説明

コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルト

【課題】硬度、破断強度、破断伸び、引裂き強さ等の基本物性を維持し、消費電力の低減を十分に図ることができるコンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルトの提供。
【解決手段】ジエン系ゴムおよびシリカを含有するコンベヤベルト用ゴム組成物であって、
前記シリカの窒素吸着比表面積が、80〜300m2/gであり、
前記シリカの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して15〜60質量部であり、
カーボンブラックを含有しないコンベヤベルト用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトは、資材等の輸送によく用いられているが、輸送量の増大、輸送効率の向上等により、大型化および高強力化が要請され、近年には、全長が数kmにも及ぶものも登場してきている。
このため、設備コスト、消費電力が膨らんでおり、低コストおよび低消費電力のベルトコンべヤシステムが求められており、特に、ベルトを構成するゴム特性の改良により、ベルトコンべヤの低コスト化および低消費電力化が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「駆動プーリーと遊動プーリー間に巻き掛けされて走行する物品の搬送システムに供されるコンベアベルトにあって、コンベアベルトの前記プーリーに接触するベルト内面ゴムの物性ロスファクタ−(tanδ)及び動的弾性率(E′)を、夫々0.04≦tanδ≦0.12、E′≧20kgf/cm2、としたことを特徴とするコンベアベルト。」および「駆動プーリーと遊動プーリー間に巻き掛けされて走行する物品の搬送システムに供されるコンベアベルトにあって、コンベアベルトの内面ゴムを、天然ゴム40〜100重量部、BRゴム60〜0重量部からなるポリマーに対して、カーボンブラックを20〜55重量部配合したことを特徴とするコンベアベルト。」が記載されている。
【0004】
また、本出願人により、「ゴム成分100質量部に対し、以下に示すコロイダル特性を持つカーボンブラックを30〜65質量部含有するコンベヤベルト用ゴム組成物。
1)窒素吸着比表面積(N2SA)が80(m2/g)以下
2)ヨウ素吸着量(IA)が70(mg/g)以下
3)ジブチルフタレート(DBP)吸油量が100(cm3/100g)以上」や、「周波数10Hz、動歪み2%、20℃における損失係数tanδが、0.120超0.200以下であるコンベヤベルト用ゴム組成物。」などが提案されている(特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコンベヤベルトは、tanδ値を小さくして低消費電力化を目的としたものであるが、tanδ値を小さくしすぎると破断強度(TB)および破断伸び(EB)も低下し、引裂き強さおよび耐疲労性に劣る場合があるため、コンベヤベルトの走行時にカバーゴム等の表面破壊が進行し、コンベヤベルトの表面故障を引き起こし、稼動が安定しない問題があった。
また、特許文献2に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトは、エネルギーロス指数(ΔH)が高くなるため、ベルト稼動ラインの相違(例えば、ラインの勾配や曲がり等)によって、消費電力の低減が十分ではない場合があった。
【0006】
このような問題を解決するために、本出願人により、「天然ゴム(NR)およびポリブタジエンゴム(BR)からなるゴム成分と、カーボンブラックと、シリカと、シランカップリング剤と、ジエチレングリコールとを含有し、
前記ゴム成分中の天然ゴムとポリブタジエンゴムとの量比(NR/BR)が、80/20〜25/75であり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して15〜35質量部であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して5〜25質量部であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部であり、
前記ジエチレングリコールの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜4.5質量部である、コンベヤベルト用ゴム組成物。」などが提案されている(特許文献3参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−139523号公報
【特許文献2】特開2004−18752号公報
【特許文献3】国際公開第2008/007733号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いたコンベヤベルトは、損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)が小さく、消費電力の低減が十分に図れるものの、使用する充填剤(特に、カーボンブラック)によっては引裂き強さに劣る場合があるため、硬く先端の尖った運搬物が搭載される際の衝撃によってはコンベヤベルトのカバーゴム等の表面が破壊したり、エンドレス加工時のカバーゴム層を剥がす際にゴムが引裂かれたりする可能性があることを本発明者は明らかにした。
【0009】
そこで、本発明は、硬度、破断強度、破断伸び、引裂き強さ等の基本物性を維持し、消費電力の低減を十分に図ることができるコンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、窒素吸着比表面積(N2SA)が80〜300m2/gのシリカの含有量を特定量とし、カーボンブラックを使用する場合であってもその含有量を特定量以下とすることにより、得られるゴム組成物を用いて裏面表面を形成するコンベヤベルトが硬度、破断強度、破断伸び、引裂き強さ等の基本物性を維持し、消費電力の低減を十分に図ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記(1)〜(5)を提供する。
【0011】
(1)ジエン系ゴムおよびシリカを含有するコンベヤベルト用ゴム組成物であって、
上記シリカの窒素吸着比表面積が、80〜300m2/gであり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して15〜60質量部であり、
カーボンブラックを含有しないコンベヤベルト用ゴム組成物。
【0012】
(2)ジエン系ゴム、シリカおよびカーボンブラックを含有するコンベヤベルト用ゴム組成物であって、
上記シリカの窒素吸着比表面積が、80〜300m2/gであり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して15〜60質量部であり、
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、20〜60m2/gであり、
上記カーボンブラックの含有量が、上記シリカおよび上記カーボンブラックの合計質量に対して35質量%以下であるコンベヤベルト用ゴム組成物。
【0013】
(3)上記ジエン系ゴムが、天然ゴム(NR)およびポリブタジエンゴム(BR)からなり、
上記天然ゴムと上記ポリブタジエンゴムとの量比(NR/BR)が、90/10〜25/75である上記(1)または(2)に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【0014】
(4)更に、シランカップリング剤を含有し、
上記シランカップリング剤の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【0015】
(5)上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、
上記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0016】
以下に説明するように、本発明によれば、硬度、破断強度、破断伸び、引裂き強さ等の基本物性を維持し、消費電力の低減を十分に図ることができるコンベヤベルトを提供することができるため有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係るコンベヤベルト用ゴム組成物(以下、「本発明の第1ゴム組成物」ともいう。)は、ジエン系ゴムおよびシリカを含有するコンベヤベルト用ゴム組成物であって、
上記シリカの窒素吸着比表面積が、80〜300m2/gであり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して15〜60質量部であり、
カーボンブラックを含有しないコンベヤベルト用ゴム組成物である。
次に、本発明の第1ゴム組成物の各成分について詳述する。
【0018】
<ジエン系ゴム>
本発明の第1ゴム組成物に含有するジエン系ゴムとしては、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明においては、これらのジエン系ゴムのうち、天然ゴム(NR)およびポリブタジエンゴム(BR)を併用するのが好ましい。
また、天然ゴムとポリブタジエンゴムとの量比(NR/BR)が、90/10〜25/75であるのが好ましく、85/15〜50/50であるのがより好ましく、80/20〜60/40であるのが更に好ましい。
NRおよびBRの含有割合が上述の範囲であると、得られる本発明の第1ゴム組成物の加硫後の破断強度、引裂き強さがより向上し、コンベヤベルトとしての基本物性を良好に維持することができる。また、得られる本発明の第1ゴム組成物の加硫後の後述するエネルギーロス指数(ΔH)も良好な範囲となるため、消費電力の低減をより十分に図ることができる。
【0020】
また、本発明においては、BRは、重量平均分子量が40万以上であるのが好ましく、45万以上であるのがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、得られる本発明の第1ゴム組成物の加硫後の破断強度および引裂き強さが更に向上し、耐摩耗性も良好となる。
【0021】
更に、本発明においては、BRは、末端変性ポリブタジエンゴムであるのが好ましい。
末端変性ポリブタジエンゴムは、末端が変性されたBRであれば特に限定されない。また、BRの末端変性方法としては、例えば、変性剤を使用してBRの末端(活性末端)を変性する方法を用いることができる。
このような変性剤としては、具体的には、例えば、四塩化スズ、四臭化スズなどのハロゲン化スズ;トリブチルスズクロライドなどのハロゲン化有機スズ化合物;四塩化ケイ素、クロロトリエチルシランなどのケイ素化合物;フェニルイソシアネートなどのイソシアネート基含有化合物;N−メチルピロリドン(NMP)などのアミド化合物;ラクタム化合物;尿素化合物;イソシアヌル酸誘導体;等が挙げられる。
【0022】
このような末端変性ポリブタジエンゴムを用いることにより、得られる本発明の第1ゴム組成物の加硫後の後述する損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)がいずれも良好な範囲となるため、消費電力の低減をより十分に図ることができる。これは、変性した末端部分が充填剤と結合し、ポリマー末端におけるエネルギーロスが低減するためであると考えられる。
【0023】
重量平均分子量が40万以上である末端変性ポリブタジエンとしては市販品を用いることができる。
具体的には、例えば、日本ゼオン社製のNipol BR1250H(重量平均分子量:57万、NMP変性)等が挙げられる。
【0024】
<シリカ>
上記シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、無水微粉ケイ酸、含水微粉ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、このようなシリカのうち、窒素吸着比表面積(N2SA)が80〜300m2/g、好ましくは100〜250m2/g、より好ましくは125〜225m2/gのものを用いる。
ここで、窒素吸着比表面積は、シリカがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面への窒素吸着量をJIS K6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」に従い測定した値である。
【0025】
また、本発明においては、このようなシリカとして、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が150〜300cm3/100gのものを用いるのが好ましく、200〜300cm3/100gのものを用いるのがより好ましい。
ここで、ジブチルフタレート吸油量は、シリカがゴム分子を内蔵できるストラクチャーの代用特性であり、JIS K6217−4:2001「第4部:DBP吸収量の求め方」に従い、アブソープトメーターで測定した値である。この値が上記範囲であると、得られる本発明の第1ゴム組成物の加硫後の後述する損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)がいずれもより良好な範囲となるため、消費電力の低減をより十分に図ることができる。
【0026】
このようなシリカとしては、市販品を用いることができる。
具体的には、含水微粉ケイ酸として、ニップシールAQ(日本シリカ工業社製)、トクシールGU(トクヤマ社製)、Zeosil 1165MP(Rhodia Silica korea社製)、Zeosil 115GR(Rhodia Silica korea社製)等が例示される。
【0027】
本発明においては、このようなシリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜60質量部であり、16〜35質量部であるのが好ましく、17〜25質量部であるのがより好ましい。
上記シリカの含有量が上述の範囲であると、得られる本発明の第1ゴム組成物の加硫後の硬度、破断強度、破断伸び、引裂き強さが良好となり、コンベヤベルトとしての基本物性を良好に維持することができ、後述する損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)もいずれも良好な範囲となるため、消費電力の低減を十分に図ることができる。
これは、窒素吸着比表面積が80〜300m2/gの範囲という上記シリカによる補強効果と、その補強効果による25%伸び時における引張応力の向上のためであると考えられる。
【0028】
本発明の第1ゴム組成物はカーボンブラックは含有しないものであるが、一般的なコンベヤベルトが黒系統の色をしている理由から、以下に示す本発明の第2の態様においては、主に着色する観点からカーボンブラックを含有していてもよい。
【0029】
本発明の第2の態様に係るコンベヤベルト用ゴム組成物(以下、「本発明の第2ゴム組成物」ともいう。)は、ジエン系ゴム、シリカおよびカーボンブラックを含有するコンベヤベルト用ゴム組成物であって、
上記シリカの窒素吸着比表面積が、80〜300m2/gであり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して15〜60質量部であり、
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、20〜60m2/gであり、
上記カーボンブラックの含有量が、上記シリカおよび上記カーボンブラックの合計質量に対して35質量%以下であるコンベヤベルト用ゴム組成物である。
次に、本発明の第2ゴム組成物の各成分について詳述する。なお、ジエン系ゴムおよびシリカについては本発明の第1の態様で用いたものと同様である。
【0030】
(カーボンブラック)
上記カーボンブラックは、特に限定されないが、着色のみならず、得られる本発明の第2ゴム組成物の加硫後の後述する損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)をいずれもより良好な範囲とする観点から、窒素吸着比表面積(N2SA)が20〜60m2/gのものを用いるのが好ましい。
具体的には、GPF(General Purpose Furnace)を含むものであるのが好ましく、以下に示すその他のカーボンブラックを含むものであってもよい。
【0031】
その他のカーボンブラックとしては、具体的には、例えば、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
【0032】
このようなカーボンブラックとしては、市販品を用いることができる。
具体的には、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シーストV(東海カーボン社製)、ダイアブラックG(三菱化学社製)等が例示され、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、ショウブラックN339(昭和キャボット社製)等が例示される。
また、ISAFとしてはショウブラックN220(昭和キャボット社製)、SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(新日化カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)や三菱ダイアブラックR(三菱化学社製)、FTとしては旭#15(旭カーボン社製)やHTC#20(新日化カーボン社製)等が例示される。
【0033】
本発明においては、このようなカーボンブラックの含有量は、着色のみならず、得られる本発明の第2ゴム組成物の加硫後の後述する損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)をいずれもより良好な範囲とする観点から、上記シリカおよび上記カーボンブラックの合計質量に対して35質量%以下であり、1〜15質量%であるのが好ましく、1〜10質量%であるのがより好ましい。
【0034】
(シランカップリング剤)
本発明の第1ゴム組成物および本発明の第2ゴム組成物(以下、これらをまとめて「本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物」という。)は、上述した各成分以外に、シランカップリング剤を含有するのが好ましい態様の1つである。
上記シランカップリング剤は、ゴム用途に使用されるポリスルフィド系シランカップリング剤を用いるのが好ましい。
上記ポリスルフィド系シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドであるのが、得られる本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の加硫後の破断強度、引裂き強さがより向上する理由から好ましい。
【0035】
このようなシランカップリング剤としては、市販品を用いることができる。
具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69、デグッサ社製)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(Si75、デグッサ社製)等が例示される。
【0036】
本発明においては、このようなシランカップリング剤の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜3質量部であるのがより好ましく、1〜2質量部であるのが更に好ましい。
シランカップリング剤の含有量が上述の範囲であると、得られる本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の加硫後の破断強度、引裂き強さがより向上する。これは、シランカップリング剤と上記シリカとの化学結合が増大するためであると考えられる。
【0037】
(ジエチレングリコール)
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、上述した各成分以外に、ジエチレングリコールを含有するのが好ましい態様の1つである。
上記ジエチレングリコールは、(CH2OHCH22Oの化学式で表される化合物である。
上記ジエチレングリコールとしては、日本触媒社製の市販品を用いることができる。
【0038】
本発明においては、上記ジエチレングリコールの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.5〜4.5質量部であるのが好ましく、0.5〜2質量部であるのがより好ましく、0.6〜1.8質量部であるのが更に好ましい。
ジエチレングリコールの含有量が上述の範囲であると、得られる本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の後述する損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)がいずれもより良好な範囲となるため消費電力の低減をより十分に図ることができる。これは、シリカと上記ゴム成分との間の分子間の相互作用を低減することができるためであると考えられる。
【0039】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、上述した各成分以外に、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、および/または、ヘキサメチレン−1,6−ビス(チオサルフェート)二ナトリウム塩ニ水和物を含有するのが好ましい態様の1つである。
ここで、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンは、下記式(1)で表されれる化合物であり、ヘキサメチレン−1,6−ビス(チオサルフェート)二ナトリウム塩ニ水和物は下記式(2)で表される化合物である。
【0040】
【化1】

【0041】
これらの化合物を含有することにより、得られる本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の後述するエネルギーロス指数(ΔH)がより小さくなり、消費電力の低減をより十分に図ることができる。
これは、得られる本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の後述する25%伸び時における引張応力(M25)が向上し、損失係数tanδが小さくなるためであるが、これらの化合物がゴム組成物のリバージョン(加硫戻り)を防止する試薬(リバージョン防止剤)であることを鑑みれば、意外な効果である。
【0042】
本発明においては、これらの化合物の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜2質量部であるのが好ましく、0.2〜1質量部であるのがより好ましい。
なお、この含有量は、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンおよびヘキサメチレン−1,6−ビス(チオサルフェート)二ナトリウム塩ニ水和物をいずれも含有する場合は、合計の含有量をいう。
【0043】
また、本発明においては、これらの化合物として市販品を用いることができる。
具体的には、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンとしては、FLEXSYS社製のPERKALINK 900を用いることができ、ヘキサメチレン−1,6−ビス(チオサルフェート)二ナトリウム塩ニ水和物としては、FLEXSYS社製のDURALINK HTSを用いることができる。
【0044】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、上述した各成分以外に、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤等の架橋剤や加硫遅延剤を含有していてもよく、更に、本発明の目的を損わない範囲で、各種配合剤を含有していてもよい。
【0045】
加硫剤としては、例えば、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系加硫剤としては、具体的には、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0046】
加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
チオウレア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、エチレンチオウレア等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等が挙げられる。
チウラム系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0047】
加硫助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等が挙げられる。
【0048】
このような加硫剤、加硫促進剤および加硫助剤を含有する場合の合計の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜15質量部であるのが好ましく、0.5〜13質量部であるのがより好ましい。含有量の範囲がこの範囲であると、得られる本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の加硫後の破断強度がより良好となり、後述する損失係数tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)もより良好となる。
【0049】
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;サントガードPVI:等が挙げられる。
加硫遅延剤を含有する場合の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であるのが好ましく、0.1〜0.3質量部であるのがより好ましい。含有量の範囲がこの範囲であると、得られる本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物からコンベヤベルトを押出加工する際のスコーチ安定性が向上し、生産性が向上する。
【0050】
配合剤としては、具体的には、例えば、上述したシリカおよびカーボンブラック以外の充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、加工助剤等が挙げられる。
これらの配合剤は、ゴム用組成物用の一般的なものを用いることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択できる。
【0051】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、上述したジエン系ゴムおよびシリカならびに所望によりカーボンブラック、シランカップリング剤、ジエチレングリコールおよび各種配合剤を特定量含有することにより、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を振動数10Hzで与えて測定した損失係数tanδが0.04〜0.16となり、
下記式[1]に示すエネルギーロス指数(ΔH)が0.230以下となる。
ΔH=(SpGr×tanδ)/M25 [1]
ここで、SpGrは、20℃での比重(g/cm3)、tanδは、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を振動数10Hzで与えて測定した損失係数、M25は、25%伸び時における引張応力(MPa)である。
【0052】
(損失係数tanδ)
損失係数tanδは、ゴム組成物の動的性質を表す貯蔵弾性率E′と損失弾性率E″との比、tanδ=E″/E′で表され、この値が小さいほどゴム組成物の変形の間に熱として散逸されるエネルギー量(エネルギーロス量)が小さいことを意味し、エネルギーロスの尺度として用いることができる。
一方、tanδ値が小さいと低消費電力化が可能になると考えられるが、[背景技術]でも述べたように、tanδ値をあまりに小さくしすぎると破断強度(TB)および破断伸び(EB)も低下するため、コンベヤベルトの稼動が安定しない。
本発明では、上述したジエン系ゴムおよびシリカならびに所望によりシランカップリング剤等を特定量含有することにより、低消費電力化と破断強度、破断伸び等の基本物性とを両立できるtanδ値の範囲(0.04〜0.16)とすることができる。
【0053】
(エネルギーロス指数(ΔH))
エネルギーロス指数(ΔH)は、上記式[1]により表される。
上記式[1]は、従来タイヤの分野で用いられている路面との摩擦低減効率の目安となる式であるが、コンベヤベルト用ゴム組成物の消費電力の低減評価においても有効と考えられる。
上記式[1]中のSpGrは、20℃での比重(g/cm3)を示す。この値が小さいと総質量の低減が可能になることから小負荷と同等の低消費電力効果が得られる。
また、上記式[1]中のtanδは、ローラ乗り越え時のゴム組成物の変形によるエネルギーロスに影響する。この値が小さいと低消費電力効果が得られる。
また、上記式[1]中のM25は、25%伸び時における引張応力(MPa)を示すが、ベルト剛性としての硬度の代用特性と考えることができるため、ゴム組成物の撓みの大小に影響する。この値が大きいと撓みが小さくなり低消費電力効果が得られる。なお、本発明において、M25は、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物を148℃、30分の条件で加硫させて得られた加硫物から3号ダンベル状に打ち抜いた試験片を用い、JIS K6251-2004に準じて、引張速度500mm/分での引張試験を行い、25%伸び時における引張応力(M25)[MPa]を室温にて測定した値である。
したがって、上記式[1]の技術的な意義は、SpGrとtanδの積をM25で除することにより、これらの物性に基づいて、ゴム組成物がローラを乗り越える時のエネルギーロスを総合的に判断でき、コンベヤベルト用のゴム組成物が、消費電力の低減を図るコンベヤベルトに適しているか否かの指標となることにある。
本発明では、上述したジエン系ゴムおよびシリカならびに所望によりシランカップリング剤等を特定量含有することにより、消費電力の低減を十分に図ることできるエネルギーロス指数(0.23以下)とすることができる。
【0054】
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物の製造は、上述したジエン系ゴムおよびシリカならびに所望により含有するカーボンブラック、シランカップリング剤、ジエチレングリコールおよび各種配合剤を加え、バンバリーミキサー等で混練し、ついで、混練ロール機等で加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤を混練して行うことができる。
また、加硫は、通常行われる条件で行うことができる。具体的には、例えば、温度140〜150℃程度、0.5時間の条件下、加熱することにより行われる。
【0055】
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、該下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、上述した本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるコンベヤベルトである。
以下に、図1を用いて本発明のコンベヤベルトを説明するが、本発明のコンベヤベルトの構造は、下面カバーゴム層の裏面表面に上述した本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物を用いていれば特にこれに限定されない。
【0056】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。図1において、1はコンベヤベルト、2は上面カバーゴム層、3は補強層、4は下面カバーゴム層、5は運搬物搬送面、11および16は外層、12および15は内層である。
図1に示すように、コンベヤベルト1は、補強層3を中心層とし、その両側に上面カバーゴム層2と下面カバーゴム層4が設けられており、上面カバーゴム層2は外層11と内層12の2層から構成され、下面カバーゴム層4は外層16と内層15の2層から構成されている。ここで、上面カバーゴム層2および下面カバーゴム層4の外層と内層(外層11と内層12、外層16と内層15)は、それぞれ互いに異なるゴム組成物を用いて形成されていてもよい。
【0057】
図1において、上面カバーゴム層2は、外層11と内層12の2層から構成されているが、本発明の第1コンベヤベルトにおいては、上面カバーゴム層2を構成する層の数は、2に限定されず、1でもよく、3以上であってもよい。そして、3以上の場合にも、これらの層は、互いに異なるゴム組成物を用いて形成されてもよい。また、下面カバーゴム層4も同様である。
上面カバーゴム層2の運搬物搬送面5を構成する外層11は、耐熱性、耐摩耗性、耐油性等に優れたゴム組成物から形成されるのが望ましいため、上面カバーゴム層2は2層から構成されていることが好ましい。
下面カバーゴム層4の裏面表面を構成する外層16は上述した本発明の第1コンベヤベルト用ゴム組成物により形成され、また、下面カバーゴム層4の内層15は製造コストや補強層3との接着性が重視されることから他のゴム組成物から形成されるのが望ましいため、カバーゴム層4は2層から構成されていることが好ましい。
【0058】
補強層3の芯体は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができ、その具体例としては、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられ、これらを一種単独で用いてもよく、2種以上のものを積層して用いてもよい。
また、補強層3の形状は特に限定されず、図1に示すようにシート状であってもよく、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。
【0059】
上面カバーゴム層2の内層12および下面カバーゴム4の内層15を形成するゴム組成物は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるゴム組成物を適宜選択して用いることができ、一種単独で用いてもよく、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0060】
上面カバーゴム層2の外層11を形成するゴム組成物は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるゴム組成物を、該外層に要求される基本特性(例えば、耐熱性、耐摩耗性、耐油性等)に応じて適宜選択して用いることができる。
【0061】
本発明のコンベヤベルトは、下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるため、硬度、破断強度、破断伸び、引裂き強さ等の基本物性を維持し、消費電力の低減を十分に図ることができる。
【0062】
本発明のコンベヤベルトにおいては、下面カバーゴム層の厚さが、5〜20mmであるのが好ましく、6〜15mmであるのがより好ましい。ここで、下面カバーゴム層の厚さは、下面カバーゴム層が内層および外層で構成されている場合は、これらの層の合計の層厚をいう。
下面カバーゴム層の厚さがこの範囲であると、高温の運搬物を搬送に用いる場合であっても、ゴムの劣化等により生ずるベルトの反り返り(カッピング)を防ぐことができる。
【0063】
本発明のコンベヤベルトの製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。
具体的には、まず、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、140〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が好適に例示される。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を挙げ、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1〜10、比較例1および2)
ゴム成分100質量部に対して、下記第1表に示す組成成分(質量部)で、各コンベヤベルト用ゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、加硫後の各種物性を以下に示す方法により測定し評価した。その結果を下記第1表に示す。
【0065】
<加硫後の物性>
(1)硬度
得られた未加硫ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で30分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜いた。
この試験片について、JIS K6253−1997の「タイプAデュロメータ硬さ試験」に準じて、ショアA硬度を測定した。
ショアA硬度が50以上であれば、高硬度を有するものとして評価できる。
【0066】
(2)破断強度および切断時伸び
得られた各ゴム組成物を、148℃、30分間、加硫し、加硫ゴム組成物を調製した。
調製した各加硫ゴム組成物から3号ダンベル状に打ち抜いた試験片を用い、JIS K6251-2004に準じて、引張速度500mm/分での引張試験を行い、破断強度(TB)[MPa]および切断時伸び(EB)[%]を室温にて測定した。
破断強度が14MPa以上であれば、高破断強度を有するものとして評価できる。
切断時伸びが450%以上であれば、高破断伸びを有するものとして評価できる。
【0067】
(3)引裂き強さ
得られた各ゴム組成物を、148℃、30分間、加硫し、加硫ゴム組成物を調製した。
JIS K6252:2001に準じて、調製した各加硫ゴム組成物からクレセント形の試験片を切り抜き、中央くぼみ部に主軸と直角方向に長さ1.0±0.2mmの切り込みを入れた。試験片つかみ具の移動速度500mm/分での試験を行い、引裂き強さ(TR)[kN/m]を室温にて測定した。
【0068】
(4)損失係数tanδ
調製した各加硫ゴム組成物から短冊状(長さ20mm×幅5mm×厚み2mm)に切り抜いた試験片を用い、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用いて損失係数tanδを測定した。測定は、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を振動数10Hzで与えて行った。
【0069】
(5)エネルギーロス指数(ΔH)
調製した各加硫ゴム組成物の比重を測定した。
また、調製した各加硫ゴム組成物から3号ダンベル状に打ち抜いた試験片を用い、JIS K6251-2004に準じて、引張速度500mm/分での引張試験を行い、25%伸び時における引張応力(M25)[MPa]を室温にて測定した。
次いで、比重、M25、および上記で測定した損失係数tanδの値を用い、調製した各加硫ゴム組成物のエネルギーロス指数(ΔH)を、上記式[1]から求めた。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
上記第1表に示すゴム成分等の各組成成分としては、以下に示すものを用いた。
・天然ゴム(NR):RSS#3
・スチレン−ブタジエンゴム(SBR):Nipol 1723(日本ゼオン社製)
・BR1:Nipol BR1220(重量平均分子量:46万、末端未変性、日本ゼオン社製)
・BR2:Nipol BR1250H(重量平均分子量:57万、末端NMP変性、日本ゼオン社製)
・カーボンブラック1:ISAF(ショウブラックN220、昭和キャボット社製)
・カーボンブラック2:GPF(ダイアブラックG、三菱化学社製)
・シリカ1:含水微粉ケイ酸(窒素吸着比表面積:215m2/g、ジブチルフタレート吸油量:280cm3/100g、ニップシールAQ、日本シリカ工業社製)
・シリカ2:含水微粉ケイ酸(窒素吸着比表面積:160m2/g、ジブチルフタレート吸油量:260cm3/100g、Zeosil 1165GR、Rhodia Silica korea社製)
・シリカ3:含水微粉ケイ酸(窒素吸着比表面積:115m2/g、ジブチルフタレート吸油量:190cm3/100g、Zeosil 115GR、Rhodia Silica korea社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業社製)
・ジエチレングリコール:日本触媒社製
・シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69、デグッサ社製)
・アロマオイル:A−OMIX(三共油化工業社製)
・加硫剤:硫黄(油処理硫黄、細井化学工業社製)
・加硫促進剤:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーNS、大内新興化学工業社製)
【0073】
第1表に示す結果より、実施例1〜10で得られたゴム組成物は、加硫後の各物性から、硬度、破断強度、破断伸び、引裂き強さ等の基本物性を維持し、消費電力の低減を十分に図ることができるコンベヤベルトに適したゴム組成物であることが分かった。
これに対し、シリカを所定の割合で含有しないゴム組成物(比較例1および2)のゴム組成物は、加硫後の各物性から、tanδおよびエネルギーロス指数(ΔH)と、引裂き強さとのバランスに劣るゴム組成物であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1:コンベヤベルト
2:上面カバーゴム層
3:補強層
4:下面カバーゴム層
5:運搬物搬送面
11、16:外層
12、15:内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムおよびシリカを含有するコンベヤベルト用ゴム組成物であって、
前記シリカの窒素吸着比表面積が、80〜300m2/gであり、
前記シリカの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して15〜60質量部であり、
カーボンブラックを含有しないコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
ジエン系ゴム、シリカおよびカーボンブラックを含有するコンベヤベルト用ゴム組成物であって、
前記シリカの窒素吸着比表面積が、80〜300m2/gであり、
前記シリカの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して15〜60質量部であり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、20〜60m2/gであり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記シリカおよび前記カーボンブラックの合計質量に対して35質量%以下であるコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム(NR)およびポリブタジエンゴム(BR)からなり、
前記天然ゴムと前記ポリブタジエンゴムとの量比(NR/BR)が、90/10〜25/75である請求項1または2に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項4】
更に、シランカップリング剤を含有し、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項5】
上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、
前記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、請求項1〜4のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、コンベヤベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2010−6859(P2010−6859A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164408(P2008−164408)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】