説明

コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルト

【課題】難燃性を確保しながら耐衝撃性を向上した、難燃耐衝撃性コンベヤベルト用ゴム組成物およびそのコンベヤベルト用ゴム組成物をカバーゴムに使用するコンベヤベルトを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部と、塩素化パラフィン15〜30質量部と、三酸化アンチモン1〜12質量部と、石油樹脂および/またはオイルを石油樹脂およびオイルの合計で1〜11質量部とを含有し、該ジエン系ゴム100質量部中にスチレン・ブタジエンゴムを50〜100質量部含有するコンベヤベルト用ゴム組成物ならびにこれをカバーゴムに使用するコンベヤベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルトに関する。より詳細には、本発明は、難燃性コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルトに関する。さらに詳細には、本発明は、難燃耐衝撃性コンベヤベルト用ゴム組成物およびコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物に難燃性を付与する場合、塩素化パラフィンや三酸化アンチモンなどの難燃剤を添加することが知られているが、例えば、地下坑道を走るコンベヤベルト等のより高いレベルの難燃性を要求される用途では、十分な難燃性は得られていなかった。
【0003】
これに対し、特許文献1には、ゴム成分として塩素系ゴムを用い、難燃剤として、少なくとも、塩素化パラフィン、三酸化アンチモンおよびビス(ペンタブロモフェニル)エタンを用いることにより、難燃性を向上したコンベヤベルト用ゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−249459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載されたコンベヤベルト用ゴム組成物には、耐衝撃性をさらに向上する余地がまだ残されていることを知得した。
【0006】
そこで、本発明は、難燃性を確保しながら耐衝撃性を向上した、難燃耐衝撃性コンベヤベルト用ゴム組成物およびそのコンベヤベルト用ゴム組成物をカバーゴムに使用するコンベヤベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、ジエン系ゴム100質量部と、塩素化パラフィン15〜30質量部と、三酸化アンチモン1〜12質量部と、石油樹脂および/またはオイル合計1〜11質量部とを含有し、上記ジエン系ゴム100質量部中にスチレン・ブタジエンゴムを50〜100質量部含有すると、難燃性を確保しながら耐衝撃性を向上した、難燃耐衝撃性コンベヤベルト用ゴム組成物およびそのコンベヤベルト用ゴム組成物をカバーゴムに使用するコンベヤベルトを提供することができることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に掲げる(1)〜(4)を提供する。
【0008】
(1)ジエン系ゴム100質量部と、塩素化パラフィン15〜30質量部と、三酸化アンチモン1〜12質量部と、石油樹脂および/またはオイルを石油樹脂およびオイルの合計で1〜11質量部とを含有し、該ジエン系ゴム100質量部中にスチレン・ブタジエンゴムを50〜100質量部含有するコンベヤベルト用ゴム組成物。
(2)前記ジエン系ゴムがスチレン・ブタジエンゴムと天然ゴムとからなる、上記(1)に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
(3)前記ジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック55〜70質量部をさらに含有する、上記(1)または(2)に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
(4)上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、前記上面カバーゴム層および前記下面カバーゴム層の少なくとも表面が上記(1)〜(3)のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるコンベヤベルト。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、難燃性を確保しながら耐衝撃性を向上した、難燃耐衝撃性コンベヤベルト用ゴム組成物およびそのコンベヤベルト用ゴム組成物をカバーゴムに使用するコンベヤベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[コンベヤベルト用ゴム組成物]
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物は、「ジエン系ゴム100質量部と、塩素化パラフィン15〜30質量部と、三酸化アンチモン1〜12質量部と、石油樹脂および/またはオイルを石油樹脂およびオイルの合計で1〜11質量部とを含有し、該ジエン系ゴム100質量部中にスチレン・ブタジエンゴムを50〜100質量部含有するコンベヤベルト用ゴム組成物」である。
本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物(以下、単に「本発明のゴム組成物」という場合がある。)について、以下に詳細に説明する。
【0012】
〈ジエン系ゴム〉
本発明のゴム組成物はジエン系ゴムを含有するが、そのジエン系ゴムの100質量部中に、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)を50〜100質量部含有する。SBR含有量がジエン系ゴムの100質量部中50質量部以上であると、本発明のゴム組成物の加硫後の一般的物性、すなわち、引張り強さ、切断時伸びおよび300%伸び時における引張応力がいずれも良好なものとなり、コンベヤベルトとしての基本物性を維持することができる。コンベヤベルトとしての基本物性がさらに良好なものとなるという理由から、SBR含有量は、ジエン系ゴムの100質量部中、70〜100質量部が好ましく、70〜90質量部がより好ましい。
【0013】
スチレン・ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等が挙げられ、これらを1種単独で、または2種以上を併用して、SBRとともに使用することができる。これらの中でも、天然ゴム(NR)および/またはブタジエンゴム(BR)が好ましく、天然ゴム(NR)がより好ましい。すなわち、本発明においては、ジエン系ゴム組成物として、SBRと、NRおよび/またはBRと、を用いることが好ましく、SBRと、NRと、を用いることがより好ましい。
【0014】
上記ハロゲン含有ジエン系ゴムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;スチレン−ブタジエンブロック共重合体;スチレン−イソプレンブロック共重合体;等の粉末または粒子をハロゲン化またはハロゲンスルホン化して得られる重合物や、2−ハロゲノ−1,3−ブタジエン重合体、2−ハロゲノメチルオキシラン重合体等が挙げられる。より具体的には、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)等が挙げられる。
【0015】
しかしながら、本発明においては、スチレン・ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムとしては、ハロゲン含有ジエン系ゴムを除くジエン系ゴムが好ましい。すなわち、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムとしては、ハロゲン含有ジエン系ゴムを除くジエン系ゴムを用いることが好ましい。
【0016】
〈難燃剤〉
本発明のゴム組成物は、難燃剤として、塩素化パラフィンを、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、15〜30質量部と、三酸化アンチモンを、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜12質量部、それぞれ含有する。それぞれがこの範囲内であると、加硫後の本発明のゴム組成物の酸素指数およびJIS難燃性がいずれも良好なものとなり、コンベヤベルトに難燃性を付与することができるとともに、耐摩耗性および一般的物性(特に、300%伸び時における引張応力について)の低下が抑制される。
【0017】
このような効果を奏するメカニズムは詳細には明らかではないが、本発明者は、塩素化パラフィンおよび三酸化アンチモンを所定量含有することにより、高沸点のアンチモン塩化物を生成し、それが可燃性物質の表面を被覆して酸素を遮断するため、優れた難燃性を保持することができるのではないかと考えている。ただし、このような効果を奏するメカニズムはこれに限定されるものではない。
【0018】
《塩素化パラフィン》
本発明のゴム組成物における、塩素化パラフィンの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して15〜30質量部であるが、15〜25質量部とすることが好ましく、17〜23質量部とすることがより好ましい。
【0019】
上記塩素化パラフィンとしては、塩素含有量60〜80質量%のものが好ましく、65〜75質量%のものがより好ましく、68〜72質量%のものがさらに好ましい。例えば、トヨパラックス(塩素含有量70質量%,東ソー社製)、エンパラ70S(塩素含有量70質量%,DOVER CHEMICAL COMPANY社製)等の市販品を用いることができる。
【0020】
《三酸化アンチモン》
本発明のゴム組成物における、三酸化アンチモンの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して1〜12質量部であるが、2〜8質量部とすることが好ましく、3〜5質量部とすることがより好ましい。
【0021】
三酸化アンチモンとしては、例えば、PATOX−M(日本精鉱社製)等の市販品を用いることができる。
【0022】
〈軟化剤〉
本発明のゴム組成物は、軟化剤として、石油樹脂および/またはオイルを石油樹脂およびオイルの合計で1〜11質量部含有する。この範囲内であると、耐衝撃性を向上しながら、難燃性を維持することができる。石油樹脂およびオイルの両方を含有してもよいし、いずれか一方のみを含有してもよい。
【0023】
《石油樹脂》
石油樹脂としては、具体的には、例えば、C5系の脂肪族不飽和炭化水素の重合体、C9系の芳香族不飽和炭化水素の重合体、C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体等を挙げることができる。
【0024】
上記C5系の脂肪族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC5留分中に含まれる、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンのようなオレフィン系炭化水素;2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンのようなジオレフィン系炭化水素等を挙げることができる。これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。ここで、C5系の脂肪族不飽和炭化水素の重合体とは、1種類のC5系の脂肪族不飽和炭化水素の単独重合体と、2種類以上のC5系の脂肪族不飽和炭化水素の共重合体のいずれをもいう。
【0025】
また、上記C9系の芳香族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC9留分中に含まれる、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエンのようなビニル置換芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。ここで、C9系の芳香族不飽和炭化水素の重合体とは、1種類のC9系の芳香族不飽和炭化水素の単独重合体と、2種類以上のC9系の芳香族不飽和炭化水素の共重合体のいずれをもいう。
【0026】
また、C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体は、C9系の芳香族不飽和炭化水素ユニットが60モル%以上であるものが好ましく、90モル%以上であるものがより好ましい。上記共重合体の軟化点が高くなるからである。C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体は、適当な触媒の存在下で、共重合可能である。上記石油樹脂(e)は、上記ジエン系ゴム(a)の物性に対し、その分子量および二重結合の反応性が影響を与えるので、軟化点(JIS K 2207:1996)が100℃以上のものが好ましく、120℃以上のものがより好ましい。
【0027】
石油樹脂としては、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、トーホーハイレジン#120(軟化点120℃)、トーホーコーポレックス2100(軟化点100℃)(以上、東邦化学工業社製)、アイマーブP−140(軟化点140℃)、アイマーブS−110(軟化点110℃)(以上、出光興産社製)、アルコンP−125(軟化点125℃)、アルコンP−115(軟化点115℃)(以上、荒川化学工業社製)等を挙げることができる。
【0028】
《オイル》
オイルは特に限定されず、ゴム組成物に配合することができる従来公知のオイルを使用することができる。
オイルとしては、プロセスオイルまたはアロマオイルが好ましい。
オイルは市販品を使用することができ、プロセスオイルとして、例えば、マシン油(昭和シェル石油)が挙げられ、アロマオイルとしては、例えば、A−OMIX(三共油化工業製)が挙げられる。
【0029】
〈充填剤〉
《カーボンブラック》
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックをジエン系ゴム100質量部に対して好ましくは55〜70質量部、より好ましくは58〜67質量部、さらに好ましくは60〜65質量部、さらに含有してもよい。カーボンブラック含有量が上記範囲内であると、加硫後の本発明のゴム組成物の一般的物性(特に、引張り強さおよび300%伸び時における引張応力について)を向上する効果がある。
【0030】
カーボンブラックは、特に限定されないが、着色のみならず、得られる本発明のゴム組成物の加硫後の損失係数tanδをより良好な範囲とする観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が20〜60m/gのものを用いるのが好ましい。
【0031】
カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、GPF(General Purpose Furnace)、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
このようなカーボンブラックとしては、市販品を用いることができる。
具体的には、ISAFとして、ショウブラックN220(昭和キャボット社製)など;GPFとして、旭#55(旭カーボン社製)、シーストV(東海カーボン社製)、ダイアブラックG(三菱化学社製)など;HAFとして、シースト3(東海カーボン社製)、ショウブラックN339(昭和キャボット社製)など;SAFとして、シースト9(東海カーボン社製)など;FEFとして、HTC#100(新日化カーボン社製)など;SRFとして、旭#50(旭カーボン社製)、三菱ダイアブラックR(三菱化学社製)など;FTとして、旭#15(旭カーボン社製)、HTC#20(新日化カーボン社製)など;等が例示される。
【0033】
《シリカ》
本発明のゴム組成物は、シリカを含有しないか、またはシリカをジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、さらに含有してもよい。シリカを含有すると、損失係数(tanδ)を大きくする効果が大きく、耐衝撃性を向上することができる。
【0034】
シリカとしては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、無水微粉ケイ酸、含水微粉ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
シリカは、窒素吸着比表面積(NSA)が80〜300m/g、好ましくは100〜250m/g、より好ましくは125〜225m/gのものを用いることが好ましい。ここで、窒素吸着比表面積は、シリカがゴム分子との吸着に利用できる表面積の代用特性であり、シリカ表面への窒素吸着量をJIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」に従い測定した値である。
【0036】
また、本発明においては、シリカは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が150〜300cm/100gのものを用いるのが好ましく、200〜300cm/100gのものを用いるのがより好ましい。ここで、ジブチルフタレート吸油量は、シリカがゴム分子を内蔵できるストラクチャーの代用特性であり、JIS K 6217−4:2001「第4部:DBP吸収量の求め方」に従い、アブソープトメーターで測定した値である。
【0037】
シリカは、市販品を用いることができる。具体的には、含水微粉ケイ酸として、ニップシールAQ(日本シリカ工業社製)、トクシールGU(トクヤマ社製)、Zeosil 1165MP(Rhodia Silicakorea社製)、Zeosil 115GR(Rhodia Silica korea社製)等が例示される。
【0038】
〈加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤〉
本発明のゴム組成物は、上述した各成分以外に、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等の架橋剤や加硫遅延剤を含有していてもよく、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、これら以外の各種配合剤を含有していてもよい。
【0039】
加硫剤としては、例えば、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
【0040】
イオウ系加硫剤としては、具体的には、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
【0041】
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
【0042】
その他として、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、p−ベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0043】
加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
【0044】
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等が挙げられる。
【0045】
グアニジン系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0046】
チオウレア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、エチレンチオウレア等が挙げられる。
【0047】
チアゾール系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等が挙げられる。
【0048】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等が挙げられる。
【0049】
チウラム系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0050】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0051】
加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等が挙げられる。
【0052】
このような加硫剤、加硫促進剤および加硫促進助剤を含有する場合の合計の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜20質量部であるのが好ましく、7〜12質量部であるのがより好ましい。含有量の範囲がこの範囲であると、得られる本発明のゴム組成物の加硫特性、特に、破断強度および耐摩耗性が良好となる。
【0053】
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−フェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンズイミダゾール;サントガードPVI:等が挙げられる。加硫遅延剤を含有する場合の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であるのが好ましく、0.1〜0.2質量部であるのがより好ましい。含有量の範囲がこの範囲であると、得られる本発明のゴム組成物の耐スコーチ性が向上する。
【0054】
一方、配合剤としては、上記したもの以外に、具体的には、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、ゴム用組成物用の一般的なものを用いることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択できる。
【0055】
〈製造方法〉
本発明のゴム組成物の製造は、上述したジエン系ゴム、塩素化パラフィン、三酸化アンチモン、石油樹脂および/またはオイル、ならびに所望により含有する各種配合剤(上述した充填材を含む。)をバンバリーミキサー等で混練し、ついで、混練ロール機等で加硫剤、加硫促進助剤、加硫促進剤を混練して行うことができる。また、加硫は、通常行われる条件で行うことができる。具体的には、例えば、温度140〜150℃程度、1.0時間の条件下、加熱することにより行われる。
【0056】
[コンベヤベルト]
本発明のコンベヤベルトは、「上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、上記上面カバーゴム層および上記下面カバーゴム層の少なくとも表面が『本発明のゴム組成物』により形成されるコンベヤベルト」である(以下、単に「本発明のコンベヤベルト」という。)。
本発明のコンベヤベルトについて、以下に詳細に説明する。
【0057】
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、上記上面カバーゴム層および上記下面カバーゴム層の少なくとも表面が、上述した本発明のゴム組成物により形成されるコンベヤベルトである。
【0058】
以下に、図1を用いて本発明のコンベヤベルトを説明するが、本発明のコンベヤベルトの構造は、上面カバーゴム層および上記下面カバーゴム層の表面に上述した本発明のゴム組成物を用いていれば特にこれに限定されない。
【0059】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した斜視図である。図1において、1はコンベヤベルト、2は上面カバーゴム層、3は補強層、4は下面カバーゴム層、5は運搬物搬送面である。
【0060】
図1に示すように、コンベヤベルト1は、補強層3を中心層とし、その両側に上面カバーゴム層2と下面カバーゴム層4が設けられている。
【0061】
図1において、上面カバーゴム層2は、1層から構成されているが、本発明のコンベヤベルトにおいては、上面カバーゴム層2を構成する層の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。そして、2以上の場合は、それぞれ互いに異なるゴム組成物を用いて形成されてもよい。また、下面カバーゴム層4も同様である。
【0062】
本発明のコンベヤベルトにおいては、上面カバーゴム層2および下面カバーゴム層4を構成する層は、より効果的に難燃性を発揮できる理由から1層であるのが好ましい。
【0063】
補強層3の芯体は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができ、その具体例としては、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられ、これらを一種単独で用いてもよく、2種以上のものを積層して用いてもよい。
【0064】
また、補強層3の形状は特に限定されず、図1に示すようにシート状であってもよく、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。
【0065】
本発明のコンベヤベルトは、上面カバーゴム層および下面カバーゴム層の少なくとも表面が本発明のゴム組成物により形成されるため、優れた難燃性を保持し、耐熱老化性にも優れる。
【0066】
本発明のコンベヤベルトにおいては、上面カバーゴム層の厚さが、3〜20mmであるのが好ましく、5〜15mmであるのがより好ましい。ここで、上面カバーゴム層の厚さは、上面カバーゴム層が内層および外層で構成されている場合は、これらの層の合計の層厚をいう。上面カバーゴム層の厚さがこの範囲であると、高温の運搬物を搬送に用いる場合であっても、ゴムの劣化等により生ずるベルトの反り返り(カッピング)を防ぐことができる。
【0067】
本発明のコンベヤベルトの製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。
【0068】
具体的には、まず、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を、補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、140〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が好適に例示される。
【実施例】
【0069】
[ゴム組成物の調製]
下記第1表(実施例)または第2表(比較例)に示す各成分を各表に示す組成成分(質量部)で、ゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、各種試験を以下に示す方法により測定し評価した。結果は第1表または第2表に示す。
【0070】
[試験方法]
(1)未加硫ゴムの圧延加工性に関する試験
<最低ムーニー粘度(Vm)およびムーニースコーチタイム(ML5UP)>
JIS K 6300−1:2001に記載の方法に準拠して、最大200ムーニー単位まで測定できるL型ローターを用い、測定温度125℃の測定条件で、ローターのシャフトにかかるトルクを測定しムーニー単位(M)で記録した(この値がムーニー粘度である)。
ムーニー粘度−時間曲線を作り、この曲線における最低値を、125℃での最低ムーニー粘度(Vm)とした。
さらに、最低ムーニー粘度よりムーニー粘度が5ポイントだけ上昇するまでに経過した時間(分)を測定し、これを125℃でのムーニースコーチタイム(ML5UP)とした。
125℃での最低ムーニー粘度(Vm)について80.0[M]以下、125℃でのムーニースコーチタイム(ML5UPについて15.0[分]以上を、それぞれ、合格基準とした。
【0071】
(2)加硫ゴムの一般的物性に関する試験
<ショアA硬さ(Hs)>
得られた未加硫ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で30分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜いた。
この試験片について、JIS K 6253:1997の「タイプAデュロメータ硬さ試験」に準じて、ショアA硬さ(Hs)を測定した。
ショアA硬さ50≦Hs≦85を合格とした。
【0072】
<引張り強さ(TB)、切断時伸び(EB)>
得られた各ゴム組成物を、148℃、30分間、加硫し、加硫ゴム組成物を調製した。調製した各加硫ゴム組成物から3号ダンベル状に打ち抜いた試験片を用い、JIS K 6251:2004に準じて、引張速度500mm/分での引張試験を行い、引張り強さ(TB)[MPa]および切断時伸び(EB)[%]を室温にて測定した。
引張り強さTB≧20.0[MPa]、切断時伸びEB≧450[%]を合格とした。
【0073】
<300%伸び時における引張り応力(300%モジュラス,M300)>
得られた加硫シートからJIS3号ダンベル状のゴムシート片を打ち抜いて試験片を作製した。
この試験片を用いて、JIS K 6251:2004に準拠して、引張速度500mm/分での引張試験を室温で行い、300%モジュラス(M300)[MPa]を測定した。
M300≧9.0[MPa]を合格とした。
【0074】
(3)加硫ゴムの耐摩耗性に関する試験
<DIN摩耗>
DIN(西ドイツ規格)53516に記載の方法に準拠して、DIN摩耗試験機で、約10Nの荷重でφ=約16mm、厚さ=6mmの試験片を、回転する研磨布を巻きつけたドラム形の摩耗面に押し付け、摩耗面を横断する際(摩耗距離40m)の試験片の摩耗体積(DIN摩耗)[mm]を測定した。
DIN摩耗≦140[mm]を合格とした。
【0075】
(4)加硫ゴムの耐衝撃性に関する試験
<ギロチン(針)>
ギロチンカット深さ:加硫ゴムの試験片(幅90mm×長さ90mm×高さ50mm)に対し、付加荷重を2.0kgかけて針(長さ40mm、針先2mm部の先端角度90°)を250mmの高さから落下させ、そのカット深さ[mm]を測定することによった。
カット深さ≦20.0[mm]を合格とした。
【0076】
<損失係数(tanδ)>
得られた加硫シートから短冊状(長さ20mm×幅5mm×厚み2mm)のゴムシート片を切り抜いて試験片作製した。
この試験片を用いて、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用いて損失係数tanδを測定した。測定は、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を振動数10Hzで与えて行った。
損失係数tanδ>0.300を合格とした。なお、tanδは無名数である。
【0077】
(5)加硫ゴムの難燃性に関する試験
<酸素指数>
得られた各ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で60分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。このシートから試験片(150mm×60mm)を切出し、JIS K 6269:1998に準拠して、酸素指数(%)を測定した。
酸素指数≧23.0[%]を合格とした。
【0078】
<JIS難燃性試験>
JIS難燃3級試験(JIS K 6324:2000)に記載される難燃性3級の試験方法に準じて、難燃性試験を行った。上記のゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫し、試験片を調製した。当該カバーゴム付き3個の試験片の炎の持続時間[秒]を測定し、平均を求めた。
持続時間の平均≦60[秒]を合格とした。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
第1表または第2表に示す各成分は以下のものである。
〈ジエン系ゴム〉
NR:天然ゴム(RSS#3)
SBR:スチレン・ブタジエンゴム(Nipol 1502、日本ゼオン社製;非油展)
BR:ブタジエンゴム(Nipol BR1220,日本ゼオン社製)
〈難燃剤〉
難燃剤1:塩素化パラフィン(エンパラ70S,ドーバー・ケミカル社製)
難燃剤2:三酸化アンチモン(PATOX−M,日本精鉱社製)
〈軟化剤〉
石油樹脂:石油樹脂(トーホーハイレジン#120,東邦化学社製)
オイル:アロマオイル(A−OMIX,三共油化工業製)
〈充填剤〉
カーボンブラック:ISAF級カーボンブラック(ニテロン#300,新日化カーボン社製)
シリカ:含水微粉ケイ酸(ニップシールAQ,日本シリカ工業社製)
〈加硫剤〉
硫黄:油処理硫黄(細井化学工業社製)
【0085】
[試験結果の説明]
<実施例>
実施例1〜18(第1表)のゴム組成物は、いずれも、加硫前には圧延加工性が良好であり、加硫後にはコンベヤベルト用途に好適な一般的物性を備え、さらに、耐摩耗性、難燃性、および耐衝撃性も優れていた。
【0086】
<比較例>
・比較例1,2(第2表)
比較例1は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)を含有せず、SBRの含有量が本発明のゴム組成物の規定範囲外の例である。ギロチン(針)が20.0mmを超え、tanδが0.300以下と、耐衝撃性が劣り、要求水準を満足していなかった。
比較例2は、SBR含有量がジエン系ゴム100質量部中40質量部であり、SBRの含有量が本発明のゴム組成物の規定範囲外の例である。一般的物性はすべて要求水準を満たすが、ギロチン(針)が20.0mmを超え、耐衝撃性が劣り、要求水準を満足していなかった。
【0087】
・比較例3〜6(第2表)
比較例3は、難燃剤(塩素化パラフィン、三酸化アンチモン)をいずれも含有せず、難燃剤の含有量がともに本発明のゴム組成物の規定範囲外の例である。酸素指数が23.0%未満であり、かつ、JIS難燃性が60秒を超え、難燃性が劣り、要求水準を満足していなかった。
比較例4および6は、塩素化パラフィンまたは三酸化アンチモンのいずれかの含有量が本発明のゴム組成物の規定範囲外の例である。酸素指数が23未満と、難燃性が劣り、要求水準を満足していなかった。
比較例5は、塩素化パラフィンの含有量が本発明のゴム組成物の規定範囲を超える例である。一般的物性のうちTBが20.0MPa未満、M300が9.0MPa未満と、劣り、一般的物性が要求水準を満足していなかった。また、DIN摩耗が140mmを超え、耐摩耗性が劣り、要求水準を満足していなかった。
【0088】
・比較例7〜10(第2表)
比較例7は、軟化剤(石油樹脂、オイル)を含有せず、軟化剤の合計含有量が本発明のゴム組成物の規定範囲外の例である。耐衝撃性は満足しているが、EBが450%未満と劣り、一般的物性が要求水準を満足していなかった。
比較例8〜10は、軟化剤の合計含有量が本発明のゴム組成物の規定範囲を超えるものである。一般的物性のうち、M300が9.0MPa未満と劣り、要求水準を満足していなかった。また、ギロチン(針)が20.0mmを超え、耐衝撃性が劣り、要求水準を満足していなかった。
【0089】
・比較例11,12(第2表)
比較例11は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)を含有せず、かつ、軟化剤(石油樹脂、オイル)も含有しない例である。ギロチン(針)が20.0mmを超え、しかも、tanδが0.300未満と、耐衝撃性に劣り、要求水準を満足していなかった。
比較例12は、ジエン系ゴムとしてSBRのみを含有し、軟化剤(石油樹脂、オイル)を含有しない例である。Vmが80.0Mを超え、かつ、ML5UPが15.0分未満と、圧延加工性が劣り、要求水準を満足していなかった。さらに、TBが20.0MPa未満、EBが450%未満と、一般的物性が劣り、要求水準を満足していなかった。
【符号の説明】
【0090】
1:コンベヤベルト
2:上面カバーゴム層
3:補強層
4:下面カバーゴム層
5:運搬物搬送面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部と、塩素化パラフィン15〜30質量部と、三酸化アンチモン1〜12質量部と、石油樹脂および/またはオイルを石油樹脂およびオイルの合計で1〜11質量部とを含有し、該ジエン系ゴム100質量部中にスチレン・ブタジエンゴムを50〜100質量部含有するコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴムがスチレン・ブタジエンゴムと天然ゴムとからなる、請求項1に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム100質量部に対して、カーボンブラック55〜70質量部をさらに含有する、請求項1または2に記載のコンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項4】
上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなるコンベヤベルトであって、前記上面カバーゴム層および前記下面カバーゴム層の少なくとも表面が請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成されるコンベヤベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2012−180475(P2012−180475A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45199(P2011−45199)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】