説明

コンベアベルト及びベルトコンベア装置

【課題】検出手段とガイドローラが接触しない場合、接触しないガイドローラについて検出データを得ることができないので、検出手段が接触していないのか或いはローラに回転不良が生じているのかの判断ができなかった。
【解決手段】無端環状に形成されて金属製のガイドローラ12に支持され、ガイドローラ12の回転を伴って搬送方向へ送り出されるコンベアベルト13であって、搬送方向へと送り出されてガイドローラ12を通過する際に、ガイドローラ12の磁気を検出する磁気センサ14を有する。ベルトコンベア装置10は、コンベアベルト13とガイドローラ12を有し、ガイドローラ12が各列毎に3本並列に配置されてトラフ型キャリアを構成し、磁気センサ14はガイドローラ12のそれぞれに対応して3個、金属センサ15はガイドローラ12の列に対応して列毎に少なくとも1個設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンベアベルト及びベルトコンベア装置に関し、特に、コンベアベルトを支持し回転する複数のローラに回転不良のローラが発生した場合に、回転不良のローラを特定することができるコンベアベルト及びベルトコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無端環状のコンベアベルトを支持して回転しコンベアベルトを所定方向に送り出す複数のローラにおいて、回転不良のローラが発生した場合、回転不良が生じたローラを特定するための検出装置が知られている。このような検出装置として、例えば、「コンベアベルトのモニタリング装置」(特許文献1参照)がある。
この「コンベアベルトのモニタリング装置」は、ローラと接触するコンベアベルトの下面に取り付けた、センサを搭載した小型検出ユニットにより、コンベアベルト走行時に回転不良が生じたローラを検知するものである。
【0003】
小型検出ユニットは、コンベアベルトの物理的性状を検出するセンサ(検出手段)をメモリ等と共に一つのセットとして、コンベアベルトに埋設或いは貼り付けられており、センサが検出したデータに基づきコンベアベルトの物理的性状の変化を経時的に検出して、適時に適所でコンベアベルトのモニタリングをしている。
【0004】
ところで、ベルトコンベア装置では、コンベアの長さ(機長)が長くなるほど、コンベアベルトを案内するガイドローラの数が多くなる。例えば、機長が10km、ローラ間隔が1mで、3本トラフ型の場合、ガイドローラの総数は3万本にもなる。このため、ガイドローラが正常に機能していることを確認するために、ベルトコンベア装置の設置場所に出かけて目視や触診等により直接点検することは、多大な労力と時間を必要とし、非常に困難な作業となる。
【0005】
従って、「コンベアベルトのモニタリング装置」により、目視や触診等によらずに回転不良のローラを特定することができるのは、ベルトコンベア装置を用いた作業環境において、効率的、且つ、経済的に大きな利点をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−179447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の「コンベアベルトのモニタリング装置」において検出データを得るためには、センサとガイドローラの接触が必須であった。つまり、走行中のコンベアベルトが、例えば、上下にうねったとき等、センサとガイドローラが接触しない場合、接触しないガイドローラについて検出データを得ることができないので、ガイドローラに番号を付しても飛ばしてカウントしてしまう虞があった。
【0008】
このため、センサ(検出手段)とガイドローラが接触しない場合、接触しないガイドローラについて検出データを得ることができないので、センサが接触していないのか或いはローラに回転不良が生じているのかの判断ができなかった。
この発明の目的は、検出手段とガイドローラが接触しない場合でも接触しないガイドローラについて検出データを得ることができ、得られた検出データに基づき、回転不良の金属製ガイドローラを検知することができるコンベアベルト及びベルトコンベア装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係るコンベアベルトは、無端環状に形成されて金属製ガイドローラに支持され、前記金属製ガイドローラの回転を伴って搬送方向へ送り出されるコンベアベルトであって、搬送方向へと送り出されて前記金属製ガイドローラを通過する際に、前記金属製ガイドローラの磁気を検出する磁気検出手段を有している。
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトは、前記磁気検出手段が、磁気インピーダンス(Magneto−Impedance)センサ或いはホールセンサである。
【0010】
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトは、前記金属製ガイドローラに反応して前記金属製ガイドローラを検出する金属検出手段を有している。
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトは、前記磁気検出手段及び前記金属検出手段が、前記金属製ガイドローラとの対向面側に埋設状態に配置されている。
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトは、前記磁気検出手段及び前記金属検出手段が、ベルト幅方向に並んで配置されている。
【0011】
また、この発明に係るベルトコンベア装置は、この発明に係るコンベアベルトと、前記コンベアベルトを支持して、前記コンベアベルトの搬送方向への送り出しに伴って回転する、搬送方向に沿って複数列配置された前記金属製ガイドローラとを有している。
また、この発明の他の態様に係るベルトコンベア装置は、前記金属製ガイドローラが各列毎に複数本並列に配置されてトラフ型キャリアを構成し、前記磁気検出手段が、前記金属製ガイドローラのそれぞれに対応して複数個設けられている。
【0012】
また、この発明の他の態様に係るベルトコンベア装置は、前記金属製ガイドローラが各列毎に複数本並列に配置されてトラフ型キャリアを構成し、前記磁気検出手段が、前記金属製ガイドローラのそれぞれに対応して複数個、前記金属検出手段が、前記金属製ガイドローラの列に対応して列毎に少なくとも1個、設けられている。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るコンベアベルトによれば、無端環状に形成されて金属製ガイドローラに支持されており、金属製ガイドローラの回転を伴って搬送方向へ送り出され金属製ガイドローラを通過する際に、コンベアベルトに設けられた磁気検出手段が金属製ガイドローラの磁気を検出するので、磁気検出手段と金属製ガイドローラが接触しない場合でも接触しない金属製ガイドローラについて検出データ(磁気データ)を得ることができ、得られた検出データに基づき、回転不良の金属製ガイドローラを検知することができる。
【0014】
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトによれば、磁気検出手段が、磁気インピーダンス(Magneto−Impedance)センサ或いはホールセンサであるので、金属製ガイドローラの微弱な磁気でも測定することができる。
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトによれば、磁気検出手段に加え、金属製ガイドローラに反応して金属製ガイドローラを検出する金属検出手段を有しているので、金属検出手段により存在が確認された金属製ガイドローラに対する磁気検出が行われ、回転不良の金属製ガイドローラを確実に検知することができる。
【0015】
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトによれば、磁気検出手段及び金属検出手段は、コンベアベルトの金属製ガイドローラとの対向面側に埋設状態に配置されているので、搬送方向へ送り出されるベルト走行中に衝撃等が生じた場合でも、その衝撃等から両検出手段を保護することができる。
また、この発明の他の態様に係るコンベアベルトによれば、磁気検出手段及び金属検出手段が、ベルト幅方向に並んで配置されているので、両検出手段の検出タイミングが一致し、磁気検出と同時に正常に回転している金属製ガイドローラと正常に回転していない回転不良の金属製ガイドローラの判別ができる。
【0016】
また、この発明に係るベルトコンベア装置によれば、この発明に係るコンベアベルトに設けられた磁気検出手段が、このコンベアベルトを支持してコンベアベルトの搬送方向への送り出しに伴って回転する、搬送方向に沿って複数列配置された金属製ガイドローラの磁気を検出するので、磁気検出手段と金属製ガイドローラが接触しない場合でも接触しない金属製ガイドローラについて検出データ(磁気データ)を得ることができ、得られた検出データに基づき、回転不良の金属製ガイドローラを検知することができる。
【0017】
また、この発明に係るベルトコンベア装置が、金属製ガイドローラが各列毎に複数本並列に配置されてトラフ型キャリアを構成し、磁気検出手段が、金属製ガイドローラのそれぞれに対応して複数個設けられているものであっても、磁気検出手段と金属製ガイドローラが接触しない場合でも接触しない金属製ガイドローラについて検出データ(磁気データ)を得ることができ、得られた検出データに基づき、回転不良の金属製ガイドローラを検知することができる。
【0018】
また、この発明の他の態様に係るベルトコンベア装置が、金属製ガイドローラが各列毎に複数本並列に配置されてトラフ型キャリアを構成し、磁気検出手段が、金属製ガイドローラのそれぞれに対応して複数個、金属検出手段は、金属製ガイドローラの列に対応して列毎に少なくとも1個、設けられているものであっても、磁気検出手段と金属製ガイドローラが接触しない場合でも接触しない金属製ガイドローラについて検出データ(磁気データ)を得ることができ、得られた検出データに基づき、回転不良の金属製ガイドローラを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態に係るベルトコンベア装置の構成を示す、搬送方向に交差する断面による説明図である。
【図2】図1のコンベアベルトをローラ側から見た平面によるセンサ設置部の説明図である。
【図3】磁気センサと金属センサの他の設置状態を示し、(a)は、コンベアベルト搬送方向に交差する断面による説明図、(b)は、コンベアベルトをローラ側から見た平面説明図である。
【図4】磁化されたガイドローラにおける磁気分布をグラフで示す説明図である。
【図5】ガイドローラの停止時と回転時におけるMIセンサの出力分布をグラフで示す説明図である。
【図6】センサ出力に基づく正常回転ローラと回転不良ローラの判別についての説明図である。
【図7】磁気センサと金属センサを併用した場合のセンサ出力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係るベルトコンベア装置の構成を示す、搬送方向に交差する断面による説明図である。図2は、図1のコンベアベルトをローラ側から見た平面によるセンサ設置部の説明図である。
図1に示すように、ベルトコンベア装置10は、フレーム11に取り付けられた複数のガイドローラ(キャリアローラ)12、及びガイドローラ12に支持されガイドローラ12の回転に伴って搬送方向へ送り出されるコンベアベルト13を有しており、搬送始端部においてコンベアベルト13上に投入された搬送物Wを、コンベアベルト13の搬送面(キャリア)13aに載置して搬送終端部まで搬送する。
【0021】
ガイドローラ12は、フレーム11の上部長手方向、即ち、ベルト搬送方向に沿った一定間隔で複数列配置されており、各列毎に複数本、搬送方向と略直交するベルト幅方向に一列に並び、且つ、両側のローラが外側上向きに配置されて、搬送方向において樋形状になるように、コンベアベルト13をベルト裏面(搬送面13aとは反対側の面)側から支持するトラフ型キャリア(例えば、ガイドローラ12が3本の場合、3本トラフ型キャリア)を構成している。
【0022】
このガイドローラ12は、金属製部材により形成された金属製ガイドローラであって、フレーム11の上部に突設されたブラケット11aに、軸回転自在に軸支されており、コンベアベルト13の搬送面13aの搬送方向への移動に伴って回転する。なお、フレーム11の下部には、搬送方向の逆方向に走行するコンベアベルト13の復路側を案内する、多数のリタンローラ(図示しない)が軸回転自在に設置されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、コンベアベルト13は、例えば、天然ゴム(Natural Rubber:NR)等の弾性材料により無端環状に形成されて、ベルト内部に芯体13b(例えば、スチールコード等の補強部材)が埋め込まれており、フレーム11の長手方向両端部に設けられた駆動プーリと従動プーリ(図示しない)に掛け回されている。
このコンベアベルト13の裏面側、即ち、ガイドローラ12側には、磁気センサ(磁気検出手段)14と金属センサ(金属検出手段)15が設置されており、更に、これら磁気センサ14と金属センサ15を、各センサ14,15から引き出された信号ケーブル16と共に覆って、層状に外装材17が装着されている。信号ケーブル16は、コンベアベルト13の一方の側端に設置されたコネクタ18に接続される。
【0024】
磁気センサ14は、例えば、磁気インピーダンス効果(Magneto−Impedance Effect:MI)を応用した磁気インピーダンス(MI)センサや、ホール効果と呼ばれる特性を使用したホールセンサが用いられ、コンベアベルト13が搬送方向へと送り出されてガイドローラ12を通過する際に、ガイドローラ12に帯磁された地磁気レベルの微弱な磁気を検出することができるように、ガイドローラ12に近接配置されている。検出能力としては、少なくとも0.1ガウスレベルの磁力が検出できればよい。
【0025】
金属センサ15は、金属部材であるガイドローラ12に反応してガイドローラ12が存在することを検出するものであり、検出対象となるガイドローラ12以外の金属部材に反応する(検出する)のを避けるため、検出距離が50mm程度の至近距離で反応するタイプが望ましい。
【0026】
これら磁気センサ14と金属センサ15は、ベルト幅方向に一列に並んで配置された、複数本(例えば、3本)のガイドローラ12のそれぞれに対応して一組ずつ、即ち、ベルト幅方向に並んで複数組(例えば、3組)が配置されている。なお、磁気センサ14は、各ガイドローラ12の磁気を検出するため、配置されたガイドローラ12のそれぞれに対応して、即ち、3本トラフ型キャリアの場合、ローラ設置列毎に3個設ける必要があるが、金属センサ15は、ガイドローラ12が設置されていることの確認、即ち、ガイドローラ12列についての存在確認(位置確認)ができればよいので、ガイドローラ12列に対応してローラ設置列毎に少なくとも1個設ければよい。
【0027】
これら磁気センサ14と金属センサ15は、必ずしもベルト幅方向に並んで配置されていなくても良く、コンベアベルト13の搬送方向への移動中に、搬送方向に隣接する各ガイドローラ12について検出することができるならば、搬送方向に沿って配置しても良い。また、金属センサ15は、複数個(例えば、3個)のガイドローラ12のそれぞれに対応して複数個(例えば、3個)設けても良く、この場合、複数個(例えば、3個)それぞれについての存在確認ができる。
【0028】
磁気センサ14と金属センサ15は、コンベアベルト13の裏面側に、例えば、接着剤等で貼り付けられており、その上に、ベルト幅方向略全域を長辺とする長方形状の外装材17を装着することで、コンベアベルト13のガイドローラ12対向面側に埋設状態に配置されている。これにより、磁気センサ14と金属センサ15が設置されたコンベアベルト13の裏面側は、ベルト走行中、ガイドローラ12に接触するが、磁気センサ14と金属センサ15は外装材17に覆われておりガイドローラ12に直接触れることがないので、搬送中に衝撃等が生じたとしてもその衝撃から両センサ14,15を保護することができる。外装材17としては、シリコン等の防水性の被覆材を用いることが望ましい。
【0029】
これら磁気センサ14と金属センサ15は、外装材17に覆われてコンベアベルト13に設置されているが、外装材17で覆うことなくコンベアベルト13に直接埋め込んで設置しても良い。
図3は、磁気センサと金属センサの他の設置状態を示し、(a)は、コンベアベルト搬送方向に交差する断面による説明図、(b)は、コンベアベルトをローラ側から見た平面説明図である。
【0030】
図3に示すように、磁気センサ14と金属センサ15は、コンベアベルト13のガイドローラ12対向面側の表層部を構成するカバーゴム部に、各センサ14,15から引き出された信号ケーブル16と共に、直接埋め込んで設置されており、コンベアベルト13のガイドローラ12との対向面側に埋設状態に配置される。その他の構成及び作用は、上述したコンベアベルト13の裏面側に貼り付けて外装材17により覆った場合と同様である。
【0031】
また、コンベアベルト13のベルト幅方向の一方の側端部には、コネクタ18に隣接して、コネクタ18が接続される判定ユニット19が備えられている。判定ユニット19は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、バッテリ等、磁気センサ14と金属センサ15からのセンサ出力値の入力に伴う判定処理に必要な各種機能部品をユニット化して、形成されている。
【0032】
次に、ベルトコンベア装置10による回転不良ガイドローラの検出について説明する。
ガイドローラ12は、金属製ガイドローラであることから、地磁気により常に微弱に磁化されており、回転していない静的状態で一定の磁気分布を有している。そこで、ガイドローラ12外表面に接触(距離略0mm)させた磁束密度計(ガウスメータ)により、磁気測定を行った。
【0033】
図4は、磁化されたガイドローラにおける磁気分布をグラフで示す説明図である。ここで、縦軸は磁力(T)、横軸はガイドローラの周方向一周分の位置を示す。ベルトコンベア装置10のガイドローラ12の内、回転していない静的な状態の任意の2個(AローラとBローラ)についてそれぞれ2回、ガイドローラ12の周方向一周を略等間隔で区切った18箇所の磁力を計測した。その結果、図4に示すように、Aローラにおいては、略0.5×10−4T〜−1.0×10−4Tの範囲(a1,a2参照)、Bローラにおいては、略1.0×10−4T〜−1.0×10−4Tの範囲(b1,b2参照)の磁力分布が得られた。
【0034】
そこで、地磁気レベルの微弱な磁気を検出することができる磁気インピーダンス(MI)センサを、ガイドローラ12に近接配置し、コンベアベルト13を搬送方向へ走行させてガイドローラ12を回転させると、ガイドローラ12の回転に対応した周期的な波形を得ることができた。磁気の検出に際しては、図4において測定対象であったAローラとBローラについて、センサ・ローラ間距離を13mmとし、それぞれ停止時と回転時(ベルト速度:100m/min)のセンサ出力を測定した。
【0035】
図5は、ガイドローラの停止時と回転時におけるMIセンサの出力分布をグラフで示す説明図である。ここで、縦軸はセンサ出力(V)、横軸は時間(s)を示す。図5に示すように、センサ出力について、ローラ停止時は殆ど変化無く略一定値で推移し(a1,b1参照)、ローラ回転時はそれぞれ周期的に大きな変化を示す(a2,b2参照)出力分布が得られた。因みに、ローラ回転時におけるセンサ出力の最大変化幅は、Aローラが約0.17(V)とBローラが約0.3(V)である。
【0036】
この結果から、磁気センサ14を搭載したコンベアベルト13を搬送方向に走行させると、コンベアベルト13の走行に伴って回転しているガイドローラ12からは周期的に大きく変化するセンサ出力が得られるが、回転していないガイドローラ12(回転不良ローラ)からは周期的に変化するセンサ出力が得られないので、回転不良ローラの出力値を越える閾値を設定し、この閾値に基づきセンサ出力が得られるか否かを検出することで、回転していないガイドローラ(回転不良ローラ)の有無を判別することができる。
【0037】
このとき、磁気センサ14は、走行中のコンベアベルト13が、例えば、上下にうねったとき等、ガイドローラ12に接触しない場合でも、磁気を検出して検出データを得ることができるので、ガイドローラ12が正常回転しているか或いは回転していない回転不良状態にあるかを確実に判定することができる。
図6は、センサ出力に基づく正常回転ローラと回転不良ローラの判別についての説明図である。図6に示すように、ベルト走行時間の経過に伴ってセンサ出力が得られるか否かを検出し、センサ出力が得られた場合、コンベアベルト13の走行に伴って正常に回転しているガイドローラ(正常ローラ)であると判定し、一方、センサ出力が得られない場合、正常に回転していないガイドローラ(回転不良ローラ)であると判定する。
【0038】
このとき、センサ出力が得られるか否かのみの判定では、センサ出力が得られない場合、ガイドローラ12が存在していなければ当然センサ出力が得られないので、ガイドローラ12が回転していないからセンサ出力が得られないのか、或いはガイドローラ12が存在していないからセンサ出力が得られないのか、区別することができない。
そこで、磁気センサ14のみではなく、ガイドローラ12を検出する金属センサ15を併用することにより、ガイドローラ12の存在を検知しその存在を確認した上で、磁気センサ14のセンサ出力に基づく正常回転ローラと回転不良ローラの判別を行う。
【0039】
図7は、磁気センサと金属センサを併用した場合のセンサ出力を示す説明図である。図7に示すように、センサ出力時間を一致させて、ベルト走行時間の経過に伴う、ガイドローラ12が帯びている微弱な磁気を検出する磁気センサ14の出力と金属製のガイドローラ12の存在を検出する金属センサ15の出力を、確認する。
つまり、磁気センサ14と金属センサ15の両方から出力が得られれば、ガイドローラ12は正常に回転している(正常ローラ)と判定し、金属センサ15からの出力は得られるが磁気センサ14からの出力が得られなければ、ガイドローラ12は正常に回転していない回転不良であると判定する。
【0040】
この結果、より確実に回転不良ローラを検出することができ、その上、回転不良ローラの検出に際しては、金属製のガイドローラ12それ自身が固有に持っている磁気を検出するので、ガイドローラ12に対し、磁気を検出するための如何なる加工・処理もする必要が無く、回転不良を検出することができる。
また、回転不良ローラの検出の際、一対の磁気センサ14と金属センサ15をベルト幅方向に一列に並んで配置することにより、両センサ14,15の検出タイミングが一致するので、センサ検出と同時に、即ち、両センサ14,15間のズレが無く瞬時に、正常回転ローラと回転不良ローラの判別ができる。
【0041】
センサ検出に基づく正常回転ローラと回転不良ローラの判別結果は、判定ユニット19に入力され、判定ユニット19において、例えば、判定結果に基づく回転不良ローラの特定データの作成・蓄積や、送信手段による特定した回転不良ローラに関するデータの指定場所への送信等が行われる。
例えば、この判定ユニット19により、磁気センサ14と金属センサ15が検出した、コンベアベルト13の走行に伴って変化する検出データをメモリに記憶し、このメモリに記憶されている検出データを、タイマ及びコンベアベルト13の走行状況を検出するエンコーダ等の各データと組み合わせることにより、回転不良のガイドローラ12が発生したとき、そのコンベアライン上の位置と発生時間とを割り出すことができる。
【0042】
なお、コンベアベルト13の走行速度とガイドローラ12の配置間隔により得られた所定時間毎に、センサ出力の有無を検出することで、ガイドローラ12が存在する位置でのセンサ出力の検出が可能になるので、金属センサ15を設けない場合でも、ガイドローラ12が正常に回転しているか否かを判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明によれば、常時、磁気を帯びた状態にある金属製ローラの磁気を検出することにより得られた波形情報に基づき、回転不良のローラを検知することができる磁気検出手段に加え、金属製ガイドローラに反応して金属製ガイドローラを検出する金属検出手段を有しているので、金属検出手段により存在が確認された金属製ガイドローラに対する磁気検出が行われ、コンベアベルトを支持してコンベアベルトの搬送方向への移動に伴って回転する複数のガイドローラの中から回転不良のローラを確実に検知することができるため、コンベアベルト及びベルトコンベア装置に最適である。
【符号の説明】
【0044】
10 ベルトコンベア装置
11 フレーム
11a ブラケット
12 ガイドローラ
13 コンベアベルト
13a 搬送面
13b 芯体
14 磁気センサ
15 金属センサ
16 信号ケーブル
17 外装材
18 コネクタ
19 判定ユニット
W 搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端環状に形成されて金属製ガイドローラに支持され、前記金属製ガイドローラの回転を伴って搬送方向へ送り出されるコンベアベルトであって、
搬送方向へと送り出されて前記金属製ガイドローラを通過する際に、前記金属製ガイドローラの磁気を検出する磁気検出手段を有するコンベアベルト。
【請求項2】
前記磁気検出手段は、磁気インピーダンス(Magneto−Impedance)センサ或いはホールセンサである請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項3】
前記金属製ガイドローラに反応して前記金属製ガイドローラを検出する金属検出手段を有する請求項1または2に記載のコンベアベルト。
【請求項4】
前記磁気検出手段及び前記金属検出手段は、前記金属製ガイドローラとの対向面側に埋設状態に配置されている請求項3に記載のコンベアベルト。
【請求項5】
前記磁気検出手段及び前記金属検出手段は、ベルト幅方向に並んで配置されている請求項3または4に記載のコンベアベルト。
【請求項6】
請求項1または2に記載のコンベアベルトと、
前記コンベアベルトを支持して、前記コンベアベルトの搬送方向への送り出しに伴って回転する、搬送方向に沿って複数列配置された前記金属製ガイドローラと
を有するベルトコンベア装置。
【請求項7】
前記金属製ガイドローラが各列毎に複数本並列に配置されてトラフ型キャリアを構成し、
前記磁気検出手段は、前記金属製ガイドローラのそれぞれに対応して複数個設けられている請求項6に記載のベルトコンベア装置。
【請求項8】
請求項3から5のいずれか一項に記載のコンベアベルトと、
前記コンベアベルトを支持して、前記コンベアベルトの搬送方向への送り出しに伴って回転する、搬送方向に沿って複数列配置された前記金属製ガイドローラと
を有するベルトコンベア装置。
【請求項9】
前記金属製ガイドローラが各列毎に複数本並列に配置されてトラフ型キャリアを構成し、
前記磁気検出手段は、前記金属製ガイドローラのそれぞれに対応して複数個、前記金属検出手段は、前記金属製ガイドローラの列に対応して列毎に少なくとも1個、設けられている請求項8に記載のベルトコンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−42468(P2011−42468A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192154(P2009−192154)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】