説明

コンプライアント回転シールを提供するシステム及び方法

【課題】コンプライアントな回転シールを可能にするシステム及び方法を提供すること。
【解決手段】コンプライアント回転シール(100)を提供するシステムは、半径方向に延びる複数の歯(104)を有する回転部分(102)と、半径方向に延びる複数のブリストル(108)を有する静止部分(106)と、を含む。複数の歯(104)が、複数のブリストル(108)を回転可能に係合して、これらの間に、そこを通ってガス又は流体が漏出するのを抑制する蛇行経路を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、全体的に機械タービンに関し、より詳細には、コンプライアント回転シールを提供するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス又は蒸気タービンのような機械タービンは、例えば、燃焼ガス又は蒸気の望ましくない漏出を低減又は阻止するためのシールを含む多数の表面を含む。これらのシールの特に困難な形態は、(例えば、静止表面に対して)移動又は回転している表面をシールするものである。例えば、タービンは、ステータ、シュラウド、その他などの隣接する静止表面との間でシールを形成する、シャフト、ロータ、その他などの回転する表面を含む。ラビリンスシールは、この目的での回転シールの一般的な形態であり、回転中に遠心力によって更に強化される有効な遮断路を生成することによってガス又は流体の流れを機械的にはね返す密結合部分(例えば、運転中に静止及び/又は移動している直線状のネジ付き延長部又は「歯」)を含む。ラビリンスシールのシール性能は、移動している歯にアブレイダブル結合表面をもたらすハニカム状材料と当該シールを係合する(例えば、隣接する静止表面に取り付ける)ことによって強化することができる。同様の用途では、いわゆるナイフエッジシールに適用される。
【0003】
このようなシールの半径方向及び/又は軸方向の偏位によって、通常、係合したハニカム材料内において正常な状態に戻っていない溝が発生し、最終的には、空気、ガス、その他が溝と完全には係合していないときにシールを越えて漏出することが可能になる。また、このような軸方向又は半径方向の動きでは、この「擦り合わせ溝」は、シールが正常動作又は「定常状態」条件で位置付けられる場所とは別の配置で位置付けられる可能性がある。通常、このようなシールにおいて半径方向又は軸方向偏位中にシールクリアランスの変動も発生し、これは、種々の動作条件中に一貫性のない漏出を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,533,284 B2号公報
【特許文献2】米国特許第6,880,829 B1号公報
【特許文献3】米国特許第7,052,015 B2号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、コンプライアント回転シールを提供するシステムは、半径方向に延びる1つ又はそれ以上の歯を有する回転部分と、半径方向に延びる複数のブリストルを有する静止部分とを含む。
【0006】
1つ又はそれ以上の歯は、複数のブリストルを回転可能に係合して、これらの間に、そこを通ってガス又は流体が漏出するのを抑制する蛇行経路を生成する。
【0007】
本発明の別の態様によれば、コンプライアント回転シールを提供する方法は、半径方向に延びる1つ又はそれ以上の歯を有する回転部分と、半径方向に延びる複数のブリストルを有する静止部分とを含む回転シールを提供する段階を含む。1つ又はそれ以上の歯は、複数のブリストルを回転可能に係合して、これらの間に、そこを通ってガス又は流体が漏出するのを抑制する蛇行経路を生成する。
【0008】
これら及び他の利点並びに特徴は、図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の例示的な実施形態による、コンプライアントブリストルアブレイダブル回転シールの例示的な概略断面図。
【図2】本発明の例示的な実施形態による、コンプライアントブリストルアブレイダブル回転シールの別の例示的な概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明と見なされる主題は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲に具体的に指摘しかつ明確に特許請求している。本発明の上記及び他の特徴並びに利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から明らかである。
【0011】
この詳細な説明は、例証として図面を参照し、利点及び特徴と共に本発明の例示的な実施形態を説明している。
【0012】
以下の詳細な説明において、様々な実施形態を十分に理解するために、多数の具体的な詳細事項が記載されている。しかしながら、これらの実施形態は、このような具体的な詳細事項がなくとも実施することができる。場合によっては、公知の方法、手順、及び構成要素は詳細には説明していない。
【0013】
更に、種々の工程は、本発明の実施形態を理解するための助けとなる様態で実施される複数の別個のステップとして説明することができる。しかしながら、記載の順序は、これらの工程が提示された順序で実施される必要があること、又は同等の順序に依存していることを意味するものと解釈するべきではない。更に、表現「1つの実施形態では」又は「ある実施形態では」の繰り返しの使用は、必ずしも同じ実施形態について言及している訳ではないが、同じ実施形態を指すことも可能である。最後に、本明細書で使用される用語「備える」、「含む」、及び同様のものは、別途指定されない限り、同義語であることを意味する。
【0014】
本発明の例示的な実施形態は、コンプライアント回転シールを可能にするシステム及び方法を提供する。このような例示的な実施形態によれば、回転シール(ラビリンス又はナイフエッジシール)の半径方向及び軸方向偏位両方により確実に対応し、これによりシール漏出全体を低減することができる、よりコンプライアントな回転シールが提供される。より蛇行した経路がシールに沿って生成され、従って、そこを通るガス又は流体の漏出が少なくなる。結果として得られるコンプライアントなブリストルアブレイダブルシールは、シールクリアランス変動を有意に低減し、従って、漏出流が、より広い動作条件範囲にわたってより一貫したものとなる(例えば、シール偏位)。
【0015】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、コンプライアントブリストルアブレイダブル回転シール100の例示的な概略断面図である。シール100は、半径方向に延びる1つ又はそれ以上の歯(例えば、単一の歯、又は複数の歯)を有する回転部分102を含む。例えば、回転部分102は、単一の歯、又は複数の歯を有するラビリンスシール又はナイフエッジシールを含むことができる。シール100はまた、半径方向に延びる複数のブリストル108を有する静止部分(又はシールランド)106を含む。1つ又はそれ以上の歯104は、複数のブリストルを回転可能に係合して、ガス又は流体が通過するのを抑制する蛇行経路をこれらの間に生成する。回転部分102及び静止部分106は、シャフト、ロータ、ステータ、シュラウド、その他などのガスタービン又は蒸気タービンの構成部品に統合することができる。
【0016】
複数のブリストル108は、以下の例示的な実施形態によるなど、様々な特徴を有することができる。複数のブリストル108は、共にパックして、複数のブリストルパックを形成することができる。複数のブリストル108は、層状に配列して、1つ又はそれ以上の歯104に対して複数のシール平面を形成することができる。複数のブリストル108は、異なる長さ(例えば、図1に描かれている)のブリストルを含むことができる。複数のブリストル108は、ブラシシールの構成を含むことができる。
【0017】
複数のブリストル108は、1つ又はそれ以上の歯104によって係合されていないときには、初期位置まで実質的に戻るように構成することができる。すなわち、1つ又はそれ以上の歯104は、ブリストル108を通って回転中にこれらブリストルを広げ、撓ませるなどを行うことができるが、ブリストル104は、1つ又はそれ以上の歯104によって係合されなかったときには、広がりのない、撓みのない、その他の位置に戻り、これによって、よりコンプライアントなシールランドを提供する。1つ又はそれ以上の歯104及び複数のブリストル108は各々、金属材料又は非金属材料(或いはこれらの複合材料)から構成することができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、静止部分106は更に、複数のブリストル108に隣接した静止部分106から半径方向に延びるエンドプレート206の1つ又はそれ以上(例えばペア)を含む。これに関して、図2は、本発明の例示的な実施形態による、コンプライアントブリストルアブレイダブル回転シール200の代替の例示的な概略断面図を示す。図1と同じ参照符号の要素についての上記の説明に加えて、複数のブリストル108は、シール200においてプレート206のペアの間に延びている。プレート206は、例えば、1つ又はそれ以上の歯104によって係合されたときに、複数のブリストル108の軸方向の動きを抑制する。
【0019】
本発明の例示的な実施形態はまた、コンプライアント回転シールを提供する方法又はプロセス(図示せず)を含み、当該方法又はプロセスは、図1及び2について上記で説明したような(例示的な変形形態を含む)コンプライアント回転シール100、200を提供する段階を含む。このような例示的な方法及びプロセスは、幾つかの実施形態においてコンピュータプログラム製品の実行を含むことができる。
【0020】
従って、本発明の例示的な実施形態の技術的作用は、コンプライアント回転シールを提供するシステム及び方法である。例示的な実施形態によれば、回転シールは、半径方向に延びる1つ又はそれ以上の歯を有する回転部分を含む。回転シールはまた、半径方向に延びる複数のブリストルを有する静止部分を含む。1つ又はそれ以上の歯は、複数のブリストルを回転可能に係合し、これらの間に、そこを通るガス又は流体の漏出を抑制する蛇行経路を生成する。
【0021】
限られた数の実施形態のみに関して本発明を詳細に説明してきたが、本発明はこのような開示された実施形態に限定されないことは理解されたい。むしろ、本発明は、上記で説明されていない多くの変形、改造、置換、又は均等な構成を組み込むように修正することができるが、これらは、本発明の技術的思想及び範囲に相応する。加えて、本発明の種々の実施形態について説明してきたが、本発明の態様は記載された実施形態の一部のみを含むことができる点を理解されたい。従って、本発明は、上述の説明によって限定されると見なすべきではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0022】
100 シール
102 回転部分
104 歯
106 静止部分(又はシールランド)
108 ブリストル
206 エンドプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプライアント回転シール(100)を提供するシステムにおいて、
半径方向に延びる複数の歯(104)を有する回転部分(102)と、
半径方向に延びる複数のブリストル(108)を有する静止部分(106)と、
を備え、
前記複数の歯(104)が、前記複数のブリストル(108)を回転可能に係合して、これらの間に、そこを通ってガス又は流体が漏出するのを抑制する蛇行経路を生成する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記複数のブリストル(108)が、複数のブリストルパックを形成するよう互いにパックされる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数のブリストル(108)が、前記複数の歯(104)に対して複数のシール平面を形成するよう層状に形成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のブリストル(108)が、異なる長さを有するブリストル(108)を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数のブリストル(108)が、ブラシシールの構成を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記回転部分(102)が、ラビリンスシール又はナイフエッジシールを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のブリストル(108)が、前記複数の歯(104)によって係合されていないときには初期値に実質的に戻るように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の歯(104)及び前記複数のブリストル(108)が各々、金属材料又は非金属材料から構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数のブリストル(108)に隣接した前記静止部分(106)から半径方向に延びるエンドプレート(206)のペアを更に備え、
前記複数のブリストル(108)が前記プレートのペア間に延び、前記複数の歯(104)によって係合されたときに、前記プレートが前記複数のブリストル(108)の軸方向の動きを抑制する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記回転部分(102)及び前記静止部分(106)が、ガスタービン又は蒸気タービンの構成部品に一体化される、
請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−159876(P2010−159876A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−300(P2010−300)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】