説明

コンプライアンスモジュール

【課題】簡単な機構で大きいコンプライアンス量を得られるコンプライアンスモジュールを提供する。
【解決手段】コンプライアンスモジュール20は、ロボットハンド5に装着される第1ベースプレート21と、第1ベースプレート21の下方に間隙を有して順次配置された第2乃至第4ベースプレート22〜24から構成される。第2ベースプレート22はリニアガイド25を介して第1ベースプレート21に対してX方向へスライド可能に接続され、さらに、第2ベースプレート22を中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第2ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設ける。第3ベースプレート23は第2ベースプレート22に対してY方向へスライド可能に接続される。第4ベースプレート24は第3ベースプレート23に対してθ方向へ回動可能に接続される。また、第3・第4ベースプレートにも中立位置復帰機構と中立位置保持機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットハンドに装着されてワークを把持するフィンガモジュールの位置ずれを補償するコンプライアンスモジュールに関するものであり、特に、大きいコンプライアンス量を備えたコンプライアンスモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、ワーク1が複数の加工装置2〜4をまたがって移動しながら加工されていく場合、ロボットハンド5によりワーク1を自動的に把持(あるいは吸着)して移動させる際に、それぞれの加工装置2〜4を位置精度よく並べる必要がある。ロボットハンド5にフィンガモジュール6を装着してワーク1を搬送する場合、フィンガモジュール6の停止位置のばらつき、ワーク1の寸法および載置位置のばらつきなどで、双方の相対位置がずれるため、これを修正する必要があった。
【0003】
画像処理制御によってロボットハンド5の位置決めを行えば位置精度を向上させることができるが、極めてコスト高になるという問題がある。このため、ロボットハンド5とフィンガモジュール6の間にコンプライアンスモジュール7を装着し、該コンプライアンスモジュール7でフィンガモジュール6の位置ずれを機械的に補償するようにしている。この位置ずれは、主として水平に直行するX方向とY方向のずれと、中心軸周りに水平に回動するθ方向のずれがある。
【0004】
図8〜図10に示すように、加工冶具8のガイド穴9にフィンガモジュール6のガイドピン10を挿通することにより、吸着パッド6aに吸着されたワーク1のガイド穴11と、加工冶具8に設けたワーク用のガイドピン12とが合致して、ワーク1が位置決めされる。図示したように、ガイドピン10の位置がガイド穴9に対して、ΔXだけ位置ずれている場合であっても、このときのフィンガモジュール6の位置ずれをコンプライアンスモジュール7が補償し、ガイドピン10の先端がガイド穴の面取り部9aに案内されながら挿入されて、ワーク1が正確に加工冶具8に位置決めされる。
【0005】
ワーク1をセットした後に、ロボットハンド5が上昇してコンプライアンスモジュール7が加工冶具8から離反すれば、復帰機構の動作によりコンプライアンスモジュール7の姿勢が元の中立位置に戻る。また、ワーク1の加工が終了したときに、再びロボットハンド5が加工冶具8からワーク1を取り出して上昇したときも、復帰機構の動作によりコンプライアンスモジュール7の姿勢が中立位置に戻る。
【0006】
従来のコンプライアンスモジュールとしては、例えば、組立部品を把持する部品把持装置を平面内で移動可能に制圧保持し、かつ前記部品把持装置を静圧支持する媒体を絞りを介して排出する排出部を設けるとともに、媒体を前記部品把持装置に供給する加圧力を可変とするようにした構成が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
また、外力作用により固定フレームに対して相対移動する稼動フランジの求心動作により相対芯合せを行う芯合せ装置であって、前記可動フランジの横方向の求心動作を行う第1求心手段と、可動フランジの傾き方向の求心動作を行う第2求心手段とを具備する芯合せ装置も知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭64−16336号公報
【特許文献2】特開平4−331088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の発明は、ソレノイド弁に高圧用または低圧用のレギュレータを接続し、最初に部品を挿通した後で次の挿通動作を行うときに、前記レギュレータによって容易に位置を変位させるようにしてある。しかし、流体圧による制御機構が複雑となり、図7に示すような複数装置をまたがって搬送する場合は、それぞれの装置において位置決めのための流体圧条件が必要となり、管理がたいへんである。
【0009】
特許文献2記載の発明は、求心動作(中心位置に復帰させる動作)を行う手段として、弾性体と可動球体を使用している。この構成では、大きいコンプライアンス量を得るためには、変位方向によっては制御しきれない場合がある。特に水平回動するθ方向に対しては大きなコンプライアンス量を得ることが困難である。大きなコンプライアンス量を得ようとすれば、弾性体の変位力を小さくしたいが、そうすると求心動作が緩慢となって振動が発生する。この振動を抑制するためには、可動球体の受け穴を深くして可動球体をすみやかに固定すればよいが、変位させる初期の力が強くかかってしまい実用にならない。また、コイルばねの直径方向から分力が作用するため、コイルばねに無理な力が加わって壊れやすい。
【0010】
そこで、本発明は簡単な機構で大きいコンプライアンス量を得られるコンプライアンスモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ロボットハンドに装着されてワークを把持するフィンガモジュールの位置ずれを補償するコンプライアンスモジュールであって、水平に直交するX方向とY方向へのコンプライアンス動作と、水平に回動するθ方向へのコンプライアンス動作とを実行するコンプライアンスモジュールにおいて、前記コンプライアンスモジュールは、ロボットハンドの下端部に装着される第1ベースプレートと、第1ベースプレートの下方に間隙を有して順次配置された第2乃至第4ベースプレートからなり、前記第2ベースプレートはリニアガイドを介して第1ベースプレートに対してX方向へスライド可能に接続され、さらに、第2ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第2ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、前記第3ベースプレートはリニアガイドを介して第2ベースプレートに対してY方向へスライド可能に接続され、さらに、第3ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第3ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、前記第4ベースプレートは中央部の軸受部を介して第3ベースプレートに対してθ方向へ回動可能に接続され、さらに第4ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第4ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、該第4ベースプレートの下部に前記フィンガモジュールを装着することを特徴とするコンプライアンスモジュールを提供する。
【0012】
この構成によれば、水平X方向へのコンプライアンス動作は、第1ベースプレートと第2ベースプレートとの間に設けられたリニアガイドを介して第2ベースプレートがスライドすることで補償し、水平Y方向へのコンプライアンス動作は、第2ベースプレートと第3ベースプレートとの間に設けられたリニアガイドを介して第3ベースプレートがスライドすることで補償する。また、水平θ方向へのコンプライアンス動作は、第3ベースプレートと第4ベースプレートとの間に設けられた軸受部を介して第4ベースプレートが回動することで補償する。そして、ロボットハンドを上昇させたときは、各ベースプレートが中立位置復帰機構によって中立位置に引き戻され、中立位置保持機構によってすみやかに中立位置に停止する。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記リニアガイドは、ガイドレールと該ガイドレールにスライド可能に取り付けられた複数のスライドブロックとからなり、それぞれのスライドブロックには該スライドブロックと一体に移動する係止部材が固設されるとともに、それぞれのスライドブロックを引張コイルばねで接続して中立位置復帰機構と中立位置保持機構が形成され、コンプライアンス動作時は、下方のベースプレートがコンプライアンス動作側へスライドして一方の係止部材およびスライドブロックを外側へ押し出し、コンプライアンス非動作時は、前記双方のスライドブロックが内側へ引かれてそれぞれの係止部材が上下のベースプレートの端部に係止するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のコンプライアンスモジュールを提供する。
【0014】
この構成によれば、第1ベースプレートの下面にはX方向にガイドレールが固設され、第2ベースプレートの下面にはY方向にガイドレールが固設されている。そして、それぞれのガイドレールに沿って複数のスライドブロックがスライド可能に取り付けられている。コンプライアンス動作が行われると、下方のベースプレートがコンプライアンス動作側へスライドし、該下方のベースプレートの端部に係止している一方の係止部材が、引張りコイルばねの付勢に抗してスライドブロックと一体に外側へ押し出される。
【0015】
ロボットハンドを上昇させてコンプライアンス非動作になったときは、前記外側へ押し出されていた係止部材が引張コイルばねの付勢によりスライドブロックと一体に内側へ引き戻され、この係止部材が下方のベースプレートの端部を内側へ押圧する。押圧された下方のベースプレートは反対側の係止部材に当接して停止し、上下のベースプレートの両端部が前記引張コイルばねに付勢された双方の係止部材に挟持されるため、前記下方のべスプレートが中立位置で振動することなく、すみやかに停止して中立位置に保持される。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記リニアガイドは第1ベースプレートと第2ベースプレート間のほぼ中央部X方向と、第2ベースプレートと第3ベースプレート間のほぼ中央部Y方向とに設けられ、さらに、それぞれのリニアガイドの両側には前記リニアガイドと平行に複数のスライド支持部材を設けて上下のベースプレートを相対移動可能に支持するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のコンプライアンスモジュールを提供する。
【0017】
この構成によれば、上下のベースプレートの中央部に設けられたリニアガイドは、コンプライアンス動作時に、下方のベースプレートがX方向またはY方向にスライドして位置ずれを補償し、一方、コンプライアンス非動作時は下方のベースプレートを中立位置に引き戻す。該リニアガイドの両側に設けられたスライド支持部材は、上下のベースプレートが相対的にスライドする際に、円滑にスライドできるように支持する。
【0018】
請求項4記載の発明は、上記第3ベースプレートと第4ベースプレートの間に設けられる中立位置復帰機構は、上記軸受部を挟んで水平に対向する二対の引張コイルばねを配置し、それぞれの引張コイルばねの隣接する一端部を第3ベースプレートの下面に係止するとともに隣接する他端部を第4ベースプレートの上面に係止して構成されたことを特徴とする請求項1記載のコンプライアンスモジュールを提供する。
【0019】
この構成によれば、軸受部を挟んで水平に対向して配置された二対の引張コイルは均等な引張状態を維持した状態で配置されており、コンプライアンス動作時に第3ベースプレートに対して第4ベースプレートがθ方向へ回動すると、一対の引張コイルばねのうち一方はさらに引張られる状態となり、他方は引張が縮む状態となる。したがって、コンプライアンス非動作になったときは、双方の引張コイルばねが均等な引張状態に戻ろうとする復元力により、第4ベースプレートが反対方向へ回動して中立位置に復帰する。
【0020】
請求項5記載の発明は、上記第3ベースプレートと第4ベースプレートの間に設けられる中立位置保持機構は、第4ベースプレートが中立位置にあるときに、第3または第4何れか一方のベースプレートに凹部を設けるとともに他方のベースプレートには前記凹部に係合する可動球体を設け、さらに、第3および第4ベースプレートに吸着面を対向させた一対の磁石を固設して構成されたことを特徴とする請求項1または4記載のコンプライアンスモジュールを提供する。
【0021】
この構成によれば、コンプライアンス動作時にθ方向へ回動した第4ベースプレートが、コンプライアンス非動作になって中立位置へ復帰したときに、可動球体が凹部に係合して第4ベースプレートを中立位置に停止させ、第4ベースプレートが揺動するのを抑止しする。また、吸着面を対向させた一対の磁石の吸着力により、第4ベースプレートは確実に中立位置に停止し、より一層、第4ベースプレートの振動が抑止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上述したように、水平X方向とY方向へのコンプライアンス動作はリニアガイドを介してベースプレートをスライドさせることにより補償し、水平θ方向へのコンプライアンス動作は軸受部を介してベースプレートを回動することにより補償するので、簡単な構成で大きいコンプライアンス量を得ることができる。また、引張コイルばねの伸長方向にベースプレートスライドしてコンプライアンス動作が行われ、該引張コイルばねの収縮方向にベースプレートが引かれて中立位置に戻るため、引張コイルばねに無理な力が作用することがなく、きわめて円滑に中立位置へ復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るコンプライアンスモジュールについて、好適な実施例をあげて説明する。簡単な機構で大きいコンプライアンス量を得られるコンプライアンスモジュールを提供するという目的を達成するために、本発明はロボットハンドに装着されてワークを把持するフィンガモジュールの位置ずれを補償するコンプライアンスモジュールであって、水平に直交するX方向とY方向へのコンプライアンス動作と、水平に回動するθ方向へのコンプライアンス動作とを実行するコンプライアンスモジュールにおいて、前記コンプライアンスモジュールは、ロボットハンドの下端部に装着される第1ベースプレートと、第1ベースプレートの下方に間隙を有して順次配置された第2乃至第4ベースプレートからなり、前記第2ベースプレートはリニアガイドを介して第1ベースプレートに対してX方向へスライド可能に接続され、さらに、第2ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第2ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、 前記第3ベースプレートはリニアガイドを介して第2ベースプレートに対してY方向へスライド可能に接続され、さらに、第3ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第3ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、前記第4ベースプレートは中央部の軸受部を介して第3ベースプレートに対してθ方向へ回動可能に接続され、さらに第4ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第4ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、該第4ベースプレートの下部に前記フィンガモジュールを装着することにより実現した。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明に掛るコンプライアンスモジュールの正面図であり、図2は図1のA−A線断面図である。図1〜図2に示すように、このコンプライアンスモジュール20は、ロボットハンド5の下端部に装着される第1ベースプレート21と、該第1ベースプレート21の下方に間隙を有して順次配置された第2ベースプレート22と、第3ベースプレート23と、第4ベースプレート24から構成されている。第4ベースプレート24の下部にはワーク1を把持(あるいは吸着)するフィンガモジュール6が装着されている。
【0025】
前記第2ベースプレート22は、リニアガイド25を介して第1ベースプレート21に対してX方向(同図で紙面の左右方向)へスライド可能に接続されている。このリニアガイド25は、上下何れかのベースプレートに固設されたガイドレール26と、このガイドレール26にスライド可能に取り付けられた複数のスライドブロック27,27とからなり、内部にはスチールボールが封入されて上下のベースプレート21,22が極めて円滑に相対移動できるように構成されている。
【0026】
本実施例では、第1ベースプレート21と第2ベースプレート22間のほぼ中央部X方向にリニアガイド25が設けられ、該リニアガイド25のスライドブロック27には、スライドブロック27と一体にX方向へ移動する係止部材28が固設され、この係止部材28の外側端部には上下に係止ピン29が突設されている。そして、左右のスライドブロック27同士または係止部材28同士を引張コイルばね30で接続して内側へ付勢し、前記リニアガイド25に取り付けられた係止部材28、係止ピン29、引張コイルばね30などから、後述する中立位置復帰機構と中立位置保持機構が形成されている。
【0027】
また、前記リニアガイド25の両側(同図で紙面の前後方向)には、該リニアガイド25と平行に複数のスライド支持部材31,31が設けられている。このスライド支持部材31も前記リニアガイド25と同様に、上下のベースプレート21,22をX方向へ円滑に相対移動できるように支持している。
【0028】
前記第3ベースプレート23はリニアガイド32を介して第2ベースプレート22に対してY方向(同図で紙面の前後方向)へスライド可能に接続されている。このリニアガイド32は前述のリニアガイド25と同一構成であり、上下何れかのベースプレートに固設されたガイドレール33と、このガイドレール33にスライド可能に取り付けられた複数のスライドブロック34,34とからなっている。
【0029】
また、前記リニアガイド25と同様に、第2ベースプレート22と第3ベースプレート23間のほぼ中央部X方向にリニアガイド32が設けられ、該リニアガイド32のスライドブロック34にはY方向へ一体に移動する係止部材35が固設され、この係止部材35の外側端部には上下に係止ピン36が突設されている。そして、前後のスライドブロック34同士または係止部材35同士を引張コイルばね37で接続して内側へ付勢し、前記リニアガイド32に取り付けられた係止部材35、係止ピン36、引張コイルばね37などから、中立位置復帰機構と中立位置保持機構が形成されている。
【0030】
また、前記リニアガイド32の両側(同図で紙面の左右方向)には、該リニアガイド32と平行に複数のスライド支持部材38,38が設けられている。このスライド支持部材38も前記リニアガイド32と同様に、上下のベースプレート22,23をY方向へ円滑に相対移動できるように支持している。なお、前記第1ベースプレート21と第2ベースプレート22間に設けられたリニアガイド25およびスライド支持部材31と、第2ベースプレート22と第3ベースプレート23間に設けられたリニアガイド32およびスライド支持部材38とは、X方向とY方向の相違があるとともに、上下反対の状態に配置されているが、各種の動作および作用効果はまったく同一である。
【0031】
前記第4ベースプレート24は中央部の軸受部40を介して第3ベースプレート23に対してθ方向へ回動可能に接続されている。この軸受部40は、上下何れかのベースプレートに固設された軸41と、この軸41がベアリング(図示せず)を介して嵌入する軸受42とからなり、上下のベースプレートが軸受部40を介して水平方向へ極めて円滑に相互回動できるように構成されている。本実施例では、第3ベースプレート23の中央部下面に軸41が垂設され、第4ベースプレートの中央部上面に軸受42が設けられている。
【0032】
また、第3ベースプレート23下面の対向する二辺の中央部近傍にそれぞれピン45,45を下向きに固設するとともに、これと直交する方向の第4ベースプレートの二辺の中央部近傍にそれぞれピン46,46を上向きに固設する。そして、前記軸受部40を挟んで水平に対向する位置に二対の引張コイルばね43,44を配置し、それぞれの引張コイルばねの隣接する一端部43a,44aを前記ピン45に係止するとともに、隣接する他端部43b,44bを前記ピン46に係止して、中立位置復帰機構が形成されている。
【0033】
一方、第3または第4何れか一方のベースプレート(この場合は第4ベースプレート24)に凹部47を設けるとともに、他方のベースプレート(第3ベースプレート23)には前記凹部47に係合する可動球体48を設け、さらに、上下のベースプレートに吸着面を対向させた一対の磁石49a,49bを固設する。本実施例では、磁気特性が強力であるネオジ磁石のNS吸着面を対向して配置してある。前記凹部47と可動球体48の組み合わせ、および吸着面を対向させた一対の磁石49a,49bなどで中立位置保持機構が形成されている。なお、50は第4ベースプレート24の回動範囲を規制するストッパである。
【0034】
前記フィンガモジュール6には、ワーク1を吸着するための吸着パッド6aとガイドピン10が設けられ、このガイドピン10とワーク1のガイド穴11との相対位置が予め設定された位置に合致するように、ワーク1がフィンガモジュール6に吸着されて搬送される。
【0035】
次に、図3〜図5にしたがって、本発明に係るコンプライアンスモジュール20のX方向へのコンプライアンス動作について説明する。なお、説明の都合上、スライド支持部材31の記載と第2ベースプレート2より下方のベースプレートの記載を省略してある。また、ワーク1と加工冶具8は縦断面状態を示すが、縦断面位置は必ずしも同一箇所とは限らない。
【0036】
図3はロボットハンド5にワーク1が吸着されて搬送される状態を示し、ワーク1のガイド穴11と加工冶具8のガイドピン12が、ΔXだけ位置ずれしているものとする。ロボットハンド5を下降させていくと、フィンガモジュール6のガイドピン10が加工冶具8のガイド穴9に接近し、コンプライアンスモジュール20がX方向の位置ずれを補償して、ガイドピン10の先端がガイド穴の面取り部9aに案内されつつガイド穴9の中に挿入される。
【0037】
このコンプライアンス動作を詳述すれば、図4に示すように、コンプライアンスモジュール20の第2ベースプレート22がフィンガモジュール6と一体にΔXだけ図中右方向へスライドし、前記フィンガモジュール6の位置ずれを補償する。このとき、第2ベースプレート22の端部に係止している図中右側の係止ピン29および係止部材28が右方向に押圧され、該係止部材28が引張りコイルばね30の付勢に抗してスライドブロック27と一体に外側へ押し出される。
【0038】
このように、ロボットハンド5に装着された第1ベースプレート21に対して、リニアガイドを介して第2ベースプレートがスライドすることにより、ΔXのコンプライアンス量を補償することができる。
【0039】
外側へ押し出されていた係止部材28が、中立位置復帰機構である引張コイルばね30の付勢によりスライドブロック27と一体にガイドレール26に沿って内側へ引き戻され、図5に示すように、中立位置に復帰する。
【0040】
この状態では、引張コイルばね30の収縮方向への付勢により、左右のスライドブロック27および係止部材28が双方ともに内側に引かれ、中立位置保持機構である係止ピン29,29が第1ベースプレート21および第2ベースプレート22の両端部を挟持して内側へ押圧する。したがって、前記第2のべスプレート22が中立位置で振動することなく、すみやかに停止して中立位置に保持される。このように、コンプライアンス非動作になったときは、中立位置復帰機構および中立位置保持機構の動作により、コンプライアンスモジュール20はすみやかに中立位置に復帰して停止する。
【0041】
なお、第2ベースプレートと第3ベースプレートによるY方向のコンプライアンス動作については、前述したX方向のコンプライアンス動作と同様であるため、重複説明は省略する。
【0042】
次に、図6にしたがって、本発明に係るコンプライアンスモジュール20のθ方向へのコンプライアンス動作について説明する。前述したように、第4ベースプレート24の中心部に軸受部40が設けられ、該軸受部40を挟んで水平に対向する位置に二対の引張コイルばね43,44が均等な引張状態を維持した状態で設置されている。いま、コンプライアンス動作により、第4ベースプレート24が角度θだけ水平回動して、二点鎖線で示す位置へ移動したとする。このとき、対向する一方の引張コイルばね43,43はさらに引張られる方向へ作用し、対向する他方の引張コイルばね44,44は引張が緩む方向へ作用する。
【0043】
また、第4ベースプレート24に設けられている凹部47は可動球体48から離脱して二点鎖線の位置へ移動し、第4ベースプレート24に埋設されている一方の磁石49bは他方の磁石49aの吸着面から横方向へ離反して二点鎖線の位置へ移動する。ストッパ50も二点鎖線の位置へ移動する。
【0044】
そして、ワーク1を加工冶具8に載置した後にロボットハンド5を上昇させれば、フィンガモジュール6のガイドピン10が加工冶具8のガイド穴9から抜け出てコンプライアンス非動作となり、角度θだけ水平回動していた第4ベースプレート24が、中立位置復帰機構である二対の引張コイルばね43,44の付勢により反対方向へ回動する。すなわち、伸長していた一方の引張コイルばね43,43が収縮方向へ作用し、引張が緩んでいた他方の引張コイルばね44,44が伸長方向へ作用して、第4ベースプレート24は中立位置へ復帰する。
【0045】
第4ベースプレートが中立位置へ復帰したときに、前記二対の引張コイルばね43,44が中立位置に止まらずに反対方向へ作用して振動し、第4ベースプレートが中立位置付近で揺動を発生しようとするが、前記凹部47に可動球体48が係合して第4ベースプレートを中立位置に停止させるとともに、吸着面を対向させた一対の磁石49a,49bの強力な磁気吸着力によって第4ベースプレートの振動が抑止され、第4ベースプレートは確実かつすみやかに中立位置に停止する。
【0046】
このように、水平に直交するX方向とY方向のコンプライアンス動作は、それぞれ別個に設けたリニアガイドと係止部材と引張コイルばねとを組み合わせて補償し、水平に回動するθ方向のコンプライアンス動作は、軸受部を挟んで水平に対向する二対の引張コイルばねと凹部に係合する可動球体と吸着面を対向させた一対の磁石とを組み合わせて補償するように構成したので、実験値ではXY方向に対しては約10mm(従来は1mm程度)と大きなコンプライアンス量が得られるようになり、θ方向に対しても従来よりも大きなコンプライアンス量が得られるようになった。しかも、構成が簡単で小型化できるためコストダウンが図られるとともに、ロボットハンド全体の軽量小型化にも寄与できる。
【0047】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るコンプライアンスモジュールの正面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】コンプライアンス動作を示す説明図。
【図4】コンプライアンス動作を示す説明図。
【図5】コンプライアンス動作を示す説明図。
【図6】コンプライアンス動作を示す説明図。
【図7】複数の加工装置とロボットハンドの説明図。
【図8】コンプライアンスモジュールの動作の説明図。
【図9】コンプライアンスモジュールの動作の説明図。
【図10】コンプライアンスモジュールの動作の説明図。
【符号の説明】
【0049】
1 ワーク
5 ロボットハンド
6 フィンガモジュール
8 加工冶具
9 ガイド穴
10 ガイドピン
11 ガイド穴
12 ガイドピン
20 コンプライアンスモジュール
21 第1ベースプレート
22 第2ベースプレート
23 第3ベースプレート
24 第4ベースプレート
25,32 リニアガイド
26,33 ガイドレール
27,34 スライドブロック
28,35 係止部材
29,36 係止ピン
30,37 引張コイルばね
31,38 スライド支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットハンドに装着されてワークを把持するフィンガモジュールの位置ずれを補償するコンプライアンスモジュールであって、水平に直交するX方向とY方向へのコンプライアンス動作と、水平に回動するθ方向へのコンプライアンス動作とを実行するコンプライアンスモジュールにおいて、
前記コンプライアンスモジュールは、ロボットハンドの下端部に装着される第1ベースプレートと、第1ベースプレートの下方に間隙を有して順次配置された第2乃至第4ベースプレートからなり、
前記第2ベースプレートはリニアガイドを介して第1ベースプレートに対してX方向へスライド可能に接続され、さらに、第2ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第2ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、
前記第3ベースプレートはリニアガイドを介して第2ベースプレートに対してY方向へスライド可能に接続され、さらに、第3ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第3ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、
前記第4ベースプレートは中央部の軸受部を介して第3ベースプレートに対してθ方向へ回動可能に接続され、さらに第4ベースプレートを中立位置に引き戻す中立位置復帰機構と、第4ベースプレートを中立位置に保持する中立位置保持機構を設け、
該第4ベースプレートの下部に前記フィンガモジュールを装着することを特徴とするコンプライアンスモジュール。
【請求項2】
上記リニアガイドは、ガイドレールと該ガイドレールにスライド可能に取り付けられた複数のスライドブロックとからなり、それぞれのスライドブロックには該スライドブロックと一体に移動する係止部材が固設されるとともに、それぞれのスライドブロックを引張コイルばねで接続して中立位置復帰機構と中立位置保持機構が形成され、
コンプライアンス動作時は、下方のベースプレートがコンプライアンス動作側へスライドして一方の係止部材およびスライドブロックを外側へ押し出し、コンプライアンス非動作時は、前記双方のスライドブロックが内側へ引かれてそれぞれの係止部材が上下のベースプレートの端部に係止するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のコンプライアンスモジュール。
【請求項3】
上記リニアガイドは第1ベースプレートと第2ベースプレート間のほぼ中央部X方向と、第2ベースプレートと第3ベースプレート間のほぼ中央部Y方向とに設けられ、さらに、それぞれのリニアガイドの両側には前記リニアガイドと平行に複数のスライド支持部材を設けて上下のベースプレートを相対移動可能に支持するように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載のコンプライアンスモジュール。
【請求項4】
上記第3ベースプレートと第4ベースプレートの間に設けられる中立位置復帰機構は、上記軸受部を挟んで水平に対向する二対の引張コイルばねを配置し、それぞれの引張コイルばねの隣接する一端部を第3ベースプレートの下面に係止するとともに隣接する他端部を第4ベースプレートの上面に係止して構成されたことを特徴とする請求項1記載のコンプライアンスモジュール。
【請求項5】
上記第3ベースプレートと第4ベースプレートの間に設けられる中立位置保持機構は、第4ベースプレートが中立位置にあるときに、第3または第4何れか一方のベースプレートには凹部を設けるとともに他方のベースプレートには前記凹部に係合する可動球体を設け、さらに、第3および第4ベースプレートに吸着面を対向させた一対の磁石を固設して構成されたことを特徴とする請求項1または4記載のコンプライアンスモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−296587(P2007−296587A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124453(P2006−124453)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】