説明

コンベヤベルトの消費電力測定用試験機

【課題】 コンベヤベルトの消費電力を誤差なく測定可能にするコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置を提供する。
【解決手段】 コンベヤベルトにおけるエンドレスベルトの表面に、周方向に対して分断する多数の低摩擦シ−トを配置し、この低摩擦シ−トのそれぞれの前端部をエンドレスベルトの表面に接合させると共に、後端部を隣接する低摩擦シ−トの前端部に重なるように配置し、エンドレスベルトの上面に別の低摩擦物質からなる中間シ−トを介在させて定荷重物を積載した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコンベヤベルトの消費電力測定用試験機に関し、さらに詳しくは、コンベヤベルトの消費電力を誤差なく測定可能にするコンベヤベルトの消費電力測定用試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤラインにおけるエンドレスベルトを駆動するための消費電力は、ベルトの種類や駆動ロ−ラ等の周辺設備、さらにはベルトに積載する運搬物の重量の変動等の影響を受けて大きく変動することが知られている。このような観点から、従来、駆動時の消費電力を低減するためのコンベヤベルトに関する提案が多数なされている。(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
コンベヤベルトの消費電力が周辺設備や積載重量等によりどのような影響を受けるかを実験室レベルで測定する方法として、従来、図5に例示するように、プーリ間隔の狭い2つの反対方向に傾斜するトラフ型のコンベヤCを組み合わせて、図示しない搬送物を積載して、矢印方向に循環して搬送させながら、積載重量やベルト速度などの搬送環境を変化させて、駆動側のプ−リPの消費電力の変動を測定することが行なわれてきた。
【0004】
ところが、この方法では、搬送物が飛散したり落下して徐々に重量が目減りしたり、水分が含まれた搬送物や吸水性の搬送物の場合には、測定の途中で重量が変動してしまうため、消費電力の測定結果に信頼性が欠如するという問題があった。さらに、これら2つのコンベヤ間で搬送物が落下する際の衝撃力によって消費電力の測定結果に誤差が生じ、この僅かな消費電力の変化を見逃してしまうことがあった。
【特許文献1】特開2004−18752号公報
【特許文献2】特開2004−142926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、上述するような従来の問題点を解消するもので、コンベヤベルトの消費電力を誤差なく測定可能にするコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのこの発明のコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置は、一対のプ−リ間に巻き付けられたエンドレスベルトの上面に搬送物を積載し、該エンドレスベルトの駆動時における消費電力を測定するコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置において、前記エンドレスベルトの表面に、該エンドレスベルトの周方向に分断する多数の低摩擦シ−トを配置し、該低摩擦シ−トのそれぞれの前端部を前記エンドレスベルトの表面に接合させると共に、後端部を隣接する低摩擦シ−トの前端部に重なるように配置し、前記エンドレスベルトの上面に別の低摩擦物質からなる中間シ−トを介在させて定荷重物を積載したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、コンベヤベルトにおけるエンドレスベルトと定荷重物との間には、エンドレスベルトの表面に接合された多数の低摩擦シ−トとその上面に配置された低摩擦物質からなる中間シ−トが介在することから、コンベヤベルトの駆動に際して、エンドレスベルトと定荷重物との間には殆ど摩擦力が作用することがないので、エンドレスベルトの上面には常に一定の荷重が積載された状態で消費電力を測定することができ、積載荷重の変動に伴う消費電力の誤差が生ずることがない。
【0008】
さらに、中間シ−トの一方の端部に牽引力測定装置を連結しておき、中間シ−トに作用する牽引力を測定し、これを動力値に変換して差し引くことにより、消費電力測定値の補正を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1はこの発明のコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置(以下、単に試験装置という)の概要を、エンドレスベルトを除外した状態で示す平面図で、図2は図1の試験装置にエンドレスベルトを装着した状態で示す側面図である。
【0011】
図1及び図2において、この発明の試験装置1は、一方(図では右方)を駆動プ−リ2とし、他方を従動プーリ3とする2つのプ−リ2,3間に巻き付けられたエンドレスベルト4からなり、駆動プ−リ2の回転軸にはトルクメ−タ5を介して電動モ−タMが連結されている。これにより、駆動プ−リ2を駆動するための消費電力を測定するようになっている。図中、R1は搬送側のキャリアローラを示し、R2はリターン側のリターンローラを示している。そして、2つのプ−リ2,3間は、この実施形態では、約5mの間隔に形成されている。
【0012】
エンドレスベルト4の表面には、図3に示すように、エンドレスベルト4の周方向に対して分断する多数の低摩擦シ−ト・・、6、6、・・が配置され、この低摩擦シ−ト6のそれぞれの前端部6aがエンドレスベルト4の表面に接合されると共に、後端部6bが隣接する低摩擦シ−ト6の前端部6aに重なるように配置されている。さらに、エンドレスベルト4の上面には、上記とは別の低摩擦物質からなる中間シ−ト7を介在して定荷重物8が積載されている。ここで、低摩擦シート6及び中間シート7の材料としては、テトラフルオロエチレンなどの摩擦係数の低い材料が使用される。なお、図中の矢印はエンドレスベルト4の進行方向を示している。
【0013】
これにより、コンベヤベルトの駆動に際して、エンドレスベルト4と定荷重物8との間には摩擦係数の低い材料からなる低摩擦シート6及び中間シート7が介在しているので、エンドレスベルト4と定荷重物8との間には殆ど摩擦力が作用することがなく、エンドレスベルトの上面には常に一定の荷重が積載された状態でコンベヤベルトの駆動が行われ、定荷重物8による負荷を受けた状態での消費電力を測定することができ、積載荷重の変動に伴う消費電力の誤差が生ずることがない。
【0014】
上述する低摩擦シ−ト6は、その厚さを0.01〜0.02mmとする極薄の板状体からなり、その幅をエンドレスベルト4と同幅にすると共に、周方向の長さがプ−リ径に応じてプ−リ2,3の半円周長より長く、この実施形態では約30cmに形成されている。このように低摩擦シ−ト6を周方向に分断する複数の形態に形成し、その前端部6aをエンドレスベルト4の表面に接合させると共に、後端部6bを隣接する低摩擦シ−ト6の前端部6aに重なるように配置したので、プーリ2、3の外径が小さい場合であっても、プーリ2、3の周囲を回動する際に、低摩擦シ−ト6には無理な力が作用しない。したがって、低摩擦シ−ト6は劣化することなく、コンベヤベルトの駆動時における消費電力の測定値に影響を及ぼすことがない。
【0015】
この発明による試験装置1では、上述する定荷重物8の重量を種々変化させた場合の消費電力値を測定するほか、ベルトの速度やプーリ等の周辺機器が消費電力値にどのような影響を及ぼすかを調査するために使用される。このように、各種の要因をパラメ−タ−として、ベルトを駆動するための消費電力の変動状況を把握することによって、コンベヤラインの消費電力の低減に向けた研究がなされる。
【0016】
この発明による試験装置1において、低摩擦シート6及び中間シート7には摩擦係数の低い材料が使用されるが、これらの摩擦係数を完全にゼロにすることは不可能なので、低摩擦シート6と中間シート7との間には滑り摩擦によって僅かとはいえ抵抗力が発生することになる。したがって、この発明では、図4に示すように、中間シ−ト7と定荷重物8との間に、少なくとも1枚(図では1枚)の新たな低摩擦物質からなる上面シ−ト9を介在させると共に、中間シ−ト7の何れか一方の端部7a又は7bに、この中間シ−ト7に作用する牽引力を測定するための牽引力測定装置(図示せず)を連結して、中間シ−ト7に作用する牽引力を測定して動力値に変換し、これを差し引くことにより、消費電力の測定値を補正するようにするとよい。
【0017】
これにより、中間シ−ト7が上面シ−ト9の下面を滑動して、中間シ−ト7に作用する牽引力を牽引力測定装置が正確に把握し、コンベヤベルトの駆動時における消費電力を一層正確に測定することができる。
【0018】
この場合においても、上面シ−ト9にはテトラフルオロエチレンなどの摩擦係数の低い材料が使用される。また、図3に示す実施形態と同様に、上面シ−ト9の一方の端部9a又は9bには、図示しない牽引力測定装置を連結しておき、上面シ−ト9に作用する牽引力を測定して動力値に変換し、これを差し引くことにより、消費電力の測定値を補正するようにするとよい。これにより、コンベヤベルトの駆動時における消費電力をさらに正確に測定することができる。
【0019】
なお、上述する実施形態では、試験装置1を水平に設置した場合について説明したが、この発明による試験装置1ではエンドレスベルト4の搬送面を傾斜させた場合についても消費電力の測定が行なわれる。このような場合には、定荷重物8が中間シート7又は上面シート9から滑り落ちることのないように、定荷重物8の端部にロープ等を連結しておき、定荷重物8の中間シート7又は上面シート9からの滑落を防止するようにするとよい。
【0020】
上述するように、この発明の試験装置は、エンドレスベルトと定荷重物との間に、エンドレスベルトの表面に接合された多数の低摩擦シ−トとその上面に配置された低摩擦物質からなる中間シ−トと、さらに必要に応じて低摩擦物質からなる上面シートとを介在させることにより、常に一定の荷重が積載された状態で、消費電力の測定を誤差なく測定可能にするもので、荷重を一定にした上でのコンベヤラインにおいて、各種の要因をパラメータとした消費電力を把握することができることから、コンベヤラインの消費電力の低減に向けた研究に幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明のコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置の概要を、エンドレスベルトを除外した状態で示す平面図である。
【図2】図1のコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置にエンドレスベルトを装着した状態で示す側面図である。
【図3】この発明の実施形態によるコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置の要部を示す側面図である。
【図4】この発明の他の実施形態によるコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置の要部を示す側面図である。
【図5】従来のコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 試験装置
2 駆動プーリ
3 従動プーリ
4 エンドレスベルト
5 トルクメータ
6 低摩擦シート
7 中間シート
8 定荷重物
9 上面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のプ−リ間に巻き付けられたエンドレスベルトの上面に搬送物を積載し、該エンドレスベルトの駆動時における消費電力を測定するコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置において、
前記エンドレスベルトの表面に、該エンドレスベルトの周方向に分断する多数の低摩擦シ−トを配置し、該低摩擦シ−トのそれぞれの前端部を前記エンドレスベルトの表面に接合させると共に、後端部を隣接する低摩擦シ−トの前端部に重なるように配置し、前記エンドレスベルトの上面に別の低摩擦物質からなる中間シ−トを介在させて定荷重物を積載したコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置。
【請求項2】
前記中間シ−トと前記定荷重物との間に、少なくとも1枚の新たな低摩擦物質からなる上面シ−トを介在させると共に、前記中間シ−トの一方の端部に該中間シ−トに作用する牽引力を測定するための牽引力測定装置を連結し、該牽引力測定装置により測定された牽引力を動力値に変換して、消費電力測定値の補正を行なう請求項1に記載のコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置。
【請求項3】
前記上面シ−トの一方の端部に該上面シ−トに作用する牽引力を測定するための牽引力測定装置を連結し、該牽引力測定装置により測定された牽引力を動力値に変換して、消費電力測定値の補正を行なう請求項2に記載のコンベヤベルトの消費電力測定用試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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