説明

コンベア装置

【課題】 構造が簡単で、省スペースを実現でき、食品に対する加熱・乾燥・冷却等の処理に適した多段式のコンベア装置を提供する。
【解決手段】 パレット40のガイドローラ42はガイドレール上を転動し、シャフト44を介して無端チェーン30に駆動されて走行する。パレット40がガイドレールの端近くに達すると、後方のガイドローラ42は無端チェーン30が巻き回されたスプロケット20と同期して回動するスタビライザ50の爪54、54の間に把持され、前方のガイドローラ42は円形ガイドレール18の外周面に当接して転動する。これにより、パレット40は水平姿勢を維持しつつ、ガイドレールより一つ上のガイドレールに乗り移り、折り返して走行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端チェーンに取り付けたパレットに物品を載せて搬送するためのコンベア装置に関し、特に構造が簡単で、省スペースを実現でき、食品に対する加熱・乾燥・冷却等の処理に適した多段式のコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続処理により、食品に加熱・乾燥・冷却等を施す場合、省スペースや衛生管理の要請から、バッファ機能を奏する多段式のコンベア装置が利用されていた。食品はハウジング内に収容された多段式のコンベア装置によりハウジング内を搬送され、その間に、ハウジング内に供給される蒸気・乾燥した空気・冷風等に曝されて加熱・乾燥・冷却が行われる。このようなコンベア装置には、ベルト上に載置した食品を他のベルトで挟んで上下方向に移動させるものや無端チェーンに取り付けた搬送用網板の上に食品を載せて搬送するものなどが提案されていた。しかしながらこれらのタイプのコンベア装置では、形の崩れやすい食品やサイズの大きい食品には適応できなかった。無端チェーンに取り付けたパレットを水平姿勢を維持したまま垂直方向に移動させることのできる折り返し構造を有するコンベア装置も提案されているが、折り返し構造が複雑で大きなスペースを占めるため、食品処理用のコンベア装置としては不向きだった。
【0003】
特開平6-7128号公報には、上下に配置されたベルトコンベアを複数配置し、それぞれの終端部には食品を抑えベルトとの間に挟んで下方のコンベアに移送する食品の連続処理装置が開示されている。実公昭59-3746号公報には、蛇行する無端チェーンに取り付けられた搬送用網板が終端において垂下状態になることにより搬送用網板上の食品が下位の搬送用網板上に落下するコンベア装置が開示されている。特開平3-205203号公報には、遊星歯車機構によりパレットを水平姿勢に保つロータリーパレット型ワークストッカが開示されている。
【特許文献1】特開平6-7128号公報
【特許文献1】実公昭59-3746号公報
【特許文献1】特開平3-205203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって本発明の目的は、構造が簡単で、省スペースを実現でき、食品に対する加熱・乾燥・冷却・貯蔵・アキューム・冷凍等の処理に適した多段式のコンベア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、水平方向に直線状に延びた相互に平行な2本一組が上下方向に積層された複数組のガイドレールと、前記ガイドレールそれぞれの両端近くに配置された複数組のスプロケットと、それぞれ一組の前記ガイドレールに平行な直線走行経路を走行し、前記スプロケットに巻き回されて半円走行経路を走行して折り返すことにより一つのガイドレールから上下に隣接する他の組の前記ガイドレールと平行な他の直線走行経路を走行する一組の無端チェーンと、前後方向に距離を置いて、前記一組のガイドレール上を転動する2個一組のガイドローラが2組本体の側方に突設されており、前後の前記ガイドローラ取付位置の中心において、左右方向に延びる軸線周りに回動可能に前記一組の無端チェーンに取り付けられた複数のパレットと、前記スプロケットそれぞれの後方に、前記パレットの前記ガイドローラ取付位置と前記無端チェーン取付位置との間の距離と同じ距離を空けて配置され、一組の前記ガイドレールの端まで走行してきたパレットの後方の組の前記ガイドローラを保持しつつ、前記スプロケットと同期して回転し、上下に隣接する他の組の前記ガイドレールに前記ガイドローラが略接触すると保持していた前記ガイドローラを解放する複数組のスタビライザとを含んでコンベア装置を構成した。
【0006】
本発明に係るコンベア装置によると、パレットはガイドレールに沿って直線走行経路を走行する無端チェーンの走行に従って、ガイドレール上をガイドローラが転動しつつ進行する。一つのガイドレールの組の端に達すると、スプロケットに沿って上下方向に移動し、上下方向に隣接するガイドレールに乗り移り、折り返して該ガイドレールに沿って逆方向に進行する。上下方向に移動する間、パレットの後方の組のガイドローラはスタビライザにより保持されているので、パレットは水平姿勢を維持したままである。
【0007】
また、前記スプロケットそれぞれの前方に、前記パレットの前記ガイドローラ取付位置と前記無端チェーン取付位置との間の距離と同じ距離を空けて配置され、前記パレットの後方の組の前記ガイドローラが前記スタビライザに保持されている間、該パレットの前方の組の前記ガイドローラが転動する半円状ガイドレールをさらに含むことができる。これにより、パレットは中心部がスプロケットと噛み合う無端チェーンに、後部が後方の組のガイドローラを保持するスタビライザに、前部が前方の組のガイドローラが転動する半円状ガイドレールに、それぞれ支持されるので、上下方向に移動する際のパレットの水平姿勢がより安定する。
【0008】
前記スタビライザは、前記ガイドローラの外周面を把持するようにしてもよく、またスタビライザは、2つの爪を有し、それらの間の形状が前記ガイドローラの外周面の形状と部分的に略一致するようにしてもよい。また、前記スタビライザが取り付けられた回転軸には前記スプロケットと同じ外径を有する従動スプロケットが取り付けられており、前記無端チェーンと噛み合っているようにしてもよく、これにより簡単な構造で正確にスプロケットとスタビライザとの同期を取ることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明に係るコンベア装置によると、構造が簡単で、省スペースを実現でき、食品に対する加熱・乾燥・冷却等の処理に適した多段式のコンベア装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るコンベア装置の最良の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明は発明をより深く理解するためのものであって、特許請求の範囲を限定するためのものではない。
【0011】
図1は本発明に係るコンベア装置の最良の形態の要部を示す正面図であり、図2は図1のコンベア装置の折り返し部付近を表す部分拡大正面図、図3は図2と同様の部分を表す部分拡大平面図、図4は図2と同様の部分を表す部分拡大左側面図である。
【0012】
図1において、コンベア装置は複数組のガイドレール10と、ガイドレール10それぞれの両端近くに配置された複数組のスプロケット20と、各スプロケット20に巻き回された無端チェーン30と、無端チェーン30に取り付けられた複数のパレット40とを含む。コンベア装置はハウジング60内に収容されており、入口62においてパレット40上に物品が載置されて搬送経路を搬送され、出口64においてパレット40上の物品が出庫される。このようなコンベア装置は、例えばハウジング60内に熱した空気や蒸気、乾燥した空気や冷気、冷水等を送り込むことにより、パレット40上の食品の加熱・乾燥・冷却等の処理を行うことができる。なお図1においては垂直方向の搬送経路のガイドレールや無端チェーン30を駆動する駆動機構等は省略してある。また図1では省略してあるが、無端チェーン30には複数のパレット40がほぼ間断なく並ぶように取り付けられている。
【0013】
図1に表された各ガイドレールの組は、水平方向に直線状に延びた相互に平行な2本一組が上下方向に積層された計11組のガイドレール10、入口62から最も下段のガイドレール10の右端まで延びる入口ガイドレール12、最も上段のガイドレール10のさらに上段に配置されて右方の垂直搬送経路66の上端まで延びる最上段ガイドレール14、及び垂直搬送経路66の下端に配置された出口ガイドレール16である。各ガイドレール10等には、後述するガイドローラ42やシャフト44が上下方向に移動するために交差する箇所に切欠が設けられている。
【0014】
スプロケット20は、ガイドレール10それぞれの両端近くに複数組が配置されている。その他、無端チェーン30の走行経路に沿ってスプロケット22が配置されている。各スプロケット20の各ガイドレール10の端から中央寄りには、無端チェーン30の走行に従って回動するスタビライザ駆動用スプロケット52が配置されている。図3によく示されているように、スタビライザ駆動用スプロケット52はスタビライザ50に固定されて、スタビライザ50と共に回動する。
【0015】
各スプロケット20、22に巻き回された一組の無端チェーン30は、それぞれ各ガイドレール10に平行な直線走行経路を走行し、スプロケット20に巻き回されて半円走行経路を走行して折り返すことにより一つのガイドレール10から上に隣接する他の組のガイドレール10と平行な他の直線走行経路を走行する。各スプロケット20の各ガイドレール10の端から端寄りには、半円走行経路に倣う外周面を有する円形ガイドレール18が設けられている。外周面上を後述のガイドローラ42が転動することにより、半円走行経路に沿って移動するパレット40の姿勢を安定させることができる。円形ガイドレール18の外径の上面からは水平方向に延びる部分直線ガイドレール19が突設されている。
【0016】
各パレット40には、前後方向に距離を置いて、一組のガイドレール10等の上を転動する2個一組のガイドローラ42が2組本体の側方に突設されている。また、前後のガイドローラ42の取付位置の中心からはシャフト44が左右両方向に突設されており、それぞれ一組の無端チェーン30に接続されている。これにより、各パレット40はシャフト44を中心に無端チェーン30に対して回動することができる。各パレット40は板状であって、上面には複数の物品Pが載置されている。
【0017】
スタビライザ50は、各スプロケット20よりもガイドレール10の端から中央寄りに配置されており、スタビライザ駆動用スプロケット52と共に回動する。各スプロケット20との間の距離は、パレット40のガイドローラ42の取付位置と無端チェーン30の取付位置との間の距離と同じ距離である。スタビライザ50は、図2のガイドレール10aの端まで走行してきたパレット40の後方のガイドローラ42を保持しつつ、スプロケット20と同期して回転し、上方に隣接する他のガイドレール10bにガイドローラ42が略接触すると保持していたガイドローラ42を解放する。このためにスタビライザ50は、ガイドローラ42の外周面を把持する2つの爪54、54を有し、爪54、54の間の形状がガイドローラ42の外周面の形状と部分的にほぼ一致するように形成されている。スタビライザ50と共に回動するスタビライザ駆動用スプロケット52はスプロケット20とは外径が同じサイズであり、これにより簡単な構造で正確にスプロケット20とスタビライザ50との同期を取ることができるようになっている。
【0018】
図1〜4に示したコンベア装置の作用について、図5を参照しつつ説明する。
【0019】
図5(a)は、パレット40aがガイドレール10aに沿った下方の直線走行経路から、ガイドレール10bに沿った上に隣接する直線走行経路に折り返して右方へ進み、スタビライザ50がパレット40aに後続するパレット40bの後方ガイドローラ421を外周面において把持した状態を示す。シャフト44は、無端チェーン30のほぼスプロケット20に噛み合った部分に達しており、前方ガイドローラ422の外周面は円形ガイドレール18の外周面にほぼ当接している。
【0020】
スプロケット20が回動して図5(b)の状態になると、各ガイドローラ421、422は完全にガイドレール10aから離れ、ガイドローラ421がスタビライザ50に把持され、ガイドローラ422が円形ガイドレール18の外周面に当接することにより、パレット40bは水平姿勢を維持している。
【0021】
さらに図5(c)の状態では、パレット40bは水平姿勢を維持したまま、ほぼガイドレール10bと同じ高さに達している。スプロケット20がさらに回動すると、スタビライザ50はガイドローラ421を解放し、パレット40bはガイドレール10b上を転動し、右方向へと移動する。
【0022】
以上のように本実施の形態に係るコンベア装置は、構造が簡単で、省スペースを実現でき、食品に対する加熱・乾燥・冷却等の処理に適した多段式のコンベア装置を実現することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、適宜変形実施が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明に係るコンベア装置の一つの実施の形態の要部の構成を示す正面図である。
【図2】図2は、図1のコンベア装置の折り返し部分を拡大して示す部分拡大正面図である。
【図3】図3は、図2の部分を示す部分拡大平面図である。
【図4】図4は、図2の部分を示す部分拡大左側面図である。
【図5】図5は、図1のコンベア装置の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
10a、10b ガイドレール
18 円形ガイドレール
20 スプロケット
30 無端チェーン
40 パレット
42 ガイドローラ
44 シャフト
50 スタビライザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に直線状に延びた相互に平行な2本一組が上下方向に積層された複数組のガイドレールと、
前記ガイドレールそれぞれの両端近くに配置された複数組のスプロケットと、
それぞれ一組の前記ガイドレールに平行な直線走行経路を走行し、前記スプロケットに巻き回されて半円走行経路を走行して折り返すことにより一つのガイドレールから上下に隣接する他の組の前記ガイドレールと平行な他の直線走行経路を走行する一組の無端チェーンと、
前後方向に距離を置いて、前記一組のガイドレール上を転動する2個一組のガイドローラが2組本体の側方に突設されており、前後の前記ガイドローラ取付位置の中心において、左右方向に延びる軸線周りに回動可能に前記一組の無端チェーンに取り付けられた複数のパレットと、
前記スプロケットそれぞれの後方に、前記パレットの前記ガイドローラ取付位置と前記無端チェーン取付位置との間の距離と同じ距離を空けて配置され、一組の前記ガイドレールの端まで走行してきたパレットの後方の組の前記ガイドローラを保持しつつ、前記スプロケットと同期して回転し、上下に隣接する他の組の前記ガイドレールに前記ガイドローラが略接触すると保持していた前記ガイドローラを解放する複数組のスタビライザとを含むことを特徴とするコンベア装置。
【請求項2】
前記スプロケットそれぞれの前方に、前記パレットの前記ガイドローラ取付位置と前記無端チェーン取付位置との間の距離と同じ距離を空けて配置され、前記パレットの後方の組の前記ガイドローラが前記スタビライザに保持されている間、該パレットの前方の組の前記ガイドローラが転動する半円状ガイドレールをさらに含む請求項1に記載のコンベア装置。
【請求項3】
前記スタビライザは、前記ガイドローラの外周面を把持する請求項1または2に記載のコンベア装置。
【請求項4】
前記スタビライザは、それらの間の形状が前記ガイドローラの外周面の形状と部分的に略一致する2つの爪をそれぞれ有する請求項3に記載のコンベア装置。
【請求項5】
前記スタビライザが取り付けられた回転軸には前記スプロケットと同じ外径を有する従動スプロケットが取り付けられており、前記無端チェーンと噛み合っている請求項1ないし4のいずれかに記載のコンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−327794(P2006−327794A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156188(P2005−156188)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000239208)福伸工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】