説明

コンベア装置のローラ支持体

【課題】 簡単な構成で支持体のコストを押し上げることがなく、かつ、既存の支持体に簡単な改良を施すだけで導入が可能なコンベア装置のローラ支持体を提供する。
【解決手段】 コンベア装置のフレームに設けられ、回転自在なローラ1の支持軸2を着脱自在に支持する支持体3において、支持軸2に形成された嵌挿部2aが挿入される溝4と、この溝4の入口両側に形成された案内部4a,4bとを有し、案内部4a,4bは、円弧部R単体又は円弧部Rと直線部Cの複合体から形成されるとともに、溝4の入口両側で非対称に形成した。二つの円弧部分R及びこの二つの円弧部分の間に形成された直線部分Cの複合体から案内部4a,4bを形成し、前記入口両側で対称に形成してもよい。円弧部Rは、それぞれ嵌挿部2aの幅Sの65%〜80%の半径を有するものとするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転自在なローラを有するコンベア装置に関し、特に、前記ローラの支持軸を容易にフレームに対して着脱できるローラ支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアやローラコンベアのように、回転自在なローラを主要な構成要素とするコンベア装置においては、前記コンベア装置の組立やローラの交換,点検,修理等を行う際に、ローラをコンベア装置のフレームに着脱する必要がある。
ローラの一端又は両端には、ローラの回転軸線上に支持軸が突出していて、この支持軸をフレームに設けられた支持体の溝に係合させることで、ローラをフレームに対して回転自在に支持させる。前記支持体は、前記フレームと一体であってもよいし、別体に形成されたものを前記フレームにボルト等で取り付けるようにしてもよい。
【0003】
図3は、ローラの支持軸及び支持体の概要を説明する部分斜視図である。
ローラ1を回転自在に支持する支持軸2の先端は、円柱の両側を平行に切り欠いた切欠き面2bを有する嵌挿部2aとして形成され、図示しないフレームに設けられた支持体3には、嵌挿部2aが挿入されるU字状の溝4が形成されている。溝4の幅は、嵌挿部2aの二つの切欠き面2bの間隔よりも僅かに広く形成され、溝4に嵌挿部2aを挿入することで、支持軸2がフレームに対して回転しないように支持される。嵌挿部2aを溝4に挿入するには、切欠き面2bが溝4の中心をとおる軸線Xと平行になるように、支持軸2の回転角度位置を合わせた状態で、支持2が回転しないように保持しつつ、溝4の真上位置から嵌挿部2aを溝4に差し込む。
【0004】
ところが、ローラ1は、大型のものになると一つが数kg〜10kg以上にもなり、この重いローラ1を抱え上げた状態で上記の作業を行うことは容易ではなく、ローラの長さが長くなると複数の作業者で作業を行わなければならない。特に、ベルトコンベア装置のベルトを支持するローラは、ベルトが邪魔になって余計に作業がしづらくなる。このような作業を、狭い間隔で搬送方向に配列された多数本のローラについて行うのは、作業者にとって極めて大きな作業負担になり、作業コストが増大するだけでなく、作業中はコンベア装置が使用できないことから、設備稼働率が低下するという問題を有する。
【0005】
このような問題を解決するために通常考案される最も簡単な方法は、例えば特許文献1(実開昭61−185717号公報 (図2参照))又は特許文献2(特開2005−75638号公報 (図1参照))のように、溝4の入口部分の角を無くし、円弧状又は切欠き状に仕上げることである。
しかし、この方法では、実際に挿入はそれほど容易にはならず、嵌装部2aが溝4の軸線に対して少しでも傾いていると、嵌装部2aが溝4の入口部分に引っ掛かって挿入がしづらくなるというのが現状である。これは、嵌装部2aの断面形状が円形ではなく、その両側を切り欠いた形状となっているためと思われる。
このような問題は古くから認識されており、支持体に対してローラの支持軸を簡単に着脱できるようにした提案が多数なされている(例えば、特許文献3〜6参照)。
【0006】
この中でも、例えば特許文献6(実開平5−51814号公報)のローラ支持装置では、ローラ支持軸の嵌装部を嵌装する溝15の入口両外側側に弾性を有する二つの把持部13,13を立設し、この把持部13,13が左右に拡開することで、前記嵌装部を受け入れ易くするとともに、把持部13,13が前記嵌装部を溝15まで案内するようにしている。
また、特許文献7(実開平6−42824号公報)のローラ支持装置では、ローラの支持軸を挿入する溝の左右両外側に支柱13,13を立設し、各支柱13,13の上端から溝12に向かって弾性片14を垂設している。特許文献1のローラ支持装置によれば、ローラの支持軸を溝12に挿入する際には、弾性片14が左右に拡開して支持軸を受け入れ易くするとともに、弾性片14がガイドとなって支持軸の姿勢を保ちつつ溝12まで案内できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−185717号公報 (図2参照)
【特許文献2】特開2005−75638号公報 (図1参照)
【特許文献3】特開平7−101527号公報
【特許文献4】特開平11−171321号公報
【特許文献5】特開平11−29211号公報
【特許文献6】実開平5−51814号公報
【特許文献7】実開平6−42824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献6に記載の発明は、把持部13,13が折損しやすいうえ、加工が複雑になって支持体のコストが高くなるという問題がある。また、特許文献7に記載の発明は、支柱13,13を立設するとともに弾性片14を設ける必要から、強度を保つために支持体にある程度の幅及び肉厚が必要とされるうえ、構成が複雑になって支持体のコストが高くなるという問題がある。さらに、特許文献6,7の支持装置は、既存の支持体をそのまま利用することができないことから、導入あたっては多数個の支持体の全て又はフレームそのものを交換しなければならず、多大なコストが必要になるという問題がある。
【0009】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、簡単な構成で支持体のコストをそれほど押し上げることがなく、かつ、既存の支持体に簡単な改良を施すだけで導入が可能なコンベア装置のローラ支持体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の発明者は、溝入口部分の形状に着目した。そして、鋭意研究を行った結果、溝入口部分に形成する案内部を円弧状に形成し、この円弧部分の曲率を溝入口の両側で非対称にすること、円弧部分と直線部分との複合形状にして溝入口の両側で非対称にすること、円弧部と円弧部の間に直線部分を形成し、溝入口の両側で対称とすることで、嵌装部が溝の軸線に対して傾いていても、嵌装部を溝入口に向けて落とし込むだけで、嵌装部を溝内に挿入できることに想到した。
【0011】
具体的に、請求項1に記載の発明は、コンベア装置のフレームに設けられ、回転自在なローラの支持軸を着脱自在に支持する支持体において、前記支持軸に形成された嵌挿部が挿入される溝と、この溝の入口両側に形成された案内部とを有し、前記案内部は、円弧部分単体又は円弧部分と直線部分の複合体から形成されるとともに、前記入口両側で非対称に形成されている構成とした。
また、請求項2に記載の発明は、コンベア装置のフレームに設けられ、回転自在なローラの支持軸を着脱自在に支持する支持体において、前記支持軸に形成された嵌挿部が挿入される溝と、この溝の入口両側に形成された案内部とを有し、前記案内部は、二つの円弧部分及びこの二つの円弧部分の間に形成された直線部分の複合体から形成されるとともに、前記入口両側で対称に形成されている構成とした。
なお、この場合、請求項3に記載するように、前記案内部が、二つの円弧部分及びこの二つの円弧部分の間に形成された直線部分の複合体から形成されている場合に、前記二つの円弧部分の半径を異ならせた場合に、前記二つの円弧部分の半径を異ならせるとよく、また、請求項4に記載するように、前記案内部が、二つの円弧部分及びこの二つの円弧部分の間に形成された直線部分の複合体から形成されている場合に、前記二つの円弧部分の半径を異ならせた場合に、前記直線部分を、前記二つの円弧部分の始点及び終点間の中間よりも溝内側に位置させるとよい。
前記円弧部分の曲率半径は、請求項5に記載するように、前記嵌挿部の幅の65%〜80%程度とするとよい。また、直線部分の幅は、請求項6のように前記円弧部の一部を切り欠いて直線部を形成する場合は、前記嵌装部の幅の14%〜22%程度とするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既存の支持体に簡単な改良を施すだけで、嵌装部両側の切欠き面が溝軸線に対して平行になっていなくても、かつ、嵌装部を落とし込む位置が溝の真上位置からでなくても、嵌装部を溝入口に向けて落とし込むだけで、簡単に嵌装部を溝内に挿入することができる。
そのため、作業者の作業負担が大幅に軽減されるだけでなく、作業時間も大幅に短縮されて設備の稼働率を向上させることができるローラ支持体を、安価なコストで提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の支持体における種々の実施形態を示すもので、ローラ1の嵌装部2a(図3参照)を嵌装する溝4の部分を拡大した正面図である。
本発明においては、溝4の入口部分両側に、嵌装部2aを溝4内に導く案内部4a,4bが形成されている。図1において左右の案内部4a,4bは、溝4の軸線X(図3参照)を中心に対称又は非対称とし、各案内部4a,4bは円弧部(符号Rで示す)又は円弧部Rと直線部(符号Cで示す)との複合形状とする。
円弧部Rの半径は、嵌挿部2aの幅S(図3参照)の65%〜80%程度とするとよく、直線部Cの幅は、嵌装部2aの幅Sの14%〜22%程度とするとよい。
【0014】
図1(a)の例では、一方の案内部4aに円弧部R2を形成し、他方の案内部4bに、円弧部R2と異なる径の円弧部R1を形成したものである。
図1(b)の例では、一方の案内部4aに、図1において上方(入口端部側)から順に円弧部R3,直線部C1,円弧部R4を形成し、他方の案内部4bには単独の円弧部R1を形成したものである。円弧部R3,R4の半径は、同一であってもよいし異なるものであってもよい。また、円弧部R1の半径は、円弧部R3,R4の半径と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0015】
図1(c)の例では、一方の案内部4aに、図1において上方(入口端部側)から順に円弧部R5、直線部C2を形成したものである。他方の案内部4bには単独の円弧部R1を形成している。円弧部R5の半径は、他方の案内部4bの円弧部R1の半径と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
図1(d)の例では、一方の案内部4a,4bに、図1において上方(入口端部側)から順に円弧部R3,直線部C1,円弧部R4を形成し、他方の案内部に円弧部R6,直線部C3,円弧部R7を形成したものである。
円弧部R3と円弧部R4の半径及び円弧部R6と円弧部R7の半径は、それぞれ同一であってもよいし異なるものであってもよく、直線部C1,C3の幅も同一であってもよいし異なるものであってもよい。また、一方と他方の案内部4a,4bにおいて、円弧部R3,直線部C1,円弧部R4と円弧部R6,直線部C2,円弧部R7とは、溝4の軸線X(図3参照)を中心に対称であってもよいし非対称であってもよい。
【0016】
以下の表1に、案内部4a,4bにおける円弧部R及び直線部Cの組み合わせと、嵌装部2aの溝4内への挿入のしやすさを一覧にしたものを示す。
表1において、各記号の意味は以下のとおりである。
R:円弧部
C:直線部
×:従来と変わらず
△:従来よりは多少挿入しやすいものの引っ掛かる
○:多少の引っ掛かりはあるものの挿入しやすい
◎:最適(嵌装部2aを溝4の入口に向けて落とし込むだけで、嵌装部2aが溝4内に挿入されるもの)
注記:非対称のものについては、一方の案内部側から嵌装部2aを落とし込む場合と、他方の案内部側から嵌装部2aを落とし込む場合とに分け、それぞれの側からの挿入のしやすさを、○−△のように表した。
【0017】
【表1】

【0018】
この表からもわかるように、案内部4a,4bの形状を円弧部単体又は円弧と直線部との複合体とし、かつ、両案内部4a,4bの形状を非対称とすることで、嵌装部2aを溝4に対する挿入のしやすさが大幅に向上し、特に、円弧部・直線部・円弧部(R・C・R)の複合体を案内部4a,4bの少なくとも一方に形成することで、嵌装部2aを溝4に対して飛躍的に挿入させやすくなることがわかる。
【0019】
円弧部R1〜R7の半径、直線部C1〜C3の幅及び直線部C1〜C3の位置は、実験等によって決定することができる。
以下にその実施例を示す
[実施例]
この実施例では、図1(d)の案内部4a,4bで実験を行った。
以下の表は、直径20mmの円柱体の両側を切り欠いて形成された嵌装部2aの幅Sが14.0mm、溝4の幅Lが14.5mmの場合において、円弧部R3の半径を9.0mm〜11.5mm、直線部C1の幅を2.4mm〜3.4mm、円弧部R4の半径を9.0mm〜10.0mmの中から選択して適宜に組み合わせた場合における挿入部2aの溝4への挿入のしやすさを表したものである。
表中の判定「△」「○」「◎」の意味は先ほどの表1と同じである。
【0020】
この例のように、案内部4aの円弧部R3の半径r3を9.0〜11.5mm、好ましくは、10.0〜10.5mm、円弧部R4の半径r4を9.0〜10.0mm、好ましくは、9.3〜9.7mm、直線部C1の幅を2.4〜3.4mm、好ましくは2.8〜3.0mmの範囲で、かつ、円弧部R3の始点から直線部C1までの回転角度αを45°よりも大きく、好ましくは55°〜60°の範囲の中から選択することで、嵌装部2aを溝4に挿入しやすい支持体3が得られることがわかる。
【0021】
以上と表1の結果とから、案内部4aと対称の円弧部R6,直線部C3及び円弧部R7を案内部4bに形成することで、嵌装部2aをどの方向から溝4の入口に向けて落とし込んでも、嵌装部2aが溝4内にスムースに挿入されるローラ支持体を得ることができる。
【0022】
【表2】

【0023】
図2は、上記表に基づいて実際に形成した図1(d)の例における案内部4aの形状及び各部の寸法を示したものである。この例では、円弧部R3の半径r3を10.0mm、鉛直軸上の始点G1から円弧部R3に沿った半時計回り方向の回転角α1を60°、円弧部R4の半径r4を9.5mm、水平軸上の終点G2から円弧部R4に沿った時計回り方向の回転角α2を30°としている。そして、円弧部R3と円弧部R4の間の直線部C1の幅を、両回転角α1,α2の交点を中心として、2.86mmとしている。この図では、他方の案内部4aのみを示しているが、この例では、案内部4bについても、円弧部R3と同一半径の円弧部R6、円弧部R4と同一半径の円弧部R7、直線部C2と同一幅の直線部C3が形成されている。
これにより得られた支持体3は、嵌装部2aを溝4の入口に向けて落とし込むだけで簡単に溝4内に嵌装部2aを挿入することができた。
【0024】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限定されない。例えば、溝4の形状はU字状に限らず、矩形状や多角形状等の他の形であってもよい。
また、本発明において支持体3は、ローラ1を回転自在に支持するものであればその形態は問わず、例えば、コンベア装置のフレームと一体に形成されているもの、前記フレームとは別体に形成されてボルト等で前記フレームに着脱可能なもの、前記フレームとは別の構造体に一体又は別体に形成されているもののいずれも含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ワークを搬送するために回転するローラを主要な構成要素として有するコンベア装置であれば広汎に適用が可能で、ローラコンベア装置やベルトコンベア装置に好適に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の支持体における種々の実施形態を示すもので、ローラの嵌装部を嵌装する溝の部分を拡大した正面図である。
【図2】表1に基づいて実際に形成した案内部の形状及び各部の寸法を示した一例である。
【図3】ローラの支持軸及び支持体の概要を説明する部分斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ローラ
2 支持軸
2a 嵌装部
2b 切欠き面
3 支持体
4 溝
4a,4b 案内部
R 円弧部
C 直線部
G1 円弧部の始点
G2 円弧部の終点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア装置のフレームに設けられ、回転自在なローラの支持軸を着脱自在に支持する支持体において、
前記支持軸に形成された嵌挿部が挿入される溝と、
この溝の入口両側に形成された案内部とを有し、
前記案内部は、円弧部分単体又は円弧部分と直線部分の複合体から形成されるとともに、前記入口両側で非対称に形成されていること、
を特徴とするコンベア装置のローラ支持体。
【請求項2】
コンベア装置のフレームに設けられ、回転自在なローラの支持軸を着脱自在に支持する支持体において、
前記支持軸に形成された嵌挿部が挿入される溝と、
この溝の入口両側に形成された案内部とを有し、
前記案内部は、二つの円弧部分及びこの二つの円弧部分の間に形成された直線部分の複合体から形成されるとともに、前記入口両側で対称に形成されていること、
を特徴とするコンベア装置のローラ支持体。
【請求項3】
前記案内部が、二つの円弧部分及びこの二つの円弧部分の間に形成された直線部分の複合体から形成されている場合に、前記二つの円弧部分の半径を異ならせたことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベア装置のローラ支持体。
【請求項4】
前記案内部が、二つの円弧部分及びこの二つの円弧部分の間に形成された直線部分の複合体から形成されている場合に、前記直線部分を、前記二つの円弧部分の始点及び終点間の中間よりも溝内側に位置させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコンベア装置のローラ支持体。
【請求項5】
前記案内部の一方及び他方に含まれる前記円弧部分の半径が、それぞれ前記嵌挿部の幅の65%〜80%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコンベア装置のローラ支持体。
【請求項6】
前記直線部分の幅が、前記嵌装部の幅の14%〜22%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のコンベア装置のローラ支持体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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