説明

コンベヤベルトおよびコンベヤベルトの製造方法

【課題】縦裂きの発生を抑え、かつ耐カット性を向上する。
【解決手段】本体ゴム11内にベルト長手方向Lに延びる抗張体12が埋設されたコンベヤベルト1であって、本体ゴム11内には、ベルト長手方向Lに沿って延びる補強層14が埋設され、補強層14内には、ランダムに配向された多数のスチール短小片14aが埋設されて層をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトおよびコンベヤベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトとして、例えば下記特許文献1に示されるような、本体ゴム内に、ベルト長手方向に延びる抗張体と、合成繊維等の短小片を備えかつ本体ゴムの上下面のうち被搬送物が載置される上面に露出する補強層と、が埋設された構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−47139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のコンベヤベルトでは、ベルト長手方向に裂けるいわゆる縦裂きの発生を抑えること、並びに耐カット性を向上することについて改善の余地があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、縦裂きの発生を抑えることができるとともに、耐カット性を向上することができるコンベヤベルトおよびコンベヤベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のコンベヤベルトは、本体ゴム内にベルト長手方向に延びる抗張体が埋設されたコンベヤベルトであって、前記本体ゴム内には、ベルト長手方向に沿って延びる補強層が埋設され、該補強層内には、ランダムに配向された多数のスチール短小片が埋設されて層をなしていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、本体ゴム内に、ランダムに配向された多数のスチール短小片を備える補強層が埋設されているので、縦裂きの発生を抑えることができる。
またこのように、本体ゴム内に前記補強層が埋設されているので、本体ゴムの上下面のうち被搬送物が載置される上面側の耐カット性を向上することができる。
例えば補強層が、本体ゴム内において抗張体よりも前記上面側に位置する上面側部分に埋設された場合には、この補強層によって本体ゴムの上面側部分の剛性を高めることが可能になる。一方、例えば補強層が、本体ゴム内において抗張体を挟んで前記上面側部分の反対の下面側部分に埋設された場合には、該下面側部分の剛性が高められることによって、コンベヤベルトを無端状にして装置に組付けたときに該コンベヤベルトに生ずる曲げ変形の中立軸が下面側にずらされることにより、前記上面側部分のベルト幅方向の圧縮変形量を増大させることが可能になる。なお、コンベヤベルトは、装置に組付けられると、ベルト幅方向の両端部が外側に反り上がって横断面視で椀状を呈するように曲げ変形する。
さらに、補強層内に埋設された多数のスチール短小片がランダムに配向されていることから、特定の方向に限定されることなく前述した縦裂きの発生の抑制や耐カット性の向上を図ることができる。
【0008】
ここで、前記スチール短小片の長さは、10mm以上100mm以下であってもよい。
【0009】
この場合、スチール短小片の長さが10mmより短くなると、前述の作用効果が奏功されず、100mmより長くなると、ランダムに配向させることが困難になる。
【0010】
また、前記スチール短小片の外径は、0.1mm以上0.6mm以下であってもよい。
【0011】
この場合、スチール短小片の外径が0.1mmより小さくなると、前述の作用効果が奏功されず、0.6mmより大きくなると、コンベヤベルトの剛性が高くなりすぎ、コンベヤベルトを装置に組付けたときになじませ難くなり、装置の駆動時にコンベヤベルトが蛇行し易くなったり、重くなりすぎたりするおそれがある。
【0012】
さらに、前記補強層の目付け密度は、100g/m以上1000g/m以下であってもよい。
【0013】
この場合、補強層の目付け密度が100g/mより小さくなると、前述の作用効果が奏功されず、1000g/mより大きくなると、装置の駆動時にコンベヤベルトが蛇行し易くなったり、重くなりすぎたり、さらにはスチール短小片同士がゴム材料を介在させずに接触し合うことで耐久性が低下するおそれがある。
【0014】
また、本発明のコンベヤベルトの製造方法は、本発明のコンベヤベルトを製造するコンベヤベルトの製造方法であって、上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートとの間に、前記多数のスチール短小片が配設された補強層部材を形成する補強層部材形成工程と、未加硫の上側本体ゴム部材と未加硫の下側本体ゴム部材との間に、前記抗張体を備える芯体層部材、および前記補強層部材を積層させて配置した状態で、積層方向に加圧して加熱することで加硫成形しコンベヤベルトを製造する加硫成形工程と、を備え、前記補強層部材形成工程は、前記下側未加硫ゴムシート上に、前記多数のスチール短小片を散布する散布工程と、前記上側未加硫ゴムシートを、下側未加硫ゴムシート上に前記多数のスチール短小片を介して重ね合わせる重合工程と、前記上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートとを、これらの両シート間に前記多数のスチール短小片を介在させた状態で互いに圧接させて密着させる密着工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記補強層部材を形成するに際し、まず下側未加硫ゴムシート上に多数のスチール短小片を散布する(ばらまく)ので、散布された多数のスチール短小片は、主に倒伏した状態で下側未加硫ゴムシート上に載置されることとなり、これらのスチール短小片を容易にランダムに配向させることが可能になるとともに、その分布を容易に均等にすることができる。
【0016】
ここで、前記多数のスチール短小片にめっきが施され、前記密着工程は、前記上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートとを加熱した状態で互いに圧接させてもよい。
【0017】
この場合、多数のスチール短小片にめっきが施され、前記密着工程は、上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートとを加熱した状態で互いに圧接させるので、上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートと多数のスチール短小片とを互いに分離し難くして補強層部材の取り扱い性を向上させることが可能になり、コンベヤベルトを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るコンベヤベルトによれば、縦裂きの発生を抑えることができるとともに、耐カット性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る一実施形態として示したコンベヤベルトのベルト幅方向に沿う概略断面図である。
【図2】図1に示すコンベヤベルトの補強層の一部破断斜視図である。
【図3】図1および図2に示すコンベヤベルトの製造方法を説明するための説明図である。
【図4】図3に示す補強層部材を製造する補強層部材の製造装置の概略図である。
【図5】図4に示す補強層部材の製造装置のI−I線矢視図である。
【図6】本発明に係る他の実施形態として示したコンベヤベルトのベルト幅方向に沿う概略断面図である。
【図7】本発明に係るさらに他の実施形態として示したコンベヤベルトのベルト幅方向に沿う概略断面図である。
【図8】本発明に係る他の実施形態として示したコンベヤベルトの製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るコンベヤベルトの一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
本実施形態のコンベヤベルト1では、本体ゴム11内に、ベルト長手方向Lに延びる抗張体12と、ベルト長手方向Lに延びる補強層14と、が埋設されている。
抗張体12は、図示の例では、ベルト長手方向Lに沿って延びるスチールコード若しくは有機繊維コードとされ、ベルト幅方向Hに沿って複数配設されている。なお有機繊維コードとしては、例えばナイロン、ポリエステル若しくはアラミド等が挙げられる。また、複数の抗張体12は、本体ゴム11内において、厚さ方向の中央部にベルト幅方向Hのほぼ全域にわたって配設されている。
補強層14は、図示の例では、本体ゴム11内において抗張体12よりも上方に位置する上面側部分11aに埋設されている。なお、本体ゴム11の上下面のうち上方を向く上面に被搬送物が載置されて搬送される。
なお例えば、本体ゴム11の幅は約300mm〜3150mmとされ、本体ゴム11の厚さは約5mm〜50mmとなっている。
【0021】
そして本実施形態では、補強層14内に、図1および図2に示されるように、ランダムに配向された多数のスチール短小片14aが埋設されて層をなしている。スチール短小片14aは、補強層14内において複数個所で上下方向に交差しながらも実質上均等に分布して層をなしている。各スチール短小片14aは、例えば不織布等のように互いに絡み合ったものではなく、直線状に延びていて上下に重なり合うだけで殆ど絡み合っていない。
スチール短小片14aの長さは、例えば約10mm以上100mm以下となっている。また、スチール短小片14aの横断面形状は円形状とされ、その外径は例えば約0.1mm以上0.6mm以下、好ましくは0.3mm以上0.5mm以下となっている。
さらに補強層14の目付け密度は、例えば約100g/m以上1000g/m以下となっている。なお、補強層14の目付け密度は、1m当たりの補強層14が含有するスチール短小片14aの総重量を表している。
【0022】
次に、以上のように構成されたコンベヤベルト1の製造方法について説明する。
【0023】
この方法は、図3に示されるように、未加硫の上側本体ゴム部材21と未加硫の下側本体ゴム部材22との間に、複数の抗張体12(芯体層部材)、および補強層部材23を積層させて配置した状態で、積層方向に加圧して加熱することで加硫成形しコンベヤベルト1を製造する加硫成形工程を有している。
ここで、未加硫の上側本体ゴム部材21および未加硫の下側本体ゴム部材22はそれぞれ、例えば押出成形等の公知の方法により互いに同幅の連続した帯状に形成されるとともに、多数回ロール状に巻き取られた巻取りロール体とされていて、前述の加硫成形工程時に、巻取りロール体から裁断されることなく繰り出されて供される。
前記補強層部材23は、上側未加硫ゴムシート24と下側未加硫ゴムシート25との間に、ランダムに配向された多数のスチール短小片14aが層状に配設されて構成されている。また、この補強層部材23は、上側本体ゴム部材21および下側本体ゴム部材22よりも幅挟の連続した帯状に形成されるとともに、多数回ロール状に巻き取られた巻取りロール体とされていて、前述の加硫成形工程時に、巻取りロール体から裁断されることなく繰り出されて供される。
【0024】
ここで、補強層部材23の製造方法について説明する。
まず、補強層部材23を製造する補強層部材の製造装置について説明する。
【0025】
この装置30は、図4および図5に示されるように、床面L上に固定された前後方向に延びる固定フレーム31と、固定フレーム31の下部に回転可能に支持され前後方向に間隔をあけて配設された一対の搬送ロール32と、これらの搬送ロール32間に無端状に掛け渡された搬送ベルト33と、固定フレーム31の上部に配設され、無端状の搬送ベルト33のうち上方を向いて前方に走行する搬送部分33a上にスチール短小片14aを散布する散布手段34と、散布手段34と搬送部分33aとの間に配設されたガイド体36と、搬送部分33aにおいてガイド体36の配設位置よりも前方に位置する部分に配設された絡合手段37と、搬送部分33aにおいて絡合手段37の配設位置よりも前方に位置する部分に配設された押し潰し手段38と、搬送部分33aにおいて押し潰し手段38の配設位置よりも前方に位置する部分に配設された加圧加熱手段39と、を備えている。
【0026】
ここで、連続した帯状の上側未加硫ゴムシート24は、多数回ロール状に巻き取られた巻取りロール体46とされ、水平方向のうち前後方向に直交する幅方向に延びる軸線回りに支持体45により回転自在に支持されていて、搬送部分33aにおいて、押し潰し手段38と加圧加熱手段39との間に位置する部分に重ね合わされるように繰り出される。
一方、連続した帯状の下側未加硫ゴムシート25は、多数回ロール状に巻き取られた巻取りロール体とされて前記幅方向に延びる軸線回りに回転自在に支持されていて、搬送ベルト33の搬送部分33aにおいて、ガイド体36の配設位置よりも後方に位置する部分に重ね合わされるように繰り出される。
以上より、スチール短小片14aは、搬送部分33a上に重ね合わされた下側未加硫ゴムシート25上に散布され、上側未加硫ゴムシート24は、スチール短小片14aを介して下側未加硫ゴムシート25上に重ね合わされる。
【0027】
なお、上側未加硫ゴムシート24および下側未加硫ゴムシート25は、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)若しくはクロロプレンゴム(CR)等で形成され、厚さが例えば約0.3mm〜1.0mmとなっている。厚さが0.3mmより薄くなると、巻き取りや重ね合わせ作業中にゴムシートが切れたり、伸びたりして製造に支障をきたすおそれがあり、また、1.0mmより厚くなると補強層部材23が厚くて重くなり過ぎるおそれがある。
【0028】
散布手段34は、上下一対のフィードローラ40、41と、これらのフィードローラ40、41の前方に配設された散布ローラ43と、を備え、固定フレーム31の上端部に配設されている。
上下一対のフィードローラ40、41はそれぞれ、前記幅方向に延びる軸線回りに回転可能に支持されている。また、上下一対のフィードローラ40、41は、互いに上下方向で対向する側が前方に向かうような逆向きに前記軸線回りに回転可能に支持されており、これらのフィードローラ40、41同士の間からスチール短小片14aが前方に向けて送り出される。なお、これらのフィードローラ40、41の周速は、搬送ベルト33の走行速度と同等になっている。また、上下一対のフィードローラ40、41の外周面にはそれぞれ、多数の突起42が突設されており、これらの突起42によりスチール短小片14aが引っ掛けられて前方に送り出される。
散布ローラ43は、前記幅方向に延びる軸線回りに回転可能に支持されるとともに、その外周面に多数の突起44が突設されている。また、散布ローラ43は、後側が下方に向かう方向、つまり図示の例では反時計回りに回転可能に支持されている。なお、散布ローラ43は、上下一対のフィードローラ40、41よりも早い周速となるように前記軸線回りに回転可能に支持されている。そして、上下一対のフィードローラ40、41同士の間から前方に送り出された複数のスチール短小片14aは、互いが散布ローラ43の突起44により分離されながら、下方に叩き落されて水平方向に分散されながら落下する。
【0029】
ガイド体36は、固定フレーム31に配設され、前記幅方向に間隔をあけて配設された一対の第1板状体36aを備え、図5に示されるように、上方から下方に向かうに従い漸次幅が狭くなり、下端部は上下方向に延在している。また、ガイド体36の下端部における内幅は、下側未加硫ゴムシート25の幅より僅かに狭くなっている。さらに、ガイド体36の上端部における内幅は、上下一対のフィードローラ40、41、および散布ローラ43それぞれの幅よりも広くなっている。
このガイド体36は、散布手段34から落下したスチール短小片14aを前記幅方向の両側からガイドすることで、このスチール短小片14aが搬送ベルト33の搬送部分33a上の下側未加硫ゴムシート25から前記幅方向の外側に飛散するのを防止している。このように散布手段34から落下したスチール短小片14aは、ガイド体36にガイドされることにより、このガイド体36に跳ね返されて姿勢がランダムに変化することがあり、この場合、より均等に分散されかつ配向方向がよりランダムになる。
さらに本実施形態では、ガイド体36は、図4に示されるように、前後方向に間隔をあけて配設された一対の第2板状体36bを備え、これらの第2板状体36bにより一対の第1板状体36aにおける前後方向の開口が閉塞されている。これにより、ガイド体36は、散布手段34から搬送ベルト33の搬送部分33aに向かうに従い漸次、内部空間の横断面積が小さくなる筒状体となっている。
【0030】
絡合手段37は、搬送ベルト33の搬送部分33aを上下方向に挟む一対のローラ37a、37bとされ、各ローラ37a、37bは、固定フレーム31に配設され、前記幅方向に沿って延びる軸線回りに回転可能に支持されている。
一対のローラ37a、37bのうち、搬送部分33aの上方に位置する上側ローラ37aの外周面には複数の突起37cが突設されており、これらの突起37cと、搬送部分33aの下方に位置する下側ローラ37bの外周面と、により搬送部分33a、下側未加硫ゴムシート25およびスチール短小片14aが上下方向に挟み込まれる。
【0031】
押し潰し手段38は、搬送ベルト33の搬送部分33aを上下方向に挟む一対のローラ38a、38bとされ、各ローラ38a、38bは、固定フレーム31に配設され、前記幅方向に沿って延びる軸線回りに回転可能に支持されている。
これらのローラ38a、38bのうち、搬送部分33aの上方に位置する上側ローラ38aの外周面には、例えばローレット加工若しくはショットブラスト加工等により粗面部が形成されている。
【0032】
加圧加熱手段39は、搬送ベルト33の搬送部分33aを上下方向に挟む一対のローラ39a、39bが、前後方向に間隔をあけて2つ配設されて構成され、各ローラ39a、39bは、固定フレーム31に配設され、前記幅方向に沿って延びる軸線回りに回転可能に支持されている。
各ローラ39a、39bには加熱手段が備えられている。また、一対のローラ39a、39bにより、上側未加硫ゴムシート24、多数のスチール短小片14aおよび下側未加硫ゴムシート25が上下方向に挟み込まれ、加圧されながら加熱される。
ここで、各ローラ39a、39bの加熱温度や加圧力は、上側未加硫ゴムシート24および下側未加硫ゴムシート25の加硫は進行させないものの、これらの両ゴムシート24、25のゴムは可塑化させてスチール短小片14a同士の間の隙間に進入させることで、全てのスチール短小片14aの各外表面の全体にゴムが密着するように設定される。
各ローラ39a、39bの加熱温度は、例えば約50℃〜100℃となっている。
【0033】
以上の構成において、まず、固定フレーム31の上部に配設された供給手段35からめっきが施されたスチール短小片14aを散布手段34に供給し、スチール短小片14aを、上下一対のフィードローラ40、41に設けられた突起42に引っ掛け、複数のスチール短小片14aを同時に、これら両ローラ40、41の外周面同士の間を通して前方に送り出す。そして、両ローラ40、41を同時に通過した複数のスチール短小片14aを、散布ローラ43の突起44により互いに分離させながら、下方に叩き落して水平方向に分散させつつ落下させる。
ここで、以上の過程において、搬送ロール32を回転駆動させ搬送ベルト33の搬送部分33aを前方に走行させておき、ロール状に巻き取られた下側未加硫ゴムシート25を繰り出し、搬送部分33aにおいて、ガイド体36の配設位置よりも後方に位置する部分に重ね合わせるように供給する。
これにより、前述のように散布ローラ43を通過した多数のスチール短小片14aが下側未加硫ゴムシート25上に散布される(散布工程)。この際、多数のスチール短小片14aは、ガイド体36の第1板状体36aおよび第2板状体36bにガイドされながら落下することで、搬送部分33a上の下側未加硫ゴムシート25から脱落するのが抑制されるとともに、目付け密度のばらつきが抑えられる。
なお、前述のめっきとしては、例えばブラスめっき、ブロンズめっき、銅めっき、若しくは亜鉛めっき等が挙げられる。
【0034】
その後、下側未加硫ゴムシート25および多数のスチール短小片14aは、絡合手段37における上側ローラ37aの突起37cと下側ローラ37bの外周面とにより上下方向に挟み込まれる。この際、上側ローラ37aの突起37cが、下側未加硫ゴムシート25上のスチール短小片14aの一部を下方に向けて押し込んで変形させて互いに絡み合わせることで、スチール短小片14aが下側未加硫ゴムシート25から前記幅方向の外側に脱落するのを抑制する。
次に、下側未加硫ゴムシート25および多数のスチール短小片14aは、押し潰し手段38の一対のローラ38a、38bにより上下方向に挟み込まれ、多数のスチール短小片14aが下側未加硫ゴムシート25に押し付けられて押し潰されることにより、スチール短小片14aの下側未加硫ゴムシート25からの脱落がより一層確実に抑制される。
【0035】
その後、ロール状に巻き取られた上側未加硫ゴムシート24を繰り出し、押し潰し手段38を通過した下側未加硫ゴムシート25上に、多数のスチール短小片14aを介して重ね合わせる(重合工程)。
そして、上側未加硫ゴムシート24、下側未加硫ゴムシート25および多数のスチール短小片14aは、加圧加熱手段39の一対のローラ39a、39bにより上下方向に挟み込まれ、上側未加硫ゴムシート24と下側未加硫ゴムシート25とは、これらの両シート24、25間に多数のスチール短小片14aを介在させた状態で互いに圧接されて密着される(密着工程)。
【0036】
以上より、上側未加硫ゴムシート24および下側未加硫ゴムシート25が未加硫でかつ互いに密着された状態にある補強層部材23が形成される。
またこの補強層部材23は、連続した帯状に形成されるとともに、多数回ロール状に巻き取られた巻取りロール体とされて、前述の加硫成形工程に供される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によるコンベヤベルト1によれば、本体ゴム11内に、ランダムに配向された多数のスチール短小片14aを備える補強層14が埋設されているので、縦裂きの発生を抑えることができる。
また、補強層14が本体ゴム11内の上面側部分11aに埋設されているので、この上面側部分11aの剛性を高めることが可能になり、耐カット性を向上することができる。
さらに、補強層14内に埋設された多数のスチール短小片14aがランダムに配向されていることから、特定の方向に限定されることなく前述した縦裂きの発生の抑制や耐カット性の向上を図ることができる。
【0038】
また、スチール短小片14aの長さが上記した大きさに設定されているので、前述の作用効果を奏するコンベヤベルトを容易に形成することができる。
また、スチール短小片14aの外径が上記した大きさに設定されているので、コンベヤベルトの剛性や重量の増大を抑えて、前述の作用効果を奏功させることができる。
また、補強層14の目付け密度が上記した大きさに設定されているので、コンベヤベルトの剛性や重量の増大を抑え、しかも耐久性を低下させることなく、前述の作用効果を奏功させることができる。
【0039】
さらに、補強層部材23を形成するに際し、まず下側未加硫ゴムシート25上に多数のスチール短小片14aを散布する(ばらまく)ので、散布された多数のスチール短小片14aは、主に倒伏した状態で下側未加硫ゴムシート25上に載置されることとなり、これらのスチール短小片14aを容易にランダムに配向させることが可能になるとともに、その分布を容易に均等にすることができる。
また、多数のスチール短小片14aにめっきが施され、前記密着工程は、上側未加硫ゴムシート24と下側未加硫ゴムシート25とを加熱した状態で互いに圧接させるので、上側未加硫ゴムシート24と下側未加硫ゴムシート25と多数のスチール短小片14aとを互いに分離し難くして補強層部材23の取り扱い性を向上させることが可能になり、コンベヤベルト1を容易に製造することができる。
【0040】
さらに、コンベヤベルト1の製造時に、未加硫の上側本体ゴム部材21、未加硫の下側本体ゴム部材22、および補強層部材23がそれぞれ、巻取りロール体とされていて、各巻取りロール体から裁断されることなく繰り出されて前記加硫成形工程に供されるので、前述の作用効果を有するコンベヤベルト1を効率よく形成することができる。
【0041】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、スチール短小片14aは、長尺のスチールコードを製造する工程のうち、めっき工程後の伸線工程や撚線工程で発生する端材、あるいはタイヤを製造する工程のうち、圧延工程で発生するスチールコードの端材等を利用してもよい。この場合、これまで廃棄されていた前述の端材を利用するので、製造コストの増大を抑えることができるとともに、産業廃棄物を削減することもできる。さらにスチール短小片14aは、前記散布工程の直前にスチールコードを裁断して形成してもよい。
【0043】
また前記実施形態では、抗張体12として、ベルト長手方向Lに沿って延びるスチールコード若しくは有機繊維コードを示したが、これに代えて例えば、ナイロン、ポリエステル若しくはアラミド等からなる帆布を採用してもよい。
なおこの場合、前述の加硫成形工程時に、前記帆布の上下面に未加硫のゴムシートを配設した芯体層部材を形成し、この芯体層部材および補強層部材23を、未加硫の上側本体ゴム部材21と未加硫の下側本体ゴム部材22との間に積層させて配置し、積層方向に加圧して加熱することで加硫成形しコンベヤベルト1を製造してもよい。
【0044】
さらに前記実施形態では、補強層14を本体ゴム11内の上面側部分11aに埋設したが、これに代えて例えば、本体ゴム11内において抗張体12よりも下方に位置する下面側部分に埋設してもよい。
この場合においても、本体ゴム11内の下面側部分の剛性が高められることによって、コンベヤベルト1を無端状にして装置に組付けたときに該コンベヤベルト1に生ずる曲げ変形の中立軸が下面側にずらされることにより、前記上面側部分11aのベルト幅方向Hの圧縮変形量を増大させることが可能になり、耐カット性を向上することができる。
【0045】
また、スチール短小片14aの横断面形状は、例えば多角形状若しくは楕円形状等、適宜変更してもよい。また、スチール短小片14aは、例えば弧状若しくはS字状等の曲線状に延びてもよい。
さらに、図6に示されるように、ベルト長手方向Lに沿って多数配設されかつベルト幅方向Hに延びる緯糸13aが、経糸としての抗張体12に織り合わされてなる織物13を、本体ゴム11内に埋設したコンベヤベルト2としてもよい。
また、図7に示されるような、複数の織物13が、本体ゴム11内に積層されて埋設されたコンベヤベルト3としてもよい。
さらに、コンベヤベルト1を製造する際に、図8に示されるように、上側本体ゴム部材21および下側本体ゴム部材22をそれぞれ複数層にし、また、補強層部材23と抗張体12との間に未加硫のゴムシート26を配設してもよい。なお、図示の例では、未加硫のゴムシート26は、上側本体ゴム部材21および下側本体ゴム部材22の幅と同等になっている。
【0046】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0047】
次に検証試験について説明する。
まず、スチール短小片14aの長さ、および補強層14の目付け密度を変えず、スチール短小片14aの外径を異ならせた複数のコンベヤベルト1を製造した。
そして、各コンベヤベルト1の上面に向けて、重量が約15kgで先端が尖った錘を自然落下させ、この錘が補強層14を突き破り抗張体12に到達したときの高さを測定して耐カット性を評価した。なお、耐カット性は、補強層14を有しない従来例のコンベヤベルトで前記錘が抗張体12に到達したときの高さを100とした指数で評価した。
また、装置に各コンベヤベルト1を組付けて走行させ、蛇行の有無を目視により確認した。
結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
その結果、スチール短小片14aの外径が0.1mm以上になると耐カット性が大きく向上され、また0.6mm以下では蛇行が発生しないことが確認された。
【0050】
次に、スチール短小片14aの長さ、および外径を変えず、補強層14の目付け密度を異ならせた複数のコンベヤベルト1を製造した。
そして、装置に各コンベヤベルト1を組付けて走行させた後に、補強層14を切り取り、スチール短小片14a同士が擦れ合っているか否かを顕微鏡観察により確認し、耐久性を評価した。
また、各コンベヤベルト1について、前述と同様にして耐カット性を評価した。
ここで、耐久性の評価に際し、無端状に形成された各コンベヤベルト1を、6つのプーリにわたって巻回し、1つのプーリを通過する度に走行方向が約180度変化するように6箇所屈曲させた状態で走行させた。
結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
その結果、補強層14の目付け密度が1000g/m以下となると、スチール短小片14a同士が擦れ合っていることが確認されず、耐久性の低下が抑えられ、また100g/m以上になると耐カット性が確実に向上されることが確認された。
【0053】
次に、補強層14の目付け密度、およびスチール短小片14aの外径を変えず、スチール短小片14aの長さを異ならせた複数のコンベヤベルト1を製造し、各コンベヤベルト1について、前述と同様にして耐カット性を評価した。
結果を表2に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
その結果、スチール短小片14aの長さが10mm以上になると耐カット性が確実に向上され、また100mmを超えると、コンベヤベルト1の製造時にスチール短小片14aをランダムに配向させることが困難であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
縦裂きの発生を抑えることができるとともに、耐カット性を向上することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 コンベヤベルト
11 本体ゴム
12 抗張体
14 補強層
14a スチール短小片
21 上側本体ゴム部材
22 下側本体ゴム部材
23 補強層部材
24 上側未加硫ゴムシート
25 下側未加硫ゴムシート
L ベルト長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ゴム内にベルト長手方向に延びる抗張体が埋設されたコンベヤベルトであって、
前記本体ゴム内には、ベルト長手方向に沿って延びる補強層が埋設され、
該補強層内には、ランダムに配向された多数のスチール短小片が埋設されて層をなしていることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
請求項1記載のコンベヤベルトであって、
前記スチール短小片の長さは、10mm以上100mm以下であることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンベヤベルトであって、
前記スチール短小片の外径は、0.1mm以上0.6mm以下であることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のコンベヤベルトであって、
前記補強層の目付け密度は、100g/m以上1000g/m以下であることを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のコンベヤベルトを製造するコンベヤベルトの製造方法であって、
上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートとの間に、前記多数のスチール短小片が配設された補強層部材を形成する補強層部材形成工程と、
未加硫の上側本体ゴム部材と未加硫の下側本体ゴム部材との間に、前記抗張体を備える芯体層部材、および前記補強層部材を積層させて配置した状態で、積層方向に加圧して加熱することで加硫成形しコンベヤベルトを製造する加硫成形工程と、を備え、
前記補強層部材形成工程は、
前記下側未加硫ゴムシート上に、前記多数のスチール短小片を散布する散布工程と、
前記上側未加硫ゴムシートを、下側未加硫ゴムシート上に前記多数のスチール短小片を介して重ね合わせる重合工程と、
前記上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートとを、これらの両シート間に前記多数のスチール短小片を介在させた状態で互いに圧接させて密着させる密着工程と、を備えることを特徴とするコンベヤベルトの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のコンベヤベルトの製造方法であって、
前記多数のスチール短小片にめっきが施され、
前記密着工程は、前記上側未加硫ゴムシートと下側未加硫ゴムシートとを加熱した状態で互いに圧接させることを特徴とするコンベヤベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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