説明

コンベヤベルト用コートゴム組成物

【課題】帆布とカバーゴムとを接着させて構成させるコンベヤベルトの端末部同士を接合させてエンドレスベルトを作製するに際し、カバーゴムと帆布との間および/または帆布相互間の接着に用いられるコートゴム形成材料として、その接着力を適度に低下させることによりエンドレス作業を容易なものとし、しかしながら炭酸カルシウム増量によって剥離力を低下させた場合と比べて、カバーゴムと帆布間または帆布相互間の接着耐久性を改善せしめたコンベヤベルト用コートゴム組成物を提供する
【解決手段】ジエン系ゴムにカーボンブラックおよび炭酸カルシウムを充填剤として配合したゴム組成物において、ジエン系ゴム82.5〜52.5質量%および再生ゴム中のゴム分17.5〜47.5質量%よりなるブレンドゴムが用いられ、ブレンドゴム100質量部当り10〜85質量部の炭酸カルシウムが用いられたコンベヤベルト用コートゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルト用コートゴム組成物に関する。さらに詳しくは、エンドレスコンベヤベルトのカバーゴムと帆布との間および/または帆布相互間の接着に用いられるコートゴム形成材料等として好適に用いられるコンベヤベルト用コートゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エンドレス状のコンベヤベルトは、ヘッドプーリやテールプーリの部分での屈曲のくり返しにより、接着が不十分であるとカバーゴムの端末部がめくり上がり、エンドレス接合部分で剥離するという現象がみられ、特に上面カバーゴムの厚さが厚い場合には剥離発生の問題が頻繁に発生する。カバーゴム端末部の剥離が芯体帆布に迄達すると、特に芯体がスチールコードの場合には、腐食によりコンベヤベルトが切断する場合がある。
【0003】
そのため、カバーゴムで芯体帆布を挟んで積層したベルト本体を、その端末部で接合させてエンドレス状に構成するコンベヤベルトの接合構造において、ベルト本体のそれぞれの端末部の上面カバーゴムを、芯体帆布から外側に向かって階段状に切除して接合面を形成し、ベルト本体のそれぞれの端末部を突き合わせた状態で接合する接合方法がとられている。
【特許文献1】実用新案第2562069号公報
【特許文献2】特開2000−344318号公報
【0004】
ところで、コンベヤベルトを構成する帆布とカバーゴムとを接着させるために、カバーゴムと帆布との間または帆布相互間にコートゴム形成材料が用いられている。あるいは、これらの間の両方にコートゴム形成材料が用いられている。コートゴムと帆布との間の接着性が良好な場合には、コンベヤベルトの耐久性はすぐれている一方、コンベヤベルトのエンドレス作業において、芯体である帆布を出すための剥離作業が困難となる場合が多い。また、帆布相互間についても同様のことがいえる。易エンドレス作業性のため、コートゴム形成材料中に含有させる炭酸カルシウムの量を増量させるなどの手法がとられてはいるが、これは耐久性の悪化を招くといった問題がみられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、帆布とカバーゴムとを接着させて構成させるコンベヤベルトの端末部同士を接合させてエンドレスベルトを作製するに際し、カバーゴムと帆布との間および/または帆布相互間の接着に用いられるコートゴム形成材料として、その接着力を適度に低下させることによりエンドレス作業を容易なものとし、しかしながら炭酸カルシウム増量によって剥離力を低下させた場合と比べて、カバーゴムと帆布間または帆布相互間の接着耐久性を改善せしめたコンベヤベルト用コートゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の目的は、ジエン系ゴムにカーボンブラックおよび炭酸カルシウムを充填剤として配合したゴム組成物において、ジエン系ゴム82.5〜52.5質量%および再生ゴム中のゴム分17.5〜47.5質量%よりなるブレンドゴムが用いられ、ブレンドゴム100質量部当り10〜85質量部の炭酸カルシウムが用いられたコンベヤベルト用コートゴム組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコンベヤベルト用コートゴム組成物を、コンベヤベルトのカバーゴムと帆布との間、帆布相互間またはこれらの間の両方向けのコートゴム形成材料として補強層形成のために用いられた場合には、その間の接着力が適度に低下し、剥離を伴うエンドレス作業を容易なものとする。しかも、その間の接着耐久性は確保されており、長期間にわたりエンドレスコンベヤベルトとして安定して走行させることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ジエン系ゴムとしては、再生ゴムとのブレンドゴム中82.5〜52.5質量%、好ましくは80〜60質量%を占める割合のジエン系ゴムが用いられる。ジエン系ゴムは、いずれもゴムとして20〜60質量%、好ましくは45〜57質量%の天然ゴムおよび35〜10質量%、好ましくは20〜13質量%のSBRよりなり、その合計量がブレンドゴム中82.5〜52.5質量%となる割合で用いられる。ジエン系ゴムがこれ以上の割合で用いられると、フレキシング試験における耐久性にはすぐれるが、対帆布接着試験における剥離力が大きくなり、エンドレス作業が容易ではなくなる。また、ジエン系ゴムがこれ以下の割合で用いられあるいは天然ゴムおよびSBRの使用割合がこの範囲外にあると、対帆布接着性の剥離力は小さくなるものの、フレキシング試験における耐久性に劣るようになる。なお、SBRは、スチレン含量23.5%の油展グレード(乳化重合SBR)など油展量37.5phrの油展SBRとしても用いられる。
【0009】
これらのジエン系ゴムとブレンドされて用いられる再生ゴムは、カーボン分、オイル分等を含有する再生ゴム中のゴム分としてジエン系ゴムとのブレンドゴム中17.5〜47.5質量%、好ましくは20〜40質量%を占める割合で用いられる。再生ゴムのブレンド割合がこれよりも少ないと、フレキシング試験における耐久性は増加するものの、対帆布接着力が大となり、剥離作業が難くなる。なお、剥離力を低下させるために、規定量以上の炭酸カルシウムを用いると、フレキシング試験における耐久性の低下を免れない。
【0010】
再生ゴムとしては、JIS K6313(1999)に規定される下記各種再生ゴムの少くとも一種が用いられ、好ましくは天然ゴム主体の再生ゴム(ゴム分50質量%)、例えばタイヤ再生ゴム(A級)が用いられ、これ以外にも天然ゴム主体の再生ゴムを任意に用いることができる。
種類 略号 材料
チューブ再生ゴム
天然ゴム AN 天然ゴムを主とするタイヤ用チューブのゴム
ブチルゴム AI ブチルゴムを主とするタイヤ用チューブのゴム
タイヤ再生ゴム
A級 BT 大型自動車タイヤのゴムまたは同程度のもの
B級 BP 乗用車タイヤのゴムまたは同程度のもの
その他の再生ゴム
A級 C1 自動車タイヤ、チューブ以外のゴム
B級 C2 自動車タイヤ、チューブ以外のゴム
注) 再生ゴムに含まれている原料ゴムの同定は、JIS K6230、K6231に規定する 方法による
【0011】
その品質についてもJISで規定されており、再生ゴムは均質で粗粒を含まず、かつ金属片、木片、土砂、繊維等の異物混入は痕跡以下であり、ゴムに混用しまたは単独で用いてもゴム製品の製造材料として適切なものでなければならず、密度、ムーニー粘度ML1+4(100℃)、灰分、アセトン抽出物、引張試験(引張強さ、伸び)、生ゴム混用試験(引張強さの保有率)などについても、それぞれ再生ゴムの種類に応じて規定されている。
【0012】
このような再生ゴムを所定割合でブレンドさせたジエン系ゴムには、カーボンブラックおよび炭酸カルシウムが充填剤として配合されるが、かかるゴム組成物において、炭酸カルシウムはブレンドゴム100質量部当り10〜85質量部、好ましくは50〜70質量部の割合で用いられる。炭酸カルシウムの配合割合がこれよりも少ないと、所望の剥離力の低下がみられず、易エンドレス作業性を得ることができず、一方これ以上の割合で用いられると、コンベヤベルトの耐久性の悪化が避けられない。
【0013】
カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、GRF等のカーボンブラックが、ブレンドゴム100質量部当り好ましくは30〜80質量部、さらに好ましくは50〜70質量部の割合で用いられる。カーボンブラックの配合は、コンベヤベルト用コートゴム組成物から形成されるコートゴムに適度な機械的強度を付与する。
【0014】
なお、下記特許文献3には、SBR 25〜40質量%、鉱油15〜40質量%およびカーボンブラック33〜47質量%よりなるゴム組成物、いわゆるコールドSBRオイルブラックマスターバッチ1800シリーズであるゴム組成物100質量部に対しゴムまたは再生ゴムを100質量部以下、ならびに前記ゴム組成物とゴムまたは再生ゴムとの合算量100質量部に対して比重2.5以上の無機物質(例えば、炭酸カルシウム)100〜600質量部と微粉状石炭10〜100質量部を配合した柔軟性ゴム組成物が記載されているが、その目的とするところは低周波減衰性能を付与することにあって、炭酸カルシウム等と共に微粉状石炭の配合を必須要件としているばかりではなく、無機物質の配合割合も100〜600質量部と著しく多く用いられていて、このような組成物をコンベヤベルトのコートゴム形成材料として用いた場合には、コンベヤベルトの耐久性は著しく悪化する。
【特許文献3】特開平4−180943号公報
【0015】
本発明のコンベヤベルト用コートゴム組成物は、コートゴム形成材料として、コンベヤベルトのカバーゴムと帆布との間または帆布相互間の接着に用いられる。あるいは、これらの間の両方にも接着のために用いられる。帆布は、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、アラミド等の有機繊維を帆布状に織成し、芯体補強層として使用される。
【0016】
コンベヤベルトを熱加硫によりエンドレス接合する場合には、ベルト端末部において所定の寸法で、その両面をコートゴム形成材料でコーティングした補強層と上面および下面のカバーゴムとを切り取り加工し、ジョイントに必要な段差構造を形成させる。この加工作業において、カバーゴムや補強層を剥ぎ取る作業が行われ、カバーゴムの厚さだけあるいは1枚または複数枚の補強層だけに切り込みを入れ、これをつかみ代として剥ぎ取り作業が行われ、このようにして形成された段差構造を利用して両端末部の接合エンドレス化が行われる。
【0017】
その場合、カバーゴムおよび補強層よりなるコンベヤベルトを作製するに際し、本発明のコンベヤベルト用コートゴム組成物を補強層コートゴム形成材料として、コンベヤベルトのカバーゴムと帆布との間または帆布相互間の接着、あるいはこれらの間の両方に接着のために用いた場合には、その間の接着力を適度に低下させ、剥離を伴うエンドレス作業を容易なものとし、しかもその間の接着耐久性は確保されており、長期間にわたりエンドレスコンベヤベルトとして安定に走行させることを可能とさせる。
【0018】
コンベヤベルト用コートゴム組成物のカバーゴムと帆布との間または帆布相互間への適用は、カレンダロールでコンベヤベルト用コートゴム組成物を帆布の両面と圧着させてシート状補強層とすることによって行われ、このシート状補強層を少くとも1層以上積層し、その上下にそれぞれ上面および下面カバーゴムを積層することによってコンベヤベルトが作製される。
【実施例】
【0019】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0020】
実施例1
天然ゴム(RSS#3) 25質量部
油展SBR(日本ゼオン製品Nipol 1712;37.5phr油展) 41.25 〃
(SBR分) (30 〃 )
タイヤ再生ゴムA級(村岡ゴム工業製品タイヤリク紫線) 90 〃
(再生ゴム分) (45 〃 )
GPFカーボンブラック 60 〃
炭酸カルシウム 60 〃
酸化亜鉛 3 〃
ステアリン酸 2 〃
アロマオイル(三共油化工業製品A-OMIX) 30 〃
イオウ 2.6 〃
加硫促進剤CZ(大内新興化学工業製品) 1 〃
以上の各成分をバンバリーミキサ等で混練し、コンベヤベルト用コートゴム組成物を調製した。
【0021】
得られたコンベヤベルト用コートゴム組成物を用い、次の各項目の測定を行った。
常態物性:この組成物を150℃、30分間プレス加硫した加硫物について、JIS K6251 -2004に準拠して引張強さおよび伸びを、JIS K6253に準拠して硬さを測 定
対ポリエステル帆布接着性
剥離力:JIS K6256-1:2006「布との剥離強さ」に準拠して測定
フレキシング試験:コンベヤベルトから25mm幅のサンプルを採取し、32mm径の プーリにかけ、45kgfの張力をかけた状態で屈曲試験を行 ったときに、カバーゴム-コートゴム間、コートゴム層内 およびコートゴム-帆布間のいずれかに剥離が発生する迄 の回数を測定
【0022】
実施例2〜3、比較例1〜5
実施例1において、ブレンドゴムを形成する天然ゴム量、油展SBR量およびタイヤ再生ゴム量(部は質量部)が、それぞれ下記表に示されるように変更して用いられた。なお、比較例2および4においては、炭酸カルシウム量がそれぞれ90質量部に変更して用いられた。下記表には、各実施例および比較例における測定結果も併記されている。

実施例 比較例
1 2 3 1 2 3 4 5
〔ブレンドゴム組成〕
天然ゴム (部) 25 55 55 55 55 − 55 55
油展SBR (部) 41.25 34.38 20.63 41.25 41.25 41.25 34.38 −
(SBR分) (部) (30) (25) (15) (30) (30) (30) (25) −
タイヤ再生ゴム (部) 90 40 60 30 30 140 40 90
(再生ゴム分) (部) (45) (20) (30) (15) (15) (70) (20) (45)
〔測定結果〕
常態物性
引張強さ (MPa) 7.5 9.9 8.7 9.8 8.8 6.1 9.4 7.2
伸び (%) 354 452 426 537 537 289 467 293
硬さ (−) 62 60 64 58 61 66 63 69
対帆布接着性
剥離力 (N/mm) 4.6 6.2 5.4 7.0 6.0 4.2 6.2 4.4
フレキシング試験
耐久回数 (×104回) 65 >100 73 >100 40 23 40 27
注1) 対帆布接着性の剥離力は、7.0N/mm未満のものがエンドレス作業性に すぐれている
注2) フレキシング試験における耐久回数は600,000回以上では剥離などが 発生せず、耐久性にすぐれている

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムにカーボンブラックおよび炭酸カルシウムを充填剤として配合したゴム組成物において、ジエン系ゴム82.5〜52.5質量%および再生ゴム中のゴム分17.5〜47.5質量%よりなるブレンドゴムが用いられ、ブレンドゴム100質量部当り10〜85質量部の炭酸カルシウムが用いられたコンベヤベルト用コートゴム組成物。
【請求項2】
ジエン系ゴムが20〜60質量%の天然ゴムおよび35〜10質量%のSBRよりなり、その合計量がブレンドゴム中82.5〜52.5質量%である請求項1記載のコンベヤベルト用コートゴム組成物。
【請求項3】
再生ゴムが天然ゴム主体の再生ゴムである請求項1記載のコンベヤベルト用コートゴム組成物。
【請求項4】
天然ゴム主体の再生ゴムがJIS K6313(1999)に規定された再生ゴムである請求項3記載のコンベヤベルト用コートゴム組成物。
【請求項5】
コンベヤベルトのカバーゴムと帆布との間および/または帆布相互間のコートゴム形成材料として用いられる請求項1記載のコンベヤベルト用コートゴム組成物。
【請求項6】
請求項5記載のコンベヤベルト用コートゴム組成物が、上面カバーゴム層、シート状補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトにおいて、該組成物を帆布の両面に圧着させてシート状補強層を形成させる際の補強層コートゴム形成材料として用いられたコンベヤベルト。
【請求項7】
ベルト本体をその端末部同士で接合させたエンドレスベルトとして用いられる請求項6記載のコンベヤベルト。

【公開番号】特開2009−40815(P2009−40815A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204853(P2007−204853)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】