説明

コンベヤベルトとその接合方法

【課題】コンベヤベルトの接合時においてカバーゴム及び補強芯体層を容易に剥離することができるとともに、接合後の強度を十分に確保することのできるコンベヤベルトとその接合方法を提供する。
【解決手段】コンベヤベルト10の上下のカバーゴム11,12と帆布層13との間、及び、帆布層13間に、その融点が150℃以上200℃以下である熱可塑性樹脂から成る高分子層14を予め介在させておき、接合時には、上記コンベヤベルト10の端部の温度を上記熱可塑性樹脂の融点近傍の温度まで上昇させた状態で、上記上下のカバーゴム11,12と帆布層13とを剥離して切り取るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強芯体層を有するコンベヤベルトに関するもので、特に、コンベヤベルトの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム中に帆布等の補強芯体が配置されたコンベヤベルトの両端部を接合してエンドレス加工(ループ状)する方法としては、例えば、図5(a)に示すように、コンベヤベルト50の端部において、最上層の上カバーゴム51に第1補強芯体層52まで切込みを入れ、上記上カバーゴム51を剥離し、次いで、露出した第1補強芯体層52の上記切込みに対して所定距離離れた箇所に第2補強芯体層53まで切込みを入れて剥離するという作業を繰り返して、最下層の補強層である第4補強芯体層55を剥離した後、下カバーゴム56に上記第4補強芯体層55まで達する切込みを入れて上記下カバーゴム56を上記第4補強芯体層55から剥離して、当該端部を接合に必要な段差構造とするともに、上記コンベヤベルト50の他端部を、上記端部と上下反対の段差構造と成るように加工してから、図5(b)に示すように、上記階段状に加工された両端部を重ね合せ、両端の上カバーゴム51,51同士の隙間及び下カバーゴム56,56同士の隙間に埋めゴム57,58を施して、加硫一体化する方法が多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
上記剥離作業においては、カバーゴムと補強芯体層との間及び各補強芯体層間の接着力が強固なため手作業では簡単に剥離しないことから、上記切込み部の端部を掴み代とし、ウインチ等の機械装置を用いてカバーゴムもしくは補強芯体層を徐々に剥ぎ取るようにしている。
【0003】
また、図6(a)に示すように、コンベヤベルト60の製造時に、接合する部分(端部のみ)の上下のカバーゴム61,62と、補強芯体層63及びその上下面に積層された上下面を薄いゴムコーティングしたブレーカ層64との間に、加硫ゴムとの剥離が容易な帆布65を予め加硫接着により埋設しておき、接合時には、図6(b)に示すように、上記帆布65を引き剥して除去してから、上記上下のカバーゴム61,62を上記補強芯体層63から剥離する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
上記帆布65は、少なくとも片面に凹凸を持つ、オックス帆布などのポリエステル製の帆布で、上記帆布65を引き剥がした後のゴム表面は平滑なので、図6(c)に示すように、その表面を加工することなくその両端部を重ね合せ、接合ゴムシート66を施してコンベヤベルト60を加硫接着することができる。
【特許文献1】特開昭57−69139号公報
【特許文献2】特開平9−239845公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記機械装置を用いた剥離方法では、剥離のための大掛かりな装置が必要となるため時間工数がかかるだけでなく、装置のセッティングにも時間や労力がかかるといった問題点がある。また、剥離しにくいため、剥離のきっかけとなる掴み代を作りにくいという作業性の問題に加えて、剥離面に凹凸が生じたり、剥離面から帆布が露出するなど、剥離面を平滑にすることが困難であり、そのため、接合時の加硫接着でのゴム付きが不十分となり、これが接合強度の低下の原因となっていた。
また、カバーゴム61,62と補強芯体層63との間に帆布65を予め埋設する方法では、剥離作業は容易となるものの、コンベヤベルト60にはベルト自体の伸びが発生するので、実際の接合時にはどの位置が接合位置となるかが特定できない。そのため、上記帆布65をコンベヤベルト60のかなり広い範囲に埋設する必要があるだけでなく、接合時に上記帆布65が一部でもベルト本体内に残ってしまうと、これが接着不良の原因になるといった問題点があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、コンベヤベルトの接合時においてカバーゴム及び補強芯体層を容易に剥離することができるとともに、接合後の強度を十分に確保することのできるコンベヤベルトとその接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に記載の発明は、カバーゴムと、帆布もしくはコードをゴム部材で被着した補強芯体層とを積層して成るコンベヤベルトであって、上記カバーゴムと上記補強芯体層との間及び上記芯体層間に熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマーから成る高分子層を介在させたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンベヤベルトにおいて、上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーとして、その融点が150℃以上200℃以下である熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを用いたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のコンベヤベルトにおいて、上記高分子層を、当該コンベヤベルトの全周にわたって設けたものである。
また、請求項4に記載の発明は、カバーゴムと、帆布もしくはコードをゴム部材で被着した補強芯体層とを積層して成るコンベヤベルトを接合する方法であって、上記カバーゴムと上記補強芯体層との間及び上記芯体層間に熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから成る高分子層を予め介在させておき、接合時には、上記コンベヤベルトの接合部を上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーの融点近傍の温度まで上昇させて、上記カバーゴムと上記補強芯体層もしくは芯体層と芯体層とを剥離し、上記カバーゴムもしくは上記補強芯体層を切り取るようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カバーゴムと、帆布もしくはコードをゴム部材で被着した補強芯体層とを積層して成るコンベヤベルトを接合する際に、上記カバーゴムと上記補強芯体層との間及び上記芯体層間に熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから成る高分子層を予め介在させておき、接合時には、上記コンベヤベルトの接合部を上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーの融点近傍の温度まで上昇させて、上記カバーゴムと上記補強芯体層もしくは芯体層と芯体層とを剥離し、上記カバーゴムもしくは上記補強芯体層を切り取るようにしたので、カバーゴム及び補強芯体層を容易に剥離することができるとともに、接合後には上記高分子層は元に戻るため、接合したコンベヤベルトの強度を十分に確保することができる。このとき、上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーとしては、その融点が150℃以上200℃以下である熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、これにより、高分子層の厚さを均一にすることができるとともに、ゴム焼けをなくすことができる。
また、上記高分子層をコンベヤベルトの全周にわたって設けるようにすれば、接合部の位置調整を行う必要がないだけでなく、ベルト本体に残った部分も接合部分も接合後は同じ特性を示すので、接合後もコンベヤベルトの強度の均一性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本最良の形態に係るコンベヤベルト10の断面図で、同図において、11は上カバーゴム、12は下カバーゴム、13(13A〜13C)は帆布13aをトリートゴム13bで被覆して成る帆布層、14(14A〜14D)は本発明による熱可塑性樹脂から成る高分子層で、これらは上から順に、上カバーゴム11、高分子層14A、帆布層13A、高分子層14B、帆布層13B、高分子層14C、帆布層13C、高分子層14D、下カバーゴム12の順で積層されている。すなわち、高分子層がカバーゴムと帆布層との間及び隣接する帆布層間に介在されている。
上記上下のカバーゴム11,12の材質については、特に制限はないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム,スチレンブタジエンゴム,スチレン・ブタジエンゴム(SBR),ニトリル・ブタジエンゴム(NBR),エチレン・プロピレンゴム(EPR)等の合成ゴム、或いはこれらのブレンドゴム等が用いられる。
また、上記帆布層13を構成する帆布13aの材質についても、特に制限はなく、例えば、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、アラミド等の有機繊維が用いられる。
一方、高分子層14は、上下のカバーゴム11,12及び帆布層13の剥離を容易にするために設けられたもので、熱可塑性樹脂から構成することが必須条件で、特に、その融点が150℃以上200℃以下であるポリウレタンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これは、熱可塑性樹脂であっても、ポリエチレンなどのその融点が150℃未満のものを用いた場合には、コンベヤベルト10の加硫時において、上記樹脂が溶け出してしまい、均一な厚さの高分子層14を形成することが困難となる恐れがあるためである。また、ナイロンなどのその融点が200℃を超えるものを用いた場合には、周囲のゴム(上下のカバーゴム11,12や帆布層13の被覆ゴム)がゴム焼けを起こし易いので、上記高分子層14を構成する熱可塑性樹脂の融点は、150℃以上200℃以下とすることが好ましい。
なお、製造時の加硫工程での熱可塑性樹脂の流れ出しを確実に防止し、かつ、周囲のゴムへの影響を最小限に抑えるためには、上記融点を160℃〜170℃とすることが好ましい。
【0009】
次に、本発明によるコンベヤベルト10の接合方法について説明する。
まず、図2(a)に示すように、コンベヤベルト10の端部10aを、上記高分子層14A〜14Dを構成する熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマーの融点まで温めておき、最上層である上カバーゴム11に、その下層に位置する帆布層13Aの上面側まで達する切込みを入れた後、図2(b)に示すように、この切込み部よりも端部側にある上カバーゴム11を剥離する。本例のコンベヤベルト10は、剥離する上カバーゴム11と上記その下層に位置する帆布層13Aとの間に、熱可塑性樹脂から成る高分子層14Aが介在しており、かつ、この高分子層14Aは融点まで温められることにより融解して軟らかくなっているので、手作業にても、上記上カバーゴム11を上記帆布層13Aから容易に剥離して切り取ることができるとともに、上記帆布層13Aのトリートゴム13bが剥れもなく、帆布層13A表面の平滑性も確保することができる。
次いで、上記帆布層13Aをその下層に位置する帆布層13Bから、上記帆布層13Bをその下層に位置する帆布層13Cから、それぞれ、上記と同様にして剥離した後、下カバーゴム12に上記帆布層13Cまで達する切込みを入れて上記下カバーゴム12を上記帆布層13Cから剥離することにより、コンベヤベルト10の端部10aを、図3(a)に示すような、接合に必要な段差構造とする。一方、上記コンベヤベルト10の端部10bについても、上記端部10aと同様にして上下反対の段差構造と成るように加工してから、図3(b)に示すように、上記階段状に加工された両端部を重ね合せ、両端の加工部にゴムセメント15を塗布した後、上記端部10aと端部10bとを加硫一体化してコンベヤベルト10をエンドレス加工する。本発明では、上記帆布層13A〜13Cの表面を荒すことなく、上下のカバーゴム11,12及び帆布層13A〜13Cを剥離することができるとともに、剥離後にコンベヤベルト10を常温に戻せば、高分子層14A〜14Dは元の特性に戻るので、接合後もコンベヤベルトの強度の均一性を確保することができる。
【0010】
このように本最良の形態では、コンベヤベルト10の上下のカバーゴム11,12と帆布層13との間、及び、帆布層13間に、その融点が150℃以上200℃以下である熱可塑性樹脂から成る高分子層14を予め介在させておき、接合時には、上記コンベヤベルト10の端部10a(または、端部10b)の温度を上記熱可塑性樹脂の融点近傍の温度まで上昇させた状態で、上記上下のカバーゴム11,12と帆布層13とを剥離して切り取るようにしたので、手作業にても容易に剥離作業を行うことができる。また、上記熱可塑性樹脂は接合後には元の特性に戻るので、接合したコンベヤベルトの強度を十分に確保することができる。
【0011】
なお、上記最良の形態では、高分子層14(14A〜14D)を熱可塑性樹脂から構成したが、熱可塑性エラストマーから構成してもよい。なお、この場合にも、その融点が150℃以上200℃以下である、ウレタンエラストマーなどの熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、特に、製造時の加硫工程での上記エラストマーの流れ出しを確実に防止し、かつ、周囲のゴムへの影響を最小限に抑えるためには、上記融点が160℃〜170℃である熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
また、上記例では、補強芯体層として、アラミド繊維等の帆布13aをトリートゴム13bで被覆した複数の帆布層13A〜13Cを有するコンベヤベルト10について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、図4に示すような、上下のカバーゴム21,22間に、スチールコード23aをトリートゴム23bで被覆したスチールコード層23を有するコンベヤベルト20についても適用可能である。この場合には、上カバーゴム21とスチールコード層23との間、及び、上記スチールコード層23と下カバーゴム22との間に、熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマーから成る高分子層24を、それぞれ介在させるようにすれば、上記上下のカバーゴム21,22を容易にスチールコード層23から剥離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、カバーゴム及び補強芯体層を容易に剥離することができるので、コンベヤベルトの接合作業を効率よく行うことができる。また、剥離による補強芯体層の損層もないので、接合したコンベヤベルトの強度を十分に確保することができる。したがって、接合作業が容易で十分な強度を有するコンベヤベルトを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の最良の形態に係るコンベヤベルトの構成を示す断面図である。
【図2】本最良の形態に係るコンベヤベルトの接合方法を示す図である。
【図3】本最良の形態に係るコンベヤベルトの接合方法を示す図である。
【図4】本発明によるコンベヤベルトの他の構成を示す断面図である。
【図5】従来のコンベヤベルトの接合方法を示す図である。
【図6】従来のコンベヤベルトの他の接合方法を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
10,20 コンベヤベルト、11,21 上カバーゴム、
12,22 下カバーゴム、13,13A〜13C 帆布層、13a 帆布、
13b トリートゴム、14,14A〜14D,24 高分子層、15 ゴムセメント、
23 スチールコード層、23a スチールコード、23b トリートゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーゴムと、帆布もしくはコードをゴム部材で被着した補強芯体層とを積層して成るコンベヤベルトであって、上記カバーゴムと上記補強芯体層との間及び上記芯体層間に熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマーから成る高分子層を介在させたことを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーとして、その融点が150℃以上200℃以下である熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーを用いたことを特徴とする請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
上記高分子層は、当該コンベヤベルトの全周にわたって設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
カバーゴムと、帆布もしくはコードをゴム部材で被着した補強芯体層とを積層して成るコンベヤベルトを接合する際に、上記カバーゴムと上記補強芯体層との間及び上記芯体層間に熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーから成る高分子層を予め介在させておき、接合時には、上記コンベヤベルトの接合部を上記熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーの融点近傍の温度まで上昇させて、上記カバーゴムと上記補強芯体層もしくは芯体層と芯体層とを剥離し、上記カバーゴムもしくは上記補強芯体層を切り取るようにしたことを特徴とするコンベヤベルトの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−201490(P2008−201490A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36395(P2007−36395)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】