説明

コンベアベルト及びその継手

【課題】 コンベアベルトのスパイラル継手の長寿命化を図ることにある。
【解決手段】 合成繊維からなる経糸12及び緯糸13で構成したコンベアベルト1の経糸12を折り返して経糸ループ15としてコンベアベルト1の本体側へ縫着部14でミシン縫い等で縫着する。そして、その経糸ループ15とスパイラル線16を噛み合わせてスパイラル継手30を製作する。経糸12の折り返しにより形成された経糸ループ15とスパイラル線16との交叉部位20に補強糸17を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、繊維製品等を加工する用途に使用されるコンベアベルト及びその継手に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば衣料等の繊維製品を加工する用途に使用されるコンベアベルトとして、例えば繊維製品風合加工機用コンベアベルトがある。この種のコンベアベルト1としては、高温で加工される用途での使用上、製品に適当な熱風を供給するため、図3に示すように比較的目の粗い組織の合成繊維を経糸2及び緯糸3として織成した織物製のものが使用されている。
【0003】このコンベアベルト1においては、加工時の温度によって使用する経糸2及び緯糸3の材質が適宜選択され、例えば、加工時の温度が180℃位以上になると、耐熱性のある芳香族ポリアミドが一般に使用されている。芳香族ポリアミドとしては、例えば、ケプラー、テクノーラ[商品名:帝人(株)]等が好適とされている。尚、加工時の温度がそれ程高くない用途ではポリエステルも使用可能である。このように材質を選定することにより、加工時の温度が高温となっても、コンベアベルトの寿命向上を図れるようにしている。
【0004】また、前述よりも高温になる用途の場合には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等もコンベアベルトの材質として一部使用されている。しかしながら、PEEKやPPSは高価であるのでその用途が限定されるのが一般的である。
【0005】この用途のコンベアベルトは前述したように目(密度)を比較的粗くし、繊維製品の加工時に熱風が効率よく供給できるようにしている。しかしながら、目を粗くしているため走行時に目ずれを起こし寸法安定性が良くない。その対策の1つとして、例えばコンベアベルト1の組織を図4及び図5に示すようにからみ織等にして走行時の目ずれを未然に防止している。
【0006】ところで、一般にフィラメント織物製コンベアベルトは有端状に製作され継手によって無端状に接続される。その継手を製作する方法として、以下のものが知られている。
■フィラメント織物の端部から所定の幅に亘って緯糸フィラメントを抜き取り、簾状に整列した経糸フィラメントの先端部分を折り返して継手用ループを形成し、その折り返し端をフィラメント織物の端部に綴り込む方法。
■フィラメント織物の端部に、小幅織機等で製織した継手付きの別基布をミシン等で縫着する方法。
■フィラメント織物の端部からやや内側に位置している緯糸フィラメントを抜き取り、経糸フィラメントを簾状に整列した継手形成部を製作し、この継手形成部に合成樹脂製のスパイラル線を交絡状態で取り付け、フィラメント織物に重ね合わせてミシン縫い等で縫着する方法。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上の各方法は、織物の品種、用途に応じて最適な方法が使用されているが、これらの方法はそれぞれ用途によって問題があることが分ってきた。例えば、繊維製品風合加工機用コンベアベルトにおいては、この継手がどの方法により製作したものでも良いということではない。また、継手は、例えば厚み、開口率、可撓性等の点でコンベアベルトと同じ仕様であることが要求される。
【0008】しかしながら、前述した■〜■による方法のうち、■の方法では、継手の開口率がコンベアベルトより小さくなり問題がある。また、■の方法では、継手の開口率がコンベアベルトとほぼ同様となり問題はないが、継手の強度面及び継手接合作業が困難である。更に、■の方法では、継手の開口をコンベアベルトと同様にでき、また、継手の強度も確保でき、継手接合時の作業が容易であるので、この用途にはこのスパイラル継手が一般に使用されている。
【0009】通常、この用途のコンベアベルトは使用していると、コンベアベルトの張力及びローラ部等の回転の繰り返しにより、コンベアベルト1の幅方向両端の耳部に位置する継手4から破損し、コンベアベルト1の耳部が開いてくる現象が発生する。この現象を防止するため図6に示すように耳部の継手4を補強することも行われている。
【0010】しかし、コンベアベルト1が屈曲を繰り返すと、この補強でも耳部の継手4の破損に対しては充分でないことが分ってきた。それは、図7に示す経糸ループ15とスパイラル線16とが接触するコンベアベルト1の裏面側でローラ等に接する部位(図中A部)で経糸ループ15が破断する現象による。この部分で破損すると経糸12が破断することになり、スパイラル線16を保持できなくなることにより、継手4が破断するのでコンベアベルト1として使用できなくなる。
【0011】このようになると、コンベアベルト1は突然破損することになり、搬送している製品及びコンベア装置に損害を発生させることになる。このため、コンベアベルト1の本体は寿命が長くできるのに対して、継手が早く破損してコンベアベルトとして使用できなくなる問題が発生してきた。
【0012】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は前述した課題を解決するため、以下の点を要旨とする。
【0013】本発明のコンベアベルトの継手は、合成繊維からなる経糸及び緯糸で構成したコンベアベルトの前記経糸で形成された経糸ループとスパイラル線を噛み合わせたスパイラル継手であって、前記経糸ループとスパイラル線との交叉部位に補強糸を挿入したことを特徴とする。
【0014】前記の補強糸は、コンベアベルトを構成する経糸及び緯糸と比べて摩擦係数が同等か又は低い合成繊維からなることが望ましい。また、補強糸は、コンベアベルトを構成する緯糸を使用することが望ましい。更に、補強糸は、芳香族ポリアミドにフッ素樹脂を付着又は含有させたものであることが望ましい。
【0015】本発明のコンベアベルトは、前述した補強糸を挿入したスパイラル継手で接合して無端状としたものであることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のコンベアベルト1は、図1R>1に示すように合成繊維からなる経糸12及び緯糸13で構成したコンベアベルト1の経糸12を折り返して経糸ループ15としてコンベアベルト1の本体側へ縫着部14でミシン縫い等で縫着する。そして、その経糸ループ15とスパイラル線16を噛み合わせてスパイラル継手30を製作する。経糸12の折り返しにより形成された経糸ループ15とスパイラル線16との交叉部位20に補強糸17を挿入する。この補強糸17は、コンベアベルト1を構成する経糸12及び緯糸13と比べて摩擦係数が同等か又は低い合成繊維で構成することが好適である。また、補強糸17は、コンベアベルト1を構成する緯糸13を使用することも可能である。更に、補強糸17は、芳香族ポリアミドにフッ素樹脂を付着又は含有させたものとすることが好適である。
【0017】本発明のコンベアベルト1は、図2に示すように補強糸17が挿入されたコンベアベルト1の両端のスパイラル継手30を交叉させ、その交叉部位に接合芯線40を挿通させて接合し無端状とする。
【0018】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて以下に詳述する。
【0019】本出願人は、図4に示すからみ織にて、幅2m、長さ20mの繊維製品風合加工機用に使用するコンベアベルト1を製作した。このコンベアベルト1において、経糸12にテクノーラ(芳香族ポリアミド繊維)[商品名:帝人(株)]で3650デニール2本を、緯糸13に同じくテクノーラで8950デニール1本を使用した。その時の経糸12の密度は5.0×2本/2.54cm、緯糸13の密度は5.0本/2.54cmであった。このコンベアベルト1は製織後フッソ樹脂加工を施した。最終的にできあがったコンベアベルト1の厚さは0.95mm、重量は360g/m2 であり、開口率は52%であった。
【0020】フッ素樹脂加工は、例えばポリ4フッ化エチレン(PTFE)をキッシング等でコンベアベルト1に付着させ高温で焼付ける等により行った。尚、フッ素樹脂加工は、これに限らず他の方法でもよく、また、フッ素樹脂もPTFEに限らない。このようにフッ素樹脂加工を行う目的は、■コンベアベルト1に汚れ等の付着を防止すること、■コンベアベルト1は目の粗い織物なのでフッ素樹脂で経糸12と緯糸13との交絡点を固着させ寸法安定性を増加させるためである。
【0021】コンベアベルト1の継手30は、図1に示すように経糸12を折り返し、経糸ループ15としてコンベアベルト1側に縫着部14でミシン縫い等で縫着する。この経糸ループ15とスパイラル線16とを噛み合わせて継手30を製作する。スパイラル線16としては、PEEKの直径0.9mmのモノフィラメントを使用し、スパイラル線16のサイズは長径6.5mm、短径3.7mmとする。
【0022】次に、経糸ループ15とスパイラル線16との交叉部位20に補強糸17を挿入する。この補強糸17としては、コンベアベルト1の継手30を製作する際に抜き取られる緯糸13の1本を使用して挿入すればよい。従って、補強糸17は、緯糸13と同じテクノーラで8950デニール1本である。しかし、コンベアベルト1は製織後フッ素樹脂加工を行っているので、補強糸17はテクノーラ表面にフッ素樹脂が付着した糸となっている。尚、コンベアベルト1に使用した緯糸13を補強糸とする以外にも、別の糸を使用して挿入できることは勿論であり、糸のサイズ及び材質も使用用途に合わせて適宜選択すればよい。
【0023】補強糸17は、コンベアベルト1及びスパイラル線16に使用する糸と比べて摩擦係数が同等か又は低い糸が望ましい。これは、摩擦係数が大きい糸を使用すると、補強糸17によりスパイラル線16及びコンベアベルト1の方が早く摩耗により破断するためである。また、図7に示す従来品と比べて、図1に明示するように補強糸17を挿入することによってコンベアベルト1がその両端に位置する継手30に接合芯線40で無端状に接合され(図2参照)、コンベアローラにより駆動されて回転や屈曲を受ける場合でも、柔軟性が現出して回転及び屈曲し易くなる作用効果がある。これによりコンベアベルト1が繰り返し屈曲しても経糸ループ15とスパイラル線16とが接触するコンベアベルト1の裏面側でローラ等に接する部位(図中A部)で経糸ループ15が破断する現象を防止でき、継手30が破断することなく、コンベアベルト1の長寿命化が図れる。
【0024】また、補強糸17は摩擦係数がコンベアベルト1及びスパイラル線16に使用する糸に比べて同等か又は低い糸としたので、コンベアベルト1に使用した糸が屈曲により破断するとしても、最初に、補強糸17が破断することになる。但し、本発明品では、補強糸17が破断しても継手30は経糸ループ15とスパイラル線16とが噛み合っているので継手30の破断にならないので、コンベアベルト1をそのまま継続使用でき、また、コンベアベルト1が突然破損することもない。更に、補強糸17を挿入することによってコンベアベルト1の接合作業も簡単になる。
【0025】尚、以上では、繊維製品風合加工機用コンベアベルト1について説明したが、本発明はこれに限らず、その他、同様な性能及び機能が要求される用途にも使用可能なのは勿論である。また、コンベアベルト1の組織についてもからみ織以外の他の組織でも可能であり、そのからみ織についても、図4に示すもの以外にも例えば図5に示すもの等用途に応じて適宜変更可能である。
【0026】また、コンベアベルト1の経糸12及び緯糸13に使用する糸については、前述したテクノーラ以外に、他の芳香族ポリアミド、PEEK、PPS等を用途に応じて使用することが可能で、使用温度がそれ程高くない用途ではポリエステルでも使用可能である。更に、糸については、マルチフィラメントの他モノフィラメント、スパン糸等も使用可能であり、糸の寸法も夫々用途に応じて適宜選択することができる。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、合成繊維からなる経糸及び緯糸で構成したコンベアベルトの前記経糸で形成された経糸ループとスパイラル線を噛み合わせたスパイラル継手であって、前記経糸ループとスパイラル線との交叉部位に補強糸を挿入したことから、コンベアベルトの継手の破損が防止でき継手の長寿命化を容易に図ることができ、延いてはコンベアベルト全体の寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すコンベアベルト及びその継手の模式図
【図2】本発明のコンベアベルトの端部を接合した状態を示す模式図
【図3】目の粗い組織の合成繊維を経糸及び緯糸に使用したた織物を示す構成図
【図4】コンベアベルトの組織の一例を示す構成図
【図5】コンベアベルトの組織の他例を示す構成図
【図6】コンベアベルトの端部の耳部を示す平面図
【図7】コンベアベルト及びその継手の従来例を示す模式図
【符号の説明】
1 コンベアベルト
12 経糸
13 緯糸
15 経糸ループ
16 スパイラル線
17 補強糸
20 交叉部位
30 継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成繊維からなる経糸及び緯糸で構成したコンベアベルトの前記経糸で形成された経糸ループとスパイラル線を噛み合わせたスパイラル継手であって、前記経糸ループとスパイラル線との交叉部位に補強糸を挿入したことを特徴とするコンベアベルトの継手。
【請求項2】 請求項1記載の補強糸は、コンベアベルトを構成する経糸及び緯糸と比べて摩擦係数が同等か又は低い合成繊維からなることを特徴とするコンベアベルトの継手。
【請求項3】 請求項1記載の補強糸は、コンベアベルトを構成する緯糸を使用したことを特徴とするコンベアベルトの継手。
【請求項4】 請求項1記載の補強糸は、芳香族ポリアミドにフッ素樹脂を付着又は含有させたものであることを特徴とするコンベアベルトの継手。
【請求項5】 請求項1〜3記載のスパイラル継手で接合して無端状としたことを特徴とするコンベアベルト。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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