説明

コンベアベルト用ゴム組成物及びコンベアベルト

【課題】耐摩耗性に優れると共に、さらに耐カット性、耐引裂き性、難燃性も向上するコンベアベルト用ゴム組成物及びコンベアベルトを提供する。
【解決手段】コンベアベルト用ゴム組成物として、ゴム成分に有機繊維を配合した。有機繊維としては、アラミド短繊維及び/又はセルロース短繊維が好ましい。有機繊維の長さは0.1〜10mm、有機繊維の配合量はゴム成分100質量部当たり、0.2〜20質量部であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベアベルト用ゴム組成物に係り、特に耐摩耗性に優れたコンベアベルト用ゴム組成物に関する。また、このコンベアベルト用ゴム組成物を用いたコンベアベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼、石炭、セメント等の産業分野においては、輸送物をコンベアベルトで長距離にわたり搬送する必要がある。特開2001−26670号の第0002段落には、一般的に、このような輸送物の搬送に用いられるコンベアベルトは、帆布又はスチールコードで補強されたゴムベルトで構成されており、コンベアベルトのゴム材料としては、天然ゴム(NR)や、天然ゴムとポリブタジエンゴム(BR)とのブレンドゴムをポリマー成分とするゴム組成物が用いられると記載されている。
【特許文献1】特開2001−26670号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンベアベルトは、通常、上面カバーゴム、補強材(帆布層)及び下面カバーゴムからなっているが、特に上面カバーゴムは搭載された被輸送物との摩擦によって磨耗し易い。
【0004】
本発明は、耐摩耗性に優れると共に、さらに耐カット性、耐引裂き性、難燃性も向上するコンベアベルト用ゴム組成物及びコンベアベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1のコンベアベルト用ゴム組成物は、ゴム成分に有機繊維を配合したことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2のコンベアベルト用ゴム組成物は、請求項1において、該有機繊維は短繊維であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3のコンベアベルト用ゴム組成物は、請求項2において、該有機繊維はアラミド短繊維及び/又はセルロース短繊維であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4のコンベアベルト用ゴム組成物は、請求項3において、該有機繊維の長さは0.1〜10mmであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5のコンベアベルト用ゴム組成物は、請求項3又は4において、該有機繊維の配合量が、ゴム成分100質量部当たり、0.2〜20質量部であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6のコンベアベルトは、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムを有するコンベアベルトにおいて、該コンベアベルトのゴム組成物として、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコンベアベルト用ゴム組成物が用いられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物及びコンベアベルトは、ゴム成分に有機繊維を配合したものであるため、耐摩耗性に優れると共に、さらに耐カット性、耐引裂き性、難燃性も向上する。
【0012】
この有機繊維は短繊維であることが好ましく、特にアラミド短繊維及び/又はセルロース短繊維であることが好ましい。
【0013】
この有機繊維の長さは0.1〜10mm特に0.1〜6mmであることが好ましく、この有機繊維の配合量は、ゴム成分100質量部当たり、0.2〜20質量部であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、ゴム成分に有機繊維を配合したものである。かかるコンベアベルト用ゴム組成物は、耐摩耗性に優れると共に、さらに耐カット性、耐引裂き性、難燃性も向上する。
【0016】
ゴム成分としては、天然ゴム(NR)や合成ゴムが用いられる。合成ゴムとしては、例えばブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、さらに臭素化ブチルゴム、パラメチルスチレン基を有するブチルゴム(具体的にはイソブチレンとp−ハロゲン化メチルスチレンとの共重合体等)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)なども好適なものとして挙げることができる。本発明におけるゴム成分は、ベルトコンベアのベルトという用途に応じて、天然ゴム及び上記合成ゴムの中から、適宜一種又は二種以上選択して用いられる。
【0017】
有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド系合成繊維)繊維、アラミド繊維、セルロース繊維などが挙げられ、これら1種又は2種以上を混合したものが用いられる。これらのうち、アラミド繊維及び/又はセルロース繊維が特に好ましい。
【0018】
この有機繊維は短繊維であることが好ましく、その長さは0.1〜10mmであることが好ましい。0.1mm未満であると、耐摩耗性、耐カット性、耐引裂き性及び難燃性が不十分になる。10mmよりも長いと、ゴム成分への分散性が悪くなると共に、加硫後の外観不良や、引張り性能の低下(強力や伸びの低下)が起こる。
【0019】
有機繊維の太さは1〜3Tex程度が好ましい。
【0020】
この有機繊維の配合量は、ゴム成分100質量部当たり、0.2〜20質量部であることが好ましい。有機繊維の配合量が0.2質量部未満であると、耐摩耗性、耐カット性、耐引裂き性及び難燃性が不十分になる。一方、有機繊維の配合量が20質量部よりも多いと、硬度の上昇、引張り性能の低下(強力や伸びの低下)が起こる。
【0021】
なお、このコンベアベルト用ゴム組成物には、例えば、カーボンブラック、シリカなどの補強剤、炭酸カルシウム、タルクなどの充填剤、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤、加工助剤などの通常使用されている配合剤を混練りしたゴム組成物を用いることができる。
【0022】
本発明のコンベアベルトは、ゴム組成物として上記コンベアベルト用ゴム組成物を用いたものである。
【0023】
コンベアベルトは、通常、上面カバーゴム、補強材(帆布層)及び下面カバーゴムからなっており、被輸送物と接触するのは上面カバーゴムである。本発明のコンベアベルトでは、上面カバーベルト、補強材及び下面カバーゴムの少なくとも一種に上記のコンベアベルト用ゴム組成物が用いられる。但し、上面カバーゴムは、被輸送物と接触し、該被輸送物との摩擦によって磨耗し易いため、少なくとも上面カバーゴムに本発明のコンベアベルト用ゴム組成物を用いることが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
なお、使用した配合材料は次の通りである。
【0026】
天然ゴム:RSS4号
スチレンブタジエンゴム(SBR):JSR社製 「SBR1500」
カーボンブラック:旭カーボン社製「ASAHI#70−NP」
可塑剤:新日本石油社製 「アロマックス#1000」
老化防止剤:精工(株)製2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン
重合体「ノンフレックスRD」
加硫促進剤:大内新興化学工業製「ノクセラーNS−P」
ファイバー1:DuPont社製アラミド繊維「KEVLAR 1F722」。長さ6mm以下
ファイバー2:DuPont社製アラミド繊維「KEVLAR pulp」。長さ6mm以下
ファイバー3:フレキシス社製天然セルロース繊維「サントウエブ D」。長さ1.5mm
【0027】
実施例1
表1に示すように、上記ファイバー1を含む配合のゴム組成物を、160℃、50kg/cmで30分間加熱加圧して加硫成形し、ゴムを得た。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例2,3
表1に示す通り、ファイバーの種類を変更したことの他は実施例1と同様にして、ゴムを得た。
【0030】
比較例1
表1に示す通り、ファイバーを配合しなかったことの他は実施例1〜3と同様にして、ゴムを得た。
【0031】
実施例1〜3及び比較例1のゴムについて、下記の方法により諸特性を測定した。その結果を表1に示す。
【0032】
<DIN磨耗>
DIN 53516に準拠し、DIN磨耗試験機を用い、室温にてDIN磨耗を測定した。その結果を表1に示す。なお、比較例1の測定結果を100とし、実施例1〜3の測定結果を比較例1に対する指数で表した。
【0033】
<耐カット性>
実施例1〜3及び比較例1の各ゴムを作成するに際し、縦60mm×横70mm×高さ30mmのゴムブロックを加熱加硫した。
【0034】
室温において、これらのサンプルに対して80cmの高さから、重量15kgの錘を付けた角度60°の鋭利な刃を落下し、生じた亀裂深さを測定した。その結果を表1に示す。なお、比較例1の測定結果を100とし、実施例1〜3の測定結果を比較例1に対する指数で表した。
【0035】
<引裂強さ>
JIS K−6251に準拠し、引裂強さを測定した。その結果を表1に示す。なお、比較例1の測定結果を100とし、実施例1〜3の測定結果を比較例1に対する指数で表した。
【0036】
<難燃性>
JIS K7201に準拠し、難燃性を測定した。その結果を表1に示す。なお、比較例1の測定結果を100とし、実施例1〜3の測定結果を比較例1に対する指数で表した。
【0037】
表1から明らかな通り、実施例1〜3のゴムは、耐摩耗性、耐カット性、耐引裂き性及び難燃性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分に有機繊維を配合したことを特徴とするコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1において、該有機繊維は短繊維であることを特徴とするコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項2において、該有機繊維はアラミド短繊維及び/又はセルロース短繊維であることを特徴とするコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項3において、該有機繊維の長さは0.1〜10mmであることを特徴とするコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項3又は4において、該有機繊維の配合量が、ゴム成分100質量部当たり、0.2〜20質量部であることを特徴とするコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項6】
上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムを有するコンベアベルトにおいて、
該コンベアベルトのゴム組成物として、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコンベアベルト用ゴム組成物が用いられていることを特徴とするコンベアベルト。

【公開番号】特開2008−105847(P2008−105847A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292783(P2006−292783)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】