説明

コンベアベルト

【課題】
波形桟、横桟への被搬送物の付着および、それらの桟の摩耗の少なくとも一方を、別添部材の破損、摩滅、脱落等のおそれとは全く無関係に、長期間にわたって確実に、かつ効果的に防止できるコンベアベルトを提供する。
【解決手段】
無端状のベースベルト1と、ベースベルト1の両側部に立設されてベースベルト1の延在方向に延びる波形2桟と、これらの一対の波形桟2と、これらの一対の波形桟2,2間で、ベースベルトの延在方向「に所定の間隔をおいて立設されてベースベルト1の幅方向に延びる横桟3とを具えるものであって波形機2および横桟3のそれぞれを、厚み方向に接合された二種類のゴム2a,2bおよび3a,3bによって構成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンベアベルト、なかでも、急傾斜コンベアとして用いて好適なコンベアベルトに関するものであり、とくには、粉・粒状物、塊状物等を搬送するに当って、水分を含むそれらの被搬送物が、コンベアベルトの波形桟、横桟等に付着するのを防止し、および/または、それらの桟が、コンベアベルト上へ落下供給される被搬送物、および、コンベアベルトの、所定の経路上での走行を担保するローラやディスクプーリ等によって早期に摩耗されるのを防止する技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、急傾斜コンベアとして用いられる、波形桟および横桟を具えるコンベアベルトにおいて、横桟表面への運搬物の付着を防止する従来技術としては、特許文献1に記載されているように、横桟の前後表面に、分子量が100万以上の高分子量ポリエチレンシートを一体的に貼付けて構成するものがあり、これによれば、付着性の強い運搬物であっても、横桟表面に熱融着させた高分子量ポリエチレンシートにより、横桟表面への運搬物の付着を有効に防止できるとする。
【0003】
また、特許文献2には、急傾斜コンベアとして用いることができるコンベアベルトにあって、立設された波桟および横桟の頂部を、シュートからの積載物の落下による摩耗および、ベルト変角部のディスクローラあるいはリターンローラとの接触による摩耗から保護するべく、波桟および横桟の頂部を、セラミックチップの接着によって被覆する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−179211号公報
【特許文献2】実開昭60−103115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、高分子量ポリエチレンシートを横桟に張付ける、特許文献1に記載された技術では、運搬物が、硬質にして鋭利は角部を有するものである場合等に、ポリエチレンシートが破損され易い他、運搬物との擦れによって、ポリエチレンシートに早期の剥れ、摩滅等が生じ易いという問題があり、また、桟の頂部をセラミックチップで被覆する、特許文献2に記載された技術によれば、コンベアベルトを、駆動および従動プーリ等に巻き掛けるに当っての波桟の伸縮変形に対する、セラミックチップの追従性の低さに由来するセラミックチップの剥離・脱落が否めず、また、波桟の伸長変形下ではチップ間隔が大きくなるため、セラミックチップの間隔部分がローラと接触して早期に摩耗されるおそれがある等の問題があった。
【0005】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、波形桟、横桟への被搬送物の付着、および、それらの桟の摩耗の少なくとも一方を、別添部材の破損、摩滅、脱落等のおそれとは全く無関係に、長期間にわたって確実に、かつ効果的に防止できるコンベアベルトを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るコンベアベルトは、無端状の平坦なベースベルトと、ベースベルトの両側部に立設されてベースベルトの延在方向に延びる波形桟と、これらの一対の波形桟間で、ベースベルトの延在方向に所定の間隔をおいて立設されてベースベルトの幅方向に延びる横桟とを具えるものであって、波形桟および横桟の少なくとも一方を、それの厚み方向に、加硫、接着剤等をもって接合された二種類以上のゴムによって構成してなるにある。
【0007】
この場合、より好ましくは、波形桟および横桟の少なくとも一方の、被搬送物との接触表面側部分を撥水性のゴムにより、そして、その表面側部分とは反対側の表面部分を耐摩耗性のゴムによりそれぞれ構成する。
【0008】
また好ましくは、二種類以上のいずれかの種類のゴムも天然ゴムを共通成分としてなるものとする。
【発明の効果】
【0009】
そしてまた、このようなコンベアベルトでは、波形桟および横桟の少なくとも一方に、たとえば、帆布等からなる織布補強層を埋設すること、波形桟および横桟の少なくとも一方の頂部を耐摩耗性のゴムで覆うことが好ましい。
【0010】
この発明に係るコンベアベルトでは、とくに、波形桟および横桟の少なくとも一方を、それの厚み方向に接合された二種類以上のゴムの積層体にて構成することで、桟の所要部分を所要に応じた物性をもつゴム種によって形成することができ、その桟の、被搬送物との接触表面側部分のゴム種を相対的に撥水性の高いものとすることで、水分を含む被搬送物の、その桟への付着を、その撥水製ゴムが摩滅等するまでの間、長期間にわたって有効に防止することができる。
【0011】
この一方で、桟の、被搬送物との接触表面側部分とは反対側の、ローラやディスクプーリ、落下供給被搬送物との接触表面部分を、他のゴム種に比して、相対的に耐摩耗性にすぐれたゴム種で構成したときは、その耐摩耗性ゴムが摩滅等するまでの間、長期間にわたって高い耐摩耗を発揮させることができる。
【0012】
このようなコンベアにおいて、波形桟および横桟の少なくとも一方の、被搬送物との接触表面側部分を、たとえば、シリコーン、脂肪酸アミド等を含む撥水性のゴムにより、そして、その表面側部分とは反対側の表面部分を、たとえば、ブタジェンゴム等を含む、または、JIS A硬度が70以上の高硬度の耐摩耗性のゴムによりそれぞれ構成したときは、桟が三層以上の積層構造になる場合にあっても、撥水性ゴムおよび耐摩耗性ゴムの両者を、それらが摩滅等するまで同時に機能させて、その撥水性ゴムをもって、桟への被搬送物の付着を、長期間にわたって十分に防止し、併せて、耐摩耗性ゴムによって、桟の耐摩耗性を、長期間にわたって十分に高めることができる。
【0013】
またここで、いずれの種類のゴムも、天然ゴムを共通成分としてなるものとしたときは、桟の厚み方向での二種類以上のゴムの積層接合を、接着剤等を用いることなしに、直接的な加硫接着によって簡易に、かつ確実に行うことができる。
【0014】
そして、波形桟および横桟の少なくとも一方に、帆布等からなる補強層を埋設したときは、桟の強度を十分に高めることができる。
なお、この補強層を、ゴム被覆を施した状態として埋設させる場合は、その被覆ゴムもまた、共通成分としての天然ゴムを有するものとすることが、補強層の積層接合を簡易にして強固なものとする上で好ましい。
【0015】
ところで、先に述べたように、桟の一方の表面部分を撥水性のゴムで、そして、反対側の表面部分を耐摩耗性のゴムでそれぞれ構成する場合にあって、桟の頂部を耐摩耗性のゴムで覆ったときは、落下供給される被包装物による、桟の頂部の摩耗を、その耐摩耗性ゴムによって有効に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、この発明に係るコンベアベルトを、その一部について、部分を破断除去して例示する断面斜視図であり、図中1は無端状に連続するベースベルトを、2は、ベースベルト1の両側部に立設されてベースベルト1の延在方向へ、波状に迂曲して延びる一対の波形桟を、そして3は、一対の波形桟2,2間で、ベースベルト1の延在方向に所定の間隔をおいて立設されてベースベルト1の幅方向に延びる横桟3をそれぞれ示す。
【0017】
この図に示すところでは、ベースベルト1は、内部に埋設された一層の芯体帆布4aと、この芯体帆布4aを挟む二層の補強帆布4bとからなる補強層4によって補強され、また、各波形桟2は、それの厚みの中間部に埋設配置した、これも帆布からなる補強層5によって補強されている。なお、図に示すところからは明らかではないが、横桟3もまた、帆布等からなる埋設補強層をもって補強し得ることはもちろんである。
【0018】
ところで、横桟に関し、図示の横桟3は、ベースベルト1に対して垂直に立設させているも、このコンベアベルトを傾斜コンベアとして用いるときは、横桟3の立設形態を、図2に断面斜視図で例示するように、突出端部が上方側に向く傾斜形態または、折れ曲がり傾斜形態とすることもできる。
【0019】
ここで、図1に示す横桟3は、傾向として、最も匂配の小さい傾斜コンベアに用いて好適であり、また、図2(a)および(b)に示すそれぞれの横桟3は、順次匂配の大きい傾斜コンベアに用いて好適である。
【0020】
そしてここでは、波形桟2および横桟3の少なくとも一方、好ましくはそれらの両者を、厚み方向に接合された、所要の物性を有する二種類以上のゴムの積層構造になるものとする。
【0021】
この場合、より好ましくは、桟2,3の、被搬送物との接触表面側部分、たとえば、一対の波形桟2では、補強層5より内側となる相互の対向表面側部分を、そして横桟3では、傾斜コンベアとして用いたときに上側となって、被搬送物を支持することとなる表面側部分を、たとえば、シリコン、脂肪酸アミド等を含む撥水性のゴム2a,3aによって構成する一方で、上記の表面側部分とは反対側の表面側部分、たとえば、一対の波形桟2では、補強層5より外側となって、ローラやディスクプーリ等と接触することのある外表面側部分を、また横桟3では、傾斜コンベアとして用いたときに、被搬送物を支持することとなる表面側部分とは反対側の表面部分、とくに、図2(a),(b)に示すように傾斜し、または、折れ曲がり傾斜した形態を有する横桟3では、コンベアベルトの平坦姿勢の下での被搬送物の落下供給に際して、被搬送物が衝突することになる外表面側部分を、たとえば、ブタジェンゴム等を含む、または、JIS A硬度が70以上の高硬度をもつ耐摩耗性のゴム2b,3bにより構成する。
【0022】
このように構成してなるコンベアベルトによれば、被搬送物に接触する撥水性ゴム2a,3aの作用に基き、その被搬送物がたとえ水分を含む場合であっても、それを搬送するコンベアベルトが、キャリヤ側からリターン側へ反転されると同時に、被搬送物の全てが、所定の集積個所に確実に落下されることになる。従って、このコンベアベルトでは、それに付着残留した被搬送物が、リターン経路の途中でコンベアベルトから落下して、そのリターン経路の周辺を汚損するおそれを十分に取り除くことができる。
【0023】
またこのコンベアベルトでは、波形桟2の耐摩耗性ゴム2bの作用により、通常は、一対の波形桟2より外側で、ベースベルト1の側部に摩擦接触することになるローラやディスクプーリ等に、コンベアベルトの蛇行等に起因して、波形桟2の外表面が接触することがあっても、波形桟2の摩耗を長期間にわたって効果的に防止することができる。
【0024】
そして、横桟3の耐摩耗性ゴム3bは、とくにその横桟3が図2(a),(b)に示すような立設形態を有するものである場合に、平坦姿勢としたコンベアベルト上に、被搬送物を落下供給するに当り、横桟3の外表面を被搬送物の衝突に伴う摩耗から有効に保護することができる。
【0025】
以上のようなコンベアベルトにおいて、二種類以上、たとえば三種類以上のゴムの積層構造体とすることができる波形桟2および横桟3は、いずれの種類のゴムにも共通のゴム成分、一般的には天然ゴム成分を含有させることが、それぞれの種類のゴムを、加硫接着をもって簡易に、かつ確実に接合させ得る利点がある。
【0026】
またここで、波形桟2および横桟3の少なくとも一方に、図1で、波形桟2について例示するような補強層を埋設配置した場合には、補強層の層数に応じて桟2,3の耐張強度を高めることができる。
【0027】
ところで、波形桟2および横桟3の少なくとも一方の頂部、たとえば、図3に例示するように、それぞれの桟2,3の頂部を、耐摩耗性ゴム2b,3bで覆った場合は、平坦姿勢としたコンベアベルト上への被搬送物の落下供給に当り、その耐摩耗性ゴム2b,3bによって、波形桟2および横桟3のそれぞれの頂部を摩耗から有効に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施形態を、一部について示す断面斜視図である。
【図2】横桟の変更例を示す断面斜視図である。
【図3】耐摩耗性ゴムの他の配設例を示す図1と同様の図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ベースベルト
2 波形桟
2a,3a 発生性ゴム
2b,3b 耐摩耗性ゴム
3 横桟
4,5 補強層
4a 芯体帆布
4b 補強帆布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベースベルトと、ベースベルトの両側部に立設されてベースベルトの延在方向に延びる波形桟と、これらの一対の波形桟間で、ベースベルトの延在方向に所定の間隔をおいて立設されてベースベルトの幅方向に延びる横桟とを具えるコンベアベルトにおいて、
波形桟および横桟の少なくとも一方を、それの厚み方向に接合された二種類以上のゴムによって構成してなるコンベアベルト。
【請求項2】
波形桟および横桟の少なくとも一方の、被搬送物との接触表面側部分を撥水性のゴムにより、その表面側部分とは反対側の表面部分を耐摩耗性のゴムによりそれぞれ構成してなる請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項3】
いずれの種類のゴムも天然ゴムを共通部分としてなる請求項1もしくは2に記載のコンベアベルト。
【請求項4】
波形桟および横桟の少なくとも一方に補強層を埋設してなる請求項1〜3のいずれかに記載のコンベアベルト。
【請求項5】
波形桟および横桟の少なくとも一方の頂部を耐摩耗性のゴムで覆ってなる請求項2〜4のいずれかに記載のコンベアベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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