説明

コンベヤベルトの製造装置

【課題】製造コストを増加することなく、搬送ローラにより搬送される心体の蛇行を抑制しつつ、複数のコンベヤベルトを同時並行に製造するコンベヤベルトの製造装置を提供する。
【解決手段】搬送ローラ6を用いて並行に搬送される複数の心体2のそれぞれに対して、搬送方向と交差する方向に凸状の湾曲面を接圧させる蛇行抑制ローラ9を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベヤベルトの製造装置に関し、更に詳しくは、広幅の原反を幅方向に切断して形成した複数の心体をローラで搬送する際に蛇行しないようにしたコンベヤベルトの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にコンベヤベルトの製造においては、製造効率を向上するために、いわゆる多本取りと呼ばれる、複数のコンベヤベルトを同時並行に製造することが行われている。この製造方法では、補強布が埋設された広幅の帯状の未加硫ゴムからなる原反を長手方向に沿って裁断して複数の心体を形成し、それぞれの心体の両側端部(耳部)に保護ゴムを取り付け、それら複数の心体の全体に上下のカバーゴムを被覆し連続加硫した後に、耳部中央で裁断することによりコンベヤベルトを製造する。
【0003】
しかし、上記の製造方法に用いられるコンベヤベルトの製造装置では、複数の心体を同一の搬送ローラにより並行して搬送するため、搬送中に心体が蛇行しやすいという問題があった。このように心体が蛇行すると、隣接する心体との間隔が変動して耳部に保護ゴムを正常に取り付けることができなくなったり、耳部が他と接触・損傷して外観が損なわれたりするため、コンベヤベルトの品質が低下してしまう。
【0004】
このような問題を解決するには、特許文献1に示すように、複数の心体ごとに搬送ローラを設置すればよいが、製造装置が大型化すると共に、保守管理の負担が増加して製造コストの増加を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−126137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、製造コストを増加することなく、搬送ローラにより搬送される心体の蛇行を抑制しつつ、複数のコンベヤベルトを同時並行に製造するコンベヤベルトの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明のコンベヤベルトの製造装置は、補強布が埋設された帯状の未加硫ゴムを長手方向に沿って裁断して複数の心体を形成し、該複数の心体を搬送ローラを用いて並行して搬送するコンベヤベルトの製造装置において、前記それぞれの心体に対して搬送方向と交差する方向に凸状の湾曲面を接圧させる蛇行抑制ローラを設置したことを特徴とするものである。
【0008】
上記蛇行抑制ローラの凸状の湾曲面の最大高さHは、その湾曲面の幅Lの3〜5%とすることが望ましい。
【0009】
また、蛇行抑制ローラを回転軸の長手方向に移動可能に固定すると共に、蛇行抑制ローラを回転軸に沿って分離可能に構成することが望ましい。更に、蛇行抑制ローラの湾曲面にフッ素樹脂を被覆するのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンベヤベルトの製造装置によれば、搬送ローラを用いて並行に搬送される複数の心体のそれぞれに対して、搬送方向と交差する方向に凸状の湾曲面を接圧させる蛇行抑制ローラを設置したので、心体に接圧した蛇行抑制ローラの周速が軸方向中心になるほど大きくなって、その軸方向中心へ向かう力が心体に加わるため、心体の蛇行を抑制することができる。また、従来の設備に蛇行抑制ローラを追加するだけであるため、製造コストの増加を招くことはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態からなるコンベヤベルトの製造装置の構成例である。
【図2】フェスツーナーのガイドローラ付近の拡大図である。
【図3】蛇行抑制ローラの正面図である。
【図4】図3に示すX−X矢視の側面図である。
【図5】蛇行抑制ローラの断面図である。
【図6】蛇行抑制ローラの組立図であって、(a)は正面を、(b)は(a)に示すY−Y矢視の断面を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態からなるコンベヤベルトの製造装置の構成例を示す。
【0014】
このコンベヤベルトの製造装置(以下、単に「製造装置」という。)は、広幅の原反1から複数の心体2を形成する裁断ローラ3と、それら複数の心体2を一時的に滞留させるフェスツーナー4と、複数の心体2間の間隔を調整して保護ゴム及びカバーゴムの被覆工程(図示せず)に心体2を供給するシュート部5と、カバーゴムが被覆された心体2を連続的に加硫してコンベヤベルトを製造する加硫装置6を有している。原反1及び心体2は、複数の搬送ローラ7を用いて搬送されるようになっている。
【0015】
原反1は、平織りの帆布などの補強材が埋設された未加硫のゴムシートから構成され、裁断ローラ3により長手方向に沿って裁断されて複数の心体2を形成し、図2に示すような状態で、フェスツーナー4手前のガイドローラ8に供給される。例えば、1500〜1800mm幅の原反1からは、300〜600mm幅の心体2が3〜5本形成される。
【0016】
このような製造装置において、フェスツーナー4とシュート部5との間の搬送経路には、蛇行抑制ローラ9が配置されている。
【0017】
図3及び図4に、蛇行抑制ローラの例を示す。蛇行抑制ローラ9は、表面に凸状の湾曲面10を有し、搬送方向と略直角に延びる回転軸11に複数の心体2ごとに固定されている。これら蛇行抑制ローラ9は、回転軸11を支持する支柱12を付勢するなどして、その湾曲面10が心体2に接圧している。
【0018】
このような蛇行抑制ローラ9を設置したことにより、心体2に接圧した蛇行抑制ローラ9の周速が軸方向中心になるほど大きくなるので、その軸方向中心へ向かう力が心体2に加わるため、心体2の蛇行を抑制することができる。
【0019】
蛇行抑制ローラ9の形状については、凸状の湾曲面10が周方向に連続する回転楕円体とするのがよく、図5に示すように、湾曲面10の最大高さHは湾曲面10の幅Lの3〜5%となるようにするのが望ましい。湾曲面10をこのような形状とすることで、蛇行抑制ローラ9の軸方向中心へ向かう心体2の移動がスムーズになる。なお、湾曲面10の幅Lは対応する心体2の幅Wよりもわずかに小さくするのがよい。
【0020】
それぞれの蛇行抑制ローラ9は、回転軸11の長手方向に移動可能に固定することが望ましい。そのようにすることで、心体2の搬送位置がローラ長手方向に変更された場合にも容易に対応することができる。また、蛇行抑制ローラ9は、交換が容易になるように、図6に示すように、回転軸11に沿って分離可能な構造とすることが望ましい。なお、図6に示す例では2つの等しい部分9a、9bに分離可能となっているが、これに限られるものではない。分離可能とする仕組みは、特に限定するものではないが、取り外し可能なネジ等を用いた機械的な結合や、磁石の磁力による結合などを利用するものなどが例示される。
【0021】
更に、蛇行抑制ローラ9の湾曲面10の表面には、心体2との粘着を防ぐため、フッ素樹脂を被覆することが望ましい。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレンが例示される。
【符号の説明】
【0022】
1 原反
2 心体
3 裁断ローラ
4 フェスツーナ
5 シュート部
6 加硫装置
7 搬送ローラ
8 ガイドローラ
9 蛇行抑制ローラ
10 湾曲面
11 回転軸
12 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強布が埋設された帯状の未加硫ゴムを長手方向に沿って裁断して複数の心体を形成し、該複数の心体を搬送ローラを用いて並行して搬送するコンベヤベルトの製造装置において、
前記それぞれの心体に対して搬送方向と交差する方向に凸状の湾曲面を接圧させる蛇行抑制ローラを設置したコンベヤベルトの製造装置。
【請求項2】
前記凸状の湾曲面の最大高さHが、該湾曲面の幅Lの3〜5%である請求項1に記載のコンベヤベルトの製造装置。
【請求項3】
前記蛇行抑制ローラを回転軸の長手方向に移動可能に固定した請求項1又は2に記載のコンベヤベルトの製造装置。
【請求項4】
前記蛇行抑制ローラを回転軸に沿って分離可能に構成した請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルトの製造装置。
【請求項5】
前記蛇行抑制ローラの湾曲面にフッ素樹脂を被覆した請求項1〜4のいずれかに記載のコンベヤベルトの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−173753(P2010−173753A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15845(P2009−15845)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】