説明

コンベヤチェーン

【課題】ブシュに外嵌されているローラが有するフランジに座金を接触させることにより、内リンクプレートの偏摩耗が抑制されて、耐久性およびメンテナンス性能が向上するコンベヤチェーンを提供する。
【解決手段】バケットコンベヤが備えるコンベヤチェーン100において、内リンクプレート121とローラ130との接触を防止する座金140が、軸方向で内リンクプレート121とローラ130との間に配置されて、内リンクプレート121に固着されている。内リンクプレート121のプレート外周縁123および座金140の座金外周縁141は、ブシュ102の中心軸線Lを中心とする径方向で、ローラ外周面132よりも径方向外方の位置にあり、座金外周縁141が、ローラ傾斜時に、フランジ137がローラ外周面132よりも径方向外方の位置で座金140と接触することにより、内リンクプレート121とローラ130とを非接触状態にする形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を保持する搬送体が取り付けられたリンクプレートと、ブシュに回転可能に外嵌されたフランジ付きローラとを備えるコンベヤチェーンに関する。
そして、前記搬送体は、例えば粉粒体を収容するバケットであり、コンベヤチェーンは、バケットコンベヤに備えられる。
【背景技術】
【0002】
コンベヤチェーンに取り付けられた複数のバケットを備えるバケットコンベヤはよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、コンベヤチェーンが、1対の外リンクプレートから構成される外リンクと1対の内リンクプレートから構成される内リンクとを連結している連結ピンと、該連結ピンに外嵌されたブシュに回転可能に外嵌されたローラとを備えるローラチェーンから構成され、該ローラがフランジを有するフランジ付きローラであるものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138980号公報(段落0020〜0022、図2,図3)
【特許文献2】特開2004−67320号公報(段落0003〜0006、図4〜図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外リンクおよび内リンクを連結している連結ピンに外嵌されたブシュに回転可能に外嵌されたローラを備えるコンベヤチェーンのリンクプレートにバケットが取り付けられる場合に、コンベヤチェーンにおいて、スプロケットまたは走行レールにローラが接触していない部分(以下、「フリースパン部」という。)では、バケットの重量、またはバケットの重量およびバケットに収容されている搬送物の重量に起因して、コンベヤチェーンが、ブシュの中心軸線に平行な方向(以下、「軸方向」という。)でバケットが取り付けられている側(以下、「バケット側」という。)に偏倚して、スプロケットまたは走行レールに対して軸方向で芯ズレが生じている状態になる。
そして、図6を参照すると、フリースパン部が、軸方向でバケット側に芯ズレが生じている状態で、コンベヤチェーン500のローラ530がスプロケット504との噛合いを開始するとき、または走行レール505上での走行を開始するときには、スプロケット504または走行レール505との当接により、ローラ530には、軸方向でバケット側に向いたスラスト力Fが作用すると共に、図示されるように、ローラ530がブシュ502の中心軸線Lに対して傾斜することがある。
【0005】
このような傾斜が発生すると、ローラ530が内リンクプレート521に接触する場合がある。そのような場合には、ローラ530と内リンクプレート521との接触部に作用する接触力により、ローラ530および内リンクプレート521には摩耗が発生する。この摩耗は、回転しているローラ530とは異なり、内リンクプレート521においては、局所である接触部に集中して発生する偏摩耗となる。そして、内リンクプレート521での偏摩耗は、コンベヤチェーン500の耐久性を左右する要因になる。
また、この接触力は、接触部の位置がブシュ502の中心軸線Lに近いときほど、そして中心軸線Lに対するローラ530の傾斜角θ5が大きいほど、大きくなり、したがって内リンクプレート521の摩耗の進行速度が大きくなる。
このため、フランジ付きローラを有するコンベヤチェーンの耐久性が低下して、コンベヤチェーンのメンテナンス(特開2009−6854号公報)作業の頻度およびメンテナンスコストが増加するなど、そのメンテナンス性能が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題を解決するものであり、その目的は、内リンクプレートに固着されたブシュに外嵌されているローラが有するフランジを利用することにより、リンクプレートに搬送体が取り付けられていることに起因して傾斜したローラとの接触による内リンクプレートの偏摩耗が抑制されて、耐久性およびメンテナンス性能が向上するコンベヤチェーンを提供することである。
また、本発明の他の目的は、さらに、コストが削減される、座金を備えるコンベヤチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず、請求項1に係る発明は、第1,第2外リンクプレートから構成される外リンクと第1,第2内リンクプレートから構成される内リンクとを屈曲可能に連結している連結ピンと、前記第1,第2内リンクプレートに固着されると共に前記連結ピンに外嵌されたブシュと、前記ブシュに回転可能に外嵌されたローラとを備え、前記ブシュの中心軸線に平行な軸方向で前記第1内リンクプレートと同じ側の前記第1外リンクプレートまたは前記第1内リンクプレートには、搬送物を保持する搬送体が取り付けられ、前記ローラが、スプロケットまたは走行レールと接触可能なローラ外周面を有するローラ本体部と、前記軸方向での前記ローラの一方側ローラ端部に前記ローラ外周面の径よりも大きい外径のフランジとを有するコンベヤチェーンにおいて、前記第1内リンクプレートと前記ローラとの接触を防止する座金が、前記軸方向で前記第1内リンクプレートと前記ローラとの間に配置されて、前記第1内リンクプレートに固着されており、前記第1内リンクプレートのプレート外周縁および前記座金の座金外周縁が、前記中心軸線を中心とする径方向で、前記ローラ外周面よりも径方向外方の位置にあり、前記座金外周縁が、前記ローラが前記中心軸線に対して相対的に傾斜するローラ傾斜時に、前記フランジが前記ローラ外周面よりも径方向外方の位置で前記座金と接触することにより、前記ローラと前記第1内リンクプレートとを非接触状態にする形状であることにより、前述の課題を解決したものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記座金外周縁が、前記ローラ傾斜時に、前記第1内リンクプレートの内側面内において前記フランジが前記座金外周縁と接触する位置にある形状、または、前記軸方向から見て前記第1内リンクプレートと前記フランジとが重なる部分を重合部とするときに、前記座金外周縁の少なくとも一部が前記重合部の重合外周縁と同じ位置にある形状であることにより、前述の課題を解決したものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の構成に加えて、前記ローラが、1つの前記フランジのみを有する片側フランジ付きローラであり、前記第2内リンクプレートのプレート幅が、前記ローラ外周面の径よりも小さく、前記第2内リンクプレートのプレート外周縁における、チェーン走行方向での前記プレート外周縁部分が、前記ローラ外周面よりも径方向内方に位置する形状であり、前記ローラと前記第2内リンクプレートとの接触を防止する第2座金が、前記軸方向で前記ローラと前記第2内リンクプレートとの間に配置されて、前記第2内リンクプレートに固着されていることにより、前述の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
そこで、本発明のコンベヤチェーンは、第1,第2外リンクプレートから構成される外リンクと第1,第2内リンクプレートから構成される内リンクとを屈曲可能に連結している連結ピンと、第1,第2内リンクプレートに固着されると共に連結ピンに外嵌されたブシュと、ブシュに回転可能に外嵌されたローラとを備え、ブシュの中心軸線に平行な軸方向で第1内リンクプレートと同じ側の第1外リンクプレートまたは第1内リンクプレートには、搬送物を保持する搬送体が取り付けられ、ローラが、スプロケットまたは走行レールと接触可能なローラ外周面を有するローラ本体部と、軸方向でのローラの一方側ローラ端部にローラ外周面の径よりも大きい外径のフランジとを有することにより、搬送物を保持する搬送体が取り付けられたリンクプレートを備えるコンベヤチェーンがフランジ付きローラを備えるローラチェーンであるので、ローラが有するフランジにより、コンベヤチェーンがスプロケットまたは走行レールから脱線することを防止することができるばかりでなく、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
【0011】
すなわち、請求項1に係る本発明のコンベヤチェーンによれば、第1内リンクプレートとローラとの接触を防止する座金が、軸方向で第1内リンクプレートとローラとの間に配置されて、第1内リンクプレートに固着されており、第1内リンクプレートのプレート外周縁および座金の座金外周縁が、中心軸線を中心とする径方向で、ローラ外周面よりも径方向外方の位置にあり、座金外周縁が、ローラが中心軸線に対して相対的に傾斜するローラ傾斜時に、フランジがローラ外周面よりも径方向外方の位置で座金と接触することにより、ローラと第1内リンクプレートとを非接触状態にする形状であることで、第1外リンクプレートまたは第1内リンクプレートに搬送体が取り付けられていることに起因してローラが傾斜するローラ傾斜時に、ローラは座金と接触するので、ローラと第1内リンクプレートとが接触することが防止されて、この座金により、ローラとの接触による第1内リンクプレートの偏摩耗の発生が防止される。
しかも、ローラは、該ローラが有するフランジを利用することにより、ローラ外周面よりも径方向外方の位置で座金と接触するので、ローラがローラ外周面よりも径方向内方の位置で内リンクプレートと接触する場合に比べて、ローラが、中心軸線から、より離れた位置で座金に接触すること、および、ローラの傾斜角が小さくなることから、ローラが座金に加える接触力が小さくなって、座金の摩耗の進行が抑制される。
これらのことから、座金が設けられている分、および、座金の摩耗の進行が抑制される分、コンベヤチェーンの寿命が延びるため、コンベヤチェーンの耐久性およびメンテナンス性能を向上させることができる。
【0012】
さらに、耐摩耗性に優れた材料により形成されることが好ましい座金は、第1内リンクプレートとは別個の部材として、第1内リンクプレートに固着されて一体化されるので、第1内リンクプレートに座金に相当する部分が一体成形される場合に比べて、製造コストを削減することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明のコンベヤチェーンによれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、座金外周縁が、前記ローラ傾斜時に、第1内リンクプレートの内側面内においてフランジが座金外周縁と接触する位置にある形状、または、軸方向から見て第1内リンクプレートとフランジとが重なる部分を重合部とするときに、座金外周縁の少なくとも一部が重合部の重合外周縁と同じ位置にある形状であることにより、座金は、ローラ傾斜時に座金外周縁がフランジと接触する位置にあるような大きさ、または座金外周縁の少なくとも一部が重合外周縁と同じ位置にあるような大きさに形成されることから、座金の大きさが抑制されるので、座金のコストが削減されて、座金を備えるコンベヤチェーンのコストを削減することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明のコンベヤチェーンによれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、ローラが、1つのフランジのみを有する片側フランジ付きローラであり、第2内リンクプレートのプレート幅が、ローラ外周面の径よりも小さく、第2内リンクプレートのプレート外周縁における、チェーン走行方向でのプレート外周縁部分123a,124aが、ローラ外周面よりも径方向内方に位置する形状であることにより、第2内リンクプレートには、プレート外周縁が径方向でローラ外周面よりも径方向外方の位置にあるような特別な形状の第1内リンクプレートとは異なり、既存のリンクプレートを使用することができるので、座金を備えるコンベヤチェーンのコストを削減することができる。
また、ローラと第2内リンクプレートとの接触を防止する第2座金が、軸方向で第2内リンクプレートとローラとの間に配置されて、第2内リンクプレートに固着されていることにより、ローラは第2座金と接触するので、ローラと第2内リンクプレートとが接触することが防止されて、この第2座金により、ローラとの接触による第2内リンクプレートの偏摩耗の発生が防止され、しかも、ローラ傾斜時には、ローラ外周面よりも径方向外方でフランジと座金とが接触することで、ローラの傾斜角が小さくなるので、ローラが第2座金に接触する場合に、該ローラが第2内リンクプレートに加える接触力が小さくなって、第2座金の摩耗の進行が抑制されることで、コンベヤチェーンの耐久性およびメンテナンス性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例を示し、コンベヤチェーンを備えるバケットコンベヤの概略全体図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図2のIII−III線での、一部が断面で示されるコンベヤチェーンの要部矢視図。
【図4】(a)は、図3のIV矢視図、(b)は、(a)のb−b断面図。
【図5】図3のV線断面図に相当し、コンベヤチェーンのローラと内リンクプレートとの接触位置の一例を説明する図。
【図6】従来技術を示し、図5に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のコンベヤチェーンは、第1,第2外リンクプレートから構成される外リンクと第1,第2内リンクプレートから構成される内リンクとを屈曲可能に連結している連結ピンと、第1,第2内リンクプレートに固着されると共に連結ピンに外嵌されたブシュと、ブシュに回転可能に外嵌されたローラとを備え、ブシュの中心軸線に平行な軸方向で第1内リンクプレートと同じ側の第1外リンクプレートまたは第1内リンクプレートには、搬送物を保持する搬送体が取り付けられ、ローラが、スプロケットまたは走行レールと接触可能なローラ外周面を有するローラ本体部と、軸方向でのローラの一方側ローラ端部にローラ外周面の径よりも大きい外径のフランジとを有するコンベヤチェーンにおいて、第1内リンクプレートとローラとの接触を防止する座金が、軸方向で第1内リンクプレートとローラとの間に配置されて、第1内リンクプレートに固着されており、第1内リンクプレートのプレート外周縁および座金の座金外周縁が、中心軸線を中心とする径方向で、ローラ外周面よりも径方向外方の位置にあり、座金外周縁が、ローラが中心軸線に対して相対的に傾斜するローラ傾斜時に、フランジがローラ外周面よりも径方向外方の位置で座金と接触することにより、ローラと第1内リンクプレートとを非接触状態にする形状であることにより、内リンクプレートに固着されたブシュに外嵌されているローラが有するフランジを利用することで、リンクプレートに搬送体が取り付けられていることに起因して傾斜したローラとの接触による内リンクプレートの偏摩耗が抑制されて、耐久性およびメンテナンス性能が向上するものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0017】
例えば、搬送物は、粉粒体(例えば、穀類、土砂、水砕スラグなど)のほかに、数えることができる物品であってもよい。
また、搬送体は、バケット、またはバケット以外のものであってもよく、本発明のコンベヤチェーンは、バケットコンベヤ、またはバケットコンベヤ以外のチェーン式コンベヤに備えられてもよい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を図1〜図5を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明の実施例であるコンベヤチェーン100を備えるチェーン式コンベヤとしてのバケットコンベヤ1は、粉粒体7(粒状体または粉体が含まれる。)を搬送する。
【0019】
併せて図2を参照すると、バケットコンベヤ1は、フレーム2と、該フレーム2に支持される1以上の、ここでは1つのコンベヤチェーン部材3を構成する1以上の所定数の、ここでは1対のコンベヤチェーン100と、コンベヤチェーン部材3を駆動するチェーン駆動装置4と、フレーム2のレール支持部21,22に支持されると共に各コンベヤチェーン100を案内する前記所定数の走行レール5と、コンベヤチェーン部材3に取り付けられる複数のバケット6とを備える。
【0020】
コンベヤチェーン部材3を構成する1対のコンベヤチェーン100は、チェーン幅方向に所定の間隔を置いて配置されている(図2参照)。
コンベヤチェーン部材3に取り付けられているすべてのバケット6は、1対のコンベヤチェーン100に取り付けられていると共に、チェーン走行方向に並んで、等しい所定のピッチで取り付けられている。
バケット6は、搬送物としての粉粒体7を保持または収容する搬送体である。
なお、図1では、前記すべてのバケット6の一部が描かれている。
【0021】
チェーン駆動装置4は、無端のコンベヤチェーン100が掛け渡される駆動スプロケット42および被動スプロケット43から構成される前記所定数のスプロケット部材を有するスプロケット装置41と、各駆動スプロケット42を回転駆動する駆動源としての電動モータ44とを備える。
各スプロケット42,43は、フレーム2のスプロケット支持部材(図示されず)に回転可能に支持される。
【0022】
走行レール5は、搬入エリアA1においてバケット6に搬入された粉粒体7を収容しているバケット6を搬送するコンベヤチェーン100を案内する搬送側レール51と、搬出エリアA2において粉粒体7がバケット6から搬出された後の空のバケット6を搬送するコンベヤチェーン100を案内する戻り用レール52とから構成される。各レール51,52は、フレーム2のレール支持部21,22にそれぞれ支持される。
【0023】
粉粒体7の搬入出用開口61を有する各バケット6は、粉粒体7が集積されて形成される集積物70から掬い上げた(または、掻き出した)粉粒体7を収容する。
バケット6に収容されて搬送される粉粒体7は、搬入エリアA1よりも上方に配置されている搬出エリアA2において、バケット6から搬出用コンベヤ(図示されず)に搬出される。
したがって、バケットコンベヤ1は、粉粒体7を上下方向に搬送するバケットエレベータである。
【0024】
図3,図4を参照すると、各コンベヤチェーン100は、複数の外リンク110と、複数の内リンク120と、それぞれがチェーン走行方向で互いに隣接する外リンク110および内リンク120を屈曲可能に連結している複数の連結ピン101と、それぞれが各連結ピン101に外嵌された複数のブシュ102と、それぞれが各ブシュ102に回転可能に外嵌された複数のローラ130と、それぞれが軸方向で各ローラ130を挟んで配置されている複数組の座金対を構成する第1,第2座金140,150とを備えるローラチェーンである。
ここで、軸方向は、ブシュ102の中心軸線Lに平行な方向であり、チェーン幅方向である。また、径方向は、中心軸線Lを中心とする径方向である。
【0025】
外リンク110は、軸方向で離隔して配置された第1外リンクプレート111および第2外リンクプレート112から構成される。
軸方向での一方側としてのバケット側に位置する、すなわち軸方向で後述する第1内リンクプレート121と同じ側に位置する第1外リンクプレート111は、コンベヤチェーン100においてバケット6(図1,図2参照)が取り付けられる搬送体取付用リンクプレートであり、バケット6がアタッチメント8(図2参照)を介して取付手段としての取付具である前記ボルト(図示されず)により取り付けられる複数の取付部111aを有する。取付部111aには、前記取付ボルトが挿通される挿通孔111bが設けられている。
軸方向で他方側としての反バケット側(すなわち、バケット側とは反対側である。)に位置する第2外リンクプレート112のプレート幅W12は、第1外リンクプレート111のプレート幅W11および後述する第2内リンクプレート122のプレート幅W22よりも小さい。
【0026】
内リンク120は、軸方向で第1,第2外リンクプレート111,112の間で離隔して配置されたバケット側の第1内リンクプレート121および反バケット側の第2内リンクプレート122から構成される。
第1内リンクプレート121のプレート幅W21は、後述するローラ外周面132の径Drよりも大きく、より好ましくは後述するフランジ137の外径Df以上であり、本実施例では、該外径Dfに等しい。
そして、1対のコンベヤチェーン100において、それぞれの第1外リンクプレート111同士および第1内リンクプレート121同士は、軸方向で対向するように配置されている(図2参照)。
【0027】
第2内リンクプレート122のプレート幅W22は、第1内リンクプレート121のプレート幅W21およびローラ外周面132の径Drよりも小さい。また、第2内リンクプレート122のプレート外周縁124における、チェーン走行方向でのプレート外周縁部分124aは、第1内リンクプレート121のプレート外周縁123における、チェーン走行方向でのプレート外周縁部分123aよりも径方向内方に位置し、かつローラ外周面132よりも径方向内方に位置する形状である。
【0028】
併せて図5を参照すると、各ブシュ102は、第1,第2内リンクプレート121,122に設けられた孔127,128に圧入されることにより固着されて、軸方向で第1,第2内リンクプレート121,122の間に配置されている。
【0029】
図5に示されるように、ブシュ102に対してローラ130を回転可能とするために、ブシュ102の外周面102aとローラ130の内周面135との間には微小な径方向隙間Crが形成され、かつ、各座金140,150とローラ130の各ローラ端面133a,134aおよびフランジ端面137aとの間には、微小な軸方向隙間Caが形成されている。
なお、図5では、説明の便宜上、径方向隙間Crおよび軸方向隙間Caが誇張されて示されている。
【0030】
図3〜図5を参照すると、各スプロケット42,43(図1参照)と噛合すると共に走行レール5(図1,図2参照)に接触して該走行レール5上で転動するローラ130は、各スプロケット42,43および走行レール5と接触可能なローラ外周面132を有するローラ本体部131と、軸方向でのローラ本体部131のバケット側の第1ローラ端部133の一部としてのフランジ137とを有する。ローラ外周面132は、各スプロケット42,43と噛合すると共に走行レール5に転がり接触する。
【0031】
フランジ137は、ローラ外周面132よりも径方向外方に位置する部分であり、ローラ外周面132の径Drよりも大きい外径Dfを規定するフランジ外周縁138を有する。また、ローラ本体部131は、軸方向でローラ端部133とは反対側に反バケット側の第2ローラ端部134を有する。
したがって、ローラ130は、フランジ付きローラであって、ローラ130の片側のみにフランジ137を有する片側フランジ付きローラである。
【0032】
第1座金140(図4(b)では、多数の点が施されている。)は、バケット側(または、フランジ側)のローラ端部133またはフランジ137と第1内リンクプレート121との接触を防止する。第2座金150は、反バケット側(または、反フランジ側)のローラ端部134と第2内リンクプレート122との接触を防止する。
円板状の各座金140,150の形成材料は、耐摩耗性に優れた材料、例えば鋼材料として、高張力鋼または焼入れ鋼である。
【0033】
座金140は、軸方向で第1内リンクプレート121とローラ端部133またはフランジ137との間に配置されていると共に、その全体において径方向で第1内リンクプレート121の内側面121a内、すなわち径方向でプレート外周縁123以内に位置し、かつ、該内側面121aに、固着手段としての溶接により、第1内リンクプレート121に一体に固着されている。ローラ端部133またはフランジ137は、軸方向で第1座金140と接触可能である。
【0034】
第1内リンクプレート121のプレート外周縁123および座金140の座金外周縁141は、径方向で、ローラ外周面132よりも径方向外方の位置にある。
座金外周縁141は、ローラ130が中心軸線Lに対して相対的に傾斜するローラ傾斜時に(図5参照)、フランジ137がローラ外周面132よりも径方向外方の位置である接触位置Pで座金140と接触することにより、フランジ137も含めてローラ130と第1内リンクプレート121の内側面121aとを非接触状態にする形状に形成されている。
なお、「形状」との用語には、大きさも含まれる。
【0035】
ローラ130のこの傾斜は、前述したように、コンベヤチェーン100のフリースパン部100f(その一例が、図1に示されている。)が、バケット6の重量、またはバケット6の重量およびバケット6に収容されている粉粒体7の重量に起因して、軸方向でバケット側に偏倚して、スプロケット42,43(図1参照)および走行レール5(図1,図2参照)に対して軸方向で芯ズレが生じている状態で、ローラ130が、スプロケット42,43との噛合いを開始するとき、または走行レール5との接触を開始するとき(すなわち、走行レール5上での走行開始時)に、軸方向でフランジ側に向かう方向のスラスト力F(図5参照)が作用することにより発生する。
【0036】
そして、ローラ130が傾斜したときの傾斜角θ1は、ローラ外周面132よりも径方向内方の位置でローラ130が内リンクプレートと接触する場合の傾斜角(例えば、図6に示される傾斜角θ5)に比べて小さくなる。
【0037】
図3,図4(b)に示されるように、座金外周縁141は、該座金外周縁141の少なくとも一部が重合部160(図4(b)では、クロスハッチングが施されている。)の重合外周縁161と同じ位置にある形状である。
ここで、重合部160とは、中心軸線Lと連結ピン101の中心軸線であるピン中心線とが一致している状態で、軸方向から見て第1内リンクプレート121とフランジ137とが重なる部分である。
【0038】
より具体的には、座金外周縁141は、その一部が重合部160の重合外周縁161と同じ位置にあり、残りの部分が、重合外周縁161と同じ位置にあるか、または重合外周縁161よりも径方向外方の位置にある形状である。
そして、本実施例では、図4(b)に示されるように、座金外周縁141の一部である第1外周縁部分141aは、重合外周縁161と同じ位置にあり、座金外周縁141,151において、第1外周縁部分141a以外の残りの部分である第2外周縁部分141bは、重合外周縁161よりも径方向外方の位置にある。
【0039】
第2座金150は、軸方向で第2内リンクプレート122とローラ端部134との間に配置されていると共に、その全体において径方向で第2内リンクプレート122の内側面122a内、すなわち径方向でプレート外周縁124以内に位置し、かつ、内側面122aに、固着手段としての溶接により、第2内リンクプレート122に一体に固着されている。ローラ端部134は、軸方向で第2座金150と接触可能である。
座金150の座金外周縁151は、径方向で、ローラ外周面132よりも径方向外方の位置にあり、また第2内リンクプレート122のプレート幅W22以下の、本実施例ではプレート幅W22よりも小さい径を有する。
【0040】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
コンベヤチェーン100は、第1,第2外リンクプレート111,112と第1,第2内リンクプレート121,122とを屈曲可能に連結している連結ピン101と、連結ピン101に外嵌されたブシュ102に回転可能に外嵌されたローラ130とを備える。そして、第1外リンクプレート111には、粉粒体7を保持するバケット6が取り付けられ、ローラ130は、スプロケット42,43または走行レール5と接触可能なローラ外周面132を有するローラ本体部131と、軸方向でのローラ130のローラ端部133にローラ外周面132の径よりも大きい外径Dfのフランジ137とを有する。
【0041】
この構成により、粉粒体7を保持するバケット6が取り付けられた第1外リンクプレート111を備えるコンベヤチェーン100がフランジ付きローラを備えるローラチェーンであるので、ローラ130が有するフランジ137により、コンベヤチェーン100がスプロケット42,43または走行レール5から脱線することが防止される。
【0042】
第1内リンクプレート121とローラ130との接触を防止する座金140は、軸方向で第1内リンクプレート121とローラ130との間に配置されて、第1内リンクプレート121に固着されており、第1内リンクプレート121のプレート外周縁123および座金140の座金外周縁141は、中心軸線Lを中心とする径方向で、ローラ外周面132よりも径方向外方の位置にあり、座金外周縁141は、ローラ傾斜時に、フランジ137がローラ外周面132よりも径方向外方の位置で第1座金140と接触することにより、ローラ130と第1内リンクプレート121とを非接触状態にする形状である。
【0043】
この構成により、第1外リンクプレート111または第1内リンクプレート121にバケット6が取り付けられていることに起因してローラ130が傾斜するローラ傾斜時に、ローラ130は座金140と接触するので、ローラ130と第1内リンクプレート121とが接触することが防止されて、座金140により、ローラ130との接触による第1内リンクプレート121の偏摩耗の発生が防止される。
しかも、ローラ130は、該ローラ130が有するフランジ137を利用することにより、ローラ外周面132よりも径方向外方の位置で座金140と接触するので、ローラ130がローラ外周面132よりも径方向内方の位置で内リンクプレートと接触する場合に比べて、ローラ130が、中心軸線Lから、より離れた位置で座金140に接触すること、および、ローラ130の傾斜角θ1が小さくなることから、ローラ130が座金140に加える接触力が小さくなって、座金140の摩耗の進行が抑制される。
これらのことから、座金140が設けられている分、および、座金140の摩耗の進行が抑制される分、コンベヤチェーン100の寿命が延びるため、コンベヤチェーン100の耐久性およびメンテナンス性能を向上させることができる。
さらに、耐摩耗性に優れた材料により形成されることが好ましい座金140は、第1内リンクプレート121とは別個の部材として、第1内リンクプレート121に固着されて一体化されるので、第1内リンクプレート121に座金140に相当する部分が一体成形される場合に比べて、製造コストを削減することができる。
【0044】
座金外周縁141は、該座金外周縁141の少なくとも一部である第1外周縁部分141aが重合部160の重合外周縁161と同じ位置にあり、第1外周縁部分141a以外の残りの部分である第2外周縁部分141bが重合外周縁161よりも径方向外方の位置にある形状である。
【0045】
この構成により、座金140は、座金外周縁141の少なくとも一部である第1外周縁部分141aが重合外周縁161と同じ位置にあるような大きさに形成されることから、座金140の大きさが抑制されるので、座金140のコストが削減されて、座金140を備えるコンベヤチェーン100のコストを削減することができる。
【0046】
ローラ130が、1つのフランジ137のみを有する片側フランジ付きローラであり、第2内リンクプレート122のプレート幅W22が、ローラ外周面132の径よりも小さく、第2内リンクプレート122のプレート外周縁124のプレート外周縁部分124aが、ローラ外周面132よりも径方向内方に位置する形状である。
【0047】
この構成により、第2内リンクプレート122には、プレート外周縁123が径方向でローラ外周面132よりも径方向外方の位置にあるような特別な形状の第1内リンクプレート121とは異なり、既存のリンクプレートを使用することができるので、座金140を備えるコンベヤチェーン100のコストを削減することができる。
【0048】
ローラ130と第2内リンクプレート122との接触を防止する第2座金150が、軸方向で第2内リンクプレート122とローラ130との間に配置されて、第2内リンクプレート122に固着されている。
【0049】
この構成により、ローラ130は座金150と接触するので、ローラ130と第2内リンクプレート122とが接触することが防止されて、この座金150により、ローラ130との接触による第2内リンクプレート122の偏摩耗の発生が防止され、しかも、ローラ傾斜時には、ローラ外周面132よりも径方向外方でフランジ137と第1座金140とが接触することで、ローラ130の傾斜角が小さくなるので、ローラ130が第2座金150に接触する場合に、該ローラ130が第2内リンクプレート122に加える接触力が小さくなって、座金150の摩耗の進行が抑制されることで、コンベヤチェーン100の耐久性およびメンテナンス性能を向上させることができる。
【0050】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
座金140の座金外周縁141は、ローラ傾斜時に、第1内リンクプレート121の内側面121a内において、フランジ137が、フランジ外周縁138またはフランジ外周縁138の近傍で、座金外周縁141と接触する位置にある形状であってもよい。この場合、座金外周縁141は、全体または部分的に、重合部160の重合外周縁161よりも径方向内方の位置であってもよい。
そして、この構成により、座金140は、ローラ傾斜時に座金外周縁141がフランジ137と接触する位置にあるような大きさに形成されることから、座金140の大きさが抑制されるので、座金140のコストが削減されて、座金140を備えるコンベヤチェーン100のコストを削減することができる。
【0051】
座金外周縁141の全体が、重合外周縁161と同じ位置にあってもよい。これによっても、座金外周縁141が重合外周縁161と同じ位置にあるような大きさに形成されることから、座金140の大きさが抑制されるので、座金140のコストが削減される。
前記搬送体取付リンクプレートは、第1外リンクプレート111および第1内リンクプレート121の少なくとも一方のリンクプレートであってよい。
【符号の説明】
【0052】
100・・・コンベヤチェーン
101・・・連結ピン
102・・・ブシュ
110・・・外リンク
111,112・・・外リンクプレート
120・・・内リンク
121,122・・・内リンクプレート
123,124・・・プレート外周縁
130・・・ローラ
131・・・ローラ本体部
132・・・ローラ外周面
137・・・フランジ
140,150・・・座金
141,151・・・座金外周縁
160・・・重合部
161・・・重合外周縁
L ・・・中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1,第2外リンクプレートから構成される外リンクと第1,第2内リンクプレートから構成される内リンクとを屈曲可能に連結している連結ピンと、前記第1,第2内リンクプレートに固着されると共に前記連結ピンに外嵌されたブシュと、前記ブシュに回転可能に外嵌されたローラとを備え、前記ブシュの中心軸線に平行な軸方向で前記第1内リンクプレートと同じ側の前記第1外リンクプレートまたは前記第1内リンクプレートには、搬送物を保持する搬送体が取り付けられ、前記ローラが、スプロケットまたは走行レールと接触可能なローラ外周面を有するローラ本体部と、前記軸方向での前記ローラの一方側ローラ端部に前記ローラ外周面の径よりも大きい外径のフランジとを有するコンベヤチェーンにおいて、
前記第1内リンクプレートと前記ローラとの接触を防止する座金が、前記軸方向で前記第1内リンクプレートと前記ローラとの間に配置されて、前記第1内リンクプレートに固着されており、
前記第1内リンクプレートのプレート外周縁および前記座金の座金外周縁が、前記中心軸線を中心とする径方向で、前記ローラ外周面よりも径方向外方の位置にあり、
前記座金外周縁が、前記ローラが前記中心軸線に対して相対的に傾斜するローラ傾斜時に、前記フランジが前記ローラ外周面よりも径方向外方の位置で前記座金と接触することにより、前記ローラと前記第1内リンクプレートとを非接触状態にする形状であることを特徴とするコンベヤチェーン。
【請求項2】
前記座金外周縁が、前記ローラ傾斜時に、前記第1内リンクプレートの内側面内において前記フランジが前記座金外周縁と接触する位置にある形状、または、前記軸方向から見て前記第1内リンクプレートと前記フランジとが重なる部分を重合部とするときに、前記座金外周縁の少なくとも一部が前記重合部の重合外周縁と同じ位置にある形状であることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤチェーン。
【請求項3】
前記ローラが、1つの前記フランジのみを有する片側フランジ付きローラであり、
前記第2内リンクプレートのプレート幅が、前記ローラ外周面の径よりも小さく、
前記第2内リンクプレートのプレート外周縁における、チェーン走行方向での前記プレート外周縁部分が、前記ローラ外周面よりも径方向内方に位置する形状であり、
前記ローラと前記第2内リンクプレートとの接触を防止する第2座金が、前記軸方向で前記ローラと前記第2内リンクプレートとの間に配置されて、前記第2内リンクプレートに固着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンベヤチェーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100162(P2013−100162A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244703(P2011−244703)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】