説明

コンベアベルト用ゴム組成物、コンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルト

【課題】 耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)を両立したコンベアベルト用ゴム組成物及びそれを用いたコンベアベルトカバー用ゴム又はコンベアベルトを提供すること。
【解決手段】 (A)スチレン−ブタジエンゴム90〜60質量部、並びにブタジエンゴム及び/又は天然ゴム10〜40質量部を含むゴム成分100質量部に対して、(B)窒素吸着比表面積100m2/g以上のカーボンブラックを50〜70質量部、及び(C)樹脂を10〜30質量部を含有してなるコンベアベルト用ゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトに関し、さらに詳しくは、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなるコンベアベルトの上面カバー用ゴムとして、特に耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)を両立させたコンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベアベルトは、物品を輸送する手段として極めて有用であり、多くの場所において使用されている。
このコンベアベルトは、通常、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなっているが、特に上面カバーゴムは搭載された被輸送物との摩擦によって摩耗し易く、また、衝撃を加えられた場合カットを受け易いので、ベルト全体の寿命を向上させるためには、耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)の両立を図る必要がある。
【0003】
上記の性能のうち、耐カット性(耐衝撃性)を向上させるため、天然ゴムとスチレン−ブタジエンゴムとの混合比が50/50〜80/20であるゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積100m2/g以上、DBP吸油量100cm3/100g以上であるカーボンブラックを45〜65質量部、シリカを5〜20質量部および樹脂を2〜7質量部を含有するコンベアベルトカバー用ゴム組成物が開示されているが(特許文献1参照)、耐摩耗性の点では、未だ不十分であった。
【0004】
また、耐摩耗性を向上させるため、天然ゴムにネオジウム系触媒により重合したポリブタジエンゴムを含むコンベアベルトカバー用ゴム組成物が開示されているが(特許文献2参照)、耐カット性を向上するものではなかった。
したがって、耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)の両立を達成するコンベアベルト用ゴム組成物、特にコンベアベルトカバー用ゴム組成物が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平2000−198517号公報
【特許文献2】特開平2003−105136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)の両立を達成するコンベアベルト用ゴム組成物、特にコンベアベルトカバー用ゴム組成物及びそれを用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、スチレン−ブタジエンゴム主体とし、ブタジエンゴム及び/又は天然ゴムを含有してなるゴム成分に対し、特定量の特定のカーボンブラック及び特定量の樹脂を配合してなるゴム組成物をコンベアベルトカバーゴム及びコンベアベルトに用いることにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、(A)スチレン−ブタジエンゴム90〜60質量部、並びにブタジエンゴム及び/又は天然ゴム10〜40質量部を含むゴム成分100質量部に対して、(B)窒素吸着比表面積100m2/g以上のカーボンブラックを50〜70質量部、及び(C)樹脂を10〜30質量部を含有してなるコンベアベルト用ゴム組成物であり、好ましくは、前記ポリブタジエンゴムがネオジウム系触媒により重合されたものである。
さらに、上記のコンベアベルト用ゴム組成物を用いることを特徴とするコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)とのいずれにも優れ、それらの両立が達成されるので、耐久性を大幅に向上するコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるスチレン−ブタジエンゴム(以下、SBRという)としては、乳化重合SBR、溶液重合SBRのいずれを用いても良い。特にその組成は限定されないが、好ましくは、含有スチレン量が10〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%、さらに好ましくは20〜30質量%である。この範囲であると、耐衝撃性、耐摩耗性のバランスが良好となり好ましい。また、SBRとしては、市販品を利用することができ、例えば、乳化重合SBRとしては、JSR1500、JSR1502、JSR1712(いずれもスチレン含量23.5質量%)(いずれも株式会社JSR製)等が、溶液重合SBRとしては、SL552(スチレン含量24質量%)、SL555(スチレン含量24質量%)、SL556(スチレン含量24質量%)、SL574(スチレン含量15質量%)、(いずれも株式会社JSR製)等が挙げられる。
【0010】
また、本発明におけるポリブタジエンゴム(以下、BRという)は、ニッケル系触媒により重合されるBR、例えば、BR01、BR11(いずれも株式会社JSR製)や、リチウム系触媒により重合されるBR、例えば、BR71(株式会社JSR製)であってもよいが、ネオジウム系触媒により重合されたポリブタジエンゴム(以下、Nd−BRという)であることが好ましい。ここで、BRの二重結合部分の構造にはシス体とトランス体があるが、本発明におけるNd−BRはシス体が80%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。シス体が80%未満であると耐摩耗性に劣る場合があるからである。
【0011】
前記ネオジウム系触媒としては、種々のものがあるが、ネオジウムを含む化合物又はこれらとルイス塩基との反応物等を使用し得る。具体的には、ネオジウムのカルボン酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、アルコキシド等が好適である。
また、助触媒としてアルミノキサンを用いることが好ましく、特にメチルアルミノキサンが好適である。
【0012】
また、本発明におけるNd−BRは、末端変性がなされていることが好ましい。Nd−BRの末端変性方法としては、変性剤を使用してNd−BRの活性末端を変性する方法を用いることができる。変性剤としては、例えば、四塩化スズ及び四臭化スズ等のハロゲン化スズ、トリブチルスズクロライド等のハロゲン化有機スズ化合物、四塩化ケイ素及びクロロトリエチルシラン等のケイ素化合物、フェニルイソシアネート等のイソシアネート基含有化合物、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物並びにイソシアヌル酸誘導体等が挙げられる。この中で特にスズ系化合物を用いて末端変性をすることが好ましい。また、本発明で用いる末端変性Nd−BRは、分子量に関しては特に制限されない。
【0013】
本発明におけるゴム成分は、SBR90〜60質量部、並びにBR及び/又は天然ゴム10〜40質量部を含む。SBR配合量が90質量部を超えると耐摩耗性が低下するため、また、60質量部未満であると耐カット性が低下するため本発明の目的を満足し得ないからである。
【0014】
本発明におけるゴム成分としては、上記のSBR、BR及び/又は天然ゴムの他に、本発明の目的に反しない範囲で、コンベアベルトという用途に応じて、少量(例えば、10質量部以下)の種々の他の合成ゴムを含むことができる。他の合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、さらに臭素化ブチルゴム、パラメチルスチレン基を有するブチルゴム(具体的にはイソブチレンとp−ハロゲン化メチルスチレンとの共重合体等)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)なども好適なものとして挙げることができる。また、本発明における天然ゴムの一部をイソプレンゴムに置換し得る。
【0015】
本発明におけるカーボンブラックとしては、ISAF級以上、即ち、窒素吸着比表面積100m2/g以上のカーボンブラックが用いられる。ISAF級のカーボンブラックとしては、ISAF(N220)、例えば、旭#80(窒素吸着比表面積115m2/g、DBP吸油量(A法)113ml/100g:旭カーボン社製)、ISAF−HS(N234)、例えば、シースト7HM(窒素吸着比表面積126m2/g、DBP吸油量(A法)125ml/100g:東海カーボン社製)が用いられる。これらのうち、高ストラクチャー、即ち、DBP吸油量(A法)120ml/100g以上の、ISAF級以上のカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積およびDBP吸油量(A法)の上限を定めるものではないが、窒素吸着比表面積として、150m2/g以下、DBP吸油量(A法)150ml/100g以下が好ましい。
【0016】
カーボンブラックの配合量としては、50〜70質量部が賞用される。カーボンブラック配合量が70質量部を超えると加工性が低下するため、また、50質量部未満であると耐摩耗性及び耐カット性が低下するため本発明の目的を満足し得ないからである。
【0017】
本発明における樹脂は、特に限定しないが、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油系炭化水素樹脂(脂肪族、芳香族共に用いられ得る)芳香族多価カルボン酸・脂肪族多価アルコール縮合物、クマロン樹脂の単体若しくはそのブレンドを用いる事が耐カット性、耐摩耗性及び工場作業性を考慮すると望ましい。
【0018】
樹脂は、10〜30質量部の配合量で用いられる。樹脂配合量が30質量部を超えると耐摩耗性が低下するため、また、10質量部未満であると耐カット性が低下するため本発明の目的を満足し得ないからである。
【0019】
また、本発明のゴム組成物には、通常硫黄が含有される。この硫黄の含有量は、ゴム成分100重量部当たり、0.3〜5重量部の範囲が好ましい。この含有量が0.3重量部未満では十分な加硫効果が得られず、目標性能を達成できなくなる場合がある。また5重量部を超えると、ゴムがもろくなり、ゴムの疲労性能が低下するなど好ましくない場合がある。
【0020】
さらに、本発明のゴム組成物には、前記各成分以外に、ゴム業界で通常使用される配合剤を通常の配合量で適宜配合することができる。具体的には、シリカやクレー等の充填剤、アロマオイル等の軟化剤、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール類、N,N'−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム類などの加硫促進剤、酸化亜鉛等の加硫促進助剤、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン類などの老化防止剤等である。
【0021】
本発明のゴム組成物は、開放混合式の練りロール機や密閉式混合機のバンバリーミキサー等の混練機を用いて混練りすることにより得ることができる。そして、得られたゴム組成物をカレンダーや押出し機などでシート状に成形し、補強材である帆布又はスチールコードを芯材として、これを覆うようにシート状ゴム成形物を貼り合わせ、その後、加硫を行うことによりコンベアベルトを得ることができる。
【0022】
前記したように、コンベアベルトは、通常上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなっており、被輸送物と接触するのは上面カバーゴムである。本発明のコンベアベルトは、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなるベルトの、上面カバーゴムに本発明のゴム組成物を使用したものである。補強材及び下面カバーゴムは、この種のベルト用として従来から知られていたものが使用し得るが、無論、下面カバーゴムに本発明のゴム組成物を使用しても、一向に差し支えない。本発明のコンベアベルトは、従来公知のコンベアベルトの何れにも使用可能である。すなわち、本発明のベルトを、従来公知のコンベアベルト用ベルトに代えて装着したコンベアベルトであり、かかるコンベアベルトをも本発明は提供するものである。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
ここで、評価法について下記する。
(落錘カット試験)縦60mm×横70mm×高さ30mmのゴムブロックを加硫し、サンプルを作成する。室温でサンプルの80cm高さから重量15kgの錘をつけた角度60度の鋭利な刃を落下させ、生じた亀裂深さ(mm)を測定した。亀裂深さが小さい程、耐カット性(耐衝撃性)が良好である。
(DIN摩耗)DIN摩耗試験機を用いて耐摩耗試験を行った。耐摩耗試験は室温で行い、摩耗量をmm3で表わした。摩耗量が少ない程、耐摩耗性が良好である。
【0024】
実施例1〜12、比較例1〜4
第1表に記載した配合処方により、16種類のゴム組成物を調製し、落錘カット試験及びDIN摩耗の評価を行った。その結果を第1表に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
第1表の各組成物において用いられたポリマー等の銘柄等を下記する。
SBR: JSR1500(株式会社JSR製/スチレン含量23.5質量%)
BR(1): T0700(株式会社JSR製/ネオジウム触媒BR、助触媒:メチルアルミノキサン)
BR(2): BR01(株式会社JSR製)
ISAF: 旭#80(旭カーボン社製/窒素吸着比表面積115m2/g、DBP吸油量(A法)113ml/100g)
N234: シースト7HM(東海カーボン社製/窒素吸着比表面積126m2/g、DBP吸油量(A法)125ml/100g)
HAF: シースト3(東海カーボン社製/窒素吸着比表面積79m2/g、DBP吸油量(A法)101ml/100g)
樹脂1: ハイロジンS(大社松精油社製/ロジン)
樹脂2: クイントン1920(日本ゼオン社製/ジシクロペンタジエン・スチレン類石油樹脂C4〜5炭化水素共重合体)
樹脂3: クイントンA100(日本ゼオン社製/石油系脂肪族炭化水素樹脂)
樹脂4: ZEOFINE 100M(日本ゼオン社製/芳香族多価カルボン酸・脂肪族多価アルコール縮合物)
樹脂5: 日石ネオポリマー140(新日本石油化学社製/石油系芳香族炭化水素樹脂)
樹脂6: エスクロンV−120(大内新興化学社製/クマロン樹脂)
【0028】
第1表より明らかなごとく、実施例1〜12のゴム組成物は、スチレン−ブタジエンゴム90〜60質量部とし、ブタジエンゴム及び/又は天然ゴムを含有してなるゴム成分に対し、特定量の特定のカーボンブラック及び特定量の樹脂を配合することにより比較例1〜2と比較して、耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)の両立を達成し得た。また、HAFを用いた比較例3、樹脂を用いなかった比較例4と比較し、耐カット性の点で大幅に改良された。さらに、Nd−BRを用いることにより、より高度な両立をなし得た。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトは、耐摩耗性と耐カット性(耐衝撃性)の両立を達成したので、コンベアベルト等に好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スチレン−ブタジエンゴム90〜60質量部、並びにブタジエンゴム及び/又は天然ゴム10〜40質量部を含むゴム成分100質量部に対して、(B)窒素吸着比表面積100m2/g以上のカーボンブラックを50〜70質量部、及び(C)樹脂を10〜30質量部を含有してなるコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリブタジエンゴムがネオジウム系触媒により重合されたものであることを特徴とする請求項1記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いることを特徴とするコンベアベルトカバー用ゴム。
【請求項4】
請求項1又は2記載のゴム組成物を用いることを特徴とするコンベアベルト。




【公開番号】特開2006−199892(P2006−199892A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15724(P2005−15724)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】