説明

コンベヤベルトとその簡易接合方法及び接合用ベルト

【課題】少ない本数の締結ボルトにてコンベヤベルト同士を接合することのできる構成のコンベヤベルトと、コンベヤベルトの接合方法を提供する。
【解決手段】コンベヤベルト10の一方の端部の上,下のカバーゴム10b,10cを切除し、これらの切除部分に互いの軸線が一致する複数のボルト通し孔12hを有するプレート12を埋設するとともに、両端部の上,下のカバーゴム11b,11cを切除し、これらの切除部分に上記プレート12と同様のボルト通し孔15hが形成されたプレート15,15が埋設された仮接合用ベルト11を準備し、2つのコンベヤベルト10同士を仮接合する際には、上記プレート12,12と上記プレート15,15とを重ね、締結ボルト13とナット14にて上記仮接合用ベルト11とコンベヤベルト10,10とをそれぞれ連結するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトとその接合方法に関するもので、特に、スチールコードなどの芯材を備えたゴム製コンベヤベルト同士を接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スチール製のコンベヤベルトをコンベヤ機体に取付ける際には、接合するスチールベルトの端部同士をボルト締めにて接合する方法が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
一方、スチールコードなどの芯材を上下からゴムで被覆したゴム製コンベヤベルトの場合には、仮接合する2つのコンベヤベルトの端部同士を重ね合せて加硫接着したり、ゴム引き帆布やゴム帆布ベルトを接手として加硫接着する方法もあるが、この場合には、接着成形型や加硫プレスなどが必要となることから実用的でない。そこで、上記スチールベルトの場合と同様に、図4に示すような、仮接合する2つのコンベヤベルト50,50の端部同士を重ね合せ、これに鋼板(以下、プレートという)51を当てて、締結ボルト52とナット53とで締結する方法や、図5(a),(b)に示すような、2つのコンベヤベルト50,50の端部同士を、ゴム帆布ベルト54を接手として用い、プレート51を介して締結ボルト52とナット53とで締結する方法が行なわれている。
また、コンベヤベルトの端部の接合予定箇所に予め剥離層を埋設しておき、コンベヤベルトの接合時には、各ベルト端部を切除して上記剥離層を除去し、この剥離層を剥離除去された部分に、先端に通し孔を有するループ部を備えた連結部材を埋め込んで固定し、この連結部材を相手側の連結部材と結合することにより、ベルト同士を連結する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭59−67655号公報
【特許文献2】特開2001−355681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ピアノワイヤ撚り線から成るスチールコードベルト50aは横強度(引き裂き強度)が弱いことから、締結ボルト52が多数必要であるだけでなく、ボルト通し孔はいずれかのスチールコードベルト50aと位置的に合致するため、ボルト通し孔を開ける時には上記スチールコードベルト50aを切除することになるので、ボルト通し孔開けに多大な労力と時間を要していた。また、プレート51とのサンドイッチ圧縮による上下のカバーゴム50b,50cのゴム面と上記締結ボルト52の剪断摩擦力は、ベルト引き裂き耐力にはほとんど寄与しないので、締結ボルトの数を多大に必要とする原因になっていた。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、少ない本数の締結ボルトにてコンベヤベルト同士を接合することのできる構成のコンベヤベルトと、このコンベヤベルトを用いたコンベヤベルトの接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、スチールコードなどの複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備えたコンベヤベルト同士を簡易接合する方法であって、2つのベルトのそれぞれの接合部分のカバーゴムを切除し、これら上下の切除部分に互いの軸線が一致するボルト通し孔を有するプレートを埋設しておき、コンベヤベルトの接合時には、上記2つのベルトを重ね合せて、上記プレート同士を締結ボルトにて締結して、コンベヤベルトの取付け時または取外し時の仮接合に供するようにしたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記構成のコンベヤベルト同士を仮接合する際に、上記ベルトの接合部分のカバーゴムを切除し、これら上下の切除部分に互いの軸線が一致するボルト通し孔を有するプレートを埋設するとともに、複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備え、ベルトの両端部のカバーゴムを切除した部分に互いの軸線が一致するボルト通し孔を有するプレートを埋設した接合用ベルトを準備し、接合する2つのベルトのプレートと上記接合用ベルトのプレートとをそれぞれ締結ボルトにて締結して、上記ベルト同士を簡易接合するようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
また、請求項3に記載の発明は、複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備えたコンベヤベルトであって、上記ベルトの一方の端部のカバーゴムを切除し、これら上下の切除部分に互いの軸線が一致するボルト通し孔を有するプレートを埋設して成るベルト仮接合部を備えたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のコンベヤベルト同士を仮接合するための接合用ベルトであって、複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備え、ベルトの両端部のカバーゴムを切除した部分に互いの軸線が一致するボルト通し孔を有するプレートを埋設して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スチールコードなどの複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備えたコンベヤベルト同士を仮接合する際に、上記コンベヤベルトの一方の端部のカバーゴムを切除し、これら上下の切除部分に互いの軸線が一致するボルト通し孔を有するプレートを埋設して成るベルト仮接合部を備えたコンベヤベルトを準備し、ベルトの仮接合時には、上記2つのベルトを重ね合せて、上記プレート同士を締結ボルトにて締結するか、もしくは、上記コンベヤベルトを、複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備え、ベルトの両端部のカバーゴムを切除した部分に互いの軸線が一致するボルト通し孔を有するプレートを埋設して成る仮接合用ベルトを用いて、接合する2つのベルトのプレートと上記仮接合用ベルトのプレートとをそれぞれ締結ボルトにて締結して、上記ベルト同士を接合するようにしたので、少ない本数の締結ボルトにてコンベヤベルト同士を容易に仮接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1(a),(b)は、本最良の形態に係るコンベヤベルトの簡易接合方法を示す図で、同図において、10,10はそれぞれが芯材であるスチールコードベルト10aとこのスチールコードベルト10aを上,下から覆うカバーゴム10b,10cとを備えたコンベヤベルト、11は上記2つのコンベヤベルト10,10の接手として用いられる仮接合用ベルトで、本例では、上記コンベヤベルト10と上記仮接合用ベルト11とをプレート12,15を介して締結ボルト13及びナット14とにより連結して2つのコンベヤベルト10,10同士を接合する。
本発明のコンベヤベルト10は、ベルトの一方の端部の上,下のカバーゴム10b,10cを切除し、これらの切除部分に互いの軸線が一致する複数のボルト通し孔12hを有するプレート12を埋設した構成となっている。
一方、仮接合用ベルト11は、上記コンベヤベルト10と同じくスチールコードベルト11aとこのスチールコードベルト11aを上,下から覆うカバーゴム11b,11cとから成り、その両端部の上,下のカバーゴム11b,11cを切除し、これらの切除部分に上記プレート12と同様のボルト通し孔15hが形成されたプレート15,15が埋設された構成となっている。なお、図1ではプレート12とカバーゴム10b,10cとの間、及び、プレート15とカバーゴム11b,11cとの間に隙間が図示されているが、これは、後述するように、接合されたコンベヤベルト10,10に引張力が作用したときの状態を示したもので、プレート12,15の埋設時に設けた余裕スペースを含んでいる。
【0009】
次に、本発明によるコンベヤベルトの簡易接合方法について説明する。
はじめに、2つのコンベヤベルト10,10の端部同士を、長さ方向の中心線が一致するように、所定の距離離隔して配置する。このとき、2つのコンベヤベルト10,10の端部表面にはそれぞれ埋設されたプレート12の表面が露出しているので、このプレート12,12に仮接合用ベルト11のプレート15,15が重なるように接合用ベルト11を上記2つのコンベヤベルト10,10上にセッティングする。これにより、プレート12のボルト通し孔12hとプレート15のボルト通し孔15hの軸線は一致するので、上記コンベヤベルト10の下側のプレート12のボルト通し孔12hから締結ボルト13を挿入し、仮接合用ベルト11の上側のボルト通し孔15hから突出する締結ボルト13にナット14を螺入することにより、上記仮接合用ベルト11とコンベヤベルト10,10とをそれぞれ連結することができる。
本例では、予め接合部のカバーゴム10b,10c及びカバーゴム11b,11cを切除しているので、プレート12,12間及びプレート15,15間にはスチールコードベルト10a,11aしかない。したがって、締結ボルト13は、図1(c)に示すように、スチールコードベルト10a(スチールコードベルト11a)を押し広げながら挿入されるので、ボルト通し孔を設けなくても、締結ボルト13を、コンベヤベルト10及び仮接合用ベルト11に通すことができる。
また、上記接合されたコンベヤベルト10,10に引張力が作用した場合でも、締結ボルト13が直接スチールコードベルト10a,11aを引き裂く作用がなく、更に、各締結ボルト13からプレート12,12及びプレート15,15に伝わる引き裂き力は、上記プレート12,12及びプレート15,15に当接する上,下のカバーゴム10b,10c及びカバーゴム11b,11cの堰止め抵抗で受け持つことができるので、締結ボルト13の本数が少なくても接合部の強度を十分に確保することができる。
【0010】
このように、本最良の形態によれば、コンベヤベルト10を、ベルトの一方の端部の上,下のカバーゴム10b,10cを切除し、これらの切除部分に互いの軸線が一致する複数のボルト通し孔12hを有するプレート12を埋設した構成とするとともに、スチールコードベルト11aとこのスチールコードベルト11aを上,下から覆うカバーゴム11b,11cとから成り、その両端部の上,下のカバーゴム11b,11cを切除し、これらの切除部分に上記プレート12と同様のボルト通し孔15hが形成されたプレート15,15が埋設された構成の仮接合用ベルト11を準備し、2つのコンベヤベルト10同士を仮接合する際には、上記プレート12,12と上記プレート15,15とを重ね、締結ボルト13とナット14にて接合用ベルト11とコンベヤベルト10,10とをそれぞれ連結するようにしたので、ボルト通し孔を設けなくても、締結ボルト13をコンベヤベルト10及び仮接合用ベルト11に容易に通すことができる。したがって、コンベヤベルト10,10を容易に接合することができる。また、締結ボルト13の本数が少なくても接合部の強度を十分に確保することができるので、接合の作業効率を大幅に向上させることができる。
【0011】
なお、上記最良の形態では、2つのコンベヤベルト10,10の端部同士を接合する仮接合用ベルト11をスチールコードベルトとしたが、カバーゴムと帆布で構成される帆布ベルトを用いてもよい。
また、上記例では、2つのコンベヤベルト10,10の端部同士を仮接合用ベルト11を用いて接合したが、図2に示すように、上記2つのコンベヤベルト10,10を重ね合せて、上記プレート12,12同士を締結ボルト13にて締結するようにしてもよい。この場合にも、コンベヤベルト10,10に引張力が作用したときに各締結ボルト13からプレート12,12に伝わる引き裂き力は、上記プレート12,12に当接する上,下のカバーゴム10b,10cの堰止め抵抗で受け持つことができるので、上記実施の形態と同様に少ない本数の締結ボルト13でも十分な強度を確保することができる。
また、本発明によるコンベヤベルト10は、図3に示すように、強固で簡便な先端掴み部としても利用することができる。具体的には、上記コンベヤベルト10の仮接合部にボルト挿入口16hを備えた把持鋼板16を取付け、この把持鋼板16にワイヤ17を取付けてこれをクリップ17kで結束しておけば、上記ワイヤ17を牽引することにより、上記コンベヤベルト10を容易に引寄せ移動させることが可能となる。
【0012】
2つのコンベヤベルトを図4に示した従来の仮接合方法と、図1に示した本発明による仮接合方法によりそれぞれ接合したときに、十分な引張強度を確保するために必要なプレート枚数と締付ボルト本数及び接手ベルトに必要な芯体強度を算出して比較した。
なお、計算に使用したコンベヤベルトのベルト幅は2400mm、上,下のカバーゴムの厚さは12mmと6mmで、その時の必要引張強度は、安全率を150%として、300kNとした。また、接手ベルトの幅は80cmとし、プレートは6.0mmt×50mmwのSS鋼板を用い、締結ボルトはM16φのものを使用した。更に、プレート埋設部のカバーゴムのプレート引張り堰止め抵抗力を5kN/cmとした。
従来例では、片端当り、プレート数を8枚×2=16枚、プレート1枚当たりのボルト本数を8本、総ボルト本数を128本としたとき、接手ベルトの必要芯体強度としては600N/mm以上必要である。これに対して、本発明による接合方法では、片端当り、必要プレート数を1枚×4=4枚、プレート1枚当たりのボルト本数を6本(総ボルト本数も24本)としたとき、接手ベルトの必要芯体強度としては500N/mm以上であればよいことが分かった。これにより、本発明による仮接合方法を用いれば、従来例の約1/4の少ないプレート枚数、約1/5のボルト本数で、十分な仮接合強度を得ることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0013】
このように、本発明によれば、少ない本数の締結ボルトにてコンベヤベルト同士を容易に仮接合することができるので、接合部品点数を大幅に低減できるとともに、仮接合作業の効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の最良の形態に係るコンベヤベルトの簡易接合方法を示す図である。
【図2】本発明によるコンベヤベルトの簡易接合方法の他の例を示す図である。
【図3】本発明によるコンベヤベルトの利用方法の一例を示す図である。
【図4】従来のコンベヤベルトの仮接合方法を示す図である。
【図5】従来のコンベヤベルトの簡易接合方法の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
10 コンベヤベルト、10a,11a スチールコードベルト、
10b,10c,11b,11c カバーゴム、11 仮接合用ベルト、
12 プレート、12h ボルト通し孔、13 締結ボルト、14 ナット、
15 プレート、15h ボルト通し孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備えたコンベヤベルト同士を簡易接合する方法であって、2つのベルトのそれぞれの接合部分のカバーゴムを切除し、これら上下の切除部分に互いの軸線が一致するボルト貫通孔を有するプレートを埋設しておき、ベルトの接合時には、上記2つのベルトを重ね合せて、上記プレート同士を締結ボルトにて締結して、コンベヤベルトの取付け時または取外し時の仮接合に供するようにしたことを特徴とするコンベヤベルトの簡易接合方法。
【請求項2】
複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備えたコンベヤベルト同士を仮接合する方法であって、上記ベルトの接合部分のカバーゴムを切除し、これら上下の切除部分に互いの軸線が一致するボルト貫通孔を有するプレートを埋設するとともに、複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備え、ベルトの両端部のカバーゴムを切除した部分に互いの軸線が一致するボルト貫通孔を有するプレートを埋設した接合用ベルトを準備し、接合する2つのベルトのプレートと上記接合用ベルトのプレートとをそれぞれ締結ボルトにて締結して、上記ベルト同士を接合するようにしたことを特徴とするコンベヤベルトの簡易接合方法。
【請求項3】
複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備えたベルトの一方の端部のカバーゴムを切除し、これら上下の切除部分に互いの軸線が一致するボルト貫通孔を有するプレートを埋設して成るベルト仮接合部を備えたことを特徴とするコンベヤベルト。
【請求項4】
請求項3に記載のコンベヤベルト同士を仮接合するための接合用ベルトであって、複数本の芯材とこの芯材を上下から被覆するカバーゴムとを備え、ベルトの両端部のカバーゴムを切除した部分に互いの軸線が一致するボルト貫通孔を有するプレートを埋設して成ることを特徴とする接合用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−276905(P2007−276905A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102232(P2006−102232)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】