説明

コンベヤーシステムの潤滑方法

本発明は、コンベヤーシステムの潤滑方法であって、i)水でコンベヤー潤滑剤濃縮液を希釈して、濃度cを有する水性コンベヤー潤滑剤を得ること、ii)水性コンベヤー潤滑剤に光を照射すること、iii)吸収検出器で水性コンベヤー潤滑剤による光の吸収を測定することにより水性コンベヤー潤滑剤の濃度cを求めること、及び、iv)コンベヤーシステムに水性コンベヤー潤滑剤を塗布することを含む、方法を対象とする。本発明はさらに、光源と、コンベヤー潤滑システム内の水性コンベヤー潤滑剤による光の吸収を測定するための吸収検出器とを有する測定装置を含む、コンベヤー潤滑システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、コンベヤーシステムを潤滑にするための方法及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、金属、ガラス、紙、厚紙及び/又はプラスチック製の容器、特に食品産業で用いられる容器を動かしているコンベヤーシステムの潤滑に関する。これらは特に、食品、例えば飲料で満たされる容器、例えばガラス又はプラスチックボトル、箱、ガラス器、器、飲料容器、紙及び厚紙容器等である。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
コンベヤーシステムを潤滑にし、そしておそらくは清浄及び滅菌もするために、具体的には容器と可動コンベヤーベルト又は軌道表面との界面を潤滑にするために水性コンベヤー潤滑剤を塗布することは、従来技術において既知である。コンベヤーシステムが十分に潤滑でない場合、これは容器の転倒をもたらすか、又は、容器が充填、清浄又はラベル貼りステーションに到達していたとしても、進行を停止しないという結果を生じる。両種類の不調は、コンベヤーシステムの運転停止時間を長くし、そして装置能力のかなりの損失を引き起こし得る。
【0003】
水性コンベヤー潤滑剤は通常は極低濃度で、例えば0.1%〜2%の範囲で塗布されるが、一方、水性コンベヤー潤滑剤の必要量は高い。コンベヤーシステムの最適な潤滑を保証するために、塗布される潤滑剤の濃度を精確に求めることは高い重要性を有する。
【0004】
目下、水性コンベヤー潤滑剤の濃度は、コンベヤー潤滑剤の試料を手で保持し、そして滴定によりそれを検査することにより求められる。滴定中の平衡点の認識が難しいため、この方法は非常に不正確である。さらにこの分析技法は、結果を得るのに長時間を要し、オンライン塗布に適していない。
【0005】
本発明は、分光測光的方法により、特に光の吸収により測定する技法を提案することによってこれらの欠点を回避しようと試みるが、これは、上記の実験室方法よりも実行が簡単、迅速且つ容易である。さらにこの方法は、オンラインで用いるのに適し得る。
【0006】
多数の分子が、紫外線又は可視光線を吸収する。ランベルト・ベールの法則は、光が物質に吸収される方法を表現する数学的手段である。その法則は、試料から出る光の量が、以下の3つの物理学的現象により減少する、ということを述べている。
1. その路長において物質を吸収する量(濃度)
2. 光が試料を通して移動しなければならない距離(光路長)
3. その特定の波長の光子が物質により吸収される確率(吸光率又は吸光係数)。
【0007】
この関係は、以下のように表わされ得る。
A=ebc
(ここで、A=吸光度
e=モル吸光係数
b=路長(cm)、及び
c=モル濃度)
【0008】
異なる分子は、異なる波長の放射線を吸収する。吸収スペクトルは、分子内の構造基に対応する多数の吸収帯域を示す。吸収スペクトルは、波長の一関数としての光の吸収を示す。
【0009】
光の吸収を測定することにより濃度を求めることは、特に工業廃水分析に適用される現代の、信頼性があり且つ競合的な方法である。
【0010】
工業水系の一構成成分の濃度検出に関する例は、米国特許第5,419,837号に、又は米国特許公開第2004/013221号に見出され得る。米国特許第4,666,858号は、抽出物の紫外線吸収を分光測光的に測定することにより電解質金属めっき浴中の陰イオン性物質の量を求めることを教示している。
【0011】
ドイツ審査済登録特許第42 34 466号は、溶液内の物質の濃度を求めるための方法を対象としている。この文書は、その濃度が光学的方法により測定される蛍光染料であるトレーサーの使用を教示している。
【特許文献1】米国特許第5,419,837号
【特許文献2】米国特許公開第2004/013221号
【特許文献3】米国特許第4,666,858号
【特許文献4】ドイツ審査済登録特許第42 34 466号
【特許文献5】欧州審査済登録特許第0946 692号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一目的は、塗布される潤滑剤の最適な濃度を保証するコンベヤーシステムの潤滑方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、運転停止時間を回避し、その運搬容量を増大することにより、コンベヤーシステムをより効率的にすることである。本発明の別の目的は、コンベヤーシステムに塗布される水性コンベヤー潤滑剤の濃度のオンラインで求めることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[発明の概要]
これらの及び他の目的は本発明によって達成され、本発明は、コンベヤーシステムの潤滑方法であって、
i)濃度cを有する水性コンベヤー潤滑剤に光を照射すること、
ii)吸収検出器で水性コンベヤー潤滑剤による光の吸収を測定することにより水性コンベヤー潤滑剤の濃度cを求めること、及び
iii)コンベヤーシステムに水性コンベヤー潤滑剤を塗布すること
を含む、コンベヤーシステムの潤滑方法を含む。
【0015】
この自動手法は、塗布される潤滑剤の正確な投与量及び潤滑工程に直接組入れられる濃度測定を可能にする。本発明は、安定した潤滑工程を提供し、不必要な過剰濃度の潤滑剤を回避し、したがって高い製品コストを回避する。潤滑剤の濃度は、例えば水性コンベヤー潤滑剤が安定でない場合、又はコンベヤー潤滑剤が塗布前に希釈され、そして希釈工程が一定でないか又は信頼性がない場合に観察されなければならない。さらに、コンベヤー潤滑剤濃縮液又は水性コンベヤー潤滑剤を含有するタンクがほとんど空である場合、その結果生じる濃度低下に、運転者の注意が喚起されなければならない。本出願のコンベヤー潤滑システムは、警報装置を装備しており、これが、水性コンベヤー潤滑剤の望ましくない濃度が求められる場合に警報を生じる。
【0016】
コンベヤー潤滑剤が濃縮形態でコンベヤー潤滑システムに送達される場合、コンベヤー潤滑剤濃縮液は、濃度cを有する水性潤滑剤を得るために水で希釈された後、本発明の方法のステップi)〜ii)を実行する。コンベヤー潤滑剤がすでに所望の濃度cで送達される場合、この希釈ステップは必要ない。
【0017】
本発明は、システムに水性コンベヤー潤滑剤を塗布するための塗布装置を含むコンベヤー潤滑システムにさらに言及する。当該水性コンベヤー潤滑システムは、光源と、コンベヤー潤滑システム内の水性コンベヤー潤滑剤による光の吸収を測定するための吸収検出器とを有する測定装置をさらに備える。
【0018】
本発明は、計量ステーション及び塗布装置を備える別のコンベヤー潤滑システムであって、計量ステーションが、計量管を通してコンベヤー潤滑剤濃縮液を少なくとも1つの混合スペースに圧送するための少なくとも1つの計量ポンプを備える。混合スペースが、水性コンベヤー潤滑剤を得るために混合スペース内で水でコンベヤー潤滑剤を希釈するための給水装置に取り付けられている。混合スペースが、この混合スペースから水性コンベヤー潤滑剤を運搬するための少なくとも1つの出口管に取り付けられている。出口管は、コンベヤーシステムに水性コンベヤー潤滑剤を塗布するための塗布装置に延びている。コンベヤー潤滑システムは、光源と、コンベヤー潤滑システム内の水性コンベヤー潤滑剤による光の吸収を測定するための吸収検出器とを有する測定装置をさらに備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[種々の好ましい実施形態の説明]
本発明の方法は、コンベヤーシステムを潤滑にすることに関する。コンベヤーシステムは、コンベヤーベルト、コンベヤーバンド、コンベヤーライン、軌道等を含む工業プラント中に商品を運搬するためのシステムである。
【0020】
提案された方法に従って、潤滑剤が濃縮形態で利用可能である場合、コンベヤー潤滑剤濃縮液は、水性コンベヤー潤滑剤を得るために水で希釈される。濃度のこの希釈ステップは、潤滑剤が低濃度でコンベヤーシステムに塗布されるため、必要である。
【0021】
コンベヤー潤滑剤濃縮液及び水性コンベヤー潤滑剤の例は、欧州審査済登録特許第0946 692号(この開示内容は参照により本明細書中で援用される)に見出され得る。この欧州特許は、石鹸を基剤とした、脂肪アミンを基剤とした、そしてリン酸エステルを基剤とした潤滑剤に言及している。本発明は主に、アミンを基剤とした、そして石鹸を基剤とした潤滑剤に、そしてさらにエーテルカルボン酸を基剤とした潤滑剤を対象とする。
【0022】
好ましくは、コンベヤー潤滑剤濃縮液は、アミン、エーテルカルボン酸又はエトキシレートを基剤とした潤滑剤に関して0.05〜2.5%の範囲の、特に0.1%〜0.3%の範囲の、そして特に石鹸を基剤とした潤滑剤に関して0.5〜2%の範囲の濃度cを有する水性コンベヤー潤滑剤を得るために、水で希釈される。この文脈で言及するパーセンテージは、すべて重量%である。
【0023】
水性コンベヤー潤滑剤が所望の濃度cで利用可能である場合、希釈ステップは必要ない。
【0024】
本発明によれば、水性コンベヤー潤滑剤は光を照射され、潤滑剤による光の吸収は光検出器で測定される。照射のために、光源、好ましくは、水素ランプ、重水素ランプ、レーザー及びタングステンランプから成る群から選択される光源が用いられる。好ましくは水性コンベヤー潤滑剤は、1つの特定の波長の可視光線又は紫外線で照射される。この波長は、水性コンベヤー潤滑剤の一構成成分の吸収ピークの波長であることが有利である。用いられる光源が、或る範囲の波長で光を放出する連続光源である場合、潤滑剤を照射するための所望の特定の波長は、波長分波器、例えばプリズム、回析格子又はモノクロメーターにより選択され得る。
【0025】
本発明の好ましい実施形態に従って、200〜300nmの範囲の波長を有する光の吸収を測定する。
【0026】
光源からの光は集束され、コンベヤー潤滑システムの一素子内の、例えば計量ステーションの管又は小室内の水性コンベヤー潤滑剤に送られる。水性コンベヤー潤滑剤を通り抜けた放射光は、吸光検出器により当該素子の反対側で測定される。吸光検出器としては、例えば光電池、光ダイオード又は光電子増倍管が挙げられる。検出器は通常、増幅器及びデータ処理ユニットと接続される。測定された吸光度は、潤滑剤の濃度を求めるために、検量曲線と比較される(例えばデータ処理ユニットにより)。検量曲線は、選択された波長で、そして用いられた設定で、この水性潤滑剤に関する濃度の一関数としての吸光度を示す(ランベルト・ベールの法則に従って)。検量曲線は、同一設定で既知の濃度の同一潤滑剤の吸光度を測定することにより、求められた。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、光の吸光度は、コンベヤーシステムの操作中にオンラインで測定される。好ましくは、測定された濃度値は、水性コンベヤー潤滑剤の塗布量を制御するために用いられる。濃度のオンライン測定は、コンベヤーシステムへの潤滑剤の塗布量を変えることにより、望ましくない濃度変動に対する迅速な応答を可能にする。別の可能性は、水性コンベヤー潤滑剤の求められた濃度に応じて、コンベヤー潤滑剤濃縮液と混合される水の量又は希釈ステップで水と混合されるコンベヤー潤滑剤濃縮液の量を制御することである。
【0028】
本発明によれば、水性潤滑剤は、コンベヤーシステムに塗布される。コンベヤーシステムは、本発明によるコンベヤー潤滑システムにより、自動的に且つ連続的に潤滑にされる。
【0029】
好ましくは、水性コンベヤー潤滑剤は、噴霧、はけ塗り又は浸漬によりコンベヤーシステムに塗布される。噴霧は、噴霧ノズル、はけによるはけ塗り、そしてコンベヤーバンドを水性コンベヤー潤滑剤を含有する浸漬トレーの中に導くことによる浸漬により実行され得る。
【0030】
コンベヤー潤滑システムは、好ましくは計量ステーション及び塗布装置を含む。計量ステーションは、濃度cで水性コンベヤー潤滑剤を得るために混合されるコンベヤー潤滑剤濃縮液の量及び水の量を計量する。塗布装置は、コンベヤーシステムに潤滑剤を塗布する機能を果たし、例えば噴霧塗布のための噴霧ノズルを含む。上記のように光の吸収を測定するために、コンベヤー潤滑システムはさらに、測定装置を含有する。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンベヤー潤滑システムの測定装置は、フローセルを含み、これは光源及び吸収検出器を装備しており、そして計量ステーション又は塗布装置の一素子に接続され、当該素子は水性コンベヤー潤滑剤を含有する。フローセルは、例えば計量ステーション又は塗布装置の管若しくは混合小室に接続されることができ、これを通して水性コンベヤー潤滑剤はコンベヤー潤滑システムの操作中に流動している。
【0032】
図1は、コンベヤー潤滑剤の構成成分を含有する種々の水溶液の吸収スペクトルを示し、吸光度A対波長λをプロットしている。
【0033】
200nm〜300nmの波長範囲全体にわたって波長分波器を走査することにより、吸収スペクトルを測定した。第1の水溶液は、濃度10%で構成成分1(アルキル(C16〜18)エーテル(9EO)カルボン酸)を含有していた。構成成分1を有するこの水溶液の吸収スペクトルは、約λ=234nmで吸光度最大を示した。
【0034】
第2の水溶液は、濃度10%で構成成分2(N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン)を含有していた。構成成分2を有するこの水溶液の吸収スペクトルは、約λ=220nmで最大吸光度を示した。
【0035】
第3の水溶液は、濃度2%で構成成分3(オレイルアミンエトキシレート(12 EO))を含有していた。構成成分3を有するこの水溶液の吸収スペクトルは、約λ=234nmで最大吸光度を示した。
【0036】
第4の水溶液は、濃度10%で構成成分4(N−ココ−1,3−ジアミノプロパン)を含有していた。構成成分4を有するこの水溶液の吸収スペクトルは、約λ=220nmで最大吸光度を示した。
【0037】
4つの構成成分1〜4は、水性コンベヤー潤滑剤の典型的な構成成分である。これらの構成成分の少なくとも1つを含有する潤滑剤を用いた紫外線吸収検出のための最適な波長は、図1における吸収ピークの波長、すなわち220nm又は234nmである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、水性コンベヤー潤滑剤の濃度cは、特定の波長の紫外線の吸収を測定することにより求められ、紫外線は、水性コンベヤー潤滑剤の少なくとも1つの潤滑剤構成成分により主に吸収され、潤滑剤構成成分は、アミン、エーテルカルボン酸及びスルホン酸塩から成る群から選択される構成成分である。アミンは、好ましくはアセテート形態で用いられる。
【0039】
本発明の潤滑剤構成成分であり得る好ましいアミンは、一般式Iに対応するもの、及びその塩である。
【0040】
【化1】

【0041】
(式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、そして以下のものを示す。
− 水素
− 炭素数1〜22の置換又は非置換、直鎖又は分岐アルキル基、或いは炭素数2〜22のモノ又はポリ不飽和アルケニル基(置換基として、1つ又は複数のヒドロキシル、アミン、イミン、ハロゲン及び/又はカルボキシル基を示し得る)
− 置換又は非置換フェニル基(置換基として、1つ又は複数のアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボキシル及び/又はおそらくはまた、置換直鎖又は分岐の飽和或いは炭素数1〜22のモノ又はポリ不飽和アルキル基を示し得る)
− Aは、炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキレン基を示し、
− nは、1〜30の範囲の正の整数である)
【0042】
好ましいアミンは、一般式Iを有する。
(式中、R、R及びR=水素
= −(CH−、及び
n= 1)
【0043】
以下の一般式(II)及び(III)に属する化合物の塩も、好ましくは適用される。
−NH−(CH (II)
NH−(CH2X (III)
【0044】
(式中、Rは式Iに関して記述されたような意味を有し、そして陰イオンXは、当業者に既知であり、無機酸、有機酸から生じ、本発明の潤滑剤濃縮液に有害な影響を及ぼさず、例えば望ましくない濁度又は静止を生じない、すべての通例の基から選択され、適用され得る)
【0045】
本発明の意味では、陰イオンXが以下の群から選択されるような酸が好ましい:アミドスルホン酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸水素塩、硫酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、燐酸塩又はR−COO(ここで、基Rは、水素、炭素数1〜20の置換又は非置換、直鎖又は分岐アルキル基を示し、置換基は、1つ又は複数のヒドロキシル、アミン、イミン及び/又はカルボキシル基から選択される)。特にR−COO型の有機陰イオンXに関して例として記載されるのは:蟻酸塩、酢酸塩、グリコール酸塩、オレイン酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩及びグルタミン酸塩である。本発明の別の実施形態では、好ましいアミンは、一般式Iに従って得られる。
(式中、Rは、炭素数8〜22の飽和又は不飽和、分岐又は直鎖アルキル基であり、Rは、水素、炭素数1〜4のヒドロキシル−アルキル基のアルキル基又はA−NHであり、n=1であり、そしてR及びRは水素を示す)
【0046】
本発明により適用することができるアミンの幾つかの個々の例は、特に、毎回(each time)、遊離アミンの形態又はフォルメート、アセテート、オレート、グリコレート、ラクテート、グルコネート、シトレート、グルタメート、ベンゾエート、若しくはサリチレート等の塩形態でのエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラアミン、ブチレンジアミン、アミノエチルプロピレンジアミン、アミノエチルブチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−ココ−1,3−ジアミノプロパン、(N−ココス脂肪−アルキル−1,3−ジアミプロパン)N−タロウ脂肪−アルキル−1,3−ジアミノプロパン(N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン)、N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパンである。
【0047】
さらに好ましいポリアミンは、N−ココ−1,3−ジアミノプロパン及びN−オレイル−1,3−ジアミノプロパンであり、最も好ましいポリアミンは、N−オレイル−1,3−ジアミノプロパンである。
【0048】
一般式IV
【0049】
【化2】

【0050】
及び一般式V
【0051】
【化3】

【0052】
(式中、R19は、炭素数8〜22を有する直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキレン基であり、A12は、炭素数8〜22を有する直鎖又は分岐アルキレン基であり、A、A10、A11は、同じ、又は異なるエトキシ基又はプロポキシ基であり、A基、A10基、A11基の合計は、2〜200である)による化合物をアミン構成成分として適用することもできる。
【0053】
有用な化合物は、特にココス−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ポリオキシエチレン(5)ココス−アミン、ポリオキシエチレン(15)ココス−アミン、タロウ−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ポリオキシエチレン(5)タロウ−アミン、タロウ/オレイル−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、オレイル−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ポリオキシエチレン(5)オレイルアミン、ポリエチレン(15)オレイルアミン、タロウ−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン(水和)、ポリオキシエチレン(5)タロウ−アミン(水和)、ポリオキシエチレン(15)タロウ−アミン(水和)、ポリオキシエチレン(50)タロウ−アミン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシエチル)N−タロウ−1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−ポリオキシエチレン(10)−N−タロウ−1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−ポリオキシエチレン(15)−N−タロウ−1,3−ジアミノプロパン、及びポリオキシエチレン(15)−タロウ−アミンである。
【0054】
本発明による潤滑剤構成成分であり得る好ましいエーテルカルボン酸は、一般式VI
20−(O(CHOCHCOO (VI)
(式中、R20は、1〜22個の炭素数を有する飽和、直鎖又は分岐アルキル基或いは2〜22個の炭素数を有するポリ不飽和直鎖若しくは分岐アルカリル又はアルキニル基或いはおそらくモノ若しくはポリC〜C22アルキル又はC〜C22アルケニル、又はC〜C22アルキニル置換アリール基であり、nは0〜30の正の数であり、mは2又は3であり、Mは水素又はアルカリ金属である)に対応するものである。
【0055】
有利に適用できる一般式VIを有するエーテルカルボン酸としては、特に以下を挙げることができる。
【0056】
【表1】

【0057】
本発明の潤滑剤構成成分であり得る好ましいスルホン酸塩は、一般式VIIに対応するものである。
【0058】
【化4】

【0059】
(式中、Rは、C〜C14アルキル基であり、そしてn>1である場合、Rは、各々独立して、異なるC〜C14アルキル基であり、そしてn=1〜5である)
【0060】
有利に適用され得る一般式VIIを有するスルホン酸塩としては、特に以下のものが言及され得る:キシレンスルホン酸ナトリウム又はアルキルベンゼンスルホン酸塩。
【0061】
これらの潤滑剤構成成分のうちの少なくとも1つを含有する複数の水性コンベヤー潤滑剤の吸収スペクトルが測定された。試験中の種々の水性コンベヤー潤滑剤A〜Kの組成を、表1に示す:
【0062】
【表2】

【0063】
数字を付した構成成分は、図1の説明で言及されたものと同一物である。
【0064】
潤滑剤Gは、例えば構成成分1を5%の濃度で、そして構成成分4を5%の濃度で含有する。
【0065】
試験中の水性コンベヤー潤滑剤はすべて、200nm〜300nmの範囲の波長内で、ほとんどが220nm又は234nmの領域で、最大吸光度を示した。各波長の総吸収は、潤滑剤の一構成成分による、又は潤滑剤のいくつかの構成成分による吸収の結果である。
【0066】
図2は、第1の水性コンベヤー潤滑剤に関する1つの特定の波長での吸光度A対濃度cのプロットを示す。このプロットは、潤滑剤によるこの特定の波長での光の吸収を測定後の潤滑剤の濃度を求めるために用いられ得る検量曲線である。
【0067】
この場合、水性コンベヤー潤滑剤は、表1の潤滑剤Gであった。吸光度Aは、234nmの波長λで測定され、そして、1cmという潤滑剤を通る路長dを有する。検量曲線は、濃度の一関数としての吸光度の鮮やかな直線性を示す。したがって一次方程式が示され得る(y=0.7616x−0.0019)。この方程式の助けを借りて、同一設定で測定された吸光度を有するこの波長で、この潤滑剤について測定された吸光度A(y)から、濃度c(x)が算定され得る。
【0068】
図3は、第2の水性コンベヤー潤滑剤に関する234nmの波長λでのそして1cmの路長dを有する吸光度A対濃度cのプロットを示す。この場合、潤滑剤は表1からの潤滑剤Eであった。
【0069】
図4及び5は、第3の水性コンベヤー潤滑剤及び第4の水性コンベヤー潤滑剤(表1によれば、それぞれ潤滑剤A及びJである)に関する220nmの波長λでのそして1cmの路長dを有する吸光度A対濃度cのプロットを示す。表1に列挙された潤滑剤はすべて、吸光度と濃度との類似の線形相関を示し、検量曲線はすべて、220nm又は234nmで測定された。
【0070】
さらに、種々の水質(コンベヤー潤滑剤濃縮液を希釈するために用いられる)及び製品の劣化が検量曲線に及ぼす影響を試験した。検量曲線のいくつかは、これらの因子への小依存性を示したが、これは無視可能であると評価され得る。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、コンベヤー潤滑剤濃縮液は、既知の濃度を有するトレーサーを含有し、水性コンベヤー潤滑剤の濃度は、主にトレーサーにより吸収される特定の波長を有する光の吸収を測定することにより求められる。コンベヤー潤滑剤濃縮液が希釈される場合、トレーサー(既知の出発濃度を有する)は同程度に希釈される。トレーサーは、既知の波長で吸収ピークを示す。この波長において、希釈されたトレーサーを用いて水性コンベヤー潤滑剤の吸光度を測定することにより、トレーサーの濃度及びその結果としてコンベヤー潤滑剤の濃度が求められ得る。この文脈で用いられるトレーサーは、水性コンベヤー潤滑剤内で均質に分布可能でなければならない。
【0072】
図6は、吸光度A対波長λをプロットしているトレーサーの吸収スペクトルを示す。トレーサー(0.5mg/L)は、約228nmの波長で最大の吸収を示す(路長d=1cm)。用いられるトレーサーはナフタリンスルホン酸誘導体であったが、これは市販されている。
【0073】
図7は、トレーサー(コンベヤー潤滑剤濃縮液に関して0.1%)が付加された潤滑剤G(表1)についての228nmの波長での吸光度対濃度のプロットを示す。
【0074】
図8は、コンベヤー潤滑システムでのオンライン測定の結果である吸光度A対時間tのプロットである。水性コンベヤー潤滑剤の吸光度は時間に伴って変化し、これは、潤滑剤の濃度も変化する、ということを意味する。求められた濃度に応じて、コンベヤー潤滑システムによってコンベヤーシステムに塗布される潤滑剤の塗布量を制御することにより、一定の潤滑が保証され、水性潤滑剤の濃度の変動を相殺する。
【0075】
図9は、本発明によるコンベヤー潤滑システムの一部である計量ステーションの一実施形態を模式的に示す。
【0076】
計量ステーション20は、パイプ系18を介して吸込管11に接続されている計量ポンプ1(電力ソケット7に取り付けられている)を備える。吸込管11は、コンベヤー潤滑剤濃縮液を含有するタンク(図示せず)内に配備される。濃縮液は、吸込管11を通る計量ポンプにより計量管12を介して4つの異なる混合スペース13に圧送される。混合スペース13は各々、給水装置(図示せず)に取り付けられ、水は水管14を通して導かれる。水管14は、主水管15に接続されている。主水管15はさらに、主調節弁17、水フィルター10及び中断部9を含有する。主水管15は、分岐部16で4つの水管14と連絡する。各分岐部16の後に、各水管14は、調節弁5、並びに減圧調節器4を伴う圧力測定装置8を含有する。各水管14内には、水計測器2が取り付けられている。水管14は、計量弁3において、水に付加されるコンベヤー潤滑剤濃縮液の量を制御する計量管12に連絡する。潤滑剤濃縮液及び水は、混合スペース13内で混合されて、水性コンベヤー潤滑剤を生じ、これは出口管19を通ってコンベヤーシステムに塗布するために塗布装置(図示せず)に流れる。計量ステーション20の電子部品は、ハウジング6内に置かれる。4つの異なる水管14及び4つの異なる計量管12を用いて、4つの異なる濃度の水性コンベヤー潤滑剤が混合され、そして4つの異なるコンベヤーシステムに、又は1つのコンベヤーシステムに交互に導かれ得る。
【0077】
コンベヤー潤滑システムはさらに、図9に模式的に示される測定装置21を含む。測定装置は、光源、及び水性コンベヤー潤滑剤による光の吸収を測定するための吸収検出器を含む。測定装置21は、コンベヤー潤滑システム内の任意の場所に配置されることができ、この場合、当該システムは、容易に混合された水性コンベヤー潤滑剤を含有する(混合スペース13、そして潤滑剤がコンベヤーに塗布される位置の前から出発する)。測定装置は、システムの管を通って流れる水性コンベヤー潤滑剤がこれらの管内で直接測定されるか、或いは水性コンベヤー潤滑剤の一部がバイパスに導かれ、潤滑剤がこのバイパス内の測定装置21により分析されるように配備される。例として、測定装置21は、図9に模式的に示されており、1つの出口管19に取り付けられ、水性コンベヤー潤滑剤は、光伝達窓(例えばフローセルの)を通して出口管19内の測定装置21により分析されるか、或いはバイパス22に取り付けられ、水性コンベヤー潤滑剤は、光伝達窓(例えばフローセルの)を通してバイパス22内の測定装置21により分析される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】コンベヤー潤滑剤の構成成分を含有する種々の水溶液の吸収スペクトルを示し、吸光度対波長をプロットした図である。
【図2】第1の水性コンベヤー潤滑剤に関する1つの特定の波長での吸光度対濃度のプロットを示す図である。
【図3】第2の水性コンベヤー潤滑剤に関する1つの特定の波長での吸光度対濃度のプロットを示す図である。
【図4】第3の水性コンベヤー潤滑剤に関する1つの特定の波長での吸光度対濃度のプロットを示す図である。
【図5】第4の水性コンベヤー潤滑剤に関する1つの特定の波長での吸光度対濃度のプロットを示す図である。
【図6】トレーサーの吸光スペクトルを示し、吸光度対波長をプロットした図である。
【図7】トレーサーが付加された図2の第1の水性コンベヤー潤滑剤に関する1つの特定の波長での吸光度対濃度のプロットを示す図である。
【図8】コンベヤー潤滑システムでのオンライン測定の結果である吸光度対時間のプロットである。
【図9】本発明によるコンベヤー潤滑システムの一部である計量ステーションを模式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤーシステムの潤滑方法であって、
i)濃度cを有する水性コンベヤー潤滑剤に光を照射すること、
ii)吸収検出器で前記水性コンベヤー潤滑剤による前記光の吸収を測定することにより、前記水性コンベヤー潤滑剤の前記濃度cを求めること、及び
iii)前記コンベヤーシステムに前記水性コンベヤー潤滑剤を塗布すること
を含む、コンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項2】
水でコンベヤー潤滑剤濃縮液を希釈して、前記濃度cを有する前記水性コンベヤー潤滑剤を得る工程を含む、請求項1記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項3】
前記コンベヤー潤滑剤濃縮液が水で希釈されて0.05%〜2.5%の範囲の濃度cを有する水性コンベヤー潤滑剤を得る、請求項2記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項4】
前記水性コンベヤー潤滑剤の前記濃度cが、特定の波長の紫外線の吸収を測定することにより求められ、該紫外線が前記水性コンベヤー潤滑剤の少なくとも1つの潤滑剤構成成分により主に吸収され、該潤滑剤構成成分がアミン、エーテル、カルボン酸及びスルホン酸塩から成る群から選択される構成成分である、請求項1記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項5】
200nm〜300nmの範囲の波長を有する光の吸収を測定する、請求項1記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項6】
前記光の吸収が前記コンベヤーシステムの操作中にオンラインで測定される、請求項1記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項7】
前記求められた濃度cに応じて、前記水性コンベヤー潤滑剤の塗布量を制御することを含む、請求項1記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項8】
前記コンベヤー潤滑剤濃縮液が既知の濃度を有するトレーサーを含有し、前記水性コンベヤー潤滑剤の前記濃度が、主に該トレーサーにより吸収される、特定の波長を有する光の吸収を測定することにより求められる、請求項2記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項9】
前記水性コンベヤー潤滑剤が噴霧、はけ塗り又は浸漬により前記コンベヤーシステムに塗布される、請求項1記載のコンベヤーシステムの潤滑方法。
【請求項10】
コンベヤーシステムに水性コンベヤー潤滑剤を塗布するための塗布装置を含むコンベヤー潤滑システムであって、光源と、該コンベヤー潤滑システム内の前記水性コンベヤー潤滑剤による光の吸収を測定するための吸収検出器とを有する測定装置をさらに備える、コンベヤー潤滑システム。
【請求項11】
計量ステーションを備え、該計量ステーションが、計量管を通してコンベヤー潤滑剤濃縮液を少なくとも1つの混合スペースに圧送するための少なくとも1つの計量ポンプを備え、前記混合スペースが、前記水性コンベヤー潤滑剤を得るために前記混合スペース内で水で前記コンベヤー潤滑剤を希釈するための給水装置に取り付けられており、そして前記混合スペースが、該混合スペースから前記水性コンベヤー潤滑剤を運搬するための少なくとも1つの出口管に取り付けられており、該出口管が、前記コンベヤーシステムに前記水性コンベヤー潤滑剤を塗布するための前記塗布装置に延びている、請求項10記載のコンベヤー潤滑システム。
【請求項12】
前記測定装置がフローセルを含み、該フローセルが前記光源及び前記吸収検出器を装備しており、且つ、前記計量ステーション又は前記塗布装置の一素子に接続されており、該素子が前記水性コンベヤー潤滑剤を含有している、請求項10又は11記載の潤滑システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−524093(P2008−524093A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546963(P2007−546963)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045747
【国際公開番号】WO2006/066120
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(398061050)ジョンソンディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【住所又は居所原語表記】8310 16th Street,Sturtevant,Wisconsin 53177−0902,United States of America