説明

コンベヤベルト及びコンベヤベルト磨耗検知システム

【課題】カバーゴムにより形成された搬送面の摩耗量を、作業ロスの発生や
検知コストの上昇を招くことなく確実に検知することができるコンベヤベルト及びコンベヤベルト磨耗検知システムを提供する。
【解決手段】金属部材からなるベルト芯体11を内包し搬送面Cを形成するカバーゴム12と、搬送面Cから所定距離を有してカバーゴム12に埋設されたRFIDタグ13と、ベルト芯体11とRFIDタグ13の間に配置され、リーダからの送信電波を受信したRFIDタグ13が発生させる磁界とベルト芯体11が干渉するのを阻止する遮断シート14とを有する。遮断シート14は、RFIDタグ13が発生させる磁界がベルト芯体を貫通するのを阻止する透磁率の大きな磁性体により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンベヤベルト及びコンベヤベルト磨耗検知システムに関し、特に、搬送物を載置する搬送面の磨耗を検出することができるコンベヤベルト及びコンベヤベルト磨耗検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、石炭等の搬送物を連続的に搬送するコンベヤベルトが知られている。このコンベヤベルトは、無端リング状に形成されて駆動部と従動部の間に掛け渡されており、一定方向に走行することにより、コンベヤ外周側面(ベルト表面)である搬送面に載置された搬送物を走行方向へと連続的に送り出す。
コンベヤベルトの搬送面は、直接、搬送物に接していることから、使用時間が長くなるに連れ、載置される搬送物との摩擦によって摩耗が進行し、ついには使用できなくなってしまう。このため、コンベヤベルトの搬送面の摩耗量を検知し監視することは極めて重要であり、コンベヤベルトの搬送面の摩耗量を検知する様々な方法が試みられている。
【0003】
ベルト芯体とベルト芯体を覆うカバーゴムにより形成されたコンベヤベルトの搬送面の摩耗量を検知する方法として、従来、カバーゴムのベルト芯体接触部にカバーゴムとは異なった色、例えば白色のゴムを配置し、白色のゴムの露出により検知する方法、超音波を用いてカバーゴムの厚さを計測する方法、カバーゴムにトランスポンダを厚さ方向に沿う階段状に埋設し、磨耗に応じてトランスポンダが順番に消失することにより、検出したトランスポンダの個数でカバーゴムの厚みを検出する方法(例えば、特許文献1参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許第19525326号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコンベヤベルトの搬送面の摩耗量を検知する方法の場合、白色のゴムの露出による方法においては、白色のゴムを目で見て確認する必要があるが汚れで見え難くなってしまうことがあるため、確実な検知ができない虞があり、超音波を用いて厚さを計測する方法においては、計測時にベルトコンベヤを止めて一箇所ずつ人手で測定する必要があるため、作業ロスが発生する上に検知コストの上昇が避けられず、トランスポンダを埋設する方法においては、トランスポンダをカバーゴムに埋設してしまうので通信感度の低下が避けられないばかりか場合によっては通信できないことも起こり得るため、確実な検知ができない虞がある。
【0006】
この発明の目的は、カバーゴムにより形成された搬送面の摩耗量を、作業ロスの発生や検知コストの上昇を招くことなく確実に検知することができるコンベヤベルト及びコンベヤベルト磨耗検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明に係るコンベヤベルトは、金属部材からなるベルト芯体を内包し搬送面を形成するカバーゴムと、前記カバーゴムに前記搬送面から所定距離を有して埋設されたRFID(Radio Frequency IDentification)タグと、前記RFIDタグと前記ベルト芯体との間に配置された、RFIDタグ読み取り手段からの送信電波を受信した前記RFIDタグが発生させる磁界と前記ベルト芯体が干渉するのを阻止する阻止手段とを有している。
【0008】
また、この発明の他の態様に係るコンベヤベルトは、前記阻止手段を、前記RFIDタグが発生させる磁界が前記ベルト芯体を貫通するのを阻止する透磁率の大きな磁性体により形成している。
また、この発明の他の態様に係るコンベヤベルトは、複数のスチールコードを並べてゴム部材により被覆し平板状に形成されている前記ベルト芯体を有している。
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係るコンベヤベルト磨耗検知システムは、この発明に係るコンベヤベルトと、前記RFIDタグ読み取り手段と、前記RFIDタグ読み取り手段から、前記RFIDタグの検知・読み取りによって出力された検知信号が入力することにより、前記カバーゴムが磨耗限界に近づいたことを知らせる警報を発する警報発生部を備えた制御部とを有している。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るコンベヤベルトによれば、金属部材からなるベルト芯体を内包し搬送面を形成するカバーゴムに、搬送面から所定距離を有して埋設されたRFIDタグと、ベルト芯体との間には、RFIDタグ読み取り手段からの送信電波を受信したRFIDタグが発生させる磁界とベルト芯体が干渉するのを阻止する阻止手段が配置されているので、カバーゴムにより形成された搬送面の摩耗量を、作業ロスの発生や検知コストの上昇を招くことなく確実に検知することができる。
【0011】
また、この発明の他の態様に係るコンベヤベルトによれば、阻止手段が透磁率の大きな磁性体により形成されているので、RFIDタグが発生させる磁界がベルト芯体を貫通するのを阻止することができる。
また、この発明の他の態様に係るコンベヤベルトによれば、複数のスチールコードを並べてゴム部材により被覆し平板状に形成されているベルト芯体においても対応することができる。
【0012】
この発明に係るコンベヤベルト磨耗検知システムによれば、RFIDタグ読み取り手段から、RFIDタグの検知・読み取りによって出力された検知信号が入力することにより、制御部の警報発生部によってカバーゴムが磨耗限界に近づいたことを知らせる警報が発せられるので、コンベヤベルトの使用寿命が近づいたことを知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施の形態に係るコンベヤベルトの構成を模式的に示すベルト幅方向に沿う断面図である。
【図2】コンベヤベルトにおける搬送面の摩耗量の検出状態を示し、(a)はコンベヤベルト未磨耗時の説明図、(b)はコンベヤベルト磨耗時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係るコンベヤベルトの構成を模式的に示すベルト幅方向に沿う断面図である。図1に示すように、コンベヤベルト10は、ベルト芯体11、ベルト芯体11を包み込むように覆うカバーゴム12、カバーゴム12に埋設されたRFID(Radio Frequency IDentification)タグ13、及び、カバーゴム12とRFIDタグ13との間に配置された遮断シート(阻止手段)14を有している。
【0015】
このコンベヤベルト10は、無端リング状に形成されて駆動部(図示しない)と従動部(図示しない)の間に掛け渡されており、駆動部に駆動されて一定方向に走行することにより、コンベア外周側面(ベルト表面)である搬送面Cに載置された、例えば、石炭等の搬送物をベルト走行方向へと連続的に送り出し搬送する。
ベルト芯体11は、例えば、スチールコード等の金属部材を用いて形成されている。スチールコードからなるベルト芯体11は、複数のスチールコードを略等間隔で並べてゴム部材により被覆することにより、平板状に形成されており、各スチールコードが、コード長手方向をベルト走行方向に沿わせ、且つ、カバーゴム12内部の略同一深さに位置するように、カバーゴム12に埋設配置されている。
【0016】
カバーゴム12は、内包したベルト芯体11に対し、搬送面Cを形成するベルト表面側の厚みの方が、搬送面Cを形成しないベルト裏面側の厚みより厚く形成されており、カバーゴム12のベルト表面側のベルト芯体11との接触位置には、RFIDタグ13が埋め込まれている。
【0017】
RFIDタグ13は、平面視矩形状に形成されており、RFIDタグ13に対するリーダ/ライタ(RFIDタグ読み取り手段)からの送信電波を受信する受信面を搬送面C側に向けると共に、ベルト幅方向に沿って、例えば、50mm〜100mmの距離で略等間隔に一列に並べて、配置されている。このRFIDタグ13として、例えば、ICタグが用いられ、RFIDタグ13は、例えば、エチレンプロビレンゴム(EPDM)、アクリルニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム部材や、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂部材により被覆しても良い。
【0018】
なお、配置するRFIDタグ13は、一列に限らずベルト走行方向に複数列配置しても良く、この場合、RFIDタグ13の一つが故障したとしても、故障したRFIDタグ13に対応する他の列のRFIDタグ13を検知対象とすることができる。
そして、RFIDタグ13と、このRFIDタグ13を読み取るリーダ/ライタの交信距離は、RFIDタグ13を覆うカバーゴム12の厚みが磨耗限界に近づき磨耗限界迄所定の厚みの警報距離になったとき、搬送面Cの上方に搬送面Cから所定距離離間して位置させたリーダ/ライタがRFIDタグ13を検知し読み取ることができる距離に設定されている。
【0019】
つまり、カバーゴム12が、搬送面C未磨耗状態等の十分な厚みを有するときは、リーダ/ライタからの送信電波がRFIDタグ13に届かず、リーダ/ライタとRFIDタグ13の間での交信は不可能であるが、搬送使用に伴うカバーゴム12の磨耗により、RFIDタグ13を覆うカバーゴム12の厚みが磨耗限界に近づき警報距離になったときは、リーダ/ライタは、RFIDタグ13との間での交信が可能になってRFIDタグ13を検知し読み取ることができる。
【0020】
遮断シート14は、RFIDタグ13が発生させる磁界がベルト芯体11を貫通するのを阻止する透磁率の大きな磁性体を用いてシート状に形成されており、ベルト芯体11とRFIDタグ13の間に配置されて、リーダ/ライタからの送信電波を受信したRFIDタグ13が発生させる磁界がベルト芯体11と干渉するのを阻止している。
これは、リーダやライタから発せられた交流磁界が金属面を貫通する際、金属面に渦電流を発生させるが、この渦電流は交流磁界を打ち消す方向の「反磁界」を発生するため、透磁率の大きな磁性体からなる遮断シート14を金属面(ベルト芯体11)とRFIDタグ13の間に介在させることにより、磁界が金属面を貫通しないようにするためである。
【0021】
この遮断シート14は、RFIDタグ13に対して、リーダ/ライタからの送信電波を受信したRFIDタグ13が発生させる磁界がベルト芯体11と干渉するのを阻止することができる形状及び大きさを有していれば良く、RFIDタグ13の大きさが、例えば、15mm×40mmであった場合、例えば、50mm×50mmの大きさの矩形状に形成される。なお、RFIDタグ13一個毎に対応して複数の遮断シート14を設ける他、配置したRFIDタグ13全てに対応する大きさの一枚の遮断シート14を設けても良い。
【0022】
次に、コンベヤベルト10における搬送面Cの摩耗量の検出について説明する。
図2は、コンベヤベルトにおける搬送面の摩耗量の検出状態を示し、(a)はコンベヤベルト未磨耗時の説明図、(b)はコンベヤベルト磨耗時の説明図である。
図2に示すように、コンベヤベルト10におけるカバーゴム12の摩耗量を検出する場合、RFIDタグ13を読み取るリーダ(或いは、リーダ/ライタ)15を、搬送面Cから所定距離離間させた搬送面C上方に、カバーゴム12に埋設したRFIDタグ13の全てを検知し読み取ることができるように、RFIDタグ13の埋設位置及び受信面に対応させて、ベルト幅方向に複数個配置する。
【0023】
このリーダ15は、摩耗量を検出時、搬送面Cからコンベヤベルト10を走行させたままRFIDタグ13を検知可能な所定距離(検知距離)離間させた搬送面C上方に位置するように、自動配置機構(図示しない)により自動的に配置されるが、手動により配置しても良い。
各リーダ15は、制御部16に接続されており、制御部16には、表示部16aと共に警告ランプや警報ブザー等の警報手段(図示しない)が設けられている。
【0024】
そして、リーダ15によるRFIDタグ13の検知を開始するが、例えば、コンベアベルト新品時等の搬送面C未磨耗状態では、十分な厚みを有するカバーゴム12により、搬送面Cから検知距離離間させたリーダ15とRFIDタグ13の間での交信が不可能なので、リーダ15によるRFIDタグ13の検知・読み取りができないため、コンベアベルト10は、使用可能状態にあると判断する。
【0025】
一方、長期間のコンベアベルト使用等によりカバーゴム12の磨耗が進んで、RFIDタグ13を覆うカバーゴム12が薄くなり警報距離の厚みになっていた場合、搬送面Cから検知距離離間させたリーダ15とRFIDタグ13の間での交信が可能になるので、交信が可能になったRFIDタグ13a(図2(b)参照)を、そのRFIDタグ13aに対応するリーダ15a(図2(b)参照)が検知し読み取ることができる。
【0026】
なお、リーダ15によるRFIDタグ13の検知に際し、リーダ15からRFIDタグ13へ電波が送信されるが、このとき、RFIDタグ13とベルト芯体11との間には遮断シート14が配置されているので、リーダ15からの送信電波を受信したRFIDタグ13が発生させる磁界とベルト芯体11が干渉するのを阻止することができるので、通信機能の低下をもたらさず、通信不能になることもない。
【0027】
リーダ15によるRFIDタグ13の検知・読み取りができると、その時点で、リーダ15から制御部16へ検知信号が出力され、制御部16は、表示部16aに警報標示、例えば、「Warning」の文字を表示させると共に、警報手段を作動させる。このとき、制御部16は、搬送面Cが部分的に磨耗することもあるので、一つでもRFIDタグ13の検知・読み取りができた時点で、警報標示を表示させ警報手段を作動させる。
【0028】
つまり、制御部16は、リーダ15から、RFIDタグ13の検知・読み取りによって出力された検知信号が入力することにより、カバーゴム12が磨耗限界に近づいたことを知らせる警報を発する警報発生部を備えており、この制御部16と、コンベヤベルト10と、RFIDタグ13を読み取るリーダ(或いは、リーダ/ライタ)15とにより、コンベヤベルト磨耗検知システムが構成される。コンベヤベルト磨耗検知システムにより、コンベヤベルト10が磨耗してカバーゴム12が薄くなったときに、RFIDタグ13からの信号を受信して警報を発することができるので、コンベヤベルト10を用いたベルトコンベヤ搬送システムを運用・管理している管理者に、コンベヤベルト10の使用寿命が近づいたことを知らせることができる。
【0029】
これにより、コンベヤベルト10におけるカバーゴム12の摩耗量が磨耗限界に近づいたこと、即ち、コンベヤベルト10が使用寿命に近づいたことを、作業ロスの発生や検知コストの上昇を招くことなく確実に検知することができる。
つまり、磨耗によるコンベヤベルトの寿命を、コンベヤベルトの走行を停止することなく自動的に監視することができるので、コンベヤベルトの寿命点検にかかる工数を削減することができ、また、RFIDタグ13の配置も、例えば、階段状等、特別な配置にする必要がないので、容易にできる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明によれば、金属部材からなるベルト芯体を内包し搬送面を形成するカバーゴムに、搬送面から所定距離を有して埋設されたRFIDタグと、ベルト芯体との間には、RFIDタグ読み取り手段からの送信電波を受信したRFIDタグが発生させる磁界とベルト芯体が干渉するのを阻止する阻止手段が配置されており、カバーゴムにより形成された搬送面の摩耗量を、作業ロスの発生や検知コストの上昇を招くことなく確実に検知することができるので、例えば、石炭等の搬送物を載置する搬送面の磨耗を検出することができるコンベヤベルトとして最適である。また、ベルトコンベヤ搬送システムを運用・管理している管理者に、コンベヤベルトの使用寿命が近づいたことを知らせることができるので、ベルトコンベヤ搬送システムとして最適である。
【符号の説明】
【0031】
10 コンベヤベルト
11 ベルト芯体
12 カバーゴム
13 RFIDタグ
14 遮断シート
15 リーダ
16 制御部
16a 表示部
C 搬送面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材からなるベルト芯体を内包し搬送面を形成するカバーゴムと、
前記搬送面から所定距離を有して前記カバーゴムに埋設されたRFID(Radio Frequency IDentification)タグと、
前記ベルト芯体と前記RFIDタグの間に配置され、RFIDタグ読み取り手段からの送信電波を受信した前記RFIDタグが発生させる磁界と前記ベルト芯体が干渉するのを阻止する阻止手段と
を有するコンベヤベルト。
【請求項2】
前記阻止手段は、前記RFIDタグが発生させる磁界が前記ベルト芯体を貫通するのを阻止する透磁率の大きな磁性体により形成されている請求項1に記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記ベルト芯体は、複数のスチールコードを並べてゴム部材により被覆し平板状に形成されている請求項1または2に記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のコンベヤベルトと、
前記RFIDタグ読み取り手段と、
前記RFIDタグ読み取り手段から、前記RFIDタグの検知・読み取りによって出力された検知信号が入力することにより、前記カバーゴムが磨耗限界に近づいたことを知らせる警報を発する警報発生部を備えた制御部と
を有するコンベヤベルト磨耗検知システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−162276(P2011−162276A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23360(P2010−23360)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】