る。
【0118】
本発明の化合物は、例えば、約1mmの粒径の顆粒またはペレットの形態の微細な多粒子として、処方物に含有され得る。カプセル投与のための材料の処方物はまた、散剤、軽く圧縮したプラグまたはさらに錠剤として存在し得る。また、本発明の化合物または薬学的組成物は、圧縮によって調製され得る。
【0119】
着色剤および香味剤は全て含まれ得る。例えば、化合物が処方され(例えば、リポソームカプセル化またはマイクロスフェアカプセル化によって)、次いで、食用製品(例えば着色剤または香味材を含む冷蔵飲料)内にさらに含有される。
【0120】
本発明の化合物または不活性材料を含む薬学的組成物の容量を希釈または増加し得る。これらの希釈剤は、炭水化物、特に、マンニトール、α−ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストランおよびデンプンを含み得る。特定の無機塩もまた、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムを含むフィラーとして使用され得る。いくつかの市販の希釈剤は、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx 1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0121】
崩壊剤は、本発明の薬学的組成物の固体投薬形態への処方において含まれ得る。崩壊剤として使用される材料としては、デンプン(デンプンに基づく市販の崩壊剤であるExplotabを含む)が挙げられるが、これに限定されない。ナトリウムデンプングリコレート、Amberlite、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイトは全て使用され得る。別の形態の崩壊剤は、不溶性の陽イオン交換樹脂である。粉砕したゴムは、崩壊剤および結合剤として使用され得、そしてこれらは粉末ゴム(例えば、寒天、Karayaまたはトラガカント)を含み得る。アルギン酸およびそのナトリウム塩もまた崩壊剤として有用である。
【0122】
結合剤は、硬質錠剤を一緒に形成するように、本発明の化合物または薬学的組成物を保持するために使用され得、そして天然産物由来の材料(例えば、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチン)を含み得る。他のものとしては、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の両方は、治療薬を顆粒化するためにアルコール溶液中で使用され得る。
【0123】
減摩剤は、処方プロセスの間の固着を防止するために、本発明の薬学的組成物の処方物中に含有され得る。潤滑剤は、治療薬と型壁との間の層として使用され得、これには、ステアリン酸(そのマグネシウム塩およびカルシウム塩を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびワックスが挙げられるが、これらに限定されない。可溶性潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000および6000)もまた使用され得る。
【0124】
処方の間に本発明の化合物の流動性を改善し、圧縮の間の再配置を助け得る滑剤が添加され得る。これらの滑剤は、デンプン、タルク、発熱性シリカおよび水和シリコアルミネート(silicoaluminate)を含み得る。
【0125】
経口投与された本発明の化合物の取込みを潜在的に増大する添加剤は、例えば、脂肪酸のオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。
【0126】
制御放出経口処方物が所望され得る。薬物は、拡散または浸出機構のいずれか(例えば、ゴム)による放出を可能にする不活性マトリクスに組み込まれ得る。ゆっくりと分解するマトリクスはまた、この処方物に組み込まれ得る。いくつかの腸溶性コーティングはまた、遅延放出効果を有する。
【0127】
本発明の化合物の制御放出の別の形態は、Oros治療システム(Alza Corp.)に基づく方法による。すなわち、薬剤は、半透性膜(これにより水は浸透圧効果に起因して単一の小さな開口部を通って入りそして薬物を押し出す)に封入される。
【0128】
他のコーティングは、処方物のために使用され得る。これには、コーティングパンに適用され得る様々な糖が挙げられる。本発明の化合物はまた、フィルムコーティング錠剤で提供され得、そしてこの場合において使用される材料は、例えば、2グループに分割され得る。第1グループは、非腸溶性材料であり、これには、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、プロビドン(providone)、およびポリエチレングリコールが挙げられる。第2グループは腸溶性材料を含み、これは一般に、フタル酸のエステルである。
【0129】
材料の混合物は、最適なフィルムコーティングを提供するために使用され得る。フィルムコーティングは、パンコーターまたは流動床、あるいは圧縮コーティングによって行われ得る。
【0130】
(調製方法)
上記の式Iの化合物は、任意の適切な方法、例えば、所望の材料Q(特に、有機アミン、アミノ酸またはアミノ酸エステル)を、本発明の式Iのモノもしくはジ有機アミン塩、モノもしくはジアミノ酸塩、またはモノもしくはジアミノ酸エステルを得るのに十分な相対量で、以下の構造を有するA−4ホスフェート(「CA4P遊離酸」)でコーティングすることによって調製され得る(例えば、1:1のモノ有機アミン塩またはモノアミノ酸塩を得るための1:1のモル比、またはジ有機アミン塩を得るための適切な溶媒(例えば、所望のpKaについて選択された溶媒)中の過剰モルの有機アミン):
【0131】
【化29】
CA4P遊離酸は、例えば、前出の実施例に記載されるように、CA4P二ナトリウム塩から得られ得る。化合物Q(例えば、有機アミンまたはアミノ酸)およびCA4P遊離酸は、例えば、適切な溶媒(好ましくは、イソプロパノールのようなC1〜C6アルコール、またはそれらの水性混合物)中で接触され、好ましくは、続いて、式Iの化合物が濾過のような手段によって結晶化化合物として回収される。用語「溶媒」は、単一の溶媒、あるいは混和性または二相の溶媒混合物を形成する2つ以上の溶媒の混合物を含む。所望の場合、化合物Qは、塩の形態、好ましくは薬学的に受容可能な塩の形態で、前出の実施例に記載されるように添加され得る。
【0132】
従って、本発明は、以下の式Iの一般構造を有する化合物を調製するためのプロセスに及ぶ:
【0133】
【化30】
ここで、−OR1または−OR2のうち一方は、−O-QH+であり、他方は、ヒドロキシルまたは−O-QH+であり、
そしてQは、
(A)少なくとも1つの窒素を含む有機アミンであって、この窒素はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の一方はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基はエステルの形態である、アミノ酸、である。本発明のこのような方法は、以下の構造を有するCA4P遊離酸を、溶媒中で、化合物Qと接触させる工程を包含する:
【0134】
【化31】
ここで、Qは、
(A)少なくとも1つの窒素を含む有機アミンであって、この窒素はプロトンと一緒になって、四級カチオンアンモニウムQH+を形成する、有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の一方はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基はエステルの形態である、アミノ酸、である。必要に応じて、本明細書中に記載されるプロセスを用いて精製される本発明の化合物は、溶媒から結晶形態で沈殿され得る。
【0135】
さらに、本発明は、以下の式Iの一般構造を有する化合物を調製するためのプロセスに及ぶ:
【0136】
【化32】
この方法は、上記のように、溶媒中で、CA4P遊離酸を好ましい化合物Q(例えば、ヒスチジン、グリシンC1-6アルキルエステル、または最も好ましくはトロメタミン)と接触させ、次いで、得られたCA4Pヒスチジン、グリシンC1-6アルキルエステル、または最も好ましくは、トロメタミン塩を結晶形態で溶媒から回収する工程を包含する。もちろん、上で説明するように、多数の溶媒が本発明のプロセスにおける用途を有する。特定の例としては、C1-6アルコール(例えば、イソプロパノール)またはそれらの水性混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるプロセスは、化合物CA4Pのモノ−トロメタミン(「CA4Pのモノ−TRIS塩」または「CA4PモノTRIS塩」)を生成する。本発明の別の好ましい実施形態において、本明細書中で記載されるプロセスは、化合物CA4PモノL−ヒスチジンを生成する。
【0137】
化合物Q(有機アミン、アミノ酸、またはアミノ酸エステル)およびCA4P遊離酸の混合物(好ましくは、水溶液のような溶液である)はまた、本発明の実施形態として本明細書中で企図される。従って、本発明は、化合物を混合することによって形成される組成物をさらに提供し、この組成物は、以下:
(a)以下の構造を有するCA4P遊離酸:
【0138】
【化33】
および
(b)化合物Q、を含み、
ここで、Qは、
(A)少なくとも1つの窒素を含む有機アミンであって、この窒素はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、有機アミン;
(B)少なくとも2つの窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の一方はプロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成する、アミノ酸;または
(C)1つ以上の窒素原子を含むアミノ酸であって、ここでこれらの窒素原子の1つは、プロトンと一緒になって、四級アンモニウムカチオンQH+を形成し、そしてここで、さらに、このアミノ酸の全てのカルボン酸基はエステルの形態である、アミノ酸、である。
【0139】
必要に応じて、本発明の組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み得る。
【0140】
本発明は、本発明の例示として示される、以下の非限定的な実施例を参照することによってよりよく理解され得る。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより十分に例示するために示される。しかしこれらは、決して本発明の広範な範囲の限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0141】
(実施例1)
(CA4Pプロドラッグのモノトロメタミン塩)
本発明の実施形態において、CA4Pモノ−トロメタミン塩は、本発明の化合物の非限定的な例として記載される。本明細書中に記載される情報を使用して、当業者は、例えば、以下に記載される手順と同様の手順(これらの全ては、本発明および添付の特許請求の範囲に包含される)によって、所望の有機アミンをCA4P遊離酸に添加することによって、様々なCA4Pプロドラッグのモノもしくはジ有機アミン塩を容易に生成し得る。
【0142】
(試薬および方法)
全ての試薬および化学物質は、市販の供給源から得、そしてさらに精製することなく使用した:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)(Aaldrich Chemical Co.99.9+%標識、Lot #01404PU)、イソプロピルアルコール(B&J Brand,高純度溶媒等級)。多核NMRスペクトルは、Bruker DRX 400分光計で記録した。1Hおよび13CNMRの化学シフトは、テトラメチルシランに対してppmで報告される。(13C NMRの化学シフトは、メタノール(「MeOH」)を外部標準として使用して決定した)。13C NMRスペクトルは、プロトンデカップル{1H}して得た。2D NMR実験(HMQC(Heteronuclear Multiple Quantum Correlation分光法、どの分子の1Hが13C核(または他のX核)に結合しているかを決定するための逆化学シフト相関実験);ならびにHMBC(Heteronuclear Multiple Bond Corrlation分光法、広範囲の1H−13C連結性、ならびに分子の構造および1Hおよび13C帰属を決定するのに適切な改変されたHMQCの改変バージョン))を、1Hおよび13Cシグナルを構造に帰属するのを助けるように行なった。「CA4P二ナトリウム塩」は、以下の構造を有する化合物である:
【0143】
【化34】
(上記の米国特許第5,561,122号を参照のこと)。
【0144】
(CA4Pモノ−トロメタミン塩)
水性IPA TRIS溶液(0.19M):0.19MのTRIS溶液を、1.61gのTRIS(13.3mmol)を7mLの脱イオン水に添加し、そして得られた水溶液に63mLのイソプロピルアルコール(「IPA」)を添加することによって、調製した(IPA中10%水)。
【0145】
イソプロピルアルコール中のCA4P遊離酸ストック溶液(0.19M):CA4P二ナトリウム塩(12.15g、27.6mmol)を、70mLの脱イオン水に溶解した。酢酸エチル(250mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)を、迅速に撹拌しながら得られた溶液に添加した。白色のケークが形成した。0.5NのHClの溶液(325mL)を滴下して、このケークを溶解した(水層の最終pHは約1であった(pH試験紙))。有機相を分離した。水層を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した。有機相を合わせ、そして無水Na2SO4で乾燥した。濾過し、そして溶媒をエバポレート(ロータリーエバポレーター、水浴温度=40℃)して、CA4P遊離酸の厚膜を得、これを100mLのIPAに溶解した。得られた溶液の濃度は、以下の滴定方法を使用して1H NMRによって0.9Mと決定された:45μLのL−ヒスチジン溶液(0.17M)および30μLのCA4P遊離酸溶液を4mLHPLCバイアルにピペットで添加した。溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用して乾固するまでエバポレートした。この固体を、0.7mLのD2Oに溶解し、そして1H NMRによって分析し、1:0.75のヒスチジン対CA4P遊離塩基の比を得た。全部で19mmolのCA4P遊離酸を得た(収率69%)
CA4Pモノ−TRIS塩:200mL丸底フラスコに、上で調製した70mLのCA4P遊離酸溶液(0.19M、13.3mmol)を充填した。上記のように調製した70mLの水性IPA TRIS溶液(0.19M、13.3mmol)を、CA4P遊離酸溶液に迅速に撹拌しながら滴下した。得られた白色スラリーを室温で18時間(一晩)撹拌し、続いて30分間0℃(氷浴)で冷却した。結晶固体をWhatman # 54濾紙を通して濾過することによって単利子、冷却したイソプロピルアルコールで洗浄し、そして空気流で5時間乾燥し、次いで減圧下(真空デシケーター)で113時間乾燥して、7.01gのCA4Pモノ−TRIS塩を白色固体として得た。1H NMR分析の結果は、最終生成物がIPA(約0.9重量%)を残留溶媒(13.4mmol、定量的収率)として含んでいたことを示した。CA4Pモノ−TRIS塩は、式Iaの構造を有し、ここで、コアのフェニル部分に架橋しているオレフィン基は、コンブレタスタチン(combretastatin)A−4ホスフェート出発物質におけるように、シス配置である。
【0146】
(CA4PモノTRIS塩の特徴付け)
(NMRおよび元素分析)
1H NMR(400MHz,D2O)δ 3.52(s,6H,C(15)H3およびC(17)H3),3.56(s,6H,C(20)H2,C(21)H2,C(22)H2),3.59(s,3H,C(16)H3),3.67(s,3H,C(18)H3),6.38(d,J=11.7Hz,1H,C(8)H),6.46(d,J=11.7Hz,1H,C(7)H,6.48(s,2H,C(10)HおよびC(14)H),6.79(d,J=8.8Hz,1H,C(3)H),6.85(broad d,J=8.8Hz,1H,C(4)H),7.06(broad s,1H,C(6)H);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 56.9(2C,C15,C17),57.0(C18),60.3(3C,C20,C21,C22),62.0(C16),62.4(C19),107.5(2C,C10,C14),113.9(C3),122.6(d,Jpc=3.1Hz,C6),125.9(C4),130.0(C8),130.8(C7),131.2(C5),134.7(C9),136.8(C12),142.2(d,Jpc=7.7Hz,C1),150.6(d,Jpc=6.1Hz,C2),153.2(2C,C11およびC13)。分析(C22H32NO11P);計算値:C,51.06;H,6.23;N,2.70;P,5.98。実測値:C,51.07;H,6.39;N,2.58,P,5.93。
【0147】
【化35】
(吸湿性)
この実施例のCA4PのモノTRIS塩は、周囲条件および高湿度条件下で、25℃で実際的に非吸湿性であることが見出された。これは、予想外の結果である。なぜなら、他の塩形態のCA4P遊離酸は、同様の条件下で吸湿性であるからである。CA4PのモノTRIS塩の水分吸着特性を図1に示す。可変相対湿度−X線回折(「RH−XRD」)実験は、この粉末パターンは、25℃の異なる湿度に暴露された場合、変化しないままであることを示した。
【0148】
(多型)
本実施例のCA4PモノTRIS塩の単結晶X線研究は、これが、アキラルなニート形態(N−1)であって、任意の溶媒部位を含まないこと、およびこれが、中心対称の単斜結晶構造であることを実証した。擬態粉末パターン(これは、室温で単斜単結晶構造の正確な原子パラメーターから誘導された)は、観測した粉末パターンと一致する。IPA/水から調製されたモノTRIS塩の数種のロットは、1H NMR、示差走査熱分析(DSC)、示差熱重量分析(TGA)および粉末X線回折(p−XRD)に基づいて再現可能であることを見出した。CA4PモノTRIS塩を、数種の異なる溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、および水)中で、最初に70〜75℃で5〜10分間かけて懸濁し、次いで室温で一晩かけて懸濁した。得られた固相をDSC、TGAおよびp−XRDによって分析した。このスラリーサンプルのいずれも、スラリーまたは乾燥状態のいずれかで任意の溶媒の存在を示さなかった。「現状のままの」材料と比較して、任意のこれらのサンプルにおいて、DSCサーモグラムおよびp−XRDパターンの差異は存在しなかった(図2を参照のこと)。このことは、このN−1形態が、比較的安定な単一多型形態であることを示す。
(他の物理化学的特性)
CA4PモノTRIS塩のDSCサーモグラムは、196℃で単一の融解吸熱を示す(図3)。熱重量分析は、揮発に起因して150℃未満で任意の重量ロスを表さなかった。25℃で、CA4PモノTRIS塩の平衡水溶液は、3.37mg/mL(pH4.8)であると決定された。この水溶液は、pHの増加に伴って増加し、そしてpH8.2で191mg/mLの値に達した。これは、特に、静脈内投与のために、8〜9のpHの範囲で、本実施例の化合物の投与形態を調製するのに適切である(これは、患者に「Ready−to−Use Solutions」を直接投与される溶液または凍結乾燥のためのバッチング溶液である)。CA4PモノTRIS塩のpH溶液プロフィールを、図4に示す。モノTRIS塩はまた、温度および湿度の周囲条件および促進条件に曝露した状態で、固体状態の良好な化学的安定性を示した。
【0149】
従って、この実施例のCA4PのモノTRIS塩は、例えば、経口投与または非経口投与のいずれかを意図するような、薬学的処方物の使用のための、良好な物理化学的特性を有する。本明細書中で意図されないCA4Pの他の塩形態のようではなく、モノTRIS塩は、塩状態、特に、実質的な非吸湿性において予想外の優れた特性を示した。これは、TRIS自体で水溶解度の程度の観点で特に意外であった。
(CA4P モノ−トロメタミン塩(スケールアップ))
(CA4Pの遊離酸溶液(IPA中))
12Lの3つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラーおよびさらなるロートを備えつけた。CA4Pジナトリウム塩の溶液(99.92g、0.227mol)(1.5の脱イオン水および2.0Lの酢酸エチル)を、フラスコに添加した。塩酸溶液(0.5N、950mL、0.475mol)を、迅速に攪拌しながら添加ロートを介してゆっくり添加した(水相の最終のpHが約1(pH紙)であった)。この有機相を分割した。水相を酢酸エチル(5×1.6L)で抽出た。合わせた有機相を、Na2SO4で乾燥した。酢酸エチルをロータリーエバポレートして、濃厚な油状物を形成し、これをIPA(800mL)に溶解した。(CA4Pモノ−TRIS塩)
TRIS(25.0g、0.206mol)の脱イオン水溶液(800mL)を、12Lの3つ口丸底フラスコに充填した。上記のCA4P遊離酸溶液(IPA中)を、迅速に攪拌しながら添加ロートを介してゆっくりと添加した。添加後に、得られた溶液を、CA4Pモノ−TRIS塩でシードし、そしてRTで1時間機械で攪拌した。次いで、さらなるIPA(2.0L)を、このスラリーに添加し、そしてさらに1時間攪拌し続けた。結晶の白色固体を吸引を伴って濾過し、IPA(800mL)で洗浄し、そして真空オーブン中で、4日間約40℃で乾燥して、101.55gのCA4Pモノ−TRIS塩をえた。最終生成物の1H NMR分析は、残渣溶媒(0.186mol、収率86%以上)としてIPA(0.4wt%)を含むことが示された。C22H32NO11Pの分析値:C,51.06;H,6.23;N,2.70;P,5.98。実測値:C,50.95;H,6,14;N,2.69;P,5.82。
【0150】
(実施例2)
(CA4Pプロドラックモノ−トロメタン塩TRIS処方物)
実施例1の化合物(CA4PモノTRIS塩)の水溶液および凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)薬学的組成物を、以下のように調製した。
【0151】
実施例1の化合物の水溶液を、注射用の水(USP)中にこの化合物を溶解することによって得、十分な量のTRIS(トロメタミンベース)の添加を伴って60mg/mLの濃度にしてpH8.5を得た。この溶解を、遮光して実施した。
【0152】
次いで、凍結乾燥物を、以下の手順により得た。上で形成した溶液を、適切な0.2ミクロンの滅菌フィルターを介して濾過し、そして滅菌ガラスバイアル中にアリコートした。この溶液を、24時間から72時間の期間にわたって減圧下で35℃でVertis Lyophilizerで凍結乾燥し、次いで、24時間から48時間かけて減圧下で5℃でさらに乾燥して、凍結乾燥物を得た。
【0153】
実施例1の化合物を含む他の薬学的組成物は、これらの手順に従って調製し得る。例えば、上記のように、バルク試薬(例えば、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸、スクロース、ラクトース、マンニトールのような糖、ポリビニルピロリドンまたはデキストランのようなポリマーなど)、あるいは他の賦形剤が、上記の溶液に添加され得る。
【0154】
例えば、実施例1の化合物の水溶液を、注射用の水(USP)中にこの化合物を溶解することによって得、適切なバルク試薬(例えば、アルギニンもしくはリジンのようなアミノ酸、スクロース、ラクトース、マンニトールのような糖、ポリビニルピロリドンまたはデキストランのようなポリマーなど、あるいはそれらの組合せ)の添加を伴って30mg/mLにし、そして十分な量のTRIS(トロメタミンベース)の添加を伴って100mg/mLの濃度にした。この溶解を、遮光して実施した。
【0155】
次いで、凍結乾燥物を、以下の手順により得た。上で形成した溶液を、適切な0.2ミクロンの滅菌フィルターを介して濾過し、そして滅菌ガラスバイアル中にアリコートした。この溶液を、24時間から72時間の期間にわたって減圧下で−10℃でVertis Lyophilizerで凍結乾燥し、次いで、24時間から48時間かけて減圧下で5℃でさらに乾燥して、凍結乾燥物を得た。
【0156】
上記で説明されるように、ジエタノールアミン、グルカミン、N−メチルグルカミン、エチレンジアミン、および2−(4−イミダゾリル)エチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない、任意の適切な有機アミンは、上記の実施例のトロメタミンと容易に置換され、本発明の化合物または組成物を得る。Qが式I内の他の規定を有する組成物が、同様に形成され得る。
【0157】
(実施例3)
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩プロドラック)
本発明の実施形態において、CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩は、本発明の化合物の非限定的な例として記載される。本明細書中に記載される情報により、当業者は、種々のCA4Pモノまたはジ−アミノ酸塩プロドラックを、例えば、上記と同様の手順により、所望のアミノ酸をCA4P遊離酸に添加することによって生成する(これらの全ては、本発明および添付の特許請求の範囲によって包含される)。
【0158】
(試薬および方法)
以下の試薬および化学物質は、市販の供給源から得られ、そしてさらなる精製なしで使用した:L−ヒスチジン(Aldrich Chemical Co.98%標識,Lot # 04821JR)、メタノールおよびイソプロピルアルコール(B&B Brand,High purity solvent grade)。「CA4Pジナトリウム塩」は、以下の構造を有する化合物である(上記の米国特許第5,561,122号を参照のこと):
【0159】
【化36】
多重核NMRスペクトルを、Brucker DPX300およびDRX400スペクトルで記録した。1Hおよび13C NMR化学シフトを、テトラメチルシランと比較したppmで報告する(この13C NMR化学シフトを、外部基準としてメタノールを使用して決定した)。この31P NMRの化学シフトを、85%のH3PO4(外部標準)と比較したppmで報告する。この13Cおよび31P
NMRスペクトルを、プロトンデカップリング{1H}を用いて獲得した。この2D NMR実験(HMQCおよびHMBC)を、この構造に対する1Hおよび13C NMRシグナルのアサイメントを助けるために処理した。DSCを、CSC/2920 Differential Scanning Calorimeter,TA Instrumentsを用いて実施した。
【0160】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩)
(L−ヒスチジン水性ストック溶液(0.2M))
L−ヒスチジン(0.3167g、2.0mmol)を10mLの脱イオン化水に溶解し、0.2Mの溶液を形成した。
【0161】
(メタノール(0.6M)中のCA4Pの遊離酸ストック溶液)
CA4Pジナトリウム塩(1.9194g)を、5mLの脱イオン化水に溶解した。塩化ナトリウム飽和水溶液(40mL)を、得られた溶液に添加した。白色固体を沈殿させた。酢酸エチル(50mL)を添加し、そして得られたスラリーを機械で攪拌し、そして2層の混合物が透明となるまで、0.5Nの塩酸溶液で酸性化した(水相は、酸性であった(pH紙))。この有機相を分割した。この水相を酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。有機相を合わせて、そしてNa2SO4で乾燥した。濾過し、そして溶媒をエバポレート(ロータリーエバポレーター、水浴の温度=37℃)して、CA4P遊離酸の厚手のフィルムを得、これを、10mLのメタノールで溶解した。このメタノールを、ロータリーエバポレーターにかけて(37℃)、オフホワイトの泡状物(1.52g)を得、これをMeOH(4.79mL)に再溶解し、予想された0.8Mの濃度を有する溶液を得た。
【0162】
上記で決定した濃度を、25μLのCA4P遊離溶液を含む0.2Mのヒスチジン溶液(20μmol)(100μL)を混合することによって確認した。得られた溶液の溶媒を、ロータリーエバポレートして、乾燥した。この固体を、1:0.75のモル比のヒスチジン:CA4P遊離酸を示すために1H NMRによって分析した。従って、CA4P遊離酸の濃度は、0.6Mと示された。(この結果を、CA4P遊離酸の泡状物が溶媒を含むことを示す)。
【0163】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩)
4mLのHPLCバイアルに、L−ヒスチジン(900μL、0.2M、180μmol)、CA4P遊離酸(300μL、0.6M、180μL)、およびイソプロピルアルコール(1.0mL)を添加した。得られた溶媒を、ロータリーエバポレート(水浴の温度=39〜40℃)して、減圧下で約1.5mLまで減少させた。イソプロピルアルコールの別の1.0mLを添加して、そしてこの体積を約1.5mLまでさらに減少させた。少量の結晶体を、溶媒中で得た。エバポレーションプロセスを止め、そしてこのバイアルをキャップし、周囲温度で5時間静置させた。この結晶固体を、吸引を伴って、Whatman # 54フィルター紙を介して濾過することによって単離し、イソプロピルアルコール(約2mL)で洗浄し、そして窒素気流下で一晩かけて乾燥し、82.7mgのCA4Pモノ−L−ヒスチジンを白色固体として得た。得られたCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩プロドラックは、結晶固体であった;固体のKarl Fisher分析により、この水内容物が4.66%であったことを示した。これは、1つの塩分子当たり1.5個の水分子を有する水和物の結晶固体として計算した(143μmol,79%の収率):1H NMR(300MHz,D2O)δ 3.33(d,J=6.59Hz,2H,C(21)H2),3.67(s,6H,C(15)H3およびC(17)H3),3.74(s,3H,C(16)H3),3.82(s,3H,C(18)H3),4.01(t,J=6.50Hz,IH,C(20)H),6.53(d,J=12.25Hz,1H,C(8)H),6.62(d,J=12.25Hz,1H,C(7)H),6.62(s,2H,C(10)HおよびC(14)H),6.94(d,J=8.00Hz,1H,C(3)H),7.01(d,J=8.00Hz,1H,C(4)H),7.21(s,1H,C(6)H),7.37(s,1H,C(23)H,8.63(s,1H,C(24)H);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 26.12(C21),53.93(C20),56.26(2C,C15,C17),56.35(Cl8),61.32(C16),106.86(2C,C10,C14),113.26(C3),118.03(C23),122.04(d,JPC=2.3Hz,C6),125.52(C4),127.80(C22),129.40(C8),130.05(C7),130.57(C5),133.99(C9),134.34(C24),136.18(C12),141.37(d,JPC=6.90Hz,Cl),150.01(d,JPC=4.60Hz,C2),152.52(2C,C11およびC13),172.87(C19);31P NMR(121MHz,{1H),D2O)δ−2.61(s)。C24H30N3O10P・1.5 H2Oの計算値:C,49.83;H,5.75;N,7.26。実測値:C,50.13;H,5.78;N,7.26。
【0164】
この手順の生成物のKarl Fisherおよび元素分析により、結晶塩がセスクイハイドレートであることを示した。このDSC分析は、158.6degCに融解吸熱を有する1つのメジャーな結晶形態を示した(図5を参照のこと)。この材料に関して得られた粉末X線データを、図8(トップパターン)に示した。
【0165】
多型の差異を、結晶混合物の全体積に関してCA4P遊離酸のmmolの関数として室温において観測した。上の手順において、結晶混合物の全体積の1ml当たり、0.2mmolのCA4P遊離酸を使用した。結晶混合物の全体積の1ml当たり0.03mmolのCA4P遊離酸が使用されるような、上記手順の改良により、塩の1分子当たり1.8の水分子を有するCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態を提供した(図6を参照のこと、試料サイズ3,8500mg;このDSC分析により、184.9decCにおいて融解吸熱を有する1種の結晶形態を示し、そして1H NMR分析により、CA4P:ヒスチジン=1:1の比を示した)。この材料に関して得られた粉末X線データが、図8(ボトムパターン)に示される。結晶混合物の全体積の1ml当たり0.07mmolのCA4P遊離酸が使用されるような、上記手順の改良により、CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態の混合物を提供し、一方は、塩の1分子当たり1.5の水分子を有し、そして他方は、塩の1分子当たり1.8の水分子を有した(図7を参照のこと、試料サイズ4,4500mg)。この混合物のKarl Fisherおよび元素分析により、結晶塩がセスクイハイドレートであることが示された。このDSC分析は、2つの結晶形態を例示する。この吸熱は、それぞれ図5および6のものと類似していた。この材料から得られた粉末X線データを、図9に示す。このDSCおよび粉末X線データは、上記の1.5:1および1.8:1(水:塩)形態は、2種類の異なる結晶形態であることを示した。上記のように、これらの形態の混合物は、容易に形成される。シーティング(seeding)により、各形態は、純粋な状態で作製された。
【0166】
ヘミヘプタハイドレートCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態はまた、水の存在下で得られ得る。しかし、この形態は、セスクイハイドレートCA4Pモノ−L−ヒスチジン塩形態に変換する。
【0167】
上記で説明されるように、オルニチン、リジン、アルギニン、およびトリプトファンが挙げられるが、これらに限定されない種々の天然または非天然のアミノ酸は、上記のヒスチジンと容易に置換され得、本発明の化合物を生成する。
【0168】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩(スケールアップ))
(L−ヒスチジン水性ストック溶液(0.2M))
L−ヒスチジン(1.90g、12.0mmol)を、脱イオン化水(60mL)中に溶解し、0.2Mの溶液を形成する。(この溶液をまた、インサイチュで調製し得る)。
【0169】
(イソプロピルアルコール(IPA)中のCA4P遊離酸ストック溶液(0.17M))
CA4P遊離酸を、以下の手順で調製し得る。酸性等価物を、2.1まで下げ、塩化ナトリウムの添加は、必要ではない。以下の手順は例示であり:CA4Pジナトリウム塩(8.94g、20.3mmol)を、イオン化水(50mL)中に溶解した。酢酸エチル(200mL)および飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)を、迅速に攪拌した状態の得られた溶液に添加した。白色のケークを形成した。0.5Nの塩酸溶液(220mL)を、滴下添加し、このケークを溶解した(水相の最終pHは、約1(pH紙)であった)。有機相を分配した。この水相を酢酸エチル(1×200mL、次いで、2×150mL)で抽出した。この有機相を合わせて、そしてNa2SO4で乾燥した。濾過し、そして溶媒をエバポレート(ロータリーエバポレーター、水浴の温度=40℃)して、CA4P遊離酸の厚手のフィルムを得、これを、100mLのIPAに溶解した。得られた溶液の濃度は、1H NMRにより0.17であると決定した。
【0170】
上記で決定した濃度を確認するために、60μLのヒスチジン溶液(0.2M)および70μLのCA4Pの遊離酸溶液を、4mLのHPLCバイアル中にピペットした。この溶媒をロータリーエバポレートして、乾固させた。この固体を、0.7mLのD2O中に溶解し、そして1H NMRによって分析し、1:1のヒスチジン:CA4Pの遊離酸を得た。CA4Pの遊離酸の全部で1.7mmolが、得られた(84%の収率)。
【0171】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン水和物塩(スケールアップ))
250mLの丸底フラスコを、70.4mLのCA4P遊離酸溶液(0.17M、12.0mmol)および50mLのIPAで充填した。L−ヒスチジンの溶液(60mL、0.2M、12.0mmol)を、迅速に攪拌するCA4P遊離酸溶液に滴下添加した。得られた白色のスラリーを、40℃で30分間、周囲温度で3時間攪拌し、続いて、1時間0℃まで冷却した(氷浴)。結晶固体を、吸引を伴う、Whatman # 54濾紙を介する濾過により単離し、冷却イソプロピルアルコールで洗浄し、そして減圧下(真空デシケータ)で88時間乾燥して、白色固体として6.07gのCA4Pモノ−L−ヒスチジンを得た。固体のKarl Fisher分析により、水内容物が4.48%であることを示した。1つの塩分子当たり1.5個の水分子を有する水和物の結晶固体として計算した(10.5mmol、87%収率):1H NMR(300MHz,D2O)δ 3.32(d,J=6.6Hz,2H,C(21)H2),3.68(s,6H,C(15)H3およびC(17)H3),3.74(s,3H,C(16)H3),3.82(s,3H,C(18)H3),4.00(t,J=6.6Hz,1H,C(20)H),6.53(d,J=12.1Hz,1H,C(8)H),6.62(d,J=12.1Hz,1H,C(7)H),6.64(s,2H,C(10)HおよびC(14)H),6.95(d,J=8.3Hz,1H,C(3)H),7.02(d,J=8.3Hz,1H,C(4)H),7.20(ブロード,lH,C(6)H),7.36(ブロード,1H,C(23)H,8.62(d,J=1.3Hz,1H,C(24)H);13CNMR(100MHz,{1H},D2O)δ 26.11(C21),53.92(C20),56.22(2C,C15,C17),56.32(C18),61.28(C16),106.82(2C,C10,C14),113.20(C3),118.03(C23),122.01(dq,JPC=2.3Hz,C6),125.48(C4),127.78(C22),129.38(C8),129.97(C7),130.54(C5),133.92(C9),134.31(C24),136.16(C12),141.38(d,JPC=6.1Hz,C1),149.98(d,JPC=5.4Hz,C2),152.48(2C,C11およびC13),172.86(C19)。C24H30N3O10P・1.5H2Oの計算値:C,49.82;H,5.75;N,7.26;P,5.35。実測値:C,49.92;H,5.84;N,7.26;P,5.84。さらに、示差走査熱量計を使用して、得られた化合物が、158℃に大量に吸熱を有し、そして174℃に少量の吸熱を有することが決定された。
【0172】
任意の適切な天然または非天然のアミノ酸は、本発明の他の化合物を産生するための手順に容易に置換され得る。
【0173】
CA4Pモノ−L−ヒスチジン塩を室温で結晶化させて、水和物が一般に得られる。上記の室温よりも高い温度(特に、70℃よりも高い温度)で、結晶化プロセスを実施し、無水物塩が得られる。ヒドラジン塩水和物は、例えば、溶媒(例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、またはアセトン)中でハイドレート形態を、40℃のような温度で(例えば、2日間かけて)、スラリーすることによって、無水結晶形態に(特に、210℃で溶融して)変換し、続いて、濾過し、洗浄し、そして45℃のような温度で(例えば、一晩かけて)、減圧乾燥した。この無水形態(特に、非吸湿性)が好ましい。
【0174】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩)
200mLの丸底フラスコを、L−ヒスチジン(0.2620g、1.65mmol)および16.5mLのイオン化水で充填した。得られた溶液を、74〜76℃(油浴温度)でマグネチックスターラーを用いて加熱した。CA4P遊離酸の溶液(8.7mL、0.19M(IPA中)、1.65mmol)を添加して、続いて、イソプロピルアルコール(90mL)を添加した。得られた溶液を、約1分間で乳状にした。75〜76℃で2時間攪拌し続けて、次いで、周囲温度で1時間攪拌した。針結晶固体を、吸引を伴って、Whatmann #4濾紙を介して濾過することによって単離し、そして空気(吸引)の気流かで一晩(19.5時間)乾燥し、真空デシケーター中で24時間乾燥し、白色固体として0.7788gのCA4Pモノ−L−ヒスチジンを白色固体として得た(1.41mmol,86%収率):mp 211.49℃(DSC);1H NMR(40OMHz,D2O)δ 3.30(d,J=6.5Hz,2H、H−21),3.65(s,6H,H−15およびH−17),3.72(s,3H,H−16),3.80(s,3H,H−18),3.99(t,J=6.5Hz,1H,H−20),6.50(d,J=12.3Hz,1H,H−8)、6.59(d,J=12.3Hz,1H,H−7),6.60(s,2H,H−10およびH−14),6.92(d,J=8.5Hz,1H,H−3),6.97(ブロードd,J=8.5Hz,1H,H−4),7.19(ブロードs,1H,H−6),7.33(ブロードs,1H,H−23),8.58(ブロードs,1H,H−24);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 27.11(C−21),54.88(C−20),57.17(2C,C−15およびC−17),57.24(C−18),62.24(C−16),107.77(2C,C−10およびC−14),114.17(C−3),118.90(C−23),122.93(d,JPC=2.3Hz,C−6),126.40(C4),128.88(C−22),130.29(C−8),131.00(C−7),131.47(C−5),134.93(C−9),135.32(C−24),137.08(C−12),142.31(d,JPC=6.1Hz,C−1),150.91(d,JPC=4.6Hz,C−2),153.45(2C,C11およびC−13),173.84(C−19)。C24H30N3O10Pの計算値:C,52.27;H,5.48;N,7.62;P,5.61。実測値:C,52.03;H,5.43;N,7.57;P,5.57。
【0175】
(CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物(スケールアップ))
2000mLの3つ口丸底フラスコは、マグネチックスターラー、500mLの添加ロート、およびサーモカップルを備え、このサーモカップルは、加熱マントルを制御するTherm−O−Wathch L7−1100SA/28Tに連結した。L−ヒスチジン(3.42g、21.6mmol)をフラスコに添加し、続いて、216mLの脱イオン化水に添加した。得られた溶液を、攪拌しながら74〜80℃に加熱した。CA4P遊離酸(120mL、0.18M(IPA),21.6mmol)を添加し、続いて、添加ロートを介して溶液の温度を73〜74℃を維持するような速度で添加した(14分必要とした)。IPAの添加後に、得られた透明な溶液を、CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩(トレース量)でシードした。この溶液の温度を80℃まで上昇させ、そしてシードの約3分後に結晶化が起こった。この温度を30分かけて74℃までゆっくりと下げ、そしてさらに1.5時間73〜74℃に維持した。この反応混合物を、3.5時間で31℃にゆっくりと冷却した。針結晶固体を、吸引を伴ってWhatman#4濾紙で濾過紙、IPA(100mL)を用いて洗浄し、そして空気(吸引)下で一晩(16時間)かけて乾燥し、そして真空デシケーター中で21.5時間乾燥し、10.11gのCA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩を白色固体(18.3mmol、85%収率)を得た:mp 213.65℃(DSC);1H NMR(400MHz,D2O)δ 3.30(d,J=6.5Hz,2H,H−21),3.65(s,6H,H−15およびH−17),3.72(s,3H,H−16),3.80(s,3H,H−18),3.99(t,J=6.5Hz,1H,H−20),6.49(d,J=12.0Hz,1H,H−8),6.58(d,J=12.0Hz,1H,H−7),6.59(s,211,H−10およびH−14),6.91(d,J=8.5Hz,1H,H−3),6.97(dd,J=8.3,1.7Hz,1H,H−4),7.19(ブロードt,J=1.7Hz,1H,H−6),7.34(ブロードs,1H,H−23),8.60(d,J=1.4Hz,1H,H−24);13C NMR(100MHz,{1H},D2O)δ 27.07(C−21),54.86(C−20),57.18(2C,C−15およびC−17),57.26(C−18),62.24(C−16),107.78(2C,C−10およびC−14),114.18(C−3),118.94(C−23),122.95(d,JPC=2.3Hz,C−6),126.43(C−4),128.79(C−22),130.31(C−8),130.98(C−7),131.49(C−5),134.91(C−9),135.29(C−24),137.10(C−12),142.31(d,JPC=6.9Hz,C−1),150.92(d,JPC=4.6Hz,C−2),153.45(2C,C−11およびC−13),173.82(C−19)。C24H30N3O10Pの計算値:C,52.27;H,5.48;N,7.62;P,5.61。実測値:C,52.23;H,5.35;N,7.60;P,5.55。
【0176】
CA4Pモノ−L−ヒスチジン無水物塩を、単結晶形態として再現可能に作製した。図10は、DSC(サンプルサイズ2.3600mg)を示し;図11は、この材料の粉末X線データを示す。
【0177】
【化37】
(実施例4)
(シスCA4Pモノグリシンメチルエステルの調製)
CA4PジナトリウムからCA4Pモノグリシンメチルエステルを調製するための以下の手順は、有用である。この手順は、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの存在下でグリシンメチルエステルヒドロクロリドを直接使用することで、グリシンメチルエステル遊離塩基を使用する調製と比較して増強した安定性を提供する。さらに、CA4P遊離酸の調製が有意に改良され、濃縮した硫酸(例えば、希塩酸ではない)は、中和に使用される(例えば、抽出のための酢酸エチルを使用し、次いでエバポレーションにより除去される)。このトランス−CA4Pの形成は、この改良手順において避けられる。
【0178】
(試薬および方法)
以下の試薬および化学物質は、市販の供給源から得られ、そしてさらなる精製なしで使用された:イソプロピルアルコール(IPA)(B&J Brand,高度の精製溶媒グレード)、硫酸(EM Science,95〜98%,Lot # 35310)、グリシンメチルエステルヒドロクロリド(Aldrich Chemical Co.99%標識,Lot # 03214MU)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(Aldrich Chemical Co.99.5%標識、Lot # 02819 ER)。多重核NMRスペクトルを、Brucker DRX400スペクトルで記録した。1Hおよび13C NMR化学シフトを、テトラメチルシランと比較したppmで報告する(この13C
NMR化学シフトを、外部基準としてメタノールを使用して決定した)。この2D NMR実験(HMQC(Heteronuclear Multiple
Quantum Correlation spectroscopy)、どの分子の1Hが、どの13C核(または他のX核)に結合するかを決定する逆化学シフト相関実験)];およびHMBC(Heteronuclear Multiple Bond Correlation spectroscopy)長い範囲の1H−13Hの相関、ならびに分子の構造、1Hおよび13Cのアサイメントを決定するのに適した、改良されたHMQCのバージョン)を、この構造に対する1Hおよび13C NMRシグナルのアサイメントを助けるために処理した。示差走査熱分析(DSC)を、CSC/2920 Differential Scanning Calorimeter,TA Instrumentsを用いて実施した。
【0179】
(シスCA4Pモノグリシンメチルエステル塩)
100mLの丸底フラスコを、シスCA4Pジナトリウム塩(2.866g、6.51mmol)およびIPA(30mL)で充填した。得られたスラリーを、周囲温度で機械で攪拌した。硫酸(0.365mL、6.51mmol)のIPA溶液(60mL)を、このスラリーに滴下添加した。この混合物を、連続的に約10分間攪拌し、そしてWhatman #1濾紙を使用して、吸引を伴って濾過した。この固体(IPAに溶解されるNa2SO4)を、IPA(10mL)で洗浄した。濾過しそして洗浄し、CA4P遊離酸を含むものを、別の100mLの丸底フラスコに合わせた。グリシンメチルエステルヒドロクロリド(0.826g、6.51mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.254mL、7.16mmol)を、合わせた溶液に添加した。得られた混合物を、機械で攪拌しながら油浴中で加熱した。60℃で、この混合物は、透明な液体となった。65℃で、この溶液は、スラリーとなった。78℃で、このスラリーは溶解し、透明な溶液を形成した。加熱をストップし、そしてこの溶液を油浴中でゆっくりと冷却させた。60℃で、シスCA4Pモノグリシルメチルエステル塩のシードを、溶液に添加して、スラリーを形成した。60℃〜周囲温度まで約1時間かけて攪拌し続け、次いで、周囲温度で一晩攪拌した。この白色の結晶固体を、Whatman #1濾紙を使用して吸引を伴って濾過することによって単離し、そしてIPA(3×10mL)で洗浄し、そして6時間空気の流れで乾燥し、2.609gのシスCA4Pモノグリシンメチルエステル塩(5.38mmol,82.6%収率)を得た:HPLC分析,100%のシス−CA4P;mp 136.40℃(DSC);1H NMR(400MHz,D2O)δ
3.52(s,6H,H15およびH−17),3.61(s,3H,H−16),3.71(s,3H,H−18),3.77(s,3H,H−21),3.87(s,2H,H−20),6.26(d,J=12.1Hz,1H,H−8),6.42(s,2H,H−10およびH−14),6.43(d,J=12.1Hz,1H,H−7),6.70(d,J=8.8Hz,1H,H−3),6.79(ブロードd,J=8.8Hz,1H,H−4),7.16(ブロードs,1H,H−6);13CNMR(100MHz,{1H},D2O)δ 41.27(C−20),54.58(C−21),56.99(2C,C−15およびC−17),57.21(C−18),62.09(C−16),107.60(W,C−10およびC−14),113.89(C−3),122.98(C−6),126.22(C−4),130.25(C−8),130.69(C−7),131.37(C−5),134.61(C−9),137.09(C−12),142.42(d,2JPC=6.9Hz,C−1),150.89(d,3JPC=4.6Hz,C−2),153.33(2C,C−11およびC−13),169.95(C−19)。C21H28NO10P:C,51.96;H,5.81;N,2.88;P,6.38の計算値。実測値:C,51.74;H,5.79;N,2.87;P,6.30。
【0180】
【化38】
(注記:上記の番号付けシステム(このような番号付けシステムが、本明細書中で記載される場合はいつでも)は、便宜のためだけであり、IUPACの命名法とは一致しないかもしれない)。
【0181】
シスCA4Pモノグリシルメチルエステル塩(サンプルサイズ:3.7400mg)のDSCは、図12に示され;図13は、この材料の粉末X線データを示す。
【0182】
(実施例5)
(CA4P遊離酸のグリシンエチルエステル塩の調製)
酢酸エチル(2mL)、CA4Pイソプロパノール溶液(0.42Mの溶液(150μL)、63μmol)およびグリシンエステルtert−ブチルエステル溶液(0.08Mの溶液(800μL)、64μmol)を、HPLCバイアルに添加し、約3分間激しく攪拌した。得られた透明な溶液を、別の実験からのスラリーの滴でシードし、そしてこの混合物を、周囲温度で一晩放置した。結晶ではない、形成された白色の固体は、顕微鏡実験に基づいており、この混合物は、3日間以上、周囲温度で放置した。メチルtert−ブチルエーテル(1mL)を添加し、そしてこの混合物を約10分間攪拌した。得られた混合物の顕微鏡実験は、この固体が結晶針に変えられることを示した。この針状物を減圧濾過によって単離し、そして乾燥してCA4Pのグリシンエチルエステル塩(22.4mg、66M%収率)を得た。プロトンNMR分析は、グリシンエステルエーテル:CA4Pの比が1.7:1であることを示した。CA4Pグリシンエチルエステルの1H NMRデータ:1H NMR(300MHz,D2O)δ 1.20(t,J=7.2Hz,3H,CH3),3.60(s,6H,H−15およびH17),3.66(s,3H,H−16),3.74(s,3H,H−18),3.79(s,2H,CH2N),4.21(q,J=7.2Hz,2H,CH2CH3),6.44(d,J=12.2Hz,1H,H−8),6.55(d,J=12.2Hz,1H,H−7),6.57(s,2H,H−10およびH−14),6.80(d,J=8.7Hz,1H,H−3),6.85(ブロードd,J=8.7Hz,1H,H−4),7.23(ブロードs,1H,H−6)。
【0183】
本発明は、本明細書中に記載される特定の実施形態によって範囲を限定されない。さらに、本明細書中に記載されるものに加えて、本発明の種々の改変は、上記の記載から当業者に明らかとなる。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ると意図される。
【0184】
種々の刊行物および特許文献は、本明細書中で引用される、これらの開示は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1は、CA4PのモノTRIS塩(実施例1において調製された)の、25℃での水分の吸着/脱離プロフィールを示す。このデータは、VTI Model MB−30OW Moistureバランスを使用して、10%の増分で10%〜90%の相対湿度レベルで得た。各湿度での最大平衡時間を、4時間に設定した。
【図2】図2は、CA4PのモノTRIS塩(実施例1で調製した)のサンプルの粉末X線回折パターンを示し、このサンプルは、異なる溶媒(水、イソプロパノール、エタノール、アセトニトリルおよびアセトン)中で、最初に70〜75℃で5〜10分間、次いで室温で一晩スラリーにした。このX線回折図を、Rigaku Model Miniflex X線回折計を使用して、1分当たり1°の走査速度で2°〜40°2θでCu−Kα源を用いて記録した。
【図3】図3は、1分当たり10℃の加熱速度で窒素流下で得られた、CA4PモノTRIS塩(実施例1で調製した)の示差走査熱分析(DSQ自記温度記録図(Model DSC 2910,TA機器)を示す。
【図4】図4は、CA41モノTRIS塩(実施例1で調製した)の、25℃でのpH−溶解度プロフィールを示す。このpHは、水酸化ナトリウムを用いて調整した。
【図5】図5は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)(2.0900mgのサンプルサイズ)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図6】図6は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図7】図7は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図8】図8は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【図9】図9は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン塩(実施例3で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【図10】図10は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン無水物塩(実施例3で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図11】図11は、CA4Pのモノ−L−ヒスチジン無水物塩(実施例3で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【図12】図12は、CA4Pモノグリシンメチルエステル塩(実施例4で調製した)の示差走査熱分析(DSC)の自記温度記録図を示す。
【図13】図13は、CA4Pモノグリシンメチルエステル塩(実施例4で調製した)の粉末X線回折パターンを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本実施例に記載の化合物。
【請求項1】
本実施例に記載の化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−195740(P2008−195740A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121719(P2008−121719)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【分割の表示】特願2002−526877(P2002−526877)の分割
【原出願日】平成13年9月12日(2001.9.12)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【分割の表示】特願2002−526877(P2002−526877)の分割
【原出願日】平成13年9月12日(2001.9.12)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】
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