説明

コンベヤチェーン

【課題】チェーン組み立て負担やチェーン切継ぎ負担を大幅に軽減するとともに仮組み用中空ピンと本組み用中実ピンの不用意な抜け出し脱落を防止するコンベヤチェーンを提供すること。
【解決手段】搬送物品を搭載するトッププレート111をリンク本体112の上部に備えたチェーンリンクが連結ピン120でチェーン長手方向に沿って相互に多数連結され、これら連結ピン120の少なくとも1つが、チェーンリンクのリンク本体112に設けたピン孔113bに対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込む仮組み用中空ピン130とチェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピン130のピン中空部内に圧入嵌合して組み付ける本組み用中実ピン140とで置き換えられて構成されているコンベヤチェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や、医薬品や、缶、ペットボトル、ビン等の容器や、電子部品や、繊維製品等の搬送物品をトッププレート上に載置して搬送する搬送機構等に用いられるコンベヤチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送機構等に用いられるコンベヤチェーンとして、合成樹脂製リンクプレートの後方端縁に沿って配置された1個のブシュ孔と、この合成樹脂製リンクプレートに隣接される合成樹脂製リンクプレートの前方端縁に沿って配置された2個のピン孔と、ブシュ孔とピン孔を交互に挿通する連結ピンとでヒンジ連結した合成樹脂製コンベヤチェーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−334834号公報(特許請求の範囲、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したような従来の断面D字状の連結ピンを備えるコンベヤチェーンは、コンベヤの設置状況に応じて最適なチェーン長さになるように多数の合成樹脂製リンクプレートを組み付けなければならず、合成樹脂製リンクプレートのピン孔に対してやや大きめの連結ピンを圧入嵌合させる際に、連結ピンとピン孔との間に過大な圧入抵抗や段差抵抗を生じるため、連結ピンをハンマーで叩くなどしてピン孔内へ強制的に押圧するなど、チェーン組み立て作業やチェーン切継ぎ作業に多大な労力を要するという問題があった。
【0005】
また、上述した従来の連結ピンを合成樹脂製リンクプレートのピン孔よりやや小径に制作するか、若しくは、合成樹脂製リンクプレートのピン孔を連結ピンよりやや大径に設計すると、連結ピンの挿通作業が容易になるものの、チェーン稼働時の振動などにより連結ピンが不用意に抜け出して脱落する虞があるばかりでなく、合成樹脂製リンクプレート相互のチェーンピッチが合成樹脂製リンクプレートのピン孔と連結ピンとの間のクリアランス分だけを間延びしてスプロケットとの噛み合いが不安定になるという厄介な問題があった。
【0006】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、本組み用中実ピンを仮組み用中空ピンのピン中空部内に段差抵抗なく挿通してチェーンリンクのピン孔に圧入嵌合状態で簡便に組み付け固定してチェーン組み立て負担やチェーン切継ぎ負担を大幅に軽減するとともに仮組み用中空ピンと本組み用中実ピンの不用意な抜け出し脱落を防止するコンベヤチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本請求項1の発明に係るコンベヤチェーンは、搬送物品を搭載するトッププレートをリンク本体の上部に備えたチェーンリンクが連結ピンによりチェーン長手方向に沿って相互に多数連結されるコンベヤチェーンにおいて、前記連結ピンの少なくとも1つが、前記チェーンリンクのリンク本体に設けたピン孔に対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込む仮組み用中空ピンと前記チェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピンのピン中空部内に圧入嵌合して組み付ける本組み用中実ピンとで置き換えられて構成されていることによって、前述した課題を解決するものである。
【0008】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたコンベヤチェーンの構成に加えて、前記仮組み用中空ピンが、該仮組み用中空ピンのピン全長に渡って切り欠いたスリットを備えているとともに、前記本組み用中実ピンが、前記仮組み用中空ピンのスリットに挿通して凹凸係合するピン長手方向の突条を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載されたコンベヤチェーンの構成に加えて、前記仮組み用中空ピンに対して本組み用中実ピンを抜け止めする抜け止め係止機構が、前記仮組み用中空ピンおよび本組み用中実ピンの両端にそれぞれ設けられていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のチェーンの構成に加えて、前記仮組み用中空ピンが、前記スリットを跨いで湾曲したピン外周面と反対側の平坦なピン外周面に前記リンク本体に対して係合する抜け止め固定用突起を備えていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係る発明のコンベヤチェーンは、搬送物品を搭載するトッププレートをリンク本体の上部に備えたチェーンリンクが連結ピンによりチェーン長手方向に沿って相互に多数連結されるコンベヤチェーンにおいて、連結ピンの少なくとも1つが、チェーンリンクのリンク本体に設けたピン孔に対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込む仮組み用中空ピンとチェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピンのピン中空部内に圧入嵌合して組み付ける本組み用中実ピンとで置き換えられて構成されていることにより、チェーン組み立て作業時にチェーンリンクのピン孔よりも弾力的に縮径されて挿通した仮組み用中空ピンがピン孔内で解放されて弾性回復し、弾力的に拡径して本組み用中実ピンを挿通し易い一気通貫したピン中空部を形作るため、本組み用中実ピンを仮組み用中空ピンのピン中空部内に段差抵抗なく挿通させるとともに仮組み用中空ピンを介してチェーンリンクのピン孔に圧入嵌合状態で簡便に組み付け固定してチェーン組み立て負担やチェーン切継ぎ負担を大幅に軽減することができる。
【0012】
また、本組み用中実ピンが中実で形成されていることにより、コンベヤ稼働時においてチェーン長手方向に過度の引っ張り力が仮組み用中空ピンに作用する場合であっても、本組み用中実ピンが仮組み用中空ピンの剛性を高めて撓みや屈曲変形を防止するため、チェーンリンク相互のチェーンピッチを確実に維持して円滑なチェーン駆動を達成することができる。
【0013】
そして、請求項2に係る発明のコンベヤチェーンによれば、請求項1に記載のコンベヤチェーンが奏する効果に加えて、仮組み用中空ピンが仮組み用中空ピンのピン全長に渡って切り欠いたスリットを備えていることにより、チェーン組み立て作業やチェーン切継ぎ作業時に仮組み用中空ピンがピン全長に渡って切り欠いたスリットに沿って充分に縮径されて本組み用中実ピンを挿通し易い一気通貫したピン中空部を容易に形作ることができる。
【0014】
また、仮組み用中空ピンが仮組み用中空ピンのピン全長に渡って切り欠いたスリットを備えているとともに、本組み用中実ピンが仮組み用中空ピンのスリットに挿通して凹凸係合するピン長手方向の突条を備えていることにより、チェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピンのピン中空部内に本組み用中実ピンを圧入嵌合して組み付ける際に、本組み用中実ピンの突条が、仮組み用中空ピンのスリットに沿って円滑に挿通されるため、過大な押圧力を必要とせずに仮組み用中空ピンのピン中空部内に圧入嵌合させることができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明のコンベヤチェーンによれば、請求項1又は請求項2に記載のコンベヤチェーンが奏する効果に加えて、仮組み用中空ピンに対して本組み用中実ピンを抜け止めする抜け止め係止機構が、仮組み用中空ピンおよび本組み用中実ピンの両端にそれぞれ設けられていることにより、チェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピンとこの仮組み用中空ピンのピン中空部内に圧入嵌合して組み付けた本組み用中実ピンとの間に設けた抜け止め係止機構が、相互の両端部においてそれぞれ確実に係止機能を発揮するため、両者の挿入方向、あるいは、抜き取り方向のいずれに対しても、本組み用中実ピンの不用意な抜け出し脱落を防止することができる。
【0016】
また、請求項4に係る発明のコンベヤチェーンによれば、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコンベヤチェーンが奏する効果に加えて、仮組み用中空ピンが、スリットを跨いで湾曲したピン外周面と反対側の平坦なピン外周面にリンク本体に対して係合する抜け止め固定用突起を備えていることにより、チェーンリンクのリンク本体に設けたピン孔に仮組み用中空ピンを挿通嵌合して組み込んだ際に、この抜け止め固定用突起が、湾曲したピン外周面の弾力性を利用してリンク本体に設けたピン孔の孔縁に係止されるため、本組み用中実ピンを圧入嵌合した仮組み用中空ピンが、その挿入方向、あるいは抜き取り方向のいずれに対しても、不用意な抜け出しや脱落することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例であるコンベヤチェーンの斜視図。
【図2】図1に示すコンベヤチェーンの側面図。
【図3】図1に示すコンベヤチェーンを底面側から一部切り欠いた斜視図。
【図4】本実施例で用いる仮組み用中空ピンの斜視図とその一部拡大図。
【図5】図4における矢印から視た仮組み用中空ピンの斜視図。
【図6】本実施例で用いる本組み用中実ピンの斜視図とその一部拡大図。
【図7】仮組み用中空ピンと本組み用中実ピンとに設けた抜け止め係止機構の説明図。
【図8】チェーンリンクに挿通する仮組み用中空ピンを縮径させた状態を示す説明図。
【図9】チェーンリンクに仮組み用中空ピンのみを挿通した状態を示す説明図。
【図10】仮組み用中空ピンに本組み用中実ピンを挿通する状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のコンベヤチェーンは、搬送物品を搭載するトッププレートをリンク本体の上部に備えたチェーンリンクが連結ピンによりチェーン長手方向に沿って相互に多数連結されるコンベヤチェーンにおいて、連結ピンの少なくとも1つが、チェーンリンクのリンク本体に設けたピン孔に対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込む仮組み用中空ピンとチェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピンのピン中空部内に圧入嵌合して組み付ける本組み用中実ピンとで置き換えられて構成され、本組み用中実ピンを仮組み用中空ピンのピン中空部内に段差抵抗なく挿通してチェーンリンクのピン孔に圧入嵌合状態で簡便に組み付け固定してチェーン組み立て負担やチェーン切継ぎ負担を大幅に軽減するとともに仮組み用中空ピンと本組み用中実ピンの不用意な抜け出し脱落を防止するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0019】
例えば、本発明のコンベヤチェーンで用いるチェーンリンクの具体的なリンク形態については、特開平11―334834号公報などに開示されているような合成樹脂製リンクプレートと称するチェーンリンクのリンク本体の後方端縁に沿って配置された1個のブシュ孔と、このリンクプレートに隣接される合成樹脂製リンクプレートのリンク本体の前方端縁に沿って配置された2個のピン孔とを備えてブシュ孔とピン孔を交互に挿通する連結ピンでヒンジ連結することが可能なもの、特開2004−133335号公報などに開示されているような列状配置された複数のリンクと称するチェーンリンクを有してこれらのリンクの各々がフラットな上面をもつトッププレートとこのトッププレートの下部に設けられたリンク本体のヒンジ部とを備えてこのヒンジ部を後方に位置する隣接リンクのヒンジ部にピン連結することが可能なもの、特開2011−098792号公報などに開示されているような連結ピンを貫通するピン用長孔が形成された略々円筒状の筒状部からなる頭部とこの頭部にチェーン長手方向に延設された一対の脚部とからなるリンク本体がトッププレートの下面に設けられてリンクが構成され、筒状部にピン用貫通孔が形成された略々円柱状の軸受体が回転可能に装着されて軸受部が形成され、一方のリンクに形成された頭部が隣接する他方のリンクの一対の脚部間に配設された状態で、軸受部を貫通して、その両端が一対の脚部にそれぞれ形成されたピン孔に挿嵌された連結ピンにより、リンク同士を無端状に連結することが可能なものであっても何ら構わない。
【0020】
そして、本発明のコンベヤチェーンで用いる仮組み用中空ピンと本組み用中実ピンについては、チェーンリンクをチェーン長手方向に沿って相互に連結する連結ピンの少なくとも1つと置き換えられるものであって、すなわち、チェーンリンクが相互に連結された無端状のコンベヤチェーンの1カ所乃至数カ所で置き換えられ、この1カ所乃至数カ所の少なくとも一カ所でチェーン切継ぎ作業を行うことが可能なものであれば、その具体的な配置形態は如何なるものであっても良い。
また、本発明で用いる仮組み用中空ピンの具体的なピン形状やピン素材については、ピン全長に渡って切り欠いたスリットを備えるとともにこのスリットを跨いで湾曲したピン外周面と反対側の平坦なピン外周面に前記リンク本体に対して係合する抜け止め固定用突起を備えて、チェーンリンクのリンク本体に設けたピン孔に対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込むことが可能なものであれば、如何なるピン素材やピン径やピン断面形状であっても何ら差し支えない。
特に、仮組み用中空ピンのピン断面形状については、円形断面、D字状断面のいずれであっても良く、また、その素材については、ポリアセタール、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂であれば良い。
【0021】
他方、本発明で用いる本組み用中実ピンの具体的な形態については、チェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピンのピン中空部内に圧入嵌合して組み付けるものであれば、如何なるピン素材やピン径やピン断面形状であっても何ら差し支えなく、特に、ピン素材については、金属、合成樹脂のいずれであっても良い。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の一実施例であるコンベヤチェーンについて、図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例であるコンベヤチェーンの斜視図であり、図2は、図1に示すコンベヤチェーンの側面図であり、図3は、図1に示すコンベヤチェーンを底面側から一部切り欠いた斜視図であり、図4は、本実施例で用いる仮組み用中空ピンの斜視図とその一部拡大図であり、図5は、図4における矢印から視た仮組み用中空ピンの斜視図であり、図6は、本実施例で用いる本組み用中実ピンの斜視図とその一部拡大図であり、図7は、仮組み用中空ピンと本組み用中実ピンとに設けた抜け止め係止機構の説明図であり、図8は、チェーンリンクに挿通する仮組み用中空ピンを縮径させた状態を示す説明図であり、図9は、チェーンリンクに仮組み用中空ピンのみを挿通した状態を示す説明図であり、図10は、仮組み用中空ピンに本組み用中実ピンを挿通する状態を示す説明図である。
【0023】
まず、本実施例であるコンベヤチェーン100は、図1乃至図3に示すように、搬送物品を搭載するトッププレート111をリンク本体112の上部に備えた合成樹脂からなる多数のチェーンリンク110と、これらのチェーンリンク110をチェーン長手方向に沿って相互に連結する多数の連結ピン120と、これらの連結ピン120の少なくとも1つに置き換えられる合成樹脂製の仮組み用中空ピン130と本組み用中実ピン140とで構成されている。
【0024】
すなわち、本実施例のコンベヤチェーン100は、隣接するチェーンリンク110同士が前方ヒンジ部112aのピン孔113aおよび後方ヒンジ部112bのピン孔113bに連結ピン120を順次挿通してチェーン長手方向に沿って相互に多数連結されている。
そして、本実施例のコンベヤチェーン100を無端状に連結する切継ぎ部分において、前述した合成樹脂製の仮組み用中空ピン130は、このチェーンリンク110のリンク本体112に設けたピン孔113に対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込まれ、また、前述した合成樹脂製の本組み用中実ピン140は、チェーンリンク110に組み込んだ仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に圧入嵌合して組み付けられている。
【0025】
ここで、前述したリンク本体112は、図3に示すように、チェーン長手方向の前方端に断面D字状のピン孔113aをそれぞれ穿設した2つの前方ヒンジ部112aと、チェーン長手方向の後方端に断面円状でやや大径のピン孔113bを穿設した後方ヒンジ部112bとから構成されている。
【0026】
次に、本実施例のコンベヤチェーン100が最も特徴とする仮組み用中空ピン130および本組み用中実ピン140の具体的な形態について、図4乃至図7に基づいて説明する。
まず、図4に示すように、合成樹脂製の仮組み用中空ピン130は、中空で断面D字状に形成されたピン中空部131を備えているとともに、このピン中空部131をピン全長に渡って切り欠いたスリット132を備えている。
これにより、チェーン組み立て作業やチェーン切継ぎ時に、チェーンリンク110のピン孔113よりも弾力的に縮径されて挿通した仮組み用中空ピン130が、ピン孔113内で解放されて弾性回復し、弾力的に拡径して本組み用中実ピン140を挿通し易い一気通貫したピン中空部131を形作っている。
【0027】
そして、前述した仮組み用中空ピン130は、図5に示すように、リンク本体112のピン孔113の孔縁に対して凹凸係合する抜け止め固定用突起133をチェーン幅方向の左右にそれぞれ備え、さらに、この抜け止め固定用突起133は、図2に拡大して示すように、スリット132を跨いで湾曲したピン外周面と反対側の平坦なピン外周面に、前方ヒンジ部112aのピン孔113aよりもやや大径に形成されている。
これにより、チェーンリンク110のリンク本体112に設けたピン孔113に仮組み用中空ピン130を挿通嵌合して組み込んだ際に、この抜け止め固定用突起133が、湾曲したピン外周面の弾力性を利用してリンク本体112に設けたピン孔113の孔縁に係止され、前述の本組み用中実ピン140を圧入嵌合した仮組み用中空ピン130が、その挿入方向、あるいは抜き取り方向のいずれに対しても、不用意な抜け出しや脱落することを防止している。
【0028】
また、合成樹脂製の本組み用中実ピン140は、図6に示すように、前述した仮組み用中空ピン130のスリット132に挿通して凹凸係合するピン長手方向に一条の突条141を備えている。
これにより、チェーンリンク110に組み込んだ仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に本組み用中実ピン140を圧入嵌合して組み付ける際に、図7に示すように、本組み用中実ピン140の突条141が、仮組み用中空ピン130のスリット132に沿って円滑に挿通され、過大な押圧力を必要とせずに仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に圧入嵌合されるようになっている。
【0029】
また、本組み用中実ピン140は、図6に示すように、中実で断面D字状に形成されている。
これにより、コンベヤ稼働時においてチェーン長手方向に過度の引っ張り力が仮組み用中空ピン130に作用する場合であっても、本組み用中実ピン140が、仮組み用中空ピン130の剛性を高めて撓みや屈曲変形を防止し、チェーンリンク相互のチェーンピッチを確実に維持して円滑なチェーン駆動を達成している。
【0030】
さらに、本実施例のコンベヤチェーン100では、図7に示すように、仮組み用中空ピン130に対して本組み用中実ピン140を抜け止めするピン先端側とピン後端側の抜け止め係止機構X1、X2が、仮組み用中空ピン130および本組み用中実ピン140の両端にそれぞれ設けられている。
すなわち、このような抜け止め係止機構X1、X2の一方を構成する仮組み用中空ピン130が、前方ヒンジ部112aのピン孔113aに挿入するピン先端側にスリット132の間口をさらに切り欠いた係合用前方凹部134とピン後端側に薄肉化した係合用後方凹部135とを備え、抜け止め係止機構X1、X2の他方を構成する本組み用中実ピン140が、前述した係合用前方凹部134に凹凸係合するピン先端部側の突条141に設けた返りと称する係合用前方凸部142と前述した係合用後方凹部135に凹凸係合するピン後端側に返りと称する厚肉化した係合用後方凸部143とを備えている。
【0031】
これにより、チェーンリンク110に組み込んだ仮組み用中空ピン130とこの仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に圧入嵌合して組み付けた本組み用中実ピン140との相互の両端部において、抜け止め係止機構X1、X2を構成する仮組み用中空ピン130の係合用前方凹部134と係合用後方凹部135とに対応する本組み用中実ピン140の係合用前方凹部134とピン後端側に薄肉化した係合用後方凹部135とがそれぞれ確実に係止機能を発揮するため、両者の挿入方向、あるいは、抜き取り方向のいずれに対しても、仮組み用中空ピン130に対する本組み用中実ピン140の不用意な抜け出し脱落を防止している。
【0032】
次に、本実施例のコンベヤチェーン100を各種製造装置などに組み付ける際の仮組み用中空ピン130および本組み用中実ピン140の取り扱いについて、図8乃至図10に基づいて説明する。
チェーン組み立て作業を行う際には、図8に示すように、まず、仮組み用中空ピン130を、そのピン全長に渡って切り欠いたスリット132に沿って弾力的に縮径してチェーンリンク110のピン孔113よりも小径になるように弾性変形させ、仮組み用中空ピン130をチェーンリンク110のピン孔113内へ挿入する。
【0033】
そして、図9に示すように、チェーンリンク110のピン孔113内へ挿通した後に、ピン孔113内に挿入された仮組み用中空ピン130の縮径状態を弾性回復させて弾力的に拡径して解放し、本組み用中実ピン140を挿通し易い一気通貫したピン中空部131を形作る。
また、チェーンリンク110のリンク本体112に設けたピン孔113に仮組み用中空ピン130を挿通嵌合して組み込んだ際に、この仮組み用中空ピン130のスリット132を跨いで湾曲したピン外周面と反対側の平坦なピン外周面に設けた抜け止め固定用突起133が、湾曲したピン外周面の弾力性を利用してリンク本体112に設けたピン孔113の孔縁に係止される。
【0034】
その後、図10に示すように、チェーンリンク110に組み込んだ仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に本組み用中実ピン140を圧入嵌合して組み付ける際に、本組み用中実ピン140が、仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に段差抵抗なく挿入され、この時、本組み用中実ピン140の突条141が、仮組み用中空ピン130のスリット132に沿って円滑に誘導される。
その結果、本組み用中実ピン140は、仮組み用中空ピン130を介してチェーンリンク110のピン孔113に圧入嵌合状態で簡便に組み付けられる。
【0035】
そして、仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に本組み用中実ピン140を圧入嵌合して組み込んだ際に、仮組み用中空ピン130および本組み用中実ピン140の両端にそれぞれ設けた抜け止め係止機構X1、X2が、図7に示すように、仮組み用中空ピン130に対して本組み用中実ピン140を抜け止めする。
すなわち、抜け止め係止機構X1、X2を構成する仮組み用中空ピン130の係合用前方凹部134と係合用後方凹部135とに対応する本組み用中実ピン140の係合用前方凹部134とピン後端側に薄肉化した係合用後方凹部135とがそれぞれ確実に係止機能を発揮して、チェーンリンク110の相互を連結する切継ぎ作業が完了する。
【0036】
このようにして得られた本実施例のコンベヤチェーン100は、搬送物品を搭載するチェーンリンク110のリンク本体112に設けたピン孔113に対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込む仮組み用中空ピン130と、チェーンリンク110に組み込んだ仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に圧入嵌合して組み付ける本組み用中実ピン140とで構成され、仮組み用中空ピン130が仮組み用中空ピン130のピン全長に渡って切り欠いたスリット132を備えているとともに、本組み用中実ピン140が仮組み用中空ピン130のスリット132に挿通して凹凸係合するピン長手方向の突条141を備えていることにより、チェーン組み立て作業時に、本組み用中実ピン140の突条141が、仮組み用中空ピン130のスリット132に沿って円滑に挿通されるため、過大な押圧力を必要とせずに本組み用中実ピン140を仮組み用中空ピン130のピン中空部131内に段差抵抗なく挿通させることができるとともに仮組み用中空ピン130を介してチェーンリンク110のピン孔113に圧入嵌合状態で簡便に組み付け固定してチェーン組み立て負担やチェーン切継ぎ負担を大幅に軽減することができる。
【0037】
そして、仮組み用中空ピン130に対して本組み用中実ピン140を抜け止めする抜け止め係止機構X1、X2が、仮組み用中空ピン130および本組み用中実ピン140の両端にそれぞれ設けられていることにより、チェーンリンク110に組み込んだ仮組み用中空ピン130に対する本組み用中実ピン140の不用意な抜け出し脱落を防止することができる等、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0038】
100 ・・・ コンベヤチェーン
110 ・・・ チェーンリンク
111 ・・・ トッププレート
112 ・・・ リンク本体
112a・・・ 前方ヒンジ部
113a・・・ ピン孔
112b・・・ 後方ヒンジ部
113b・・・ ピン孔
120 ・・・ 連結ピン
130 ・・・ 仮組み用中空ピン
131 ・・・ ピン中空部
132 ・・・ スリット
133 ・・・ 抜け止め固定用突起
134 ・・・ 係合用前方凹部
135 ・・・ 係合用後方凹部
140 ・・・ 本組み用中実ピン
141 ・・・ 突条
142 ・・・ 係合用前方凸部
143 ・・・ 係合用後方凸部
X1、X2・・・抜け止め係止機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物品を搭載するトッププレートをリンク本体の上部に備えたチェーンリンクが連結ピンによりチェーン長手方向に沿って相互に多数連結されるコンベヤチェーンにおいて、
前記連結ピンの少なくとも1つが、前記チェーンリンクのリンク本体に設けたピン孔に対して弾力的に縮径した状態で挿通嵌合して組み込む仮組み用中空ピンと前記チェーンリンクに組み込んだ仮組み用中空ピンのピン中空部内に圧入嵌合して組み付ける本組み用中実ピンとで置き換えられて構成されていることを特徴とするコンベヤチェーン。
【請求項2】
前記仮組み用中空ピンが、該仮組み用中空ピンのピン全長に渡って切り欠いたスリットを備えているとともに、
前記本組み用中実ピンが、前記仮組み用中空ピンのスリットに挿通して凹凸係合するピン長手方向の突条を備えていることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤチェーン。
【請求項3】
前記仮組み用中空ピンに対して本組み用中実ピンを抜け止めする抜け止め係止機構が、前記仮組み用中空ピンおよび本組み用中実ピンの両端にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンベヤチェーン。
【請求項4】
前記仮組み用中空ピンが、前記スリットを跨いで湾曲したピン外周面と反対側の平坦なピン外周面に前記リンク本体に対して係合する抜け止め固定用突起を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコンベヤチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−28416(P2013−28416A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164372(P2011−164372)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】