説明

コンベヤベルト用繊維補強層の製造方法およびコンベヤベルト用繊維補強層

【課題】優れたトラフ性と耐座屈性を確保し、縦糸方向の強度向上を図り、横糸の乱れを防止するコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法およびその繊維補強層を提供する。
【解決手段】繊維補強層1の縦糸2にポリケトン繊維を使用して諸撚り構造とし、縦糸2の繊度D1(dtex)、上撚り数T(回/10cm)として上撚り係数K=T×D11/2を1000〜2400とし、横糸3を5〜15本/5cmの密度で配置し、繊維補強層1の横糸方向強度を150〜350N/cmにし、接着液にディッピングさせた繊維補強層1の熱処理では、縦糸方向に0.035cN/dtex以下のテンションを負荷し、幅方向両端部をクランプ8で保持して横糸方向は動きを拘束するだけの状態にすることにより熱処理後の布目曲がりを0〜0.5%にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルト用繊維補強層の製造方法およびコンベヤベルト用繊維補強層に関し、さらに詳しくは、優れたトラフ性および耐座屈性を確保し、縦糸方向の強度向上を図るとともに、横糸の乱れを防止できるコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法およびコンベヤベルト用繊維補強層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベヤベルトの心材としては、一般に、平織構造の繊維補強層を単数または複数積層したものが使用され、その繊維補強層の仕様については、種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。平織構造の繊維補強層は、例えば、パイプコンベヤベルトや空気浮上式コンベヤベルトなどのキャリアローラや外側を保持するガイドパイプに馴染むように変形する性能(トラフ性)が強く求められるコンベヤベルトにも用いられている。
【0003】
平織構造の繊維補強層の場合、横糸の配置密度、或いは、横糸の繊度を小さくして横剛性をある程度低減させることにより、トラフ性を向上させることができる。しかしながら、このような対策を講じると、縦糸のクリンプ(上下の湾曲)が小さくなるため、耐座屈性が悪化するという問題が生じる。また、繊維補強層はスチールコード補強層に比して長手方向(縦糸方向)の強度が劣るため、その向上が望まれていた。
【0004】
さらに、繊維補強層は、接着液にディッピングさせた後の熱処理の際に、一般的に、縦糸方向にテンションを負荷して横糸方向は完全にフリーな状態にするため、横糸が乱れるという問題があった。横糸が乱れると、引張特性や耐久性等が変化して品質がばらついて悪影響が生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−246018号公報
【特許文献2】特開2006−282299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れたトラフ性および耐座屈性を確保し、縦糸方向の強度向上を図るとともに、横糸の乱れを防止できるコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法およびコンベヤベルト用繊維補強層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法は、平織構造の繊維補強層の縦糸を、フィラメント糸を1本または複数本ずつ同一方向に下撚りし、次いで、これら下撚りした糸を合わせて逆方向に上撚りした諸撚り構造とし、その上撚りについて、縦糸の繊度D1(dtex)、縦糸の上撚り数T(回/10cm)とした際に下記(1)式による算出される上撚り係数Kを1000〜2400にするとともに、繊維補強層の横糸を5〜15本/5cmの密度で配置し、繊維補強層の横糸方向強度を150〜350N/cmにしたコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法であって、前記縦糸にポリケトン繊維を使用し、接着液にディッピングさせた繊維補強層の熱処理を行なう際に、繊維補強層の縦糸方向に0.035cN/dtex以下のテンションを負荷して、横糸方向は繊維補強層の動きを拘束するだけの状態にして処理を行なうことにより、熱処理後の繊維補強層の布目曲がりを0〜0.5%にすることを特徴とする。
K=T×D11/2・・・(1)
【0008】
ここで、前記横糸のカバーファクタを300〜450にするとともに、繊維補強層のカバーファクタを3300以下にし、前記横糸の繊度D2を400〜1400dtexにし、繊維補強層を接着液にディッピングさせる前に、繊維補強層の幅方向両端部で、前記横糸の先端部分を繊維補強層の内側に折り返して編み込むことによりタックイン構造にすることもできる。前記ポリケトン繊維の雰囲気温度25℃のときの弾性率は、例えば200〜1000cN/dtex、160℃×30分の乾熱収縮率は、例えば0.2〜1.0%である。
【0009】
本発明のコンベヤベルト用繊維補強層は、コンベヤベルトに埋設される平織構造の繊維補強層の縦糸を、フィラメント糸を1本または複数本ずつ同一方向に下撚りし、次いで、これら下撚りした糸を合わせて逆方向に上撚りした諸撚り構造とし、その上撚りについて、縦糸の繊度D1(dtex)、縦糸の上撚り数T(回/10cm)とした際に下記(1)式による算出される上撚り係数Kを1000〜2400にするとともに、繊維補強層の横糸の配置密度を5〜15本/5cmとし、繊維補強層の横糸方向強度を150〜350N/cmにしたコンベヤベルト用繊維補強層であって、前記縦糸がポリケトン繊維であり、接着液にディッピングさせた繊維補強層の熱処理後の布目曲がりが0〜0.5%であることを特徴とする。
K=T×D11/2・・・(1)
【0010】
ここで、前記横糸のカバーファクタが300〜450であるとともに、繊維補強層のカバーファクタが3300以下であり、前記横糸の繊度D2が400〜1400dtexであり、繊維補強層の幅方向両端部が、前記横糸の先端部分が繊維補強層の内側に折り返して編み込まれたタックイン構造である仕様にすることもできる。前記ポリケトン繊維の雰囲気温度25℃のときの弾性率は、例えば200〜1000cN/dtex、160℃×30分の乾熱収縮率は、例えば0.2〜1.0%である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、繊維補強層の横糸の配置密度を5〜15本/5cmとし、繊維補強層の横糸方向強度を150〜350N/cmにしたことにより、コンベヤベルトにおいては適度なトラフ性を得ることができる。
【0012】
また、横糸の配置密度を上記のように比較的小さくしていながら、縦糸に高弾性率および高強度の特性を有するポリケトン繊維を使用して諸撚り構造にするとともに、上記(1)式により算出される縦糸の上撚り係数Kを適正な範囲(K=1000〜2400)に設定したので、縦糸方向の強度および繊維補強層の耐座屈性を向上させることができる。
【0013】
さらに、接着液にディッピングさせた繊維補強層の熱処理を行なう際に、繊維補強層の縦糸方向に0.035cN/dtex以下のテンションを負荷して、横糸方向は繊維補強層の動きを拘束するだけの状態にして処理を行なうことにより、熱処理後の繊維補強層の布目曲がりを0〜0.5%にして横糸の乱れが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンベヤベルトに埋設されている本発明のコンベヤベルト用繊維補強層を例示する断面図である。
【図2】図1のコンベヤベルトを一部切欠いて例示する斜視図である。
【図3】本発明の繊維補強層を構成する縦糸の諸撚り構造を例示する説明図である。
【図4】本発明の繊維補強層を接着液にディッピングさせた後の熱処理工程を例示する説明図である。
【図5】本発明の繊維補強層の別の実施形態を例示する平面図である。
【図6】コンベヤベルトをプーリ間に架張した状態を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法およびコンベヤベルト用繊維補強層を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1、図2に例示するように、本発明のコンベヤベルト用繊維補強層1(1a、1b、1c、1d)は、上ゴム層4と下ゴム層5との間に心材としてコンベヤベルト6に埋設されている。繊維補強層1の積層数はコンベヤベルト6に対する要求性能(剛性、伸び等)により決定され、4層に限定されず、単層或いはその他の複数層となる。これら繊維補強層1a、1b、1c、1dは、ベルト長手方向に延びる縦糸2と、ベルト幅方向に延びる横糸3とが交互に上下に交差する平織構造であり、すべての層が同仕様になっている。
【0017】
繊維補強層1を構成する縦糸2は、ポリケトン繊維により形成されている。このポリケトン繊維の雰囲気温度25℃のときの弾性率は、例えば200〜1000cN/dtex、160℃×30分(160℃で30分加熱)の乾熱収縮率は、例えば0.2〜1.0%である。より好ましくは、上記弾性率は300〜500cN/dtex、上記乾熱収縮率は0.4〜0.7%である。乾熱収縮率は、JIS L 1013に準拠して測定した値である。ポリケトン繊維を使用することにより、繊維補強層1の縦糸方向の強度を向上させている。横糸3は例えば、ポリエステル、ポリケトン、アラミド、ビニロン、ナイロンなどの樹脂繊維で形成されている。
【0018】
縦糸2は図3に例示するように、複数のフィラメント糸2aをそれぞれ1本ずつ同一方向に下撚りし、次いで、これら下撚りしたフィラメント糸2aを合わせて逆方向に上撚りした諸撚り構造になっている。下撚りするフィラメント糸2aは1本に限らず、複数本ずつ同一方向に下撚りするようにしてもよい。また、上撚りする糸は複数本であればよい。
【0019】
諸撚り構造の縦糸2は、1本または複数のフィラメント糸を引き揃え、一方向に撚っただけの片撚り構造に比べて、良好な耐座屈性を得ることができる。下撚りと上撚りは、異なる撚り数にすることもできるが、安定性を得るために同数、或いは略同数とすることが好ましい。
【0020】
ここで、上撚りについては、縦糸2の繊度D1(dtex)、縦糸2の上撚り数T(回/10cm)とした際に、K=T×D11/2により算出される上撚り係数Kを1000〜2400にしている。この上撚り係数Kは、大きくなる程、縦糸2の引張り強度は低下し、耐座屈性は向上する。そこで、本発明では、上撚り係数Kを1000以上2400以下の範囲に設定して繊維補強層1の強度低下を抑制しつつ、一段と耐座屈性を向上させている。
【0021】
さらに、繊維補強層1の横糸3の配置密度を5〜15本/5cmとし、繊維補強層1の横糸方向強度を150〜350N/cmにしている。この横糸方向強度とは、繊維補強層1を横糸方向に引張った際の破断強度であり、JIS L 1096に記載されているラベルストリップ法に準拠した引張試験方法により得られる。
【0022】
横糸3の配置密度および繊維補強層1の横糸方向強度を上記範囲に設定することにより、コンベヤベルト6の横剛性が適度な大きさになる。これにより、パイプコンベヤベルトの場合ではキャリアローラに馴染むように変形し易くなり、空気浮上式コンベヤベルトの場合では、ベルト外側を保持するガイドパイプに馴染むように変形し易くなり、良好なトラフ性を得ることができる。
【0023】
この繊維補強層1は接着液にディッピングさせた後、熱処理されている。この熱処理は、例えば、後述するドライ工程、ベーキング工程から構成されている。この熱処理後の繊維補強層1の布目曲がりが0〜0.5%になっている。布目曲がりとは、JIS L 1096に規定された方法により測定された布目曲がり(%)である。
【0024】
コンベヤベルト6は、図6に例示するように、プーリ7の間に張架されて使用される。コンベヤベルト6がプーリ7まわりを通過する際には、繊維補強層1の中で最内周側の繊維補強層1aに最大の圧縮応力が生じるため、最も座屈し易くなる。そこで、本発明の繊維補強層1を、最内周側の繊維補強層1aにのみ適用してもよい。或いは、本発明の繊維補強層1を、少なくとも最内周側の1層の繊維補強層1aに適用するようにしてもよい。
【0025】
図5に繊維補強層1の別の実施形態を示す。この実施形態と先の実施形態とは異なり、繊維補強層1の幅方向両端部が、横糸3の先端部分が繊維補強層1の内側に折り返して編み込まれている。即ち、幅方向両端部に横糸3の折り返し部Bを有するタックイン構造になっている。折り返し部Bの幅は、例えば、1cm〜3cm程度である。
【0026】
また、この実施形態では、横糸3のカバーファクタを300〜450とするとともに、繊維補強層1のカバーファクタを3300以下とし、横糸3の繊度D2を400〜1400dtexにすることが好ましい。その他の仕様は、先の実施形態を同じである。
【0027】
縦糸2のカバーファクタK1、横糸3のカバーファクタK2は、下記(2)、(3)式により算出される。
K1=d1×(D1/b1)1/2・・・(2)
K2=d2×(D2/b2)1/2・・・(3)
【0028】
ここで、d1、d2はそれぞれ縦糸2、横糸3の糸密度(本/50mm)、D1、D2はそれぞれ縦糸2、横糸3の繊度(dtex)、b1、b2はそれぞれ縦糸2、横糸3の糸比重(g/cm3)である。縦糸2のカバーファクタと横糸3のカバーファクタの合計値が繊維補強層1のカバーファクタになる。
【0029】
本発明の繊維補強層1の熱処理は以下の手順で行われる。接着液にディッピングさせた繊維補強層1の熱処理を行なう際に、縦糸方向に0.035cN/dtex以下の非常に低いテンションが負荷される。繊維補強層1の幅方向両端部(横糸方向両端部)は、エンドレスチェーン等の搬送手段9に取り付けられたクランプ8によって、縦糸方向に所定間隔をあけて保持される。繊維補強層1は、クランプ8によって横糸方向に積極的に引張られることはなく、横糸方向は繊維補強層1の動きが拘束されるだけの状態になる。
【0030】
尚、上記したクランプ8を備えた装置に限らず、繊維補強層1に対して、縦糸方向には0.035cN/dtex以下の非常に低いテンションを負荷するとともに、横糸方向は繊維補強層の動きを拘束するだけの状態にすることができる装置であれば、他の構造、様式の装置を用いることもできる。
【0031】
この状態で繊維補強層1は、ドライ工程10、ベーキング工程11に連続的に順次送られて処理される。ドライ工程10では、例えば100℃〜150℃程度の雰囲気下を通過させて繊維補強層1に付着した接着液中の不要な成分を蒸発させる。ベーキング工程11では、例えば200℃〜230℃程度の雰囲気下を通過させて、引き続き乾燥後の接着液を反応、硬化させる。熱処理後の繊維補強層1を、上ゴム層4と下ゴム層5の間に介在させて金型内部で所定時間加硫することにより、コンベヤベルト6が完成する。
【0032】
本発明では、繊維補強層1の熱処理の際に、繊維補強層の縦糸方向に0.035cN/dtex以下の小さなテンションしか負荷しないが、縦糸2にポリケトン繊維を使用して熱収縮を小さくしているので、縦糸2および横糸3の乱れが抑制される。即ち、熱収縮が大きい縦糸2を用いると、クランプ8で保持されていない繊維補強層1の幅方向中央部周辺の縦糸2が自由に収縮し、これに伴って横糸3も湾曲するという不具合が生じるが、本発明ではこのような不具合が防止できる。
【0033】
そして、横糸方向は繊維補強層1の動きが拘束されているので、横糸3の乱れ(縦糸方向への乱れ)は抑制される。そのため、熱処理後の繊維補強層1の布目曲がりは0〜0.5%になる。したがって、コンベヤベルト6の引張特性や耐久性等の品質のばらつきが小さくなり、一定水準の安定した品質を確保し易くなる。
【0034】
図5に例示した幅方向両端部をタックイン構造にした実施形態では、折り返し部Bを設けることにより、繊維補強層1の幅方向両端部の横糸3の配置密度が高くなっている。そのため、熱処理の際に繊維補強層1の両端部がクランプ8によって保持されても、繊維補強層1の幅方向両端部で縦糸2がばらける不具合、いわゆる耳割れを一段と確実に防止することができる。
【実施例】
【0035】
平織構造の繊維補強層の横糸をナイロン66繊維として共通にして、縦糸の仕様および接着液にディッピングさせた後の熱処理でのテンションの負荷条件を表1のように異ならせて熱処理を行なった6種類の試験サンプル(実施例1〜3、比較例1〜3)を作製し、それぞれの試験サンプルについて布目曲がりと、これら試験サンプルを4層にして上ゴム層(3mm)、下ゴム層(2mm)を有するコンベヤベルトのサンプルを作製してトラフ性、耐座屈性、エンドレス加工性を評価した。結果は表1に示すとおりである。熱処理の条件は、ドライ工程(100℃〜150℃の所定温度)、ベーキング工程(200℃〜230℃の所定温度)であった。尚、表1の弾性率は雰囲気温度25℃のときの弾性率であり、乾熱収縮率は160℃で30分加熱した際の乾熱収縮率である。
【0036】
[布目曲がり]
JIS L 1096に規定されている方法により測定した布目曲がり(%)である。数値が小さい程、横糸の乱れが小さいをことを示す。
【0037】
[トラフ性]
JIS K 6322(布層コンベヤベルト)に準拠して行なった。ベルトのサンプル(幅800mm、長さ150mm)の幅方向両端縁を支持バーにより固定し、サンプルを水平に引張った状態で各支持バー端を懸架し、24時間放置した後にサンプルの最大たわみ量を測定した。最大たわみ量が300mm超の場合を良好として○、200mm超300mm以下の場合を並として△、200mm以下の場合を悪いとして×で示した。
【0038】
[耐座屈性]
ベルトのサンプルを直径200mmのプーリに180°巻き付けた際の最も内周側に積層した繊維補強層の状態を確認した。最内周側の繊維補強層がプーリの周面に沿って追従した場合を○、追従せずに波打って縦糸が座屈し易い状態になった場合を×として評価した。
【0039】
[エンドレス加工性]
ベルトのサンプルの長手方向端部どうしを接合する際の加工性の良否を評価したもので、縦糸のばらけ具合が小さく、加工作業が円滑に行なえる場合を良好として○、縦糸のばらけ具合を大きく、加工作業が煩雑になる場合を悪いとして×で示した。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果から本発明の製造方法で製造した実施例1〜3では、布目曲がりが小さく品質が優れていることが分かる。また、実施例1〜3では、トラフ性、耐座屈性およびエンドレス加工性も優れていることが分かる。
【0042】
また、平織構造の繊維補強層の縦糸を実施例1〜3、比較例1と同じポリケトン繊維、横糸をナイロン66繊維として共通にするとともに、接着液にディッピングさせた後の熱処理でのテンションの負荷条件を縦糸方向に0.035cN/dtex以下、横糸方向は繊維補強層の動きを拘束するだけの状態にして共通として、繊維補強層および横糸のカバーファクタ、横糸の繊度、繊維補強層の幅方向両端部(耳部)での横糸の折り返し構造を表2のように異ならせた6種類の試験サンプル(実施例4〜6、比較例4〜6)を作製し、それぞれの試験サンプルについて耳割れの発生と、これら試験サンプルを4層にして上ゴム層(3mm)、下ゴム層(2mm)を有するコンベヤベルトのサンプルを作製して上記したトラフ性、耐座屈性、エンドレス加工性を評価した。結果は表2に示すとおりである。熱処理の条件は、ドライ工程(130℃)、ベーキング工程(220℃)であった。
【0043】
[耳割れ]
熱処理後の試験サンプルの幅方向両端部の耳割れの有無を確認し、耳割れが発生しなかった場合を○、耳割れが発生した場合を×で示した。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果より、本発明の製造方法で製造した実施例4〜6では、耳割れを防止できるとともに、トラフ性、耐座屈性およびエンドレス加工性も優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、1b、1c、1d 繊維補強層
2 縦糸
2a フィラメント糸
3 横糸
4 上ゴム層
5 下ゴム層
6 コンベヤベルト
7 プーリ
8 クランプ
9 搬送手段
10 ドライ工程
11 ベーキング工程
B 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平織構造の繊維補強層の縦糸を、フィラメント糸を1本または複数本ずつ同一方向に下撚りし、次いで、これら下撚りした糸を合わせて逆方向に上撚りした諸撚り構造とし、その上撚りについて、縦糸の繊度D1(dtex)、縦糸の上撚り数T(回/10cm)とした際に下記(1)式による算出される上撚り係数Kを1000〜2400にするとともに、繊維補強層の横糸を5〜15本/5cmの密度で配置し、繊維補強層の横糸方向強度を150〜350N/cmにしたコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法であって、前記縦糸にポリケトン繊維を使用し、接着液にディッピングさせた繊維補強層の熱処理を行なう際に、繊維補強層の縦糸方向に0.035cN/dtex以下のテンションを負荷して、横糸方向は繊維補強層の動きを拘束するだけの状態にして処理を行なうことにより、熱処理後の繊維補強層の布目曲がりを0〜0.5%にするコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法。
K=T×D11/2・・・(1)
【請求項2】
前記横糸のカバーファクタを300〜450にするとともに、繊維補強層のカバーファクタを3300以下にし、前記横糸の繊度D2を400〜1400dtexにし、繊維補強層を接着液にディッピングさせる前に、繊維補強層の幅方向両端部で、前記横糸の先端部分を繊維補強層の内側に折り返して編み込むことによりタックイン構造にする請求項1に記載のコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法。
【請求項3】
前記ポリケトン繊維の雰囲気温度25℃のときの弾性率が200〜1000cN/dtex、160℃×30分の乾熱収縮率が0.2〜1.0%である請求項1または2に記載のコンベヤベルト用繊維補強層の製造方法。
【請求項4】
コンベヤベルトに埋設される平織構造の繊維補強層の縦糸を、フィラメント糸を1本または複数本ずつ同一方向に下撚りし、次いで、これら下撚りした糸を合わせて逆方向に上撚りした諸撚り構造とし、その上撚りについて、縦糸の繊度D1(dtex)、縦糸の上撚り数T(回/10cm)とした際に下記(1)式による算出される上撚り係数Kを1000〜2400にするとともに、繊維補強層の横糸の配置密度を5〜15本/5cmとし、繊維補強層の横糸方向強度を150〜350N/cmにしたコンベヤベルト用繊維補強層であって、前記縦糸がポリケトン繊維であり、接着液にディッピングさせた繊維補強層の熱処理後の布目曲がりが0〜0.5%であるコンベヤベルト用繊維補強層。
K=T×D11/2・・・(1)
【請求項5】
前記横糸のカバーファクタが300〜450であるとともに、繊維補強層のカバーファクタが3300以下であり、前記横糸の繊度D2が400〜1400dtexであり、繊維補強層の幅方向両端部が、前記横糸の先端部分が繊維補強層の内側に折り返して編み込まれたタックイン構造である請求項4に記載のコンベヤベルト用繊維補強層。
【請求項6】
前記ポリケトン繊維の雰囲気温度25℃のときの弾性率が200〜1000cN/dtex、160℃×30分の乾熱収縮率が0.2〜1.0%である請求項4または5に記載のコンベヤベルト用繊維補強層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−195300(P2011−195300A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65123(P2010−65123)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】