説明

コンベアベルトの縦裂き検知方法および装置

【課題】本発明は、非接触でベルトコンベアの縦裂きを検知する方法および装置を提供する。
【解決手段】コンベアベルト1の下面にレーザ光線によるスリット光、好ましくは波長660nMの赤色レーザ光線を照射し、その光切断像を必要に応じてレーザ光線の波長の通過フィルターを介してCCDカメラなどの工業用カメラ3にて撮像し、コンベアベルト1下面のスリット光をコンベアベルト1下面の左右側から、コンベアベル1ト長手方向に空隙を保ちながら二条を照射し、それぞれのスリット光による光切断像を撮影し、得られた画像を画像処理装置5にて画像処理し、コンベアベルト1の縦裂き検知情報を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でベルトコンベアの縦裂きを検知する方法および装置に関し、特に鉄鉱石運搬用ベルトコンベアの縦裂き検知に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
製鐵業界やセメント業界では原料置場と加工設備の間に長大な原料運搬用ベルトコンベアを使用しているが、ベルトが進行方向に引き裂かれる損傷(以下、コンベアベルトの縦裂き)が発生する場合がある。
【0003】
コンベアベルトの縦裂きは、原料貯留槽から原料をシュート設備を介してコンベアベルトに移載する際、原料落下の衝撃でシュート設備から緩衝板部材がコンベアベルト上に脱落して発生する。
【0004】
近年、原料搬送設備は運転制御が自動化され無人状態で稼動する時間が長く、コンベアベルトの縦裂きが発生しても発見が遅れ、縦裂きの長さが数百mとなり、ベルトの張替えと落下した鉱石の処理による設備停止が長時間となり生産上甚大な損失が発生する場合がある。
【0005】
そのため、コンベアベルトの縦裂きを自動的に検出し、コンベアの運転制御を行う技術が種々提案されている。特許文献1はベルトコンベア装置の運転中に、ベルト表面のゴム剥離及び亀裂などのベルト疵を検出する装置に関し、ベルトコンベア装置のプーリーの近傍にその軸方向に沿ってベルト幅にわたって等間隔に距離センサを複数配置し、該距離センサからベルトまでの距離の変動からベルト疵を検出したり、縦裂き発生までの時間を予想することを特徴とする。
【0006】
特許文献2はコンベアベルトの縦裂き検出装置に関し、コンベアベルトの複数箇所にコイルを埋設し、センサで検知されるコイルの断線状態から縦裂き発生の有無を検知する方法において、センサの検知信号にデジタル化処理を行い、信号ケーブルが長くなることにより低下する縦裂き検出の判定精度を向上させることを特徴とする。
【特許文献1】特開平9−12128号公報
【特許文献2】特開平6−48549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したベルトコンベア縦裂き検知方法はいずれも縦裂き発生を自動的に検知する方法であるが、特許文献1記載の技術は距離センサの設置位置が、ベルトのプーリー部であるため、縦裂き発生の起点となることが多いシュート設備近傍でのベルトの状態を検出することができず、早期発見が困難である。
【0008】
特許文献2記載の技術はコンベヤベルトに埋め込むコイルの数により検出精度が影響され、早期発見するためには数多くのコイルを必要とし設備コストの負担が大きくなる。
【0009】
そこで本発明は安価な設備費で、コンベアベルトの縦裂きを発生点近傍で早期に精度良く検出可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は以下の手段により達成できる。
1 コンベアベルトの下面にスリット光を照射し、その光切断像を工業用カメラにて撮像し、得られた画像を画像処理装置にて画像処理し、コンベアベルトの縦裂き検知情報を得ることを特徴とするコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【0011】
2 スリット光がレーザ光線であることを特徴とするコンベアベルトの縦裂き検知方法。
3 工業用カメラはレーザ光線の波長の通過フィルターを介して光切断像を撮影することを特徴とする1または2記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【0012】
4 スリット光に用いるレーザ光線は、その波長をコンベアベルト上の光切断像を工業用カメラで撮影した画像について求めた三原色の強度のヒストグラムから決定することを特徴とする2または3記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【0013】
5 工業用カメラがCCDカメラであることを特徴とする1乃至4のいずれか一つに記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【0014】
6 コンベアベルト下面のスリット光がコンベアベルト下面の左右側から、コンベアベルト長手方向に空隙を保ちながら二条が照射され、それぞれのスリット光による光切断像を撮影することを特徴とする1乃至6のいずれか一つに記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【0015】
7 スリット光が波長660nMの赤色レーザ光線であり、コンベアベルトが鉄鉱石運搬用であることを特徴とする2乃至6のいずれか一つに記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【0016】
8 コンベアベルトの下面にスリット光を照射するレーザ発振器と、前記スリット光による光切断像を撮影する工業用カメラと、前記工業用カメラで撮影した画像を画像処理装置に取り込むための画像取込み回路と、前記取り込んだ画像を処理する画像処理装置と、前記画像処理装置による処理状況を確認するためのモニター装置と、前記画像処理装置による縦裂き検知信号が入力され、コンベア駆動停止信号を出力する警報表示装置を備えたことを特徴とするコンベアベルトの縦裂き検知装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば縦裂きが発生する起点となりやすい、コンベアベルト上に原料が落下するシュート部近傍においても縦裂きの発生の有無を検出することが可能であるため、縦裂き長さを最小限とし、ベルトに部分補修を施すだけで操業を継続することが可能である。
【0018】
また、コンベアベルトにコイルを埋め込む必要がないので設備費を安価とすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明はコンベアベルトの縦裂きを発生点近傍で検出できるように光切断法を用い、更に光切断のためコンベアベルトの下面に照射するスリット光として、コンベアベルト本体やコンベアベルト表面に付着した汚れとの識別が容易な波長としたレーザ光線を用いることを特徴とする。
【0020】
図1は本発明の一実施例を説明する模式図で、図において1はコンベアベルト(図は横断面)、2はスリット光となるレーザ光線を発振するレーザ発振器、3はレーザ発振器2から発振されたレーザ光線のスリット光による光切断像を撮影する工業用カメラ、4は工業用カメラ3で撮影した画像を画像処理装置に取り込むための画像取込み回路、5は4により取り込んだ画像を処理する画像処理装置、6は画像処理装置5による処理状況を確認するためのモニター装置、7は画像処理装置5による縦裂き検知信号が入力され、コンベア駆動停止信号を出力する警報表示装置、8は警報表示装置7からのコンベア駆動停止信号が入力されるコンベア駆動装置、9はコンベア駆動用ローラ、aはコンベアベルト1に発生した縦裂きによる開口部を示す。
【0021】
本発明はコンベアベルト1の下面にレーザ発振器2によりスリット状のレーザ光線を照射する。レーザ光線はレーザ発振器2からの点光源をレンズ系(図では省略)を介してスリット光とし、コンベアベルト1を光切断する。
【0022】
工業用カメラ3はコンベアベルト1の光切断像を撮影できるように配置する。撮影の際、レーザ光線の波長が通過する特定波長通過フィルターを用いるとSN比が少ない光切断像が得られ好ましい。
【0023】
本発明では光切断像として、コンベアベルト1に縦裂きが発生した場合に不連続部が観察されるような形状のものが得られれば良く、スリット光の照射角度や工業用カメラの撮影角度は特に規定しない。尚、本発明でコンベアベルト1の下面とは、移送物を搭載しない側の面を指す。
【0024】
レーザ発振器2や工業用カメラ3は、コンベアベルト1の縦裂きの開口部aから落下する原料などの被運搬物による損傷を防止するため、コンベアベルト1の直下を避けて左右の斜め下方に一対ずつ配置することが好ましい。
【0025】
工業用カメラ3により撮影された光切断像は画像取込み回路4により画像処理装置5に入力される。画像処理装置5は光切断像における不連続部(断線部)の有無を検出し、不連続部(断線部)が有る場合は縦裂きにより開口部aが発生したと判定して警報表示装置7に縦裂き発生信号を出力する。
【0026】
図5は画像処理装置5により処理した光切断像の一例を示し、光切断像の全長l1において、l2となる位置で不連続部が発生している様子を示す。
【0027】
警報表示装置7は画像処理装置5から縦裂き発生信号が入力されるとコンベア駆動用ローラ9を制御するコンベア駆動装置8にコンベア駆動停止信号を出力する。
【0028】
図2に本発明を適用して、コンベアベルト1に発生した縦裂きaを光切断する様子の一例を模式的に示す。図は説明のためコンベアベルト1の下面を上にして示す。
【0029】
レーザ発振器2と工業用カメラ3は、コンベアベルト1の断面で左右となる斜め下方に一対ずつ配置し、左右のレーザ発振器2からのスリット光が、それぞれコンベアベルト1の中央部を光切断するように調整する。
【0030】
このように配置するとコンベアベルト1の縦裂き部からの落下物によるレーザ発振器2と工業用カメラ3の損傷を回避でき、縦裂き発生検出信号の精度が向上して好ましい。工業用カメラ3はレーザ発振器2によるスリット光10の全長が視野bに入るように調整する。
【0031】
以上の説明では、レーザ発振器や工業用カメラの本体をコンベアベルトの斜め下方に配置しているが、これらの本体は保守点検の容易な場所に配置し光ファイバーケーブルを経由してレーザ光を照射したり画像の取り込みを行っても良い。
コンベアベルトは黒色のものが多く、鉄鉱石を運搬すると赤褐色の鉱石粉が外側にも付着する。また白色塗料が付着する場合もあり、これらは光切断像の撮影においてコンベアベルトの黒色の地に対する外乱となる。
【0032】
本発明では、コンベアベルトの表面状態に影響されずに光切断像を検出するためスリット光(レーザ光)の波長を適宜選定することが好ましい。
【0033】
図3、4は新品の黒色コンベアベルト、赤褐色の鉱石粉が付着した赤錆コンベアベルトおよび白色塗料が付着した状態を模した白色のコンベアベルトに対して赤色レーザ、緑色レーザによるスリット光を照射して、コンベアベルトと光切断像を撮影し、得られた画像(コンベアベルトと光切断像を含む)における三原色(赤、緑、青)の色調(色の強度)を求めた結果を示す。赤色レーザは波長660nMとした。
【0034】
図3は赤色レーザ、図4は緑色レーザによる試験結果で、これらの図において(a)は新品の黒色ベルト、(b)は赤錆ベルト、(c)は白色ベルトの場合を示す。
【0035】
赤、緑および青についてコンベアベルトと光切断像を含む画像における赤、緑および青の強度を示し、実線はベルト素地の色調の分布を示し、点線はレーザ光の色調の分布を示している。ベルト素地の色調の分布領域とレーザ光の色調の分布領域が離れているほど光切断像の検出が容易なことを示す。
【0036】
赤色レーザの場合はベルト素地の色調の分布領域とレーザ光の色調の分布領域の間隔が(a)新品の黒色ベルト、(b)赤錆ベルトおよび(c)白色ベルトにおいて他のものより広く、光切断像の検出が容易である。
【0037】
赤色レーザ光の赤色成分に次いで、緑色レーザ光の青色成分がベルト素地の色調の分布領域とレーザ光の色調の分布領域の間隔が広い。
図3、4より赤色レーザを用いると緑色レーザの場合と比較してコンベアベルトの表面状態によらず光切断像の検出が容易なことが判る。
【0038】
レーザ発振器の波長は以下の手順で選定することが好ましい。説明においては色の強度を色調と称する。1.光切断を施すコンベアベルトを実操業状態において撮影する。2.コンベアベルト画像について赤色階調、緑色階調、青色階調ヒストグラムを作成する。3.種々の波長のレーザ光をコンベアベルト上に照射し、光切断線とコンベアベルトを含む撮影画像について赤色階調、緑色階調、青色階調ヒストグラムを作成する。4.前記2、3を比較し、色調が重ならない波長のレーザ光を選定する。レーザ光とコンベアベルトの画像処理弁別しきい値は、各色調の中間値とする。
【0039】
尚、以上の説明では、3原色を用いたが、明度も、明度=0.299R(赤色)+0.587G(緑色)+0.114B(青色)の式で一義的に決まるので、更に、明度の範囲を含めて決定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例を示す図。
【図2】本発明の一実施例を示す図。
【図3】赤色レーザによる光切断像における三原色の色調を示す図。
【図4】緑色レーザによる光切断像における三原色の色調を示す図。
【図5】光切断像の一例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1 コンベアベルト(横断面)
2 レーザ発振器
3 工業用カメラ
4 画像取込み回路
5 画像処理装置
6 モニター装置
7 警報表示装置
8 コンベア駆動装置
9 コンベア駆動用ローラ
10 スリット光
a 開口部
b 視野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアベルトの下面にスリット光を照射し、その光切断像を工業用カメラにて撮像し、得られた画像を画像処理装置にて画像処理し、コンベアベルトの縦裂き検知情報を得ることを特徴とするコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【請求項2】
スリット光がレーザ光線であることを特徴とするコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【請求項3】
工業用カメラはレーザ光線の波長の通過フィルターを介して光切断像を撮影することを特徴とする請求項1または2記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【請求項4】
スリット光に用いるレーザ光線は、その波長をコンベアベルト上の光切断像を工業用カメラで撮影した画像について求めた三原色の強度のヒストグラムから決定することを特徴とする請求項2または3記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【請求項5】
工業用カメラがCCDカメラであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【請求項6】
コンベアベルト下面のスリット光がコンベアベルト下面の左右側から、コンベアベルト長手方向に空隙を保ちながら二条が照射され、それぞれのスリット光による光切断像を撮影することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【請求項7】
スリット光が波長660nMの赤色レーザ光線であり、コンベアベルトが鉄鉱石運搬用であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一つに記載のコンベアベルトの縦裂き検知方法。
【請求項8】
コンベアベルトの下面にスリット光を照射するレーザ発振器と、前記スリット光による光切断像を撮影する工業用カメラと、前記工業用カメラで撮影した画像を画像処理装置に取り込むための画像取込み回路と、前記取り込んだ画像を処理する画像処理装置と、前記画像処理装置による処理状況を確認するためのモニター装置と、前記画像処理装置による縦裂き検知信号が入力され、コンベア駆動停止信号を出力する警報表示装置を備えたことを特徴とするコンベアベルトの縦裂き検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−282319(P2006−282319A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103323(P2005−103323)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000200334)JFEメカニカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】